以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、被固定部材として所謂グレーチングを例示するが、これに限定されるものではない。
図1乃至図12に、本発明の第一実施形態に係る固定治具1を示す。まず、この固定治具1によって基材800に固定される略帯状を成すグレーチング900について説明する。なお、ここでは説明の便宜上、共通の三次元軸の符号としてL、W、Hを用いる。
図1に示すように、グレーチング900は、床面、天井面、壁面等を構成し得る帯長手方向Lに延びる帯状の平面部910と、平面部910の帯幅方向Wの両側に帯厚方向Hに存する一対の厚み部920を有する。厚み部920は、断面L字状となっており、平面部910の端縁から帯厚方向Hに延びる側面924と、側面924の帯厚方向Hの端縁から帯幅内側方向に向かって延びる内側突出面926を有し、これらによって内周面922が構成される。一対の側面924は互いに対向し、互いに内側突出面926は、平面部920の裏面に対向する。
平面部910には、帯幅方向Wが長辺となるように形成される長穴912が形成される。長穴912は、帯長手方向Lに沿って複数配置される。
グレーチング900が載置される基材800は、I形鋼となっており、ウエブ810と、このウエブ810の帯厚方向Hにおける両端にそれぞれフランジ820,820を有する。グレーチング900は、帯厚方向Hにおける外面を成すフランジ820上に載置されるのが一般的であるが、勿論これに限定されず、例えば、両フランジ820,820の間の互いに対向するフランジ820の面上に配置してもよい。
図2に示すように、固定治具1は、架設方向(帯幅方向)Wに延びる架設部材10と、架設部材10の架設方向W両端に形成される一対の係合部30と、基材800と係合可能な基材側係合部材80と、架設部材10と基材側係合部材80の間に配置されて、架設部材10と基材側係合部材80を、架設方向W及び架設幅方向Lと直交する方向H(これを架設高さ方向Hと定義する)に相対移動させ得る連結部60を有する。係合部30は、グレーチング900の厚み部920の内周面922と係合する(図11等参照)。なお、ここで、基材側係合部材80は、架設部材10から別体として独立した部材としての構成例を示すが、これら架設部材10と基材側係合部材80とを一体として構成することも可能であり、図示省略するがその場合、架設部材10には、基材側係合部が設けられることになる。
固定治具1は、更に、架設部材10に対して架設幅方向Lの両外に突出するように存する落下防止部50を有する。この落下防止部50は、架設部材10において、架設高さ方向Hの反基材側(即ち、架設部材10が長穴912から挿入される際に残存する側)に配置されることが好ましい。また、ここでは、架設部材10に対して一体的に形成される一対の突起となっているが、架設部材10とは別体に構成されていても良い。
この落下防止部50の架設幅方向Lの両端の距離L50は、長穴912の帯長手方向Lの寸法よりも大きく設定することが好ましく、作業者が、固定治具1を手で保持しながら、架設部材10を長穴912に挿入している最中に、誤って固定治具1を手から放出した場合であっても、落下防止部50が長穴912と係合して停止するようになっている。
そして、正しい姿勢で挿入された固定治具1を、作業者の操作によってグレーチング900と基材800に結合して行く図8から図11の状態への遷移工程中において、落下防止部50は、自身の屈曲等の塑性変形、或いは、弾性変形、変位又は移動により(ここでは落下防止部50が帯厚方向Hに屈曲する)ことで、両端の架設幅方向距離L50が、長穴912の帯長手方向Lの寸法よりも小さくなる。
基材側係合部材80は、正面から視た場合にC形、L形、平仮名の「つ」形、片仮名の「ユ」形等の形状となっている。具体的に本実施形態の基材側係合部材80は、フランジ820の厚み以上に架設高さ方向Hに延びる厚さ片82と、厚さ片82の遠位側(この遠位とは架設部材10からの架設高さ方向Hの距離を基準に定義している)に連続して、一時的に架設方向Wに延びる遠位側係合片84と、厚さ片82の近位側に連続して一時的に架設方向Wに延びる近位側係合片86を有しており、遠位側係合片84よりも近位側係合片86が長くなることで略つ形状となっている。なお、ここでいう「一時的」とは、この基材側係合部材80は、架設高さ方向Hに平行な軸の回りを架設部材10に対して回転し得ることを意味している。従って、図12に示すように、遠位側係合片84をフランジ820の裏面側に移動させることによって、両者を係合させる。この際、遠位側係合片84の内側先端部分にはフランジ820の裏面に対して当接及び/又は圧接する基材側係合部80aを有する。また、図12(B)に示すように、基材側係合部80aをフランジ820の裏面に対して当接及び/又は圧接させる際に、基材側係合部材80を傾斜させることで、近位側係合片86の内側先端部分に設けられる基材側係合部80bもフランジ820の表面に当接及び/又は圧接させて基材側係合部材80をフランジ820に対して係合させるように構成してもよい。なお、基材側係合部材80は、C形、L形、つ形、ユ形等の内周側が凹となる断面略コ字形状とすることで機械的強度の増強を図っている。
連結部60は、雄ねじ体62と雌ねじ体64を有する。雄ねじ体62は、架設部材10に形成される第一連結孔12と、基材側係合部材80の近位側係合片86(又は厚さ片82)に形成される第二連結孔88に挿通される。なお、この第一連結孔12及び/又は第二連結孔88を長穴にしておくことができ、その場合には、事後的に、架設部材10と基材側係合部80の位置を長穴内で微調整できるようになる。従って、長穴は、架設幅方向Lに長軸とすることが好ましい。
