次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、レーザプリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
以下の説明において、方向は、図1に示す方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって右側を「前側」、紙面に向かって左側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「右側」、紙面に向かって手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、筐体2と、記録シートの一例としての用紙Pを給紙するためのフィーダ部3と、用紙Pに画像を形成するための画像形成部4とを備えている。
フィーダ部3は、筐体2の下部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する給紙機構32とを備えている。
画像形成部4は、筐体2内に収容されており、主に、スキャナユニット5と、プロセスカートリッジ6と、転写ローラTRと、定着装置7とを備えている。
スキャナユニット5は、筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、後述する感光ドラム61の表面上に高速走査にて照射する。
プロセスカートリッジ6は、筐体2に着脱可能となっている。プロセスカートリッジ6は、静電潜像が形成される感光ドラム61と、図示しない帯電器と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部62と、トナー収容部62内のトナーを感光ドラム61に供給する供給ローラ63および現像ローラ64を備えている。
このプロセスカートリッジ6では、図示せぬ帯電器が、回転する感光ドラム61の表面を一様に帯電する。スキャナユニット5は、感光ドラム61の表面にレーザビームを出射して、感光ドラム61の表面を露光することで、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像を形成する。
次いで、回転駆動される現像ローラ64が、感光ドラム61の静電潜像にトナーを供給して、感光ドラム61の表面上にトナー像を形成する。その後、感光ドラム61の表面上に担持されたトナー像は、用紙Pが感光ドラム61と転写ローラTRの間で搬送される際に、転写ローラTRに引き寄せられて用紙P上に転写する。
定着装置7は、帯電された定着液Lを静電噴霧により用紙P上のトナー像に向けて噴霧することで、用紙P上にトナー像を定着させる装置である。なお、定着装置7の構成については、後で詳述する。
用紙Pの搬送方向において、定着装置7の下流側には、定着装置7から排出された用紙Pを下流側に搬送するための下流側搬送ローラ81が設けられている。下流側搬送ローラ81によって搬送された用紙Pは、排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ21上に排出される。
次に、定着装置7の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、定着装置7は、定着液Lを噴霧するための定着ヘッド71と、定着ヘッド71の下で用紙Pを支持する第2電極72と、定着液カートリッジ76と、圧力付与手段の一例としての加圧装置75と、ヒータ77と、制御部100とを備えている。
定着液Lは、良好に静電噴霧を行い、かつ、定着を行うために、トナーを溶解させる溶質を誘電率の高い溶媒に分散させたもの使用することが出来る。誘電率の高い溶媒として、安全な水を用いることができる。つまり、本実施形態では、トナーを溶解させる溶質を水に分散するタイプ、いわゆる、水中油滴型のエマルジョンでトナーの溶解を行っている。つまり、溶媒としての水に対して不溶または難溶な溶質を水に分散した定着液を用いている。溶質としては、脂肪族モノカルボン酸エステル系として、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、脂肪族ジカルボン酸エステル系として、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、脂肪族トリカルボン酸エステル系として、oアセチルクエン酸トリエチル、oアセチルクエン酸トリブチル、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル系としてコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、炭酸エステル系として炭酸エチレン、炭酸プロピレンを使用することができる。これらの溶質はトナーを軟化させる機能を有する。
