JP6642763B2 - 超伝導安定化材、超伝導線及び超伝導コイル - Google Patents

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Description

本発明は、超伝導線に用いられる超伝導安定化材、この超伝導安定化材を備えた超伝導線、及び、この超伝導線からなる超伝導コイルに関する。
本願は、2017年10月30日に、日本に出願された特願2017−209207号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
超伝導線は、例えばMRI、NMR、粒子加速器、リニアモーターカー、および電力貯蔵装置などの分野で使用されている。前記超伝導線は、Nb−Ti合金、NbSnなどの超伝導体からなる複数の素線を、超伝導安定化材を介在させて束ねた多芯構造を有している。超伝導体と超伝導安定化材とを積層したテープ状の超伝導線も提供されている。さらに安定性と安全性を高めるために、純銅からなるチャネル部材を備えた超伝導線も提供されている。
上述の超伝導線では、超伝導体の一部において超伝導状態が破れた場合には、抵抗が部分的に大きく上昇して超伝導体の温度が上昇し、超伝導体全体が臨界温度以上になって常伝導状態に転移するおそれがある。そこで、超伝導線では、銅などの比較的抵抗の低い超伝導安定化材を、超伝導体に接触するように配置しており、超伝導状態が部分的に破れた場合には、超伝導体を流れていた電流を超伝導安定化材に一時的に迂回させておき、その間に超伝導体を冷却して超伝導状態に復帰させるような構造とされている。
この種の超伝導線は、Nb−Ti、NbSn合金に代表される超伝導体を含む素線と、前記素線と接触するように加工された銅材からなる超伝導安定化材を有し、複数の超伝導体を含む素線と超伝導安定化材を1つの構造体となる様に加工が施される。前記加工は、押出し、圧延、伸線、引抜き、及びツイストを含む方法により行われる。
上述の超伝導安定化材においては、電流を効率良く迂回させるために、極低温での抵抗が十分に低いことが求められる。極低温での電気抵抗を示す指標としては、残留抵抗比(RRR)が広く用いられる。この残留抵抗比(RRR)は、常温(293K)での抵抗ρ293Kと液体ヘリウム温度(4.2K)での抵抗ρ4.2Kとの比ρ293K/ρ4.2Kであり、この残留抵抗比(RRR)が高いほど超伝導安定化材として優れた性能を発揮する。
高い残留抵抗比(RRR)を有する銅材料としては、不純物元素を極限まで低減した純度99.9999mass%以上の極高純度銅(6NCu)等が挙げられる。
特許文献1には、特定の元素(Fe,P,Al,As,Sn及びS)の含有量を規定した不純物濃度が非常に低い高純度銅が提案されている。
特許文献2では、酸素濃度の低い高純度銅にZrを微量添加したCu合金が提案されている。
しかしながら、不純物元素を極限まで低減した超高純度銅では、銅を高純度化するために製造プロセスが非常に複雑となり、製造コストが大幅に上昇してしまうといった問題があった。
特許文献1では、特定の元素(Fe,P,Al,As,Sn及びS)の含有量を0.1ppm未満に限定しているが、これらの元素を0.1ppm未満にまで低減することは容易ではなく、やはり製造プロセスが複雑となるといった問題があった。
特許文献2では、酸素及びZrの含有量を規定しているが、酸素及びZrの含有量を制御することは難しく、高い残留抵抗比(RRR)を有する銅合金を安定して製造することが困難であるといった問題があった。
特許文献3には、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を添加することによって、純度を必要以上に高くすることなく、残留抵抗比(RRR)が十分に高い銅材料を得る技術が提供されている。
特開2011−236484号公報 特開平05−025565号公報 特開2016−125115号公報
ところで、上述の超伝導安定化材では、超伝導線等の伸線加工で大きく変形することにより、実質的な加工組織となって、転位などの格子欠陥が著しく増加し、結果として抵抗が増加することになり、残留抵抗比(RRR)が低下することがあった。このため、加工後に熱処理を行うことで再結晶組織として母相中の格子欠陥を十分に低減することにより、残留抵抗比(RRR)を回復させる必要がある。
例えばNb−Ti系の超伝導体では、熱処理温度が高すぎると再結晶によって超伝導体の特性が低下するおそれがあるため、200℃以下といった低温条件で熱処理を行うことがある。上述の超伝導安定化材では、200℃以下の低温条件でも十分に母相中の格子欠陥が低減されること、すなわち、再結晶温度が低いものが求められる。
最近では、超伝導線に対して、従来よりも高磁場力で使用することが求められる。高磁場力の環境で使用した場合には、超伝導線が微小に動いて振動し、摩擦熱が生じ、超伝導状態が破れてしまうおそれがあった。このため、高磁場力環境下で使用される超伝導安定化材では、高磁場力の環境下でも振動が発生しないように高い硬度が要求される。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、再結晶温度が低く、かつ、高い硬度を有し、高磁場力の環境下での使用に適した超伝導安定化材、この超伝導安定化材を備えた超伝導線、及び、この超伝導線からなる超伝導コイルを提供することを目的とする。