この状態で雄ねじ体62と雌ねじ体64を螺合させることで、架設部材10と基材側係合部材80が連結され、互いを高さ方向Hに相対移動させることができる。なお、ここでは雌ねじ体64が、基材側係合部材80の断面コ字形状の部材内に収容されて互いに周方向に係合し、雌ねじ体64と基材側係合部材80の相対回転が防止される。結果、雄ねじ体64を回動させることで、架設部材10と基材側係合部材80を接近させたり、離反させたりすることができる。ここで、雄ねじ体62と螺合させる対象は雌ねじ体64としているが、必ずしも独立した雌ねじとする必要はなく、例えば、基材側係合部材80の遠位側係合片86に貫穿される第二連結孔88の内周面に螺旋溝を設けて雌ねじとしてもよい。なお、ここでは、ねじの螺合構造によって架設部材10と基材側係合部材80を相対移動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、他の構造によって接近、離反させることが可能である。
架設部材10は、一方の係合部30が端部に形成される断面略コ字形状を成す第一架設部14と、他方の係合部30が端部に形成される断面略コ字形を成す第二架設部16と、第一架設部14と第二架設部16の間に位置する断面略コ字形状を成す中間部18を有する(勿論、断面コ字形状に限定されるものでもなく、所要の機械的強度を有する構成とされていればよい)。第一架設部14と第二架設部16は、互いに角度を有しており、正面から視ると逆V字形状、若しくはΛ字形状又はハ字形状となっている。中間部18には、第一連結孔12が形成される。
図2(C)に拡大して示すように、第一架設部14と中間部18が連続する部位及び第二架設部16と中間部18が連続する部位には、それぞれ、第一変形部14Aと第二変形部16Aが形成される。この第一変形部14Aと第二変形部16Aは、比較的屈曲が容易な薄肉材料で構成することもできる。なお、この屈曲は、弾性変形、塑性変形のいずれでも構わない。結果、第一架設部14と第二架設部16が相対的に回動可能となって、両端の一対の係合部30の架設方向Wの距離を変化させることができる。
換言すると、第一変形部14Aと第二変形部16Aは、第一架設部14と第二架設部16を相対的に回動させることにより、一対の係合部30の架設方向Wの距離を変化させる変位機構40を構成することになる。なお、ここでは二箇所の変形部14A、16Aによって変位機構40を構成する場合を例示したが、一方のみの変形でも良い。また中間部18を省略して第一架設部14と第二架設部16を直接連続させ、その境界に単一の変形部を形成し、これを変位機構40とすることも可能である。
なお、中間部18の長さは特に限定されないが、中間部18が仮に傾斜してしまった場合に、第一架設部14と第二架設部16の相対角度の変動を抑制する観点から、中間部18はできる限り短い方が好ましい。
なお、第一架設部14と中間部18と第二架設部16の部材は、基材側係合部材80側が凹となる断面コ字形状となっているが、これに限定されず、上下が反転した形態のものであってもよい(勿論、断面コ字形状に限定されるものでもなく、所要の機械的強度を有する構成とされていればよい)。この断面コ字形状の部材の内側の架設幅方向L寸法は、基材側係合部材80の同方向外側寸法よりも大きく設定することが可能である。この場合、グレーチング900に挿入される前の図2(A)の状態、又は、第一架設部14と第二架設部1の相対角度が小さい図5(B)等の状態に示すように、基材側係合部材80の一部が、第一架設部14と第二架設部16の部材内に収容されて、互いが相対回転しないように構成することが可能となる。
一方で、第一架設部14と第二架設部16の角度が広がると、図8に示すように、基材側係合部材80と架設部材10との係合が解除される。このとき、連結部60の雄ねじ体60は、架設部材10と基材側係合部材80を、架設高さ方向Hを軸として相対回転させる軸部材を兼ねる。従って、雄ねじ体60を回転させるだけで、基材側係合部材80が架設部材10に対して相対回転する。
図2に戻って、本固定治具1は、架設部材10と基材側係合部材80の相対回転を、略90°の角度範囲内に規制する回転規制部70を有する。特に、この回転規制部70は、架設部材10と基材側係合部材80が架設方向Wに平行となる「基本状態」(図2参照)から、雄ねじ体60の締結回転方向(ここでは平面視で右回り方向)に基材側係合部材80が90°回転した「固定状態」(図8参照)までの範囲内の回転を許容する。
詳細に回転規制部70は、第一ストッパ72と第二ストッパ74を有する。なお、第一ストッパ72と第二ストッパ74は、一つの板状の凸状部材によって実現されているが、本発明はこれに限定されない。
第一ストッパ72は、架設部材10側と一体(これは部材としては別体の場合も含む)となり、基材側係合部材80側に延びる。第一ストッパ72は、「基本状態」となる基材側係合部材80と面接触して左回り方向に係合する。即ち、雄ねじ体62を緩める方向(左回り方向)に回転させても、基材側係合部材80が連れ回りしないで済むので、架設部材10と基材側係合部材80の距離を離反させることができる。
第二ストッパ74は、架設部材10側と一体(これは部材としては別体の場合も含む)となり、基材側係合部材80側に延びる。第二ストッパ74は、「固定状態」となる基材側係合部材80と線接触して右回り方向に係合する。即ち、雄ねじ体62を締める方向(右回り方向)に回転させても、基材側係合部材80が連れ回りしないで済むので、架設部材10と基材側係合部材80の距離を接近させることができる。
次に、本固定治具1によるグレーチング900の固定手順について説明する。
図1及び図2に示すように、まず、固定治具1のみを組み立てる。変位機構40における第一及び第二変形部14A、16Aは、変形前の状態となることから、第一架設部14と第二架設部16の間の角度(基材側係合部材80が収容されている側の角度)が最も小さくなる、即ち、一対の係合部30が互いに最も接近した状態となる。この状態の一対の係合部30の架設方向Wの両端距離をW30minと定義する。なお、この際、連結部60によって架設部材10と接続される基材側係合部材80は、架設方向Wに沿っており、架設部材10の断面コ字の部材内に収容される。
