上記従来の技術においては、蓄電素子内部の劣化状態を考慮せずに、蓄電素子の状態を推定しているため、推定精度が低いという問題がある。
すなわち、蓄電素子の使用条件が異なれば、蓄電素子内部の劣化状態も異なったものとなるが、上記従来の技術においては、蓄電素子内部の劣化状態を考慮しておらず、蓄電素子内部の劣化状態の連続性が担保されていないため、推定精度が低くなっている。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる蓄電素子状態推定装置及び蓄電素子状態推定方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子状態推定装置は、所定時点での蓄電素子の状態を推定する蓄電素子状態推定装置であって、前記所定時点までの前記蓄電素子の充放電履歴を取得する履歴取得部と、前記蓄電素子が非通電状態(open-circuit state)で経時的に劣化する経時劣化(time dependent deterioration)の劣化度合いを示す情報を経時劣化情報(information about time dependent deterioration)とし、当該経時的な劣化を除いた通電による劣化である通電劣化(working electricity dependent deterioration)の劣化度合いを示す情報を通電劣化情報(information about working electricity dependent deterioration)とし、前記蓄電素子の前記経時劣化の量を示す値を経時劣化値とし、前記蓄電素子の前記通電劣化の量を示す値を通電劣化値とし、前記充放電履歴に応じた前記経時劣化情報と前記通電劣化情報とを用いて、前記所定時点での前記経時劣化値と前記通電劣化値とを推定する劣化値推定部と、前記経時劣化値と前記通電劣化値とを用いて、前記所定時点での前記蓄電素子の状態を推定する状態推定部とを備える。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、充放電履歴に応じた経時劣化情報と通電劣化情報とを用いて、所定時点での蓄電素子の経時劣化値及び通電劣化値を推定することにより、当該所定時点での蓄電素子の状態を推定する。ここで、蓄電素子の劣化は、非通電状態でも時間の経過とともに劣化する経時劣化と、当該経時劣化が起こらなくても通電により劣化する通電劣化とに分けられる。つまり、非通電及び通電状態(closed-circuit state)の期間、通電量、使用温度など蓄電素子の使用条件が異なれば、蓄電素子内部における経時劣化及び通電劣化の劣化状態は異なったものとなるため、経時劣化と通電劣化とを分けて考慮する必要がある。このため、蓄電素子状態推定装置によれば、蓄電素子内部の劣化を経時劣化と通電劣化とに分けて劣化値を推定することにより、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる。
また、さらに、前記経時劣化情報及び前記通電劣化情報を取得する劣化情報取得部を備え、前記履歴取得部は、前記所定時点までの複数の期間のそれぞれに対応した充放電履歴である期間別履歴(history by predetermined term/period)を含む前記充放電履歴を取得し、前記劣化情報取得部は、前記期間別履歴のそれぞれに応じた前記経時劣化情報及び前記通電劣化情報を取得し、前記劣化値推定部は、前記期間別履歴のそれぞれに応じた前記経時劣化情報及び前記通電劣化情報を用いて、前記期間別履歴ごとに経時劣化値及び通電劣化値を算出し、算出した当該経時劣化値及び当該通電劣化値を前記期間別履歴の経過順に積算して、前記所定時点での前記経時劣化値及び前記通電劣化値を算出することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。つまり、蓄電素子内部の劣化状態は、時間の経過とともに変化していくため、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて劣化値を推定することにより、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、期間別履歴ごとに経時劣化値及び通電劣化値を算出して期間別履歴の経過順に積算し、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を算出する。このように、時間の経過順に経時劣化値及び通電劣化値を積算していくことで、蓄電素子内部の劣化状態の連続性を担保することができる。このため、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる。
また、前記履歴取得部は、第一時点から第二時点までの期間別履歴である第一期間別履歴と、前記第二時点から第三時点までの期間別履歴である第二期間別履歴とを含む前記充放電履歴を取得し、前記劣化情報取得部は、前記第一期間別履歴に応じた経時劣化情報である第一経時劣化情報と、前記第二期間別履歴に応じた経時劣化情報である第二経時劣化情報とを取得し、前記劣化値推定部は、前記第一経時劣化情報を用いて、前記第一時点から前記第二時点までの経時劣化値である第一経時劣化値を算出し、前記第一経時劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、前記第二経時劣化情報を用いて、前記第二時点から前記第三時点までの経時劣化値である第二経時劣化値を算出し、前記第一経時劣化値と前記第二経時劣化値とを加算して、前記第一時点から前記第三時点までの経時劣化値を算出することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、第一時点から第二時点までの第一経時劣化値を算出し、第一経時劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二時点から第三時点までの第二経時劣化値を算出し、第一経時劣化値と第二経時劣化値とを加算して、第一時点から第三時点までの経時劣化値を算出する。このように、時間の経過順に経時劣化値を積算していくことで、経時劣化についての連続性を担保することができ、所定時点での経時劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる。
また、前記履歴取得部は、前記蓄電素子に通電が行われた第四時点から第五時点までの期間別履歴である第三期間別履歴と、前記第五時点以降に前記蓄電素子に通電が行われた第六時点から第七時点までの期間別履歴である第四期間別履歴とを含む前記充放電履歴を取得し、前記劣化情報取得部は、前記第三期間別履歴に応じた通電劣化情報である第一通電劣化情報と、前記第四期間別履歴に応じた通電劣化情報である第二通電劣化情報とを取得し、前記劣化値推定部は、前記第一通電劣化情報を用いて、前記第四時点から前記第五時点までの通電劣化値である第一通電劣化値を算出し、前記第一通電劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、前記第二通電劣化情報を用いて、前記第六時点から前記第七時点までの通電劣化値である第二通電劣化値を算出し、前記第一通電劣化値と前記第二通電劣化値とを加算して、前記第四時点から前記第七時点までの通電劣化値を算出することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、蓄電素子に通電が行われた第四時点から第五時点までの第一通電劣化値を算出し、第一通電劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第五時点以降に蓄電素子に通電が行われた第六時点から第七時点までの第二通電劣化値を算出し、第一通電劣化値と第二通電劣化値とを加算して、第四時点から第七時点までの通電劣化値を算出する。このように、通電が行われた期間について通電劣化値を時間の経過順に積算していくことで、通電劣化についての連続性を担保することができ、所定時点での通電劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子の状態の推定精度を向上させることができる。
また、前記履歴取得部は、前記蓄電素子のSOCの複数の時点における平均値である平均SOC及び当該複数の時点における変動量であるSOC変動量と、前記蓄電素子の温度の当該複数の時点における平均値である平均温度とを含む前記充放電履歴を取得し、前記劣化値推定部は、前記充放電履歴に含まれる前記平均SOCと前記SOC変動量と前記平均温度とを用いて、前記経時劣化値と前記通電劣化値とを推定することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、蓄電素子の平均SOC及びSOC変動量と平均温度とを取得し、当該平均SOCとSOC変動量と平均温度とを用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。ここで、経時劣化値と通電劣化値とを推定するために、長期間にわたって蓄電素子のデータを計測し続ける場合、当該データを常時オンラインで転送可能に構成されているような場合を除き、膨大なデータをメモリに蓄積する必要が生じる。この課題に対し、本願発明者らは、蓄電素子の平均SOC及びSOC変動量と平均温度とを用いると、データ量を圧縮しつつ、経時劣化値及び通電劣化値の推定精度を同等に維持することができることを見出した。このため、蓄電素子状態推定装置は、膨大な量のSOC及び温度のデータを用いることなく、当該SOC及び温度の平均値等を用いることで、データ量を圧縮(低減)し、かつ、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
また、前記履歴取得部は、取得した前記充放電履歴を、所定期間ごとの充放電履歴に更新することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、取得した充放電履歴を、所定期間ごとの充放電履歴に更新する。ここで、本願発明者らは、例えば1秒ごとに取得した充放電履歴を、10分間等の所定期間ごとの充放電履歴に更新しても、経時劣化値及び通電劣化値の推定精度を同等に維持することができることを見出した。このため、蓄電素子状態推定装置は、データ量を圧縮(低減)し、かつ、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
また、前記劣化値推定部は、前記充放電履歴を用いて前記経時劣化情報及び前記通電劣化情報を補正し、補正後の前記経時劣化情報及び前記通電劣化情報を用いて前記経時劣化値と前記通電劣化値とを推定することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、充放電履歴を用いて経時劣化情報及び通電劣化情報を補正して、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。ここで、例えば、蓄電素子の使用中に劣化傾向が変化した場合、推定対象の蓄電素子を変更した場合、または組電池を1つの蓄電素子とみなして推定を行う場合などには、経時劣化情報及び通電劣化情報を新たに取得する必要がある。このため、蓄電素子状態推定装置は、経時劣化情報及び通電劣化情報を過去の充放電履歴に応じて補正することで、新たな経時劣化情報及び通電劣化情報を取得することなく、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
また、前記所定時点は、将来の時点であり、前記履歴取得部は、過去の充放電履歴を取得して、当該将来の時点までの充放電履歴を推定することにより、当該将来の時点までの充放電履歴を取得し、前記劣化値推定部は、当該将来の時点までの充放電履歴に応じた前記経時劣化情報と前記通電劣化情報とを用いて、当該将来の時点での前記経時劣化値と前記通電劣化値とを推定し、前記状態推定部は、当該将来の時点での前記経時劣化値と前記通電劣化値とを用いて、当該将来の時点での前記蓄電素子の状態を推定することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、過去の充放電履歴を取得して、将来の時点までの充放電履歴を推定することにより、当該将来の時点での蓄電素子の状態を推定する。これにより、蓄電素子状態推定装置は、将来の時点での蓄電素子の状態を精度良く推定することができる。
また、前記履歴取得部は、前記蓄電素子を有する蓄電装置から前記充放電履歴を受信し、前記状態推定部は、推定した前記蓄電素子の状態を前記蓄電装置へ送信することにしてもよい。
