以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、吸気弁側のバルブタイミング制御装置に適用したものであるが、排気弁側にも適用可能である。
前記バルブタイミング制御装置は、図1及び図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する第1部材であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持されていると共に、前記タイミングスプロケット1に相対回転自在に設けられ、該タイミングスプロケット1から伝達された回転力によって後述する第2部材である従動部材9を介して回転するカムシャフト2と、前記タイミングスプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構3と、該位相変更機構3の前端側に配置されたカバー部材4と、を備えている。
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成され、内周面が段差径状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受けるギア部1bと、前記スプロケット本体1aの前端側に一体に設けられ、後述する減速機構12の一部を構成する内歯構成部19と、から構成されている。
また、このタイミングスプロケット1は、スプロケット本体1aと前記カムシャフト2の前端部に設けられた前記従動部材9との間に、1つの大径ボールベアリング43が介装されており、この大径ボールベアリング43によって、タイミングスプロケット1と前記カムシャフト2が相対回転自在に軸受けされている。
前記大径ボールベアリング43は、外輪43a及び内輪43bと、該両輪の間に介装されたボール43cと、から構成され、前記外輪43aがスプロケット本体1aの内周側に固定されているのに対して内輪43bが従動部材9の外周側に圧入固定されている。
前記スプロケット本体1aは、内周側に、前記カムシャフト2側に開口した円環溝状の外輪固定部1bが切欠形成されている。この外輪固定部1bは、段差径状に形成されて、前記大径ボールベアリング43の外輪43aが軸方向から圧入されると共に、この外輪43aの軸方向一方側の位置決めをするようになっている。
前記内歯構成部19は、前記スプロケット本体1aの前端部外周側に一体に設けられ、位相変更機構3の前方へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には波形状の複数の内歯19aが形成されている。
さらに、スプロケット本体1aの内歯構成部19と反対側の後端部には、円環状の保持プレート20が配置されている。この保持プレート20は、金属板材によって一体に形成され、図1及び図4に示すように、外径が前記スプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、内径が前記大径ボールベアリング43の外輪の内径よりも小さい径に設定されている。
前記保持プレート20の内周部20aは、前記外輪の軸方向の外端面に当接配置されていると共に、内周縁の所定位置には、径方向内側、つまり中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部20bが一体に設けられている。
このストッパ凸部20bは、ほぼ扇状に形成されて、先端縁20cが後述するストッパ溝2bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。さらに、前記保持プレート20の外周部には、各ボルト7が挿通する6つのボルト挿通孔20dが周方向の等間隔位置に貫通形成されている。
前記スプロケット本体1a(内歯構成部19)及び保持プレート20の各外周部には、それぞれボルト挿通孔1c、20dが周方向のほぼ等間隔位置に6つ貫通形成されている。なお、前記スプロケット本体1aと内歯構成部19は、後述する減速機構12のケーシングとして構成されている。
なお、前記スプロケット本体1aと前記内歯構成部19、保持プレート20及びハウジング本体5aは、それぞれの外径がほぼ同一に設定されている。
前記モータハウジング5は、図1に示すように、鉄系金属材をプレス成形によって有底筒状に形成された前記ハウジング本体5aと、該ハウジング本体5aの前端開口を封止する給電プレート11と、を備えている。
前記ハウジング本体5aは、後端側に円板状の隔壁5bを有し、該隔壁5bのほぼ中央には、後述する偏心軸部39が挿通される大径な軸挿通孔5cが形成されていると共に、該軸挿通孔5cの孔縁にカムシャフト2の軸方向へ突出した円筒状の延出部5dが一体に設けられている。また、前記隔壁5bの外周部の内部には、雌ねじ孔6が軸方向に沿って形成されている。なお、ハウジング本体5aの隔壁5bの後端面には、前記内歯構成部19が軸方向から当接している。
また、前記雌ねじ孔6は、各ボルト挿通孔1c、20dと対応した位置に形成されており、これらに挿通した6本のボルト7によって前記タイミングスプロケット1(内歯構成部19)と保持プレート20及びハウジング本体5aが軸方向から共締め固定されている。
前記ハウジング本体5aとチェーンケース60の間に、オイルシール65が設けられ、該オイルシール65とカバー部材4によって電動モータ8内部へのオイルの浸入が抑制され、スリップリング26a、26bへのオイルの付着もも抑制されている。
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有していると共に、前端部に前記フランジ部2aが一体に設けられている。
このフランジ部2aは、図1に示すように、外径が従動部材9の後述する固定端部9aの外径よりも僅かに大きく形成されて、各構成部品の組み付け後に、前端面の外周部が前記大径ボールベアリング43の内輪43bの軸方向外端面に当接配置されるようになっている。また、フランジ部2aの前端面が、従動部材9に軸方向から当接した状態でカムボルト10によって軸方向から結合されている。