本発明の超伝導安定化材は、超伝導線に用いられる超伝導安定化材であって、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物とされた銅材からなり、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く前記不可避不純物の濃度の総計が5質量ppm以上100質量ppm以下とされており、前記不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされ、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦20の範囲内とされ、 Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物が存在しており、半軟化点温度が200℃以下、ビッカース硬さが55Hv以上、および残留抵抗比(RRR)が50以上500以下である。
上述の構成の超伝導安定化材によれば、銅材にCa,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内で含有させているので、銅中のS,Se,Teが化合物として固定され、残留抵抗比(RRR)を向上できる。
また、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く前記不可避不純物の濃度の総計が5質量ppm以上100質量ppm以下とされているので、過度に銅の高純度化を図る必要がなく、製造プロセスが簡易となり、製造コストを低減できる。
本発明の超伝導安定化材では、半軟化点温度が200℃以下とされているので、200℃以下の低温条件で熱処理を実施した場合であっても、再結晶によって母相中の格子欠陥を十分に低減することができ、残留抵抗比(RRR)を十分に回復できる。
さらに、ビッカース硬さが55Hv以上とされているので、高磁場力の環境下で使用した場合であっても、超伝導線が振動することを抑制でき、摩擦熱の発生を抑制できる。
また、残留抵抗比(RRR)が50以上500以下とされているので、極低温での抵抗値が十分に低く、超伝導体の超伝導状態が破れた際に電流を十分に迂回させることができ、超伝導安定化材として特に優れている。
本発明の超伝導安定化材では、前記不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされている。不可避不純物の中でも、Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pといった特定不純物の元素は、残留抵抗比(RRR)を低下させる作用を有している。これらの元素の含有量を上述のように規定することで、確実に残留抵抗比(RRR)を向上できる。
本発明の超伝導安定化材では、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦20の範囲内とされているので、銅中のS,Se,Teを化合物として確実に固定することができ、S,Se,Teによる残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制することが可能となる。
本発明の超伝導安定化材では、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物が存在しているので、銅中に存在するS,Se,Teが、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素との化合物によって確実に固定されており、S,Se,Teによる残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制できる。
本発明の超伝導線は、超伝導体を含む素線と、上述の超伝導安定化材と、を備えている。この超伝導線では、上述のように、高い残留抵抗比(RRR)を有するとともに硬度の高い超伝導安定化材を備えているので、超伝導体の超伝導状態が破れた場合であっても、超伝導体を流れている電流を超伝導安定化材に確実に迂回させることができ、超伝導体全体に常伝導状態が伝播してしまうことを抑制できる。高磁場力の環境下で使用した場合であっても、超伝導線が振動することを抑制でき、摩擦熱の発生を抑制できる。
本発明の超伝導コイルは、上述の超伝導線が巻枠の周面に巻回されてなる巻線部を備えた構造を有する。この超伝導コイルでは、上述のように、高い残留抵抗比(RRR)を有するとともに硬度の高い超伝導安定化材を備えた超伝導線を用いているので、安定して使用することが可能となる。高磁場力の環境下で使用した場合であっても、超伝導線が振動することを抑制でき、摩擦熱の発生を抑制できる。
本発明によれば、再結晶温度が低く、かつ、高い硬度を有し、高磁場力の環境下での使用に適した超伝導安定化材、この超伝導安定化材を備えた超伝導線、及び、この超伝導線からなる超伝導コイルを提供できる。
本発明の一実施形態である超伝導安定化材を備えた超伝導線の横断面図である。 図1に示す超伝導線に用いられるフィラメントの縦断面図である。 本発明の他の実施形態である超伝導安定化材を備えた超伝導線の縦断面図である。 本発明の他の実施形態である超伝導安定化材とチャネル部材とを備えた超伝導線の横断面図である。 本発明例2の超伝導安定化材のSEM観察結果を示す写真である。 本発明例2の超伝導安定化材の分析結果を示すグラフである。 本発明例14の超伝導安定化材のSEM観察結果を示す写真である。 本発明例14の超伝導安定化材の分析結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態である超伝導コイルを示す斜視図である。
