本願で開示する炊飯器は、被炊飯物を入れる内鍋と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋の温度を検出する温度センサと、前記内鍋内部の圧力を調整可能な圧力調整手段と、前記温度センサからの温度情報に基づいて前記加熱手段と前記圧力調整手段とを制御して、前記内鍋内部の圧力を一気圧以上として炊飯を行う圧力炊飯工程を含む炊飯プログラムを実行する制御手段とを備えた炊飯器であって、前記炊飯器に外的な要因に起因する異常事態が生じたことを検知可能な検知手段を備え、前記検知手段が前記圧力炊飯工程の実行中に前記異常事態の発生を検知した場合には、前記制御手段は、前記圧力調整手段を調整して前記内鍋内部の圧力を低下させる。
本願で開示する炊飯器は、上記構成を備えることで、内鍋内部の圧力を一気圧以上として炊飯を行う圧力炊飯工程の実行中に、外的な要因に起因する異常事態が生じたことを検知手段が検知した場合に、制御手段が圧力調整手段を調整して内鍋内部の圧力を低下させる。このように、異常事態の発生時に内鍋内部の圧力を低下させることで、蓋体が破損して開放してしまうような事態に至った場合でも、内鍋内部の高温の湯や米が外部に飛散することを防止することができる。この結果、本願で開示する炊飯器は、炊飯器に外的な要因の異常事態が生じた場合にも対応可能な、高い安全性を備えた炊飯器として実現される。
上記本願で開示する炊飯器において、前記検知手段が、前記異常事態として前記炊飯器が所定の角度以上に傾斜したことを検知すること、または、前記検知手段が、前記異常事態として前記炊飯器に所定の大きさ以上の外力が加わったことを検知することが好ましい。このような異常事態が生じれば、蓋体が破損して開放されるような危険な状態が引き起こされる可能性が高く、このような危険な状態での安全対策を確実に行うことができる。
また、前記制御手段は、前記検知手段が前記異常事態の発生を検知した場合に、前記加熱手段への供給電力を低減することが好ましい。このようにすることで、異常事態によって蓋体が開放された危険な状態で、内鍋をより高温になるよう加熱してしまうという事態を回避することかできる。
さらに、前記制御手段は、前記検知手段が前記異常事態の発生を検知した場合に、当該異常事態の発生をユーザに報知することが好ましい。このようにすることで、ユーザに素早く異常事態の発生を知らせることができてユーザ自身が対応する可能性を高めるとともに、異常事態が炊飯器を危険な状態に曝すものでないとユーザが判断する場合には、炊飯プログラムの実行を再開させるように指示することも可能となる。
以下、本願で開示する炊飯器の実施形態として、内鍋内部の圧力を圧力弁により調節して圧力炊飯を行う炊飯器を例示して説明する。なお、本実施形態で例示する炊飯器では、高い蓄熱性によっておいしいお米を炊くことができる、非金属製の内鍋を備えたものを示している。
(実施の形態)
図1は、本実施形態にかかる炊飯器の外観を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態にかかる炊飯器の断面構成を示す垂直方向断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の炊飯器は、米と水、さらに、具入り炊飯モードでは野菜や豆類、肉類などの各種の具である被炊飯物を入れる内鍋30と、この内鍋30を内鍋収容部20aに収容することができる炊飯器本体20と、炊飯器本体20の内鍋収容部20aの上方を開閉可能に覆う蓋体10とを有している。なお、図1、および、図2は、いずれも内鍋収容部20aに内鍋30が収容された状態で、かつ、内鍋収容部20aを覆う蓋体10が閉じた状態を示している。