また、前記フランジ部2aの外周には、図4に示すように、前記保持プレート20のストッパ凸部20bが係入するストッパ凹溝2bが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝2bは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部20bの両端縁が周方向の対向縁2c、2dにそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置を規制するようになっている。
前記カムボルト10は、図1に示すように、頭部10aの軸方向端面が小径ボールベアリング37の内輪を軸方向から支持していると共に、軸部10bの外周に前記カムシャフト2の端部から内部軸方向に形成された雌ねじ2cに螺着する雄ねじ10cが形成されている。
前記従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、図1に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部9aと、該固定端部9aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部9bと、前記固定端部9aの外周部に一体に形成されて、複数のローラ48を保持する円筒状の保持器41と、から構成されている。
前記固定端部9aは、後端面が前記カムシャフト2のフランジ部2aの前端面に当接配置されて、前記カムボルト10の軸力によってフランジ部2aに軸方向から圧接固定されている。
前記円筒部9bは、図1に示すように、中央に前記カムボルト10の軸部10bが挿通される挿通孔9dが貫通形成されていると共に、外周側にはニードルベアリング38が設けられている。
前記保持器41は、図1に示すように、前記固定端部9aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲されて、前記円筒部9bと同方向へ突出した有底円筒状に形成されている。
この保持器41の筒状先端部41aは、前記内歯構成部19や隔壁5bなどによって隔成された円環凹状の収容空間を介してモータハウジング5の隔壁5b方向へ延出している。また、前記筒状先端部41aの周方向のほぼ等間隔位置には、図1及び図2に示すように、前記複数のローラ48をそれぞれ転動自在に保持するほぼ長方形状の複数のローラ保持孔41bが周方向の等間隔位置に形成されている。このローラ保持孔41b(ローラ48)は、先端部側が閉塞されて前後方向に細長い形状に形成され、その全体の数が前記内歯構成部19の内歯19aの全体の歯数よりも少なくなっており、これによって、減速比を得るようになっている。
前記位相変更機構3は、前記従動部材9の円筒部9bの前端側に配置された前記電動モータ8と、該電動モータ8の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構12と、から主として構成されている。
前記電動モータ8は、図1及び図2に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転するヨークであるモータハウジング5と、該モータハウジング5の内部に回転自在に設けられたモータ出力軸13と、モータハウジング5の内周面に接着剤によって固定されたステータであるそれぞれ円弧状の4つの永久磁石14と、モータハウジング5の前端部に固定された前記給電プレート11と、を備えている。
前記モータ出力軸13は、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部を介してカムシャフト2側の大径部13aと、そのカバー部材4側の小径部13bと、から構成されている。前記大径部13aは、外周に鉄心ロータ17が固定されていると共に、後端側に減速機構12の一部を構成する偏心軸部39が一体に形成されている。
一方、前記小径部13bは、外周にコミュテータ21が圧入固定されており、このコミュテータ21は、小径部13bの外周に固定された円環部材21aと、該円環部材21aの外周面に固定された円環状の導電部21bとから構成されている。前記円環部材21aは、その外径が前記大径部13aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、小径部13bの軸方向のほぼ中央位置に配置されている。
前記鉄心ロータ17は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側がコイル18のコイル線を巻回させるスロットを有するボビンとして構成されており、この鉄心ロータ17の内周部が前記モータ出力軸13の段差部外周に軸方向の位置決めされつつ固定されている。
一方、前記コミュテータ21の導電部21bは、前記鉄心ロータ17の極数と同数に分割された各セグメントに前記コイル18の引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
前記各永久磁石14は、円周方向に所定隙間をもって配設されて全体が円筒状に形成され、円周方向に複数の磁極を有していると共に、その軸方向の位置が前記鉄心ロータ17の軸方向の中心に対して前記給電プレート11側にオフセット配置されている。
前記給電プレート11は、図1及び図5に示すように、鉄系金属材からなる円盤状の金属プレート部16と、該金属プレート部16の前後両側面に一体に的に設けられた円板状の樹脂部22と、から構成されている。なお、この給電プレート11は、電動モータ8への給電機構の一部として構成されている。
前記金属プレート16は、図1及び図5に示すように、前記樹脂部22に覆われていない外周部16aが前記モータハウジング5の前端部内周に形成された円環状の段差状の凹溝にかしめによって位置決め固定されていると共に、中央部にはモータ出力軸13の小径部13bなどが挿通される軸挿通孔16bが貫通形成されている。また、金属プレート16は、前記軸挿通孔16bの内周縁に連続した所定の位置に矩形状の2つの保持孔16c、16dが打ち抜きにより形成されており、この各保持孔16c、16dには、後述するブラシホルダ23a、23bが嵌入保持されている。