ここで、係合部30の両端距離W30minは、長穴912の帯幅方向Wの一方の縁912Aと他方の縁912Bの距離(これをW912と定義する)よりも大きく設定されている。従って、図3(A)に示すように、この固定治具1を傾斜させながら、長穴912に挿入し、一方の係合部30を、一方の厚み部920の内周面922の最奥まで進入させる。
係合部30の両端距離W30minは、長穴912の帯幅方向Wの一方の縁912Aと、帯幅方向Wの他方に存する厚み部920の内周面922の最奥部922Bとの間の直線距離(これをW920−922と定義する)よりも小さく設定されており、結果、固定治具1の一対の係合部30を、長穴912内に挿入することができる(図3(B)参照)。この際に、仮に作業者の手から固定治具1が誤って放出されたとしても、落下防止部50によって固定治具1と長穴912が係合するので、固定治具1が落下しないで済む。
その後、図4乃至図6に示すように、固定治具1を架設方向Wに適宜移動させて、一対の係合部30を、ぞれそれ、両側の厚み部920の内側突出面926に係合させる。即ち、一対の係合部30の両端距離W30minは、一対の内側突出面926の内側距離W926minよりも大きく設定されている。
この状態では、架設部材10の一部(例えば中間部18)は、グレーチング900の平面部910から突出した状態となる。即ち、第一架設部14と第二架設部16の相対角度が最も小さくなった状態の場合、架設部材10の架設高さ方向Hの寸法は、グレーチング900の帯厚方向Hの寸法より大きい。
次に作業者は、架設部材10の中間部18を押し下げて変位機構40を動作させる。この押し下げ操作により、第一及び第二変形部14A、16Aが変形し、図7乃至図9に示すように、第一架設部14と第二架設部16が回動して相対角度が大きくなり、一対の係合部30の距離が広がる。同時に、架設部材10の断面コ字形状の部材内に収容されていた基材側係合部材80が開放され、雄ねじ部60と供回りできる状態となる。また、中間部18を押し下げ操作によって、架設部材10の架設高さ方向Hの寸法が小さくなり、落下防止部50が、グレーチング900の平面部910と当接する。
この状態で、連結部60の雄ねじ体62を締結方向に回転させると、基材側係合部材80が雄ねじ体62と一緒に90°回転して回転規制部70によって停止し、基材側係合部材80の遠位側係合片84が、基材800のフランジ820の裏面側に移動し、基材側係合部80aがフランジ820に当接及び/又は圧接させ得、フランジ820と基材側係合部材80とが互いに係合可能状態となる。
図10乃至図12に示すように、更に作業者が雄ねじ体62を締結方向に回転させると、架設部材10と基材側係合部材80が接近して、基材側係合部材80がフランジ820と係合する。更に架設部材10と基材側係合部材80が接近すると、係合部30に反力が生じる。この反力により、変位機構40が、第一架設部14と第二架設部16を更に外側に回動させ、一対の係合部30の架設方向Wの距離が広がって、係合部30の突端が側面924に達する。この状態の一対の係合部30の両端距離をW30maxと定義する。
この一対の係合部30の両外側端の距離W30maxは、長穴912の帯幅方向Wの寸法W912よりも大きくなる。より詳細に、係合部30の両外側端の距離W30maxは、一対の内側突出面926の内側距離W926minよりも大きく設定され、望ましくは、一対の側面924の距離W924に達するように設計される。
なお、上記工程によって、第一架設部14と第二架設部16が外側に回動すると、架設部材10の架設高さ方向Hの寸法が小さくなり、グレーチング900の帯厚方向Hの寸法より小さくなる。即ち、作業者は、雄ねじ体60を増し締めしながら、落下防止部50を変形させて、雄ねじ体62の頭部を長穴912内に沈降させて、グレーチング900を基材800に固定する。結果、固定治具1の全体が、平面部910から突出しない状態とすることができ、固定治具1によって歩行者がつまずいたりする事態を防止できる。
以上の通り、本第一実施形態によれば、固定治具1を長穴912に挿入して位置決めし、作業者の手で押し込んで第一架設部14と第二架設部16を揺動させ、連結部60の雄ねじ体62を回転させるだけで、基材側係合部材80が自動的に90°回転し、雄ねじ体62を増し締めによって固定を完了させることができる。
即ち、従来の溶接と比較して、固定時間を大幅に短縮できると同時に、作業時の安全性を高めることが可能となる。また、固定工程の自動化によって、作業ミスも大幅に低減できる。
次に、図13及び図14を参照して、第二実施形態の固定治具101について説明する。なお、この固定治具101は、第一実施形態の変位機構を備えないものであり、それを除いた大半は第一実施形態の固定治具1と同一又は類似する。従って、図面中において、第一実施形態で用いた符号と下二桁を一致させることで、重複する説明を省略し、第一実施形態と異なる点を主に説明する。
固定治具101は、架設部材110と、係合部130と、基材800と係合可能な基材側係合部材180と、架設部材110と基材側係合部材180の間に配置されて、架設部材110と基材側係合部材180を架設高さ方向Hに相対移動させる連結部160を有する。係合部130は、グレーチング900の厚み部920の内周面922と係合する。
固定治具101は、更に、架設部材110に対して架設幅方向Lの両外に突出するように存する落下防止部150を有する。
架設部材110は、一方の係合部130が端部に形成されて、架設高さ方向Hに対して傾斜配置される第一架設部114と、他方の係合部130が端部に形成されて、架設高さ方向Hに対して傾斜配置される第二架設部116と、第一架設部114と第二架設部116の間に位置し、架設高さHに対して直角に配置される中間部118を有する。第一架設部114と第二架設部116は、正面から視ると逆V字形状、若しくはΛ字形状、又はハ字形状となっている。第一架設部114と第二架設部116と中間部118は一体化しており相対移動しない。従って、一対の係合部130の相対距離も変化しない。係合部130は、傾斜している第二架設部116及び第一架設部114に対して湾曲した格好に形成されて連続しており、架設方向W(架設高さ方向Hに対して直角方向)に平行に延びている。
