JP6647537B2 - トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法 - Google Patents

トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(以下で、これらをまとめて略してトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートとも呼ぶ)の特に経済的な製造方法であって、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを、Pt触媒とカルボン酸とさらなる助触媒との存在下で、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシランまたはハイドロジェンジアルキルアルコキシシランを用いてヒドロシリル化する方法に関する。
トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートは、架橋剤としての使用が可能なシランである。これら3つのアルコキシシリル基のそれぞれが加水分解後に1つ、2つあるいは3つの化学結合を生じうることから、理論上3つから9つまでの化学結合が可能である。こうした強力な架橋性ゆえ、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートは様々な用途に向けて関心が持たれている。トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートのもう1つの利点は熱安定性が高いことであり、このため高温範囲での使用が可能である。したがって、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを、有利には例えば塗料配合物およびゴム配合物中の架橋剤として、ならびに塗料および接着剤中の定着剤として、様々な産業において使用することができる。さらには架橋密度が高いことから、耐引掻性コーティングおよびバリア層の生成が可能である。
特許第4266400号公報(JP4266400B)には、芳香族ビニル化合物のヒドロシリル化による芳香族シラン化合物の製造が記載されている。触媒として、カルボン酸の存在下での白金錯体が使用される。
米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)は、白金触媒とカルボン酸との存在下でのトリアルコキシハイドロジェンシランを用いた炭素二重結合のヒドロシリル化によるシラン化合物の製造方法に関する。確かに、白金触媒をカルボン酸と併用することでヒドロシリル化において約80%の転化率を達成することが可能ではある。しかし、このようにして得られた粗生成物は、依然としてかなりの割合の不純物あるいは副生成物を含んでいる。
欧州特許出願公開第0587462号明細書(EP 0587462)には、不飽和ポリオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと酸と白金化合物と添加剤とからの組成物が記載されており、これらの成分が水中で乳化され、そして剥離層処理に使用される。加熱時にヒドロシリル化により架橋が生じる。
欧州特許出願公開第0856517号明細書(EP 0856517)には、元素周期律表の第8副族から第10副族までの金属化合物の存在下での不飽和化合物のヒドロシリル化方法が開示されている。このヒドロシリル化は、促進剤の存在下で行われる。
欧州特許出願公開第1869058号明細書(EP 1869058)あるいは国際公開第2006/113182号(WO 2006/113182)には、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法が提示されている。この製造は、触媒量のカルボン酸塩の存在下でのシリルオルガノカルバメートの分解を経て進行する。
欧州特許出願公開第0583581号明細書(EP 0583581)は、アミノシランからのシリルオルガノカルバメートの製造を教示している。このシリルオルガノカルバメートは、その後「分解触媒」の存在下でシリルイソシアヌレートへと転化される。
欧州特許出願公開第1885731号明細書(EP 1885731)には、イソシアナトシランおよびシリルイソシアヌレートの製造方法が開示されている。これらの合成は、シリルオルガノカルバメートにより開始する。接触分解によりイソシアナトシランが遊離され、その際、イソシアナトシランからシリルイソシアヌレートへの転化が三量体化反応帯域において行われる。
カナダ国特許出願公開第943544号明細書(CA 943544)には、溶剤の存在下でのハロアルキルシランと金属シアネートとからのシリルオルガノイソシアヌレートの製造が記載されている。反応後に、溶剤および生じる塩の分離除去が行われる。
米国特許第3,607,901号明細書(US 3,607,901)は、クロロアルキルトリアルコキシシランと金属シアネートとから出発するイソシアナトシランおよびイソシアヌレートシランの製造に関する。
米国特許第3,517,001号明細書(US 3,517,001)は特に、ヘキサクロロ白金酸の存在下でトリメトキシシランを用いて1,3,5−トリス(アリルイソシアヌレート)をヒドロシリル化することによる1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造を教示している。収率は40%であると報告されている。
米国特許第3,821,218号明細書(US 3,821,218)には、溶剤としてのDMF中でのクロロプロピルトリメトキシシランとシアン酸カリウムとから出発する1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造が記載されている。
米国特許出願公開第2013/0158281号明細書(US 2013/0158281)には、シリルヒドリドを用いた不飽和化合物のヒドロシリル化方法が開示されている。触媒としては、Fe錯体、Ni錯体、Mn錯体またはCo錯体が使用される。
中国特許第101805366号明細書(CN 101805366)には、イソシアナトプロピルトリメトキシシランの環縮合による1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造が記載されている。
チェコ国特許第195549号明細書(CS 195549)は、ハイドロジェンシランを用いたビニルシクロヘキサンのヒドロシリル化に関する。その際、実施例4においては、ビニルシクロヘキサンが、白金酸とトリフルオロ酢酸との存在下でトリエトキシシランを用いてヒドロシリル化されている。
特許第4266400号公報 米国特許第5,986,124号明細書 欧州特許出願公開第0587462号明細書 欧州特許出願公開第0856517号明細書 欧州特許出願公開第1869058号明細書 国際公開第2006/113182号 欧州特許出願公開第0583581号明細書 欧州特許出願公開第1885731号明細書 カナダ国特許出願公開第943544号明細書 米国特許第3,607,901号明細書 米国特許第3,517,001号明細書 米国特許第3,821,218号明細書 米国特許出願公開第2013/0158281号明細書 中国特許第101805366号明細書 チェコ国特許第195549号明細書
