以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、添付図面上に互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が車両の前後方向(略水平縦方向)、Y軸が車両の左右方向(略水平横方向)、Z軸が車両の上下方向(略鉛直方向)に延びるものとし、X軸を中心とする回動方向をロール方向とし、Z軸を中心とする回動方向をヨー方向として、実施形態を説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態では、車体91に対してブームを上下方向に変位させるブーム昇降装置40がブーム制振装置に該当する。まず、図1及び図2を参照して、ブーム昇降装置40を備えるブームスプレーヤ100について説明する。図1には、ブームスプレーヤ100の平面図が示されており、図2には、ブームスプレーヤ100の側面図が示される。
図1に示されるブームスプレーヤ100は、圃場を走行する作業車90の前方側に搭載され、作業車90から防除液や液体肥料等の薬液を散布する農業用の作業機である。
ブームスプレーヤ100は、作業車90から左右に延びる一対のブーム4を備える。ブーム4には、薬液を散布するノズル(図示せず)が取り付けられている。ブームスプレーヤ100の作業時には、作業車90が圃場を走行しながらブーム4のノズルから薬液が散布される。
ブームスプレーヤ100は、作業車90の車体91に取り付けられた一対のリンクアーム2と、リンクアーム2によって車体91に対して昇降可能に支持されるブーム支持体としての昇降台3と、昇降台3に対してロール方向(X軸まわり)に回動自在に支持されるロール台5と、ロール台5から車体91の左右側方(Y軸方向)に延びる左右のブーム4と、を備える。
ブーム4は、ロール台5に対してその基端部4aが格納ヒンジ(図示省略)を介してヨー方向(Z軸まわり)に回動可能に片持ち支持され、その先端部4bが自由端となる。ブーム4は、基端部4aを有する基端側フレーム15に、先端部4bを有する先端側フレーム16が伸縮可能に支持される。
図1には、左右のブーム4が車体91の左右水平方向に延在した展開状態が示される。ブーム4を格納する際、ブーム4は、図1に示される展開状態から先端側フレーム16を収縮させて基端側フレーム15に格納した後に、格納ヒンジを介して後方に回動される。この結果、ブーム4は、車体91の側方に沿って前後方向に延びるように折り畳まれ、格納される。
ロール台5は、昇降台3に支持軸6を介してロール方向に回動自在に支持される。支持軸6には、円柱状のピン部材が用いられる。昇降台3は、ロール台5を介してブーム4を回動自在に支持し車体91に対して上下方向に変位する。本実施形態では、ロール台5はブームの一部を構成する。
昇降台3とロール台5の間には、ブーム4が左右ロール方向に回動するのに連動して伸縮する回動シリンダ141と、支持軸6を挟んで回動シリンダ141と対称となる位置に設けられ、ブーム4が左右ロール方向に回動するのに連動して伸縮する金属ばね80と、が設けられる。回動シリンダ141と金属ばね80とは、ロール方向におけるブーム4の振動を抑制するために設けられる。これらによって、ブーム4の先端部4bが上下方向に振れる振動が抑えられ、先端部4bが圃場の農作物などに接触することが防止される。
リンクアーム2は、図2に示されるように、互いに平行に延びる上部リンク21と下部リンク22とを有する。上部リンク21は、その基端部がピン12を介して車体91に回動自在に連結され、その先端部がピン11を介して昇降台3に回動自在に連結される。下部リンク22は、その基端部がピン14を介して車体91に回動自在に連結され、その先端部がピン13を介して昇降台3に回動自在に連結される。
次に、図2を参照して、車体91に対してブーム4を上下方向に変位させるとともにブーム制振装置として機能するブーム昇降装置40について説明する。図2は、ブーム昇降装置40の油圧回路図を示している。
ブーム昇降装置40は、車体91と上部リンク21との間に設けられ伸縮作動することによりブーム4を車体91に対して上下方向に変位させる液圧シリンダとしての昇降シリンダ41と、昇降シリンダ41に作動油を供給する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51と昇降シリンダ41との間に設けられ、昇降シリンダ41の伸縮方向を切り換える方向切換弁52と、昇降シリンダ41から排出される作動油が導かれるタンクTと、昇降シリンダ41と方向切換弁52とを接続する給排通路56と、昇降シリンダ41と給排通路56及び給排通路56から分岐した分岐通路64を通じて接続されるアキュムレータ61と、を備える。本実施形態では、上部リンク21はブーム支持体の一部を構成する。なお、昇降シリンダ41は、車体91と昇降台3との間に設けられていてもよい。