本固定治具101は、架設部材110と基材側係合部材180の相対回転を、略90°の角度範囲内に規制する回転規制部170を有する。
次に、本固定治具101によるグレーチング900の固定手順について説明する。
図13(A)に示すように、まず、固定治具101のみを組み立てる。一対の係合部130の両端距離をW130fixと定義する。図13(B)に示すように、この固定治具101を傾斜させながら長穴912に挿入し、一方の係合部130を、一方の厚み部920の内周面922の最奥まで進入させる。
係合部130の両端距離W130fix(即ち、架設部材110の両外側端の距離)は、長穴912の帯幅方向Wの一方の縁912Aと、帯幅方向Wの他方に存する厚み部920の内周面922の最奥部922Bとの間の直線距離(これをW920−922と定義する)よりも小さく設定されており、結果、固定治具101を傾斜させることによって、一対の係合部130を、長穴912内に挿入することができる(図13(B)参照)。
図13(B)の挿入途中で、仮に作業者の手から固定治具101が誤って放出されたとしても、落下防止部150によって固定治具101と長穴912が係合するので、固定治具101が落下しないで済む。
図13(B)の挿入途中状態から図14(A)の載置状態まで移行するためには、途中で、固定治具101を長穴912に押し込むことで、落下防止部150を変形又は変位させる必要がある。押し込み後の図14(A)の載置状態において、係合部130の両端距離W130fixは、一対の内側突出面926の内側距離W926minよりも大きく設定される。また、架設部材110の架設高さ方向H寸法は、グレーチング900の帯厚方向Hよりも小さいが、連結部160又は架設部材110の一部(例えば中間部118)が、長穴912の内周面と係合し得るように設定される。従って、連結部160による固定作業中に、架設部材110が長穴912に対して相対回転することが無いので、固定治具101が落下する事態を回避できる。
なお、図14(A)の載置後は、図14(B)に示すように、固定治具101を架設方向Wに多少移動させて、グレーチング900の中心と固定治具101の中心を一致させる。なお、背面側にフランジ820が存在し得る内側突出面926に対して、架設部材110の架設方向Wの両端に設けられた係合部130を当接させることが好ましい。このように、固定治具101と基材800を接近させる場合、固定時において、基材側係合部材180を90°回動させるときの、基材側係合部材180と基材800の干渉を回避するために、第一連結孔12及び/又は第二連結孔88を長穴にしておくことが好ましいことになる。
各係合部130における底面には、内側突出面926の内側端縁と係合し得る段部130Aが形成される。従って、一度、グレーチング900の中心と固定治具101の中心を一致させた後に、固定治具101が架設方向Wにずれようとしても、段部130Aと内側突出面926が係合して、移動や回転が規制されるようになっている。
その後は、特に図示しないが、連結部160の雄ねじ体162を回動させて、基材側係合部材180を基材800に係合させることで、グレーチング900と基材800を固定することができる。
以上の通り、本第二実施形態によれば、固定治具101を長穴912に挿入して位置決めし、連結部60の雄ねじ体62を回転させるだけで、基材側係合部材80が自動的に90°回転し、雄ねじ体62を増し締めによって固定を完了させることができる。即ち、従来の溶接と比較して、固定時間を大幅に短縮できると同時に、作業時の安全性を高めることが可能となる。また、固定工程の自動化によって、作業ミスも大幅に低減できる。更に、固定冶具101は、ねじ締結によってグレーチング900を基材800に対して固定する機構になっており、このため、このねじ締結状態を緩めることで、基材800に対するグレーチング900の固定状態を解除することも可能となる。
なお、本第二実施形態の固定治具101の架設部材110は、中間部118が架設方向Wに比較的長い場合(具体的には、第一架設部114又は第二架設部116よりも中間部118の方が架設方向Wに長い場合)を例示したが、他の形状とすることができる。例えば図15及び図16に示す固定治具101のように、架設部材110の中間部118が架設方向Wに短いようにしても良く、中間部118を省略することもできる。
また、本第二実施形態の固定治具101の架設部材110は、断面方形又は長円形の場合を例示したが、円形、楕円形、その他の形状とすることができる。例えば図17及び図18に示す固定治具101のように、第一架設部114、第二架設部116、中間部118の断面形状が、架設幅方向Lの中央に凸状の補強部を有する形状とすることができ、曲げに対する剛性を高めることができる。
更に、本第二実施形態の固定治具101の架設部材110は、第一架設部114や第二架設部116等が直線形状となる場合を例示したが、他の形状とすることができる。例えば図19及び図20に示す固定治具101のように、架設部材110全体を弓状又は円弧状に湾曲させた形状としても良い。この場合においても、図21及び図22に示すように、架設部材110の断面形状が、架設幅方向Lの中央に凸状の補強部を有する形状としても良い。勿論、図13乃至図22で示すような架設部材の正面又は断面形状を、第一実施形態の固定治具1に適用することも可能である。
更にまた、第一及び第二実施形態の固定治具1、101の落下防止部50、150は、長穴912に押し込む際に塑性変形させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図23に示す第二実施形態の応用例となる固定治具101のように、落下防止部150が板バネ部150Aを有するようにして、容易に弾性変形可能にすることも好ましい。
