JP6645436B2 - 高分子組成物、光学フィルム、円偏光板及び表示装置 - Google Patents
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Description
汎用的な合成高分子の大きな問題点は耐熱性である。現在のところ、耐熱性に優れ、生産量とコストが経済的に見合う合成高分子は知られてない。
また、合成高分子は、モノマーの構造を設計したり、様々なモノマーを組み合わせたりすることにより、所望の性能を有する高分子の設計・製造をしている。しかし、モノマーの組み合わせだけで合成高分子の高次構造までも制御することは非常に困難であり、高次構造を制御することで新たな機能を発現させるためには、現代の技術をもってしても莫大なコストと精密な製造施設が必要である。
高次構造が制御された高分子は、様々な性質を付加することが可能であり、特に、光学フィルム等、高分子の異方性を活用する用途において、天然高分子は非常に有用である。また、水素結合等の相互作用が高分子内又は高分子間に形成されている場合には、高次構造が固定化されるため、更に優れた機能を付与することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
光学フィルムとして用いる場合の、カルバメート置換度が制限された範囲での置換セルロースフィルムの報告はあるが(例えば、特許文献1参照。)、カルバメート置換セルロース樹脂だけからなるフィルムは、カルバメート連結部分がアシル連結部分よりも距離が長く自由回転しやすいため配向性が劣悪であり、実際には所望の性能は得られないことがわかった。また、カルバメート基の配向性を向上させるための技術はこれまでに報告されていない。
更に、様々な低分子化合物について効果を検証した結果、高分子に置換基を導入した際に残存する、原料由来の誘導体が、高分子の配向性に影響を与えていることを発見し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
前記高分子が、ヒドロキシ基及びカルバメート基を有し、かつ前記繰り返し単位内に不斉炭素を有する芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子であり、
さらに下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有し、かつ、
前記化合物の含有量が、前記芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子に対して0.005〜20質量%の範囲内であり、
前記高分子が、下記一般式(2)で表される構造を有し、当該一般式(2)のカッコ内のグルコース単位のいずれかの単位内に芳香族又は脂肪族カルバメート基を有し、かつ、
前記高分子におけるグルコース単位内の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子の前記芳香族又は脂肪族カルバメート基による置換度の総和の平均値が、0.01〜1.00の範囲内である
ことを特徴とする高分子組成物。
(Ra−O−) m1 −CO−(NH−Rn) m2
(式中、Raは水素原子又は脂肪族基を表す。Rnは芳香族基又は脂肪族基を表す。m1は0又は1を表す。m1が0を表す場合は、m2は2を表す。m1が1を表す場合は、m2は1を表す。)
グルコース単位内の−L2−R2、−L3−R3及び−L6−R6が、それぞれ独立に−CO−NH−Rcを表し、Rcが芳香族基又は脂肪族基を表す場合の、2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子の−L2−R2、−L3−R3及び−L6−R6による置換度の平均値が、下記式(a)を満たすことを特徴とする第2項に記載の高分子組成物。
式(a):
0.00<{(−L2−R2による置換度)+(−L3−R3による置換度)+(−L6−R6による置換度)}≦2.50
繰り返し単位内に不斉炭素を有する高分子は、不斉炭素周りの置換基の位置が特定の位置に配置されており、この構造が繰り返されることで規則性が生じる。特に、天然高分子の場合には、不斉炭素を有する単位構造が規則的に並ぶため、分子内構造が高次に制御されていると推定される。更に、高分子に修飾基として芳香族又は脂肪族カルバメート基を導入した場合、繰り返し単位内にヒドロキシ基を有することにより、分子内・分子間水素結合が生じて高分子の構造が固定化されるため、芳香族又は脂肪族カルバメート基によって高分子の配向性がより高くなると考えられる。
その上、芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子と、未反応原料、反応副生成物又は別途添加された一般式(1)で表される構造を有する化合物が高分子組成物として共存することにより、水素結合に加えてπ−πスタックの効果または疎水性相互作用等の効果により、カルバメート置換高分子の置換基の間に当該化合物が入り込んで、それぞれの基が一方向に配向しやすくなると推察される。
前記高分子が、前記一般式(2)で表される構造を有し、当該一般式(2)のカッコ内のグルコース単位のいずれかの単位内に芳香族又は脂肪族カルバメート基を有し、かつ、
前記高分子におけるグルコース単位内の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子の前記芳香族又は脂肪族カルバメート基による置換度の総和の平均値が、0.01〜1.00の範囲内である
ことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する技術的特徴である。
本発明の高分子組成物は、繰り返し単位を有する高分子を含有する高分子組成物であって、
前記高分子が、ヒドロキシ基及びカルバメート基を有し、かつ前記繰り返し単位内に不斉炭素を有する芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子であり、
さらに下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有し、かつ、
前記化合物の含有量が、前記芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子に対して0.005〜20質量%の範囲内であり、
前記高分子が、下記一般式(2)で表される構造を有し、当該一般式(2)のカッコ内のグルコース単位のいずれかの単位内に芳香族又は脂肪族カルバメート基を有し、かつ、
前記高分子におけるグルコース単位内の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子の前記芳香族又は脂肪族カルバメート基による置換度の総和の平均値が、0.01〜1.00の範囲内である
ことを特徴とする。
以下に、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子について説明する。
一般式(1)で表される構造を有する化合物について説明する。
一般式(1)
(Ra−O−)m1−CO−(NH−Rn)m2
式中、Raは水素原子又は脂肪族基を表す。Rnは芳香族基又は脂肪族基を表す。m1は0又は1を表す。m1が0を表す場合は、m2は2を表す。m1が1を表す場合は、m2は1を表す。Rnで表される芳香族基としては、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基又は置換ヘテロアリール基のいずれかを表すものとする。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、トリフェニレニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フリル基及びイミダゾリル基等が挙げられる。
Rnで表される芳香族基として、特に好ましいものは、フェニル基、ナフチル基又はチエニル基であり、その中でもフェニル基が特に好ましい。
Rnで表される脂肪族基としては、メチル基、エチル基又はイソプロピル基等のアルキル基であることが水素結合と疎水性相互作用の両者の効果の点で特に好ましい。
脂肪族基の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等が挙げられる。
脂肪族基としては、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基等が挙げられる。これらの基は更に他の基で置換されていてもよい。当該置換基としては例えば、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基及びカルバモイル基等が含まれる。
例えば、フェニルイソシアネートが水分と熱で加水分解・脱炭酸してアニリンが生成する場合、アニリンと残ったフェニルイソシアネートから、ジフェニル尿素が生成する。また、フェニルイソシアナートがメタノールと反応するとフェニルカルバミン酸メチルが、水と反応するとカルバミン酸が生成する。
本発明に係る芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子とは、繰り返し単位内に少なくとも一つの不斉炭素を有し、更に、芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子全体として少なくとも一つ以上のヒドロキシ基及び芳香族カルバメート基又は脂肪族カルバメート基を有する高分子である。
本発明において不斉炭素とは、4個の互いに異なる原子や原子団と結合している炭素のことを意味する。
芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子全体に占めるヒドロキシ基の割合として、好ましくは、1〜30質量%、より好ましくは、5〜20質量%の範囲内である。
一般式(A)
*−O−CO−NH−Rc
一般式(A)において、Rcは芳香族基又は脂肪族基を表す。
また、芳香族基や脂肪族基がカルバメート基に結合していることから、水素結合に加えて、π−πスタックや疎水性相互作用等の相互作用は形成されやすいため、芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子の置換基の間に一般式(1)で表される構造を有する化合物が入り込んで、それぞれの基が一方向に配向しやすくなると推察される。