本発明の課題は、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法、すなわちトリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの系列からのトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法であって、ここで、アルキルは次のものに限定されるわけではないが特に、例えばメチルまたはエチルを表し、アルコキシはメトキシまたはエトキシを表すものとし、Pt触媒をカルボン酸と併用し、そして必要に応じて狙い通りの反応操作、狙い通りの供給原料比率および/またはさらなる添加物によって上述の欠点を最小限に抑える方法を提供することであった。さらに、可能な限り、高価な白金を最小限の濃度に抑え、脂肪族または芳香族の溶剤を別個に添加することなく前述の方法を実施すること、そして目的生成物の収率を高めることも望まれていた。また、目的生成物中に残留するカルボン酸の含分を最小限に抑えることも望まれていた。
驚くべきことに、ヒドロシリル化を行う際に、ハイドロジェンアルコキシシランとPt触媒とを一緒に装入し、この装入混合物を加熱し、次いで混合下にこの装入物に、オレフィン成分としての1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンをカルボン酸と一緒に所定の期間にわたって計量供給して後反応させた場合に、目的生成物、すなわちトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートのはるかにより良好な収率が達成されることが判明し、その際好ましくは、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン/カルボン酸混合物に所定量のさらなる助触媒を少なくとも1種のアルコールの形態で、好ましくはC〜C10−アルコールの形態で、次のものに限定されるわけではないが例えばベンジルアルコール、ジグリコールモノメチルエーテル、t−ブタノール、エタノールおよび/またはメタノールの系列からのアルコールの形態で添加し、そのようにしてヒドロシリル化の転化率および選択率、ひいては収率が明らかに向上することが判明した。
その際好ましくは、均一系白金(0)錯体触媒、特に「Karstedt触媒」、Speier触媒、ヘキサクロロ白金(IV)酸、または担持されたPt触媒、すなわち不均一系Pt触媒、例えば活性炭上のPtを用いて本方法を行うことが特に有利であることが判明した。さらに、「Karstedt触媒」を白金(0)錯体触媒溶液として使用することが好ましく、特にキシレンまたはトルエンに溶解した白金(0)錯体触媒溶液として使用することが好ましい。さらに、本方法様式によってPt触媒の含分あるいはPt損失量を低減させることができ、そのようにして高価なPtを節約することができる。さらに、安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、プロピオン酸および/または酢酸の系列からのカルボン酸を使用することが本方法において特に有利であることが明らかとなった。
本方法によって得られた生成物混合物を、蒸留によって、この蒸留を必要に応じて減圧下で行うことによって適切に後処理して、所望の(目的)生成物が得られる。
不均一触媒を使用する場合には、この触媒を、蒸留の前に例えばろ過または遠心分離によって生成物混合物から適切に分離することができ、こうして回収されたこのPt触媒を有利にはプロセスに再循環させることができる。
例えば、反応後に、および必要に応じて不均一系触媒を分離除去した後に、蒸留を行って目的生成物を塔底生成物として得る場合、この目的生成物は、蒸留による後処理の際に留出されることなく無色の塔底生成物として生じる。さらに、上記の方法を40〜60℃という比較的低温で早くも経済的に実施することができる。
本方法によれば、本方法において使用されるオレフィン成分の二重結合を有利にも実質的に完全にヒドロシリル化することができるとともに、有利にも副生成物が極めてわずかにしか生じない。
さらに、本方法、すなわち本発明による方法を、有利にも、溶剤あるいは希釈剤として脂肪族または芳香族の炭化水素を別個に添加することなく、また目的生成物中に残留する(助)触媒成分のカルボン酸がわずかな割合のみとなるように、実施することができる。
したがって本発明の対象は、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの系列からのトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートをヒドロシリル化により製造する方法であって、
− ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランの系列からの少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してH−シランと呼ぶ]とPt触媒との混合物を装入し、
− 前記混合物を40〜170℃の温度に加熱し、
− 次いで混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のカルボン酸と助触媒としての少なくとも1種のアルコールとを、好ましくは1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種のアルコールとを含む混合物を、添加あるいは計量供給し、
− 反応させ、次いでそのようにして得られた生成物混合物を後処理する
ことによる前記方法である。
本発明の方法において、H−シラン対オレフィン成分は、有利には1:0.1〜0.5のモル比で使用され、好ましくは1:0.2〜0.4のモル比で使用され、特にここで、可能であってかつ上記記載あるいは本記載から当業者にとって自明であるかあるいは想定されうる中間値のうちのいくつかのみを代表的なものとして例示的に挙げると、1:0.13、1:0.15、1:0.18、1:0.23、1:0.25、1:0.28、1:0.3、1:0.33、1:0.35、1:0.38が挙げられる。
その際、H−シランとしては好ましくは、ハイドロジェントリメトキシシラン(TMOS)、ハイドロジェントリエトキシシラン(TEOS)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)および/またはジメチルメトキシシラン(MDMS)が使用される。
さらに、本発明による方法において、オレフィン成分として1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンが使用される。
有利には、本発明による方法において、H−シラン対アルコールを、1:0.01〜0.2のモル比で、好ましくは1:0.02〜0.18のモル比で、特に好ましくは1:0.03〜0.15のモル比で、極めて特に好ましくは1:0.04〜0.1のモル比で、特に1:0.05〜0.06のモル比で使用することが好ましい。この目的のために好ましくは、少なくとも1種のアルコールは、C〜C10−アルコールの系列から選択され、特に好ましくはt−ブタノール、エタノール、メタノール、ベンジルアルコールおよびジグリコールモノメチルエーテルの系列から選択される。
さらに、本発明による方法において、H−シラン対Ptは、有利には1:1×10−4〜1×10−9のモル比で、好ましくは1:1×10−5〜1×10−8のモル比で、特に1:1×10−5〜9×10−6のモル比で使用される。