また、エマルジョンを良好に形成するために界面活性剤を加えても良く、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を使用することができる。アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類、ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類を使用することができる。カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩を使用することができる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル類を使用することができる。
定着ヘッド71は、第1定着ヘッド71Aと、第2定着ヘッド71Bと、第3定着ヘッド71Cとを有している。各定着ヘッド71A〜71Cは、用紙Pの搬送方向上流側から下流側に向けて、第1定着ヘッド71A、第2定着ヘッド71B、第3定着ヘッド71Cの順で並んで配置されている。
第1定着ヘッド71Aは、定着液Lを内部に収容する収容部73と、収容部73に連通し、トナー像に向けて定着液Lを噴霧する複数のノズルNと、収容部73内および各ノズルN内の定着液Lに電圧を印加する第1電極74と、を備えている。なお、第2定着ヘッド71Bおよび第3定着ヘッド71Cは、第1定着ヘッド71Aと略同様の構成となっているため、第2定着ヘッド71Bおよび第3定着ヘッド71Cを構成する部材には第1定着ヘッド71Aを構成する部材と同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
第1電極74は、収容部73の上壁73Aを上から下に貫通するように設けられ、下端部が収容部73内の定着液L内に配置され、上端部が、制御部100によって制御される電圧印加部120に接続されている。第1電極74に印加される電圧は、1kV〜10kVであることが好ましい。各定着ヘッド71A〜71Cの第1電極74と電圧印加部120との間には、各第1電極74に対応するように複数の電流センサSAが設けられており、各電流センサSAによって各第1電極74に流れる電流が検出されている。なお、各第1電極74に流れる電流の検出は、電圧印加部120によって行ってもよい。
各定着ヘッド71A〜71Cには、定着液カートリッジ76が接続されている。定着液カートリッジ76は、内部に定着液Lが充填されたカートリッジであり、筐体2に着脱可能に構成されている。筐体2には、定着液カートリッジ76の着脱を検知する図示せぬ着脱検知センサが設けられており、着脱検知センサで検出した着脱に関する情報が、制御部100に出力される。なお、着脱検知センサとしては、例えば光センサやRFID(Radio Frequency Identifier)などが挙げられる。
定着液カートリッジ76と各定着ヘッド71A〜71Cとの間には、定着液カートリッジ76内と各定着ヘッド71A〜71C内とを繋ぐ配管が設けられている。これにより、定着液カートリッジ76内の定着液Lは、各定着ヘッド71A〜71C内に供給される。
定着液カートリッジ76には、加圧装置75が接続されている。加圧装置75は、定着液カートリッジ76内の空気を加圧することで、定着液カートリッジ76内および各定着ヘッド71A〜71C内の定着液Lを加圧している。また、各定着ヘッド71A〜71Cには、各定着ヘッド71A〜71C内の圧力を検出する圧力センサSP(1つのみを代表して図示)がそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では、加圧装置75によって各定着ヘッド71A〜71C内の圧力を調整することとするが、ヘッド内部の定着液Lの水頭差によってヘッド内部の圧力を調整してもよい。
第2電極72は、用紙Pに接触して、ノズルN内の定着液Lと用紙Pとの間に電位差を形成するための電極であり、各定着ヘッド71A〜71Cの各ノズルNの先端から所定距離離れるように、各定着ヘッド71A〜71Cの下に配置されている。ここで、所定距離は、用紙Pの厚さよりも大きな距離であり、実験やシミュレーション等によって静電噴霧を好適に行うことが可能な距離に設定されている。
第2電極72は、接地されている。なお、第2電極72は、必ずしも接地させる必要はなく、例えば第1電極74に印加される電圧よりも小さな電圧を第2電極72に印加してもよい。第2電極72は、ノズルNの先端との間で電界を形成している。