これによれば、蓄電素子状態推定装置は、蓄電素子を有する蓄電装置から充放電履歴を受信し、また、推定した蓄電素子の状態を当該蓄電装置へ送信する。つまり、蓄電装置が有する制御基板などが蓄電素子の状態を推定する場合には、当該制御基板は膨大な演算を行う必要があるが、当該制御基板とは別に蓄電素子状態推定装置を設けることで、当該制御基板が行う演算量を低減することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子状態推定装置及び当該蓄電素子状態推定装置を備える蓄電システムについて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
まず、蓄電システム10の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100を備える蓄電システム10の外観図である。
同図に示すように、蓄電システム10は、複数(同図では5個)の蓄電素子状態推定装置100と、複数(同図では5個)の蓄電素子200と、当該複数の蓄電素子状態推定装置100及び複数の蓄電素子200を収容する収容ケース300とを備えている。つまり、1つの蓄電素子200に対応して、1つの蓄電素子状態推定装置100が配置されている。
蓄電素子状態推定装置100は、それぞれ蓄電素子200の上方に配置され、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する回路を搭載した平板状の回路基板である。具体的には、1つの蓄電素子状態推定装置100は、1つの蓄電素子200に接続されており、当該1つの蓄電素子200から情報を取得して、当該1つの蓄電素子200の所定時点での劣化状態などの状態を推定する。
なお、ここでは、蓄電素子状態推定装置100は、それぞれの蓄電素子200の上方に配置されているが、蓄電素子状態推定装置100はどこに配置されていてもよい。また、蓄電素子状態推定装置100の形状も特に限定されない。
また、蓄電素子状態推定装置100の個数は5個に限定されず、他の複数個数または1個であってもよい。つまり、複数の蓄電素子200に対応して、1つの蓄電素子状態推定装置100が配置されていてもよいし、1つの蓄電素子200に対応して、複数の蓄電素子状態推定装置100が配置されていてもよい。つまり、いくつの蓄電素子200にいくつの蓄電素子状態推定装置100が接続されている構成でもかまわない。この蓄電素子状態推定装置100の詳細な機能構成の説明については、後述する。
蓄電素子200は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。また、同図では5個の矩形状の蓄電素子200が直列に配置されて組電池を構成している。なお、蓄電素子200の個数は5個に限定されず、他の複数個数または1個であってもよい。また蓄電素子200の形状も特に限定されず、円柱形状や長円柱形状などであってもよい。
蓄電素子200は、容器と、当該容器に突設された電極端子(正極端子及び負極端子)とを備えており、当該容器の内方には、電極体と、当該電極体及び電極端子を接続する集電体(正極集電体及び負極集電体)とが配置され、また、電解液などの液体が封入されている。電極体は、正極、負極及びセパレータが巻回されて形成されている。なお、電極体は、巻回型の電極体ではなく、平板状極板を積層した積層型の電極体であってもよい。
正極は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO4、LiMSiO4、LiMBO3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、LiMn2O4やLiMn1.5Ni0.5O4等のスピネル型リチウムマンガン酸化物、LiMO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
負極は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−ケイ素、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12等)、ポリリン酸化合物、あるいは、一般にコンバージョン負極と呼ばれる、Co3O4やFe2P等の、遷移金属と第14族乃至第16族元素との化合物などが挙げられる。
セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、蓄電素子200に用いられるセパレータは、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、蓄電素子200の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。また、容器に封入される電解液(非水電解質)としても、蓄電素子200の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
なお、蓄電素子200は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもかまわない。
次に、蓄電素子状態推定装置100の詳細な機能構成について、説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
蓄電素子状態推定装置100は、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する装置である。ここで、蓄電素子200の状態とは、蓄電素子200の電気的または機械的な状態をいい、例えば、蓄電素子200の劣化度合いを示す劣化状態などが含まれる。
同図に示すように、蓄電素子状態推定装置100は、履歴取得部110、劣化情報取得部120、劣化値推定部130、状態推定部140及び記憶部150を備えている。また、記憶部150は、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する各種データを記憶するためのメモリであり、充放電履歴データ151及び劣化情報データ152が記憶されている。
履歴取得部110は、所定時点までの蓄電素子200の充放電履歴を取得する。具体的には、履歴取得部110は、蓄電素子200に接続され、蓄電素子200から充放電履歴を検出して取得する。つまり、履歴取得部110は、蓄電素子状態推定装置100が載置されている蓄電素子200の電極端子に、リード線などの配線によって電気的に接続されている。そして、履歴取得部110は、所定時点までの期間において、当該配線を介して、蓄電素子200から充放電履歴を取得する。
さらに具体的には、履歴取得部110は、蓄電素子200の運転状態を常に監視しておき、蓄電素子200の運転状態に所定の変化が見られた都度、充放電履歴を取得する。例えば、履歴取得部110は、蓄電素子200の電圧の変化を監視し、電圧の差が現在の電圧の0.1%を超えた場合に、蓄電素子200が充放電を行ったとみなして、充放電履歴を取得する。この場合、例えば、履歴取得部110は、蓄電素子200の電圧の変化が0.1%を超えた都度、充放電履歴を取得していく。つまり、履歴取得部110は、蓄電素子200の電圧の変化が0.1%のサンプリング周期で、充放電履歴を取得する。
なお、充放電履歴の取得のタイミングは上記に限定されず、また、履歴取得部110は、蓄電素子200の使用期間が1秒のサンプリング周期で充放電履歴を取得するなど、どのようなサンプリング周期を用いてもかまわない。
また、充放電履歴とは、蓄電素子200の運転履歴であり、蓄電素子200が充電または放電を行った期間(使用期間)を示す情報、当該使用期間において蓄電素子200が行った充電または放電に関する情報などを含む情報である。
具体的には、蓄電素子200の使用期間を示す情報とは、蓄電素子200が充電または放電を行った時点を示す情報である日付(年月日)及び時刻、または、蓄電素子200が使用された累積使用期間などを含む情報である。
ここで、累積使用期間とは、蓄電素子200の使用期間の累積値であり、具体的には、蓄電素子200の使用開始時点から所定時点までの間の期間を示している。なお、累積使用期間の単位としては、時間(時、分、秒)、日、月、またはサイクル(充放電回数)など期間を表す単位であればどのようなものでもかまわない。
また、蓄電素子200が行った充電または放電に関する情報とは、蓄電素子200が行った充電または放電時の電圧、電流、使用温度及び電池状態などを示す情報であり、履歴取得部110によって蓄電素子200が充電または放電を行ったとみなされた場合に取得される。
ここで、使用温度とは、蓄電素子200の使用温度であり、履歴取得部110は、当該使用温度として、蓄電素子200の容器や電極端子に温度計を設けて蓄電素子200の温度を計測してもよいし、蓄電素子200の周囲の温度を温度計によって計測してもよい。また、履歴取得部110は、当該使用温度として、蓄電素子200が使用されている地域の温度(外気温)を取得することにしてもよい。
また、電池状態とは、充電状態、放電状態、放置状態(充電も放電もしていない状態)など、蓄電素子200がどのような運転状態にあるかを示す情報である。なお、蓄電素子200の電圧または電流を示す情報から、当該電池状態が推認される場合には、当該電池状態を示す情報は不要である。
そして、履歴取得部110は、取得した充放電履歴を、記憶部150に記憶されている充放電履歴データ151に書き込む。
図3Aは、本発明の実施の形態1に係る充放電履歴データ151に書き込まれる充放電履歴の一例を示す図である。
同図に示すように、充放電履歴データ151には、充放電履歴として、所定時点までの蓄電素子200の運転履歴である充放電履歴を示すデータが書き込まれる。つまり、充放電履歴データ151には、「日付」と「時刻」と「使用期間」と「電圧」と「電流」と「SOC」と「温度」と「電池状態」とが対応付けられたデータテーブルが書き込まれる。
ここで、「日付」及び「時刻」には、蓄電素子200が充電または放電を行った時点を示す情報である日付(年月日)及び時刻が記憶され、「使用期間」には、蓄電素子200が使用された累積使用期間を示す値が記憶される。つまり、履歴取得部110は、タイマなどから時間を計測して、当該日付(年月日)、時刻及び累積使用期間を取得し、「日付」、「時刻」及び「使用期間」に書き込む。なお、履歴取得部110は、「日付」及び「時刻」に記憶されている情報を用いて当該累積使用期間を算出し、「使用期間」に書き込むことにしてもよい。
また、「電圧」、「電流」、「温度」及び「電池状態」には、蓄電素子200が行った充電または放電に関する情報として、蓄電素子200が行った充電または放電時の電圧、電流、使用温度及び電池状態を示す情報が記憶される。つまり、履歴取得部110は、蓄電素子200の電圧、電流、使用温度及び電池状態を取得し、「電圧」、「電流」、「温度」及び「電池状態」に書き込む。
また、「SOC」には、蓄電素子200が行った充電または放電時の蓄電素子200のSOC(State Of Charge)を示す情報が記憶される。当該SOCは、履歴取得部110によって算出され、「SOC」に書き込まれる。
つまり、履歴取得部110は、例えば、SOCとOCV(Open Circuit Voltage:開回路電圧)との関係を示すSOC−OCV特性を用いて、蓄電素子200の電圧値からSOCを推定することで、SOCを算出する。また、履歴取得部110は、充放電電流を積算してSOCを推定する電流積算法を用いて、蓄電素子200の電流値からSOCを算出することにしてもよい。
そして、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOCと使用温度と使用期間との関係を用いてパターンデータを生成し、生成したパターンデータを蓄電素子200の充放電履歴として充放電履歴データ151に書き込む。
図3Bは、本発明の実施の形態1に係る履歴取得部110が生成するパターンデータの一例を示す図である。
パターンデータは、蓄電素子200の運転パターンを示すデータである。具体的には、パターンデータは、蓄電素子200のSOCと使用温度と使用期間との関係を示すデータの集まりである。例えばグラフ化した場合には、パターンデータは、同図のように、蓄電素子200のSOCと使用期間との関係を示すグラフ等で示される。
ここで、パターンデータは、所定時点までの期間における蓄電素子200の状態量(同図ではSOC)の変化を示すデータのうち繰り返し行われた変化を示すデータをパターン化することで得られるデータである。つまり、所定時点までの期間において、同図のグラフのような変化が繰り返し行われた場合に、当該グラフのような変化を示すデータがパターンデータとして生成される。
例えば、平日は毎日、当該グラフのような変化で充放電が繰り返されるのであれば、当該グラフで示されるデータが、平日のパターンデータとして生成される。また、同様に、休日についても、パターンデータが生成される。なお、パターンデータの生成には、全く同じ充放電が繰り返される(全く同じグラフの形になる)必要はなく、一定のずれは許容される。このずれ量は、ユーザの設定などにより適宜定められる。