また、一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量は、芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子に対して0.005〜20質量%の範囲内であり、0.01〜10質量%の範囲内が好ましく、0.01〜5質量%の範囲内がより好ましい。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基及びトリフェニレニル基等が挙げられる。
ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基及びフリル基、イミダゾリル基等が挙げられる。
脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。
具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等が挙げられる。
これらの基は更に他の基で置換されていてもよい。当該他の基としては、一例として脂肪族基が挙げられ、一般式(1)で含まれる脂肪族基を同様に用いることができる。
*は、芳香族又は脂肪族カルバメート基が高分子に結合する部分を表す。
芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子は、下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
式(a):
0.00<{(−L2−R2による置換度)+(−L3−R3による置換度)+(−L6−R6による置換度)}≦2.50
変性置換基2による置換度は、0.00より大きく2.50以下であることが好ましく、0.01〜1.00の範囲内が更に好ましく、0.01〜0.50の範囲内がより好ましく、0.03〜0.30の範囲内が特に好ましい。
本発明の芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子の合成方法について説明する。
本発明の芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子の具体的な製造方法としては、原料の高分子をピリジン等に溶解し、この溶解液の中に所定量のフェニルイソシアネート等のイソシアネート系化合物を滴下して反応させることができる。反応時間としてはカルバメート置換基の置換度にも依存するが、2〜10時間程度の反応で反応させることができる。
反応物は、例えばメタノール等のカルバメート変性高分子組成物の貧溶媒を過剰量添加することにより沈殿させ、濾別することができる。沈殿物の回収はろ布、ガラスフィルター等の公知のものを適宜使用することができ、ガラスフィルターが特に好ましい。
濾過物は、真空乾燥等の公知の乾燥により乾燥して得られる。乾燥の程度は質量を測定して、減少が見られない恒量であることを確認すればよい。
反応溶媒としては、原料や生成物の溶解性に優れ、かつ反応を阻害しないような溶媒であれば特に限定されず、原料の種類等により適宜選択できる。
そのような溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ギ酸メチル等のエステル系溶媒や、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ニトロメタン等の含窒素化合物や、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類(環状エーテル類、鎖状エーテル類)や、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素や、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物等が例示される。
これらの中でも、原料や生成物の溶解性等の点でピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタンが好ましく、特にピリジンが好適である。溶媒は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
反応系中における濃度は、溶解度や反応効率等を考慮して適宜選択できるが、一般には2〜50質量%、好ましくは5〜20質量%程度である。
反応溶媒としては、高分子組成物を溶解する溶媒であれば特に制限はないが、好ましくは、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、アセトン及びテトラヒドロフラン等が例として挙げられる。
反応温度は原料の種類によって調整することができるが、好ましくは、10〜100℃、より好ましくは、40〜80℃である。10℃以上では、イソシアネート等の反応剤の反応性が最適であり、反応時間がかかりすぎることもない。また、100℃以下であることで、塩基が共存する反応溶液中で高分子が分解したり、反応生成物の着色度が上昇したりすることを抑制することができる。
得られた芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子は、再沈殿等の通常の操作により単離、精製可能である。
反応溶液からの再沈殿操作の際に用いる溶媒(再沈殿溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素や、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素や、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素や、メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素や、ニトロメタン等のニトロ化炭化水素や、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリルや、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテルや、アセトン、メチルエチルケトン等のケトンや、酢酸等のカルボン酸や、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネートや、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコールや水が挙げられる。
再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。再沈殿操作は、撹拌槽等の慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
再沈殿した高分子組成物は、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性のろ材を用い、必要であれば加圧下で行ってもよい。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは40〜80℃程度の温度で行われる。
表1に芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子の原料となる高分子の一例を示した。表2−1及び表2−2に一般式(2)で表される芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子の一例を示した。表3−1及び表3−2に一般式(1)で表される構造を有する化合物の一例を示した(以下、「芳香族又は脂肪族化合物」と表中で表記する。)。表4−1及び表4−2に本発明の高分子組成物の一例を示した。なお、原料高分子の2位、3位又は6位について導入された置換基を「変性置換基1」とし、変性置換基1による置換度と、総置換度を表1に示した。また、以下の表中における一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量[質量%]は、置換高分子の質量に対する割合を表している。また、他の高分子の混合比率とは、高分子組成物における含有量を表している。
本発明に係る芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子での各置換基の置換度を求めるためには、最も簡便な方法として核磁気共鳴分析装置を用いることができる。すなわち、本発明に係る芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子は、1H−NMRを用いて各置換基別の置換度を測定することができる。
代表的な例として、フェニルカルバメート置換セルロースアセテートについて具体的に説明する。
フェニルカルバメートセルロースアセテートを重クロロホルムや重ジクロロメタン又は重ジメチルホルムアミド等の溶媒に適当量溶解した上で、ケミカルシフトが7〜8ppm付近の芳香族基由来のプロトンのシグナル強度と、ケミカルシフトが2〜3ppm付近のアセチル基のメチルプロトンとを測定し、これらの強度比から、アシル基置換度及びフェニルカルバメート置換度を算出することができる。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィー GC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製 キャピラリーカラム DB−17(0.32mmφ×30m)
分離条件:初期温度50℃、3分間保持
昇温速度:40℃/min
最終温度:140℃、1.5分間保持
インジェクション温度:250℃
ディテクター温度:250℃
流量:窒素25mL/min
検出器:FID
試料調製:サンプルをテトラヒドロフランにより約10倍に希釈し、トルエンを内部標準物質とした。
他の高分子としては、セルロース、キチン、ヒアルロン酸、デキストリン等を好ましく用いることができる。
本発明の高分子組成物の合成方法の一例を以下に示す。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(A−1)50.0gを入れ、ピリジン250mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)6.3gを加えた。