また、前記給電プレート11には、図1、図5に示すように、前記金属プレート16の各保持孔16c、16dの内側に配置されて、前記樹脂部22の前端部22aに複数のリベット40により固定された銅製筒状の一対のブラシホルダ23a、23bと、該各ブラシホルダ23a、23bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング24a、24bのばね力で円弧状の各先端面が前記コミュテータ21の導電部21bの外周面に径方向から弾接する整流子である一対の切換用ブラシ25a、25bと、前記樹脂部22の前端部22a側に、それぞれの外側面を露出した状態でモールド固定された内外二重の給電用スリップリング26a,26bと、前記各切換用ブラシ25a、25bと各スリップリング26a,26bを電気的に接続する導線であるハーネス27a、27bと、が設けられている。
前記内周側の小径なスリップリング26aと、外周側の大径なスリップリング26bは、銅材からなる薄板をプレスによって円環状に打ち抜き形成されている。
前記カバー部材4は、図1及び図6、図7に示すように、ほぼ円盤状に形成されて、前記給電プレート11の前端側に前記ハウジング本体5aの前端部に対向配置されて該前端部を覆う形で配置されており、円板プレート状のカバー本体28と、該カバー本体28の前端部を覆う合成樹脂製のカバー部29と、から構成されている。
前記カバー本体28は、図1及び図6、図7に示すように、合成樹脂材によって所定の肉厚に形成された外層部28aと、該外層部28aの内部にモールド固定された芯材としての補強部28bとから構成されている。
前記外層部28aは、ほぼ円盤状に形成されて、外径が前記ハウジング本体5aの外径より大きく形成されていると共に、外周部の4箇所に突設された円弧状のボス部28cに、内燃機関の関連する導電性部材であるチェーンケース60に固定されるボルト61が挿通されるボルト挿通孔28dが、樹脂材でモールドされた4つの金属製のスリーブ28e内にそれぞれ形成されている。ここで、前記内燃機関に関連する導電性部材であるチェーンケース60は、電気的なグランドとして機能(接地)している。
前記外層部28aの合成樹脂材は、例えば、耐熱性ポリマーであるポリフェニレンサルファイド(PPS−GF40)が用いられており、この線膨張係数は10-5/℃で2/K(流動方向)である。
また、前記外層部28aの図6中、下側の左右2つのボス部28c、28cには、後述する前記補強部28bに形成されたピン挿通孔28jが臨む円形状の開口窓28f、28fが形成されている。
前記補強部28bは、導電材としても機能するアルミニウム合金材によって形成され、図7に示すように、外層部28aの外径よりも小さなほぼ円盤形の平板状に形成されて、中央位置に異形状の貫通孔28gが形成されていると共に、該貫通孔28gの内周縁の所定位置には、接続端子である2つの突出部28h、28hが突設されている。
この補強部28bのアルミニウム合金材としては、例えば、A5052−H34を用いられており、このアルミニウム合金材の線膨張係数は10-5/℃で2.38/Kである。つまり、このアルミニウム合金材は、線膨張係数が合成樹脂材に近いと共に、鉄系金属に対して導電率が高く電流が流れ易い性質を有している。
なお、前記鉄系金属の線膨張係数は10-5/℃で1.18/Kであって、合成樹脂材やアルミニウム合金材と比較して小さくなっている。
また、前記アルミニウム合金材としては、組成物の配合によって種々のものが考えられるが、その一つとしてジュラルミンなども含まれる。
前記両突出部28h、28hは、一定の幅をもって離間して並設されて、平面視ほぼ長方形状に形成されていると共に、前記電動モータ8方向へ突出するようにクランク状に折曲形成されている。また、この両突出部28h、28hは、それぞれの先端部の外面が前記外層部28aに被覆されることなく外部に露出して、この露出面が後述する前記各コンデンサ65の他方側の脚端子65bが半田付けなどによって接合されるようになっている。
また、補強部28bの外周縁の所定位置には、図7及び図8に示すように、ほぼU字形状の2つの延出部28i、28iが径方向に沿って突設されている。この各延出部28i、28iは、各先端部の前記外層部28aの開口窓28f、28fに対応した位置に位置決め用の前記ピン挿通孔28j、28jが貫通形成されている。
前記各延出部28iは、先端先細り状に形成されていると共に、基部側が前記電動モータ8方向に向かってクランク状に折曲形成されている。
前記各ピン挿通孔28jは、前記カバー部材4をチェーンケース60にボルト61によって取り付ける際に、位置決め凸部である2本の位置決めピン62、62を挿通させてチェーンケース60に対するカバー本体28の位置決めに供されるようになっている。なお、各ピン挿通孔28jは、内径が前記開口窓28fの内径よりも小さく形成されて孔縁部が露出している。
前記チェーンケース60は、アルミニウム合金材によって一体に形成され、前記タイミングスプロケット1や電動モータ8などの位相変更機構3やシリンダブロックから突出したクランクシャフトの先端部などの外周全体を覆うように配置されている。また、このチェーンケース60は、図1に示すように、円環状の前端部60aの前端面60cの所定位置に、前記ボルト61の先端部が螺着する4つの雌ねじ孔60bが形成されていると共に、図8に示すように、前端面60cの下部位置に、2つのピン圧入用孔60dが形成されている。一方、図外の後端部が内燃機関のアルミ合金材からなる導電性の図外のシリンダヘッドにボルトによって固定されている。
また、前記ピン圧入用孔60dには、図8に示すように、前記2本の位置決めピン62の各一端部62aが圧入固定されている。この各位置決めピン62は、導電性の金属材によって形成され、各他端部62b外周が前記補強部28bの各ピン挿通孔28jの内周面全体に接触している。