このように、履歴取得部110は、当該所定時点までの期間において、複数のパターンデータを生成する。なお、1つの充放電パターンしかない場合には、履歴取得部110は、1つのパターンデータしか生成しないことにしてもよい。
そして、履歴取得部110は、生成したパターンデータを記憶部150に記憶されている充放電履歴データ151に書き込む。なお、履歴取得部110は、パターンデータを、同図のようなグラフの形で充放電履歴データ151に書き込むことにしてもよいし、当該グラフを生成するためのデータの集まり(データテーブル)の形で充放電履歴データ151に書き込むことにしてもよい。
さらに、履歴取得部110は、パターンデータを生成するために用いた充放電履歴を、充放電履歴データ151から消去してもよい。つまり、当該充放電履歴は、パターンデータによってパターン化されているため、充放電履歴データ151に保存し続けておく必要がなく、充放電履歴データ151から消去することができる。
このようにして、履歴取得部110は、所定時点までの蓄電素子200の状態量の変化を示すデータのうち繰り返し行われた変化を示すデータをパターン化することで得られるパターンデータを充放電履歴として取得する。つまり、履歴取得部110は、充放電履歴データ151に記憶されている充放電履歴を用いて、所定時点までの蓄電素子200の状態量の変化を示すデータのうち繰り返し行われた変化を示すデータをパターン化することで得られるパターンデータを生成し、取得する。
なお、蓄電素子200の状態量とは、蓄電素子200の状態を示す数値であり、例えば、蓄電素子200の電圧や電流、または、蓄電素子200の充放電状態を示す充放電電気量やSOCなどである。なお、本実施の形態では、蓄電素子200の状態量とは、蓄電素子200のSOCである。
以上のように、蓄電素子状態推定装置100は、履歴取得部110が充放電履歴として取得した当該パターンデータを、所定時点での蓄電素子200の状態を推定するために用いる。なお、蓄電素子状態推定装置100は、パターンデータを用いるのではなく、履歴取得部110が取得した図3Aに示されたような充放電履歴を用いて、所定時点での蓄電素子200の状態を推定することにしてもかまわない。
図2に戻り、劣化情報取得部120は、履歴取得部110が取得した充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。具体的には、劣化情報取得部120は、記憶部150に記憶されている劣化情報データ152を参照し、劣化情報データ152に予め書き込まれている劣化情報の中から、当該充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を抽出し、取得する。
ここで、経時劣化情報とは、蓄電素子200が非通電状態で経時的に劣化する経時劣化の劣化度合いを示す情報であり、通電劣化情報とは、当該経時的な劣化を除いた通電による劣化である通電劣化の劣化度合いを示す情報である。本実施の形態では、経時劣化情報は、蓄電素子200の経時劣化の量を示す数式の係数であり、通電劣化情報は、蓄電素子200の通電劣化の量を示す数式の係数である。
つまり、経時劣化情報は、夜間など、蓄電素子200を充放電しない状態で放置していた期間における劣化度合いを示す係数である。また、通電劣化情報は、蓄電素子200を充放電した期間における劣化度合いを示す係数から当該充放電した期間における経時劣化係数を差し引いた値である。つまり、経時劣化情報と通電劣化情報との合計が、蓄電素子200を充放電した期間における劣化度合いを示す係数となる。
なお、「非通電状態」とは、蓄電素子200に通電されていない状態、つまり、蓄電素子200に流れる電流値がゼロとなる状態をいう。ただし、蓄電素子200には、常に微小電流が流れている場合があり、この場合には、電流値がゼロであることのみならず、電流値が一定値以下またはSOC変化量が一定値以下となる場合も、「非通電状態」であるとみなす。
ここで、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOC及び使用温度の少なくとも1つを含む充放電履歴を取得するため、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴における蓄電素子200のSOC及び使用温度の少なくとも1つに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。本実施の形態では、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOC及び使用温度を含む充放電履歴を取得するため、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴における蓄電素子200のSOC及び使用温度に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。
また、履歴取得部110は、所定時点までの複数の期間のそれぞれに対応した充放電履歴である期間別履歴を含む充放電履歴を取得するため、劣化情報取得部120は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。
ここで、劣化情報データ152に予め書き込まれている劣化情報(つまり、劣化情報取得部120が取得する経時劣化情報及び通電劣化情報)について、以下に説明する。
図4A及び図4Bは、本発明の実施の形態1に係る劣化情報データ152に予め書き込まれている劣化情報の一例を示す図である。
蓄電素子200の容量減少率の推移を適切な数式でモデル化する場合、蓄電素子200の劣化モデル式は、変数に少なくとも使用期間tをとるものであるため、f(t)としてモデル化できる。そして、蓄電素子200の劣化速度k(t)は、蓄電素子200の劣化モデル式f(t)を変数tについて微分することで求めることができる。
例えば、劣化モデル式f(t)=a√tの場合、劣化速度k(t)=a/2・t−0.5となり、劣化モデル式f(t)=bt3+ct2+dtの場合、劣化速度k(t)=3bt2+2ct+dとなる。この算出された劣化速度における比例定数及び定数項(a、b、cまたはd)が劣化情報であり、以下では劣化係数と呼ぶ。
この劣化係数についてアレニウスプロットを作成すると、図4Aのように、各SOCについて直線関係が得られるので、ln(a)=−α(103/T)+βにおける定数α(傾き)およびβ(切片)を算出することで、使用温度Tにおける劣化係数aを算出することができる。なお、同図のように単純な比例関係が得られない場合には、算出したいSOCにおける劣化係数は、直近2点間の内挿値により算出することができる。このような蓄電素子200のSOCと使用温度とを変化した場合の劣化係数の変化を示すグラフは、図4Bに示されるような劣化係数(同図では劣化係数a)の使用条件依存性に関するマップとして表現することもできる。これらに基づいて、劣化速度を算出するモデル式を構築することができる。
そして、このようにして、経時劣化情報としての経時劣化係数及び通電劣化情報としての通電劣化係数が事前に求められ、劣化情報データ152に事前に書き込まれている。なお、経時劣化係数及び通電劣化係数を算出するためのデータは、例えば、以下の容量確認試験、サイクル試験及び放置試験により、取得することができる。
容量確認試験においては、充電は、1CA定電流定電圧充電を充電終止条件0.02CA、充電上限電圧4.15Vまで行い、放電は、定電流放電を放電下限電圧2.75Vまで行う。なお、温度は、充電、放電ともに、25℃とする。また、サイクル試験においては、充電は、1CA定電流充電を充電終止条件0.02CA、充電上限電圧4.15Vまで行い、放電は、定電流放電を放電下限電圧2.75Vまで行う。サイクル試験においては、SOC90%からSOC70%までの充放電を繰り返すことや、SOC30%からSOC10%までの充放電を繰り返すこと等によって、種々のSOC範囲における通電劣化係数を算出するためのデータに利用することが、好ましい。なお、温度は、充電、放電ともに、−10℃、0℃、10℃、25℃、45℃、及び55℃において実施する。また、放置試験においては、SOCは、10〜100%を10%刻み、温度は、−10℃、0℃、10℃、25℃、45℃、及び55℃において実施する。
つまり、放置試験及び容量確認試験によって、経時劣化係数を算出するためのデータを取得することができ、サイクル試験及び容量確認試験によって、通電劣化係数を算出するためのデータを取得することができる。なお、通電劣化係数の算出においては、サイクル試験から取得した劣化係数からSOCごとの経時劣化係数の平均値を差し引くことで、定電流通電時の経時劣化の影響を差し引いた劣化係数である通電劣化係数を算出することができる。
ここで、上記のように、通電劣化係数を算出するには、サイクル試験の充電条件が定電流充電であるのが好ましいが、サイクル試験の充電条件が定電流定電圧充電であった場合は、以下の方法により、通電劣化係数を算出する。
この場合、定電圧充電期間の充電電流が減衰している期間を放置試験期間と仮定し、サイクル試験と放置試験の複合耐久試験とみなす。そして、充電後の当該放置試験期間にはSOC100%の経時劣化係数を適用し、放電末の当該放置試験期間にはSOC0%の経時劣化係数を適用し、上記放置試験期間以外の通電時の劣化係数を未知数xと置く。次に、上記条件を充放電パターンとし、そのパターンを試験結果に当てはめて通電時の劣化係数xを最適化することで、定電流通電時のみの見かけの劣化係数を算出する。そして、得られた定電流通電時のみの劣化係数から、各SOCごとの経時劣化係数の平均値を差し引くことで、定電流通電時の経時劣化の影響を差し引いた劣化係数である通電劣化係数を算出することができる。
なお、経時劣化係数及び通電劣化係数は、図4Aや図4Bのようなグラフの形で劣化情報データ152に書き込まれていてもよいし、データテーブルの形で劣化情報データ152に書き込まれていてもよい。
図2に戻り、劣化値推定部130は、充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報から得られる、所定時点での蓄電素子200の経時劣化の量を示す経時劣化値と通電劣化の量を示す通電劣化値とを推定する。つまり、劣化値推定部130は、劣化情報取得部120が取得した経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。具体的には、劣化値推定部130は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、期間別履歴ごとに経時劣化値及び通電劣化値を算出し、算出した当該経時劣化値及び当該通電劣化値を期間別履歴の経過順に積算して、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を算出する。
例えば、履歴取得部110が、第一時点から第二時点までの期間別履歴である第一期間別履歴と、当該第二時点から第三時点までの期間別履歴である第二期間別履歴とを含む充放電履歴を取得している場合を想定する。この場合、劣化情報取得部120は、第一期間別履歴に応じた経時劣化情報である第一経時劣化情報と、第二期間別履歴に応じた経時劣化情報である第二経時劣化情報とを取得する。
そして、劣化値推定部130は、第一経時劣化情報を用いて、第一時点から第二時点までの経時劣化値である第一経時劣化値を算出する。また、劣化値推定部130は、第一経時劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二経時劣化情報を用いて、第二時点から第三時点までの経時劣化値である第二経時劣化値を算出する。そして、劣化値推定部130は、第一経時劣化値と第二経時劣化値とを加算して、第一時点から第三時点までの経時劣化値を算出する。
また、履歴取得部110が、蓄電素子200に通電が行われた第四時点から第五時点までの期間別履歴である第三期間別履歴と、当該第五時点以降に蓄電素子200に通電が行われた第六時点から第七時点までの期間別履歴である第四期間別履歴とを含む充放電履歴を取得している場合を想定する。この場合、劣化情報取得部120は、第三期間別履歴に応じた通電劣化情報である第一通電劣化情報と、第四期間別履歴に応じた通電劣化情報である第二通電劣化情報とを取得する。
そして、劣化値推定部130は、第一通電劣化情報を用いて、第四時点から第五時点までの通電劣化値である第一通電劣化値を算出する。また、劣化値推定部130は、第一通電劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二通電劣化情報を用いて、第六時点から第七時点までの通電劣化値である第二通電劣化値を算出する。そして、劣化値推定部130は、第一通電劣化値と第二通電劣化値とを加算して、第四時点から第七時点までの通電劣化値を算出する。
