JP6647040B2 - 種結晶、種結晶の製造方法、SiCインゴットの製造方法及びSiCウェハの製造方法 - Google Patents

種結晶、種結晶の製造方法、SiCインゴットの製造方法及びSiCウェハの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、種結晶種結晶の製造方法、SiCインゴットの製造方法及びSiCウェハの製造方法に関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
SiCエピタキシャルウェハは、SiCエピタキシャル膜を形成する基板としてSiCインゴットから加工したSiCウェハを用い、通常、この上に化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によってSiC半導体デバイスの活性領域となるSiCエピタキシャル膜を成長させることによって製造する。本明細書において、SiCエピタキシャルウェハはエピタキシャル膜を形成後のウェハを意味し、SiCウェハはエピタキシャル膜を形成前のウェハを意味する。
近年、SiCエピタキシャルウェハの大型化、高品質化に伴い、SiCインゴットの大型化、高品質化が求められている。SiCインゴットは、SiC種結晶を成長させて得られる。そのため、成長起点となるSiC種結晶においても、大型で、欠陥や異種多形を制御できるものが求められている。
例えば、特許文献1には、大型のSiCインゴットを得るために、複数のSiC単結晶を接合し、SiC種結晶とすることが記載されている。
また例えば、特許文献2には、{0001}面よりオフセット角度60度以内の面を成長面として有し、成長面上に螺旋転位発生可能領域を有する転位制御種結晶を用いることで、SiCインゴットにおける異種多形や異方位結晶の生成を抑制できることが記載されている。
特開平11−268989号公報 特開2004−323348号公報
しかしながら、従来のSiC種結晶を基にSiCインゴットを長尺成長させた場合に、結晶成長後半において異種多形の発生確率が増大するという問題があった。
多形とは、SiCの結晶構造の違いを意味する。SiCは、3C−SiC、4H−SiC、6H−SiC等の多形を有している。これらの多形はc面方向(<0001>方向)から見た際の最表面構造としては、違いがない。そのため、c面方向に結晶成長する際に異なる多形(異種多形)に変化するという問題がある。
これに対し、a面方向(<11−20>方向)から見た際の最表面構造として、多形は違いを有する。そのため、a面方向への成長では、このような多形の違いを引き継ぐことができる。すなわち、a面方向への成長では異種多形が発生しにくい。
そこで、成長面をc面からわずかにずれた面とし、異種多形の発生を抑制することが行われている。成長面をc面からずらすことにより、原子ステップ(原子面の段差)からの横方向の成長(ステップフロー成長)が起こり、多形が保存される。
しかしながら、結晶成長を進めるにつれ、結晶の最表面の一部には、必ずc面と平行な面が表出する。c面と平行で、成長面に表出した部分をc面ファセットと言う。c面ファセットは、c面と平行なため結晶成長の様式が異なる。成長後のSiC単結晶内において、異なる成長様式で成長した部分をファセット成長領域という。
c面ファセットにおける結晶成長は、c面方向への結晶成長である。そのため、螺旋転位密度が極めて少ないSiC単結晶上に結晶成長を行うと、島状成長が起こり、多形を引き継ぐことができずに異種多形が発生してしまう。
特許文献2においては、螺旋部にステップを有する螺旋転位をc面ファセットに導入することで、c面ファセットにおいてもa面方向への成長を可能とし、異種多形の発生を抑制している。
螺旋転位は螺旋の回転方向によって、互いに逆方向のバーガースベクトルを有する。そのため、特許文献2に記載のように、傷等のダメージにより螺旋転位発生起点を導入すると、その螺旋転位発生起点から互いに逆方向のバーガースベクトルを持つ2つの螺旋転位がペアとして発生する。この逆方向のバーガースベクトルを持つ2つの螺旋転位は結晶成長が進むにつれて、互いに合体し消滅する。