前記外層部28aの外周部一端面には、図8に示すように、シール溝28kが形成され、このシール溝28k内に前記チェーンケース60の前端部60aの前端面との間をシールする合成ゴム製のシール部材55が嵌着固定されている。
なお、前記補強部28bの各延出部28iをクランク状に折曲したのは、前記シール溝28kを避けて前記ピン挿通孔28jを開口窓の28fの軸方向中央に配置するためである。これによって、位置決めピン62による位置決め精度を高くできると共に、カバー本体28の肉厚を薄くすることができる。
前記貫通孔28gの形成部位には、図6に示すように、前記外層部28aと一体の合成樹脂材が充填されていると共に、この充填箇所およびその周辺にほぼU字形状の収容溝49が形成されている。この収容溝49には、図6及び図9に示すように、角筒状の後述するブラシホルダ30a、30bが軸方向に沿ってモールド固定されていると共に、一対の捩りコイルばね32、32を収容する溝部49aが形成されている。また、この収容溝49の所定箇所には、図6及び図10に示すように、後述する給電用コネクタの端子片33aと信号用コネクタの端子片34aが埋設されていると共に、後述するインダクタコイル64bを保持する保持溝49bが切欠形成されている。
前記カバー部29は、前記収容溝49の内周形状に沿ったほぼU字形状に形成されて、外周縁に一体に形成された円環状の係止凸部29aが前記カバー本体28の収容溝49の周縁部に形成された段差係止溝28mに軸方向から圧入によって嵌合固定されている(図10参照)。
前記カバー本体28は、前記各スリップリング26a、26bと軸方向から対向する位置に銅製の一対の角筒状の前記ブラシホルダ30a、30bが軸方向に沿って固定されている。この各ブラシホルダ30a、30bの内部には、各先端面が前記各スリップリング26a、26bに摺接する一対の給電用ブラシ31a、31bが軸方向へ摺動自在に保持されている。
前記ブラシホルダ30a、30b及び給電用ブラシ31a、31bは、図9にも示すように、カバー本体28の内側と外側に並設されていると共に、それぞれの後端部が前記カバー本体28の外側面に臨んでいる。
また、前記カバー本体28の電動モータ8側の内端面のほぼ中央位置には、図1に示すように、円形状の凹溝36aが形成されている。この凹溝36aは、カバー本体28の軸方向外側に凹んで形成され、内径が後述する被検出部50の先端部50bの外径よりも大きく形成されていると共に、その深さは前記カバー本体28の軸方向の幅長さよりも僅かに小さく形成されて、薄肉な底壁を有している。また、この薄肉な底壁の外面ほぼ中央位置には、位置決め用突起28nが外側面から突設されている。
前記一対の捩りコイルばね32、32は、図6及び図9に示すように、リテーナ56を介して前記溝部49a内に保持されていると共に、前記各給電用ブラシ31a、31bに対して平行かつ直線状に配置されている。この各捩りコイルばね32は、ばね力を発生する円筒状の巻き線部32a、32aと、該巻き線部32a、32aの軸方向一端側から接線方向に沿って延出して、前記各給電用ブラシ31a、31bの後端面に弾接したアーム状の一端部32b、32bと、巻き線部32a、32aの軸方向他端側から前記一端部32b、32bとは逆方向へ延出して、前記カバー本体28の外面に弾接するアーム状の他端部32c、32cと、を備えている。
前記各巻き線部32a、32aは、巻線方向が互いに逆方向に設定されていると共に、所定の巻き線量によって所望のばね力を発生させるようになっている。また、各巻き線部32a、32aは、外径が前記収容溝49の巾長さよりも小さく形成されて全体が溝部49aの内部に所定隙間をもって収容可能になっている。
前記各捩りコイルばね32、32の一端部32b、32bは、各先端部32d、32dが円弧状に折曲形成されて、その各屈曲頂部が前記各給電用ブラシ31a、31bの後端面に点接触状態で弾接している。つまり、一端部32b、32bは、前記各給電用ブラシ31a、31bの後端面に弾接してスリップリング26a、26b方向へ押圧するようになっている。また、この各一端部32b、32bは、前記各巻き線部32a、32aの巻線方向が互いに逆方向になっていることから、互いに軸方向へ近接した位置、つまり、後述する支持部材であるリテーナ56の保持部56bの両側面56c、56cに側へ互いに近接した位置になっていると共に、前記両側面56c、56cに沿って各給電用ブラシ31a、31bの後端面方向に並行に延出している。
一方、前記各他端部32c、32cは、各先端部32e、32eがく字形状に折曲形成されて、その各屈曲頂部が前記カバー部材4の外端面に点接触状態で弾接するようになっている。また、この各他端部32c、32cは、前記各巻き線部32a、32aの巻線方向が互いに逆方向になっていることから、互いに軸方向へ離間した位置になっている。
各捩りコイルばね32,32は、それぞれの一端部32b、32bと他端部32c、32cの互いに閉じ方向へ作用するばね力によって各給電用ブラシ31a、31bを付勢している。
前記リテーナ56は、図6及び図9に示すように、合成樹脂材によって一体に形成され、一本軸状に一体に形成された左右一対の支持軸56a、56aと、該両支持軸56a、56a間の中央位置に一体に設けられた矩形状の保持部56bと、から構成されている。
前記各支持軸56aは、中実な円柱状に形成されて、その軸方向の長さが前記溝部49aの長手方向の長さよりも僅かに短く形成されて両端面が前記溝部49aの長手方向の対向面に微小なクリアランスをもって対峙している。
前記保持部56bは、ほぼ直方体に形成されて、巾厚さが比較的大きく形成されていると共に、該巾厚さ方向と直角方向の長辺の長さが前記溝部49aの巾長さよりも僅かに大きく形成されて、該長辺の両側面が前記溝部49aの長辺側の対向面に挿入されて、この挿入された状態で熱により溝部49aの対向両側面に溶着固定されるようになっている。