その際、Pt触媒としては、適切には、不均一系Pt触媒、好ましくは固体触媒担体上に施与されたPt、特に活性炭上のPt、または均一系Pt触媒、好ましくはPt錯体触媒、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸(これは「Speier触媒」とも呼ばれる)、特にアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸、好ましくはPt(0)錯体触媒、特に好ましくは「Karstedt触媒」、極めて特に好ましくは白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、特に0.5〜5質量%のPt(0)含分を有するキシレンまたはトルエン中の「Karstedt触媒」が使用される。このような溶液は通常は、キシレンまたはトルエンに溶解した白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含有し、その際、本発明により使用される溶液は有利には希釈された形態で使用され、この溶液は好ましくは0.5〜5質量%のPt含分を有する。したがって本発明の方法においては、有利には以下の系列からのPt触媒が使用される:「Karstedt触媒」、特に「Karstedt触媒」溶液、好ましくは0.5〜5質量%のPt(0)含分を有するキシレンまたはトルエン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ヘキサクロロ白金(IV)酸、好ましくは「Speier触媒」、特にアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸、または活性炭に担持されたPt。
さらに、本発明による方法において、H−シラン対カルボン酸は好ましくは、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で、特に好ましくは1:1×10−3〜10×10−3のモル比で、特に1:2×10−3〜6×10−3のモル比で使用される。
この目的のために、カルボン酸は好ましくは、安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、プロピオン酸、酢酸の系列から選択される。
好ましくは、本発明による方法は、
− H−シラン成分とPt触媒成分とを混合物として装入して加熱し、
− オレフィン成分とカルボン酸とアルコールとを合し、このオレフィン成分[1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン]とカルボン酸とアルコールとを含む混合物を、前記装入物に、該装入物における40〜135℃の温度で混合下に1〜10時間の期間にわたって計量供給し、
− 続いて0.5〜2時間の期間にわたって後反応させ、好ましくは該反応を保護ガス下で、特に窒素下で行い、必要に応じて、不均一系触媒が存在する場合には、該不均一系触媒を、このようにして得られた生成物混合物から除去することができ、
− 次いで、前記得られた生成物混合物を好ましくは45〜150℃で減圧で蒸留により後処理し、その際特に、存在する低沸点物、例えばキシレンあるいはトルエン、アルコール、カルボン酸、余剰のH−シランあるいは場合によってはオレフィン成分を前記生成物混合物から除去して(目的)生成物を得ることによって行われる。
したがって総じて、本発明による方法を、本明細書において詳述する該方法の特徴の全ての可能な組合せで、以下のように行うことができる:
トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを製造するための本発明によるヒドロシリル化を行うために、ハイドロジェンアルコキシシラン(H−シラン)、好ましくはトリメトキシシラン(TMOS)、トリエトキシシラン(TEOS−H)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)またはジメチルメトキシシラン(MDMS)を、白金触媒、適切には「Speier触媒」、好ましくはアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸、あるいはアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物、または「Karstedt触媒」(ここで、この「Karstedt触媒」を好ましくはPt(0)錯体触媒溶液として使用するものとする)、または活性炭上のPtと一緒に、計量供給装置、加熱/冷却装置、還流装置および蒸留装置を備えた撹拌反応器中に、適切には保護ガス下に、例えば窒素下に装入し、この装入混合物を40〜170℃の温度に加熱する。次いで混合下に、オレフィン成分としての1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと、少なくとも1種のカルボン酸、好ましくは安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸および/または酢酸と、さらなるいわゆる助触媒としての少なくとも1種のアルコール、例えば上記のC〜C10−アルコールのうちの1種とを添加あるいは計量供給する。その際、オレフィン成分、カルボン酸成分およびアルコール成分を、個々に前後して、または有利には1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン/カルボン酸/アルコール混合物として、所定の期間にわたって、好ましくは温度制御下に1〜10時間またはそれを上回る時間にわたって(ここで、この計量供給時間はバッチ量および反応器設計に依存しうる)、前述の装入物のハイドロジェンアルコキシシラン/白金触媒混合物に少量ずつまたは連続的に添加あるいは計量供給することができ、そしてこの反応混合物あるいは生成物混合物を、好ましくは混合下にかつ温度制御下に、適切には60〜100℃の温度で、特に0.5〜2時間にわたって後反応させることができる。したがって本方法においては、それぞれの供給原料を好ましくは明確に規定されたモル比で使用する:
− H−シラン対オレフィン成分を、1:0.1〜0.5のモル比で使用し、
− H−シラン対アルコールを、1:0.01〜0.2のモル比で使用し、
− H−シラン対Ptを、1:1×10−4〜1×10−9のモル比で使用し、
− H−シラン対カルボン酸を、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で使用する。
さらに、使用される「Karstedt触媒」溶液を、好ましくは市販のいわゆる「Karstedt触媒」濃縮物(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分:20.37質量%)(これを、略して「Karstedt濃縮物」とも呼ぶ)から調製し、その際、この濃縮物を好ましくはキシレンあるいはトルエンの添加により調整して、Pt含分を0.5〜5質量%にする。
このようにして得られた生成物混合物を適切に蒸留により後処理し、そのようにして所望の(目的)生成物を得る。この目的のために、蒸留を、好ましくは最初は45℃〜150℃で減圧で行い(1バール未満での、特に0.1バール以下での真空蒸留)、その際特に、存在する低沸点物、例えばカルボン酸、アルコール、余剰のH−シランあるいは場合によってなおも存在するオレフィン成分を生成物混合物から除去する。本発明による方法を実施するに当たって不均一系Pt触媒を使用する場合には、この不均一系Pt触媒を、生成物後処理の範囲で、反応後に得られた生成物混合物から、すなわち蒸留ステップの前に、例えばろ過または遠心分離によって分離除去することができ、そして有利には再度プロセスに返送することができる。
このようにして、本発明により、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを、より高収率でかつより高選択率で、すなわち副生成物の割合がわずかとなるようにして、簡便かつ経済的に、有利にもさらには大工業的に、製造することができる。
以下の例により本発明をさらに説明するが、これは本発明の対象を限定するものではない。
例:
分析方法:
NMR測定:
機器:Bruker
周波数:500.1MHz(H−NMR)
スキャン回数:32