次に、窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、6時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別して得られた生成物にアセトン40mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
沈殿から濾別して得られた生成物にアセトン30mLを加えて溶解した後、純水400mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別した生成物を水洗し、60℃で4時間真空乾燥することによって、48.0gの高分子組成物P−1を得た。
フェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.01質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ピリジン250mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)6.2gを加えた。
次に、窒素を導入し、撹拌しながら120℃に昇温した後、4時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別して得られた生成物にジクロロメタン40mLを加えて溶解した後、イソプロピルアルコール300mL及び純水300mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
沈殿から濾別して得られた生成物にアセトン30mLを加えて溶解した後、純水400mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別した生成物を水洗し、60℃で4時間真空乾燥することによって、45.5gの高分子組成物P−9を得た。
フェニルカルバミン酸メチル及びジフェニル尿素の含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、それぞれ、0.01質量%、0.05質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ジメチルイミダゾリジノン200mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)7.5gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、6時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で4時間真空乾燥することによって、45.3gの高分子組成物P−16を得た。フェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.10質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ピリジン250mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)8.5gを加えた。
次に、窒素を導入し、撹拌しながら120℃に昇温した後、3時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別して得られた生成物にテトラヒドロフラン40mLを加えて溶解した後、イソプロピルアルコール300mL及び純水300mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
沈殿から濾別して得られた生成物にアセトン30mLを加えて溶解した後、純水400mL中に滴下して沈殿を生成させた。沈殿から濾別した生成物を水洗し、60℃で4時間真空乾燥することによって、45.5gの高分子組成物P−24を得た。
ジフェニル尿素の含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.10質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機、温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ジメチルホルムアミド200mLとピリジン10mLを加えて懸濁液とした後、さらにm−トリルイソシアネート(東京化成工業製)8.1gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、8時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にアセトン30mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、50.1gの高分子組成物P−27を得た。m−トリルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.10質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機、温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ピリジン300mLを加えて懸濁液とした後、さらにエチルイソシアネート(東京化成工業製)4.1gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、8時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にアセトン30mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、50.1gの高分子組成物P−38を得た。ジエチル尿素の含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.10質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機、温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ピリジン300mLを加えて懸濁液とした後、さらにヘキシルイソシアネート(東京化成工業製)6.1gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、8時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にアセトン30mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、50.1gの高分子組成物P−52を得た。ジヘキシル尿素の含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.10質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−3)50.0gを入れ、N−メチルピロリドン200mLとピリジン10mLを加えて懸濁液とした後、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアネート(東京化成工業製)9.3gを加えた。窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、10時間反応させた。
その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にアセトン30mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、52.0gの高分子組成物P−68を得た。3,5−ジメチルフェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.01質量%であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ジメチルホルムアミド200mLとピリジン20mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)4.2gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、18時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にジクロロメタン50mLを加えて溶解した後、メタノール500mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、得られたポリマーを、テトラヒドロフラン50mLに溶解し、メタノール500mLに滴下して沈殿を生成させた。濾別後メタノールで洗浄し、更に、再度、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、メタノール300mLに滴下して、沈殿を生成させた、濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、40.1gの比較高分子組成物E−1を得た。フェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、測定限界以下(0.0000質量%)であった。
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ジメチルホルムアミド200mLとピリジン20mLを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)4.2gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、18時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にテトラヒドロフラン50mLを加えて溶解した後、メタノール300mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、得られたポリマーを、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、メタノール300mLに滴下して沈殿を生成させた。濾別後メタノールで洗浄し、更に、再度、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、メタノール200mLに滴下して、沈殿を生成させた、濾別後、メタノールで洗浄し、60℃で8時間真空乾燥することによって、45.3gの比較高分子組成物E−2を得た。フェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.0008質量%であった。