この劣化値推定部130が所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する処理の詳細については、後述する。なお、本実施の形態では、経時劣化値は、蓄電素子200の経時劣化における劣化量(経時劣化量)であり、通電劣化値は、蓄電素子200の通電劣化における劣化量(通電劣化量)である。
状態推定部140は、劣化値推定部130が推定した経時劣化値と通電劣化値とを用いて、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する。具体的には、状態推定部140は、所定時点での当該経時劣化値と当該通電劣化値とを加算することで、当該所定時点での蓄電素子200の劣化状態を推定する。
なお、上記の所定時点とは、現在または過去の時点のみならず、将来の時点も含む概念である。
つまり、将来の時点での蓄電素子200の状態を推定するには、履歴取得部110は、所定時点を将来の時点とし、過去の充放電履歴を取得して、当該将来の時点までの充放電履歴を推定することにより、当該将来の時点までの蓄電素子200の充放電履歴の予測値を充放電履歴として取得する。なお、履歴取得部110は、将来の時点までの充放電履歴の予測値を、過去の充放電履歴の実績値から算出することにより取得するのではなく、ユーザの入力などから取得してもよい。
そして、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴に応じた当該将来の時点までの経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。そして、劣化値推定部130は、当該将来の時点までの経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、当該将来の時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する。そして、状態推定部140は、当該将来の時点での経時劣化値と通電劣化値とを用いて、当該将来の時点での蓄電素子200の状態を推定する。これにより、状態推定部140は、例えば、蓄電素子200の余寿命を推定することができる。
次に、蓄電素子状態推定装置100が、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する処理について、詳細に説明する。
図5は、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100が所定時点での蓄電素子200の状態を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
まず、同図に示すように、履歴取得部110は、所定時点までの蓄電素子200の充放電履歴を取得する(S102:履歴取得ステップ)。
具体的には、履歴取得部110は、所定時点までの蓄電素子200の状態量の変化を示すデータのうち繰り返し行われた変化を示すデータをパターン化することで得られるパターンデータを充放電履歴として取得する。
つまり、履歴取得部110は、図6に示すようなパターンデータを、当該充放電履歴として取得する。なお、当該パターンデータは、充放電履歴データ151に書き込まれており、履歴取得部110は、充放電履歴データ151から当該パターンデータを取得する。ここで、図6は、本発明の実施の形態1に係る履歴取得部110が取得するパターンデータの一例を示す図である。
なお、図6におけるA点〜F点は、パターンデータにおける状態量(同図ではSOC)の変化点を示している。
次に、劣化情報取得部120は、履歴取得部110が取得した充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する(S104:劣化情報取得ステップ)。この劣化情報取得部120が取得する経時劣化情報及び通電劣化情報について、以下に詳細に説明する。
図7Aは、本発明の実施の形態1に係る劣化情報取得部120が取得する図6のAB間に応じた経時劣化情報を説明する図であり、図7Bは、本発明の実施の形態1に係る劣化情報取得部120が取得する図6のAB間に応じた通電劣化情報を説明する図である。
具体的には、これらの図は、図6に示されたパターンデータにおけるA点からB点までと同様の蓄電素子200の使用を行った場合の、使用期間と容量維持率との関係を示したグラフであり、図7Aは、経時劣化の推移を示し、図7Bは、通電劣化の推移を示している。つまり、SOC45%〜100%の充放電を繰り返し行った場合の蓄電素子200の劣化を経時劣化と通電劣化とに分けた場合に、図7Aは、経時劣化を示し、図7Bは、通電劣化を示している。
劣化情報取得部120は、図6に示されたパターンデータにおけるAB間については、図7Aにおけるグラフに対応した経時劣化情報としての経時劣化係数を取得する。当該AB間においてはSOCの変化に応じて経時劣化係数も変化するため、劣化情報取得部120は、当該AB間における(SOC45%〜100%における)経時劣化係数の平均値を加重平均等によって取得する。なお、劣化情報取得部120は、当該AB間のSOCの平均値(SOC72.5%)における経時劣化係数を取得することにしてもよい。
また、劣化情報取得部120は、当該AB間における通電劣化情報として、図7Bにおけるグラフに対応した通電劣化係数を取得する。つまり、劣化情報取得部120は、蓄電素子200をSOC45%から100%に充電した場合の通電劣化係数を取得する。
例えば、劣化情報取得部120は、経時劣化情報及び通電劣化情報のそれぞれについて、図4A及び図4Bで説明したような劣化係数を算出する数式や、劣化係数を定めるための定数(図4Aの説明ではα、β)等を取得する。具体的には、劣化情報取得部120は、劣化情報データ152に予め書き込まれているデータの中から、充放電履歴に応じた(図7Aまたは図7Bのグラフに対応した)当該数式や定数等を抽出し、取得する。
また、図7Cは、本発明の実施の形態1に係る劣化情報取得部120が取得する図6のBC間に応じた経時劣化情報を説明する図である。具体的には、同図は、蓄電素子200をSOC100%で放置した場合の経時劣化を示している。
劣化情報取得部120は、図6に示されたパターンデータにおけるBC間については、経時劣化情報として、図7Cにおけるグラフに対応した経時劣化係数を取得する。つまり、劣化情報取得部120は、当該BC間のSOCの値(SOC100%)における経時劣化係数を取得する。なお、当該BC間では、充放電は行われていないため、劣化情報取得部120は、経時劣化情報のみを取得し、通電劣化情報は取得しない、または、通電劣化情報(通電劣化係数)を「0」として取得する。
以上のようにして、劣化情報取得部120は、パターンデータにおける各区間において、当該各区間の充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を、順次取得していく。なお、図7A〜図7Cにおけるグラフの縦軸(容量維持率)のスケールは、一例であり、状態を推定する蓄電素子200の劣化度合いに応じて適宜定められる。以下の図9、10等においても同様である。
図5に戻り、劣化値推定部130は、劣化情報取得部120が取得した経時劣化情報及び通電劣化情報から得られる、所定時点での蓄電素子200の経時劣化の量を示す経時劣化値と通電劣化の量を示す通電劣化値とを推定する(S106:劣化値推定ステップ)。
具体的には、劣化値推定部130は、期間別履歴(本実施の形態では、上述のパターンデータにおける各区間の充放電履歴)のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、期間別履歴ごとに経時劣化値及び通電劣化値を算出する。そして、劣化値推定部130は、算出した当該経時劣化値及び当該通電劣化値を期間別履歴の経過順に積算して、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を算出する。
この劣化値推定部130が所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する処理の詳細については、後述する。
そして、状態推定部140は、劣化値推定部130が推定した経時劣化値と通電劣化値とを用いて、所定時点での蓄電素子200の状態を推定する(S108:状態推定ステップ)。
具体的には、状態推定部140は、例えば、所定時点での当該経時劣化値と当該通電劣化値とを加算することで、当該所定時点での蓄電素子200の劣化状態を推定する。
このようにして、蓄電素子状態推定装置100は、現在、過去または将来の時点での蓄電素子200の状態を推定することができる。以上により、蓄電素子状態推定装置100が所定時点での蓄電素子200の状態を推定する処理は、終了する。
次に、劣化値推定部130が所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する処理(図5のS106)について、詳細に説明する。
図8は、本発明の実施の形態1に係る劣化値推定部130が所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
まず、同図に示すように、劣化値推定部130は、初期の期間別履歴の経時劣化値及び通電劣化値を算出する(S202)。つまり、劣化値推定部130は、初期の期間別履歴に応じた経時劣化係数及び通電劣化係数を用いて、当該AB間の期間別履歴の経時劣化値及び通電劣化値を算出する。
本実施の形態では、劣化値推定部130は、図6に示されたパターンデータにおけるAB間の期間別履歴に応じた経時劣化係数及び通電劣化係数を用いて、当該初期の期間別履歴での劣化量である経時劣化量及び通電劣化量を算出する。
次に、劣化値推定部130は、全ての期間別履歴が終了するまで、以下の処理(S206〜S208)を繰り返す(ループ1:S204〜S210)。
まず、劣化値推定部130は、次の期間別履歴の経時劣化量及び通電劣化量を算出する(S206)。つまり、劣化値推定部130は、次の期間別履歴に応じた経時劣化係数及び通電劣化係数を用いて、当該次の期間別履歴の経時劣化量及び通電劣化量を算出する。
例えば、劣化値推定部130は、図6に示されたパターンデータにおけるBC間の期間別履歴に応じた経時劣化係数及び通電劣化係数を用いて、当該BC間の期間別履歴の経時劣化量及び通電劣化量を算出する。
そして、劣化値推定部130は、経時劣化量及び通電劣化量をそれぞれ加算する(S208)。つまり、劣化値推定部130は、初期の期間別履歴の経時劣化量と次の期間別履歴の経時劣化量とを加算し、また、初期の期間別履歴の通電劣化量と次の期間別履歴の通電劣化量とを加算する。
以上のようにして、劣化値推定部130は、期間別履歴ごとに経時劣化量及び通電劣化量を算出し、算出した当該経時劣化量及び当該通電劣化量を期間別履歴の経過順に積算して、所定時点での経時劣化量及び通電劣化量を算出する。
ここで、劣化値推定部130が所定時点での経時劣化量及び通電劣化量を推定する処理について、さらに具体的に説明する。
図9は、本発明の実施の形態1に係る劣化値推定部130が所定時点での経時劣化量を推定する処理を説明する図である。また、図10は、本発明の実施の形態1に係る劣化値推定部130が所定時点での通電劣化量を推定する処理を説明する図である。
まず、劣化値推定部130が経時劣化量を推定する処理においては、図6に示されたパターンデータにおけるA点を第一時点とし、B点を第二時点とし、C点を第三時点とする。この場合、履歴取得部110は、第一時点から第二時点までの期間別履歴である第一期間別履歴(AB間の充放電履歴)と、当該第二時点から第三時点までの期間別履歴である第二期間別履歴(BC間の充放電履歴)とを含む充放電履歴を取得する。
そして、劣化情報取得部120は、第一期間別履歴に応じた経時劣化情報である第一経時劣化情報と、第二期間別履歴に応じた経時劣化情報である第二経時劣化情報とを取得する。
具体的には、劣化情報取得部120は、図9の(a)のグラフに応じた経時劣化係数を第一経時劣化情報として取得し、図9の(b)のグラフに応じた経時劣化係数を第二経時劣化情報として取得する。なお、図9の(a)は、図6に示されたパターンデータのAB間に応じた経時劣化係数を示すグラフであり、図7Aに対応している。また、図9の(b)は、図6に示されたパターンデータのBC間に応じた経時劣化係数を示すグラフであり、図7Cに対応している。
そして、劣化値推定部130は、第一経時劣化情報を用いて、第一時点から第二時点までの経時劣化値である第一経時劣化値を算出する。つまり、劣化値推定部130は、図9の(a)におけるAB間の経時劣化量を第一経時劣化値として算出する。なお、同図では、当該経時劣化量を、蓄電素子200の容量維持率で示している。