温度:303K
溶剤:CDCl
標準物質:0.5%TMS(テトラメチルシラン)。
以下に、このH−NMR解析に関する目的生成物および合成時に形成される副生成物に関する名称について、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの構造式の例を用いて説明する。トリス[3−(メチルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジメチルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートに関する選択率の測定も同様に行い、これらを例6および7の表に示す。
Figure 0006647537
Figure 0006647537
試験を評価するために、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンのヒドロシリル化の際に生じる生成物を用いた。目的生成物へと転化するアリル二重結合が多いほど、そして副成分の形成が少ないほど、生成物品質は良好であり、そして触媒系の性能/選択性も良好である。選択性が高いことは極めて重要である。なぜならば、蒸留による目的生成物からの副成分の除去は、極めて高いコストをかけてでしか行うことができないか、あるいはそうした除去は不可能であるためである。
H−NMRスペクトル解析に際して、上述の構造式に記した水素原子を考慮した。ヒドロシリル化の際にSi−CH−基が生じるが、これが目的生成物の特徴である。このSi−CH−基をS1で表し、アリル基(C=CH−基)をA1で表し、プロピル基(C−基)をP1で表し、そしてイソプロピル基をI1で表した。H−NMRスペクトル解析および官能基の算出を、各試験の後に表に示した。H−NMRにより解析したシグナルは、基S1およびP1についてはトリプレット(t)を形成し、基A1についてはダブルダブレット(dd)を形成し、基I1についてはダブレット(d)を形成する。
使用した化学薬品:
「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37質量%)、HERAEUS
純アセトン、LABC Labortechnik
ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物、白金含分40質量%、HERAEUS
白金−活性炭、水素化触媒、白金含分10質量%、MERCK
ベンジルアルコール、puriss、SIGMA ALDRICH
ジエチレングリコールモノメチルエーテル >98質量%、MERCK
工業用キシレン、VWR Chemicals
Dynasylan(登録商標)TMOS(トリメトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)TEOS−H(トリエトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)DEMS(メチルジエトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)DMES(ジメチルエトキシシラン)、EVONIK Industries
TAICROS(登録商標)(1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、EVONIK Industries
安息香酸≧99.5質量%、ROTH
3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、>98.0質量%、東京化成工業株式会社
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、>98.0質量%、東京化成工業株式会社
酢酸、≧99質量%、SIGMA−ALDRICH
メタノール、≧99.5質量%、MERCK
エタノール、≧99.8質量%、ROTH
t−ブタノール、≧99.0質量%(合成用)、ROTH
クロロホルム−d1(CDCl)+0.5質量% TMS、DEUTERO
ベンゼン−d6、DEUTERO
テトラメチルシラン、DEUTERO。
キシレン中の2質量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号1の調製
0.2リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37%)9.8gを、キシレン90.2gと混合した。
トルエン中の2質量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号2の調製
0.2リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37質量%)9.8gを、トルエン90.2gと混合した。
0.4質量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号3の調製
0.1リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37質量%)196.4mgを、トルエン9.8gと混合した。
2.34質量%のPt含分を有するアセトン中のヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物溶液からの触媒4の調製
12リットルのプラスチック容器中で、HPtCl・6HO 530gをアセトン9.8リットルに溶解させた。このようにして調製した触媒溶液を、8週間熟成させた後に使用した。
以下の比較例に関する注釈:
米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)記載のアンプル内での合成は、工業的規模での実施が不可能である。これらの試験を本発明による例とより良好に比較できるようにするため、これらの試験を撹拌槽あるいはフラスコ内で行った。さらに、米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)における例では別の不飽和化合物が使用されているため、本発明と直接比較することは不可能であるものと考えられる。したがって、以下の比較例においてTAICROS(登録商標)を使用した。
比較例1:(米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)の例1による)
Dynasylan(登録商標)TMOS 0.2003モル(24.5g)、触媒番号1 0.1ml、さらなる溶剤あるいは希釈剤としてのさらなるトルエン40.0g、TAICROS(登録商標)0.0665モル(16.6g)および酢酸0.4mlを、ジャケット付きコイル式冷却器を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入し、53〜55℃に加熱した油浴中で2.5時間撹拌した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物79.9gが得られた。易揮発性成分を除去しなかった。
比較例1に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の45.8%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の53.7%が転化しておらず、生成物を汚染するプロピル基(P1)0.3%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じた。反応は不完全である。
比較例2:(米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)の例1による)