前記比較合成例1と同じ方法で合成した比較高分子組成物E−1に安息香酸メチル0.0005質量%を添加して、比較高分子組成物E−7とした。
冷却管、窒素導入管、撹拌機、温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したセルロースアセテート(M−1)50.0gを入れ、ジメチルホルムアミド200mL及びピリジン20mLを加えて懸濁液とした後、さらに塩化ベンゾイル(東京化成工業製)4.5gを加えた。
窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、6時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をメタノール500mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られた高分子にアセトン40mLを加えて溶解した後、メタノール200mL及び純水200mL中に滴下して沈殿を生じさせた。
濾別後、メタノールで洗浄し、得られたポリマーを再度、アセトン30mLに溶解し、純水400mL中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後水洗し、60℃で4時間真空乾燥することによって、43.8gの比較高分子組成物E−11を得た。
安息香酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.001質量%であった。
前記方法で作製した30.00gの高分子組成物E−1に、フェニルカルバミン酸メチル3.0mgを添加し、高分子組成物P−1を得た。フェニルカルバミン酸メチルの含有量はガスクロマトグラフィーによる定量の結果、0.01質量%であった。
前記方法で作製した40.0gの高分子組成物P−1に、樹脂(M−1)10.0gを加え、均一になるように、よくかき混ぜて、高分子組成物P−2を得た。
本発明の光学フィルムは、上記説明した本発明の高分子組成物を含有することを特徴とし、さらには、λ/4位相差フィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいては、長尺状フィルムであり、長手方向に対し40〜50°の範囲内に遅相軸を有することが好ましい。
このように長尺方向に対する遅相軸の角度を40〜50°の範囲内とする方法としては、成膜された延伸前のフィルムに対して、後述する斜め延伸を行う方法を挙げることができる。
また、特に「λ/4位相差フィルム」とは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となる特性を備えた光学フィルムをいう。
本発明の光学フィルム(以下、本発明の位相差フィルムともいう。)は、可視光の波長の範囲において円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において、おおむね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。
式(i)
Roλ=(nxλ−nyλ)×d
Rtλ=〔(nxλ+nyλ)/2−nzλ〕×d
上記式(i)において、λは測定に用いた光波長(nm)を表し、nx、ny、nzは、それぞれ23℃、相対湿度55%の環境下で測定され、nxはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率)を表し、nyはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、nzはフィルム面内に垂直な厚さ方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
本発明の光学フィルムにおいて、Ro550が120〜160nmの範囲内であれば、波長550nmにおける位相差がおおむね1/4波長となり、このような特性を備えた光学フィルムを用いて円偏光板を作製し、例えば、表示装置にこの円偏光板を具備することにより、様々な使用環境における性能安定性を向上させることができる点で好ましい。
一方、膜厚方向の位相差Rtλは、光波長550nmで測定した位相差Rt550が60〜200nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましく、70〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。Rt550が60〜200nmの範囲内であれば、大画面で斜めから見た場合の色相の変化を防止することができる。
本発明の光学フィルムには、本発明の高分子組成物のほかに、様々な機能を付与する目的で、各種添加剤を含有させることができる。
本発明に適用可能な添加剤は、特に制限はなく、本発明の目的効果を損なわない範囲で、例えば、位相差上昇剤、波長分散改良剤、劣化抑制剤、紫外線吸収剤、マット剤及び可塑剤等を用いることができる。
以下に、本発明の光学フィルムに適用可能な代表的添加剤について示す。
本発明の光学フィルムにおいては、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムを、位相差フィルムのほかに、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や有機EL素子の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ有機EL素子の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、高分子組成物に対して0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」(以上、商品名、BASFジャパン社製)を好ましく使用できる。
本発明の光学フィルムには、劣化防止剤、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル重合禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類等を添加してもよい。劣化抑制剤については、例えば、特開平3−199201号公報、同5−197073号公報、同5−194789号公報、同5−271471号公報、同6−107854号公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤の添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、光学フィルムの作製に用いる高分子組成物溶液(ドープ)の0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.2質量%の範囲内であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(略称:BHT)、トリベンジルアミン(略称:TBA)を挙げることができる。
本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。
当該マット剤微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。これらのマット剤微粒子の中では、ケイ素を含むものが、濁度(ヘイズ)が低くなる点で好ましく、特に、二酸化ケイ素が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子は、一次平均粒子サイズが1〜20nmの範囲内であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。一次平均粒子サイズは、さらには5〜16nmの範囲内のものが光学フィルムのヘイズを下げることができる観点から好ましい。見かけ比重は、さらには90〜200g/リットルの範囲内であることが好ましく、100〜200g/リットルの範囲内であることが特に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
二次平均粒子サイズは0.05〜1.0μmの範囲内が好ましく、0.1〜0.7μmの範囲内がさらに好ましく、0.1〜0.4μmの範囲内が特に好ましい。一次粒子及び二次粒子サイズは、光学フィルム中の微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする。
これらの中でも、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが、一次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
マット剤微粒子の表面は疎水化処理が施されているため、疎水性を有する添加剤が添加されると、マット剤微粒子表面に添加剤が吸着され、これを核として、添加剤の凝集物が発生しやすい。
したがって、相対的に親水的な添加剤をあらかじめマット剤微粒子分散液と混合した後、疎水的な添加剤を混合することにより、マット剤表面での添加剤の凝集を抑制することができ、ヘイズが低く、液晶表示装置に組み込んだ際の黒表示における光漏れが少なく好ましい。
本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶媒等と混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%の範囲内が好ましく、10〜25質量%の範囲内がさらに好ましく、15〜20質量%の範囲内が特に好ましい。分散濃度が高い方が同量の添加量に対する濁度が低くなり、ヘイズや凝集物の発生を抑制することができるため好ましい。最終的な高分子組成物のドープ溶液中でのマット剤の添加量は0.001〜1.0質量%の範囲内が好ましく、0.005〜0.5質量%の範囲内がさらに好ましく、0.01〜0.1質量%の範囲内が特に好ましい。