前記各ブラシホルダ30a、30bは、前後端に開口部が形成されて、前端側の開口部から前記各給電用ブラシ31a、31bの先端部が進退自在になっていると共に、各一側壁の長手方向に形成された図外のスリット孔を介して各給電用ブラシ31a、31aの後端側部にピグテールハーネス57、57の一端部が接続されている。
前記各ピグテールハーネス57,57は、各他端部が給電用コネクタ33の一対の端子片33a、33aの各一端部33b、33bに半田付けによって接続されており、その長さが前述したように、前記給電用ブラシ31a、31bが前記捩りコイルばね32、32のばね力によって押し出されてもブラシホルダ30a、30bから脱落しないような長さに設定されている。
前記各給電用ブラシ31a、31bは、角柱状に形成されて所定の軸方向長さに設定されていると共に、平坦な各先端面が前記各スリップリング26a,26bに軸方向からそれぞれ当接するようになっている。
また、前記カバー本体28の下端部には、前記各給電用ブラシ31a、31bに図外のコントロールユニットを介してバッテリーから電流を供給する給電用コネクタ33が一体に設けられていると共に、前記検出部51で検出された回転角度信号を前記コントロールユニットに出力する信号用コネクタ34が前記給電用コネクタ33と並行かつ径方向に沿って突設されている。
前記給電用コネクタ33は、図6及び図10に示すように、その開口部がカバー本体28の外周側下端部からほぼ径方向に沿って突出していると共に、前記カバー本体28の内部に埋設された導電材である細長い一対の端子片33a、33aの外部に露出した前記各一端部33b、33bが前記ピグテールハーネス57,57に接続されている。また、前記開口部の内部に配置されて外部に露出した他端部33c、33cが、コントロールユニット側の雌コネクタ端子に接続されるようになっている。
また、前記給電用コネクタ33は、前記両端部33b、33cの間に長さ方向及び巾方向に一定の距離をもって離間した4つの接続部33d、33d、33e、33eが露出形成されており、この各接続部33d〜33eの間に前記電磁ノイズ抑制機構63が設けられている。
一方、前記信号用コネクタ34は、図1及び図6に示すように、開口部がカバー部材4の外周側下端部にほぼ径方向に沿って形成されて、前記給電用コネクタ33の開口部と並行に形成されていると共に、全体の巾長さがカバー部材4の巾長さとほぼ同じ長さになっている。また、この信号用コネクタ34は、カバー本体28内に部分的に埋設された導電材である複数の端子片34aを有し、外部に露出された3つの接続端部34bがプリント基板53の集積回路54に接続されていると共に、他端部34cがコントロールユニット側の図外の雌コネクタ端子に接続されるようになっている。
前記電磁ノイズ抑制機構63は、図1及び図10に示すように、通電されることによって周囲に磁場を発生させる2つのインダクタンス64と、容量性素子である2つのコンデンサ65とから構成されている。
前記各インダクタンス64は、円柱状の鉄心64aの外周にコイル64bが巻回されてなり、該コイル64bの一端部64cが前記給電用コネクタ33の端子片33aの一方の接続部33dにそれぞれ接続されていると共に、他端部64dが他方の接続部33eにそれぞれ接続されている。
前記各コンデンサ65は、図6及び図11に示すように、それぞれ2本の脚端子のうち一方側の脚端子65aが前記他方側の接続部33eにそれぞれ接続されている。一方、他方側の脚端子65bが各他方の接続部33eの側部で外層部28aから露出した前記補強部28bの両突出部28h、28hの矩形状露出面の上面に半田付けなどによって接続されている。
前記モータ出力軸13の小径部13bと、前記カバー本体28の凹溝36aの底壁を挟んだ中央部との間には、モータ出力軸13の回転角度位置を検出する角度検出機構である前記角度センサ35が設けられている。
この角度センサ35は、電磁誘導型であって、図1に示すように、前記モータ出力軸13の小径部13b内に固定された被検出部50と、前記カバー本体28のほぼ中央位置に固定されて、前記被検出部50からの検出信号を受信する検出部51と、から構成されている。
前記被検出部50は、合成樹脂材からなるほぼ有底円筒状に形成され、軸方向先端部の底壁外面に3葉形状の薄板な被検出ロータ52が固定されていると共に、後端部外周に前記モータ出力軸13の小径部13bの内部に圧入される円環状の突起50aが一体に設けられている。
また、前記被検出部50は、外径が前記凹溝36aの内径よりも小さく形成されて、前記モータ出力軸13の小径部13bの先端から突出した先端部が前記カバー本体28の前記凹溝36a内に挿入配置されて、前記被検出ロータ52が凹溝36aの薄肉な底壁の底面に微少隙間Cを介して対向配置されている。
前記検出部51は、前記カバー本体28のほぼ中央位置から径方向に延設されたほぼ長方形状のプリント基板53と、該プリント基板53の長手方向の一端部外面に設けられた集積回路(ASIC)54と、該集積回路54と同じ外面の他端部側に設けられた図外の受信回路及び発振回路と、を備えている。
前記プリント基板53は、図外の前記受信、発振回路の中央に位置決め用小孔が形成されており、この位置決め用小孔が前記位置決め用突起28nに圧入嵌合して前記被検出ロータ52の中心と受信、発振回路の中心が位置決めされるようになっている。
また、このプリント基板53は、前記カバー本体28の前端面に対してビスなどの所定の固定手段によって固定されており、したがって、前記受信、発振回路は、前記凹溝36aの底壁と微少隙間Cを介して前記被検出ロータ52に軸方向から対峙している。
よって、前記モータ出力軸13の回転に伴って前記被検出ロータ52が回転することにより、図外の前記受信、発信回路と前記被検出ロータ52との間に誘導電流が流れて、この電磁誘導作用によって前記集積回路54がモータ出力軸13の回転角度を検出し、この検出信号をコントロールユニットに出力するようになっている。
また、前記カバー本体28の前記凹溝36aの開口部側外周には、該凹溝36aの内径よりも大きな内径を有する大径溝36bが形成されている。