そして、劣化値推定部130は、第一経時劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二経時劣化情報を用いて、第二時点から第三時点までの経時劣化値である第二経時劣化値を算出する。つまり、劣化値推定部130は、図9の(b)において、図9の(a)におけるB点での容量維持率の値を開始時点として、BC間の経時劣化量を第二経時劣化値として算出する。なお、同図でも、当該経時劣化量を、蓄電素子200の容量維持率で示している。
そして、劣化値推定部130は、第一経時劣化値と第二経時劣化値とを加算して、第一時点から第三時点まで(A点からC点まで)の経時劣化値(経時劣化量)を算出する。
そして、図9の(c)に示すように、次に、劣化値推定部130は、図6に示されたパターンデータにおけるC点を第二時点、及びD点を第三時点と定義し直して、以上と同様の処理を繰り返すことにより、A点からD点までの経時劣化量を算出する。なお、図9の(c)は、図6に示されたパターンデータのCD間に応じた経時劣化係数を示すグラフである。
このようにして、劣化値推定部130は、期間別履歴ごとに経時劣化量を算出し、算出した当該経時劣化量を期間別履歴の経過順に積算して、所定時点での経時劣化量を算出する。
また、劣化値推定部130が通電劣化値を推定する処理においては、図6に示されたパターンデータにおけるA点を第四時点とし、B点を第五時点とし、C点を第六時点とし、D点を第七時点とする。この場合、履歴取得部110は、蓄電素子200に通電が行われた第四時点から第五時点までの期間別履歴である第三期間別履歴(AB間の充放電履歴)と、当該第五時点以降に蓄電素子200に通電が行われた第六時点から第七時点までの期間別履歴である第四期間別履歴(CD間の充放電履歴)とを含む充放電履歴を取得する。
そして、劣化情報取得部120は、第三期間別履歴に応じた通電劣化情報である第一通電劣化情報と、第四期間別履歴に応じた通電劣化情報である第二通電劣化情報とを取得する。
具体的には、劣化情報取得部120は、図10の(a)のグラフに応じた通電劣化係数を第一通電劣化情報として取得し、図10の(b)のグラフに応じた通電劣化係数を第二通電劣化情報として取得する。なお、図10の(a)は、図6に示されたパターンデータのAB間に応じた通電劣化係数を示すグラフであり、図7Bに対応している。また、図10の(b)は、図6に示されたパターンデータのCD間に応じた通電劣化係数を示すグラフである。
そして、劣化値推定部130は、第一通電劣化情報を用いて、第四時点から第五時点までの通電劣化値である第一通電劣化値を算出する。つまり、劣化値推定部130は、図10の(a)におけるAB間の通電劣化量を第一通電劣化値として算出する。なお、同図では、当該通電劣化量を、蓄電素子200の容量維持率で示している。
そして、劣化値推定部130は、第一通電劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二通電劣化情報を用いて、第六時点から第七時点までの通電劣化値である第二通電劣化値を算出する。つまり、劣化値推定部130は、図10の(b)において、図10の(a)におけるB点での容量維持率の値を、開始時点であるC点での容量維持率として、CD間の通電劣化量を第二通電劣化値として算出する。なお、同図でも、当該通電劣化量を、蓄電素子200の容量維持率で示している。
そして、劣化値推定部130は、第一通電劣化値と第二通電劣化値とを加算して、第四時点から第七時点まで(A点からD点まで)の通電劣化値(通電劣化量)を算出する。
そして、図10の(c)に示すように、次に、劣化値推定部130は、図6に示されたパターンデータにおけるD点を第五時点、E点を第六時点、及びF点を第七時点と定義し直して、以上と同様の処理を繰り返すことにより、A点からF点までの通電劣化量を算出する。なお、図10の(c)は、図6に示されたパターンデータのEF間に応じた通電劣化係数を示すグラフである。
このようにして、劣化値推定部130は、期間別履歴ごとに通電劣化量を算出し、算出した当該通電劣化量を期間別履歴の経過順に積算して、所定時点での通電劣化量を算出する。
例えば、劣化値推定部130は、以下に示す式により、経時劣化量y及び通電劣化量zを算出することができる。ここで、経時劣化係数をastoとしたときの使用期間tにおける蓄電素子200の経時劣化のモデル式をf(t)=asto√tとし、通電劣化係数をacycとしたときの使用期間tにおける蓄電素子200の通電劣化のモデル式をg(t)=acyc√tとする。また、所定時点iでのSOCをSi、通電レートをCi、使用温度をTi、使用期間をti、通電時のΔDOD(放電深度の変化量)をDiとする。
以上により、劣化値推定部130が所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を推定する処理(図5のS106)は、終了する。
次に、蓄電素子状態推定装置100が奏する効果について、説明する。
図11A及び図11Bは、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100と比較例1との短期間経過後の所定時点での蓄電素子200の状態の推定結果を示す図である。具体的には、これらの図は、実施例1(実施例1−1)としての蓄電素子状態推定装置100と、比較例1(比較例1−1)としての上記特許文献1に記載の装置との47日目での推定結果を示す図である。
また、図12A及び図12Bは、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100と比較例1との長期間経過後の所定時点での蓄電素子200の状態の推定結果を示す図である。具体的には、これらの図は、実施例1(実施例1−2)としての蓄電素子状態推定装置100と、比較例1(比較例1−2)としての上記特許文献1に記載の装置との466日目での推定結果を示す図である。
ここで、状態推定の対象とした電池の仕様及び試験条件は全ての実施例及び比較例において共通である。
つまり、電池の仕様としては、正極合剤(正極活物質層)には、正極活物質としてスピネル型リチウムマンガン酸化物、導電助剤としてアセチレンブラック、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデンを使用した。また、負極合剤(負極活物質層)には、負極活物質として難黒鉛化炭素、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデンを使用した。また、電解液には、EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とを、25:55:20の比率で混合し、混合溶液にLiPF6を1mol/L添加した。
電池試験については、電池の基本性能を把握するための容量確認試験を行った後、充放電サイクル試験を行った。容量確認試験については、充電は、充電電流1CA、充電上限電圧4.15V、充電終止条件0.02CAの定電流定電圧充電とし、放電は、放電電流1CA、下限電圧2.75Vの定電流放電とした。温度は25℃とした。放電サイクル試験については、充電は、充電電流1CA、充電上限電圧4.15V、充電終止条件0.02CAの定電流定電圧充電とし、放電は、放電電流1CA、放電下限電圧2.75Vの定電流放電を行った。そして、充放電サイクル試験の期間中、温度を40℃、45℃、40℃、35℃の順番で6時間ごとに変化させる温度サイクルを繰り返した。
比較例1においては、特許文献1(特開2013−89424号公報)に記載の構成を模擬した。つまり、経時劣化については、特許文献1の図5のように、SOCについて10%ごと、温度について5℃ごとの使用条件分類表を作成し、使用履歴(期間)を表中の対応する電池に分類し、積算した。また、通電劣化については、各通電レート、温度5℃刻みで上記の表と同様のものを作成し、使用履歴(期間)を表中の対応する電池に分類し、積算した。また、上記の経時劣化及び通電劣化について、各電池ごとの劣化係数を算出し、各電池に積算された期間の平方根を乗じて劣化量(劣化率)を算出した。そして、次に電池の全ての劣化量(劣化率)を足し合わせて、試験後の劣化量を推定した。
つまり、比較例1は、蓄電素子状態推定装置100のように蓄電素子200内部の劣化を経時劣化と通電劣化とに分けて劣化状態の連続性を担保することを行っていない。
図11A〜図12Bに示すように、短期間経過後及び長期間経過後ともに、実施例1(実施例1−1及び1−2)としての蓄電素子状態推定装置100における容量維持率の実測値の誤差は、比較例1(比較例1−1及び1−2)に比べて小さく、本発明の推定精度は高いことが分かる。
また、図13A〜図13Cは、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100と比較例2との所定時点での蓄電素子200の状態の推定を行う試験条件を示す図である。具体的には、これらの図は、実施例2としての蓄電素子状態推定装置100と、比較例2としての上記特許文献2(特開2014−81238号公報)に記載の装置との推定試験における試験条件を示す図である。
つまり、比較例2は、蓄電素子状態推定装置100のように蓄電素子200内部の劣化を経時劣化と通電劣化とに分けて劣化状態の連続性をとることなく、所定の数式にて劣化状態を算出している。
ここで、図13Aに示した試験条件を使用条件Pとし、図13Bに示した試験条件を使用条件Qとし、図13Cに示した試験条件を使用条件Rとする。例えば、使用条件Pにおいては、使用温度30℃の環境下で、16.4時間、SOC100%で放置した後、0.8時間でSOC20%まで放電し、さらに、6時間放置した後、0.8時間でSOC100%まで充電する。使用条件Q、Rについても記載の趣旨は同様である。
そして、実施例2及び比較例2ともに、使用条件Pから使用条件Rに変更した場合と、使用条件Qから使用条件Rに変更した場合とにおける蓄電素子200の状態を推定する。この推定結果について、以下に説明する。
図14Aは、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100の所定時点での蓄電素子200の状態の推定結果を示す図であり、図14Bは、比較例2としての上記特許文献2に記載の装置の所定時点での蓄電素子200の状態の推定結果を示す図である。また、図14Cは、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100と比較例2との所定時点での蓄電素子200の状態の推定結果を示す図である。
まず、図14A及び図14Bに示すように、実施例2及び比較例2ともに、上記の使用条件Pと使用条件Qとを適用した場合、同様の劣化が起きる。また、図14Bに示すように、比較例2では、使用条件Rに変更した後も、使用条件Pから変更した場合と使用条件Qから変更した場合とで、同様の劣化の変化を示している。
これに対し、図14Aに示すように、実施例2では、使用条件Rに変更した後は、使用条件Pから変更した場合と使用条件Qから変更した場合とでは、異なる劣化の変化を示し、実測値に近付いている。また、図14Cに示すように、実施例2における容量維持率の実測値の誤差は、比較例2に比べて小さく、本発明の推定精度は高い結果となっている。
