図1は、本実施形態の巻き寿司の製造工程を示すフローチャートである。本実施形態の巻き寿司の製造方法は、まず、巻き寿司用巻芯(以下、「本実施形態の巻芯」という)を作製し、次いで、当該巻芯を使用して巻き寿司を作製するものである。本実施形態の巻き寿司の製造方法は、図1に示すように、付着工程S101と、成型工程S102と、減圧工程S103と、加熱殺菌工程S104と、載置工程S105と、捲回工程S106とを含む。これらのうち、本実施形態の巻芯は、付着工程S101と、成型工程S102と、減圧工程S103と、加熱殺菌工程S104とを経ることで、作製される。そして、本実施形態の巻き寿司は、これらの工程を経て得られた巻芯を使用して、載置工程S105と、捲回工程S106とを行うことで、作製される。なお、これらはいずれも、それぞれ任意の装置を用いて行うことができる。
付着工程S101は、原料具材の表面に、具材同士を結着させる結着剤を付着させて結着剤付着具材を得るものである。結着剤が具材に付着されることで、結着剤付着具材が得られる。ここでいう原料具材とは、巻芯を構成する具材であり、干瓢やきゅうり、椎茸、人参、牛蒡等である。これらのうち、例えば干瓢や椎茸、人参、牛蒡等には、予め出汁の中で煮込むなどして、出汁を浸み込ませておくことが好ましい。また、巻芯を構成する具材は、巻き寿司用の材料としてシャリに巻き易いように、通常は予め例えば棒状に切断される。そして、付着工程S101では、例えば棒状に切断された具材の表面に対し、タンパク質及び多糖類のうちの少なくとも一方を含む結着剤が付着される。
結着剤は、具材同士を結着させて、巻芯の持ち易さを向上させるものである。また、結着剤が具材に付着していることで、具材からの出汁の浸み出し(離水)が抑制され易くなる。結着剤としては、例えばタンパク質及び多糖類の少なくとも一方を含むものが好ましい。具体的には、タンパク質としては例えば、カゼイン、卵白、ゼラチン等が挙げられる。また、多糖類としては、例えば、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ペクチン等が挙げられる。これらは、それぞれ、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。また、結着剤には、タンパク質及び多糖類の双方が含まれていてもよい。
具材への結着剤の付着方法は任意である。例えば、前記のように予め切断した具材の表面に結着剤の粉末をまぶすことができる。また、例えば、予め切断した具材を、結着剤を溶解させた液体(出汁等)に浸漬したり、当該液体中で煮たりすることもできる。さらに、例えば、まだ切断してない具材を、結着剤を溶解させた水溶液に浸漬したり、当該水溶液中で煮たりした後に切断することで、具材に結着剤を付着させることもできる。また、具材に結着剤を付着させるときには、具材毎に結着剤を付着させてもよいし、予め巻芯の形態に緩くまとめた状態で、その全体に結着剤を付着させるようにしてもよい。
結着剤の付着量も任意である。例えば、具材の表面の全体が覆われる程度に、粉末の結着剤をまぶすことができる。また、例えば、数質量%〜数十質量%程度の濃度で結着剤を含む水溶液中を用いて、浸漬したり煮たりすることもできる。
成型工程S102は、前記の付着工程S101で得られた結着剤付着具材を巻芯用容器に収容することで、結着剤付着具材を巻芯の形状に成型するものである。ここで使用される巻芯用容器(以下単に「容器」ということがある)は、結着剤付着具材を巻芯の形態に成型するために使用される。即ち、この容器に結着剤付着具材が収容されることで、結着剤付着具材が巻芯の形状に成型される。
容器の形状や大きさは任意である。従って、巻芯の形状や大きさが所望のものとなるように、容器の形状や大きさを設定すればよい。容器の形状としては、例えば、上方が開口した断面円形状(断面半円形状)や断面矩形状、断面V字形状等が挙げられる。また、上面視の形状としては、矩形状の形状を有するもの等が挙げられる。これらのうち、使用する容器としては、例えば図2に示すような、上面視で矩形状のトレーが好ましい。
図2は、本実施形態の巻き寿司の製造工程で使用可能な容器を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は上面図である。図2に示す容器は、上面視で矩形状のものである。なお、図2は、形状全体を把握し易くするように、相対的な大きさや長さを一部変更して図示したものである。また、図2では一つの容器のみを図示したが、二つ以上の容器を繋げて一体物とした容器とした容器を用いてもよい。図2(a)に示すように、この容器の上方は開口しており、この容器の内部に、棒状に切断された具材が収容される。具材の収容時には、具材の長手方向と容器の長手方向とが一致するように収容されることが好ましい。
図2(b)に示すように、この容器の深さはD、幅はWである。そして、深さDとしては、特に制限されないが、例えば25mm〜30mm程度とすることができる。また、幅Wとしても、特に制限されないが、例えば25mm〜30mm程度とすることができる。ただし、深さDや幅Wを長くして巻芯を大きくすれば、作製された巻芯を有する巻き寿司を切断する際、切断時の切断刃の具材への接触時に生じる巻芯の変形の影響を、具材自身が吸収することができる。そのため、巻芯や巻き寿司の変形を抑制しながら巻き寿司を切断することができ、具材や全体形状の崩れの少ない切断面が得られ易くなる。また、深さDや幅Wが長い方が、巻芯は円形に近い形状になる傾向にある。これにより、巻き寿司の形状も円形に近い形状になり易くなり、本来の形状を有する巻き寿司が得られ易くなる。従って、深さDや幅Wは長い方が好ましい。
ただし、深さDや幅Wを長くして巻芯を大きくすれば、巻き寿司を作製する際に巻きにくくなったり、得られる巻き寿司が大きくなる結果食べにくくなったりする可能性がある。そこで、これらの事情を考慮して、深さDや幅Wを決定すればよい。
また、図2(c)に示すように、容器の長手方向の長さLは、巻芯の長さに対応するものである。長さLとしても、特に制限されないが、例えば15cm〜25cm程度とすることができる。ただし、長さLがあまり長すぎると、巻き寿司を作製する際に巻きにくくなったり、得られる巻き寿司が大きくなる結果食べにくくなったりする可能性がある。そこで、これらの事情を考慮して、長さLを決定すればよい。
容器の材質としても、特に制限はないが、取り扱いの容易性や汎用性、コスト等の観点から、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂製の容器を使用することができる。ただし、容器の材質としては、後記する減圧工程S103や加熱殺菌工程S104、冷凍保存時に変形しない程度の耐久性を有するものであることが好ましい。