蓋体10には、ユーザが炊飯器に各種設定を与えるための各種の操作ボタン11と、操作ボタン11による操作状況や炊飯器の動作状態等を表示するための液晶パネルその他の画像表示パネルにより形成された表示部12が配置されている。操作ボタン11は、炊飯ボタン、保温ボタンなどの動作を指示するボタンと、白米炊飯モードや具入り炊飯モードなどの調理メニューを選択したり、保温時間やタイマーを設定したりするメニューボタンとを含む各種のスイッチ類を含む。
蓋体10には、蓋体10が閉じた状態で内鍋30内部の圧力を一気圧以上の所定の圧力に調整可能な、圧力調整手段である圧力弁14が配置されている。
図2では、本実施形態の炊飯器の圧力弁14として、一例であるボール状圧力弁を図示している。なお、図2では、切断面の関係から一つのボール状圧力弁14しか示されていないが、重さの異なる2種類のボール状圧力弁と、これら2つの圧力弁の動作を規制する規制手段を備えることにより、内鍋内部の気圧を、最も気圧の高い高圧状態と、高圧状態よりは低く大気圧よりも高い気圧である低圧状態、大気圧の状態である一気圧状態との3種類の圧力状態とすることができる。
なお、圧力調整手段として圧力弁を用いる場合には、弁の数や形状は上記説明したものに限られず、円板や矩形板などの板状の圧力弁など他の形状の圧力弁を1つ、2つ、もしくは、3つ以上用いるなど、さまざまな形態を採ることができる。さらに、圧力調整手段としては、弁を用いる以外にも、例えば、内鍋内部の圧力を測定する圧力センサと、この圧力センサで検出される圧力の値に基づいて適宜開閉動作を行う、ピエゾ素子などの電動素子または機械的に動作する各種の開閉手段を用いた通気口を用いるなど、さまざまな形態が考えられる。
内鍋30内部の圧力を低下させるために圧力弁14が開放された場合は、内鍋30内部で発生した蒸気が、蓋体10の上面に形成された調圧キャップ13を経由して、調圧キャップ13に形成された蒸気放出口13aを介して外部に放出される。調圧キャップ13は、蓋体10内部に形成されて内鍋30方向に向かう経路15に接続されているため、圧力炊飯時に調圧キャップ13まで上がってきた蒸気が調圧キャップ13内で気液分離して生じた「おねば」は、内鍋30内に戻されるようになっている。
蓋体10の上面における手前側中央部分には、ロックボタン16が設けられ、蓋体10が閉じている状態でロックボタン16を押し込むと、蓋体10のロックが外れ、図示しないバネ機構により蓋体10全体が図1における後方(奥)側に開くようになっている。なお、安全性を高める観点から、炊飯工程の実行中に誤ってユーザがロックボタン16に触れてもロックは解除されず、操作ボタン11から炊飯プログラムの停止が指示されていないと蓋体10が開かないような設定とすることができる。
図2に示すように、蓋体10内部の表示部12の下側に位置する部分に、各種操作ボタン11類に接続された動作回路と、表示部12での表示画像を出力する駆動回路などが含まれた回路部17が配置されている。また、本実施形態の炊飯器において、ユーザにより設定された炊飯モードに従って所定の炊飯プログラムに従った炊飯工程を実行する制御手段が、マイコンを含む制御回路(図示せず)として、回路部17を構成する回路基板上に搭載されている。
本実施形態の炊飯器では、回路部17に配置されたマイコンを含む制御回路が、後述する温度センサからの出力に基づいて加熱手段23(23a、23b、23c)への電力供給を制御して、内鍋30の温度制御を行うとともに、前記した圧力調整手段である圧力弁14を制御して、内鍋30内部の圧力を所定の値に調整する。
なお、加熱手段と圧力調整手段を制御する制御手段である制御回路が、表示部12の下側の回路部17に配置されていることは一例に過ぎない。加熱手段の調整と圧力調整手段の調整とが、それぞれ別の回路基板上に搭載された電気回路で行われる場合もあり、また、加熱手段と圧力調整手段とを制御する制御回路が、蓋体10内の表示部12の下部ではなく、例えば炊飯器本体20内部に配置された回路基板上に配置される場合もある。