これらのように、実施例1、2としての蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200内部の劣化を経時劣化と通電劣化とに分け、蓄電素子200内部の劣化状態の連続性を担保しているため、蓄電素子200の劣化状態を精度良く推定することができている。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子状態推定装置100によれば、充放電履歴に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、所定時点での蓄電素子200の経時劣化値及び通電劣化値を推定することにより、当該所定時点での蓄電素子200の状態を推定する。ここで、蓄電素子200の劣化は、非通電状態でも時間の経過とともに劣化する経時劣化と、当該経時劣化が起こらなくても通電により劣化する通電劣化とに分けられる。つまり、非通電及び通電状態の期間、通電量、使用温度など蓄電素子200の使用条件が異なれば、蓄電素子200内部における経時劣化及び通電劣化の劣化状態は異なったものとなるため、経時劣化と通電劣化とを分けて考慮する必要がある。このため、蓄電素子状態推定装置100によれば、蓄電素子200内部の劣化を経時劣化と通電劣化とに分けて劣化値を推定することにより、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200のSOC及び使用温度の少なくとも1つに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。つまり、蓄電素子200内部の劣化状態は、蓄電素子200のSOCまたは使用温度に大きく依存するため、当該SOCまたは使用温度に応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて劣化値を推定することにより、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。つまり、蓄電素子200内部の劣化状態は、時間の経過とともに変化していくため、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて劣化値を推定することにより、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、期間別履歴のそれぞれに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、期間別履歴ごとに経時劣化値及び通電劣化値を算出して期間別履歴の経過順に積算し、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を算出する。このように、時間の経過順に経時劣化値及び通電劣化値を積算していくことで、蓄電素子200内部の劣化状態の連続性を担保することができる。このため、所定時点での経時劣化値及び通電劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、第一時点から第二時点までの第一経時劣化値を算出し、第一経時劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第二時点から第三時点までの第二経時劣化値を算出し、第一経時劣化値と第二経時劣化値とを加算して、第一時点から第三時点までの経時劣化値を算出する。このように、時間の経過順に経時劣化値を積算していくことで、経時劣化についての連続性を担保することができ、所定時点での経時劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200に通電が行われた第四時点から第五時点までの第一通電劣化値を算出し、第一通電劣化値の劣化が行われた状態を開始時点として、第五時点以降に蓄電素子200に通電が行われた第六時点から第七時点までの第二通電劣化値を算出し、第一通電劣化値と第二通電劣化値とを加算して、第四時点から第七時点までの通電劣化値を算出する。このように、通電が行われた期間について通電劣化値を時間の経過順に積算していくことで、通電劣化についての連続性を担保することができ、所定時点での通電劣化値を精度良く算出することができるため、蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、所定時点を将来の時点として、当該将来の時点での蓄電素子200の状態を推定することで、当該将来の時点での蓄電素子200の状態の推定精度を向上させることができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200の状態量の変化がパターン化されたパターンデータを充放電履歴として取得する。これにより、蓄電素子状態推定装置100は、充放電履歴の情報量を低減することができ、蓄電素子200の状態を推定する処理を簡略化することができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、所定時点での蓄電素子200の劣化状態の推定精度を向上させることができる。
(実施の形態1の変形例1)
次に、上記実施の形態1の変形例1について、説明する。上記実施の形態1では、履歴取得部110は、例えば1秒のサンプリング周期で蓄電素子200の充放電履歴を取得し、取得した当該充放電履歴を充放電履歴データ151に書き込んでいくこととした。この場合、長期間にわたって蓄電素子200の充放電履歴を取得し続けると、充放電履歴データ151には、膨大な量の充放電履歴が書き込まれることとなる。
これに対し、本変形例では、履歴取得部110は、取得した充放電履歴を、所定期間(例えば10分間)ごとの充放電履歴に更新することで、更新後の充放電履歴を取得する。そして、履歴取得部110は、取得した更新後の充放電履歴を、記憶部150に記憶されている充放電履歴データ151に書き込む。以下、本変形例について、詳細に説明する。
図15A〜図15C及び図16は、本発明の実施の形態1の変形例1に係る履歴取得部110が取得する充放電履歴を説明する図である。なお、本変形例は、以下で説明する部分以外は上記実施の形態1と同様の機能を有し、本変形例における全体的な構成は、上記実施の形態1における図2と同様の構成を有するため、図2に対応するブロック図及び各部の詳細な説明については省略する。
まず、図15Aに示すように、履歴取得部110は、例えば1秒のサンプリング周期で所定期間(例えば10分間)における蓄電素子200の電流及び電圧等の充放電履歴を取得し、取得した当該充放電履歴から、1秒ごとの蓄電素子200のSOCを算出する。そして、履歴取得部110は、算出した所定期間における蓄電素子200のSOCを、充放電履歴データ151に書き込む。
そして、図15Bに示すように、履歴取得部110は、当該SOCの履歴(時系列データ)から、高周波成分のノイズを除去する。つまり、履歴取得部110は、充放電履歴データ151から蓄電素子200のSOCを読み出して、当該高周波成分のノイズを除去する。
そして、図15Cに示すように、履歴取得部110は、高周波成分のノイズが除去されたSOCの履歴の最大値、最小値、所定期間開始時点でのSOC、及び所定期間終了時点でのSOCの値から、簡易波形を構築する。同図では、所定期間(10分間)での当該SOCの履歴(時系列データ)において、開始時点での値、最大値、最小値、及び終了時点での値を順に繋げることで、当該簡易波形を構築している。
履歴取得部110は、当該簡易波形から、平均SOC及びSOC変動量を算出する。ここで、平均SOCとは、蓄電素子200のSOCの所定期間での複数の時点における平均値であり、SOC変動量とは、当該SOCの当該複数の時点における変動量である。例えば、履歴取得部110は、同図に示すSOCの最大値53%と最小値47%との平均値50%を平均SOCとして算出したり、同図のグラフを積分して求まる平均値を平均SOCとして算出したりする。また、履歴取得部110は、開始時点での値50%から最大値53%までの変動量3%と、最大値53%から最小値47%までの変動量6%と、最小値47%から終了時点での値48%までの変動量1%との合計値10%を、SOC変動量として算出する。
また、履歴取得部110は、蓄電素子200の使用温度についても、同様に、所定期間での当該複数の時点における平均値である平均温度を算出する。つまり、履歴取得部110は、充放電履歴データ151から、所定期間における蓄電素子200の使用温度を読み出して、平均温度を算出する。
そして、履歴取得部110は、算出した平均SOC、SOC変動量及び平均温度を、所定の数字と結びつける。例えば、履歴取得部110は、分解能を次のように設定することで、データ量の低減を図る。
つまり、平均SOCは、0〜100%の間を4%刻みで26通りに分解し、5ビットのデータで表現する。また、SOC変動量は、0〜50%の間は0.5%刻み、50〜100%の間は10%刻みで、106通りに分解し、7ビットのデータで表現する。また、平均温度は、−10℃〜70℃の間を1.25℃刻みで64通りに分解し、6ビットのデータで表現する。これにより、合計18ビットのデータ量となる。
つまり、図16に示すように、履歴取得部110は、平均SOC、SOC変動量及び平均温度を、合計18ビットのデータ量で表現する。したがって、履歴取得部110は、10分間のデータを18ビットのデータ量で表現できるため、10年間のデータを約1.2MBのデータ量で表現できることになる。なお、データ転送先においては、受け取ったデータのそれぞれの記憶領域に記録された数字が、どのような意味を持つかを解読することで、平均SOC、SOC変動量及び平均温度の値を復元することができる。
このようにして、履歴取得部110は、18ビットで表現される平均SOC、SOC変動量及び平均温度のデータを取得し、取得したデータを充放電履歴データ151に書き込む。また、履歴取得部110は、例えば1秒のサンプリング周期で取得した蓄電素子200の充放電履歴を削除する。
これにより、履歴取得部110は、1秒ごとのデータを600秒ごとのデータに更新することができるため、データ量は1/600となる。また、履歴取得部110は、電流及び電圧等の情報を、平均SOC及びSOC変動量等の情報へと変換しているため、電圧及び電流等のままデータを蓄積するよりも、粗い分解能でも精度を保つことができると考えられる。SOCは0〜100%の狭い値をとるため、非常に広い値をとる電圧及び電流等よりも精度を保って変換されると考えられるからである。したがって、データ量は1/600よりも大幅に圧縮できることが考えられる。
以上のように、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOCの複数の時点における平均値である平均SOC及び当該複数の時点における変動量であるSOC変動量と、蓄電素子200の温度の当該複数の時点における平均値である平均温度とを含む充放電履歴を取得する。そして、劣化情報取得部120は、履歴取得部110が取得した充放電履歴に含まれる平均SOCとSOC変動量と平均温度とに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得する。
つまり、上記実施の形態1に示したように、経時劣化情報としての経時劣化係数astoは、蓄電素子200のSOC及び使用温度に依存する係数である。このため、蓄電素子200の平均SOC及び平均温度から、経時劣化係数astoを定めることができる。また、通電劣化情報としての通電劣化係数acycは、蓄電素子200の通電レート及び使用温度に依存する係数である。このため、SOC変動量を通電レートに変換することで、蓄電素子200のSOC変動量及び平均温度から、通電劣化係数acycを定めることができる。例えば、SOC変動量において所定期間10分間で10%変動する場合、1時間で60%変動する計算になるため、通電レートは0.6となる。
そして、劣化値推定部130は、劣化情報取得部120が取得した経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。つまり、劣化値推定部130は、当該充放電履歴に含まれる平均SOCとSOC変動量と平均温度とを用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。
次に、履歴取得部110が充放電履歴を所定期間ごとに圧縮しても、蓄電素子状態推定装置100の推定精度を高く維持できることについて、説明する。
図17A及び図17Bは、本発明の実施の形態1の変形例1に係る履歴取得部110が複数の所定期間において充放電履歴を更新した場合の容量維持率の変化を示す図である。具体的には、図17Aは、履歴取得部110が所定期間を10分、1時間、1日、1ヶ月として充放電履歴を更新した場合の容量維持率の変化を示すグラフである。また、図17Bは、図17Aのグラフにおける値を示す表である。なお、表中の括弧内の数値は、各所定期間における推定結果と実測値との差異を示している。
ここで、これらの図における試験条件は、以下の通りである。つまり、充放電パターンとしては、車の燃費測定用の車輛速度と時間パターンとの関係を電池の入出力パターンへと変換し、さらに簡略化したものを使用した。また、温度パターンとしては、当該車が配置されている地域での各月の平均気温、平均最高気温及び平均最低気温から作成した温度パターンを月ごとに適用した。
これらの図に示すように、充放電履歴を1日ごとに圧縮して更新した場合には、推定精度は低い結果となったが、充放電履歴を10分または1時間ごとに圧縮して更新した場合には、推定精度が高い結果となった。このため、本試験においては、充放電履歴を圧縮する所定期間を1日以内に設定するのが好ましく、1時間以内に設定するのがさらに好ましいことが分かる。なお、試験条件が異なれば、好ましい所定期間も変化すると考えられるため、推定対象の蓄電素子200について、当該所定期間は適宜決定されればよい。