前記モータ出力軸13と偏心軸部39は、前記カムボルト10の軸部10b外周面に設けられた小径ボールベアリング37と、前記従動部材9の円筒部9bの外周面に設けられて小径ボールベアリング37の軸方向側部に配置された前記ニードルベアリング38とによって回転自在に支持されている。
前記ニードルベアリング38は、偏心軸部39の内周面に圧入された円筒状のベアリングリテーナ38aと、該ベアリングリテーナ38aの内部に回転自在に保持された複数の転動体であるニードルローラ38bと、から構成されている。このニードルローラ38bは、前記従動部材9の円筒部9bの外周面を転動している。
また、前記モータ出力軸13(偏心軸部39)の外周面と前記モータハウジング5の延出部5dの内周面との間には、減速機構12の内部から電動モータ8内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール46が設けられている。
前記コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類からの情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、この検出情報に基づいて機関制御を行うと共に、前記給電用ブラシ31a、31bや各スリップリング26a,26b、切換用ブラシ25a、25b、コミュテータ21などを介してコイル18に通電してモータ出力軸13の回転制御を行い、減速機構12によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
前記減速機構12は、図1〜図3に示すように、偏心回転運動を行う前記偏心軸部39と、該偏心軸部39の外周に設けられた中径ボールベアリング47と、該中径ボールベアリング47の外周に設けられた前記ローラ48と、該ローラ48を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する前記保持器41と、該保持器41と一体の前記従動部材9と、から主として構成されている。
前記偏心軸部39は、図1に示すように、外周面に形成されたカム面39aの軸心Yがモータ出力軸13の軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。
前記中径ボールベアリング47は、前記ニードルベアリング38の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪47aと外輪47b及び該両輪47a、47bとの間に介装されたボールとから構成されている。前記内輪47aは、前記偏心軸部39の外周面に圧入固定されているのに対して、前記外輪47bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪47bは、軸方向の電動モータ8側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器41の内側面との間に微小な第1隙間C1が形成されてフリーな状態になっている。また、この外輪47bの外周面には、前記各ローラ48の外周面が転動自在に当接していると共に、この外輪47bの外周側には、円環状の第2隙間C2が形成されて、この第2隙間C2によって中径ボールベアリング47全体が前記偏心軸部39の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
前記各ローラ48は、鉄系金属によって形成され、前記中径ボールベアリング47の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ前記内歯構成部19の内歯19aに嵌入すると共に、保持器41のローラ保持孔41bの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向へ揺動運動させるようになっている。
前記減速機構12の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、前記シリンダヘッド01の軸受02の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路と、前記カムシャフト2の内部軸方向に形成されて、前記油供給通路にグルーブ溝58aを介して連通した油供給孔58と、前記従動部材9の内部軸方向に貫通形成されて、一端が該油供給孔58に環状溝58bを介して開口し、他端が前記ニードルベアリング38と中径ボールベアリング47の付近に開口した前記小径なオイル孔59と、前記大径ボールベアリング43の内部を介して潤滑油を外部に排出するオイル排出孔62と、から構成されている。
〔バルブタイミング制御装置の作動〕
以下、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の作動について説明すると、まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転し、その回転力が内歯構成部19と雌ねじ形成部6を介してモータハウジング5に伝達されて、該モータハウジング5が同期回転する。一方、前記内歯構成部19の回転力が、各ローラ48から保持器41及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2に設けられた複数の駆動カムが各気筒の吸気弁を開閉作動させる。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットから各端子片33a、33aや各ピグテールハーネス57,57及び給電用ブラシ31a、31b、各スリップリング26a,26bなどを介して電動モータ8のコイル18に通電される。これによって、モータ出力軸13が回転駆動され、この回転力が減速機構12を介してカムシャフト2に減速された正逆の回転力が伝達される。