蓋体10は、炊飯器本体20のユーザから見て背面側に当たる位置の上部に配置されたヒンジ機構21により炊飯器本体20に対して回動することで、内鍋収容部20aを開閉することができる。そして、蓋体10が閉じられたとき、ロックボタン16に連動する図2では図示しないロック機構により、蓋体10が炊飯器本体20の上面にしっかりと押しつけられた状態で固定される。
蓋体10と炊飯器本体20とがしっかりと押しつけられた状態で固定された際、蓋体10の内側表面に配置されたパッキン材18が、内鍋30の内側面30aの上端部近傍と内鍋30の上端面部分30bとに当接して、蓋体10は、内鍋30の上部開口を気密状態で封鎖することができる。本実施形態の炊飯器では、内鍋30は、内鍋収容部20aの底部に配置された弾性支持機構22によって蓋体10側に付勢されているため、気密状態を確実に維持することができ、内鍋30内部を例えば1.25気圧などの一気圧以上の所定の高圧状態とすることができる。
蓋体10の上面のすぐ裏側であって、表示部12と調圧キャップ13との間の部分には、検知手段である異常センサ41が配置されている。
本実施形態にかかる炊飯器では、異常センサ41は、自身の傾斜角度を検知可能な角度センサと、自身が振動したことを検知可能な振動センサとで構成されている。異常センサ41は、自身の角度が一例として15度以上の所定角度よりも大きく傾斜した場合に、異常事態が生じたものとして所定の信号を出力する。また、異常センサ41は、自身に一例として1G以上の所定の振動が加わった場合に、この加速度の変化から異常事態が生じたものとして所定の信号を出力する。異常センサ41から出力された信号は、制御手段である制御回路に入力される。なお、異常センサ41からの出力信号が入力された場合の制御手段である制御回路の動作については、後に詳述する。
炊飯器本体20の内鍋収容部20aの底面と側面の裏側部分には、加熱手段23としての第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、加熱ヒータ23cが設けられている。
第1のワークコイル23aは、内鍋30の底面31に対向するように内鍋収容部20aの底面の裏側に配置されている。内鍋収容部20aの底面中央には、内鍋30の底面中央部の温度を検出する温度センサであるセンターセンサ24が配置されているため、第1のワークコイル23aは、平面視すると中央に穴の開いた円環(ドーナツ)状になっている。
第2のワークコイル23bは、内鍋30の底面31と側面32との境界に位置する傾斜部分33に対向するように配置されている。第2のワークコイル23bも第1のワークコイル23aと同様に円環状となっている。
これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bは、高周波コイルとも称されるIHコイルであり、コイルに流れる電流により渦電流が生じて誘導加熱が起きるように、内鍋30の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに対向する部分の外面側には、図示しない発熱体が配置されている。発熱体は、銀もしくはステンレスなどの金属薄膜がコーティングされたもの、もしくは、金属箔が転写されたものなどとして非金属製の内鍋30の表面に形成されている。そして、第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに電流を流すことによって発熱体が発熱し、この発熱体の発熱が非金属製の内鍋30の温度を上昇させる。
なお、本実施形態では、発熱体が内鍋30の外表面の、ワークコイル23a、23bに対向する部分に形成された例を示したが、発熱体はワークコイル23からの誘導起電力により発熱して非金属製の内鍋30の温度を上昇させることができる、いずれの位置に配置することもできる。