以上のように、本発明の実施の形態1の変形例1に係る蓄電素子状態推定装置100によれば、蓄電素子200の平均SOC及びSOC変動量と平均温度とを取得し、当該平均SOCとSOC変動量と平均温度とを用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。ここで、経時劣化値と通電劣化値とを推定するために、長期間にわたって蓄電素子200のデータを計測し続ける場合、当該データを常時オンラインで転送可能に構成されているような構成を除き、膨大なデータをメモリに蓄積する必要が生じる。この課題に対し、本願発明者らは、蓄電素子200の平均SOC及びSOC変動量と平均温度とを用いると、データ量を圧縮しつつ、経時劣化値及び通電劣化値の推定精度を同等に維持することができることを見出した。このため、蓄電素子状態推定装置100は、膨大な量のSOC及び温度のデータを用いることなく、当該SOC及び温度の平均値等を用いることで、データ量を圧縮(低減)し、かつ、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
また、蓄電素子状態推定装置100は、取得した充放電履歴を、所定期間ごとの充放電履歴に更新する。ここで、本願発明者らは、例えば1秒ごとに取得した充放電履歴を、10分等の所定期間ごとの充放電履歴に更新しても、経時劣化値及び通電劣化値の推定精度を同等に維持することができることを見出した。このため、蓄電素子状態推定装置100は、データ量を圧縮(低減)し、かつ、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
なお、上記変形例1では、履歴取得部110は、10分などの所定期間ごとの平均SOC、SOC変動量及び平均温度を算出し、充放電履歴を更新することとした。しかし、充放電履歴を更新するための圧縮期間は一定の期間でなくともよく、履歴取得部110は、圧縮期間を変化させて、充放電履歴を更新することにしてもよい。例えば、履歴取得部110は、蓄電素子200の使用開始から初期の段階では圧縮期間を短く設定し、その後、圧縮期間を長く設定し、さらに、劣化が起こりそうな時期からは圧縮期間を再度短く設定することなどが考えられる。
また、上記変形例1では、履歴取得部110は、所定期間における平均SOC、SOC変動量及び平均温度を算出し、充放電履歴を更新することとした。しかし、履歴取得部110は、当該所定期間(例えば、10分または1時間)における電流及び電圧等の平均値を算出して、充放電履歴を更新することにしてもよい。これによっても、データ量を圧縮することができる。
(実施の形態1の変形例2)
次に、上記実施の形態1の変形例2について、説明する。上記実施の形態1では、経時劣化情報及び通電劣化情報は劣化情報データ152に予め書き込まれており、この経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、蓄電素子の状態を推定することとした。これに対し、本変形例では、劣化情報データ152に書き込まれた経時劣化情報及び通電劣化情報を補正し、補正後の経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて蓄電素子の状態を推定する。以下、本変形例について、詳細に説明する。
図18A及び図18Bは、本発明の実施の形態1の変形例2に係る劣化値推定部130が経時劣化情報及び通電劣化情報を補正する処理を説明する図である。なお、本変形例は、以下で説明する部分以外は上記実施の形態1と同様の機能を有し、本変形例における全体的な構成は、上記実施の形態1における図2と同様の構成を有するため、図2に対応するブロック図及び各部の詳細な説明については省略する。
上記実施の形態1の図4Aでの説明において、使用温度Tにおける劣化係数aは、アレニウスプロットの傾きα及び切片βを用いて、ln(a)=−α(103/T)+βによって表すことができることとした。そして、この傾きα及び切片βは、蓄電素子200のSOCに依存するため、図18Aに示すように、傾きα及び切片βのSOC依存性を、例えば、三次関数(y=px3+qx2+rx+s)を用いて近似することができる。この三次関数の各項の4つの係数(p、q、r、s)を、説明変数とする。
つまり、傾きα及び切片βのそれぞれについて4つずつの説明変数が必要となるため、経時劣化情報としての経時劣化係数については、説明変数の個数は8個となる。また、通電劣化情報としての通電劣化係数はSOCには依存しないため、通電劣化係数については、アレニウスプロットの傾き及び切片をそのまま説明変数として利用できる。このため、通電劣化係数については、説明変数の個数は2個となる。これにより、経時劣化係数及び通電劣化係数を表現するために必要な説明変数は、10個となる。このため、劣化値推定部130は、この10変数を最適化することで、経時劣化係数及び通電劣化係数を補正する。
例えば、劣化値推定部130は、以下に示す式で算出される値が最小になるように10変数(v[10])を求めることで、10変数(v[10])を最適化する。ここで、以下の式におけるQ25℃_cycle及びQ45℃_cycleは、25℃及び45℃における容量の推定値(計算値)であり、Patternは、それぞれの場合の実測値(充放電履歴)である。つまり、劣化値推定部130は、劣化係数(経時劣化係数及び通電劣化係数)を算出したい蓄電素子200の25℃及び45℃における推定値と実測値との差が最小になるように、v[10]を最適化する。なお、使用温度は25℃及び45℃には限定されない。
なお、上記の式は、厳密には、例えば、以下の式として定義できる。ここで、以下の式におけるQは、残存容量の実測値であり、f関数は、経時劣化を計算する関数であり、g関数は、通電劣化を計算する関数である。また、Nは、残存容量の測定数であり、Miは、i番目の測定値に対する使用履歴情報数である。また、Sjは、j番目の使用履歴情報(SOC)であり、Tjは、j番目の使用履歴情報(温度)であり、tjは、j番目の使用履歴情報(時間)である。また、Djは、j番目の使用履歴情報(DOD)であり、Cjは、j番目の使用履歴情報(通電レート)である。また、vは、劣化係数を近似的にパラメータ化したものである。つまり、劣化値推定部130は、以下の式で算出される値が最小になるように10変数v1〜v10(上記のv[10])を求めることで、当該10変数v1〜v10を最適化する。なお、劣化値推定部130が用いる式は、以下の式には限定されず、様々な式を用いることができる。
ここで、劣化値推定部130は、補正前後の劣化係数に関連性がある場合には、補正前のデータも考慮に入れて、当該10変数を最適化することができる。補正前後の劣化係数に関連性がある場合とは、使用する電池の正負極材料及び電池設計等から、補正前後で同様の劣化特性となることが想定される場合などである。例えば、劣化値推定部130は、計算結果が、図18Bに示すような補正前の劣化係数のSOC依存性のプロファイルと同様の形状をとるように制約条件を設定して、当該10変数を最適化する。または、劣化値推定部130は、補正前後の電池が充放電の初期段階で同様の充放電履歴を有する場合には、当該初期段階での充放電履歴を考慮に入れることにしてもよい。
このように、劣化値推定部130は、充放電履歴や蓄電素子200の劣化特性などから、最適な説明変数を算出し、当該最適な説明変数を用いて、劣化係数を補正する。つまり、劣化値推定部130は、充放電履歴を用いて経時劣化情報及び通電劣化情報を補正する。そして、劣化値推定部130は、補正後の経時劣化情報及び通電劣化情報を用いて、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。この劣化値推定部130が経時劣化情報及び通電劣化情報を補正して経時劣化値と通電劣化値とを推定する処理について、さらに具体的に説明する。
図19A〜図19Cは、本発明の実施の形態1の変形例2に係る劣化値推定部130が経時劣化情報及び通電劣化情報を補正する前の状態を示す図である。また、図20A〜図20Cは、本発明の実施の形態1の変形例2に係る劣化値推定部130が経時劣化情報及び通電劣化情報を補正した後の状態を示す図である。
まず、図19Aに示すように、実測値と推定値(計算値)とで差が生じている場合、劣化係数(経時劣化情報及び通電劣化情報)の補正を行う必要がある。なお、補正前の状態においては、劣化係数aは、図19Bに示すような値をとり、劣化係数aにおけるアレニウスプロットの傾きα及び切片βは、図19Cに示すような値をとっていることとする。
これに対して、劣化値推定部130は、傾きα及び切片βを三次関数で近似し、かつ、図19Bに示したグラフと同様の形をとるようにして、説明変数の最適化を行う。これにより、劣化値推定部130は、図20Cに示すような補正後の傾きα及び切片βを算出し、図20Bに示すような補正後の劣化係数aを算出する。この結果、図20Aに示すように、補正後の劣化係数aを用いた推定値(計算値)と実測値とは、非常によく一致することとなり、精度良く推定が行われたことが分かる。このように、劣化値推定部130が劣化係数(経時劣化情報及び通電劣化情報)を補正することで、一切の放置試験データを用いることなく、蓄電素子200の劣化特性を同定することができる。
なお、劣化値推定部130が当該劣化係数を補正する頻度は、特に限定されないが、例えば、3年に1回など、蓄電素子200の点検周期に合わせて補正を行うことが考えられる。
以上のように、本発明の実施の形態1の変形例2に係る蓄電素子状態推定装置100によれば、充放電履歴を用いて経時劣化情報及び通電劣化情報を補正して、経時劣化値と通電劣化値とを推定する。ここで、例えば、蓄電素子の使用中に劣化傾向が変化した場合、推定対象の蓄電素子を変更した場合、または複数の蓄電素子からなる組電池を1つの蓄電素子とみなして推定を行う場合などには、経時劣化情報及び通電劣化情報を新たに取得する必要がある。このため、蓄電素子状態推定装置100は、経時劣化情報及び通電劣化情報を過去の充放電履歴に応じて補正することで、新たな経時劣化情報及び通電劣化情報を取得することなく、経時劣化値と通電劣化値とを精度良く推定することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、説明する。上記実施の形態1では、1つの蓄電素子200(または組電池に含まれる複数の蓄電素子200)に対して1つの蓄電素子状態推定装置100が配置されていることとした。これに対し、本実施の形態では、複数の組電池に対して1つの蓄電素子状態推定装置100が配置される。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
図21は、本発明の実施の形態2に係る蓄電素子状態推定装置100を備える蓄電システム11の機能的な構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態が有する蓄電素子状態推定装置100は、上記実施の形態1が有する蓄電素子状態推定装置100と同様の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
同図に示すように、蓄電システム11は、複数の蓄電モジュール400と、当該複数の蓄電モジュール400を管理する管理基板500とを備えている。
蓄電モジュール400は、複数の蓄電素子200と計測基板410とを有するいわゆる組電池である。蓄電素子200は、上記実施の形態1が有する蓄電素子200と同様の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
計測基板410は、蓄電モジュール400内の複数の蓄電素子200のそれぞれの電圧を計測したり、当該複数の蓄電素子200のうちの少なくとも1つの蓄電素子200の温度を計測したりする。また、計測基板410は、他の計測基板410や管理基板500と通信を行い、情報をやりとりする。
管理基板500は、主回路の電流を計測したり、データをメモリに記憶させたりメモリから読み出したり、計測基板410や外部機器(図示せず)と通信を行い、情報をやりとりしたりする。ここで、管理基板500は、蓄電素子状態推定装置100を有している。つまり、管理基板500は、蓄電素子状態推定装置100によって、蓄電素子200のSOH(State Of Health、上記実施の形態1では蓄電素子200の容量)を推定することができ、推定した容量の推移をメモリに記憶する。また、管理基板500は、当該容量を用いるなどして、蓄電素子200のSOCを演算(電流積算法及びSOC−OCV換算法の切替による)する機能も有している。
なお、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電システム11内の全ての蓄電素子200のSOHを推定してもよいし、代表的な蓄電素子200のSOHを推定してもよいし、複数の蓄電素子200の平均的なSOHを推定してもよい。また、蓄電素子状態推定装置100は、リアルタイムでSOHを推定してもよいし、所定のタイミングでSOHを推定してもよい。
以上のように、本発明の実施の形態2に係る蓄電システム11によれば、複数の蓄電素子200に対応して1つの蓄電素子状態推定装置100が設けられているため、蓄電システム11の簡略化及びコスト低減を図ることができている。