また、本第一実施形態の固定治具1では、係合部30の突端が、側面924に当接する平形状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図24(A)及び図24(B)のそれぞれに示す固定治具1の架設部材10のように、係合部30の突端を湾曲形状としても良い。勿論、鋸刃形状等にしても良い。また、本第一実施形態の固定治具1の回転規制部70は、正面から視た場合に略三角形状の板状部材によって構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、図24(A)及び図24(B)にそれぞれ示す固定治具1の架設部材10のように、回転規制部70を、正面から視た場合に長円形状となる板状部材としても良い。
更に、本第一実施形態の固定治具1では、架設部材10の架設幅方向Lの寸法が、全体に亘って一定の場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図25に示す固定治具1の架設部材10のように、係合部30側の幅が小さくなり、中間部18近傍の幅が大きくなるような形状とすることができる。
また更に、本第一実施形態の固定治具1の架設部材10は、金属製の板部材をプレス加工或いは絞り加工して断面コ字形状とする場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば図26(A)に示すように、線ばね材を屈曲させて、架設部材10の外縁形状を画定することも可能である。このような線ばね材を用いると、素材自体が弾性変形できるので、架設部材10自体が変位機構40の役割を兼ねることが可能となる。また、図26(B)に示す固定治具1の架設部材10ように、弾性変形容易な板バネ材をプレス加工して所望の形状を得ることもできる。
このように、変位機構40による回動変位時に、ばねの弾性力に基づく復元力が付勢されるようにすると、基材側係合部材による基材との係合を緩めたときに、変位機構40が元の状態に自動的に復帰する。結果、架設部材10の架設高さ方向の寸法が自然に大きくなり、グレーチングの表面から突出させることができる。これにより、固定治具1を容易に取り外すことができる。
更にまた、本第一実施形態の固定治具1は、変位機構40が、第一架設部14と第二架設部16を相対的に回動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図27に示す固定治具1の変位機構40のように、第一架設部14と第二架設部16間にガイド17を設置し、架設方向Wに直線的に相対移動させることで、一対の係合部30の距離を変化させることもできる。
また、本第一実施形態の固定治具1の架設部材10は、第一架設部14と第二架設部16と中間部18が連続的な部材で構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図28に示す固定治具1の架設部材10のように、第一架設部14と第二架設部16が別体の部材となっており、連結部60又はその他の部材によって一体化されることも可能である。例えばこの架設部材10は、第一架設部14と第二架設部16のそれぞれに、連結部60が挿入される架設方向Wに長軸となる長穴14B、16Bが形成されており、この長穴14B、16Bと連結部60の間に形成される余裕隙間を利用して、第一架設部14と第二架設部16を相対的に回動させても良い(図28(C)参照)。
更に、本第一実施形態の固定治具1の連結部60の応用例として、図29に示すように、雄ねじ体62の雌ねじ体64の間の螺合部に、一方向(締結方向)の相対回転を許容し且つ他方向(緩み方向)の相対回転を規制する逆回転防止機構66を形成することが好ましい。このようにすると、固定治具1によってグレーチング900と基材800を固定した後は、連結部60が緩むことが抑制されるので、長期間に亘って確実に固定することが可能となる(勿論、これは必須ではなく、例えば、雄ねじと雌ねじとの摩擦力が大きく作用する仕組みの締結機構を用いても好い。)。
具体的に雌ねじ体64には、図29(A)及び(B)に示すように、逆回転防止機構66として、雄ねじ体62のねじ軸に向かって半径方向内向きに延設される突出部64Aを有する。この突出部64Aの突端縁は、雌ねじ体64の内周雌ねじ部のリード方向と相異なるリード方向に設定される。
一方、図29(C)に示すように、雄ねじ体62の軸部は、雌ねじ体64の内周雌ねじ部と螺合する第一雄ねじ螺旋構造62Aと、この第一雄ねじ螺旋構造62Aとリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に設定される第二雄ねじ螺旋構造62Bを重畳的に備えている。第二雄ねじ螺旋構造62Bと突出部64Aは断続的又は連続的に螺合する。この第二雄ねじ螺旋構造62Bと突出部64Aが螺合により、第一雄ねじ螺旋構造62Aに沿って雌ねじ体64が緩もうとしても、相異なるリード角及び/又はリード方向が互いに干渉し合う結果、緩み方向の相対回転が係止される。なお、締結方向の相対回転は、突出部64Aが半径方向外側へ弾性変形して、雄ねじ体62のねじ山を乗り越えて進むことができる。なお、逆回転防止機構66は、他にもラチェット構造等を利用して逆回転を防止することができる。
また、上記第二実施形態では、基材800にグレーチング900を載置してから、固定治具を設置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、グレーチング900に、少なくとも架設部材110を予め設置しておき、その(架設部材付の)グレーチング900を基材800に載置することもできる。この場合は、グレーチング900の裏面側から架設部材110の設置作業を行うことができるので、基材へのグレーチングの設置施工現場での作業効率を向上させることができる。