本発明の一実施形態である超伝導安定化材20及び超伝導線10について、添付した図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態における超伝導線10は、コア部11と、このコア部11の外周側に配置された複数のフィラメント12と、これら複数のフィラメント12の外周側に配置される外殻部13とを備えている。
上述のフィラメント12は、図1及び図2に示すように、超伝導体からなる素線15を超伝導安定化材20によって被覆した構造とされている。この例では、個々の素線15は同一径の断面円形であり、超伝導安定化材20はそれぞれ素線15を同心状に取り囲んで、断面が同一径の正六角形状をなしている。この例のコア部11は複数のコア素線で構成され、各コア素線はフィラメント12とほぼ同じ六角形の断面形状をなし、互いに隙間無く配列されている。外殻部13は、コア部11とフィラメント12の集合体をこの集合体と同心状に包囲し、断面は円形である。ただし、本発明はこの例の形状に限定されない。
超伝導安定化材20は、図2に示すように、超伝導体からなる素線15の一部において超伝導状態が破れて常伝導領域Aが発生した場合に、超伝導体からなる素線15を流れる電流Iを一時的に迂回させる。コア部11と外殻部13についても、超伝導安定化材として上記の役割を有することがある。この場合には、コア部11及び外殻部13についても、本発明の超伝導安定化材を用いることが好ましい。コア部11と外殻部13に超伝導安定化効果を求めない場合、これらは通常の高純度銅など、他の導電材料で形成されていてもよい。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13は、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物とされた組成の銅材とされている。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13においては、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く不可避不純物の濃度の総計が5質量ppm以上100質量ppm以下とされている。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、半軟化点温度が200℃以下、ビッカース硬さが55Hv以上、残留抵抗比(RRR)が50以上500以下とした特性を有している。
より好ましくは、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13は、不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされていてもよい。
より好ましくは、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦20の範囲内とされていてもよい。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物が存在している。
上述のように成分組成、半軟化温度、硬さ、残留抵抗比(RRR)化合物の有無、を規定した理由について以下に説明する。
(Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素)
銅に含まれる不可避不純物のうちS,Se,Teは、銅中に固溶することによって残留抵抗比(RRR)を大きく低下させる元素である。このため、残留抵抗比(RRR)を向上させるためには、これらS,Se,Teの影響を排除する必要がある。
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素は、S,Se,Teと反応性が高い元素であることから、S,Se,Teと化合物を生成することによって、これらS,Se,Teが銅中に固溶することを抑制することが可能となる。これにより、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の残留抵抗比(RRR)を十分に向上させることができる。
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素は、銅中に固溶しにくい元素であり、さらに銅に固溶しても残留抵抗比(RRR)を低下させる作用が小さいことから、S,Se,Teの含有量に対して過剰に添加した場合であっても、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の残留抵抗比(RRR)が大きく低下することはない。
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の含有量が3質量ppm未満では、S,Se,Teを固定する作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の含有量が100質量ppmを超えると、これらの添加元素の粗大な析出物等が生成して加工性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の含有量を3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内に規定している。