昇降シリンダ41は、車体91の左右両側に一対設けられる(図1参照)。一対の昇降シリンダ41は、同期して伸縮することによって、ブーム4及び昇降台3を車体91に対して上下方向に変位させる。なお、昇降シリンダ41は、作動流体として作動油を用いるが、作動油に代えて、例えば水溶性代替液等の作動液を用いてもよいし、ガスを用いてもよい。
昇降シリンダ41は、作動油が封入されたシリンダチューブ42と、シリンダチューブ42に進退自在に挿入されたピストンロッド43と、ピストンロッド43の基端部に設けられるピストン44と、を備える。昇降シリンダ41は、シリンダチューブ42の基端部がピロボール47を介して車体91に回動自在に連結され、ピストンロッド43の先端部がピロボール48を介して上部リンク21に回動自在に連結される。ピロボール47,48は、例えばボール及び球面軸受によって構成される。昇降シリンダ41の連結部は、ピロボール47,48によってこじりが生じないようになっている。
シリンダチューブ42の内部は、ピストン44によってピストン側室45とロッド側室46とに区画される。ピストン44には、ピストン側室45とロッド側室46との間で作動油の行き来を許容する流路44aが形成される。昇降シリンダ41は、油圧ポンプ51からピストン側室45に作動油が供給されることによって伸長し、ピストン側室45から作動油が排出されることによって収縮するいわゆる単動形流体圧シリンダである。昇降シリンダ41は、これに限定されず、ピストン側室45とロッド側室46との両方に対して作動油が給排される複動形流体圧シリンダ、もしくは、ピストン側室45に対してのみ作動油が給排されロッド側室46はタンクTに接続される単動形流体圧シリンダであってもよい。
昇降台3及びブーム4は、各昇降シリンダ41が伸縮し、各リンクアーム2が回動することによって上下方向に変位する。この構成に代えて、車体91の前部にZ軸方向に延びるガイドレールを設け、このガイドレールによって昇降台3がZ軸方向に昇降自在に支持される構成としてもよい。この場合、各昇降シリンダ41は、車体91と昇降台3との間に介装され、伸縮することによって車体91に対する昇降台3の高さを変更させる。
油圧ポンプ51は、図示しないエンジンもしくは電動モータによって駆動され、タンクT内に貯留された作動油をピストン側室45へと供給する。
方向切換弁52は、昇降シリンダ41を伸長させる連通位置としての伸長位置52aと、昇降シリンダ41を収縮させる連通位置としての収縮位置52bと、昇降シリンダ41を停止させる遮断位置としての停止位置52cと、の3つの位置を有する電磁切換弁である。
給排通路56は、一端がこの方向切換弁52に接続され、他端が昇降シリンダ41のピストン側室45に接続される。給排通路56には、オペレートチェック弁53が介装される。
方向切換弁52には、給排通路56が接続されるとともに、油圧ポンプ51から吐出される作動油を導く供給通路55と、タンクTに作動油を戻す排出通路57と、オペレートチェック弁53のパイロット圧室に連通するオペレート通路59と、が接続される。供給通路55と排出通路57とは、リリーフ通路58により接続されており、リリーフ通路58には、供給通路55の油圧が設定圧を超えた場合に開弁するリリーフ弁54が設けられる。
方向切換弁52が伸長位置52aに切り換えられると、排出通路57とオペレート通路59とが連通するとともに、給排通路56と供給通路55とが連通する。油圧ポンプ51から吐出される作動油は、供給通路55と給排通路56とを通じて一対の昇降シリンダ41のピストン側室45に流入する。これにより、一対の昇降シリンダ41が同期して伸長し、リンクアーム2が上方に回動され、昇降台3及びブーム4は、リンクアーム2とともに車体91に対して上昇する。
方向切換弁52が収縮位置52bに切り換えられると、供給通路55とオペレート通路59とが連通するとともに、給排通路56と排出通路57とが連通する。油圧ポンプ51から吐出される作動油は、オペレート通路59を介してオペレートチェック弁53にパイロット圧として導かれるので、オペレートチェック弁53が開弁し、ピストン側室45の作動油が給排通路56、排出通路57を通じてタンクTに戻される。これにより、一対の昇降シリンダ41が同期して収縮し、リンクアーム2が下方に回動され、昇降台3及びブーム4はリンクアーム2とともに車体91に対して下降する。