すなわち、特許文献2に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法では、結晶成長前半に生じる異種多形を抑えることができても、結晶成長後半にはc面ファセットにおける螺旋転位の数が減少し異種多形の発生を十分抑制することができなくなるという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、長尺成長させても異種多形の発生を抑制することができ、SiC種結晶として用いることができるSiC単結晶接合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、同一方向のバーガースベクトルを有する螺旋転位を選択的に発生させることで、結晶成長後半においても螺旋転位が欠乏することなく、異種多形の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体は、二つのSiC単結晶の同一の結晶面同士が接合面となるように接合された接合部を有し、前記接合部を挟んで前記二つのSiC単結晶の{0001}面が互いに、前記接合面に対し垂直な方向を軸に0°超1°以下傾いている。
(2)上記(1)に記載のSiC単結晶接合体において、{0001}面に対し2°以上20°以下のオフセット角を有する主面を有し、前記接合部が前記主面よりオフセット上流側にあってもよい。
(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載のSiC単結晶接合体において、一方のSiC単結晶の結晶成長面が、前記接合部を挟んで、もう一方のSiC単結晶の結晶成長面に対して傾斜していてもよい。
(4)本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の製造方法は、二つのSiC単結晶の同一の結晶面同士を接合面とし、前記接合部を挟んで前記二つのSiC単結晶の{0001}面が互いに、前記接合面に対し垂直な方向を軸に0°超1°以下傾くように接合する接合工程を有する。
(5)上記(4)に記載のSiC単結晶接合体の製造方法において、前記二つのSiC単結晶が一つのSiC単結晶を切断して得られたものであり、切断面を前記接合工程における前記接合面としてもよい。
(6)本発明の一態様に係るSiCインゴットの製造方法は、上記(4)または(5)のいずれかに記載のSiC単結晶接合体の製造方法に従ってSiC単結晶接合体を作製する工程と、前記SiC単結晶接合体の一面にSiC単結晶を結晶成長する結晶成長工程と、を有する。
(7)上記(6)に記載のSiCインゴットの製造方法における前記結晶成長工程において、SiC単結晶を20mm以上結晶成長してもよい。
(8)本発明の一態様に係るSiCウェハの製造方法は、上記(6)または(7)のいずれかに記載のSiCインゴットの製造方法に従ってSiCインゴットを作製する工程と、平面視で前記SiC単結晶接合体の接合部を避けて前記SiCインゴットを所望の形に加工する加工工程と、を有する。
(9)本発明の一態様に係るSiCウェハの製造方法は、上記(6)または(7)のいずれかに記載のSiCインゴットの製造方法に従ってSiCインゴットを作製する工程と、前記SiCインゴットを厚み方向にスライスし、加工前ウェハを作製する工程と、前記加工前ウェハにおける前記SiC単結晶接合体の接合部に起因して生じる螺旋転位密集部を避けて前記加工前ウェハを所望の形に加工する加工工程と、を有する。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体によれば、SiC単結晶接合体上にSiC単結晶を長尺成長させても異種多形の発生を抑制することができる。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の製造方法によれば、SiC単結晶接合体上にSiC単結晶を長尺成長させても異種多形の発生を抑制できるSiC単結晶を得ることができる。
本発明の一態様に係るSiCインゴットの製造方法によれば、異種多形の発生を抑制しつつSiC単結晶を長尺成長することができる。
