JP6627928B2 - ポリ塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いた食品包装用小巻ラップフィルム - Google Patents
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Description
以上述べた様に従来の技術では溶出量の低減、ラップの必要特性及び生産性の全てを満足する配合系は得られていない。これらの問題に対して、例えば、特許文献2では、蒸発残留物試験での抽出量の低減と生産性(ドライアップ性)等の可塑剤特性を満足する新たなポリエステル系可塑剤が提案されており、ストレッチフィルムを対象とした配合設計で検討した結果、一定の低減効果が得られていることは確認できるが、ラップフィルムについては未検討のため、ラップフィルムについて適した配合設計を行う必要がある。
また、本発明は、前記のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなり、厚さが10μm以下であり、ヘプタン抽出量が25μg/ml以下である食品包装用小巻ラップフィルムに関する。
本発明の樹脂組成物を用いることで、ヘプタン抽出量が低く、しかも寸法安定性や低温粘着性などのラップフィルムとして優れた特性を有し、且つ生産性に優れたポリ塩化ビニル系樹脂配合物及びそれを用いたラップフィルムを得ることが出来た。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂配合組成物を用いて製膜したラップフィルムは、厚さが10.0μm以下であって、昭和57年厚生省告示20号にて測定したヘプタン抽出量が25μg/ml以下であり、且つ生産性に優れたものである。
また、塩ビ系樹脂としては塩化ビニルホモポリマーのほか、塩化ビニルモノマーを10質量%以上含有し、これと共重合可能なモノマーとの共重合物、グラフト共重合体、ブロック共重合体がある。そのコポリマーの例としては、エチレン、プロピレン、ポリブテン等のオレフィン系、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸メチルエステル等の飽和ビニルエステル、不飽和アルキルエステル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンを挙げることができる。更に、ポリ塩化ビニルは、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの三次元ポリマーとのポリマーブレンド、または、ポリ塩化ビニルのアルコール等による後処理物、後塩素化物等の含ハロゲン樹脂がある。
また、(B)成分の脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤の粘度は、200〜1,500mPa・sであることが好ましい。粘度が前記範囲にあることにより、他の添加剤との相溶性も優れるため、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物において、熱安定性の低下及び流動性の変動による成形性の低下を抑えることができる。なお、粘度が1,500mPa・sを超えると、ポリエステル可塑剤が、高分子量のため、樹脂との絡み合いの程度が大きく、また自身が高分子量であるためヘプタンでの抽出がされにくいなど、熱安定性や流動性が低下するおそれがある。また、粘度は、BM型粘度計を用いて25℃の条件において、JIS K6901−1986に準じて測定し、得た値である。
また、(B)脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤において、好ましくは、水酸基価が10〜30mgKOH/gでの範囲であり、エステル基濃度が8〜9mmol/gの範囲であるエステル化合物である。
可塑化効率が0.90を超えるものでは可塑化効率が不十分で熱安定性や生産性に劣る配合となり、これを補うために可塑剤量を増やした場合には、ヘプタン抽出量を規定値以下にすることが困難になるおそれがある。また、可塑化効率が0.90以下であれば、可塑化効率が良好で熱安定性、生産性とヘプタン抽出量の両方の特性を満足させる配合系が得られ、好ましい。
(B)成分と(C)成分を合わせた可塑剤(併用物)において、(B)成分単独では十分な成形性の改善することは困難であるおそれがあるため、成形性の改善のため、(B)成分の割合は、50〜70質量%である。なお、残部については、すべて、(C)成分でもよく、あるいは、他の可塑剤を含んでいてもよい。従って、(C)成分の割合は、10〜50質量%が好ましく、30〜40質量%がより好ましい。