本発明の光学フィルムを製造する方法としては、特段の制限はないが、ソルベントキャスト法(溶液成膜法)により製造する方法が好ましい。ソルベントキャスト法は、高分子組成物を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて光学フィルムを製造する。
ドープの調製に用いる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル類、炭素原子数が3〜12のケトン類、炭素原子数が3〜12のエステル類及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素類から選ばれる溶媒を用いることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等が挙げられる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
前記ドープは、0℃以上の温度(常温又は高温)条件下で、一般的な方法で、調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
前記ドープは、常温(0〜40℃)で高分子組成物と有機溶媒とを撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で撹拌してもよい。具体的には、高分子組成物と有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃の範囲内であり、さらに好ましくは80〜110℃の範囲内である。
加熱する場合、容器の外周部より加熱する方法が好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設ける方法、容器の外周部に配管を設置して配管内に加熱した液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
また、容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて撹拌することが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にも、高分子組成物を溶解させることができる。なお、通常の溶解方法で高分子組成物を溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法を適用することにより、迅速で均一な溶液が得られる効果がある。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、特に好ましくは−50〜−30℃)の範囲内で冷却する。
冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却により、高分子組成物と有機溶媒の混合物は固化する。
なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが好ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが好ましい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることがより好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
調製した芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子及び一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により高分子組成物を有する光学フィルムを製造する。
本発明の光学フィルムは、上述のように溶液成膜法によって製造することが好ましい態様である。
溶液成膜法では、本発明で規定する特性を満たす高分子組成物及び各種添加剤等を有機溶媒に加熱溶解させてドープを調製する工程、調製したドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、剥離したウェブを延伸又は収縮する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程等が含まれる。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
ドラム又はバンド上での乾燥は、流延膜に対し空気又は窒素等の不活性ガスを送風することにより行うことができる。
流延前のドープは、固形分量が5〜40%の範囲内となるように濃度を調整することが好ましい。
ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)は、上記のとおり、光波長550nmで測定した面内位相差Ro550が120〜160nmの範囲内であることが好ましいが、上記のようにして成膜した光学フィルムを延伸することによって、その特性を付与することができる。
本発明に適用が可能な延伸方法は、特に限定されず、例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その間で、複数のローラー間での周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に従って広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法を、単独又は組み合わせて採用することができる。
延伸工程としては、通常、幅手方向(TD方向)に延伸し、搬送方向(MD方向)に収縮する場合が多いが、収縮させる際、斜め方向に搬送させると主鎖方向を合わせ易くなるため、位相差発現効果はさらに大きい。収縮率は搬送させる角度によって決めることができる。
図1において、光学フィルムFを参照符号12の方向に斜め延伸する際に、光学フィルムFは、斜め屈曲されることでM2に収縮する。すなわち、光学フィルムFを把持した把持具が屈曲角度θで進行する場合、屈曲角度θで屈曲し、M1だけ進行する。このとき、フィルムの入り方向(延伸方向(TD方向)11と直交する方向)には、把持具はM2だけ進行しているため、光学フィルムFは、M1−M2だけ収縮したこととなる。
このとき、収縮率(%)は、
収縮率(%)=(M1−M2)/M1×100で表される。屈曲角度をθとすると、
M2=M1×sin(π−θ)となり、収縮率は、
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100で表される。
長尺円偏光板の生産性を考慮すると、本発明の光学フィルム(位相差フィルム)は、搬送方向に対する配向角が45±2°であることが、偏光フィルムとのロール・to・ロールでの貼合が可能となり好ましい。
次いで、45°の方向に延伸する斜め延伸方法について、さらに説明する。
本発明の光学フィルムの製造方法において、延伸にする光学フィルムに斜め方向の配向を付与する方法として、斜め延伸装置を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な斜め延伸装置としては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、フィルムの配向軸をフィルム幅方向にわたって左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
一般的に、斜め延伸装置においては、図2に示されるように、長尺のフィルム原反の繰出方向D1は、延伸後の延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、繰出角度θiを成している。繰出し角度θiは、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。
なお、本明細書において、長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍又はそれ以上の長さを有するものをいう。
このとき、斜め延伸装置入口(図中Gの位置)で相対していた左右の把持具は、左右非対称なレールJi、Jo上を走行するにつれて、Ji側を走行する把持具Ciは、Jo側を走行する把持具Coに対して進行する位置関係となる。
さらに詳しく説明すると、本発明の光学フィルムを製造する方法においては、上記で説明した斜め延伸可能なテンターを用いて斜め延伸を行うことが好ましい。
この延伸装置は、加熱ゾーンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。
延伸装置の入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、加熱ゾーン内にフィルムを導き、延伸装置の出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、延伸装置の出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
本発明で用いられる斜め延伸装置では、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい(図2中の○部は連結部の一例を示している)。
左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口においてシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。
一般的な延伸装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。延伸ゾーンでは、上記のような斜め延伸が行われるが、必要に応じて斜め延伸前後において縦方向又は横方向に延伸してもよい。斜め延伸の場合、屈曲時に遅相軸とは垂直の方向であるMD方向(進相軸方向)への収縮を伴う。
なお、幅方向の厚さムラを制御するために、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差をつけるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御する等の公知の手法を用いることができる。
延伸工程における延伸倍率(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.8の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向の厚さムラを小さくすることができる。