例えば図30及び図31に示すように、架設部材110の架設方向寸法W110を、グレーチング900の一対の側面924間の距離と丁度一致するようにしておき、架設部材全体110を手作業によって、架設高さ方向Hと平行となる軸で旋回させることで、両端の係合部130を、一対の側面924に係合させることが好ましい。図31に示すように、係合部130の突端は、旋回方向の奥側を湾曲面又は傾斜面130Pとし、旋回方向手前を直線面130Qにすることで、係合時に、傾斜面130Pを利用して円滑に挿入し、直線面130Qによって架設部材110が必要以上に旋回することを規制する。なお、架設部材110をグレーチング900に予め設置する際の両者の係合強度は、例えば係合部110を弾性変形可能に構成する等によって、比較的緩く設定するが好ましい。このようにすると、基材800にグレーチング800を配置した後に、固定治具101と基材800の位置がずれている場合は、固定治具101を架設幅方向に移動させることができる。この観点から、図30(B)に示すように、架設部材110の架設高さ方向寸法H110は、連結部160を最も深く沈めた際に、連結部160がグレーチング800の長穴912と干渉しないように設定される。
また、図32に示すように、予めグレーチング900に設置される架設部材110の架設幅方向の寸法を、グレーチング900の長穴912よりも大きくしておき、更に、架設部材110に形成される第一連結孔112を、架設幅方向に長穴にしておくことが好ましい。このようにすると、架設部材110と長穴912の中心がずれてしまった場合であっても、連結部160を事後的に架設幅方向に移動させることで、グレーチング900の中心に合わせることが可能となる。
次に、図33及び図34を参照して、図30乃至図32に示した実施形態の応用例となる固定治具101を示す。この固定治具101の架設部材110の架設幅方向寸法J110は、グレーチング900の長穴912の幅J912よりも大きく設定され、望ましくは幅J912の1.5倍以上、好ましくは2倍以上に設定される。また、架設部材110の幅方向寸法J110は、長穴912のピッチPよりも大きく設定され、望ましくは、ピッチPの1.5倍以上に設定される。このようにすることで、架設部材110に形成される第一連結孔112を、架設幅方向に長くすることが可能となり、仮に、グレーチング900の長穴912と、固定治具101の位置がずれてしまった場合でも、第一連結孔112の長さ分だけ調整自在とすることができる。また、係合部130の突端の直線面130Qを長くすることができるので、設置後の安定性を高めることができる。
更に本架設部材110は、図34(B)に示すように、第一架設部114と第二架設部116の間に位置する断面略コ字形状を成す中間部118の架設高さH方向の寸法H118を、架設部材110全体の架設高さH110に近い程度(具体的には架設高さH110の50%以上、好ましくは80%以上)に設定する。結果、この中間部118と基材側係合部材180を係合させることができる。具体的には、中間部118の一対の側面に、それぞれロ字形状の開口118Aを形成しておき、これらの一対の開口118Aに対して、基材側係合部材180の近位側係合片186を挿入する。これにより、開口118Aが、回転規制部170として機能し、架設部材110と基材側係合部材180の双方向の相対回転を規制することができる。また、この開口118Aによって、架設部材110と基材側係合部材180の架設高さ方向Hの相対移動範囲を、所定の範囲内に制限することができる。結果、基材側係合部材180の保持姿勢を、開口118A内で常に安定させることができる。
また、図34(A)に示すように、基材側係合部材180の近位側係合片186の端部には、中間部118と係合可能な係合部186Aが形成される。この係合部186Aの幅W186Aは、近位側係合片186の残部よりも大きく設定されており、かつ、開口118Aの幅W118Aよりも大きく設定される。一方、係合部186Aの幅W186Aは、開口118Aの対角寸法T118Aよりも小さく設定される。従って、基材側係合部材180の近位側係合片186を、開口118Aに対して傾斜させながら挿入し、その後、近位側係合片186を水平状態に戻せば、開口118Aと係合部186Aを係合させることができる。結果、架設部材110から基材側係合部材180が脱落し難くなる。なお、ここでは一対の開口118Aによって、架設部材110と基材側係合部材180の相対移動範囲を一定の範囲内に制約する場合を例示したが、開口以外の形状によって、回転方向及び/又は架設高さ方向の相対移動範囲を制約するようにしても良い。
なお、上記応用例では、基材側係合部材180の架設幅方向の寸法J180が、架設部材110の架設幅方向寸法J110に対して1.2倍程度の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図35に示すように、基材側係合部材180の架設幅方向の寸法J180を、架設部材110の架設幅方向寸法J110の1.5倍以上、好ましくは2倍以上に設定することが好ましい。このようにすると、基材側係合部材180に形成される第二連結孔188を長穴にすることが可能となり、グレーチング900と基材800の位置がずれた場合であっても、より一層、柔軟に調整することができるようになる。
更に、図32で示す上記第二実施形態の応用例では、架設部材110に形成される第一連結孔112を、架設幅方向に長穴にする場合を例示したが、更にその応用として、図36(A)及び(B)に示すように、第一連結孔112の長手方向の端部及び/又は途中において、架設幅方向に拡がる係合領域112Aを形成し、係合領域112A以外の範囲は、係合領域112Aよりも架設幅方向に狭くなる狭小領域112Bを形成することができる。なお、図36(A)では、第一連結孔112の両端の二箇所に係合領域112Aが形成される場合を示し、図36(B)では、第一連結孔112の両端及び中央の三箇所に係合領域112Aが形成される場合を示すが、本発明において係合領域112Aの数は特に限定されない。
係合領域112Aは、連結部160と長手方向に係合する。また、狭小領域112Bでは、連結部160が長手方向に移動自在となる。具体的には図36(C)に示すように、連結部160の雄ねじ体162の軸部は、軸直角方向の断面を非正円形状とすることで、長経部162Xと短経部162Yを有する。特に本応用例では、ねじ山が形成され得る軸部の両側面に平面を形成することで、短径部162Yを創出している。
