JP6649809B2 - 日回し車、カレンダ機構、ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Description
上述したように日付の切替えに時間を要してしまうと、その間、日車に表示されている日付の一部が日付窓から外れてしまい、いわゆる半目状態となってしまう。よって、改善の余地が残されていた。
この時計のカレンダ機構は、24時間で1回転する日回し車と、日回し車に回転可能に取付けられ、日回し車に形成された円弧状開口内に挿通された偏心軸を有するカムと、カムの偏心軸回りに回転可能とされ、日車の歯部に当接可能な日送り爪を有するカレンダ送り部材と、このカレンダ送り部材に一定の回転負荷を付与する戻しばねと、カムの外周面に接触するローラを有するレバーと、このローラをカムに押し付ける瞬時ジャンプばね(瞬間的に日車を回転するために必要な力を蓄えるためのばね)と、を備えている。
また、日回し歯車が第一軸周りに回転することで、日回し爪が日回し歯車の径方向に移動して規制部に対して係脱できる。これにより、日回し爪は、弾性部に弾性力を蓄積させた後、径方向に移動し、規制部から離脱して弾性力を開放させるとともに、日車の歯部に接触することができるので、瞬時に日車を回転させて日を送ることができる。
また、日回し爪は、凸部が凹部に入り込むことにより日回し歯車に取り付けられているので、日回し爪が規制部に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪の径方向への移動が凸部と凹部とにより規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車とすることができる。
また、日回し爪には、基端部において周方向に沿って延びる凹部が設けられているので、日回し歯車の径方向に大型化することなく、日回し歯車の径方向に移動可能に日回し爪を配置できる。したがって、省スペース化によりレイアウト自由度を向上できる日回し車とすることができる。
また、日回し歯車は、日回し爪の径方向への移動を規制する摺接部を備えているので、日回し爪が規制部に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪の径方向への移動が凸部、凹部および摺接部により規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車とすることができる。
また、凹部は、第一軸を中心として所定の曲率を有する湾曲部と、湾曲部よりも日回し歯車の回転方向の上流側において、径方向に延びる爪誘導部と、を備えているので、日回し歯車が回転して日回し爪の凸部が爪誘導部に案内されることで、径方向に日回し爪を移動させることができる。これにより、日回し爪は、規制部から離脱して弾性力を開放させるとともに、日車の歯部に接触することができるので、瞬時に日車を回転させて日を送ることができる。
また、日回し爪は、凸部が周方向に沿って延びる凹部に入り込むことにより日回し歯車に取り付けられているので、日回し爪が規制部に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪の径方向への移動が規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車とすることができる。
また、本発明の時計は、上述のムーブメントを備えたことを特徴としている。
以下では、機械式の腕時計(請求項の「時計」に相当、以下、単に「時計」という。)およびムーブメントについて説明したあと、実施形態に係る日回し車およびカレンダ機構の詳細について説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板と針とを取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋、およびガラス2からなる時計ケース3内に、ムーブメント10と、時に関する情報を示す目盛り等を有する文字板11と、時を示す時針12、分を示す分針13および秒を示す秒針14を含む指針と、を備えている。文字板11には、日を表す数字である日文字21を露出させる日窓11aが開口している。これにより、時計1は、時刻および日を表示することができる。
図2に示すように、ムーブメント10は、てんぷやがんぎ車、アンクル等を含む図示しない脱進調速機構と、四番車や三番車、二番車、香箱車、筒車16等を含む表輪列と、が少なくとも配置されている。四番車の裏側の端部には、秒針14(図1参照)が取り付けられており、中心軸O周りに60秒でCW方向に一回転する。二番車の裏側の端部には、分針13(図2参照)が取り付けられており、中心軸O周りに60分でCW方向に一回転する。