第1電極74に電圧が印加されるとノズルNの先端付近の空間に電界が形成される。具体的には、収容部73内の定着液Lは、加圧装置75により圧力が加えられている。これにより、定着液Lは、ノズルNの先端に向けて供給される。このノズルNの先端の定着液Lと第2電極72との間に電界が形成される。すると、ノズルNの先端では、定着液Lが電界に引っ張られていわゆるテイラーコーンが形成される。このテイラーコーンの先端に電界が集中して、テイラーコーンの先端から定着液Lが引きちぎられることによって微細な液滴が生成される。
ノズルNから噴霧された液滴状の定着液Lは、正に帯電している。これに対し、用紙Pは実質的にゼロ電位状態になっている。このため、液滴状の定着液Lは、クーロン力によって用紙Pに向かって飛んでゆき、用紙P上やトナー像上に付着する。
電流センサSAは、第1電極74に流れる電流を検出することで、定着液Lに流れる電流を間接的に検出するセンサであり、ノズルNから用紙Pに定着液Lが噴霧された際に第1電極74に流れる電流を検出し、その検出値を制御部100に出力している。ここで、第1電極74に電圧が印加されても、ノズルNから定着液Lが噴霧されていないときには、第1電極74には電流が流れず、ノズルNから定着液Lが噴霧されること、つまり帯電された定着液LがノズルNから用紙Pに移動することによって、第1電極74に電流が流れるようになっている。
このように構成された第1電極74および第2電極72は、ノズルN内の定着液Lと、ノズルNから離れた位置で搬送される用紙Pとの間に電位差を形成するための電位差形成部となっている。
ヒータ77は、定着ヘッド71内と定着液カートリッジ76内の定着液Lを加熱する装置であり、定着ヘッド71と定着液カートリッジ76との間に配置されている。ヒータ77は、制御部100によって制御されている。
また、筐体2には、温度を検出する温度センサSTが設けられている。温度センサSTは、検出した温度を制御部100に出力している。なお、本実施形態では、温度センサSTによって定着装置7の周囲の温度を検出することとするが、本発明はこれに限定されず、例えば温度センサによって定着液の温度を検出してもよい。
図3(a)に示すように、第1定着ヘッド71Aの収容部73は、左右方向、つまり用紙Pの幅方向に長尺となる矩形の容器であり、上壁73A、前壁73B、後壁73C、左壁73D、右壁73Eおよび下壁73Fを有している。第2定着ヘッド71Bの収容部73は、左右方向において第1定着ヘッド71Aの収容部73と同じ大きさで、搬送方向において第1定着ヘッド71Aの収容部73よりも小さくなっている。第3定着ヘッド71Cの収容部73は、第2定着ヘッド71Bの収容部73と同じ大きさとなっている。
図3(b)に示すように、各定着ヘッド71A〜71Cにおける複数のノズルNは、それぞれ収容部73の下壁73Fから下方に向けて突出しており、下方に向かう程、徐々に縮径している。複数のノズルNは、用紙Pの幅方向、つまり左右方向に複数配列されるとともに、用紙Pの搬送方向、つまり前後方向に複数配列されている。各ノズルNの内径は、0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。
詳しくは、第1定着ヘッド71Aにおける複数のノズルNは、搬送方向に並ぶ第1千鳥配列群U1および第2千鳥配列群U2を構成している。第2定着ヘッド71Bにおける複数のノズルNは、第3千鳥配列群U3を構成し、第3定着ヘッド71Cにおける複数のノズルNは、第4千鳥配列群U4を構成している。
図4(a),(b)に示すように、第1千鳥配列群U1は、幅方向に一定の間隔を空けて配列される複数の第1ノズルN1と、幅方向に一定の間隔を空けて配列される複数の第2ノズルN2とからなり、幅方向の一方側から他方側に向けて、第1ノズルN1と第2ノズルN2とが搬送方向の一方側と他方側に交互に配置されている。また、各第2ノズルN2は、幅方向において2つの第1ノズルN1の間に配置されている。そして、幅方向で隣り合う2つの第1ノズルN1と、これら2つの第1ノズルN1の間に配置される第2ノズルN2とを結んだ形状は、正三角形または二等辺三角形となっている。また、幅方向で隣り合う2つの第2ノズルN2と、これら2つの第2ノズルN2の間に配置される第1ノズルN1とを結んだ形状も、正三角形または二等辺三角形となっている。
第2千鳥配列群U2、第3千鳥配列群U3および第4千鳥配列群U4は、第1千鳥配列群U1と同じ構造となっている。本実施形態においてノズルピッチ(隣接するノズルの最短の外径間距離)は、1mm以上、14mm以下の範囲で設定すれば良い。
図2に示すように、制御部100は、RAMやROMなどからなる記憶部110、電圧印加部120、CPU、入出力回路などを備えており、外部から入力されてくる画像データや、圧力センサSP、電流センサSAおよび温度センサSTからの信号に基づいて、第1電極74に印加する電圧、加圧装置75およびヒータ77を制御する機能を有している。