第一連結孔112の狭小領域112Bの幅は、短径部162Yより大きく且つ長経部162Xより小さい。一方、第一連結孔112の係合領域112Aの幅は、長経部162Xより大きい。このようにすると、雄ねじ体162の短径部162Yを架設幅方向に一致させることで、連結部160が狭小領域112B内を長手方向に移動自在となる。一方、係合領域112Aにおいて、雄ねじ体162を90°回動させて長径部162Xを架設幅方向に一致させれば、連結部160と係合領域112Aが互いに架設方向(長手方向)に係合される。
従って、図37に示すように、連結部160の雄ねじ体162を、下側から上方に向かって(即ち、基材側係合部材180から架設部材110に向かって)挿入し、雄ねじ体162の突端において雌ねじ体164を螺合させる。固定時において、雄ねじ体162を上述の通り回動させて、連結部160を狭小領域112Bに沿って移動させつつ、複数の係合領域112Aから最適な場所を選択して、係止させることができる。即ち、雄ねじ体162と雌ねじ体164の螺合状態を解除せずに、連結部160を、最適な係合領域112Aに位置決めできる。また、本固定治具101をグレーチング900に固定する際は、連結部160の雌ねじ体164側を上方から回動させれば良いので、雄ねじ体162の回動は生じない。結果、締結途中において雄ねじ体162と係合領域112Aの係止状態が解除されることを防止できる。
また上記説明では、第一連結孔112を長穴として、係合領域112Aと狭小領域112Bを形成する場合を例示したが、図36(A)(B)の基材側係合部材180に示すように、第二連結孔188を長穴として、そこに係合領域188Aと狭小領域188Bを形成しても良い。このようにすると、雄ねじ体162の短径部162Yを架設幅方向に一致させることで、連結部160が狭小領域188B内を長手方向に移動自在となる。一方、係合領域188Aにおいて、雄ねじ体162を90°回動させて長径部162Xを架設幅方向に一致させれば、連結部160と係合領域188Aが互いに架設方向(長手方向)に係合される。結果、基材側係合部材180と連結部160の位置決めが可能となる。
なお、図36(C)の雄ねじ体162では、軸部の側面に平面を形成することで、短径部162Yを創出する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図38(A)に示すように、雄ねじ体162の軸部は、雌ねじ体164の内周雌ねじ部と螺合する第一雄ねじ螺旋構造162Aと、この第一雄ねじ螺旋構造162Aとリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に設定される第二雄ねじ螺旋構造162Bを重畳的に備える構造とする場合(詳細は図29(C)参照)、第一雄ねじ螺旋構造162Aと第二雄ねじ螺旋構造162Bのねじ山の高さが最も大きくなる方向が長径部162Xとなり、それに対して直交する方向が短径部162Yとなる。従って、例えば図38(B)に示すように、雄ねじ体162の短径部162Yを架設幅方向に一致させることで、連結部160が狭小領域112B内を長手方向に移動自在となる。一方、係合領域112Aにおいて、雄ねじ体162を90°回動させて長径部162Xを架設幅方向に一致させれば、連結部160と係合領域112Aが互いに架設方向(長手方向)に係合される。
また、図29で示す上記第二実施形態の応用例では、雄ねじ体の軸部に対して、雌ねじ体側に設けられる突出部を係合させることにより、逆回転防止機構を構成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図39(A)に示すように、第一連結孔112及び/又は第二連結項188の座面において、ラチェット状の波形や凹凸等によって構成される逆回転防止面112G,188Gを形成し、図39(B)に示すように、連結部160における雄ねじ体162の座面及び/又は雌ねじ体164の座面にも、ラチェット状の波形や凹凸等によって構成される逆回転防止面162G,164Gを形成し、締結時において、これらを互いに当接させることで、緩み方向の相対回転を規制する逆回転防止機構を構成することができる。
また、架設部材110(第一連結孔112)や基材側係合部材180(第二連結項188)に対して、逆回転防止面112G,188Gを直接形成する場合に限られる、例えば図40(A)に示すように、逆回転防止面112Gを有するワッシャ状の第一座体113と、逆回転防止面188Gを有するワッシャ状の第二座体189を、第一連結孔112及び/又は第二連結項188の座面に配置することも好ましい。
この場合、図40(B)に示すように、例えば第一座体113の周縁を非正円形状とし、一方で、架設部材110の第一連結孔112の周囲に係合用凹部112Uを形成し、この係合用凹部112Uに第一座体113を収容させて互いに係合させることで、第一座体113が係合用凹部112U内で回動不能とすることが好ましい。また例えば、第二座体189の周縁を非正円形状とし、その周縁を、基材側係合部材180の断面略コ字形状の凹部と係合させることで、第二座体189が基材側係合部材180内で回動不能とすることが好ましい。なお、第一座体113及び/又は第二座体189を回動不能とする場合、他にも様々な態様・構造が適用可能であるため、本発明は上記例示態様に限定されない。この結果、連結部160における雄ねじ体162と雌ねじ体164の締結方向の相対回転が許容され、一度締結された後は、逆回転防止機構によって緩み方向への相対回転が規制される。
次に、図41以降を参照して、第二実施形態の変形例に係る固定治具101について説明する。ここでは、図13乃至図22で示した第二実施形態等で用いた符号を一致させることで、重複する説明を省略し、特徴的な変形点を主に説明する。