S,Se,Teを確実に固定するためには、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の含有量の下限を3.5質量ppm以上とすることが好ましく、4.0質量ppm以上とすることがさらに好ましい。一方、加工性の低下を確実に抑制するためには、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の含有量の上限を80質量ppm以下にすることが好ましく、50質量ppm以下とすることがさらに好ましく、30質量ppm以下とすることがより好ましい。
(ガス成分を除く不可避不純物元素)
ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物については、その濃度を低くすることで残留抵抗比(RRR)が向上する。一方、不可避不純物の濃度を必要以上に低減しようとすると、製造プロセスが複雑となって製造コストが大幅に上昇してしまう。本実施形態では、ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物の濃度を総計で5質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内に設定している。
ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物の濃度を総計で5質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内とするために、原料としては、純度99〜99.9999質量%の高純度銅や無酸素銅(C10100,C10200)を用いることができる。ただし、Oが高濃度であると、Ca,Sr,Ba,希土類元素がOと反応してしまうため、O濃度を20質量ppm以下とすることが好ましく、更に好ましくは10質量ppm以下である。より好ましくは5質量ppm以下である。
製造コストの上昇を確実に抑制するためには、不可避不純物の下限を7質量ppm以上とすることが好ましく、10質量ppm以上とすることがさらに好ましい。一方、残留抵抗比(RRR)を確実に向上させるためには、不可避不純物の上限を90質量ppm以下とすることが好ましく、80質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態における不可避不純物は、Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,P,Li,Be,B,F,Na,Mg,Al,Si,Cl,K,Ti,V,Cr,Mn,Nb,Co,Zn,Ga,Ge,Br,Rb,Zr,Mo,Ru,Pd,Cd,In,I,Cs,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,Tl,Th、Uである。
(Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,P)
不可避不純物のうちFe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pといった特定不純物の元素は、残留抵抗比(RRR)を低下させる作用を有することから、これらの元素の含有量をそれぞれ規定することで、残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制することが可能となる。本実施形態では、Feの含有量を10質量ppm以下、Niの含有量を10質量ppm以下、Asの含有量を5質量ppm以下、Agの含有量を50質量ppm以下、Snの含有量を4質量ppm以下、Sbの含有量を4質量ppm以下、Pbの含有量を6質量ppm以下、Biの含有量を2質量ppm以下、Pの含有量を3質量ppm以下に規定している。
残留抵抗比(RRR)の低下をさらに確実に抑制するためには、Feの含有量を4.5質量ppm以下、Niの含有量を3質量ppm以下、Asの含有量を3質量ppm以下、Agの含有量を38質量ppm以下、Snの含有量を3質量ppm以下、Sbの含有量を1.5質量ppm以下、Pbの含有量を4.5質量ppm以下、Biの含有量を1.5質量ppm以下、Pの含有量を1.5質量ppm以下に規定することが好ましく、さらには、Feの含有量を3.3質量ppm以下、Niの含有量を2.2質量ppm以下、Asの含有量を2.2質量ppm以下、Agの含有量を28質量ppm以下、Snの含有量を2.2質量ppm以下、Sbの含有量を1.1質量ppm以下、Pbの含有量を3.3質量ppm以下、Biの含有量を1.1質量ppm以下、Pの含有量を1.1質量ppm以下に規定することが好ましい。
(S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/X)
上述のように、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素は、S,Se,Teといった元素と化合物を生成する。S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xが0.5未満では、添加元素の含有量が不足し、S,Se,Teといった元素を十分に固定できなくなるおそれがある。