本発明の一態様に係るSiCウェハの製造方法によれば、より高品質なSiCウェハを得ることができる。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体における接合部近傍を拡大した斜視模式図である。 {0001}面における結晶成長の様子を模式的に示した図であり、(a)は、{0001}面が螺旋転位を有さない場合の模式図であり、(b)は{0001}面が螺旋転位を有する場合の模式図である。 螺旋転位発生起点が所定の接合部である場合に、螺旋転位発生起点上に成長する螺旋転位を模式的に示した図である。 螺旋転位発生起点が人工的な傷等の場合に、螺旋転位発生起点上に成長する螺旋転位を模式的に示した図である。 本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の接合部付近を拡大した図であり、(a)は結晶成長前半における接合部付近を拡大した図であり、(b)は結晶成長後半における接合部付近を拡大した図である。 人工的に傷を設けたSiC種結晶の傷付近を拡大した図であり、(a)は結晶成長前半における接合部付近を拡大した図であり、(b)は結晶成長後半における接合部付近を拡大した図である。 本発明の別の態様に係るSiC単結晶接合体の斜視模式図である。 図7に示すSiC単結晶接合体から結晶成長したSiCインゴットをA−A面で切断した断面模式図である。 SiCインゴットからSiCウェハを得る際の加工領域を模式的に示した平面図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(SiC単結晶接合体)
図1は、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体における接合部近傍を拡大した斜視模式図である。図1に示すSiC単結晶接合体10は、二つのSiC単結晶(第1のSiC単結晶1及び第2のSiC単結晶2)からなる。第1のSiC単結晶1と第2のSiC単結晶2は、同一の結晶面同士が接合面1a,2aとなるように接合された接合部3を有する。SiC単結晶接合体10は、SiC種結晶として用いることができる。
第1のSiC単結晶1の接合面1a及び第2のSiC単結晶2の接合面2aは、{0001}面に対して垂直な面である。例えば{1−100}面(m面)、{11−20}面(a面)等が挙げられる。接合面1a,2aが接合してなる接合部3を有することで、接合部3上に螺旋転位が発生し、異種多形の発生を抑制することができる。
ここで、図2を用いて結晶成長の違いを説明すると同時に、SiC単結晶接合体10の結晶成長過程における{0001}面が螺旋転位11を有することで、異種多形の発生及び結晶転位の流出に伴う欠陥の発生を抑制することができることについて説明する。図2は、{0001}面における結晶成長の様子を模式的に示した図であり。図2(a)は、{0001}面が螺旋転位を有さない場合の模式図であり、図2(b)は{0001}面が螺旋転位を有する場合の模式図である。
SiCは、3C−SiC、4H−SiC、6H−SiC等の多形を有しており、これらの多形はc面方向(<0001>方向)から見た際の最表面構造に違いがない。そのため、c面方向に結晶成長する際に異なる多形(異種多形)に変化しやすい。これに対し、a面方向(<11−20>方向)から見た際の最表面構造は違いを有しており、a面方向への成長では、このような多形の違いを引き継ぐことができる。
図2(a)に示すように、結晶成長面が{0001}面と平行な場合は、c面方向に結晶が島状成長しながら+Z方向に成長する。c面からは多形の情報を得ることができないため、多形の違いを引き継ぐことができず、異種多形が発生する。
これに対し、図2(b)は結晶成長面に螺旋転位11を有する。螺旋転位11を有すると、螺旋転位11の螺旋部がステップを形成する。そのため、a面方向への成長を可能とし、多形を引き継ぐことができる。