容器に具材を収容する際、容器に押し込むようにして詰め込むのではなく、容器の内部に上方向に積み重ねるようにして容器全体を満たして収容することが好ましい。このようにすることで、具材からの出汁の浸み出しが抑制され、巻き寿司を食べたときに具材から出汁が浸み出し易くなり、味わい深い巻き寿司が得られる。
また、具材の長さによっては、容器の長さLよりも短い具材を使用する可能性がある。このような場合には、容器の内部において、長さ方向に沿って複数の具材を並べて配置することが好ましい。これにより、巻き寿司の長さ方向全域で、同じ具材を同じ方向に並べることができる。
減圧工程S103は、前記の成型工程S102において成型された結着剤付着具材を密閉容器に入れ、当該密閉容器内を減圧するものである。この密閉容器には、通常は、結着剤付着具材を収容した容器全体が入れられる。密閉容器としては、例えば樹脂製の袋や任意の減圧装置が挙げられる。ただし、後記する加熱殺菌工程S104や巻芯の冷凍保存や運搬のし易さの観点からは、減圧工程S103を経た後のそのままの状態でこれらを行うことができる樹脂製の袋が好ましい。
密閉容器内を減圧する際、減圧の程度は任意であり、密閉容器の耐久性を考慮して適宜決定すればよい。ただし、結着剤付着具材を減圧することで、具材の内部の空気を抜くことができ、付着している結着剤に保持された出汁が、具材の内部に吸収され易くなる。これにより、味わい深い巻き寿司を得ることができる。一方で、減圧し過ぎれば、具材が保持可能な量以上の出汁が吸収されていまい、巻き寿司にしたときに巻き寿司に具材の出汁が浸み出してしまう可能性がある。そこで、これらの点を考慮して、減圧の程度としては、その下限値として、通常は400hPa以上(0.4気圧以上)、好ましくは500hPa以上(0.5気圧以上)、より好ましくは650hPa以上(0.65気圧以上)、特に好ましくは850hPa以上(0.85気圧以上)である。なお、本明細書において、特に断らない限り圧力の値は絶対圧で示すものとし、以下の記載でも同様とする。
一方で、その上限値として、減圧がされていれば前記効果は発揮されるものの、天候や地域によっても常圧が異なるため一概にはいえないが、例えば、通常は大気圧未満(1013hPa未満)、好ましくは950hPa以下(0.95気圧以下)、特に好ましくは900hPa以下(0.9気圧以下)である。
なお、減圧は、常圧から前記の圧力にまで減圧する時間として、例えば数秒〜数十秒程度かけて、ゆっくりと行うことができる。また、所望の圧力で(即ち減圧下で)保持する時間としては、例えば数分〜数十分間とすることができる。ただし、詳細は後記するが、減圧された状態で後記する加熱殺菌工程S104が行われる場合には、減圧が保持される時間は、通常は、加熱殺菌工程S104での所要時間とほぼ同じになる。
減圧工程S103で行われる減圧は、前記のように、容器に収容された結着剤付着具材に対して行われる。従って、例えば密閉袋に入れた結着剤付着具材に対し減圧を行う場合、袋内が減圧されることで袋が変形したとしても、容器の剛性によって、その変形が容器に収容された結着剤付着具材に及びにくい。そのため、容器の形状と同じ形状の巻芯を作製することができる。
加熱殺菌工程S104は、容器に収容された結着剤付着具材を加熱することで、結着剤付着具材を殺菌するものである。加熱時間としては、特に制限されないが、容器の耐熱性を考慮して設定されることが好ましい。具体的には、容器が例えばポリプロピレン等のある程度耐熱性を有する樹脂の場合、例えば60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、また、その上限として、例えば95℃以下、好ましくは90℃以下である。さらに、加熱時間としては、加熱時間を考慮して適宜設定すればよい。具体的には,例えば90℃で殺菌する場合には、例えば15分以上、好ましくは30分以上、また、その上限は、例えば1時間以下、好ましくは45分以下である。
加熱殺菌工程S104で行われる加熱は、前記のように、容器に収容された決着剤付着具材に対して行われる。加熱により、結着剤付着具材に吸収されていた出汁が浸み出し得るが、結着剤付着具材が容器に収容されていることで、結着剤付着具材からの過度の漏出が防止される。また、結着剤付着具材から漏出した出汁は容器内に留まるため、漏出した出汁が再度結着時付着具材に吸収され易くなる。そのため、得られる巻芯には十分な出汁が吸収されていることになり、巻き寿司を食べた際の味わいを深めることができる。
また、加熱殺菌工程S104と、前記の減圧工程S103とは、どちらを先に行ってもよい。即ち、減圧工程S103において減圧後に、加熱殺菌工程S104が行われるようにすることができる。一方で、加熱殺菌工程S104が行われる後に、減圧工程S103での減圧が行われるようにすることもできる。ただし、加熱殺菌工程S104は、減圧工程S103において減圧した後に、当該減圧が維持された状態で行われることが好ましい。このようにすることで、減圧を例えば袋を用いて行う場合に、当該袋の内部に存在する気体が少ない状態で加熱が行われることになる。そのため、加熱による気体の膨張が抑制され、内部の気体によって袋が裂けてしまうことが防止される。また、減圧により具材内の気体が抜けていることから、付着している結着剤に保持された状態で加熱された出汁が具材の内部に入り混み易くなる。これにより、奥まで出汁の浸みた美味しい巻き寿司が得られる。
以上の付着工程S101〜加熱殺菌工程S104を経ることで、巻芯が得られる。得られた巻芯は、容器に収容された状態で例えば冷凍処理されることで、長期間の保存が可能となる。そして、冷凍保存された巻芯は、使用時に例えば常温で解凍し、巻き寿司を作製するために使用される。ただし、加熱殺菌工程S104を経た巻芯は、冷凍されずに、そのまま巻き寿司を作製するために使用されてもよい。
載置工程S105は、付着工程S101、成型工程S102、減圧工程S103及び加熱殺菌工程S104を経て得られた巻芯(即ち、減圧や加熱等を経た結着剤付着具材)を容器から取り出して、平坦に配置されたシャリの上に載置するものである。ここでいうシャリとは、通常は酢飯である。そして、容器から取り出された巻芯は、例えば台の上に載置された海苔と、その海苔の上に平坦に配置されたシャリとの積層物の上(シャリの上)に載置される。
捲回工程S106は、載置工程S105においてシャリの上に巻芯(減圧や加熱等を経た結着剤付着具材)が載置された状態で、シャリを巻芯(減圧や加熱等を経た結着剤付着具材)に対して捲回することで巻き寿司を得るものである。具体的には、海苔の側を外側にして、巻芯を中心として捲回(丸める)ことで、本実施形態の巻芯を有する巻き寿司が得られる。得られた巻き寿司は、その両端を切断し、切断面を露出させた状態でパック詰めされ、店頭に陳列される。また、得られた巻き寿司について、数cm間隔で複数回切断し、同じく切断面を露出された状態でパック詰めされることもできる。