一方、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xが20を超えると、S,Se,Teと反応しない余剰の添加元素が多く存在することになり、加工性が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xを0.5以上20以下の範囲内に規定することが好ましい。
S,Se,Teといった元素を化合物として確実に固定するためには、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xの下限を0.75以上とすることが好ましく、1.0以上とすることがさらに好ましい。加工性の低下を確実に抑制するためには、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xの上限を17以下とすることが好ましく、11以下とすることがさらに好ましい。
(添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物)
上述のように、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素は、S,Se,Teといった元素と化合物を生成することにより、S,Se,Teといった元素が銅中に固溶することを抑制している。よって、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素と、S,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素と、を含む化合物が存在することにより、残留抵抗比(RRR)を確実に向上できる。
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teといった元素とを含む化合物が、0.001個/μm以上の個数密度で存在することにより、確実に残留抵抗比(RRR)を向上できる。残留抵抗比(RRR)をさらに向上させるためには、化合物の個数密度を0.005個/μm以上とすることが好ましい。より好ましくは0.007個/μm以上である。
本実施形態では、上述の個数密度は粒径0.1μm以上の化合物を対象とした。本実施形態では、S,Se,Teといった元素の含有量が十分に少ないことから、上述の化合物(粒径0.1μm以上)の個数密度の上限は0.1個/μm以下となり、さらに好ましくは0.09個/μm以下である。より好ましくは0.08個/μm以下である。
(半軟化点温度)
Nb−Ti系の超伝導体からなる素線を備えた超伝導線では、特性を維持するために、200℃以下といった低温条件で熱処理を行うことが好ましい。このため、超伝導安定材では、200℃以下の低温条件でも再結晶が十分に進行して、加工時に形成された母相中の格子欠陥を低減し、抵抗値を低下させる必要がある。
本実施形態では、超伝導安定化材20の半軟化点温度は200℃以下としている。超伝導安定化材20の半軟化点温度は、175℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがさらに好ましい。
本実施形態では、減面率50%以上(減面率=(伸線前の断面面積−伸線後の断面面積)/(伸線前の断面面積)×100)もしくは圧延率50%以上(圧延率=(圧延前の板厚−圧延後の板厚)/(圧延前の板厚)×100)の冷間塑性加工後の室温でのビッカース硬さHv_(CD)、500℃、Arガス雰囲気で1時間保持後、急冷した後、室温で測定したビッカース硬さをHv_500℃とし
Hv_recry=Hv_500℃+(Hv_(CD)−Hv_500℃)/2となる硬度となるときの急冷前の熱処理温度を半軟化点温度とした。
(ビッカース硬さ)
超伝導線10を高磁場力の環境下で使用する場合、超伝導線10全体の機械的強度が不足していると、フィラメント12(素線15、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13)が微小に振動してしまい、これにより摩擦熱が発生し、超伝導状態が破れてしまうおそれがある。
超伝導線10の機械的強度を確保するために、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13のビッカース硬さを55Hv以上に規定している。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13のビッカース硬さは、60Hv以上であることが好ましく、62Hv以上であることがより好ましく、さらに65Hv以上であることが好ましい。
(残留抵抗比(RRR))
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、極低温において抵抗値が低く電流を良好に迂回させるためには、残留抵抗比(RRR)が高いことが求められる。残留抵抗比(RRR)が50未満では、電流を良好に迂回させることができなくなるおそれがある。一方、残留抵抗比(RRR)を500超えとするためには、比較的高温での熱処理が必要となり、硬さが低くなってしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の残留応力比(RRR)を50以上500以下の範囲内としている。残留抵抗比(RRR)の下限は、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがさらに好ましい。残留抵抗比(RRR)の上限は、400以下とすることが好ましく、350以下がより好ましく、250以下とすることがさらに好ましい。