斜め延伸装置の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差をつけると幅方向の厚さムラをさらに改善することが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
図3は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反ローラーから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図であり、一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンを示す。
図4は、本発明に適用可能な他の製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図であり、長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示す。
図3及び図4において、符号15は斜め延伸装置、符号16はフィルム繰り出し装置、符号17は搬送方向変更装置、符号18は巻取装置、符号19は成膜装置を示している。それぞれの図において、同じものを示す符号については省略している場合がある。
図3A〜図3Cは、フィルム繰り出し装置16及び搬送方向変更装置17の配置をそれぞれ変更したパターンを示している。
図4A及び図4Bは、成膜装置19により成膜されたフィルムを直接延伸装置15に繰り出すパターンを示している。
フィルム繰り出し装置16及び搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。また、フィルム繰り出し装置16及び搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの範囲内で調整することである。
本発明の光学フィルム(λ/4位相差フィルム)は、上記説明した溶液成膜法のほかに、溶融成膜法によって成膜してもよい。
溶融成膜法は、高分子組成物及び可塑剤等の添加剤を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性の熱可塑性樹脂を含む溶融物として流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法としては、例えば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類することができる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出成形法が好ましい。
ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば、乾燥高分子組成物や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し、一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷又は空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよく、又はそれぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
なお、マット剤微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
上記ペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度としては200〜300℃の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップし、冷却ローラー上で固化させる。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
可塑剤や微粒子等の添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラーとしては、公知の弾性タッチローラーを使用することができる。弾性タッチローラーは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラーからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
延伸及び収縮する方法は、上記のような公知のローラー延伸装置や斜め延伸装置等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
なお、本発明でいう「実質的に45°」とは、40〜50°の範囲内であることをいう。
上記した本発明の光学フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸若しくは吸収軸との角度とは、41〜49°の範囲内であることが好ましく、42〜48°の範囲内であることがより好ましく、43〜47°の範囲内であることがさらに好ましく、44〜46°の範囲内であることが特に好ましい。
本発明の円偏光板は、長尺状の保護フィルム、長尺状の偏光子及び長尺状の本発明の光学フィルム(λ/4位相差フィルム)をこの順に有する長尺ロールを断裁して作製されることが好ましい。
本発明の円偏光板は、本発明の光学フィルムを用いて作製され、特に、λ/4位相差フィルムを用いて作製されることが好ましいため、後述する表示装置等に適用することにより、可視光の全波長において、有機EL素子の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現し得ることができる。その結果、観察時の映り込みを防止することができるとともに、黒色表現を向上させることができる。
視認側の保護フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、偏光子と有機EL素子の両方を紫外線に対する保護効果を発現できる観点から好ましい。
さらに、発光体側の位相差フィルムも紫外線吸収機能を備えていると、有機EL素子を具備する表示装置に用いた場合に、より有機EL素子の劣化を抑制し得る。
具体的には、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中又は乾燥工程後に、偏光子と位相差フィルムを貼合する工程を組み込むことでき、それぞれを連続的に供給することができ、かつ、貼合後もロール状態で巻き取ることにより、次工程に一貫した製造ラインでつなげることができる。
本発明の円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルム(λ/4位相差フィルム)と保護フィルムによって挟持されることが好ましく、該保護フィルムの視認側に硬化層が積層されることが好ましい。
当該円偏光板は、液晶表示装置や有機EL画像表示装置に具備することができるが、有機EL画像表示装置に適用することにより、有機EL発光体の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現する。
当該円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムとによって挟持されることが好ましい。
このような保護フィルムとしては、他のセルロースエステル含有フィルムが好適に用いられ、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製)が好ましく用いられる。
保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは10〜70μmの範囲内である。
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、その例には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが含まれる。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後、染色するか又はポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理をさらに行って得ることができる。
偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲内が好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明の光学フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、当該光学フィルムをケン化処理した後、完全ケン化型のポリビニルアルコール系接着剤を用いて行うことができる。
また、活性光線硬化性接着剤等を用いて貼り合わせることもできるが、得られる接着剤層の弾性率が高く、偏光板の変形を抑制しやすい点等から、光硬化性接着剤を用いる貼り合わせであることが好ましい。
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。
偏光板は、(1)光学フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、(2)偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、(3)得られた接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを貼り合わせる貼合工程、及び(4)接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。(1)の前処理工程は、必要に応じて実施すればよい。
前処理工程では、光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。
偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムを接着させる場合は、それぞれの光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。