内鍋30の側面32に対向する内鍋収容部20aの側壁部分の裏側には、側面ヒータ23cが配置されている。この側面ヒータ23cは、電流が流れることにより発熱してその輻射熱で内鍋を温めるものであり、炊飯工程後の保温工程において内鍋30を保温するために使用される。また、炊飯時に側面ヒータ23cに電流を流すことで、側面ヒータ23cを第1のワークコイル23aおよび第2のワークコイル23bとともに、内鍋30を加熱する手段として使用することができる。
本実施形態の炊飯器では、これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cが加熱手段23を構成しており、蓋体10の回路部17に搭載された制御回路により、それぞれに流れる電流量や電流を流す時間の長さが制御されることで、加熱手段23のオンとオフ、また、オンの場合の発熱量の制御が行われる。なお、加熱手段23として、上記の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cの他にも、内鍋収容部20aの周囲の他の部分や蓋体10の内部に、加熱のための誘導加熱コイルやヒータなどを配置することも可能である。
また、本実施形態の炊飯器では、内鍋収容部20aの底部、具体的には、内鍋30の底面31から傾斜部分33にかかる部分と対向する位置に配置された保護枠として、内鍋30と同様のセラミックなどの非金属材料により構成される、かまど部材25が配置されている。このように、発熱体が配置されている内鍋30の部分に対向する位置の内鍋収容部20aに、非金属製の保護枠であるかまど部材25を配置することで、この保護枠部分を樹脂で構成する場合よりも耐熱性が向上する。このため、内鍋30の最高温度としてより高い温度を許容することができ、非金属製の内鍋30の蓄熱効果をより強く発揮させることができる。この結果、本実施形態にかかる炊飯器では、一層おいしいお米を炊くことができる。
炊飯器本体20の背面側に配置されたヒンジ機構21の下部には、炊飯器に電力を供給するために商用電源に接続される、図1に示した電源プラグ26に接続された電源コードを収納するコードリール27などが配置されている。
本実施形態の炊飯器に用いられている内鍋30は、基体が焼き物であるいわゆる土鍋であり、基体部分はコーディエライト系の材料で形成されていて、成分としてSiO2を含んでいる。この基体部分の両面にリチア系の釉薬が塗布され、外表面には発熱体である銀ペーストがコーティングされている。また、内鍋30の被炊飯物に接触する内表面には、アルミ溶射膜を介してフッ素コーティングが施されている。なお、上記内鍋30の構成は例示であり、本実施形態の炊飯器として用いられる非金属製の内鍋としては、セラミックやガラス素材などの非金属製鍋、また、アルミやステンレスの金属層にセラミックや中空ガラスビーズなどの非金属部材の層をコーティングした内鍋などを好適に用いることができる。さらに、本実施形態にかかる炊飯器では、内鍋として、従来周知の銅やアルミ、ステンレスなどの金属層により形成される金属製内鍋を用いることもできる。
また、本実施形態の炊飯器では、センターセンサ24以外にも、例えば蓋体10の内鍋収容部20aと対向する部分や、炊飯器本体20の内鍋30の側面32と対向する部分などに1または2以上の温度センサを配置することができる。本実施形態の炊飯器に用いられるセンターセンサ24をはじめとする各温度センサは、例えばサーミスタに代表される熱的電気素子を用いて構成されるものなどの従来周知の各種の温度センサを、そのまま用いることができる。また、上記したように、内鍋収容部20a内部の圧力を検出可能な圧力センサを配置し、内鍋30内部の圧力数値を制御手段が把握する構成とすることもできる。
なお、図1および図2を用いて説明した本実施形態の炊飯器の全体の形状や、各部材の具体的な構成や配置はあくまで一例に過ぎず、本発明にかかる炊飯器において、上記図1および図2に例示した構成とは異なるさまざまな構成を採用することができる。
以下、本実施形態にかかる炊飯器において、上述した異常センサ41が外的な要因によって炊飯器に異常事態が発生したことを検知した場合の、制御手段である制御回路が行う炊飯器の動作制御について説明する。