以上のような可塑剤配合系を使用することで、ヘプタン溶出量を25μg/ml以下とすることできるとともに、(B)成分により他の可塑剤が保持され表面にブリードアウトし難くなるため、原反保管時の幅方向の収縮率が小さく、製品が高温雰囲気に曝された場合の幅方向の収縮率も小さくなり、低温時の粘着が維持された優れた特性を持ち且つ生産性に優れたラップフィルムを得ることができる。
また、(D)エポキシ化植物油の含有量は、(A)成分100質量部に対して、6〜10質量部である。6質量部未満では熱安定性が低下し、ラップフィルムの必要な特性及び生産性が低下するおそれがあるため生産には不向きである。また10質量部を超えるとラップフィルムのにおいが悪くなり、べたつきによるフィルム引出性の低下のため品質が確保できず、生産性にも影響が出るため生産には不向きである。
また、(E)グリセリン系防曇剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して1.0〜2.5質量部である。1質量部未満ではラップフィルムの必要な特性である粘着力が低下するため品質が確保できない。また、2.5質量部を超えるとラップフィルム製品の寸法安定性及び引出性が低下するため品質の確保ができない。
(実施例1〜2、比較例1〜12)
平均重合度1,050の(A)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤(アジピン酸/1,2−プロパンジオール/n−オクタノール=90/80/80質量部)(重量平均分子量2,800、粘度800mPa・s)、(C)アジピン酸系エステル可塑剤としてはアジピン酸ジオクチル(可塑化効率0.85)を使用し、更に(D)エポキシ化大豆油を加え、(E)防曇剤としてジグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの混合物(ジグリセリンオレエート/ソルビタンラウレート=50/50質量部)を表1〜2に示した質量部数加え、安定剤としてはCa-Zn系安定剤を1質量部加えた樹脂組成物を調整した。
尚、比較例2〜3では、重量平均分子量2,800のアジピン酸系ポリエステル可塑剤の代わりに、重量平均分子量1,300又は4,000のアジピン酸系ポリエステル可塑剤を使用した。
尚、比較例1、4では、アジピン酸ジオクチル(可塑化効率0.85)の代わりに、アジピン酸イソノニル(可塑化効率0.92)を使用した。
次に、この樹脂組成物をインフレ押出機で押出しラップフィルムの原反を得た。これを巻替機で巻き替え化粧箱に詰め込み、幅30cm、長さ100mのラップフィルム製品を得た。
株式会社尾崎製作所製デジタル厚み測定器により、フィルム厚みを測定した。
フィルムを20℃の恒温室に24時間投入し、フィルム同士をゴムロールで貼り付けそれを恒温室中に設置した株式会社東洋精機製作所製引っ張り試験機を用いてフィルム間の剥離力を求めそれを低温粘着力とした。幅は250mmである。
○:粘着力が7.0gf/250mm以上(0.0687N/250mm以上)
×:粘着力が7.0gf/250mm未満(0.0687N/250mm未満)
フィルムを0℃の恒温室に24時間投入し、フィルム同士をゴムロールで貼り付けそれを恒温室中に設置した株式会社東洋精機製作所製引っ張り試験機を用いてフィルム間の剥離力を求めそれを低温粘着力とした。幅は250mmである。
○:粘着力が5.0gf/250mm以上(0.049N/250mm以上)
×:粘着力が5.0gf/250mm未満(0.049N/250mm未満)
化粧箱に入れた小巻製品を箱から引出す時の引出力をAIKO製のプッシュプルゲージで評価した。
○:引出しが軽く、使い勝手が良い
×:引出しが重く、使い勝手が悪い
製膜後24時間経過したフィルムの臭気を嗅いで官能評価をした。
○:不快になるような臭いが感じられない
×:臭いがきつく不快に感じる
原反を室温(25℃)に5日間放置し,放置前後の原反の幅を測定し原反収縮率を求めた。
◎:原反収縮率が1.5%未満
○:原反収縮率が1.5%以上、2%未満
×:原反収縮率が2.0%以上
小巻品を60℃の恒温層に24時間投入し投入前後のフィルム幅を測定し収縮率を求めた。
◎:小巻品収縮率が3.0%未満
○:小巻品収縮率が3.0%以上、5.0%未満
×:小巻品収縮率が5.0%以上
一定面積の試料をフィルムから切り取り、その表面積1cm2当たり2mlのヘプタン溶液に25℃の温度で1時間浸漬し、溶液を蒸発乾固させ、その重量を測定することでフィルムからヘプタン溶液への移行量を求めた。
○:ヘプタン抽出量が25μg/ml以下
×:ヘプタン抽出量が25μg/ml超
インフレ押出機にて、樹脂組成物を押出しフィルムの成形を行う際に生じる生産トラブル(穴開き、フィルム切れ、スリット不具合等)の1日当たりに発生する回数をカウントすることで評価した。
○:生産トラブル回数が0〜2回/日程度
△:生産トラブル回数が3〜4回/日程度
×:生産トラブル回数が5回/日以上