詳細は実施例を参照しながら後記するが、本実施形態の巻き寿司の製造方法により製造された巻き寿司は、長時間経過後であっても切断後の切断面が劣化しにくく、切断面の見た目が長時間良好な状態で維持される。具体的には、長時間、切断面における巻き寿司全体や巻芯の形状が大きく崩れずに維持される。さらには、巻芯からシャリへの出汁の浸み出しが長時間抑制され、長時間経過後であっても、巻芯を構成する具材とシャリとの接触面におけるシャリの変色を抑制することができる。そのため、店頭等で巻き寿司の切断面が消費者の目にとまったときに、良好な切断面により、購買意欲が高められ、また、食欲がそそられる。
また、巻き寿司の味についても、前記のようにシャリの部分に巻芯の出汁が浸み出しにくいことから、シャリが過度に水分を含む結果感じる味の不快感が無い。そのため、長時間経過後であっても、巻芯に十分な量の出汁が保持されことと相俟って、作りたてのような深い味わいをはっきりと奏させることができる。また、具材以外の食材が巻き寿司に含まれていない。そのため、巻き寿司本来の味や食感を感じさせることができる。
前記した製造方法に沿って巻芯及びそれを備える巻き寿司を作製し、得られた巻芯及び巻き寿司について各種評価を行った。
<実施例1>
はじめに、干瓢、椎茸、牛蒡、人参を準備し、出汁の中で十分に煮込んで、各具材に味付けを行った。そして、味付けしたそれぞれの具材のうち、牛蒡及び人参については、幅1cm程度に細切りし、さらには、5cm〜10cm弱程度の長さに切断した。また、味付けしたそれぞれの具材のうち、干瓢については、長さが10cm強程度になるように切断した。さらに、椎茸については、傘の部分を、幅が1cm弱、長さが3cm程度になるように切断した。
次いで、結着剤としてのカラギーナン533.3gとローカストビーンガム466.7gとの混合物(粉末)を、切断したそれぞれの具材に十分にまぶした(付着工程)。具体的には、それぞれの具材の表面の全体に粉末の結着剤が十分に付着するまで、まぶす作業を行った。この作業により、結着剤が付着した具材(結着剤付着具材)が得られた。
結着剤をまぶした具材について、干瓢30g、椎茸15g、牛蒡17g及び人参16gのそれぞれを図2に示す上面視で矩形状の容器に入れた(成型工程)。ここで使用した容器は、ポリプリピレン製であり、図2において、深さD=幅W=30mm、長さL=19cmのものである。また、容器に具材を入れる際、具材を過度に押圧せずに上方向に重ねつつ、また、長さ方向に適宜並べながら入れ、容器の内部を具材で満たした。
具材を入れた容器を、ポリプロピレン製の袋(幅20cm×深さ40cm)に入れて、密閉した。そして、卓上真空包装機(古川製作所社製 TM−H)を使用して、大気圧(1013hPa)から850hPaにまで減圧した(減圧工程)。なお、この減圧に際して、使用した袋の内壁はトレー及び巻芯には接触しなかった。減圧は、常圧から850hPaになるまで5秒〜7秒程度の時間をかけてゆっくりと行った。
次いで、容器に入れた状態の袋について、減圧状態のまま、90℃の湯せんにかけて、30分間加熱殺菌を行った(加熱殺菌工程)。そして、湯から袋を取り出し、室温まで自然冷却させた。これにより、容器に収容された巻芯が得られた。自然冷却後、−25℃以下の冷凍庫に入れ、40分以上保管し、完全に冷凍させた。
40分後、冷凍した袋を開封して容器を取り出し、容器に収容されている巻芯について、以下のような評価を行った。
まず、(1)袋から取り出した直後の完全冷凍された状態、(2)半解凍状態、(3)完全に解凍した後の状態のそれぞれについて、容器からの巻芯の取り出し易さを評価した。その結果、(1)完全冷凍された状態では、巻芯の一部が容器の内部に引っ付いていることもあったが、巻芯の形状が崩れることなく簡単に容器から取り出すことができた。また、(2)半解凍状態、及び、(3)完全に解凍した後の状態では、いずれも、巻芯が容器の内部に引っ付くことなく、また、巻芯の形状が崩れることなく、簡単に容器から取り出すことができた。特に、容器をひっくり返して開口が下方に向いたとき、手で取り出さなくても、巻芯は、その形状が崩れることなく簡単に容器から外れた。
また、完全に解凍した巻芯を手で摘まんだときの巻芯の様子を評価した。その結果、巻芯を指でつまんでも、巻芯の形状は崩れることなく一本のまま持ち続けることができた。そのため、指でつまんだ状態で、その形状を崩すことなく搬送することができた。さらには、指で巻芯を振り回しても、巻芯の形状は崩れにくかった。従って、実施例1の巻芯は、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。
さらに、完全に解凍後の巻芯について、味及び食感を評価した。その結果、巻芯を噛んだときに適度かつ自然な歯ごたえがあり、また、ドリップ感(ビチャっとした感じ)も無かった。さらには、噛んだ後に、口の中で適度にばらけた。そのため、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
次に、前記の図2に示した容器が八つ連なった容器を使用し、前記の方法と同様にして八本の巻芯を作製した。そして、作製された八本の巻芯をそれぞれ使用して、八本の巻き寿司を作製した。具体的には、まず、それぞれ、清潔な台の上に巻き簾を置き、その上に、21cm×18cmの大きさの海苔を敷いた。そして、海苔の上に、シャリを、21cm×18cm×厚さ1cm弱程度の平坦になるように配置した。そして、作製した巻芯を容器から取り出し、シャリの上に、シャリの一辺とほぼ平行になるように巻芯を載せた(載置工程)。次いで、当該巻芯が中心となるように、巻き簾を持ってシャリを巻芯に捲回し、巻き寿司を得た(捲回工程)。この捲回工程においては、八本いずれの巻き寿司においても、簡単に、シャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。
得られたそれぞれの巻き寿司について、以下のような評価を行った。まず、八本それぞれの巻き寿司について、巻き寿司の中央近傍で、包丁を用いて、軸方向に垂直な方向に切断した。そして、形成した巻き寿司の切断面を観察して、切断面の見た目を評価した。その結果、八本の巻き寿司のいずれの切断面についても、巻き寿司全体及び巻芯のいずれも、ほぼ同じような形状(扁平形状)と大きさとを有していた。例として、八本の巻き寿司のうちの四本の巻き寿司の切断面の様子を、図面代用写真として図3に示す。