(実施の形態2の変形例1)
次に、実施の形態2の変形例1について、説明する。上記実施の形態2では、管理基板500が蓄電素子状態推定装置100を有していることとした。これに対し、本変形例では、蓄電素子状態推定装置100は管理基板とは別に設けられている。以下、本変形例について、詳細に説明する。
図22は、本発明の実施の形態2の変形例1に係る蓄電素子状態推定装置100を備える蓄電システム12の機能的な構成を示すブロック図である。なお、本変形例が有する蓄電素子状態推定装置100は、上記実施の形態1が有する蓄電素子状態推定装置100と同様の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
同図に示すように、蓄電システム12は、複数の蓄電モジュール400と、管理基板501と、蓄電素子状態推定装置100とを備えている。言い換えれば、本変形例における蓄電システム12は、上記実施の形態2の管理基板500に代えて、管理基板501と蓄電素子状態推定装置100とを別体で備えている。つまり、蓄電素子状態推定装置100は、複数の蓄電モジュール400と管理基板501とで構成される蓄電装置の外部に配置され、当該蓄電装置と配線によって接続されている。
このような構成において、管理基板501は、主回路の電流を計測したり、データをメモリに記憶させたり、計測基板410や外部機器(図示せず)と通信を行い、情報をやりとりしたりする。また、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200のSOH(容量)を推定し、推定した容量の推移をメモリに記憶する。また、管理基板501は、蓄電素子状態推定装置100が推定した蓄電素子200の容量を取得するなどして、蓄電素子200のSOCを演算する機能も有している。
以上のように、本発明の実施の形態2の変形例1に係る蓄電システム12によれば、複数の蓄電モジュール400と管理基板501とで構成される蓄電装置が有する管理基板501の外部に、蓄電素子状態推定装置100が設けられている。ここで、上記実施の形態2のように、管理基板500が蓄電素子200の状態を推定する場合には、管理基板500は膨大な演算を行う必要があるが、本変形例は、管理基板501とは別に蓄電素子状態推定装置100を設けているため、管理基板501が行う演算量を低減することができている。
(実施の形態2の変形例2)
次に、実施の形態2の変形例2について、説明する。上記実施の形態2の変形例1では、管理基板501と蓄電素子状態推定装置100とは、配線によって有線で接続されていることとした。これに対し、本変形例では、管理基板501と蓄電素子状態推定装置100とは、無線によって、双方向通信が行われる。以下、本変形例について、詳細に説明する。
図23は、本発明の実施の形態2の変形例2に係る蓄電素子状態推定装置100を備える蓄電システム13の機能的な構成を示すブロック図である。なお、本変形例が有する蓄電素子状態推定装置100は、上記実施の形態1が有する蓄電素子状態推定装置100と同様の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
同図に示すように、蓄電システム13は、上記実施の形態2の変形例1と同様に、複数の蓄電モジュール400及び管理基板501からなる蓄電装置と、蓄電素子状態推定装置100とを備えているが、当該蓄電装置と蓄電素子状態推定装置100とは、配線によって接続されていない。つまり、当該蓄電装置と蓄電素子状態推定装置100とは、無線によって双方向通信が行われ、情報がやりとりされる。その他の構成については、上記実施の形態2またはその変形例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
具体的には、蓄電素子状態推定装置100の履歴取得部110は、蓄電素子200を有する蓄電装置から、蓄電素子200の充放電履歴を受信する。また、蓄電素子状態推定装置100の状態推定部140は、蓄電素子200の状態を推定し、推定した蓄電素子200の状態を、当該蓄電装置へ送信する。つまり、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200の充放電履歴を管理基板501から受信し、推定した蓄電素子200の容量を管理基板501へ送信する。
以上のように、本発明の実施の形態2の変形例2に係る蓄電システム13によれば、蓄電素子状態推定装置100が蓄電素子200を有する蓄電装置から充放電履歴を受信し、また、推定した蓄電素子200の状態を当該蓄電装置へ送信する。これにより、上記実施の形態2の変形例1と同様に、管理基板501が行う演算量を低減することができる。
なお、本変形例において、蓄電装置と蓄電素子状態推定装置100とは、無線によって双方向通信を行うこととしたが、蓄電装置と蓄電素子状態推定装置100とは、通信されない構成でもかまわない。つまり、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電装置とは独立して配置され、ユーザによってデータの入出力が行われる構成でもかまわない。
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子状態推定装置100及び蓄電システム10について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOCを含む充放電履歴を取得し、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴におけるSOCに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得することとした。しかし、履歴取得部110は、SOCに代えて、またはSOCとともにDOD(Depth Of Discharge)を含む充放電履歴を取得し、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴におけるDODに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得することにしてもよい。つまり、履歴取得部110は、蓄電素子200のSOC、DOD及び使用温度の少なくとも1つを含む充放電履歴を取得し、劣化情報取得部120は、当該充放電履歴における蓄電素子200のSOC、DOD及び使用温度の少なくとも1つに応じた経時劣化情報及び通電劣化情報を取得することにしてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、履歴取得部110は、蓄電素子200の使用期間を含む充放電履歴を取得することとした。しかし、履歴取得部110は、蓄電素子200が車に搭載されている電池である場合には、蓄電素子200の使用期間に代えて、当該車の走行距離を用いることにしてもよい。つまり、充放電履歴データ151に当該車の走行距離を書き込むようにして、当該走行距離を用いて所定時点での蓄電素子200の状態を推定することにしてもかまわない。
また、上記実施の形態及びその変形例では、履歴取得部110が、蓄電素子200から充放電履歴を検出して取得し、記憶部150に当該充放電履歴を記憶させることで、蓄電素子状態推定装置100は、当該充放電履歴を用いて蓄電素子の状態を推定することとした。しかし、例えば外部の装置が当該充放電履歴を検出してメモリに記憶させている場合には、履歴取得部110は当該メモリから充放電履歴を読み出して取得し、蓄電素子状態推定装置100は、当該充放電履歴を用いて蓄電素子の状態を推定することにしてもよい。このように、外部のメモリから充放電履歴を取得できる場合には、履歴取得部110は蓄電素子200から充放電履歴を検出する必要はない。また、外部のメモリにデータを蓄積できる場合には、蓄電素子状態推定装置100は、記憶部150を備えておらず、記憶部150の代わりに当該外部のメモリを使用することにしてもかまわない。
また、上記実施の形態及びその変形例では、劣化情報(経時劣化情報及び通電劣化情報)は、劣化情報データ152に事前に書き込まれており、劣化情報取得部120は、劣化情報データ152から当該劣化情報を取得することとした。しかし、劣化情報取得部120は、所定の数式に従って当該劣化情報を算出することにより、当該劣化情報を取得することにしてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、劣化情報取得部120は、劣化情報(経時劣化情報及び通電劣化情報)として、劣化係数(経時劣化係数及び通電劣化係数)を取得することとした。しかし、劣化係数でなくとも劣化の度合いを示す情報であればよく、劣化情報取得部120は、例えば、図7A〜図7Cに示されたような劣化の度合いを示すグラフを表現する数式、または当該グラフそのものを当該劣化情報として取得することにしてもよい。
また、劣化値推定部130は、劣化値(経時劣化値及び通電劣化値)として、蓄電素子200の劣化量(経時劣化量及び通電劣化量)を推定(算出)することとした。しかし、劣化量でなくとも劣化の量を示す値であればよく、劣化値推定部130は、経時劣化及び通電劣化についての容量減少率や容量維持率などを推定(算出)することにしてもよい。
また、劣化情報取得部120は、経時的な劣化を除いた通電による劣化の度合いを示す通電劣化情報を取得し、劣化値推定部130は、当該通電劣化情報を用いて通電劣化値を推定することとした。しかし、劣化情報取得部120は、当該通電劣化情報に代えて、経時的な劣化を含む通電による劣化の度合いを示す情報(つまり、経時劣化情報を含んだ通電劣化情報)を取得し、劣化値推定部130は、当該情報を用いて通電劣化値を推定することにしてもよい。この場合、当該情報(経時劣化情報を含んだ通電劣化情報)を得たときの温度及びSOCから、差し引くべき経時劣化情報が一義的に決まるため、劣化値推定部130は、当該情報から経時劣化情報を差し引くことで通電劣化情報を算出し、通電劣化値を推定することができる。
また、状態推定部140は、履歴取得部110が取得したデータを参照し、電圧の異常な変化や異常な大電流が流れたことなどを検知して、安全上のアラームを発するような安全状態を推定する機能を有していてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200の経時劣化値及び通電劣化値として、蓄電素子200の容量維持率(経時劣化量及び通電劣化量)を推定することとした。しかし、蓄電素子状態推定装置100は、蓄電素子200の経時劣化値と通電劣化値として、蓄電素子200の抵抗値を推定することにしてもよい。この場合、例えば、上記実施の形態及びその変形例における「経時劣化量」及び「通電劣化量」は、蓄電素子200の経時劣化及び通電劣化における抵抗値の増加量とし、「容量維持率」は「抵抗増加率」と読み替えることで、同様の方法により、蓄電素子200の抵抗値を推定することができる。
また、本発明に係る蓄電素子状態推定装置100が備える処理部は、典型的には、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。つまり、例えば図24に示すように、本発明は、履歴取得部110、劣化情報取得部120、劣化値推定部130及び状態推定部140を備える集積回路101として実現される。図24は、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子状態推定装置100を集積回路で実現する構成を示すブロック図である。
なお、集積回路101が備える各処理部は、個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
また、本発明は、このような蓄電素子状態推定装置100として実現することができるだけでなく、蓄電素子状態推定装置100が行う特徴的な処理をステップとする蓄電素子状態推定方法としても実現することができる。
また、本発明は、蓄電素子状態推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータ(プロセッサ)に実行させるプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ(プロセッサ)読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光ディスク、紙テープなどあらゆる媒体として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。例えば、実施の形態1の変形例1に、実施の形態1の変形例2を適用してもよいし、実施の形態2またはその変形例1、2に、実施の形態1の変形例1または2を適用するなどしてもかまわない。