筒車16は、輪列を介して動力源である不図示の香箱車と噛合する。筒車16は、香箱車から動力が伝達されて回転する。筒車16の裏側の端部には時針12(図1参照)が取り付けられており、中心軸O周りに12時間でCW方向に一回転する。筒車16の回転は、例えば中間車17を介して、後述するカレンダ機構50の日回し車30に伝達される。
図2に示すように、カレンダ機構50は、日車20と、日回し車30と、日ジャンパ60とを備えている。
日車20は、地板5に対して回転自在に取り付けられたリング状部材である。日車20の表面には周方向に沿って1〜31の日を表す日文字21(図1参照)が順番に表示されている。日文字21の表示方法としては、例えば印刷、刻印、シール貼付等が挙げられるが、特に限定されるものではない。日車20は、CW方向に回転する。日文字21は、日車20の回転方向にあわせて順に表示されている。
日車20の内周面におけるムーブメント10の表側には、歯部22が形成されている。日車20の歯部22は、径方向の内側に突出するとともに周方向に間隔をあけて複数形成されている。
図3に示すように、日回し車30は、日回し歯車31と、日回し爪36と、弾性部41と、を備えている。
日回し歯車31は、筒車16からの回転力が伝達されて第一軸C1を中心に回転可能に設けられている。日回し歯車31は、第一軸C1を中心としてCW方向に、一定速度で一日に一回転する。
日回し歯車31には、第一軸C1から偏心した位置に凸部32が突設されている。凸部32は、第一軸C1と平行な第二軸C2を中心に円柱状に形成されている。
日回し爪36は、日回し歯車31とともに日回し歯車31の周方向に移動可能である。また日回し爪36は、日回し歯車31の第一軸C1に対して偏芯した第二軸C2周りに回動することで、日回し歯車31の径方向にも移動可能である。
図4に示すように、日回し車30の近傍には、日回し爪36の先端部38と係合する規制部45が設けられている。本実施形態における規制部45は、日回し車30の一部を覆う日ジャンパ60の輪列押え板7に設けられている。規制部45は、輪列押え板7の一部を第一軸C1側へ突出して形成されている。
日回し歯車31が回転しつつ日回し爪36が規制部45に係合すると、日回し爪36は日回し歯車31の径方向への移動が可能な状態で、日回し歯車31の周方向への移動が規制される。
第一実施形態の日回し車30を備えたカレンダ機構50の作用について説明する。
図5から図7は、第一実施形態に係る日回し車周辺の部分拡大平面図である。なお、図4から図7の各図は、この順に時系列で並んでいる。また、以下では、カレンダ機構50における30日から31日に切り替わる動作について説明する。
まず、図1に示すように、30日を示す「30」の日文字21全体が日窓11aに表示されている。モータや香箱車等の不図示の動力源からの動力は、筒車16から日回し車30に伝達されている。日回し車30は、一日あたり一回転の速度で回転している。
図4に示すように、日回し爪36の先端部38は、例えば日付表示を変更する動作が開始する6時間前(すなわち18時00分頃)に達すると、規制部45に当接して係合する。これにより、日回し爪36の先端部38は、日回し歯車31の周方向へ移動することが規制される。
日回し爪36の基端部37は、日回し歯車31の凸部32が第一軸C1を中心にして、第二軸C2の偏心量に対応した半径で回転している。日回し歯車31の凸部32は、日回し爪36の凹部33内で摺動回転する。
日回し歯車31に接続された弾性部41の一端部は、日回し歯車31とともに回転方向に移動する。日回し爪36の先端部38に接続された弾性部41の他端部は、日回し爪36とともに規制部45に対応した位置に維持される。弾性部41は、日回し歯車31の回転により、両端部間が接近するとともに縮径するように弾性変形して、弾性力が蓄積される。
次いで、日回し爪36は、先端部38における規制部45との係合状態が解除されて規制部45から離脱する。日回し爪36は、弾性部41に蓄積された弾性力が開放され、先端部38が付勢されて、日車20の歯部22に接触する。
その後、弾性部41および日回し爪36が開放されて、日回し歯車31とともに回転する。
以降、カレンダ機構50は、上述の動作を繰り返す。
また、日回し歯車31が第一軸C1周りに回転することで、日回し爪36が日回し歯車31の径方向に移動して規制部45に対して係脱できる。これにより、日回し爪36は、弾性部41に弾性力を蓄積させた後、径方向の内側に移動し、規制部45から離脱して弾性力を開放させるとともに、日車20の歯部22に接触することができるので、瞬時に日車20を回転させて日を送ることができる。