方向切換弁52が停止位置52cに切り換えられると、供給通路55、排出通路57、オペレート通路59、及び給排通路56のすべてが連通する。これにより、油圧ポンプ51から供給通路55を通じて供給される作動油は、全てタンクTに戻される。このとき、オペレート通路59の圧力は、タンクTと等しくなり、オペレートチェック弁53は、ばねの付勢力によって閉弁する。これにより、一対の昇降シリンダ41の伸縮作動が停止し、車体91に対するブーム4の高さ(位置)が保持される。このように、車体91に対するブーム4の高さ、すなわち、圃場の農作物に対するブーム4の高さは、昇降シリンダ41を伸縮させることによって調節することができる。
アキュムレータ61は、内部に、ピストン側室45に接続される油室61aと、油室61aに圧力を付与するバネ室61bと、を有する。
バネ室61bは、加圧された窒素等のガスが封入されたガス室であり、油室61aとの境界面である液面にガス圧を付与している。なお、油室61aとバネ室61bとを区画するフリーピストンをアキュムレータ61内に収装するようにしてもよい。また、油室61aとバネ室61bとを区画するフリーピストンをアキュムレータ61内に収装すると共に、バネ室61b内にバネを収装するようにしてもよい。つまり、加圧されたガスに代わり、バネを用いて油室61aに圧力を付与するようにしてもよい。
アキュムレータ61の特性は、バネ室61b内のガス圧、アキュムレータ61の容積等を調整することによって設定される。
油室61aは、給排通路56におけるピストン側室45とオペレートチェック弁53との間から分岐する分岐通路64に接続される。つまり、油室61aとピストン側室45とは、給排通路56及び分岐通路64を通じて連通する。ブーム昇降装置40では、給排通路56及び分岐通路64が接続通路に相当する。
ブーム昇降装置40は、分岐通路64に設けられ、分岐通路64を流れる作動油に抵抗を付与する減衰弁62と、昇降台3に設けられブーム4の上下方向の加速度αを検出する加速度検出部としての加速度センサ63と、加速度センサ63で検出されたブーム4の加速度に基づいて減衰弁62が作動油に付与する抵抗を制御する制御部としてのコントローラ70と、をさらに備える。
減衰弁62は、流路面積(絞り)を大きくして作動油に付与する抵抗が小さくなる位置62aと、流路面積(絞り)を小さくして作動油に付与する抵抗が大きくなる位置62bと、を有する。減衰弁62は、コントローラ70から電流が印加されていない状態では、ばね62cの付勢力によって位置62aに保持され、コントローラ70から電流が印加された状態では、ソレノイド62dの付勢力によってばね62cの付勢力に抗して位置62bに切り換えられる。
コントローラ70には、加速度センサ63によって検出されたブーム4の上下方向の加速度αが入力される。コントローラ70は、ブーム4の加速度αが入力されると、入力されたブーム4の加速度α及びあらかじめ記憶されたブーム4の共振周波数fmに基づいて減衰弁62を制御する。
ここで、コントローラ70による減衰弁62の制御方法について、図3を参照しながら具体的に説明する。図3は、コントローラ70が実行する減衰弁62の制御手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS10では、加速度センサ63によってブーム4の上下方向の加速度αを検出する。検出された加速度αはコントローラ70に送信される。
次に、ステップS11では、コントローラ70が受信した加速度αにFFT処理を施し、各周波数におけるパワースペクトル密度を算出する。パワースペクトル密度とは、波形の各周波数成分をパワーの大きさとして表したものである。
ステップS12では、ステップS11で算出されたパワースペクトル密度の中から、ブーム4の共振周波数fmにおけるパワースペクトル密度Pxを算出する。
ステップS13では、ステップS12で算出されたブーム4の共振周波数fmにおけるパワースペクトル密度Pxが、所定値としての閾値Pc以上であるか否かを判定する。パワースペクトル密度Pxが閾値Pc以上である場合には、ステップS14に進み、パワースペクトル密度Pxが閾値Pc未満である場合には、ステップS15に進む。
ステップS14では、コントローラ70が減衰弁62のソレノイド62dに電流を印加する。これにより、減衰弁62が位置62bに切り換えられ、流路面積(絞り)が小さくなって作動油に付与される抵抗が大きくなる。したがって、減衰弁62による減衰力が大きくなり、ブーム4の上下方向の振動が抑制される。