超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13は、溶解鋳造工程、熱間押し出し等の熱間加工工程、塑性加工工程、熱処理工程、冷間塑性加工工程を含む製造工程によって製造される。
連続鋳造圧延法(例えばSCR法)等によって、本実施形態で示した組成の荒引銅線を製造し、これを素材として超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13を製造してもよい。この場合、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の生産効率が向上し、製造コストを大幅に低減することが可能となる。ここでいう連続鋳造圧延法とは、例えばベルト・ホイール式連続鋳造機と連続圧延装置とを備えた連続鋳造圧延設備を用いて、銅荒引線を製造し、この銅荒引線を素材として引抜銅線を製造する工程のことである。
以上のような構成とされた超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13によれば、銅材にCa,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内で含有させているので、銅中のS、Se、Teが化合物として固定され、残留抵抗比(RRR)を向上できる。
ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く不可避不純物の濃度の総計が5質量ppm以上100質量ppm以下とされているので、過度に銅の高純度化を図る必要がなく、製造プロセスが簡易となり、製造コストを低減できる。
実施形態である超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、半軟化点温度が200℃以下とされているので、200℃以下の低温条件で熱処理を実施した場合であっても、再結晶によって母相中の格子欠陥を十分に低減することができ、残留抵抗比(RRR)を十分に回復できる。
実施形態である超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13では、ビッカース硬さが55Hv以上とされているので、高磁場力の環境下で使用した場合であっても、フィラメント12(素線15及び超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13)が振動することを抑制でき、摩擦熱の発生を抑制できる。
実施形態である超伝導安定化材20では、残留抵抗比(RRR)が50以上500以下とされているので、極低温での抵抗値が十分に低く、超伝導体の超伝導状態が破れた際に電流を十分に迂回させることができ、超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13として特に優れている。
本実施形態の好ましい例では、残留抵抗比(RRR)に影響するFe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pの含有量について、Feの含有量を10質量ppm以下、Niの含有量を10質量ppm以下、Asの含有量を5質量ppm以下、Agの含有量を50質量ppm以下、Snの含有量を4質量ppm以下、Sbの含有量を4質量ppm以下、Pbの含有量を6質量ppm以下、Biの含有量を2質量ppm以下、Pの含有量を3質量ppm以下に規定しているので、確実に超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の残留抵抗比(RRR)を向上できる。
本実施形態の好ましい例では、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦20の範囲内とされているので、銅中のS,Se,Teを添加元素との化合物として確実に固定することができ、残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制できる。S,Se,Teと反応しない余剰の添加元素が多く存在せず、加工性を確保できる。
本実施形態では、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素と、S,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素と、を含む化合物が存在しているので、銅中に存在するS,Se,Teが、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素との化合物によって確実に固定されており、S,Se,Teによる超伝導安定化材20および超伝導安定化材としての役割を有する場合のコア部11と外殻部13の残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制できる。