Dynasylan(登録商標)TEOS−H 0.2003モル(32.9g)、触媒番号3 0.1ml、さらなる溶剤あるいは希釈剤としてのさらなるトルエン40.0g、TAICROS(登録商標)0.0665モル(16.6g)および酢酸0.4mlを、還流冷却器を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入し、50〜57℃に加熱した油浴中で2.5時間撹拌した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物88.2gが得られた。易揮発性成分を除去しなかった。
比較例2に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の86.2%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の12.6%が転化しておらず、生成物を汚染するプロピル基(P1)0.6%あるいはイソプロピル基(I1)0.6%が生じた。反応は不完全である。
比較例3:(酢酸のみ使用。アルコールを添加せず)
DYNASYLAN(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。76〜91℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと酢酸6.77ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約87〜92℃でさらに約1時間反応させた。引き続き、低沸点物55.0gを、90〜120℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物170.7gが得られた。
比較例3に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の73.8%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の25.7%が転化しておらず、生成物を汚染するプロピル基(P1)0.3%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じた。反応は不完全である。
比較例4:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、「Karstedt触媒」0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)、メタノール34.38ミリモルおよび安息香酸6.55ミリモルを、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。73〜82℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルを1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を81℃でさらに1時間反応させた。続いて、低沸点物89.5gを、35〜127℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物134.2gが得られた。
比較例4に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の42.5%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の57.0%は転化されなかった。生成物を汚染するプロピル基(P1)0.4%あるいはイソプロピル基(I1)0.1%が生じた。アリル基の転化は不完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
比較例5:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、「Karstedt触媒」0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)およびメタノール34.38ミリモルを、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。70〜87℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を81℃でさらに1時間反応させた。続いて、低沸点物41.5gを61〜121℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物183.0gが得られた。
Figure 0006647537
結果:アリル基の81.5%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の17.7%が転化しなかった。生成物を汚染するプロピル基(P1)0.6%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じた。アリル基の転化は不完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
比較例6:
TAICROS(登録商標)0.33モル(83.1g)、触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)および3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸6.79ミリモル(1.7g)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。91〜111℃の温度で、Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル(146.6g)を計量供給することが望ましい。ヒドロシリル化は高度に発熱性であり、Dynasylan(登録商標)TMOS 18gを9分以内に計量供給した後、温度はすでに91℃から97℃に上昇した。27分以内にDynasylan(登録商標)TMOSをさらに72g計量供給して温度が108℃に上昇した後に、Dynasylan(登録商標)TMOSをさらに添加しても発熱を認めることはできなかった。この反応混合物は、数分以内に108℃から89℃に温度が下がった。したがって、合計で90gのDynasylan(登録商標)TMOSを計量供給した後にこの試験を停止した。つまり反応が停止し、それに応じてこの方法様式での転化は不完全なままであった。計量供給しなかったDynasylan(登録商標)TMOSは、68gであった。
注釈:
Pt触媒とカルボン酸とから構成されるPt触媒系の存在下での1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(TAICROS(登録商標))のヒドロシリル化によるトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造に関するこれらの比較試験によって、以下のような場合に、二重結合の転化率が90モル%をかなり下回って比較的低いことが判明した:
− H−シランとPt触媒とカルボン酸とTAICROS(登録商標)との混合物を使用し、これを加熱し、そのようにして反応させる場合、または、
− H−シランとPt触媒とを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)とカルボン酸との混合物を供給する場合、または、
− H−シランとPt触媒とアルコールとを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)とカルボン酸との混合物を供給する場合、または、