具体的に、制御部100は、印刷制御を実行していないときにおいて定着液Lの状態(例えば粘度)を把握する状態把握制御と、状態把握制御で把握した定着液Lの状態に応じて定着液Lの噴霧を行う噴霧制御とを実行する機能を有している。詳しくは、制御部100は、複数の定着ヘッド71A〜71Cに対して個別に状態把握制御および噴霧制御を実行するように構成されている。ここで、噴霧制御とは、印刷制御中において、ノズルNから定着液Lの噴霧を開始してから終了するまでの制御をいう。詳しくは、噴霧制御は、印刷指令における最初の用紙Pが定着ヘッド71よりも上流側の所定位置に到達したときに開始され、最後の用紙Pが定着ヘッド71を抜けた後に終了する。
状態把握制御において、制御部100は、まず、加圧装置75によって定着液Lに加える圧力を第1圧力P1とする。ここで、第1圧力P1と後述する第2圧力P2は、ノズルNから定着液Lが排出されない程度の圧力であり、実験やシミュレーション等により適宜設定されている。
その後、図5に示すように、制御部100は、第1電極74への電圧の印加を開始して電圧を徐々に上げていき、電流センサSAで検出した電流が第1電流値I1となったときの第1電圧V1を記憶部110に記憶させた後、電流が第1電流値I1よりも大きな第2電流値I2となったときの第2電圧V2を記憶部110に記憶させる。ここで、第1電流値I1および第2電流値I2は、実験やシミュレーション等により、噴霧制御において使用する電流値の範囲内の値に設定されている。
そして、制御部100は、各電圧V1,V2と各電流値I1,I2とに基づいて、電圧と電流の関係を示す第1関数F1を求める。第1関数F1は、一次関数となっている。詳しくは、制御部100は、以下の式(1),(2)に基づいて、第1関数F1の傾きαと切片βを求めることで、第1関数F1(V=α・I+β)を求める。
V1 = α・I1 + β ・・・(1)
V2 = α・I2 + β ・・・(2)
α = (V2−V1)/(I2−I1)
β = (V1・I2−V2・I1)/(I2−I1)
次いで、制御部100は、第1電極74への電圧の印加を停止した後、加圧装置75によって定着液Lに加える圧力を、第1圧力P1よりも大きな第2圧力P2とする。その後、制御部100は、第1電極74への電圧の印加を再開して電圧を徐々に上げていき、電流センサSAで検出した電流が第1電流値I1となったときの第1電圧V11を記憶部110に記憶させた後、電流が第1電流値I1よりも大きな第2電流値I2となったときの第2電圧V12を記憶部110に記憶させる。そして、制御部100は、各電圧V11,V12と各電流値I1,I2とに基づいて、電圧と電流の関係を示す第2関数F2を求める。第2関数F2は、一次関数となっている。なお、第2関数F2の求め方は、第1関数F1の求め方と同じであるため、説明は省略する。
その後、制御部100は、第1関数F1において電流値が0になるときの第4電圧Vaを第1関数F1から求め、第2関数F2において電流値が0になるときの第5電圧Vbを第2関数F2から求める。ここで、第4電圧Vaおよび第5電圧Vbは、それぞれ第1関数F1および第2関数F2の各切片βに相当する。以下の説明では、便宜上、第4電圧Vaおよび第5電圧Vbを、切片電圧Va,Vbとも称する。
次いで、制御部100は、第1関数F1の切片電圧Vaと、第1関数F1に対応した第1圧力P1と、第2関数F2の切片電圧Vbと、第2関数F2に対応した第2圧力P2とに基づいて、図6に示すような、圧力と電圧の関係を示す第3関数F3を求める。第3関数F3は、一次関数となっている。なお、第3関数F3の求め方は、第1関数F1の求め方と同じであるため、説明は省略する。
以上のように各関数F1〜F3を求めることで、制御部100は、現在の定着液Lの状態を把握する。ここで、本願発明者は、実験等により、定着液Lの粘度が高くなるほど、前述した各関数F1,F2の傾きαおよび切片が大きくなることや、粘度に応じて関数F1,F2が変化することで第3関数F3も変化することを確認している。そして、一般的に、定着液Lの粘度は、温度が低いほど高くなることが知られているため、前述の記載を言い換えると、関数F1,F2の傾きαは、温度が低くなるほど大きくなる。
制御部100は、前述したような状態把握制御を、所定の条件が揃ったときに実行するように構成されている。なお、所定の条件については、後で詳述する。