このように、ブーム昇降装置40では、パワースペクトル密度Pxが大きい場合、つまり、ブーム4が共振周波数fmで振動しようとしているときに減衰力を大きくし、パワースペクトル密度Pxが小さい場合、つまり、ブーム4が共振周波数fmで振動していないときに、減衰力を小さくする。以下に、この減衰力の切換について具体的な例を挙げて詳しく説明する。
まず、作業車90が段差を乗り越える場合を例に説明する。作業車90が段差に乗り上げると、車体91は上方向に移動する。このとき、ブーム4は慣性によりその位置にとどまろうとするため、ブーム4の慣性力によって昇降シリンダ41のピストンロッド43が押し込まれ、昇降シリンダ41は収縮する。このときブーム4は振動していないため、加速度センサ63によって検出される加速度αには、ブーム4の共振周波数成分が含まれていないことになる。したがって、コントローラ70によって算出されるパワースペクトル密度Pxは、閾値Pc未満であるため、コントローラ70から減衰弁62のソレノイド62dに電流が印加されず、減衰弁62はばね62cの付勢力によって位置62aに保持される。これにより、昇降シリンダ41のピストン側室45から押し出された作動油は、抵抗がさほど付与されずにアキュムレータ61内に流入して、バネ室61bを圧縮する。つまり、作業車90が段差に乗り上げたときに生じる車体91とブーム4の相対変位は、アキュムレータ61のバネ室61bが圧縮されることによって吸収される。
その後、作業車90が段差を乗り越えるとき、車体91が下方向に移動する。これにより、押し込まれていた昇降シリンダ41のピストンロッド43は引き出され、昇降シリンダ41は元の位置に戻る。このとき、ピストン側室45の容積が拡張するため、アキュムレータ61の油室61a内の作動油がバネ室61bの圧力により押し出され、減衰弁62による抵抗の影響をさほど受けることなく、ピストン側室45に流入する。これにより、車体91とブーム4の相対変位は、無くなる。
このように、作業車90が段差を乗り越える場合には、車体91とブーム4との間に相対変位が生じるものの、ブーム4に対して共振周波数成分が作用しないので、減衰力を必要としない。仮に、この状態で大きな減衰力を付与してしまうと、作業車90が段差に乗り上げたときに、車体91とブーム4との間の相対変位をアキュムレータ61によって完全に吸収することができなくなってしまう。そのため、作業車90が段差を乗り越えた後に、吸収しきれなかった相対変位に起因してブーム4にあらたな振動が発生してしまうおそれがある。このため、ブーム昇降装置40では、作業車90が段差を乗り越えるような場合には、減衰弁62が作動油に付与する抵抗を小さくして、減衰力を小さくする。これにより、車体91とブーム4との相対変位をアキュムレータ61によって吸収させることができるとともに、この相対変位に起因する振動の発生を抑制できる。
次に、作業車90が圃場を走行する場合を例に説明する。作業車90が圃場を走行した場合には、圃場の凹凸によって車体91は上下方向に連続的に変位する。この車体91の連続的な変位によって昇降シリンダ41のピストンロッド43がストローク(往復動)することで、シリンダチューブ42とピストンロッド43との間には、連続的に相対変位が生じる。この連続的な相対変位は、上下方向の振動として昇降台3及びロール台5を介してブーム4に伝達される。このとき、ブーム4に伝達される振動は、昇降台3に設けられた加速度センサ63によって上下方向の加速度αとして検出される。
コントローラ70は、検出された加速度αに基づいて共振周波数fmにおけるパワースペクトル密度Pxを算出する。ブーム4に上述のような振動が伝達され、加速度センサ63によって検出された加速度αにブーム4を共振させる共振周波数成分が多く含まれていた場合、パワースペクトル密度Pxは閾値Pc以上になる。この時、コントローラ70は、減衰弁62のソレノイド62dに電流を印加する。これにより、減衰弁62が位置62bに切り換えられ、流路面積(絞り)が小さくなって作動油に付与される抵抗が大きくなる。したがって、減衰弁62による減衰力が大きくなり、ブーム4の上下方向の共振による振動が抑制される。