螺旋転位11は、結晶成長する前のSiC単結晶接合体10の螺旋転位発生起点上に発生する。本明細書において、「螺旋転位発生起点」とは、結晶成長の過程において螺旋転位になりうる発生起点をいう。たとえば、SiC単結晶接合体10に最初から存在する螺旋転位は、c面方向にそのまま引き継がれていく貫通転位であるため、通常そのまま成長結晶に引き継がれる。そのため、SiC単結晶接合体に最初から存在する螺旋転位は、螺旋転位発生起点である。また、SiC単結晶接合体の表面に何らかの処理を施すことによっても螺旋転位発生起点を人工的に作製することもできる。例えば、機械加工、イオン注入などによって表面に結晶構造が乱れた層を作成すると、成長過程においてそこから螺旋転位が発生する。
このように、結晶構造が乱れた部分(螺旋転位発生起点)があると、その上に整った結晶構造のものが成長するには、その乱れを何らかの形で吸収しなければならない。例えば、成長方向に平行な<0001>方向の乱れは、<0001>に平行なバーガースベクトルを持つ螺旋転位やマイクロパイプ、フランク型の積層欠陥等に、成長方向に垂直な<11−20>方向や<1−100>方向の乱れは、それらの方向にバーガースベクトルを持つ、貫通刃状転位や基底面転位、ショックレー型の積層欠陥等に変換されることで吸収されると考えられる。すなわち、成長方向に平行な<0001>方向の乱れを螺旋転位発生起点として導入することで、結晶成長過程において螺旋転位発生起点上には螺旋転位11が生じる。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体10において、接合部3を挟んで二つのSiC単結晶の{0001}面は、接合面1a,2aに対し垂直な方向を軸に0°超1°以下ずれている。すなわち、第1のSiC単結晶1の{0001}面と第2のSiC単結晶2の{0001}面は、互いに傾斜角θ(0°超1°以下)だけ傾いている。つまり、接合部3は結晶構造が乱れた部分であり、螺旋転位発生起点の一態様である。
螺旋転位発生起点が、接合面1a,2aに対し垂直な方向を軸に0°超1°以下ずれて接合することにより生じる接合部3であると、同一方向のバーガースベクトルを有する螺旋転位を選択的に発生できる。図3を用いて、この原理について説明する。
図3は、螺旋転位発生起点が所定の接合部である場合に、螺旋転位発生起点上に成長する螺旋転位を模式的に示した図である。図4は、螺旋転位発生起点が人工的な傷等の場合に、螺旋転位発生起点上に成長する螺旋転位を模式的に示した図である。
まず図3に示すSiC単結晶接合体10上に結晶成長を行う場合について説明する。SiC単結晶接合体10において、a面またはm面が露出しているのは接合面1a、2aである。露出した接合面1a、2aにも結晶成長が生じ、異種多形の発生が抑制される。この際、接合面1aから生じる螺旋転位11は、反時計回りに螺旋S1を描く。同様に、接合面2aから生じる螺旋転位11も、反時計回りに螺旋S2を描く。すなわち、接合部3から生じる螺旋転位11は同一方向のバーガースベクトルを有することになる。
これに対し、図4に示す人工的に設けた傷21有するSiC種結晶20上に結晶成長を行うと、傷21から生じる螺旋転位は、互いに逆方向のバーガースベクトルを持つ2つのペアとなる。すなわち、ダメージにより乱された結晶格子が転位を生成し、転位生成の際にはバーガースベクトルが保存されなければならないため、それぞれ逆のバーガースベクトル成分をもった転位が対生成する。この場合、図4に示すように、時計回りに螺旋S3を描く螺旋転位と反時計回りに螺旋S4を描く螺旋転位が近接位置に存在する。そのため、互いに逆方向のバーガースベクトルを持つ2つの螺旋転位は、結晶成長過程で互いに合体し、消滅することが起こる。
図5は、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の接合部付近を拡大した図であり、(a)は結晶成長前半における接合部付近を拡大した図であり、(b)は結晶成長後半における接合部付近を拡大した図である。また図6は、人工的に傷を設けたSiC種結晶の傷付近を拡大した図であり、(a)は結晶成長前半における接合部付近を拡大した図であり、(b)は結晶成長後半における接合部付近を拡大した図である。図5及び図6において、結晶成長前半とは、SiC単結晶接合体またはSiC種結晶上に25mm程度結晶成長を行った後の表面であり、結晶成長後半とは、SiC単結晶接合体またはSiC種結晶上に20mm程度結晶成長を行った後の表面である。また図5及び図6の写真は、X線トポグラフィーを用いて撮影した。