すなわち、前記モータ出力軸13の回転に伴い偏心軸部39が偏心回転すると、各ローラ48がモータ出力軸13の1回転毎に保持器41の各ローラ保持孔41bで径方向へガイドされながら前記内歯構成部19の一つの内歯19aを乗り越えて隣接する他の内歯19aに転動しながら移動し、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ48の転接によって前記モータ出力軸13の回転が減速されつつ前記従動部材9に回転力が伝達される。このときの減速比は、前記内歯19aの数とローラ48の数の差によって任意に設定することが可能である。
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
したがって、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れる。
そして、本実施形態では、アルミニウム合金材の前記補強部28bによってカバー部材4の剛性が向上することから熱などによる全体の変形が抑制される。また、たとえ変形したしても、補強部28bと外層部29aの線膨張係数が近い値であることから、電動モータ8の発熱などに起因して外層部28aが膨張・収縮変形すると、補強部29bもこの変形に追従した形で膨張・収縮変形する。
このため、前記外層部28aに対して過度な応力が作用しないことから、クラックや破損などの発生を十分に抑制することができる。
この結果、カバー部材4のシール性能が維持されて、該カバー部材4を介して水や塵などが浸入して、電動モータ8の内部やスリップリング26a、28bへの水や塵などの付着を抑制できると共に、耐久性の低下が抑制される。よって、前記スリップリング26a、28bへの水や塵の付着によって一対の給電用ブラシ31a、31bの摩耗が促進するのを抑制できる。
すなわち、従来のカバー部材4’は、図15に示すように、鉄系金属からなる補強部28b’の外周に、射出成形などによって合成樹脂材の外層部28a’をモールドするようになっているが、この成形時に予め前記補強部28b’を、所定の保持具によって成形金型内に保持する必要上、モールド成形後には、前記外層部28a’の内端面に保持具による保持痕跡として複薄の小円形状の痕跡孔70が残っている。
したがって、前述したように、前記電動モータ8の発熱によって、カバー部材4’の外層部28a’と補強部28bが膨張・収縮を繰り返し行われると、前記合成樹脂材の外層部28a’と鉄系金属の補強部28b’との大きな線膨張係数の相違によって、前記各痕跡孔70の孔縁から外側に向かって多くのクラック71が発生し易くなるのである。この各クラック71は、前記痕跡孔70の孔縁以外の箇所にも発生する場合がある。これは、両者28a’28b’の線膨張係数の大きな相違から生じることが本願発明者の検証によって明らかになった。
そこで、本発明(本実施形態)では、前記補強部28bを、合成樹脂材と線膨張係数の近いアルミニウム合金材を選択することによって、前記クラック71の発生を十分に抑制することが可能になったのである。
また、前述のように、前記補強部28bによりカバー部材4全体の熱による変形を十分に抑制することができると共に、内外層部28a、28bの線膨張係数もほぼ同じであり変形量もほぼ等しくなっていることから、熱による膨張・収縮の繰り返しによるカバー部材4の中央部が内側または外側へ凸状に変形することも抑制できる。
これによって、前記角度検出センサ35の検出部51周囲の凹凸変形が抑制されて、前記被検出部51の先端部51aとの間の微小隙間Cの距離変化を抑制できる。この結果、前記角度検出センサ35の常時良好な検出精度が得られる。
さらに、前記補強部28bをアルミニウム合金材で形成したことによって、鉄系金属で形成した場合に比較して、カバー部材4全体の軽量化が図れる。この結果、バルブタイミング制御装置の軽量化に伴い車両の軽量化にも貢献できる。
また、本実施形態では、バルブタイミング制御装置の駆動時における前記電動モータ8の回転駆動や給電用ブラシ31a、31bの各スリップリング26a、26bに対する摺動時などに発生する電磁ノイズを、前記電磁ノイズ抑制機構63によって効果的に抑制することができる。
特に、前記電磁ノイズ抑制機構63は、前記コンデンサ65の他方の脚端子65bを、前記突出部28h、28hの矩形状露出面を介して前記補強部28bに接続され、さらにこの補強部28bが前記各位置決めピン62、62を介してチェーンケース60とシリンダヘッドに電気的に接続されている。つまり、前記各コンデンサ65から流出した微弱電流は、前記補強部28bからチェーンケース60に通電され、ここからグランドとして利用されるシリンダヘッドに流入させるようになっている。したがって、前記コンデンサ65とチェーンケース60との電気的な接続を別途ハーネスなど用いずにカバー部材4の芯金としての補強部28bを導電材として兼用させたことから、部品点数の増加を抑制することができる。
しかも、前記補強部28bを、鉄系金属よりも導電率が高いアルミニウム合金材によって形成したことから、前記チェーンケース60への通電性が良好になってグランドであるシリンダヘッドへ効率良く通電することからできる。したがって、前記電磁ノイズの低減効果が大きくなる。
また、別途ハーネスを用いることがないので、これらの煩雑な取り回しなどの作業が不要になり、単に半田付けなどによってコンデンサ65と補強部28bを接続するだけであるからその作業性も向上する。
なお、前記ハーネスの他に、別途バスバーなどの導電体も不要になることからこの点でも部品点数の増加を抑制できる。
また、本実施形態では、前記ブラシホルダ30a、30bや捩りコイルばね32,32及び電磁ノイズ抑制機構63などを、カバー本体28に設けられた収容溝49の溝部49aや保持溝49b内に配置したため、前記カバー部材4全体を扁平化することができ、これによって、装置全体の軸方向の長さを十分に短くすることが可能になる。
この結果、このバルブタイミング制御装置を搭載した内燃機関のエンジンルーム内でのレイアウトの自由度が向上する。