このように、ブーム昇降装置40は、ブーム4の加速度αに基づいてブーム4の共振周波数fmにおけるパワースペクトル密度Pxを算出し、パワースペクトル密度Pxが閾値Pc以上であるか否かを判定して減衰弁62を制御する。加速度αにブーム4のパワースペクトル密度Pxが閾値Pc以上含まれているときには、ブーム4に共振周波数成分が作用することでブーム4は共振しようとするので、コントローラ70は、減衰弁62によって発生する減衰力を大きくする。これにより、ブーム4の上下方向の振動を抑制することができる。また、加速度センサ63によって検出された加速度αに含まれているブーム4のパワースペクトル密度Pxが閾値Pc未満の場合には、ブーム4には共振周波数成分がほとんど作用してせずブーム4はほとんど振動しないので、コントローラ70は、減衰弁62によって発生する減衰力を小さくする。これにより、作業車90が段差を乗り越えるときなどに、車体91とブーム4との相対変位をアキュムレータ61によってより多く吸収させることができる。
なお、上記実施形態では、パワースペクトル密度Pxの値に基づいて減衰弁62を制御していたが、これに代えて、オクターブバンドの実効値Xrに基づいて減衰弁62を制御してもよい。以下にオクターブバンドの実効値Xrについて具体的に説明する。
本実施形態におけるオクターブバンドは、ブーム4の共振周波数fmを中心周波数としたとき、1/1オクターブの周波数領域である。具体的には、上限周波数をfu1、下限周波数をfd1とすると、1/1オクターブの上限周波数fu1及び下限周波数fd1は、以下の式(1),(2)により求まる。
fu1 = √2 × fm ≒ 1.4142 × fm ・・・式(1)
fd1 = fm/√2 ≒ fm ÷ 1.4142 ・・・式(2)
なお、オクターブバンドの周波数領域を1/3オクターブとしてもよい。1/3オクターブの上限周波数fu2及び下限周波数fd2は、以下の式(3),(4)により求まる。
fu2 = 6√2 × fm ≒ 1.1225 × fm ・・・式(3)
fd2 = fm/6√2 ≒ fm ÷ 1.1225 ・・・式(4)
オクターブバンドの実効値Xrは、パワースペクトル密度を上限周波数fu及び下限周波数fdの範囲で積分することにより求められる。コントローラ70は、このようにして求められたオクターブバンドの実効値Xrが閾値Xc以上のときに、減衰弁62を位置bに切り換えて作動油に付与する抵抗を大きくする。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ブーム昇降装置40では、加速度センサ63で検出されたブーム4の上下方向の加速度αに基づいて、減衰弁62が分岐通路64を流れる作動油に付与する抵抗を制御する。これにより、ブーム4の振動に応じて、減衰弁62によって発生する減衰力を切り換えることができる。
また、ブーム昇降装置40では、コントローラ70は、加速度センサ63によって検出されたブーム4の上下方向の加速度α及びブーム4の共振周波数fmに基づいて減衰弁62を制御する。具体的には、コントローラ70は、パワースペクトル密度Pxが閾値Pc以上となったときに、減衰弁62が作動油に付与する抵抗を大きくして、減衰力を大きくする。これにより、ブーム4が上下方向に振動したときに減衰力が大きくなるので、ブーム4の上下方向の振動を的確に抑制できる。
さらに、ブーム昇降装置40では、加速度センサ63によって検出された加速度αに含まれているブーム4の共振周波数成分(パワースペクトル密度Px)が閾値Pc以下の場合には、減衰弁62によって発生する減衰力を小さくするので、例えば、作業車90が段差を乗り越えるときなどに、車体91とブーム4との相対変位をアキュムレータ61によって吸収させることができるとともに、この相対変位に起因する振動の発生を抑制できる。
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るブームスプレーヤ200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態のブームスプレーヤ100と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
ブームスプレーヤ200の基本的な構成は、第1実施形態に係るブームスプレーヤ100と同様である。第1実施形態に係るブームスプレーヤ100では、車体91に対してブーム4を上下方向に変位させるブーム昇降装置40がブーム制振装置に該当するのに対して、ブームスプレーヤ200では、車体91に対してブーム4をロール方向に変位させるブーム回動装置140がブーム制振装置に該当する点で相違する。なお、以下の説明において、作業車90の後方から見てX軸を中心とする右回転方向を右ロール方向と称し、左回転方向を左ロール方向と称する。