図5に示すように、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の接合部上においては、結晶成長の前半及び後半のいずれにおいても、螺旋転位(またはマイクロパイプ)が同様に確認されている。これに対し、図6に示す傷を設けたSiC種結晶の傷上(図示点線)においては、結晶成長前半においては螺旋転位が確認されるものの、結晶成長後半においては螺旋転位が確認できなくなっている。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体10の接合部3において生じる螺旋転位は、同一方向のバーガースベクトルを有し、互いに合体せず結晶成長後半においても螺旋転位を維持することができる。これに対し、傷を設けたSiC種結晶20の傷21において生じる螺旋転位は、互いに逆方向のバーガースベクトルを持つ。そのため、2つの螺旋転位がペアとなり、結晶成長が進むにつれて互いに合体し消滅する。
つまり、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体10のように、同一方向のバーガースベクトルを有する螺旋転位を選択的に発生させることで、結晶成長後半においても螺旋転位が欠乏することなく、異種多形の発生を抑制できる。
第1のSiC単結晶1及び第2のSiC単結晶2の{0001}面の傾斜角θは、0°超1°以下であり、0.001°超0.5°以下であることがより好ましく、0.01°超0.1°以下であることがさらに好ましい。傾斜角θが0°の場合、螺旋転位のもつバーガースベクトルが同一方向を向かない。また傾斜角θが1°超であると、傾斜が大きすぎで結晶構造の乱れを充分に緩和することができない。
また第1のSiC単結晶1及び第2のSiC単結晶2は、一つのSiC単結晶から切断されたものであることが好ましい。第1のSiC単結晶1及び第2のSiC単結晶2は、一つのSiC単結晶から切断されたものであれば、接合面1a、2aが一致しやすい。そのため、不要な結晶構造の乱れ等が発生することを抑制することができる。
上述のように、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体によれば、同一方向のバーガースベクトルを有する螺旋転位を選択的に発生させることができ、結晶成長後半においても螺旋転位が欠乏することなく、異種多形の発生を抑制できる。
以上、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体について図面を参照して説明したが、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更を加えることができる。
例えば図7は、本発明の別の態様に係るSiC単結晶接合体の斜視模式図である。図7に示すSiC単結晶接合体30は、第1のSiC単結晶31と第2のSiC単結晶32が接合してなる。第1のSiC単結晶31と第2のSiC単結晶32の接合部33が所定の位置にある点が、上述のSiC単結晶接合体10と異なる。
第1のSiC単結晶31の主面31aは、{0001}面に対し2°以上20°以下のオフセット角を有する面である。すなわち、図7の側面に表示した{0001}面は、主面31aに対し傾きを有している。SiC単結晶接合体30を図7の+Z方向に結晶成長させる際に、主面31aはステップフロー成長する。
ステップフロー成長は、a面方向に結晶が成長しながら、SiC単結晶接合体30全体として+Z方向に成長する。そのため、オフセット上流側の情報は、オフセット下流側に伝わりやすい。したがって、オフセット上流側に螺旋転位発生起点となる接合部33を設け、異種多形の発生及び結晶転位の流出に伴う欠陥の発生を抑制することができれば、オフセット下流側での発生も同時に抑制することにつながる。すなわち、主面31a上に結晶成長することで得られる高品質領域に、螺旋転位や異種多形等が流れることを抑制し、より高品質なSiCインゴットを作製することができる。