制御部100は、状態把握制御によって定着液Lの状態を把握した後、噴霧制御時の電圧を決定するための第4関数F4と、噴霧制御、待機状態および準備状態において定着液Lに加える第4圧力P4と、待機状態および準備状態において定着液Lに印加する第7電圧V7とを求めるように構成されている。ここで、待機状態とは、レーザプリンタ1の起動または印刷制御の終了から所定の待機時間が経過するまでの状態、または、前記待機時間中において印刷ジョブを受けるまでの状態(印刷待ちの状態)をいう。また、準備状態とは、印刷制御を開始してから噴霧制御を開始するまでの間の状態をいう。なお、印刷制御の終了から待機時間が経過すると、制御部100は、待機状態からスリープ状態に移行する。スリープ状態において、制御部100は、電圧および圧力をともに0にする。
制御部100は、前述した第4関数F4、第4圧力P4および第7電圧V7を求めるために、まずは、図5に示すように、目標電圧VAが切片電圧となる目標関数FAを求める。目標関数FAは、傾きが、第1関数F1と同じ傾きαであり、切片が、目標電圧VAである一次関数として求められる。ここで、目標電圧VAは、圧力を後述する目標圧力PAとしたときの関数の切片電圧であり、実験やシミュレーション等により0以上の電圧値として設定されている。
ここで、電流と電圧の関係を示す関数(例えば第1関数F1)は、定着液Lに加える圧力を大きくするほど、その切片電圧が小さくなるように、マイナス側に平行移動することが、本願発明者により確認されている。そして、このように平行移動する関数の切片電圧が、所定の値(図5では目標電圧VA)よりも小さくなると、電圧を印加していない状態において、当該関数に対応する圧力を定着液Lに加えると、ノズルNから液だれが生じることが、本願発明者により確認されている。
また、制御部100は、図6に示す第3関数F3に基づいて、目標電圧VAに対応した目標圧力PAを求める。ここで、目標圧力PAとは、第1電極74に電圧を印加せずに、定着液Lに圧力を加えた場合において、ノズルNの先端の定着液Lの空気との界面が略平面になるときの圧力値をいう。ここで、定着液Lの界面は、圧力が小さい場合には、定着液L側に凹んだ略半球面形状となり、この状態から圧力を徐々に高くしていくと、界面が外側に移動していって徐々に平面形状に近づいていき、さらに圧力を高くしていくと、界面がさらに外側に移動していって徐々に外側に凸となる略半球面形状となる。そして、界面は、平面形状となったときに、その表面積が最小になっている。そして、このように界面の表面積を最小にすることで、ノズルNの先端の定着液Lが乾くのを抑えることが可能となっている。
次いで、制御部100は、目標圧力PAが、加圧装置75の分解能に対応した値か否かを判断し、対応していない場合には、目標圧力PAよりも小さく、かつ、分解能に対応した第4圧力P4を設定する。例えば、加圧装置75の分解能、つまり圧力変化の最小単位がx(N/mm2)である場合には、定着液Lに印加される圧力は、x,2x,3x,・・・というように変化していく。これに対し、目標圧力PAがxよりも小さな値yを含む場合、例えば2x+yである場合には、加圧装置75は、2xと3xとの間の数値である2x+yの目標圧力PAを定着液Lに加えることができない。そのため、この場合には、制御部100は、2x+yよりも小さな2xの圧力を、分解能に対応した第4圧力P4として設定する。
制御部100は、第4圧力P4を設定すると、図6に示す第3関数F3に基づいて、第4圧力P4に対応した切片電圧Vcを求める。その後、制御部100は、切片電圧Vcと、第1関数F1の算出時に求めた傾きαとに基づいて、図7に示す第4関数F4を求め、この第4関数F4を記憶部110に記憶させる。なお、第4関数F4の切片電圧Vcは、第4関数F4において電流値が0になるときの第6電圧に相当しており、目標電圧VAよりも高い値に設定される。
また、制御部100は、第4関数F4の切片電圧Vcから目標電圧VAを引くことで、待機状態および準備状態において定着液Lに印加する第7電圧V7を算出する。ここで、切片電圧Vcは、圧力が第4圧力P4である状態において、ノズルNから定着液Lが噴霧し始める電圧値を示しているため、待機状態および準備状態において定着液Lに印加する第7電圧V7をVcよりも大きな値に設定すると、待機状態および準備状態において液だれが生じる。これに対し、本実施形態では、第7電圧V7を、0以上、かつ、Vc以下となる値、詳しくはVc−VAに設定しているので、待機状態および準備状態における液だれを抑えることが可能になっている。
また、図6に示すように、Vc−VAの電圧差は、PA−P4の圧力差に相当するので、待機状態および準備状態において定着液Lに第7電圧V7を印加すると、定着液Lに加わる圧力が、PA−P4の圧力差に相当する圧力を第4圧力P4に加算した値、つまりPAになるため、ノズルNの先端の定着液Lの界面が平面になる。これにより、ノズルNの先端の定着液Lの乾燥を抑えることが可能となっている。