特に本実施形態の好ましい例では、粒径0.1μm以上の化合物の個数密度が0.001個/μm以上とされているので、S,Se,Teを確実に化合物として固定でき、超伝導安定化材20の残留抵抗比(RRR)を十分に向上させることができる。
以上、本発明の実施形態である超伝導安定化材及び超伝導線について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、超伝導線10を構成するコア部11及び外殻部13についても、超伝導安定化材20と同様の組成の銅材によって構成してもよい。
上述の実施形態では、図1に示すように、複数のフィラメント12を束ねた構造の超伝導線10を例に挙げて説明したが、これに限定されることはない。
例えば図3に示すように、テープ状の基材113の上に超伝導体115及び超伝導安定化材120を積層配置した構造の超伝導線110であってもよい。
図4に示すように、複数のフィラメント12を束ねた後、純銅からなるチャネル部材220に組み込んだ構造の超伝導線210であってもよい。この場合、チャネル部材220も超伝導安定化材としての役割を有する。
図7は、本発明の超伝導線、例えば前述の超伝導線10,110,210を螺旋状に巻回してなるコイルCである。この例のコイルCは断面円形でほぼ隙間無く巻回され、中空であるが、本発明はこれに限定されず、断面四角形や断面楕円形などであってもよいし、何らかの非磁性体からなる芯材またはボビンに超伝導線が巻回されていてもよい。超伝導線は隙間無く巻回されていても、所定の隙間を空けて巻回されていてもよい。コイルCのサイズも巻回数も限定されず、使用目的に応じて適宜設定される。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
本実施例では、研究室実験として、純度99.99質量%以上99.9999質量%未満の高純度銅及びCa,Sr,Ba,希土類元素の母合金を原料として用いて、表1記載の組成となるように調整した。Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,P及びその他の不純物については、純度99.9質量%以上のFe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pと純度99.9質量%の純銅とから各々の元素の母合金を作成し、その母合金を用いて調整した。合金No.17では、希土類元素としてミッシュメタル(MM)を添加した。
まず、高純度銅をN+COの還元性ガス雰囲気中で電気炉を用いて溶解し、その後、各種添加元素及び不純物の母合金を添加して所定濃度に調製し、所定の鋳型に鋳造することにより、直径:65mm×長さ:180mmの円柱状のインゴットを得た。このインゴットに対して840℃で熱間溝圧延を施して直径8mmの熱延線材とし、この熱延線材から冷間引抜きにより直径2.0mmの細線を成形した。
この細線に、Arガス雰囲気下で表2〜4に示す熱処理温度で1時間保持の条件で熱処理を施すことにより、評価用線材を製造した。本実施例では、溶解鋳造の過程において不純物元素の混入も認められた。これらの評価用線材を用いて、以下の項目について評価した。
(組成分析)
ガス成分を除く元素について、10質量ppm未満の元素の場合はグロー放電質量分析法(GD−MS)、10質量ppm以上の元素の場合は誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−MS)を用いた。S,Oの分析には赤外線吸収法(IR)を用いた。GD−MSでは、評価用線材から長さ20mmの試験片を作成し、酸洗後に、この試験片を横たえてビームを照射し、試験片の表面を分析した。これにより、10質量ppm未満の含有量である元素を同時に測定した。ICP−MSでは、評価用線材から長さ400mmの試験片を作成し、酸洗後に、この試験片を完全に溶解して分析を行った。これにより、10質量ppm以上の含有量である元素を同時に測定した。IRでは、評価用線材から長さ50mmの試験片を作成し、酸洗後に、この試験片を完全に溶解してS,Oそれぞれについて分析を行った。評価結果を表1に示す。
(ビッカース硬さ)
マイクロビッカース硬さ試験機で、JIS Z 2244:2009に準拠して、試験力0.0051N(50g)、保持時間10秒の条件でビッカース硬さを測定した。具体的には、評価用線材から長さ10mmの試験片を作成し、樹脂に垂直に埋め込んで、試験片の端面を研磨し、得られた端面の中心点と、この中心点から回転角90°毎に延びる4本の半径の各中心点の合計5点において、前記条件でビッカース硬さを測定し、その平均値を求めた。評価結果を表2〜4に示す。
(半軟化点温度)
冷間伸線後の線材から測定用試料を採取し、上記と同じ方法で室温のビッカース硬さを測定するとともに、及び、50℃から500℃まで25℃間隔で熱処理温度を規定し、この熱処理温度でArガス雰囲気下1時間保持後、急冷し、上記と同じ方法で室温でのビッカース硬さを測定した。室温でのビッカース硬さと急冷前の熱処理温度のグラフを作成し、得られたグラフから半軟化点温度を求めた。評価結果を表1に示す。
(残留抵抗比(RRR))
四端子法にて、293Kでの電気比抵抗(ρ293K)および液体ヘリウム温度(4.2K)での電気比抵抗(ρ4.2K)を測定し、RRR=ρ293K/ρ4.2Kを算出した。具体的には、評価用線材から長さ200mmの試験片を作成し、酸洗後に、端子間距離(四端子法の内側の端子間の距離)が100mmとなる条件で、電気比抵抗(ρ293K)および電気比抵抗(ρ4.2K)を測定し、RRR=ρ293K/ρ4.2Kを算出した。評価結果を表2〜4に示す。