− H−シランとPt触媒とカルボン酸とアルコールとを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)を供給する場合、または
− TAICROS(登録商標)とPt触媒とカルボン酸とを装入して加熱し、これにH−シランを供給する場合。
例1:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。74〜92℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとメタノール34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約84〜96℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物22.4gを、83〜119℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物203.5gが得られた。
本発明による例1に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.6%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.1%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例2:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。62〜88℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとt−ブタノール33.73ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約79〜88℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物20.5gを、104〜118℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物204.4gが得られた。
本発明による例2に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.5%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例3:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。72〜90℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと酢酸6.66ミリモルとメタノール34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約78〜88℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物20.0gを、83〜123℃で0.1ミリバール未満の圧力下で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物202.9gが得られた。
本発明による例3に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.6%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.0%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例4:
Dynasylan(登録商標)TEOS−H 3.5モルおよび触媒番号1 0.6g(Pt 0.0615ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた1リットルの撹拌装置に装入した。67〜97℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.973モルと安息香酸18.83ミリモルとエタノール102.02ミリモルとからなる混合物を、2時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約97〜103℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物100.6gを、約140℃までの温度範囲で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物721.2gが得られた。
本発明による例4に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.2%が、ヒドロシリル化によりトリエトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.4%あるいはイソプロピル基(I1)0.4%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例5:
Dynasylan(登録商標)TEOS−H 3.5モルおよび触媒番号1 0.6g(Pt 0.0615ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた1リットルの撹拌装置に装入した。70〜99℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.973モルと酢酸19.98ミリモルとエタノール102.02ミリモルとからなる混合物を、2時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約90〜101℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物98.4gを、48〜145℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物719.6gが得られた。
本発明による例5に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.7%が、ヒドロシリル化によってトリエトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.0%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例6:
Dynasylan(登録商標)DEMS(メチルジエトキシシラン)0.60モルおよび触媒番号1 0.1g(Pt 0.01025ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入した。89〜125℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.167モルと安息香酸1.64ミリモルとエタノール32.6ミリモルとからなる混合物を、1.5時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約110℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物12.6gを、65〜112℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物108.4gが得られた。H−NMRスペクトル解析により、目的生成物の他に以下の痕跡量の不純物が判明した。