図4に示されるように、ブーム回動装置140は、昇降台3とロール台5との間に設けられ伸縮作動することによりブーム4を車体91に対してロール方向に変位させる液圧シリンダとしての回動シリンダ141と、回動シリンダ141に作動油を供給する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51と回動シリンダ141との間に設けられ、回動シリンダ141の伸縮方向を切り換える方向切換弁152と、回動シリンダ141から排出される作動油が導かれるタンクTと、回動シリンダ141と方向切換弁152とを接続する給排通路156と、回動シリンダ141と給排通路156及び給排通路156から分岐した分岐通路164を通じて接続されるアキュムレータ161と、を備える。ブーム回動装置140では、給排通路156及び分岐通路164が接続通路に相当する。このように、ブーム回動装置140は、上記第1実施形態のブーム昇降装置40と同様の油圧回路を有する。なお、本実施形態では、ロール台5はブームの一部を構成する。
回動シリンダ141は、支持軸6を挟んで金属ばね80と対称となる位置に設けられる。回動シリンダ141は、伸縮することによって、支持軸6を中心にロール台5及びブーム4を回動させる。なお、回動シリンダ141と金属ばね80とは、ロール方向におけるブーム4の振動を抑制する制振装置として機能する。
回動シリンダ141は、作動油が封入されたシリンダチューブ142と、シリンダチューブ142に進退自在に挿入されたピストンロッド143と、ピストンロッド143の基端部に設けられるピストン144と、を備える。回動シリンダ141は、シリンダチューブ142の基端部がピロボール147を介して昇降台3に回動自在に連結され、ピストンロッド143の先端部がピロボール148を介してロール台5に回動自在に連結される。ピロボール147,148は、例えばボール及び球面軸受によって構成される。回動シリンダ141の連結部は、ピロボール147,148によってこじりが生じないようになっている。
シリンダチューブ142の内部は、ピストン144によってピストン側室145とロッド側室146とに区画される。ピストン144には、ピストン側室145とロッド側室146との間で作動油の行き来を許容する流路144aが形成される。回動シリンダ141は、油圧ポンプ51からピストン側室145に作動油が供給されることによって伸長し、ピストン側室145から作動油が排出されることによって収縮するいわゆる単動形流体圧シリンダである。回動シリンダ141としては、これに限定されず、ピストン側室145とロッド側室146との両方に対して作動油が給排される複動形流体圧シリンダ、もしくは、ピストン側室45に対してのみ作動油が給排されロッド側室46はタンクTに接続される単動形流体圧シリンダが用いられてもよい。
油圧ポンプ51は、タンクT内に貯留された作動油をピストン側室145へと供給するものであり、ブーム昇降装置40と共用される。
方向切換弁152は、回動シリンダ141を伸長させる連通位置としての伸長位置152aと、回動シリンダ141を収縮させる連通位置としての収縮位置152bと、回動シリンダ141を停止させる遮断位置としての停止位置152cと、の3つの位置を有する電磁切換弁である。
給排通路156は、一端がこの方向切換弁152に接続され、他端が回動シリンダ141のピストン側室145に接続される。給排通路156には、オペレートチェック弁153が介装される。
方向切換弁152には、給排通路156が接続されるとともに、油圧ポンプ51から吐出される作動油を導く供給通路55と、タンクTに作動油を戻す排出通路57と、オペレートチェック弁153のパイロット圧室に連通するオペレート通路159と、が接続される。供給通路55と排出通路57とは、ブーム昇降装置40と共用される。
方向切換弁152が伸長位置152aに切り換えられると、排出通路57とオペレート通路159とが連通するとともに、給排通路156と供給通路55とが連通する。油圧ポンプ51から吐出される作動油は、供給通路55と給排通路156とを通じて回動シリンダ141のピストン側室145に流入する。これにより、回動シリンダ141が伸長し、ロール台5が車体91に対して右ロール方向に回動され、ブーム4は、ロール台5とともに車体91に対して右ロール方向に変位する。