主面31aの{0001}面に対するオフセット角は、2°以上20°以下であり、3°以上9°以下であることが好ましい。オフセット角が小さすぎると、オフセット下流に欠陥が流れにくい。欠陥がオフセット下流(図7の+X方向)に流れず、同一の箇所に留まると、成長中に欠陥が減りにくいという問題がある。またオフセット角が小さすぎると、c軸方向に結晶成長が進み、異種多形が発生しやすくなる。
一方、オフセット角が大きすぎると、温度勾配により、c面が滑る方向({0001}面に平行な方向)に応力がかかり、基底面転位が発生しやすくなるという問題がある。またデバイス等を作製する際に用いるSiCウェハのオフセット角(通常、4°以下)との差が大きくなる。そのため、SiCインゴットからSiCウェハを斜めに切り出す必要があり、得られるSiCウェハの取れ数が少なくなる。
図8は、図7に示すSiC単結晶接合体から結晶成長したSiCインゴットをA−A面で切断した断面模式図である。SiC単結晶接合体30から結晶成長を行ったSiCインゴット100は、ファセット成長領域101と、ステップフロー成長領域102を有する。ファセット成長領域101は、SiC単結晶接合体から結晶成長する際に生じる部分である。本明細書において「ファセット」とは、結晶の幾何学的規則性に沿って原子的なスケールでみて平坦な結晶面であり、結晶成長の際に成長機構の違いから平坦な面として現れる面をいう。例えば、{0001}面ファセット(c面ファセット)とは、{0001}面と平行な面であり、結晶成長の際には平面として現れる。また本明細書において「ファセット成長領域」とは、成長過程のSiCインゴットの最表面にファセットが形成された部分の集合体からなる領域をいう。ファセット成長領域は、ステップフロー成長するその他の領域と比べて、その成長機構の違いから不純物濃度が異なる。そのため、成長後の結晶からファセット成長領域を判別できる。
c面ファセットは、結晶成長を進めるにつれ、結晶の最表面の一部に必ず発生する。SiC単結晶接合体30が、接合部33を挟んで、第1のSiC単結晶31の結晶成長面(主面)31aと第2のSiC単結晶32の結晶成長面32aとが互いに傾斜する場合、c面ファセットはその主面31aと傾斜面32aの境界である角部33aにおいて発生する。これは、角部33aにおいてステップフロー成長が乱され、この部分にc面ファセットが形成されやすくなるためである。
上述のように螺旋転位は、c軸方向に結晶成長が生じるc面ファセット内に形成されて異種多形を抑制するという効果を発生する。そのため、結晶成長過程においてc面ファセットが形成される部分と螺旋転位が発生する部分を一致させることが好ましい。上述のように、c面ファセットは、結晶成長初期において角部33a近傍に発生する。また螺旋転位は接合部33から発生する。すなわち、SiC単結晶接合体30の角部33aと接合部33の位置を一致させることが好ましい。
このようにSiC種結晶内に、高品質な結晶成長を行うステップフロー成長を行うための主面を設け、異種多形の発生を抑制するためのファセット成長領域を分離して設けてもよい。オフセット上流側に配されるファセット成長領域において異種多形の発生を上流側から抑制しつつ、ステップフロー成長を行うことで、ステップフロー成長領域においてSiC単結晶をより高品質にすることができる。そして、得られたSiC単結晶から、螺旋転位等が含まれるファセット成長領域を除去することで、より高品質なSiC単結晶を得ることができる。
(SiC単結晶接合体、SiCインゴット、SiCウェハの製造方法)
所定のSiC単結晶接合体を作製する。所定のSiC単結晶接合体を作製する前に、まず所定のSiC単結晶接合体の基準となるSiC単結晶を作製する。
SiC単結晶は、RAF(Repeated a−face)法による得ることが好ましい。RAF法とは、a面成長を少なくとも1回以上行った後に、c面成長を行うという方法である。RAF法の詳細については、例えば特開2003−321298号公報等に記載がある。
RAF法を用いると、螺旋転位及び積層欠陥をほとんどもたないSiC単結晶を作製できる。これはa面成長を行った後のSiC単結晶が有する欠陥は、c面成長では基底面方向の欠陥となり、引き継がれないためである。
螺旋転位や積層欠陥は、最終的な半導体デバイスのキラー欠陥になりうる欠陥である。そのため、螺旋転位や積層欠陥が少なければ、最終的に得られる半導体デバイスの歩留りを向上することができる。