本発明による例6に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:97.9%のアリル基が、ヒドロシリル化によりメチルジエトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.5%あるいはイソプロピル基(I1)0.6%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例7:
Dynasylan(登録商標)DMES(ジメチルエトキシシラン)0.60モルおよび触媒番号1 0.1g(Pt 0.01025ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入した。56〜83℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.167モルと安息香酸1.64ミリモルとエタノール32.6ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約88〜93℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物8.8gを、75〜124℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物95.0gが得られた。
本発明による例7に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の99.6%が、ヒドロシリル化によりジメチルエトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)もプロピル基(P1)も、もはや検出不可能である。生成物を汚染するイソプロピル基(I1)が0.4%生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例8:
Dynasylan(登録商標)TMOS 30.0モルおよび触媒番号1 2.4g(Pt 0.246ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた8リットルの撹拌装置に装入した。74〜80℃の温度で、TAICROS(登録商標)9.36モルと安息香酸184ミリモルとメタノール978ミリモルとからなる混合物を、2時間45分以内に計量供給した。その後、この混合物を80℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物264.7gを、140℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物5735gが得られた。
本発明による例8に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.5%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例9:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。45〜47℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとメタノール34.38ミリモルとからなる混合物を、2時間45分以内に計量供給した。その後、この混合物をさらに2時間15分反応させ、その際、この反応混合物はゆっくりと発熱して108℃に昇温した。続いて、低沸点物23.3gを、48〜131℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物205.3gが得られた。
本発明による例9に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の97.9%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.9%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例10:
Dynasylan(登録商標)TEOS 0.9モルおよび触媒番号1 0.15g(Pt 0.0154ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットル撹拌装置に装入した。131〜161℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.25モルと安息香酸4.83ミリモルとエタノール26.08ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を157〜162℃でさらに1時間反応させた。続いて、低沸点物21.0gを、78〜128℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物184.3gが得られた。
本発明による例10に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の97.5%が、TTMOSを用いたヒドロシリル化によってトリエトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.8%あるいはイソプロピル基(I1)0.7%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例11:
Dynasylan(登録商標)TMOS 3.75モルおよび「Karstedt触媒」番号2 0.3g(Pt 0.03845ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた1リットル撹拌装置に装入した。74〜79℃の温度で、TAICROS(登録商標)1.17モルと安息香酸22.93ミリモルとメタノール121.87ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を75〜78℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物33.7gを、100〜129℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物716.2gが得られた。
本発明による例11に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.4%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例12:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号4 0.16g(Pt 0.02050ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットル撹拌装置に装入した。73〜84℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとメタノール34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間15分以内に計量供給した。その後、この混合物を82〜89℃でさらに約45分間反応させた。続いて、低沸点物23.1gを、112〜125℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物204.8gが得られた。