図3は、本実施形態にかかる炊飯器における、制御手段である制御回路による動作制御を説明するフローチャートである。図3のフローチャートでは、内鍋内部を一気圧以上の加圧状態として炊飯を行う圧力炊飯実行時における異常発生の際の動作制御を詳細に説明するものである。
本実施形態にかかる炊飯器では、ユーザが内鍋30の中に米と所定量の水を入れ、また、必要に応じて炊き込みご飯用の食材などを内鍋30内に投入した後、蓋体10を閉じてから操作ボタン11によって炊飯の開始を指示すると、制御手段が所定の炊飯プログラムを開始する。
図3に示すように、炊飯プログラムがスタートすると、制御手段は給水工程を開始する(ステップS01)。
吸水工程では、内鍋30内の米が十分な水分を給水することができるように、室温が所定温度よりも低い場合や、炊きあがりまでの時間を短縮する必要がある場合には、制御手段は加熱手段23を動作させて、内鍋30の温度が一例として30℃前後の所定の温度まで上昇するように制御する。吸水工程の後半から、制御手段は加熱手段23への通電量を多くして、内鍋30の温度を例えば50℃となるように上昇させ、その後の昇温工程に移行する。
昇温工程では、制御手段は、ワークコイル23aおよび23bに連続して電力を投入して、内鍋30の温度を一気に100℃近くの温度まで上昇させる。このとき、例えば、図示しない蓋体10の内表面の温度が80℃を超えるなど所定の条件を満たした後に、制御手段は圧力弁14を閉じて圧力炊飯工程が開始される(ステップS02)。
圧力炊飯工程が開始された後、制御手段は異常検知手段である異常センサ41による異常検知を開始させる(ステップS03)。
異常検知の開始は、それまで供給されていなかった異常センサ41への動作電圧の供給を開始するという形式で行うことができる。また、異常センサ41への電源供給は炊飯器の電源がONされると同時に開始しておいて、制御手段が、異常センサ41からの異常発生を知らせる信号を圧力炊飯工程が開始された後に受け取った場合にのみ基づいて、内鍋30内部の気圧を下げるなどの安全対策処置を実行するように設定することもできる。
例えば、本実施形態にかかる炊飯器として例示したように、傾斜センサを含む異常センサ41を蓋体10に配置した場合には、異常センサ41を常に動作させていることによって、蓋体10の傾斜を常に把握することができる。このため、蓋体10が所定の角度以上傾斜していて、蓋体10が未だ閉じられておらず開いた状態のままであることが想定される場合には、仮にユーザが操作ボタン11を操作して炊飯を開始しようとした場合でも、制御手段が炊飯を開始しないような制御を行うことができる。この場合には、制御手段が、蓋体10が正しく閉じられていない可能性があることをユーザに報知し、蓋体10をしっかりと閉じてロックすることをユーザに指示するとともに、炊飯を開始してよいかを改めてユーザに確認してから炊飯を開始するような炊飯プログラムを備えることができる。
圧力炊飯工程の実行中に異常検知手段が外的要因による異常を検知しない場合(ステップS04において「No」の場合)は、制御手段は圧力炊飯プログラムが終了する(ステップS05において「YES」となる)まで、プログラムにしたがって所定の圧力炊飯工程を実行する。
具体的には、制御手段は、昇温工程において圧力弁14を閉じた後、内鍋30内部の圧力を高圧状態である1.25気圧まで上昇させて維持する。その後、ワークコイル23aおよび23bへの投入電力をさらに増加させて、次の炊き上げ工程に移行し、内鍋30内部を沸騰状態に維持する。炊き上げ工程では、内鍋30内の水分が十分蒸発し、内鍋30の外表面の高温部分の温度が上昇して一例として260℃に到達する。