図3に示すように、切断面における巻芯及び巻き寿司全体の崩れも殆ど無く、整った形状であった。従って、作製した巻き寿司を切断する際の包丁と巻芯及び巻き寿司全体との接触抵抗に伴う巻芯の崩れは無く、整った切断面形状を有する巻き寿司が得られることがわかった。また、いずれの切断面においても、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しは、肉眼では視認不可能なほど極微量であり、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリは白いまま維持されていた。
また、作製した八本の巻き寿司について、切断面を露出させたまま、室温25℃の部屋で3時間放置した。放置の際、切断面に直接風が当たらないようにした。そして、八本それぞれの巻き寿司について、放置後の切断面の見た目を評価した。その結果、いずれの巻き寿司においても、3時間放置後であっても、放置前(作製直後)とほぼ変わらずに巻芯の具材がしっかり纏まって維持されており、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体の色合いに光沢があり、綺麗に見えた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しは殆ど無く、放置前と同様に、シャリの部分は全体的に白いまま維持されていた。従って、3時間放置後であっても、放置前の切断面と同じような切断面の見た目となっており、スーパー等でパック詰めされて販売されるときでも、作りたてのような印象を消費者に与えることができる。
さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみたところ、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が強く感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感が無かった。即ち、巻芯の部分からは出汁の味がしっかりとする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。これらのことから、3時間放置後であっても出汁がシャリに浸み出さず、巻芯には出汁が十分に保持されているといえる。従って、本実施形態の製造方法によれば、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<実施例2>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、650hPaに減圧したこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例1と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例1と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例1と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、扁平状の切断面形状を有していた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しは、肉眼では視認不可能なほど極微量であり、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリは白いまま維持されていた。
さらに、3時間放置した後でも、実施例1と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しも、実施例1と同様に殆ど無く、放置前と同様に、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリは全体的に白いまま維持されていた。さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、実施例1と同様に良好であった。従って、実施例2においても、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与え、また、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<参考例3>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、500hPaに減圧したこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例1と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例1と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例1と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、扁平状の切断面形状を有していた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しは微量(実施例1や実施例2よりは多く)であり、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリはほぼ白いまま維持されていた。
さらに、3時間放置した後でも、実施例1と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しもほぼ無いといえる程度であり、放置前と同様に、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリはほぼ白いまま維持され、変色している部分はほぼ無かった。さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、実施例1と同様に良好であった。従って、参考例3においても、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与え、また、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<参考例4>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、410hPaに減圧したこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例1と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例1と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例1と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じよ