インフレ押出機にて、樹脂組成物を押出しフィルムの成形を行い得られたフィルムの外観を観察することで製膜性を評価した。
○:ほぼ均一の厚さのフィルムが得られた。
△:フィルムが得られたが厚みむらが見られたり、長時間の押出でヤケが発生した。
×:厚みむらが更に激しくヤケも比較的短時間で発生する。
ラップフィルム用の樹脂組成物を株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルにて一定温度で混練し、ラップフィルム組成物が黒化した時間を測定することにより熱安定性を評価した。
ラップフィルム用の樹脂組成物を株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルにて一定温度で混練し、可塑化に要した時間を測定することにより樹脂組成物の可塑化効率を評価した。
◎:可塑化時間が90秒以上、120秒未満
○:可塑化時間が120秒以上、150秒未満
△:可塑化時間が150秒以上、180秒未満
×:可塑化時間が180秒以上
すなわち、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤を使用した場合ではヘプタン抽出量が25μg/ml以下が達成されたが、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤を使用しないもの、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤と、(C)脂肪族多塩基酸系エステル可塑剤の併用物が22質量部を超えるもの及び併用物が16質量部〜22質量部の範囲にあるが(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤を50質量%以上使用していない場合はヘプタン抽出量が25μg/mlを超えることが認められる(実施例1、2、比較例1、5、6参照)。
比較例7に示したように、併用物において、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤の割合が70質量%を超えた場合(80質量%)は、可塑化効率が不十分で、生産性、製膜性が悪くなった。
比較例8に示したように、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤と、(C)脂肪族多塩基酸系エステル可塑剤の併用物が16質量部未満のもの(15質量部)は、同様に可塑化効率が不十分で、生産性、製膜性及び熱安定性が悪くなった。
逆に(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤と、(C)脂肪族多塩基酸系エステル可塑剤の併用物が16質量部未満やその内前者の割合を50〜70質量%の範囲で使用していないものや(E)防曇剤を1.0質量部未満のものは低温粘着力の低下がみられた(実施例1、2、比較例7、8、11参照)。
なお、常温粘着力については、いずれも良好な粘着力を示した(実施例1、2、比較例1〜12参照)。
また、原反収縮率,小巻品収縮率共に、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤を添加し、(E)防曇剤を2.5質量部以下にすることで低減を図ることができた(実施例1、2、比較例2〜12参照)。
Claims (2)
- ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなる食品包装用小巻ラップフィルムであって、
前記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂、
(B)重量平均分子量1,600〜3,600の脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤、及び
(C)脂肪族多塩基酸系エステル可塑剤
を含有し、
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分と前記(C)成分の併用物の含有量が16〜22質量部であり、
前記(B)成分が、アジピン酸、1,2−プロパンジオール及び末端封止成分としてn−オクタノールを原料として製造されたものであり、
前記(B)成分と前記(C)成分の併用物において、前記(B)成分の割合が50〜70質量%であり、
前記フィルム表面積1平方cm当たり2mlのヘプタン溶液に25℃の温度で1時間浸漬し、溶液を蒸発乾固させ、その質量を測定することで求められるフィルムからヘプタン溶液への移行量であるヘプタン抽出量が、25μg/ml以下である、食品包装用小巻ラップフィルム。 - 厚さが10μm以下である、請求項1に記載の食品包装用小巻ラップフィルム。
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