制御手段は、この状態でワークコイル23aおよび23bへの電力投入を停止して、追い炊き工程に移行する。追い炊き工程では、所定間隔でワークコイル23aおよび23bに間欠的に電力を投入する。なお、追い炊き工程でのワークコイルへの間欠的な電力投入の間に、圧力弁14を一旦開放して、内鍋30内部の圧力を昇温工程から維持してきた高圧状態である1.25気圧から低圧状態である1.05気圧まで急激に低下させて、内鍋30内部のお米の間に残った水分を突沸させ、お米の上に乗っている状態の「おねば」をかき混ぜて内鍋30内部のお米の間に行き渡らせることができる。
制御手段は、追い炊き工程で内鍋30内部の圧力を低下させた後、必要に応じて再び加熱を行いむらし工程に移行する。むらし工程の前半の工程では、ワークコイル23aおよび23bに追い炊き工程の時よりもより小さな電力をパルス的に投入して加熱を行った後、内鍋30内部の圧力を大気圧(=一気圧)に戻して圧力炊飯工程を終了する(ステップS06)。
制御手段は、圧力炊飯工程が終了した後に異常センサ41による異常検知を終了する(ステップS07)。
その後制御手段は、例えばむらし工程の後半の工程に移行し、必要に応じて適宜加熱を行って内鍋の温度が下がりすぎない状態で維持し、所定時間経過後に全炊飯工程を終了して保温工程に移行する(ステップS08)。
所定時間の保温工程の終了後、または、終了ボタンの操作や蓋体10のロック機構の解除、あるいは電源スイッチのOFF操作などのユーザによる炊飯終了の操作がなされることで、炊飯プログラムが終了する。
圧力炊飯工程の実行時に、異常検知部である異常センサ41が、外的な要因による異常を検知すると(ステップS04で「Yes」の場合)、制御手段は、直ちに圧力弁14を開放するなどして内鍋内部の圧力を減圧させる減圧処理を実行する(ステップS11)。
本実施形態にかかる炊飯器において、異常センサ41は、炊飯器の蓋体10が所定の角度以上の大きな角度で蓋体が傾斜したことや、炊飯器に外部からの衝撃が加わったことによる炊飯器の振動を検知することができる。
炊飯器がキッチンテーブルなどの載置台上に置かれて、所定の圧力炊飯工程が実行されている最中には、このような炊飯器の傾斜や振動が発生することは通常は考えられない。これにもかかわらず、異常センサ41が炊飯器の傾斜や振動を検知したということは、例えば、ユーザが炊飯動作の最中であるにもかかわらず炊飯器を移動させようとして誤って落下させてしまった場合や、大きな地震が発生して炊飯器が載置されている載置台から落下した場合、もしくは、載置台が炊飯器を載せたまま倒れてしまった場合などの深刻な異常状態が生じていることが想定される。このような異常状態が生じると、通常の炊飯動作中では外れることがない蓋体10のロック機構が外れてしまったり、炊飯器の蓋体10や本体20が大きく変形したり破損してしまったりすることも生じうる。このような異常事態の発生時に、内鍋30の内部が圧力炊飯工程中の高い気圧の状態であると、内鍋30内部の高温の湯や炊飯中の米が、蓋体10の開いた部分から周囲に飛び散ってしまう事態も考慮しなくてはならない。
また、蓋体10のロックが解除されず、蓋体10の破損などが生じていない場合でも、炊飯器が傾斜していることにより圧力弁14が正常に動作しなくなってしまうことも想定できる。この場合にも、内鍋30の内部の圧力が正常に制御できずに危険な状態となってしまう畏れがある。
本実施形態の炊飯器では、このような危険な事態をなるべく早く回避することができるよう、また、少しでも内鍋30内外の気圧差を低減することができるよう、制御手段は、異常センサ41が異常を検出するとすぐに内鍋30内部の圧力を低下させるように制御する。
なお、内鍋30内部の圧力を低下させる手段としては、炊飯工程中の減圧時と同様に圧力弁14を開放することにより行うことができる。圧力弁14を開放する以外にも、例えば、異常時に圧力弁よりも急速に内鍋30内部の圧力を低下させる緊急減圧弁を備え、制御手段が、異常センサ41により異常が検知された場合には、この緊急減圧弁を開放するという方法も可能である。