また、制御部100は、噴霧制御を実行する前に、噴霧制御で使用する複数の噴霧用電圧Vsを第4関数F4と複数の目標電流値Ipとに基づいて算出し、各噴霧用電圧Vsが上限値Vmax以上となるか否かを判断する機能を有している。ここで、目標電流値Ipは、画像濃度などに応じて設定される目標噴霧量ρに基づいて設定される。なお、目標電流値Ipの設定方法は、後で詳述する。
制御部100は、噴霧用電圧Vsが、上限値Vmax以上の場合には、該当する噴霧用電圧Vsを上限値Vmax未満の値に設定するとともに、用紙Pの搬送速度を遅くするように構成されている。ここで、用紙Pの搬送速度が遅くなるほど、用紙Pに噴霧される単位面積当たりの定着液Lの噴霧量は多くなる。ここで、噴霧量と電流は比例の関係であり、かつ、電流と電圧も比例の関係であることから、例えば、搬送速度の変化量に対応した係数を噴霧用電圧Vsにかけることで、遅い搬送速度に対応した新たな噴霧用電圧Vsを算出することができる。そして、制御部100は、噴霧制御において、設定した各噴霧用電圧Vsを所定のタイミングで適宜切り替えて第1電極74に印加することで、所望の噴霧量の定着液Lを用紙Pに対して噴霧することが可能となっている。
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。制御部100は、印刷制御を実行していないときに常時図8に示すフローチャートを繰り返し実行する。
図8に示すように、制御部100は、レーザプリンタ1の起動時か否かを判断する(S1)。ステップS1においてレーザプリンタ1の起動時であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、圧力設定制御を実行する(S5)。ここで、圧力設定制御において、制御部100は、まず、前述した状態把握制御を実行し、その後、待機状態、準備状態または噴霧制御において定着液Lに加える圧力を設定する。なお、圧力設定制御については、後で詳述する。
ステップS1においてレーザプリンタ1の起動時でないと判断した場合には(No)、制御部100は、前回の状態把握制御が終了してから所定時間が経過したか否かを判断する(S2)。ステップS2において、制御部100は、所定時間が経過したと判断すると(Yes)、圧力設定制御に移行し(S5)、所定時間が経過していないと判断すると(No)、ステップS3に移行する。
ステップS3において、制御部100は、前回の状態把握制御時の温度と現在の温度とを比較して、前回の状態把握制御時の温度と現在の温度との温度差が所定の温度差以上になったか否かを判断する。なお、前回の状態把握制御時の温度は、前回の状態把握制御を実行する際に温度センサSTで検出され、制御部100によって記憶部110に記憶される。つまり、制御部100は、状態把握制御を実行するたびに、そのときの温度を記憶部110に記憶させる。
ステップS3において、制御部100は、所定の温度差以上になったと判断すると(Yes)、圧力設定制御に移行し(S5)、所定の温度差未満であると判断すると(No)、ステップS4に移行する。ステップS4において、制御部100は、定着液カートリッジ76が交換されたか否かを判断する。
ステップS4において、制御部100は、定着液カートリッジ76が交換されたと判断すると(Yes)、圧力設定制御に移行し(S5)、定着液カートリッジ76が交換されていないと判断すると(No)、本制御を終了する。
図9に示すように、制御部100は、圧力設定制御において、まず、定着液Lに加える圧力Pを第1圧力P1に設定する(S11)。ステップS11の後、制御部100は、第1関数F1を算出するための関数算出処理を実行する(S12)。
図10に示すように、制御部100は、関数算出処理において、まず、第1電極74への電圧の印加を開始して、電圧を徐々に上げていく(S31)。ステップS31の後、制御部100は、電流センサSAで検出する電流値Iが第1電流値I1になったときの第1電圧V1を記憶部110に記憶させる(S32)。
ステップS32の後、制御部100は、電流センサSAで検出する電流値Iが第2電流値I2になったときの第2電圧V2を記憶部110に記憶させる(S33)。ステップS33の後、制御部100は、各電流値I1,I2および各電圧V1,V2に基づいて第1関数F1を算出して(S34)、本制御を終了する。
図9に戻って、制御部100は、ステップS12の後、圧力Pを第2圧力P2に変更する(S13)。ステップS13の後、制御部100は、前述と同様の関数算出処理を実行する(S14)。詳しくは、制御部100は、ステップS13で圧力Pを変更した上で、図10に示すステップS31〜S34の処理を行うことで、ステップS32,S33において、前述した第1電圧V1および第2電圧V2とは異なる第1電圧V11および第2電圧V12を算出し、ステップS34において、第1関数F1とは異なる第2関数F2を算出する。
