JP6645387B2 - ワイヤハーネス - Google Patents

Description

本発明は、ワイヤハーネスに関する。

従来、電線をパイプに挿通して保護するようにしたワイヤハーネスが知られている。例えば下記特許文献１に記載のワイヤハーネスは、車両に搭載されるものであり、複数本の電線が一括してパイプに通されて保護されている。

特開２００４−１７１９５２号公報

ところで、近年、車両の安全性を高めるべく、例えば車両の衝突等によりパイプが破損するほどの衝撃を受けた場合であっても、電線が損傷しないように保護することが望まれている。すなわち、パイプが破損した場合であっても、それによって電線の被覆が損傷する事を防ぎ、電線同士が短絡するような事態を招かないようにしたいという要望である。

本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、パイプが破損した場合であっても電線を保護することが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。

本発明のワイヤハーネスは、パイプに挿通される電線と、前記電線のうち前記パイプ内に配される所定の部位を局部的に包囲して保護する保護部材と、を備えているものである。

本発明によれば、例えば車両の衝突等によって損傷する可能性がある部位に保護部材を設けておくことにより、仮にパイプが破損したとしても、電線を保護することができる。また、電線の全長を保護部材で包囲する場合に比して、パイプに電線を通しやすいから、通し作業のためにパイプ径を大きくすることを回避することができる。

実施例１におけるワイヤハーネスであって、車両に搭載された状態を示す概略図 車両に搭載された状態のワイヤハーネスであって、局部的に保護部材が取り付けられている状態を示す一部破断図 電線に取り付けられた状態の保護部材を示す一部拡大斜視図 電線が保護部材に包囲されている状態を示すワイヤハーネスの断面図であって、図２のＡ−Ａ位置における断面に相当する断面図 パイプの端部の構造を示すワイヤハーネスの一部拡大断面図 パイプの端部の構造を示すワイヤハーネスの断面図であって、図５のＢ−Ｂ位置における断面に相当する断面図 実施例２におけるワイヤハーネスであって、パイプの端部の構造を示す一部拡大断面図 パイプの端部の構造を示すワイヤハーネスの断面図であって、図７のＣ−Ｃ位置における断面に相当する断面図

本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明のワイヤハーネスは、複数の前記電線と、絶縁性を有して前記電線に個別に備えられている前記保護部材と、を備えているものとしてもよい。このような構成によれば、仮に電線の絶縁被覆が損傷したとしても、保護部材が絶縁被覆の代わりになるから、電線の短絡を防ぐことができる。

また、本発明のワイヤハーネスは、前記保護部材が、高強度繊維からなるものとしてもよい。このような構成によれば、薄くて強い補強部材を実現することができるから、電線を保護する機能を高めつつ、パイプに通す作業が困難になることを防ぐことができる。

また、本発明のワイヤハーネスは、前記保護部材が、前記電線のうち前記パイプの端縁の内側に位置する部分に備えられているものとしてもよい。このような構成によれば、電線のうちパイプ端に接触する部分が保護部材によって保護されるから、パイプの端縁を覆うプロテクタを省くことができる。

＜実施例１＞
以下、本発明を具体化した一実施例について、図１〜図６を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるワイヤハーネス１０は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されたバッテリ、インバータ等の電気駆動系を構成する各機器Ｍ１，Ｍ２の間を電気的に接続する高圧ハーネスである。ワイヤハーネス１０は、車体フレームの外側となる車体床下を通って、車体前部に設置された機器Ｍ１と、車体後部に設置された機器Ｍ２とを接続するものである。

ワイヤハーネス１０は、飛び石などによる外傷から電線１１を守る保護機能と、電磁ノイズを遮断して周囲に悪影響を及ぼさないようにするシールド機能とを有する金属製のパイプ１２と、パイプ１２に通される複数（本実施例では２本）の電線１１と、を備えたパイプハーネスである。電線１１のうちパイプ１２内に配される所定の部位（以後、被保護部１３と称する）は、保護部材１４によって局部的に包囲されて保護されている。保護部材１４については、後ほど詳しく説明する。