しかし、異常センサ41が異常を検知することは極めてまれな事態であり、このようなまれな事態においてのみ動作する緊急減圧弁を備えることは、製造コストや製品設計上のスペースを確保する上でデメリットが大きい。また、異常事態の発生時に炊飯器がどのような姿勢となるかを事前に想定することはできないため、緊急減圧弁を設けるべき炊飯器の部位を決定することが困難である。さらに、制御手段が減圧処理を行った場合には、減圧処理に伴って蒸気を放出する口から高温の水蒸気が放出されることとなるが、ユーザは、通常の炊飯プログラム実行時に内鍋30内部の圧力を低下させるために用いられている蒸気放出口13aから水蒸気が放出されることを予測可能であるため、異常事態においても蒸気放出口13aから蒸気を噴き出させることの方が、ユーザがより適切に危険を回避することが可能であると考えることもできる。
本実施形態の炊飯器では、ステップS11での減圧処理を行った後、制御手段は、加熱コイル23a、23bや加熱ヒータ23cへの電力投入を停止して加熱を停止する(ステップS12)。異常事態の発生により、圧力炊飯工程を強制的に停止した後も加熱手段による加熱が継続された場合に、内鍋や蓋体、内鍋内部の米や湯の温度が高い状態が長い時間維持されるため、ユーザにやけどを負わせるなどの不測の事態が継続して生じる畏れがある。このため、異常事態の発生が検知されて内鍋30内部の圧力の減圧処理が行われた場合には、同時に加熱手段23による内鍋30の加熱も停止することが好ましいと考えられる。
なお、本実施形態の炊飯器において、制御手段が異常事態の発生時に加熱を停止させることは必須ではなく、図3においてステップS12で示す操作が行われない場合もあり得る。また、異常事態の発生時における制御手段の加熱手段の制御は、電力供給を瞬時に停止する以外にも、加熱手段への電力供給量を低下させる制御を行う場合も想定できる。
続いて制御手段は、ブザーや録音されたアナウンスなどの音声手段、ランプの点灯・点滅や、表示部における警告の表示などの視覚的な手段によって、異常センサ41が異常を検知したこと、さらに、その結果として内鍋30内部の減圧処理が行われたことをユーザに報知する(ステップS13)。
異常事態の発生時に、ユーザが炊飯器の周囲にいなかったために、炊飯器に異常事態が生じたことを直ちに認識できない場合もあるが、制御手段が異常事態の発生を報知することで、炊飯器の電源プラグ26を抜くなど、ユーザが適切な事後処理を行うことができるようになる。
なお、本実施形態の炊飯器では、制御手段が異常事態の発生をユーザに報知した後の所定期間、例えば30秒から1分間などの短時間の間、ユーザによる炊飯工程の回復操作がなされたか否かを判断し(ステップS14)、ユーザが炊飯の継続を希望して回復操作を行った場合(「Yes」の場合)には、改めて圧力弁14を閉じて、引き続き中断時以降の炊飯プログラムを再開させることができる。
例えば、ユーザが炊飯器を持ち上げる必要があって持ち上げた際に、誤って手を滑らせてしまったため載置台上に炊飯器が落下したが、落下距離が小さく、また、姿勢も変化しなかったために炊飯器による炊飯の継続を続ける上での支障が生じない場合もある。このような場合には、例え異常センサ41が反応する大きさの衝撃が炊飯器に加わった場合でも、途中まで進んだ炊飯を一律に停止してしまうよりは、引き続き炊飯を再開することがユーザにとってより望ましい事態であるということも考えられるからである。
なお、圧力炊飯時に所定の炊飯プログラムでの制御状態とは異なる形で減圧処理が行われてしまうと、特に、圧力炊飯工程の後半の部分で減圧処理がなされてしまった場合などでは、その後に内鍋を加熱する時間や加熱量が小さくて所定の圧力にまで内鍋30内部の圧力を回復させることができない場合もあり得る。また、異常事態の発生を検知して減圧処理が行われ、さらに、加熱手段への通電が停止してしまってから一定以上の時間が経過した場合には、残りの炊飯工程を行ったとしても、もはやおいしいお米を炊くことができない状態となってしまっている場合も考えられる。このような場合には、炊飯を継続しても結果的にユーザが所望するお米を炊くことができないため、炊飯の再開がユーザの望んだ結果を実現することにならない。