また、日回し爪36は、凸部32が凹部33に入り込むことにより日回し歯車31に取り付けられているので、日回し爪36が規制部45に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪36の径方向への移動が凸部32と凹部33とにより規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車30とすることができる。
図8は、第二実施形態に係る日回し車の分解斜視図である。
図8に示すように、日回し車30は、日回し歯車31と、日回し爪36と、弾性部41と、を備えている。
日回し歯車31は、筒車16からの回転力が伝達されて第一軸C1を中心に回転可能に設けられている。日回し歯車31は、第一軸C1を中心としてCW方向に、一定速度で一日に一回転する。
その他の構成は第一実施形態と同様である。
第二実施形態に係る日回し車30を備えたカレンダ機構50の作用について説明する。
図9から図12は、第二実施形態に係る日回し車周辺を示す部分拡大平面図であり、図9から図12の順に時系列で並んでいる。
図9に示すように、日回し爪36の先端部38は、例えば日付表示を変更する動作が開始する6時間前(すなわち18時00分頃)に達すると、規制部45に当接して係合する。これにより、日回し爪36の先端部38は、日回し歯車31の周方向へ移動することが規制される。
日回し歯車31の凸部32は、日回し歯車31の回転にともない、日回し爪36の基端部37において凹部33内を移動する。また、日回し爪36の基端部37は、摺接部34に設けられた円弧形状部34aと摺接する。凹部33および円弧形状部34aは、それぞれ第一軸C1を中心にした円弧形状となっている。したがって、日回し爪36は、基端部37の径方向における位置が略一定に保持される。
次いで、日回し爪36は、先端部38における規制部45との係合状態が解除されて規制部45から離脱する。日回し爪36は、弾性部41に蓄積された弾性力が開放され、先端部38が付勢されて、日車20の歯部22に接触する。
その後、弾性部41および日回し爪36が開放されて、日回し歯車31とともに回転する。
以降、第二実施形態のカレンダ機構50は、上述の動作を繰り返す。
また、日回し爪36には、基端部37において周方向に沿って延びる凹部33が設けられているので、日回し歯車31の径方向に大型化することなく、日回し歯車31の径方向に移動可能に日回し爪36を配置できる。したがって、省スペース化によりレイアウト自由度を向上できる日回し車30とすることができる。
また、日回し歯車31は、日回し爪36の径方向の内側への移動を規制する摺接部34を備えているので、日回し爪36が規制部45に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪36の径方向への移動が凸部32、凹部33および摺接部34により規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車30とすることができる。
図13は、第三実施形態に係る日回し車の分解斜視図である。
図13に示すように、日回し車30は、日回し歯車31と、日回し爪36と、弾性部41と、を備えている。
日回し歯車31は、筒車16からの回転力が伝達されて第一軸C1を中心に回転可能に設けられている。日回し歯車31は、第一軸C1を中心としてCW方向に、一定速度で一日に一回転する。
日回し歯車31には、周方向に沿って延びる長孔状の凹部33が設けられている。凹部33は、第一軸C1を中心として所定の曲率を有する湾曲部33aと、湾曲部33aよりも日回し歯車31の回転方向の上流側(本実施形態においてはCCW側)において、径方向の内側に向かって延びる爪誘導部33bと、を備えている。
本実施形態では、日回し爪36と弾性部41とが一体形成されている。
その他の構成は第一実施形態と同様である。
第三実施形態に係る日回し車30を備えたカレンダ機構の作用について説明する。
図14から図17は、第三実施形態に係る日回し車周辺を示す部分拡大平面図であり、図14から図17の順に時系列で並んでいる。
図14に示すように、日回し爪36の先端部38は、例えば日付表示を変更する動作が開始する6時間前(すなわち18時00分頃)に達すると、規制部45に当接して係合する。これにより、日回し爪36の先端部38は、日回し歯車31の周方向へ移動することが規制される。