ステップS14の後、制御部100は、各関数F1,F2と各圧力P1,P2とに基づいて第3関数F3を算出する(S15)。ステップS15の後、制御部100は、第3関数F3と目標電圧VAと加圧装置75の分解能に基づいて、待機時および印刷制御時に定着液Lに加える第4圧力P4を設定する(S16)。ここで、印刷制御には、準備制御と噴霧制御とが含まれている。
ステップS16の後、制御部100は、第4圧力P4と第3関数F3とに基づいて第4関数F4を算出する(S17)。ステップS17の後、制御部100は、第4圧力P4が、加圧装置75で加圧できる限界の圧力である最大圧力Pmaxより大きいか否かを判断する(S18)。
ステップS18において、P4>Pmaxであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、ヒータ77をONにして(S19)、定着液Lを加熱する。ここで、定着液Lの温度が低いほど定着液Lの粘度が高くなるため、温度が低いほど、噴霧制御に必要な圧力も大きな圧力が必要になる。第4圧力P4は、このような定着液Lの状態(粘度)を考慮して設定されているため、P4>Pmaxである場合には、定着液Lの粘度が高い、つまり、温度が低いことが分かる。そのため、このように定着液Lの温度が低い場合には、ステップS19でヒータ77をONにして定着液Lを加熱することで、定着液Lの粘度を下げることができる。
ステップS19の後、制御部100は、ヒータ77をONにしてから所定の規定時間が経過したか否かを判断する(S20)。制御部100は、規定時間が経過するまでステップS20の処理を繰り返し、ステップS20において規定時間が経過したと判断した場合に(Yes)、ステップS11の処理に戻る。これにより、定着液Lの粘度が下がった状態で、再度第4圧力P4等が設定されるので、第4圧力P4は前回よりも小さな値に設定される。
ステップS18においてP4≦Pmaxであると判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS19でヒータ77をONにしている場合にはヒータ77をOFFにする(S21)。なお、ステップS19に入ることなくステップS21に移行した場合には、制御部100は、ステップS21においてヒータ77をOFFの状態に維持する。
ステップS21の後、制御部100は、圧力Pを第4圧力P4に設定して(S22)、本制御を終了する。
図11に示すように、制御部100は、噴霧制御を実行する前に、噴霧制御の環境を設定するための噴霧環境設定制御を実行する。なお、噴霧環境設定制御は、制御部100が印刷指令を受けてから用紙Pの給紙を開始するまでの間で実行される。例えば、制御部100が印刷指令を受けたときに噴霧環境設定制御が開始され、用紙Pの給紙を開始する前に噴霧環境設定制御が終了するようになっている。
制御部100は、噴霧環境設定制御において、まず、目標噴霧量ρを算出するための目標噴霧量算出処理を実行する(S41)。図12に示すように、制御部100は、目標噴霧量算出処理において、まず、印刷指令の画像データに基づいて、画像濃度に応じた初期噴霧量ρ0を設定する(S51)。詳しくは、制御部100は、ステップS51において、画像濃度が高いほど、初期噴霧量ρ0を大きな値に設定する。なお、初期噴霧量ρ0の設定は、1枚の用紙Pの画像形成領域全体に対する画像濃度に応じて、用紙Pごとに設定してもよいし、一枚の用紙Pの画像形成領域を複数の領域に区画して、各領域の画像濃度に応じて領域ごとに設定してもよい。
ステップS51の後、制御部100は、印刷指令に基づいて、用紙Pが光沢紙か否かを判断する(S52)。ステップS52において用紙Pが光沢紙であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、初期噴霧量ρ0に、1よりも小さな係数aをかけることで、第1仮噴霧量ρ1を算出する(S53)。つまり、ステップS53では、第1仮噴霧量ρ1が、初期噴霧量ρ0よりも小さな値に設定される。ステップS52において用紙Pが光沢紙ではないと判断した場合には(No)、制御部100は、初期噴霧量ρ0をそのまま第1仮噴霧量ρ1として設定する(S54)。
ステップS53,S54の後、制御部100は、印刷指令に基づいて、用紙Pが薄紙であるか否かを判断する(S55)。ステップS55において薄紙であると判断した場合には(Yes)、第1仮噴霧量ρ1に、1よりも小さな係数bをかけることで、第2仮噴霧量ρ2を算出する(S56)。つまり、ステップS56では、第2仮噴霧量ρ2が、第1仮噴霧量ρ1よりも小さな値に設定される。