うに、扁平状の切断面形状を有していた。ただ、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しがごくわずかに(実施例1、2及び参考例3よりは多く)認められ、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
さらに、3時間放置した後では、実施例1と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。ただ、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しがごくわずかに認められ、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
しかし、参考例4の巻き寿司を食べてみると、前記の実施例1と同様に、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が強く感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感が無かった。即ち、巻芯の部分からは出汁の味がしっかりとする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。従って、切断面の良好さという点では実施例1よりはわずかに劣るものの、味や風味については実施例1と同様に良好であった。従って、参考例4においても、実施例1と比べても遜色なく、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与えるといえる。また、参考例4においても、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<実施例5>
具材を収容する容器を、図2においてD=W=30mmである容器に代えて、図2においてD=W=25mmである容器を使用したこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例1と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例1と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、正方形のような切断面形状を有していた。これは、容器の大きさが前記の実施例1よりも小さいため、断面矩形状という容器の形状により、切断面が正方形状になったと考えられる。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが、前記の参考例4と同程度にごくわずかに(実施例1、2及び参考例3よりは多く)認められた。そのため、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
さらに、3時間放置した後では、実施例1と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。ただ、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しがごくわずかに認められ、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
しかし、実施例5の巻き寿司を食べてみると、前記の実施例1と同様に、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が強く感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感が無かった。即ち、巻芯の部分からは出汁の味がしっかりとする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。従って、切断面の良好さという点では実施例1よりはわずかに劣るものの、味や風味については実施例1と同様に良好であった。従って、実施例5においても、実施例1と比べても遜色なく、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与えるといえる。また、実施例5においても、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<実施例6>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、650hPaに減圧したこと以外は実施例5と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例5と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例5と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例5と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例5と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、正方形のような切断面形状を有していた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが、前記の実施例5と同程度にごくわずかに認められた。そのため、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
さらに、3時間放置した後では、実施例5と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。ただ、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが実施例5と同様にごくわずかに認められ、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにごくわずかな変色があった。