特に、前記各捩りコイルばね32,32は、全体がカバー部材4の外面に露出した状態でなく、各巻き線部32a、32aの大部分が前記各溝部49a内に収容されて、カバー本体28の外側面からの突出量を低くできることから、軸方向の長さをさらに短くすることが可能になる。
また、本実施形態では、前記各巻き線部32a、32aの巻き線方向を互いに逆方向に設定したことによって、前記各一端部32b、32bを前記保持部56bの軸方向両側面56c、56c側へ互いに近接して配置できると共に、各他端部32c、32cを互いに離間した位置に配置できることから、前記巻き線部32a、32aの巻き線量やレイアウトの自由度が向上する。
さらに、本実施形態では、前記保持部56bの巾厚さを、前述したように、両給電用ブラシ31a、31bの離間巾に合わせて比較的肉厚に形成することができるので、この保持ブラシ56b自体の剛性も高めることができる。
〔第2実施形態〕
図12は第2実施形態を示し、前記カバー本体28の補強部28bを、外層部28aの上側の前記ボス部28cまで延長形成して、該延長部28qの先端縁を、前記ボルト挿通孔28dを形成するための導電性の金属製スリーブ28eの外周面に当接させたものである。
これによって、前記補強部28bとチェーンケース60を前記金属スリーブ28eとボルト61によって電気的に接触させることが可能になる。
他の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この実施形態も第1実施形態と同様に部品点数の増加の抑制などの作用効果が得られる。
なお、この実施形態でも、前記位置決めピンは設けられているから、補強部28bとチェーンケース60を二重に電気的に接続することができる。
〔第3実施形態〕
図13は第3実施形態を示し、前記補強部28bとチェーンケース60との接触構成をさらに変更したもので、前記補強部28bの外周縁に、電動モータ8側へクランク状に折曲形成された突出部28rを一体に設け、該突出部28rの外層部28aから露出させた先端面をチェーンケース60の前端部60aの前端面60cに軸方向から当接配置したものである。
したがって、この実施形態も補強部28bとチェーンケース60が電気的に接触させることができるので、第1実施形態を同様な作用効果が得られる。
〔第4実施形態〕
図14は第4実施形態を示し、補強部28bの外周縁に前記外層部28aの外周面から径方向へ突出した突出部28sを一体に設ける一方、チェーンケース60の前端部60aの前端面60c外周に凸部60eを一体に形成すると共に、該凸部60eの下面60fに前記突出部28sの先端縁を当接配置したものである。
したがって、この実施形態も補強部28bとチェーンケース60が電気的に接触させることができるので第1実施形態を同様な作用効果が得られる。
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、前記コンデンサ65と電気的に接続された前記補強部28bの外周部をさらに変更して前記チェーンケース60に当接させる構造とすることも可能である。例えば、外周部に径方向外側へ突出する複数の突出部を設け、該突出部の先端に前記チェーンケースの雌ねじ孔に螺着するボルトが挿通するボルト挿通孔を形成し、該ボルト挿通孔の内周縁を前記ボルトを介してチェーンケースに電気的に接続することも可能である。
また、前記第1部材としては、前記タイミングスプロケットの他に、タイミングプーリなどとしても良い。
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
請求項4に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カバー部材は、複数のボルトによって、内燃機関に関連した導電性部材としてのシリンダヘッドまたはチェーンケースに固定されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項b〕
請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記補強部は、円盤状に形成されていると共に、外周縁の所定位置に径方向へ延出した延出部を設け、
該延出部に前記ピン挿通孔を穿設させたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項c〕
請求項6に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記延出部は、一部が軸方向外側へクランク状に折曲形成されていると共に、該折曲部の箇所に前記カバー部材と前記導電性部材との間をシールするシール部材の一部が配置されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項e〕
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記補強部は、ほぼ中央に形成された貫通孔の孔縁から軸方向に突出した接続端子が設けられていると共に、該接続端子に前記容量性素子の一端部が電気的に接続されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項f〕
請求項eに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記給電機構は、前記外層部に固定され、前記容量性素子の他端が接続されると共に前記給電ブラシにハーネスを介して電気的に接続された給電用コネクタ片を有し、
前記接続端子は、前記給電用コネクタ片と同一平面上に配置されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項g〕
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カバー部材は、前記導電性部材に固定するためのボルトが挿通するボルト挿通孔を有し、
前記補強部の一部は、前記ボルト挿通孔の内周面に露出するように設けられていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。