日回し爪36の凸部32は、日回し歯車31の凹部33内を摺接しながら移動する。具体的には、日回し爪36の凸部32は、日回し歯車31と日回し爪36とが相対回動すると、凹部33の形状に設けられた湾曲部33aに沿って移動する。湾曲部33aが第一軸C1を中心にした円弧形状に形成されているため、日回し爪36の位置は略一定に保たれる。
次いで、日回し爪36は、先端部38における規制部45との係合状態が解除されて規制部45から離脱する。日回し爪36は、弾性部41に蓄積された弾性力が開放され、先端部38が付勢されて、日車20の歯部22に接触する。
その後、弾性部41および日回し爪36が開放されて、日回し歯車31とともに回転する。
以降、第三実施形態のカレンダ機構50は、上述の動作を繰り返す。
また、凹部33は、第一軸C1を中心として所定の曲率を有する湾曲部33aと、湾曲部33aよりも日回し歯車31の回転方向の上流側において、径方向の内側に向かって延びる爪誘導部33bと、を備えているので、日回し歯車31が回転して日回し爪36の凸部32が爪誘導部33bに案内されることで、径方向の内側に向かって日回し爪36を移動させることができる。これにより、日回し爪36は、規制部45から離脱して弾性力を開放させるとともに、日車20の歯部22に接触することができるので、瞬時に日車20を回転させて日を送ることができる。
また、日回し爪36は、凸部32が周方向に沿って延びる凹部33に入り込むことにより日回し歯車31に取り付けられているので、日回し爪36が規制部45に係合した状態で外部から衝撃が加わった場合であっても、日回し爪36の径方向への移動が規制される。したがって、耐衝撃性に優れた日回し車30とすることができる。
Claims (10)
- 所定の周期で回転する歯車からの回転力が伝達され、第一軸を中心に回転する日回し歯車と、
日車の歯部と、前記日回し歯車の周方向への移動を規制する規制部とに対して係脱可能に設けられ、前記日回し歯車の径方向に移動可能な日回し爪と、
前記日回し爪を弾性支持する弾性部と、
を備え、
前記日回し爪は、前記日回し歯車が回転することにより、前記規制部と係合して前記弾性部に弾性力を蓄積させた後、前記径方向に移動して前記規制部から離脱し、前記弾性力を開放させるとともに、前記日車の歯部に接触することを特徴とする日回し車。 - 請求項1に記載の日回し車であって、
前記日回し歯車および前記日回し爪の一方には、凸部が設けられ、
前記日回し歯車および前記日回し爪の他方には、凹部が設けられ、
前記日回し爪は、前記凸部が前記凹部に入り込むことで、前記日回し歯車に対して移動可能に取り付けられ、
前記弾性部は、前記日回し歯車の周方向に沿うように延び、一端部が前記日回し歯車に接続され、他端部が前記日回し爪に接続されていることを特徴とする日回し車。 - 請求項1または2に記載の日回し車であって、
前記日回し爪は、前記日回し歯車に対して前記第一軸と平行な第二軸周りに回転可能に取り付けられていることを特徴とする日回し車。 - 請求項2に記載の日回し車であって、
前記日回し歯車には、
前記凸部と、
前記日回し爪の基端部と摺接して前記日回し爪の前記径方向への移動を規制するとと もに、前記日回し歯車が所定角度回転したときに、前記基端部との摺接を解除して、前 記日回し爪の前記径方向への移動を可能とする摺接部と、
が設けられ、
前記日回し爪には、前記基端部において前記周方向に沿って延びる前記凹部が設けられていることを特徴とする日回し車。 - 請求項2に記載の日回し車であって、
前記日回し爪には、前記凸部が設けられ、
前記日回し歯車には、前記周方向に沿って延びる前記凹部が設けられ、
前記凹部は、前記第一軸を中心として所定の曲率を有する湾曲部と、前記湾曲部よりも前記日回し歯車の回転方向の上流側において、前記径方向に延びる爪誘導部と、を備えたことを特徴とする日回し車。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の日回し車であって、
前記日回し爪と前記弾性部とは、一体形成されたことを特徴とする日回し車。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載の日回し車と、前記日車と、前記規制部と、前記日車の歯部に対して係脱可能な日ジャンパと、を備えていることを特徴とするカレンダ機構。
- 請求項7に記載のカレンダ機構であって、
前記規制部は、前記日ジャンパに設けられていることを特徴とするカレンダ機構。 - 請求項7または8に記載のカレンダ機構を備えたことを特徴とするムーブメント。
- 請求項9に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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