しかし、実施例6の巻き寿司を食べてみると、前記の実施例5と同様に、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が強く感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感が無かった。即ち、巻芯の部分からは出汁の味がしっかりとする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。従って、切断面の良好さや味、風味については、実施例5と同様に良好であった。従って、実施例6においても、実施例5と比べても遜色なく、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与えるといえる。また、実施例6においても、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<参考例7>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、500hPaに減圧したこと以外は実施例5と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例5と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例5と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例5と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例5と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、正方形のような切断面形状を有していた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しがわずかに(実施例1、2、5、6及び参考例3、4よりは多く)認められた。そのため、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにわずかな変色があった。
さらに、3時間放置した後でも、実施例5と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。ただし、3時間放置後においても、シャリへの出汁の浸み出しがわずかに認められたことから、変色しているシャリの部分もわずかに認められた。
しかし、参考例7の巻き寿司を食べてみると、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が十分に感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感は殆ど無かった。即ち、変色しているシャリがわずかに存在しているものの、食べてみるとその影響は小さく、巻芯の部分からは出汁の味がする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。従って、切断面の良好さという点では実施例5よりはわずかに劣るものの、味や風味については実施例5と同様に良好であった。従って、参考例7においても、実施例5と比べても遜色なく、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与えるといえる。また、参考例7においても、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<参考例8>
減圧工程における減圧の程度を、850hPaに減圧したことに代えて、410hPaに減圧したこと以外は実施例5と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例5と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。また、完全に解凍後の巻芯を食べてみたところ、実施例5と同様に、噛んだときに、巻芯を構成する具材の形状や味わい、風味が口の中全体に広がり、味わい深い巻芯が得られた。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例5と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例1と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、正方形のような切断面形状を有していた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが参考例7と同程度にわずかに(実施例1、2、5、6及び参考例3、4よりは多く)認められた。そのため、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリにわずかな変色があった。
さらに、3時間放置した後でも、実施例5と同様に巻芯の具材がしっかり纏まり、巻芯や巻き寿司に大きな崩れは無かった。また、切断面全体に光沢が残っていた。ただし、3時間放置後においても、シャリへの出汁の浸み出しがわずかに認められたことから、変色しているシャリの部分もわずかに認められた。
しかし、参考例8の巻き寿司を食べてみると、特に巻芯の部分を噛んだ際、巻芯から出汁の味が十分に感じられた。また、シャリの部分からは、巻芯から出汁が浸み出したことによる味の違和感は殆ど無かった。即ち、変色しているシャリがわずかに存在しているものの、食べてみるとその影響は小さく、巻芯の部分からは出汁の味がする一方で、巻き寿司を食べた際には出汁の味とシャリの味との双方が口の中で共存していた。従って、切断面の良好さという点では実施例5よりはわずかに劣るものの、味や風味については実施例5と同様に良好であった。従って、参考例8においても、実施例5と比べても遜色なく、長期間にわたって作りたてのような印象を消費者に与えるといえる。また、参考例8においても、長期間にわたって良好な味わいを奏する巻き寿司が得られる。
<比較例1>
付着工程及び減圧工程の双方を行わないこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、冷凍状態のままの、巻芯を容器から簡単に取り出すことができた。また、半解凍状態の巻芯についても、具材が崩れ易かったものの、なんとか容器から取り出すことができた。しかし、完全解凍の状態では、巻芯を容器から取り出そうとすると、巻芯が崩れてしまい、纏まった状態で容器から取り出すことができなかった。
また、完全に解凍した巻芯を手で摘まんだときの巻芯の様子を評価した。その結果、巻芯が崩れてしまい、掴みづらかった。そのため、比較例1の巻芯を使用して巻き寿司を作製しようとすると、巻芯の掴みにくさにより搬送性が良くなく、作業性が良くないことがわかった。