電線１１は、図３に示すように、導体１５を絶縁被覆１６で包囲した周知のものであり、断面円形状をなしている。電線１１は、高圧電線であり、絶縁被覆１６はオレンジ色に着色されている。２本の電線１１は、図２に示すように、一括してパイプ１２に挿通され、両端部はパイプ１２から外側に導出されている。電線１１のうちパイプ１２から外側に引き出されている部分は、可撓性を有するシールド部材１７および外装材１８によって包囲されている。電線１１の両端部には図示しない端子金具が接続され、端子金具は機器Ｍ１，Ｍ２側にそれぞれ接続されるコネクタＣに収容されている。

シールド部材１７は、例えば金属細線を筒状に編み込んでなる編組線であり、外装材１８は、例えばコルゲートチューブである。シールド部材１７の端部は、図５に示すように、パイプ１２の外周側に被せられ、金属製のカシメリング１９によって導通可能に固着されている。

パイプ１２は、断面円形状をなす長尺の金属管体であり、機器Ｍ１，Ｍ２等のレイアウトにより、三次元方向に曲げ加工されている。本実施例では、パイプ１２は、オレンジ色に塗装されたアルミパイプであり、全長２．５ｍ程度とされている。パイプ１２の大部分は車体床下の幅方向における中央部に配置され、パイプ１２の両端部は床下から車室内に入り、それぞれ機器Ｍ１，Ｍ２の近傍に至る。

パイプ１２の両端部には、図５に示すように、パイプ１２の端縁１２Ｅに電線１１が接触して電線１１の絶縁被覆１６が損傷等することを防ぐ樹脂成型品のプロテクタ２１が取り付けられている。プロテクタ２１は、パイプ１２の内側に嵌合可能な筒状をなし、外周面に設けられた係止突起２２がパイプ１２に貫通形成された係止孔２３に嵌合することで固定されている。プロテクタ２１は、パイプ１２の開口端縁１２Ｅを全周にわたって覆っている。

シールド部材１７を包囲して保護する外装材１８とパイプ１２の端部との間にはゴム製のグロメット２４が取り付けられ、パイプ１２の内部に水が浸入することが防止されている。グロメット２４は、結束バンド２５によって、外装材１８及びパイプ１２に締め付けられて固定されている。

さて、保護部材１４は、絶縁性を有し、高強度で耐衝撃性に優れ、撓み性が良いものとされている。保護部材１４は、高強度繊維（例えば耐衝撃性や耐切創性に優れるアラミド繊維や他の各種高強度繊維）を編み込むことで筒状に形成されている。保護部材１４は、パイプ１２の全長に比して非常に短尺（本実施例では全長２０ｃｍ程度）なものとされている。保護部材１４は、全周が閉じるとともに両端が開口した細長い筒状をなし、軸方向及び幅方向に若干の伸縮が可能とされている。保護部材１４の内径寸法は、電線１１の外径寸法と同等とされている。また、保護部材１４の厚さ寸法は、絶縁被覆１６の厚さ寸法と同等もしくは薄い（本実施例では０．３ｍｍ程度）ものとされ、プロテクタ２１の厚さ寸法よりも小さく、パイプ１２の径寸法を増す等しなくてもすむようになっている。

保護部材１４は、パイプ１２に挿通されたすべての電線１１に個別に備えられている。保護部材１４は、各電線１１の被保護部１３に備えられ、すべての電線１１において同じ位置となっている。被保護部１３は既知であり、本実施例では電線１１のうち車両が側面衝突された場合に損傷する可能性がある部位とされている。被保護部１３は、パイプ１２の近傍に配されている図示しないフレーム構造が側面からの衝突により変形し、パイプ１２に当たってパイプ１２を破損させるという想定のもとに決められている。本実施例における被保護部１３は、図２に示すように、電線１１のうち床下に沿って配される部分の前端部に位置する部分（床下から上方に向かう屈曲部分）とされている。保護部材１４は、軸方向の両端部にテープ２６が巻き付けられて、電線１１の被保護部１３に固定されている。