一方で、螺旋転位が極めて少ないSiC単結晶を用いて結晶成長を行うと異種多形が発生するという問題がある。そこで異種多形の発生を抑制するために、SiC単結晶の所定の位置のみに螺旋転位が発生するように螺旋転位発生起点を導入する。螺旋転位密度の低い種結晶を用いる場合は成長面にもともと存在する螺旋転位が少ないため、螺旋転位発生起点を設けることの効果が特に大きい。種結晶に使用されるSiC単結晶における螺旋転位が、1000個/cm以下であることが好ましく、500個/cm以下であることがより好ましく、100個/cm以下であることがさらに好ましい。
本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の製造方法においては、螺旋転位発生起点をSiC単結晶の接合部として導入する。接合部は、SiC単結晶同士を接合することで得る。
接合するSiC単結晶は、それぞれ別々に作製されたもの同士でもよいが、1つのSiC単結晶を切断した二つの破片を用いることが好ましい。1つのSiC単結晶を切断した二つの破片を用いる場合は、まずRAF法を用いて一つのSiC単結晶を作製し、得られたSiC単結晶をワイヤーソー等で切断する。そして切断した切断面同士を再度接合することで、所定のSiC単結晶接合体を得る。
接合は、接合部を挟んで二つのSiC単結晶の{0001}面が、接合面に対し垂直な方向を軸に0°超1°以下傾くように行う。接合する際は、SiC単結晶の結晶構造をX線トポグラフィー等により確認してから行う。
上述のような工程により、所定の接合部を有するSiC単結晶接合体が形成される。次いで、このSiC単結晶接合体の一面にSiC単結晶の結晶成長を行い、SiCインゴットを作製する。
SiCインゴットの作製方法は、例えば昇華法のような公知の方法を用いることができる。得られたSiC単結晶接合体の結晶成長面を昇華するSiC原料と対向するように坩堝内に設置し、加熱によりSiC原料を昇華させることにより、SiC単結晶接合体の結晶成長面上にSiC単結晶を結晶成長させ、SiCインゴットが得られる。このとき、接合部を介して接合するSiC単結晶の{0001}面同士が所定の傾斜角で傾いていることで、生じる螺旋転位のバーガースベクトルを同一にすることができる。同一方向のバーガースベクトルを有する螺旋転位を選択的に発生させることで、結晶成長後半においても螺旋転位が欠乏することなく、異種多形の発生を抑制できる。
SiC単結晶接合体からSiCインゴットへの結晶成長工程において、結晶成長したSiC単結晶の厚みは20mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることがさらに好ましい。
上述のように、従来のSiC単結晶接合体からSiCインゴットを得る場合、SiC単結晶接合体の一面に結晶成長するSiC単結晶が長尺化すると、結晶成長後半において螺旋転位が欠乏する。これに対し、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体を用いると、SiC単結晶接合体の一面に結晶成長するSiC単結晶が長尺化しても、螺旋転位同士が合体消滅することを抑制することができ、螺旋転位の欠乏を抑制することができる。すなわち、SiC単結晶接合体からSiCインゴットへの結晶成長工程において結晶成長するSiC単結晶の厚みが、厚いほど本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体による異種多形発生を抑制する効果を顕著に確認することができる。
次いで、得られたSiCインゴットからSiCウェハを得る。SiCインゴットは、略円柱状の形状をしている。SiCウェハは、この略円柱状のSiCインゴットを所定の形に加工した後に、厚み方向にスライスして得てもよいし、厚み方向にスライスしてから所定の形に加工してもよい。
図9は、SiCインゴットからSiCウェハを得る際の加工領域を模式的に示した平面図である。ここでは、略円柱状のSiCインゴットを厚み方向にスライスしてから所定の形に加工する場合を例に説明する。