完全に解凍後の巻芯について、味及び食感を評価した。その結果、巻芯の味は実施例1〜8の巻芯と同じであった。また、噛んだ後に、適度な歯ごたえがあり、口の中で適度にばらけた。しかし、噛んだときにドリップ感(ビチャっとした感じ)があり、良い食感とはいえないものであった。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8とは異なり、巻くときに巻芯が崩れ、巻きにくかった。特に、巻き始めがとりわけ崩れ易く、大変煩雑な作業であった。
さらに、得られた巻き寿司の切断面について、実施例1と同様にして観察したところ、切断時に巻芯が様々な方向にばらけるため、得られた切断面における巻き寿司全体の形状や巻芯の形状も八本それぞれで大きく異なっていた。具体的には、それらのうちの四本を挙げれば、図4に示すように、切断する際の包丁と巻芯との接触抵抗に伴う巻芯及び巻き寿司全体に崩れが生じ、巻芯そのものの切断面形状に加え、巻き寿司の全体の切断面形状もいびつな形状になっていた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが多く、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリが変色している様子がはっきりと確認できた。
さらに、3時間放置した後に観察した切断面においては、巻芯を構成する具材同士の間に隙間が生成していた。また、切断面において、巻芯の部分は乾燥しており、食欲がそそられないものとなっていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しについては、巻芯の出汁がシャリに広がり、はっきりとわかる変色がシャリに存在していた。そのため、前記のように巻芯の部分の乾燥と相俟って、いっそう食欲がそそられない切断面になっていた。
さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、口の中で巻芯を構成する具材がパサついた食感であり、舌触りが良くなかった。また、具材が乾燥しており、出汁の味も薄まっている結果、味気ない味覚であった。また、シャリの部分についても、その全体がシャリに含まれる酢及び出汁の味で一体になっており、味がぼやけてしまっていた。従って、味覚の点でも、あまり美味しくないものであった。
<比較例2>
減圧工程を行わないこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた巻芯は、実施例1と同様に、解凍直後や半解凍、完全解凍の状態のいずれの状態であっても、容器から取り出し易く、また、搬送もし易いことがわかった。
さらに、完全に解凍後の巻芯について、味及び食感を評価した。その結果、巻芯の味は実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8の巻芯と同じであった。また、噛んだ後に、比較例1と同じように、適度な歯ごたえがあり、口の中で適度にばらけた。しかし、比較例1と同じように、噛んだときにドリップ感(ビチャっとした感じ)があり、良い食感とはいえないものであった。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1と同様、簡単にシャリを載せた海苔を廻して巻くことができた。さらに、得られた巻き寿司の切断面を観察したところ、前記の実施例1と同様に、八本の巻き寿司のいずれについても、ほぼ同じように、扁平状の切断面形状を有していた。しかし、それぞれの切断面では、前記の比較例1と同様に、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが多く、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリが黒ずんでいる様子がはっきりと確認できた。
さらに、3時間放置した後に観察した切断面においては、前記の比較例1と同様に、巻芯を構成する具材同士の間に隙間が生成していた。また、切断面において、巻芯の部分は乾燥しており、食欲がそそられないものとなっていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しについても、前記の比較例1と同様に、巻芯の出汁がシャリに広がり、はっきりとわかる変色がシャリに存在していた。そのため、前記のように巻芯の部分の乾燥と相俟って、いっそう食欲がそそられない切断面になっていた。
さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、前記の比較例1と同様に、口の中で巻芯を構成する具材がパサついた食感であり、舌触りが良くなかった。また、具材が乾燥しており、出汁の味も薄まっている結果、味気ない味覚であった。また、シャリの部分についても、前記の比較例1と同様に、その全体がシャリに含まれる酢及び出汁の味で一体になっており、味がぼやけてしまっていた。従って、味覚の点でも、あまり美味しくないものであった。
<比較例3>
付着工程を行わず、かつ、減圧工程における減圧の程度として850hPaに代えて650hPaに減圧したこと以外は比較例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、冷凍状態のままでは、巻芯を容器から簡単に取り出すことができた。また、半解凍状態の巻芯についても、具財が崩れ易かったものの、なんとか容器から取り出すことができた。しかし、完全解凍の状態では、巻芯を容器から取り出そうとすると、巻芯が崩れてしまい、纏まった状態で容器から取り出すことができなかった。
また、完全に解凍した巻芯を手で摘まんだときの巻芯の様子を評価した。その結果、巻芯が崩れてしまい、掴みづらかった。そのため、比較例3の巻芯を使用して巻き寿司を作製しようとすると、巻芯の掴みにくさにより搬送性が良くなく、作業性が良くないことがわかった。
さらに、完全に解凍後の巻芯について、味及び食感を評価した。その結果、巻芯の味は実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8の巻芯と同じであった。また、噛んだ後に、適度な歯ごたえがあり、口の中で適度にばらけた。しかし、比較例1と同様に、噛んだときにドリップ感(ビチャっとした感じ)があり、良い食感とはいえないものであった。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8とは異なり、巻くときに巻芯が崩れ、巻きにくかった。特に、巻き始めがとりわけ崩れ易く、大変煩雑な作業であった。
さらに、得られた巻き寿司の切断面について、実施例1と同様にして観察したところ、切断時に巻芯が様々な方向にばらけるため、得られた切断面における巻き寿司全体の形状や巻芯の形状も、前記の比較例1ほどではないものの、八本それぞれで異なっていた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが多く、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリが変色している様子がはっきりと確認できた。