(化合物粒子観察)
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素と、S,Se,Teのうち1種又は2種以上と、を含む化合物粒子の有無を確認するために、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて粒子観察し、この化合物粒子のEDX分析(エネルギー分散型X線分光法)を実施した。本発明例2の化合物のSEM観察結果を図5Aに示し、EDX分析結果を図5Bに示す。本発明例14の化合物のSEM観察結果を図6Aに示し、EDX分析結果を図6Bに示す。
比較例1〜19は、本発明の組成範囲である合金No.1〜19を用いているが、熱処理温度が500℃と高温であったため、ビッカース硬さが50Hv未満となった。
Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を添加しなかった合金No.101では、半軟化点温度が200℃を超えていた。合金No.101を用いて熱処理温度を100℃とした比較例101、熱処理温度を125℃とした比較例121、熱処理温度を150℃とした比較例141、熱処理温度を175℃とした比較例161では、いずれも残留抵抗比(RRR)が50未満となった。合金No.101を用いて熱処理温度を500℃とした比較例181では、ビッカース硬さが50Hv未満となった。
ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く不可避不純物の濃度の総計が100質量ppmを超える合金No.102では、半軟化点温度が200℃を超えていた。合金No.102を用いて熱処理温度を100℃とした比較例102、熱処理温度を125℃とした比較例122、熱処理温度を150℃とした比較例142、熱処理温度を175℃とした比較例162では、いずれも残留抵抗比(RRR)が50未満となった。合金No.102を用いて熱処理温度を500℃とした比較例182では、ビッカース硬さが50Hv未満となった。
Caの添加量が506質量ppmと本発明の範囲を超えた合金No.103では、塑性加工中に割れが生じた。このため、その後の評価を中止した。
これに対して、本発明の組成範囲である合金No.1〜19では、半軟化点温度が200℃以下であった。合金No.1〜19を用いて熱処理温度を100℃とした本発明例1〜19、熱処理温度を125℃とした本発明例21〜39、熱処理温度を150℃とした本発明例41〜59、熱処理温度を175℃とした本発明例61〜79では、ビッカース硬さが50Hv以上、かつ、残留抵抗比(RRR)が50以上500以下の範囲内となっていることが確認された。
図5A〜図6Bに示すように、本発明例では、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物粒子が存在することが確認された。
以上のことから、本発明例によれば、再結晶温度が低く、かつ、高い硬度を有し、高磁場力の環境下での使用に適した超伝導安定化材を提供できることが確認された。
本発明によれば、再結晶温度が低く、かつ、高い硬度を有し、高磁場力の環境下での使用に適した超伝導安定化材、この超伝導安定化材を備えた超伝導線、及び、この超伝導線からなる超伝導コイルを提供できる。よって、本発明は産業上の利用が可能である。
10、110、210 超伝導線
20、120 超伝導安定化材
C 超伝導コイル

Claims (3)

  1. 超伝導線に用いられる超伝導安定化材であって、
    Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素を合計で3質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物とされた銅材からなり、
    ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く前記不可避不純物の濃度の総計が5質量ppm以上100質量ppm以下とされており、
    前記不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされ、
    S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦20の範囲内とされ、
    Ca,Sr,Ba,希土類元素から選択される1種又は2種以上の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物が存在しており、
    半軟化点温度が200℃以下、
    ビッカース硬さが55Hv以上、および
    残留抵抗比(RRR)が50以上500以下であることを特徴とする超伝導安定化材。
  2. 超伝導体を含む素線と、請求項1に記載の超伝導安定化材とを備えていることを特徴とする超伝導線。
  3. 請求項2に記載の超伝導線が巻枠の周面に巻回されてなる巻線部を備えた構造を有することを特徴とする超伝導コイル。
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