図41(A)乃至(C)に示すように、この固定治具101は、架設部材110と、係合部130と、基材800と係合可能な基材側係合部材180と、架設部材110と基材側係合部材180の間に配置されて、架設部材110と基材側係合部材180を架設高さ方向Hに相対移動させる連結部160を有する。係合部130は、グレーチング900の厚み部920の内周面922と係合する。
架設部材110は、一方の係合部130が端部に形成されて、架設高さ方向Hに対して傾斜配置される第一架設部114と、他方の係合部130が端部に形成されて、架設高さ方向Hに対して傾斜配置される第二架設部116と、第一架設部114と第二架設部116の間に位置し、架設高さHに対して直角に配置される中間部118を有する。第一架設部114と第二架設部116は、正面から視ると略V字形状、若しくは略逆Λ字形状、又は略逆ハ字形状となっている。即ち本変形例では、中間部118が、係合部130よりも架設高さ方向Hに低い位置となるように、第一架設部114と第二架設部116が傾斜配置される。なお、本固定治具101は、架設部材110と基材側係合部材180の相対回転を、略90°の角度範囲内に規制する回転規制部170を有する。
基材側係合部材180は、特に限定される訳ではないが、ここでは一枚のプレート形状となっており、架設高さ方向Hに平行な軸の回りを架設部材110に対して相対回転し得る。また、この基材側係合部材180は、フランジ820の裏面に対して当接及び/又は圧接する基材側係合部180aを有する。従って、この基材側係合部材180を架設部材110の架設方向と平行にしておき、その後、フランジ820の裏面側に回り込むように90°回動させることによって、フランジ820の裏面と基材側係合部180aを係合させる(図42(B)参照)。
図41に戻って、連結部160は、雄ねじ体162と雌ねじ体164を有する。雄ねじ体162は、基材側係合部材180に形成される連結孔188に挿通され、更に雌ねじ体164と螺合し、更に、架設部材110の中間部118に形成される雌ねじ孔118Aと螺合する。図41(C)に示すように、基材側係合部材180は、雄ねじ体162の頭部と雌ねじ体164に挟み込まれた状態で、回転自在に(つまり、挟持力を受けない状態で)雄ねじ体162の端部近傍に保持される。雌ねじ体164は、回転止めとして溶接Pや接着剤、ボルトやナット素材の塑性変形、回転止め部材等によって雄ねじ体162と相対回転しない様に構成することが好ましい。つまり、この雌ねじ体164は、基材側係合部材180に対して余裕隙間を空けた状態で、基材側係合部材180と軸方向に係合する保持部材として機能させている。
基材側係合部材180を有する雄ねじ体162と、中間部118の雌ねじ穴118Aを螺合させることで、架設部材110と基材側係合部材180が連結され、互いを架設高さ方向Hに相対移動させることができる。なお、雄ねじ体162と螺合させる対象は、中間部118に一体形成される雌ねじ穴118Aとしているが、必ずしも一体形成されている必要はなく、別途、中間部118の雌ねじ体を設けてもよい。
次に、本固定治具101によるグレーチング900の固定手順について説明する。まず、図41(C)に示すように、固定治具101のみを組み立てる。具体的には、連結部160として、雄ねじ体162の頭部近傍に基材側係合部材180を回転自在に設置した後、雌ねじ体164を螺合させ、基材側係合部材180との間に隙間を有する状態で溶接する。この連結部160を、中間部118の雌ねじ穴118Aに螺合させることで、固定治具101の組み立てが完了する。
次に、図42(A)に示すように、この固定治具101を傾斜させながら長穴912に挿入して、一方の係合部130を、一方の厚み部920の内周面922に接近させて、他方の係合部130を、他方の厚み部920の内周面922に接近させることで、載置が完了する。結果、基材800の上部側のフランジ820よりも、中間部118が下側に突出する構造となり、架設部材110の側面を、フランジ820の端面に当接させるようにすれば、架設部材110とフランジ820の位置決めが完了する。
その後、図42(B)に示すように、連結部160の雄ねじ体162を、雌ねじ孔118Aに対して緩める方向(上方から視て反時計回り)回動させると、基材側係合部材180が90°連れ回りして、回転規制部170と接触して停止し、フランジ820の背面側に位置決めされて架設高さ方向Hに係合可能となる。更に、雄ねじ体62を更に緩めることによって、基材側係合部材180が、架設高さH方向に上昇して、フランジ820の背面側を押圧し、更に雄ねじ体62を増し締め(増し緩め)することによって固定が完了する。この構造によれば、例えば、雄ねじ体162の先端側(下端側)にも、ドライバ等の工具と回転係合可能な部位(例えばタップやボルト頭部)を設けておくことで、下側から固定することも可能である。勿論、雄ねじ体162の架設高さ方向Hの下端側をボルト頭部にして、下側から締結する構造を採用しても良い。
なお、上記変形例では、基材側係合部材180がプレート形状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図43(A)及び(B)に示すように、正面から視た場合にC形、L形、平仮名の「つ」形、片仮名の「ユ」形等を逆さにした形状としても良い。即ち、基材側係合部材180は、フランジ820の厚み以上に架設高さ方向Hに延びる厚さ片182と、厚さ片182の遠位側(この遠位とは架設部材10からの架設高さ方向Hの距離を基準に定義している)に連続して、一時的に架設方向Wに延びる遠位側係合片184と、厚さ片182の近位側に連続して一時的に架設方向Wに延びる近位側係合片186を有しており、遠位側係合片184よりも近位側係合片186が長くなることで、略つ形状を逆さにした態様となっている。従って、近位側係合片186をフランジ820の裏面側に移動させることによって、両者を係合させることができる。
本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。