方向切換弁152が収縮位置152bに切り換えられると、供給通路55とオペレート通路159とが連通するとともに、給排通路156と排出通路57とが連通する。油圧ポンプ51から吐出される作動油は、オペレート通路159を介してオペレートチェック弁153にパイロット圧として導かれるので、オペレートチェック弁153が開弁し、ピストン側室145の作動油が給排通路156、排出通路57を通じてタンクTに戻される。これにより、回動シリンダ141が収縮し、ロール台5が車体91に対して左ロール方向に回動され、ブーム4は、ロール台5とともに車体91に対して左ロール方向に変位する。
方向切換弁152が停止位置152cに切り換えられると、供給通路55、排出通路57、オペレート通路159、及び給排通路156のすべてが連通する。これにより、油圧ポンプ51から供給通路55を通じて供給される作動油は、全てタンクTに戻される。このとき、オペレート通路159の圧力は、タンクTと等しくなり、オペレートチェック弁153は、ばねの付勢力によって閉弁する。これにより、回動シリンダ141の伸縮作動が停止し、車体91に対するブーム4の傾きが保持される。このように、車体91に対するブーム4の傾きは、回動シリンダ141を伸縮させることによって調節可能であり、傾斜面等において、圃場の農作物とブーム4との間隔を微調整することができる。
アキュムレータ161は、ブーム4の左右ロール方向への振動を抑制するために設けられる。アキュムレータ161の構成は、ブーム昇降装置40のアキュムレータ61と同じであるため、その説明を省略する。
アキュムレータ161の油室161aは、給排通路156におけるピストン側室145とオペレートチェック弁153との間から分岐する分岐通路164に接続される。
ブーム回動装置140は、分岐通路164に設けられ、分岐通路164を流れる作動油に抵抗を付与する減衰弁162と、ブーム4に設けられブーム4のロール方向の加速度αを検出する加速度検出装置としての加速度センサ163と、加速度センサ163で検出されたブーム4の加速度に基づいて減衰弁162が作動油に付与する抵抗を制御する制御部としてのコントローラ70と、をさらに備える。
減衰弁162は、流路面積(絞り)を大きくして作動油に付与する抵抗が小さくなる位置162aと、流路面積(絞り)を小さくして作動油に付与する抵抗が大きくなる位置162bと、を有する。減衰弁162は、コントローラ70から電流が印加されていない状態では、ばね162cの付勢力によって位置162aに保持され、コントローラ70から電流が印加された状態では、ソレノイド162dの付勢力によってばね162cの付勢力に抗して位置162bに切り換えられる。
コントローラ70には、加速度センサ163によって検出されたブーム4のロール方向の加速度αが入力される。コントローラ70は、ブーム4の加速度αが入力されると、入力されたブーム4の加速度α及びあらかじめ記憶されたブーム4の共振周波数fmに基づいて減衰弁162を制御する。減衰弁162は、減衰弁62と同様に制御されるため、具体的な説明については省略する。
ブームスプレーヤ200では、例えば、作業車90の左右いずれかの車輪のみが段差を乗り越えるときなど生じる昇降台3とブーム4との相対変位をアキュムレータ161によって吸収させることができる。また、例えば、作業車90が圃場を走行した場合に圃場の凹凸によって生じる車体91はロール方向の振動を抑制することができる。
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ブーム回動装置140では、加速度センサ163で検出されたブーム4のロール方向の加速度αに基づいて、減衰弁162が分岐通路164を流れる作動油に付与する抵抗を制御する。これにより、ブーム4のロール方向の振動に応じて、減衰弁162によって発生する減衰力を切り換えることができる。
また、ブーム回動装置140では、コントローラ70は、加速度センサ163によって検出されたブーム4のロール方向の加速度α及びブーム4の共振周波数fmに基づいて減衰弁162を制御するので、ブーム4がロール方向に振動したときに、減衰力を的確に発生させることができる、したがって、ブーム4のロール方向の振動を的確に抑制できる。
さらに、ブーム回動装置140では、加速度センサ163によって検出された加速度αに含まれているブーム4の共振周波数成分(パワースペクトル密度Px)が閾値Pc以下の場合には、減衰弁162によって発生する減衰力を小さくするので、例えば、作業車90の左右いずれかの車輪のみが段差を乗り越えるときなどに、昇降台3とブーム4との相対変位をアキュムレータ161によって吸収させることができるとともに、この相対変位に起因する振動の発生を抑制できる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