したがって、ユーザの回復処置を受け入れて炊飯を再開するか否かは、異常事態の発生状況に応じて、制御手段が都度選択することが好ましい。このような、回復処置を行ったとしてもおいしいお米を炊くことができない場合には、制御手段は、ユーザの回復処置を受けた際に、その旨をユーザに音声や表示によって報知することが好ましい。
ユーザにより炊飯継続を希望する回復操作がなされなかった場合(ステップS14で「No」の場合)には、制御手段は電源をOFFとして(ステップS15)異常事態発生により炊飯を停止する。
以上説明した通り、本実施形態の炊飯器では、圧力炊飯工程の実行中に、炊飯器の傾斜角度が所定値以上となった場合や炊飯器に所定の大きさ以上の大きな衝撃が加わった場合には、外的な要因による異常事態が発生したと判断して、制御手段が内鍋内部の圧力を一気圧に戻すための減圧操作を行う。このようにすることで、本実施形態の炊飯器では、外的な要因により炊飯器が破損したり、蓋体が不所望に開放されたりした場合でも、内鍋内部の炊飯中の高温の湯や米が周囲に飛び散ってしまう危険な事態を、効果的に回避することができる。
なお、上記説明では、炊飯器に生じた外的要因による異常事態を検出する検知手段として、傾斜センサと振動センサとを備えた異常センサを用いたものを例示した。しかし、本願で開示する炊飯器の外的要因による異常を検知する検知手段としては、傾斜センサ、または、振動センサのいずれか一方のみを備えたものを採用することができる。また、検知手段としては、炊飯器が所定の距離以上移動したことを検出可能な位置センサ、より具体的にはGPSセンサや、炊飯器がネットワークに繋がって制御されるようになっている場合には、無線ルータや相互通信を行っている通信端末との相対的な距離を把握することができる通信状況検知センサなど、各種のセンサを、上記例示した傾斜センサ、および、振動センサに追加して、もしくは単独で、検知手段として採用することができる。
また、上記実施形態において、異常センサを炊飯器の蓋体の中心部分に配置したものを例示した。しかし、本願で開示する炊飯器において、外的要因により生じた異常を検知する検知手段の配置場所は蓋体の中心部に限られず、蓋体の周辺部分や、蓋体ではなく炊飯器の本体部の所定の位置に配置することができる。ただし、検知手段を本体部に配置した場合には、上記実施形態で説明した、蓋体が正しく閉まっているか否かなどの本体部と蓋体との相対的な位置関係を検知手段で把握することはできなくなる。
なお、このような検知手段の配置位置を含めた、炊飯器の全体形状や各部の配置構成が、上記実施の形態で例示したものに限られないこともいうまでもない。
また上記実施形態では、圧力炊飯工程において、高圧状態を1.25気圧、低圧状態を1.05気圧として説明したが、圧力炊飯時におけるそれぞれの工程での圧力の数値は、炊飯器の圧力調整手段の構造や加熱手段、内鍋の材料、大きさ(炊飯可能量)、形状などの諸条件を勘案して適宜設計すべき数値である。
さらに、上記実施形態では、追い炊き工程の途中に強制的な減圧を行って、内鍋の上部の「おねば」を撹拌する工程を含むものを例示したが、このような「おねば」の撹拌工程も必須のものではない。
炊飯プログラム全体における各炊飯工程の区分、それぞれの部分工程における温度制御と圧力制御の内容について、上記実施形態で示したものはあくまでも例示に過ぎず、本願で開示する安全性の高い炊飯器としては、具体的な炊飯工程を実行するにあたり上記例示した以外の、例えば具入り炊飯などの特殊な調理メニューを含めた各種の炊飯プログラムでの炊飯を行うものとして実現することができる。また、炊飯プログラムの一部として加圧炊飯を行わないプログラムを備えた炊飯器であっても、加圧炊飯を行う炊飯プログラムの実行時に本願で開示する安全対策を実行させることができる。