得られたSiCインゴットを所定の厚みにスライスした加工前ウェハ200は、ファセット成長領域201と、SiC単結晶接合体の接合部から生じた螺旋転位密集部202を有する。
螺旋転位は、上述のように半導体デバイスにおけるキラー欠陥となりうる。そこで、加工前ウェハ200の螺旋転位密集部202を避けてSiCウェハ210を得る。これにより、得られるSiCウェハ210の品質がより高品質なものとなる。
略円柱状のSiCインゴットを所定の直径に加工した後に、厚み方向にスライスする場合も同様に行うことができる。SiCインゴットにおける接合部を平面視で避けて、SiCインゴットを所望の径に加工することで、加工後のSiCインゴットの品質を高めることができる。また高品質なSiCインゴットをスライスすることで、高品質なSiCウェハを得ることができる。
上述のように、本発明の一態様に係るSiC単結晶接合体の製造方法によれば、長尺成長させても異種多形の発生を抑制できるSiC単結晶接合体を得ることができる。またこのSiC単結晶接合体を用いることで、SiCインゴットの長尺成長が可能となる。さらに、このSiCインゴットの所定の部分を除去してSiCウェハを得ることで、より高品質なSiCウェハを得ることができる。
10,30…SiC単結晶接合体、20…SiC種結晶、1,31…第1のSiC単結晶、2,32…第2のSiC単結晶、1a,2a…接合面、3,33…接合部、11…螺旋転位、21…傷、31a…主面、32a…傾斜面、33a…角部、100…SiCインゴット、101,201…ファセット成長領域、102…ステップフロー成長領域、200…加工前ウェハ、202…螺旋転位密集部、210…SiCウェハ

Claims (9)

  1. 二つのSiC単結晶の同一の結晶面同士が接合面となるように接合された接合部を有し、
    前記接合部を挟んで前記二つのSiC単結晶の{0001}面が互いに、前記接合面に対し垂直な方向を軸に0°超1°以下傾いているSiC単結晶接合体からなる種結晶
  2. {0001}面に対し2°以上20°以下のオフセット角を有する主面を有し、
    前記接合部が前記主面よりオフセット上流側にあり、
    前記オフセット上流は、前記主面の法線に対して{0001}面の法線が傾いている方向である請求項1に記載の種結晶
  3. 一方のSiC単結晶の結晶成長面が、前記接合部を挟んで、もう一方のSiC単結晶の結晶成長面に対して傾斜している請求項1または2のいずれかに記載の種結晶
  4. 二つのSiC単結晶の同一の結晶面同士を接合面とし、前記二つのSiC単結晶の{0001}面が互いに、前記接合面に対し垂直な方向を軸に0°超1°以下傾くように接合する接合工程を有する種結晶の製造方法。
  5. 前記二つのSiC単結晶が一つのSiC単結晶を切断して得られたものであり、切断面を前記接合工程における前記接合面とする請求項4に記載の種結晶の製造方法。
  6. 請求項4または5のいずれかに記載の種結晶の製造方法に従ってSiC単結晶接合体からなる種結晶を作製する工程と、
    前記SiC単結晶接合体からなる種結晶の一面にSiC単結晶を結晶成長する結晶成長工程と、を有するSiCインゴットの製造方法。
  7. 前記結晶成長工程において、SiC単結晶を20mm以上結晶成長する請求項6に記載のSiCインゴットの製造方法。
  8. 請求項6または7のいずれかに記載のSiCインゴットの製造方法に従ってSiCインゴットを作製する工程と、
    平面視で前記SiC単結晶接合体からなる種結晶の接合部を避けて前記SiCインゴットを所望の形に加工する加工工程と、を有するSiCウェハの製造方法。
  9. 請求項6または7のいずれかに記載のSiCインゴットの製造方法に従ってSiCインゴットを作製する工程と、
    前記SiCインゴットを厚み方向にスライスし、加工前ウェハを作製する工程と、
    前記加工前ウェハにおける前記SiC単結晶接合体からなる種結晶の接合部に起因して生じる螺旋転位密集部を避けて前記加工前ウェハを所望の形に加工する加工工程と、を有するSiCウェハの製造方法。
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