次に、本実施例におけるワイヤハーネス１０の組み立て作業の一例を説明する。
まず、各電線１１の被保護部１３に保護部材１４を取り付ける。保護部材１４の一端側から電線１１を通し、他端側から引き出して、電線１１に保護部材１４を外装させる。電線１１に外装した保護部材１４を、被保護部１３の位置まで移動させ、保護部材１４の両端部にテープ２６を巻き付けて、保護部材１４を電線１１の被保護部１３に固定する。すべての電線１１の被保護部１３に保護部材１４を取り付ける作業を行う。

次に、電線１１をパイプ１２に挿通する。パイプ１２に挿通する電線１１を束ねてパイプ１２の一端側から挿入し、他端側から引き出す。電線１１を通す際、被保護部１３（保護部材１４）がパイプ１２の両端部に取り付けられているプロテクタ２１と接触して若干の抵抗を生じるけれども、プロテクタ２１を通過した後は比較的スムーズにパイプ１２の内部を移動する。

次に、電線１１の両端部にコネクタＣを接続する。パイプ１２の端から外部に引き出されている各電線１１の端末部に端子金具を接続するとともに、各端子金具をコネクタＣに挿入して収容する。これにより、ワイヤハーネス１０の両端部にコネクタＣが接続される。なお、コネクタＣを接続するより前に、シールド部材１７のかしめ付け作業、外装材１８およびグロメット２４の取付作業をしておく。

次に、パイプ１２を所定の形状に曲げ加工する。ワイヤハーネス１０は、車体のレイアウトに沿うように屈曲した形状に形成される。
こうしてワイヤハーネス１０の組み立て作業が完了する。

組み立てられたワイヤハーネス１０が車体に固定されると、保護部材１４は、車体において所定の位置（側面衝突により変形する虞があるフレーム構造の近傍）に配置される。側面衝突によりフレーム構造が変形してパイプ１２を破損させたとしても、パイプ１２の破損部位において電線１１は保護部材１４によって保護されているから、電線１１が損傷することを防ぐことができる。仮に、激しい衝突によって保護部材１４に包囲されている絶縁被覆１６が損傷したとしても、絶縁性を有する保護部材１４によって導体１５が包囲されているから、電線１１が短絡する事態を防ぐことができる。

次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例におけるワイヤハーネス１０は、パイプ１２に挿通される電線１１のうちパイプ１２内に配される被保護部１３（車両の衝突等によって損傷する可能性がある部位）が、保護部材１４によって局部的に包囲されて保護されているものである。この構成によれば、仮にパイプ１２が破損したとしても、電線１１を保護することができる。また、電線１１の全長を保護部材１４で包囲する場合に比して、電線１１をパイプ１２に通しやすいから、通し作業のためにパイプ１２の径を大きくすることを回避することができる。

また、保護部材１４が、絶縁性を有し、２本の電線１１に個別に備えられている。この構成によれば、仮に電線１１の絶縁被覆１６が損傷したとしても、保護部材１４が絶縁被覆１６の代わりになるから、電線１１の短絡を防ぐことができる。

また、保護部材１４が、高強度繊維からなるものである。この構成によれば、薄くて強い補強部材を実現することができるから、電線１１を保護する機能を高めつつ、パイプ１２に通す作業が困難になることを防ぐことができる。

＜実施例２＞
次に、本発明を具体化した実施例２に係るワイヤハーネス３０を図７及び図８によって説明する。
本実施例のワイヤハーネス３０は、保護部材１４を、電線１１のうちパイプ１２の端縁１２Ｅの内側に位置する部分（以後、パイプ端被保護部３１と称する）に備えている点で、実施例１とは相違する。なお、実施例１と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。

本実施例におけるワイヤハーネス３０は、実施例１と同様、パイプ１２に挿通される２本の電線１１を有し、電線１１のうちパイプ１２内に配される被保護部１３が保護部材１４によって局部的に包囲されて保護されている。保護部材１４は、実施例１と同様、高強度繊維からなるものであり、絶縁性を有し、２本の電線１１に個別に備えられている。