易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。
偏光子又は光学フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。
また、偏光子と光学フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させた後、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
こうして光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程に供される。
この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。
また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムが重ね合わされる。そして、通常は、この状態で両面(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と光学フィルム側、また偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の光学フィルム側)からロール等で挟んで加圧することになる。
ロールの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。
偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射してもよい。
また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができ、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、電子線又は紫外線が好ましく用いられる。
照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、さらに好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が上記範囲内であれば、接着剤が十分に硬化し、また、透明光学フィルムや偏光子にダメージを与えることなく、機械的強度の低下や黄変を防止し、所定の光学特性を得ることができる。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
本発明の表示装置は、本発明の光学フィルムを具備して作製される。
また、本発明の表示装置は、本発明の位相差フィルムを用いた円偏光板と、有機EL素子とを備えることが好ましい。本発明の位相差フィルムを用いることで、観察する際の映り込みを防止することができ、黒色表現が向上した有機EL表示装置を得ることができるためである。
表示装置の画面サイズは、特に限定されず、20インチ以上とすることができる。
図5は、本発明の表示装置が有機EL素子を備える場合の構成の概略的な説明図である。本発明の表示装置の構成は、図5に示されるものに何ら限定されるものではない。
硬化層112は、表示装置の表面のキズを防止するだけではなく、長尺円偏光板による反りを防止する効果を有する。
さらに、硬化層上には、反射防止層113を有していてもよい。
上記有機EL素子自体の厚さは、1μm程度である。
ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、これらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Li等の金属電極を用いている。
このような構成の表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。そのため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、表示装置の表示面が鏡面のように見える。
位相差フィルム及び偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。
特に、位相差フィルムをλ/4位相差フィルムで構成し、かつ偏光子と位相差フィルムとの偏光方向のなす角を45°又は135°に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムに再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
また、比較例として用いる置換高分子、芳香族又は脂肪族化合物(以下、「芳香族又は脂肪族化合物」と表中で表記する。)及び高分子組成物については表5−1から表5−3に示した。なお、置換高分子の原料としてM−6、M−7及びM−8を用いた実験例は、参考例とする。
〔位相差フィルムF−3の作製〕
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
溶解タンクにジメチルクロライドを50質量部入れ、ジメチルクロライドを十分に撹拌しながら上記調製した微粒子分散液の50質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が、所定の大きさとなるようにアトライター(日本コークス工業社製)にて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液を調製した。
次に、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、前記合成した高分子組成物P−1を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。
次いで、微粒子添加液を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
高分子組成物P−1 100質量部
微粒子添加液 2質量部
上記調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した後、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。
剥離した原反フィルムを、加熱しながらテンターを用いて、幅手方向(TD方向)にのみ一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーを介して搬送させながら乾燥を終了させ、ロール状の原反フィルムを作製した。
この原反フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、搬送方向に対して、フィルムの光学遅相軸が45°となるよう斜め方向に延伸することでロール状の位相差フィルムF−3を作製した。
なお、延伸条件としては、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro550が147nm、膜厚が50μm、Ro450/Ro550が0.82となるように、原反フィルムの膜厚、延伸温度、幅手方向(TD方向)及び搬送方向(MD方向)の延伸倍率を適宜調整して行った。
上記位相差フィルムF−3の作製において、高分子組成物の種類を、表6−1から表6−3に記載の高分子組成物にそれぞれ変更した以外は同様にして、位相差フィルムF−1、F−2、F−4〜F−98を作製した。
なお、延伸条件としては、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro550、DSP(Ro450/Ro550)が表7−1及び表7−2に記載の値となるように、延伸温度、幅手方向(TD方向)及び搬送方向(MD方向)の延伸倍率を適宜調整して行った。
得られた光学フィルムの波長550nmにおける、幅手方向の中央部の位相差値を測定した。測定には自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で2時間調湿し、測定波長が550nmにおいて、3次元複屈折率測定を行い、測定値を次式に代入してフィルム厚さ50μmにおける位相差値を求めた。得られた結果を表7−1及び表7−2に示す。
式(I):面内リターデーションRo=(nx−ny)×d
式中、dはフィルムの厚さ(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)である。
得られた光学フィルムの幅手方向の中央部のリターデーション値を測定した。測定には自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で2時間調湿し、波長が450nmと550nmにおいて、3次元複屈折率測定を行い、測定値を前記の式(I)に代入してRoの値を求めた。得られたRoを下記の式(II)に代入して波長分散性(DSP)を求めた。この値が1.10以下であることが好ましい。得られた結果を表7−1及び表7−2に示す。
式(II):波長分散性=Ro(450nm)/Ro(550nm)
位相差フィルムの配向係数を下記の方法に従って測定した。
はじめに、配向係数について説明する。
本発明において、配向係数の測定は、一軸配向係数(配向係数fxy)を採用した。
配向係数fxyは、下式に従って求めることができる。なお、fxyの詳細については、P.A.Floumoy,and W.J.Schaffers,Spectrochimica Acta,22,5(1966)を参考にすることができる。
D0=cot2(δ)
であり、δは分子振動により形成される遷移モーメントベクトルと、分子軸とのなす角度である。これを厳密に計算するには分子振動のモーメントの方向を調べる必要があるが、通常は分子軸に平行な振動モードと垂直なモードを選び、これをそれぞれ0°、90°として計算すれば十分配向性に関する情報が得られる。
この配向係数は理論上、無配向の場合は0、観測方向に完全に配向している場合には1.0、逆に観測方向と直交している場合は−0.5となる。
各位相差フィルムについては、セルロース骨格部のO−C−C伸縮振動(1039±10cm−1の最大ピーク値)を、分子軸に平行な振動モード(δ=0°)として計算した。ベースラインは、C−C−Oについては1510〜1530cm−1間の最小値と930〜1000cm−1間の最小値を結んだ直線とする。