車体91に対して上下方向またはロール方向に変位するブーム(ブーム4、ロール台5)の振動を抑えるブーム制振装置(ブーム昇降装置40,ブーム回動装置140)は、伸縮作動することによりブーム(ブーム4、ロール台5)を変位させる液圧シリンダ(昇降シリンダ41,回動シリンダ141)と、液圧シリンダ(昇降シリンダ41,回動シリンダ141)と接続通路(給排通路56,分岐通路64,給排通路156,分岐通路164)を通じて接続されるアキュムレータ61,161と、接続通路(給排通路56,分岐通路64,給排通路156,分岐通路164)に設けられ接続通路(給排通路56,分岐通路64,給排通路156,分岐通路164)を流れる作動流体に抵抗を付与する減衰弁62,162と、ブーム(ブーム4、ロール台5)の上下方向またはロール方向の加速度αを検出する加速度検出部(加速度センサ63,163)と、加速度検出部(加速度センサ63,163)で検出されたブーム(ブーム4、ロール台5)の加速度αに基づいて減衰弁62,162を制御することで作動流体に付与する抵抗を制御する制御部(コントローラ70)と、を備える。
この構成では、加速度検出部(加速度センサ63,163)で検知されたブーム(ブーム4、ロール台5)の加速度αに基づいて減衰弁62,162が作動流体に付与する抵抗を制御することで、ブーム(ブーム4、ロール台5)の振動に応じた減衰力を発生させることができる。
制御部(コントローラ70)は、加速度検出部(加速度センサ63,163)によって検出された加速度α及びブーム(ブーム4、ロール台5)の共振周波数fmに基づいて減衰弁62,162を制御する。
制御部(コントローラ70)は、加速度検出部(加速度センサ63,163)によって検出された加速度αからブーム(ブーム4、ロール台5)の共振周波数fmにおけるパワースペクトル密度Pxを算出し、パワースペクトル密度Pxが所定値(閾値Pc)以上のときに、減衰弁62,162が作動流体に付与する抵抗を大きくする。
制御部(コントローラ70)は、加速度検出部(加速度センサ63,163)によって検出された加速度αに基づいてブーム(ブーム4、ロール台5)の共振周波数fmを中心周波数としたオクターブバンドの実効値Xrを算出し、オクターブバンドの実効値Xrが所定値(閾値Xc)以上のときに、減衰弁62,162が作動流体に付与する抵抗を大きくする。
これらの構成によれば、加速度検出部(加速度センサ63,163)で検知されたブーム(ブーム4、ロール台5)の加速度αに加えて、ブーム(ブーム4、ロール台5)の共振周波数fmに基づいて減衰弁62,162を制御するので、的確に減衰力を発生させることができる。
ブームスプレーヤ100,200は、ブーム制振装置(ブーム昇降装置40,ブーム回動装置140)を備える。
ブームスプレーヤ100,200は、ブーム4を回動自在に支持し車体91に対して上下方向に変位するブーム支持体(リンクアーム2、昇降台3)をさらに備え、液圧アクチュエータ(昇降シリンダ41)は、車体91とブーム支持体(リンクアーム2、昇降台3)との間に設けられ、ブーム(ブーム4、ロール台5)を車体91に対して上下方向に変位させる。
加速度検出部(加速度センサ63,163)は、ブーム支持体(昇降台3)に設けられる。
これらの構成では、ブーム(ブーム4、ロール台5)の上下方向の振動を抑制することができる。
ブームスプレーヤ100,200は、ブーム(ブーム4、ロール台5)を回動自在に支持し車体91に対して上下方向に変位するブーム支持体(昇降台3)をさらに備え、液圧アクチュエータ(回動シリンダ141)は、ブーム(ブーム4、ロール台5)とブーム支持体(昇降台3)との間に設けられ、ブーム(ブーム4、ロール台5)を車体91に対してロール方向に変位させる。
加速度検出部(加速度センサ163)は、ブーム(ブーム4、ロール台5)に設けられる。
これらの構成では、ブーム(ブーム4、ロール台5)のロール方向の振動を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
ブームスプレーヤ100,200は、上述のブーム昇降装置40と上述のブーム回動装置140との両方を備えていてもよい。また、減衰弁62,162は、2段階(2位置)に切り換えられているが、パワースペクトル密度Pxあるいはオクターブバンドの実効値Xrに応じて、3段階あるいはそれ以上に切り換えるようにしてもよい。さらに、減衰弁62,162の流路面積をパワースペクトル密度Pxあるいはオクターブバンドの実効値Xrの値に比例するように制御してもよい。