保護部材１４は、被保護部１３に加え、電線１１のうちパイプ１２の端縁１２Ｅの内側に位置する部分（パイプ端被保護部３１）にも備えられている。保護部材１４は、被保護部１３に取り付けられるものと同じものである。保護部材１４は、図７に示すように、パイプ１２の外側と内側とに跨って配され、パイプ１２の端縁１２Ｅが保護部材１４の軸方向の中心部に配されるようになっている。

以上のように本実施例においては、実施例１と同様、被保護部１３に備えられた保護部材１４により、車両の衝突等によって仮にパイプ１２が破損したとしても、電線１１を保護することができる。加えて、保護部材１４が、電線１１のうちパイプ１２の端縁１２Ｅの内側に位置する部分に備えられているから、車両の振動やパイプ１２内での電線１１の位置ずれ等によって電線１１がパイプ１２の端縁１２Ｅに繰り返し接触したとしても、その部分が保護部材１４によって保護されるので、パイプ１２の端縁１２Ｅを覆うプロテクタ２１を省くことができる。

＜他の実施例＞
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
（１）上記実施例では、保護部材１４が高強度繊維を筒状に編み込んでなるものとしているが、これに限らず、保護部材は、電線を局部的に包囲して保護可能であればよく、例えば熱収縮チューブ等であってもよい。
（２）上記実施例では、保護部材１４が、高強度繊維を編み込んでなるものとしているが、これに限らず、保護部材は不織布であってもよいし、また高強度繊維を含む樹脂材料やＰＥＴ樹脂等を成形してなるものであってもよい。
（３）上記実施例では、保護部材１４が筒状とされているが、これに限らず、保護部材は例えばシート状であってもよい。
（４）上記実施例では、パイプ１２が金属製とされているが、これに限らず、パイプは樹脂製であってもよい。
（５）上記実施例では、保護部材１４がテープ２６を巻き付けて電線１１に固定されているが、これに限らず、熱溶着等で固定してもよい。
（６）上記実施例では、パイプ１２に通される電線１１が高圧電線である場合について説明したが、これに限らず、パイプに通される電線は低圧電線であってもよく、また、高圧電線および低圧電線の両方であってもよい。パイプの内部において高圧電線と低圧電線とが混在する場合には、例えば高圧電線のみに保護部材を取り付け、高圧電線の短絡を防ぐようにしてもよい。
（７）上記実施例では、電線１１に個別に保護部材１４が取り付けられているが、これに限らず、複数の電線を一括して保護部材によって包囲するようにしてもよい。
（８）上記実施例では、被保護部１３が、車両が側面衝突された場合に損傷する可能性がある部位とされているが、これに限らず、例えば正面衝突や追突、もしくは衝突以外、何らかの衝撃によって損傷する可能性がある部位としてもよい。

１０，３０…ワイヤハーネス
１１…電線
１２…パイプ
１３…被保護部（パイプ内に配される所定の部位）
１４…保護部材
３１…パイプ端被保護部（パイプの端縁の内側に位置する部分）

Claims (6)

1. パイプに挿通される電線と、
   前記電線のうち前記パイプの端縁の内側に位置するパイプ端被保護部とは異なる所定の被保護部を局部的に包囲して保護する保護部材と、
   を備えているワイヤハーネス。
2. 複数の前記電線と、
   絶縁性を有して前記電線に個別に備えられている前記保護部材と、を備えている請求項１に記載のワイヤハーネス。
3. 前記保護部材が、高強度繊維からなるものである請求項１または請求項２に記載のワイヤハーネス。
4. 前記保護部材に加え、前記電線のうち前記パイプの端縁の内側に位置する前記パイプ端被保護部を包囲して保護する別の保護部材を更に備える請求項１ないし請求項３のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
5. 前記保護部材は、前記パイプの屈曲部分に対応する前記電線の前記被保護部に固定される、請求項１ないし請求項４のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
6. 前記保護部材は、軸方向及び幅方向に伸縮する筒状の繊維編み込み部材である、請求項１ないし請求項５のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。

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