赤外二色比の測定には、減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用いて測定した。なお、具体的な計算方法については、J.P.Hobbs,C.S.P.Sung(J.P.Hobbs,C.S.P.Sung,K.Krishan,and,S.Hill,Macromolecules,16,193(1983))を参考にした。
赤外二色比の求め方は、セルロース基のC−O対称伸縮振動に由来するピーク(1039cm−1±10cm−1の間に現れる最も強いピーク)の強度を測定した。ピーク強度は、そのピークトップの波数(xcm−1とする。)と、x〜(x+50)cm−1のうちの最も吸光度の小さな点とx〜(x−50)cm−1の中の最も吸光度の小さい点を結び、これをベースラインとし、そこからのピーク強度を測定し求めた。
まず、長手方向に平行に光を入射し、入射面に偏光が垂直な時の吸光度(ATEx)及び入射面に偏光面が平行な時の吸光度(ATMx)を求め、次に幅方向に平行に入射して同様にATEyとATMyを測定し、前述した式を用いて、赤外二色比fxy、fxzを計算した。
測定装置:Thermo社製 NICOLET380
プリズム:ゲルマニウム
プリズムと試料間の圧力:30cN・m
試料をプリズムに押しつける治具の面積:1cm2
入射角:45°
反射回数:1回
分解能:4cm−1
データ補間:0.5cm−1
試料の屈折率は、本発明の高分子組成物では1.477として計算した。また、プリズム(ゲルマニウム)は4.00とした。サンプル表面に入射する光と反射する光で構成される入射面に対して、垂直な偏光及び水平な偏光を、ワイヤーグリッド偏光子を用いて入射し、FTIR−ATRスペクトルを測定した。上記測定を、MD方向をx軸、垂直方向(幅方向TD)をy軸、厚さ方向をz軸に設定して測定した。
JIS K 7136−2000に準拠してヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて、フィルムを23℃・55%RHの条件下、任意の10点をヘイズ測定し、平均値を求めた。得られた結果を下記レベルにランク分けした。
◎:0%以上0.5%未満
○:0.5%以上1.0%未満
△:1.0%以上1.5%未満
×:1.5%以上
下記関係式(r)で定義されるリターデーションの温湿度変化に対する変動幅ΔRoの大きさを評価した。なお、測定装置は自動複屈折率計(王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADH)を用いた。
関係式(r):ΔRo={〔Ro(23℃・10%RH)−Ro(23℃・80%RH)〕/Ro(23℃・55%RH)}×100(%)
また、リターデーションの温湿度変化に対する変動幅ΔRoを下記レベルにランク分けした。
◎:0%以上5%未満
○:5%以上10%未満
△:10%以上15%未満
×:15%以上
巻き取った光学フィルムを、温度23℃、湿度55%RHの環境下で3か月間放置した後、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて測定波長が550nmにおける位相差値Roを測定し、放置前後での位相差値Roの変動を、位相差変動ΔRoとして評価した。位相差変動の評価の基準は、以下のとおりである。
◎:Ro値の最大変動が0である。
○:Ro値の最大変動が0よりも大きく2nm以下である。
×:Ro値の最大変動が5nm以上である。
作製した光学フィルムの流延方向に、目印(十字)を2か所つけて60℃、90%RHで1000時間処理し、処理前と処理後の目印(十字)の距離を光学顕微鏡で測定した。
測定結果から、下記基準で寸法変化を評価することで、光学フィルムの耐久性として、耐湿熱性を評価した。
寸法変化率(%)=〔(a1−a2)/a1〕×100
a1は湿熱処理前の距離、a2は湿熱処理後の距離を表す。
◎:0.3%未満
○:0.3%以上、0.5%未満
△:0.5%以上、0.7%未満
×:0.7%以上
表7−1及び表7−2に、各実施例及び各比較例についての評価の結果を示す。
これに対して、本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する化合物が、0.005%でも高分子組成物に共存していれば、フェニル基の配向性は格段に上がり、配向方向も面内方向に高くなることがわかった。
また、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、原料の反応剤の残り又は副生成物でもあることから、本発明の高分子組成物は精製負荷が小さくて済み、生産効率が上がり、コストも安くなるという利点がある。
(円偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。
実施例1で作製した各光学フィルムの遅相軸と、偏光子の吸収軸とが45°となるように、接着剤を用いて貼合し、偏光子の裏面側には保護フィルム(コニカミノルタタックKC4UY、厚さ40μm、コニカミノルタ(株)製)を水糊によって貼り合わせ、円偏光板を作製した。
3mm厚の50インチ(127cm)用の無アルカリガラスを用いて、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、特開2010−20925号公報の図8に記載された構成からなる有機ELセルを作製した。
上記で作製した各円偏光板の位相差フィルムの表面に接着剤を塗工した後、有機ELセルの視認側に貼合することで表示装置を作製した。
上記作製した各表示装置について、常法に従って、黒の色味特性、反射性(視認性)等の基本的な表示特性を評価し、結果を表8−1及び表8−2に示した。
≪色ムラ≫
23℃、55%RHの環境でディスプレイを黒表示にし、正面及び斜め45°の角度から観察し、色ムラを下記基準で評価した。
A:色ムラは観測されなかった。
B:表示面の1/8以下の面積で弱い色ムラが観測された。
C:表示面の1/8を超えて1/4以下の面積で弱い色ムラが観測された。
D:表示面の1/4を超える面積で弱い色ムラが観測された。
E:表示面の1/4を超える面積で強い色ムラが観測された。
ここで、Cレベル以上であれば実用上問題はないが、Bレベル以上であることが好ましく、Aレベル以上であることが特に好ましい。
23℃、55%RHの環境でELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて23℃20%RH、更に23℃80%RHの環境下で、作製した液晶表示装置の視野角を測定し下記基準にて評価した。最後に23℃55%RHの環境でもう一度視野角測定を行い、前記測定の際の変化が可逆変動であることを確認した。なお、これらの測定は、液晶表示装置を当該環境に5時間置いてから測定を行った。
◎:上下左右の視野角変動が0°以上1°未満
○:上下左右の視野角変動が1°以上3°未満
△:上下左右の視野角変動が3°以上5°未満
×:上下左右の視野角変動が5°以上
ここで、△レベル以上であれば実用上問題はないが、○レベル以上であることが好ましく、◎レベル以上であることが特に好ましい。
13 搬送方向
14 遅相軸
D1 繰出方向
D2 巻取方向
F 光学フィルム
θi 屈曲角度(繰出し角度)
Ci、Co 把持具
Ji、Jo レール
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻取装置
19 製膜装置
A 表示装置
B 有機EL素子
C 円偏光板
101 透明基板
102 金属電極
103 TFT
104 有機発光層
105 透明電極
106 絶縁層
107 封止層
108 フィルム
109 λ/4位相差フィルム
110 偏光子
111 保護フィルム
112 硬化層
113 反射防止層
Claims (6)
- 繰り返し単位を有する高分子を含有する高分子組成物であって、
前記高分子が、ヒドロキシ基及びカルバメート基を有し、かつ前記繰り返し単位内に不斉炭素を有する芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子であり、
さらに下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有し、かつ、
前記化合物の含有量が、前記芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子に対して0.005〜20質量%の範囲内であり、
前記高分子が、下記一般式(2)で表される構造を有し、当該一般式(2)のカッコ内のグルコース単位のいずれかの単位内に芳香族又は脂肪族カルバメート基を有し、かつ、
前記高分子におけるグルコース単位内の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の水素原子の前記芳香族又は脂肪族カルバメート基による置換度の総和の平均値が、0.01〜1.00の範囲内である
ことを特徴とする高分子組成物。
一般式(1)
(Ra−O−)m1−CO−(NH−Rn)m2
(式中、Raは水素原子又は脂肪族基を表す。Rnは芳香族基又は脂肪族基を表す。m1は0又は1を表す。m1が0を表す場合は、m2は2を表す。m1が1を表す場合は、m2は1を表す。)
- 前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記一般式(2)で表される構造を有する芳香族又は脂肪族カルバメート置換高分子に対して0.01〜5質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の高分子組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の高分子組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
- 長尺状フィルムであり、長手方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有することを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
- 請求項3又は請求項4に記載の光学フィルムと、偏光子とが貼合されていることを特徴とする円偏光板。
- 請求項3又は請求項4に記載の光学フィルムが具備されていることを特徴とする表示装置。
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