本発明による例12に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.5%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例13:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび白金−活性炭1.46g(活性炭上で10%の白金、Pt 0.748ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットル撹拌装置に装入した。72〜91℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとメタノール34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間15分以内に計量供給した。その後、この混合物を80〜89℃でさらに約45分間反応させた。続いて、この白金触媒を加圧ろ過により回収し、低沸点物14.2gを、95〜138℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物198.2gが得られた。
本発明による例13に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.6%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)は、もはや検出不可能である。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.1%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例14:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットル撹拌装置に装入した。71〜96℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとベンジルアルコール34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を83℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物21.4gを、70〜136℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物207.2gが得られた。
本発明による例14に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.6%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.1%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
例15:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。72〜90℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとジエチレングリコールモノメチルエーテル34.38ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を84℃でさらに約1時間反応させた。続いて、低沸点物22.4gを、92〜138℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、完全に転化した無色の塔底生成物208.7gが得られた。
本発明による例15に関するH−NMRスペクトル解析:
Figure 0006647537
結果:アリル基の98.5%がTMOSによるヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1)へと転化した。検出可能なアリル基(A1)は、極めて少量のみである。生成物を汚染するプロピル基(P1)1.2%あるいはイソプロピル基(I1)0.3%が生じた。アリル基の転化は完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。

Claims (9)

  1. トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートから選択されるトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートをヒドロシリル化により製造する方法であって、
    − ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランから選択される少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してH−シランと呼ぶ]とPt触媒との混合物を反応器中に装入し、
    − 前記混合物を40〜170℃の温度に加熱し、
    − 次いで混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと、安息香酸、プロピオン酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、および3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸と、助触媒としての少なくとも1種のアルコールとを添加あるいは計量供給し、
    − 反応させ、次いでそのようにして得られた生成物混合物を蒸留して目的生成物を得る
    ことによる、前記方法。
  2. H−シラン対アルコールを、1:0.01〜0.2のモル比で使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. H−シラン対Ptを、1:1×10−4〜1×10−9のモル比で使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. H−シラン対カルボン酸を、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. H−シラン対オレフィン成分を、1:0.1〜0.5のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記アルコールをC〜C10−アルコールの系列から選択することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  7. H−シランとして、ハイドロジェントリメトキシシラン(TMOS)、ハイドロジェントリエトキシシラン(TEOS)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)またはジメチルメトキシシラン(MDMS)を使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  8. Pt触媒として、「Karstedt触媒」を使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  9. − H−シラン成分およびPt触媒成分を混合物として反応器中に装入して加熱し、
    − オレフィン成分[1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン]とカルボン酸とアルコールとを含む混合物を、前記装入物に、該装入物における40〜135℃の温度で混合下に1〜10時間の期間にわたって計量供給し、
    − 続いて0.5〜2時間の期間にわたって後反応させ必要に応じて、不均一系触媒が存在する場合には、該不均一系触媒を、このようにして得られた生成物混合物から除去することができ、
    − 次いで、前記得られた生成物混合物を蒸留して目的生成物を得る
    ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
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