さらに、3時間放置した後に観察した切断面においては、前記の比較例1と同様に、巻芯を構成する具材同士の間に隙間が生成していた。また、切断面において、巻芯の部分は乾燥しており、食欲がそそられないものとなっていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しについても、前記の比較例1と同様に、巻芯の出汁がシャリに広がり、はっきりとわかる変色がシャリに存在していた。そのため、前記のように巻芯の部分の乾燥と相俟って、いっそう食欲がそそられない切断面になっていた。
さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、前記の比較例1と同様に、口の中で巻芯を構成する具材がパサついた食感であり、舌触りが良くなかった。また、具材が乾燥しており、出汁の味も薄まっている結果、味気ない味覚であった。また、シャリの部分についても、前記の比較例1と同様に、その全体がシャリに含まれる酢及び出汁の味で一体になっており、味がぼやけてしまっていた。従って、味覚の点でも、あまり美味しくないものであった。
<比較例4>
付着工程及び減圧工程の双方を行わず、かつ、具材を収容する容器を、図2においてD=W=30mmである容器に代えて、図2においてD=W=25mmである容器を使用したこと以外は実施例1と同様にして巻芯を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、冷凍状態のままの巻芯を容器から取り出す際、巻芯の一部が容器の内部に引っ付いていることもあったが、巻芯の形状が崩れることなく容器から取り出すことができた。しかし、半解凍状態の巻芯を容器から取り出そうとすると、巻芯が崩れてしまうことが多くなり、取り出しづらくなった。さらに、完全解凍の状態では、巻芯を容器から取り出そうとすると、巻芯が崩れてしまい、纏まった状態で容器から取り出すことができなかった。
また、完全に解凍した巻芯を手で摘まんだときの巻芯の様子を評価した。その結果、巻芯が崩れてしまい、掴みづらかった。そのため、比較例の巻芯を使用して巻き寿司を作製しようとすると、巻芯の掴みにくさにより搬送性が良くなく、作業性が良くないことがわかった。
さらに、完全に解凍後の巻芯について、味及び食感を評価した。その結果、巻芯の味は実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8の巻芯と同じであった。また、噛んだ後に、適度な歯ごたえがあり、口の中で適度にばらけた。しかし、比較例1と同様に、噛んだときにドリップ感(ビチャっとした感じ)があり、良い食感とはいえないものであった。
そして、得られた巻芯を用いて、前記の実施例1と同様にして巻き寿司を作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、捲回工程では、前記の実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8とは異なり、巻くときに巻芯が崩れ、巻きにくかった。特に、巻き始めがとりわけ崩れ易く、大変煩雑な作業であった。特に、巻き始めがとりわけ崩れ易く、大変煩雑な作業であった。
さらに、得られた巻き寿司の切断面について、実施例1と同様にして観察したところ、切断時に巻芯が様々な方向にばらけるため、得られた切断面における巻き寿司全体の形状や巻芯の形状も、前記の比較例1ほどではないものの、八本それぞれで異なっていた。また、切断面において、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しが多く、巻芯とシャリとの境界近傍のシャリが変色している様子がはっきりと確認できた。
さらに、3時間放置した後に観察した切断面においては、前記の比較例1と同様に、巻芯を構成する具材同士の間に隙間が生成していた。また、切断面において、巻芯の部分は乾燥しており、食欲がそそられないものとなっていた。さらに、巻芯を構成する具材から周りのシャリへの出汁の浸み出しについても、前記の比較例1と同様に、巻芯の出汁がシャリに広がり、はっきりとわかる変色がシャリに存在していた。そのため、前記のように巻芯の部分の乾燥と相俟って、いっそう食欲がそそられない切断面になっていた。
さらに、3時間放置後の巻き寿司を食べてみても、前記の比較例1と同様に、口の中で巻芯を構成する具材がパサついた食感であり、舌触りが良くなかった。また、具材が乾燥しており、出汁の味も薄まっている結果、味気ない味覚であった。また、シャリの部分についても、前記の比較例1と同様に、その全体がシャリに含まれる酢及び出汁の味で一体になっており、味がぼやけてしまっていた。従って、味覚の点でも、あまり美味しくないものであった。
<まとめ>
以上の結果を、表1〜表3にまとめた。表1〜表3の各項目において、各項目中、最も良い結果を◎、次いで○、△△、△、×で評価した。各記号の意味は表1〜表3において記載した通りである。そして、それぞれの記号について5点、4点、3点、2点、1点に換算し、実施例1、2、5、6及び参考例3、4、7、8及び比較例1〜4のそれぞれについて総合的なスコア(絶対スコア)を算出した。算出されたスコアについて、55点を満点(各5点満点の11項目)とする相対的な値(相対スコア)をさらに算出し、表1〜表3に示した。具体的には例えば、参考例3では、絶対スコアは53点であるが、これを55点に対する相対的な値に換算すると、相対スコアは(53/55)×100=96点となる。他の実施例、参考例及び比較例についても同様である。
表1〜表3に示すように、本実施形態の巻芯の製造方法によれば、巻芯の形状を保持するための食材を別途使用しなくても、巻芯の取り出し易さや巻き易さ等の取り扱い性に優れる。また、本実施形態の巻き寿司の製造方法により製造された巻き寿司によれば、切断面には、具材以外の食材が存在しないため、切断面に違和感を覚えることがない。そのため、切断面を見た消費者の食欲をそそり、購買意欲が高められる。さらには、具材以外の食材が含まれていないため、食べたときの食感や味等、巻き寿司本来の食感や味等が奏される。
さらに、これらの効果は、長時間にわたって奏される。そのため、例えばスーパー等で長時間陳列された場合であっても、巻芯や巻き寿司全体の崩れ及び切断面の変色が抑えられ、消費者の購買意欲を十分に刺激することができる。また、消費者が購入し、食べたときにおいても、食感や風味に違和感を覚えることなく、十分に消費者を満足させることができる。