ステップS55において薄紙でないと判断した場合には(No)、制御部100は、印刷指令に基づいて、用紙Pが普通紙であるか否かを判断する(S57)。ステップS57において普通紙であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第1仮噴霧量ρ1をそのまま第2仮噴霧量ρ2として設定する(S58)。
ステップS57において普通紙でないと判断した場合には(No)、つまり用紙Pが厚紙である場合には、制御部100は、第1仮噴霧量ρ1に、1よりも大きな係数Bをかけることで、第2仮噴霧量ρ2を算出する(S59)。つまり、ステップS59では、第2仮噴霧量ρ2が、第1仮噴霧量ρ1よりも大きな値に設定される。
ステップS56,S58,S59の後、制御部100は、印刷指令に基づいて、画像品質が高品質であるか否かを判断する(S60)。ステップS60において高品質であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第2仮噴霧量ρ2に、1よりも大きな係数Cをかけることで、目標噴霧量ρを算出する(S61)。つまり、ステップS61では、目標噴霧量ρが、第2仮噴霧量ρ2よりも大きな値に設定される。
ステップS60において高品質でないと判断した場合には(No)、制御部100は、第2仮噴霧量ρ2をそのまま目標噴霧量ρとして設定する(S62)。ステップS61,S62の後、制御部100は、本制御を終了する。
図11に戻って、制御部100は、ステップS41の後、複数の目標噴霧量ρに基づいて複数の目標電流値Ipを設定する(S42)。ステップS42の後、制御部100は、複数の目標電流値Ipと第4関数F4とに基づいて、複数の噴霧用電圧Vsを設定する(S43)。
ステップS43の後、制御部100は、ステップS43で設定した複数の噴霧用電圧Vsのすべてが、上限値Vmaxより小さいか否かを判断する(S44)。ステップS44においてすべての噴霧用電圧Vsが上限値Vmaxより小さいと判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
ステップS44において少なくとも1つの噴霧用電圧Vsが上限値Vmax以上であると判断した場合には(No)、制御部100は、上限値Vmax以上となる噴霧用電圧Vsが上限値Vmaxよりも小さな値となるように、すべての噴霧用電圧Vsに例えば所定の係数をかけるような補正を行うことで、各噴霧用電圧Vsを再設定する(S45)。ステップS45の後、制御部100は、搬送速度を初期値よりも遅い値に設定して(S46)、本制御を終了する。
図13に示すように、制御部100は、レーザプリンタ1が起動すると(START)、電圧制御を開始する。制御部100は、電圧制御において、まず、圧力設定制御中か否かを判断する(S71)。ステップS71において圧力設定制御中であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
ステップS71において圧力設定制御中でないと判断した場合には(No)、制御部100は、待機状態または準備状態であるか否かを判断する(S72)。ステップS72において待機状態である、または、準備状態であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第1電極74に印加する電圧VをVc−VA、つまり第7電圧V7に設定して(S73)、本制御を終了する。
ステップS72において待機状態および準備状態のいずれでもないと判断した場合には(No)、制御部100は、噴霧制御中であるか否かを判断する(S74)。ステップS74において噴霧制御中であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、電圧Vを噴霧用電圧Vsに設定して(S75)、本制御を終了する。
ステップS74において噴霧制御中でないと判断した場合には(No)、制御部100は、電圧Vを0にして(S76)、本制御を終了する。
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
印刷制御の非実行時において、第1電流値I1に対する第1電圧V1の値などを把握することで、定着液Lの状態(粘度)を把握することができるので、印刷制御の前に定着液Lの状態を把握して、印刷制御中において定着液Lの状態に応じた噴霧制御を実行することができる。
状態把握制御で使用する第1電流値I1と第2電流値I2を、噴霧制御において使用する電流値の範囲内の値にしたので、状態把握制御において記憶部110に記憶した第1電圧V1および第2電圧V2を、噴霧制御において使用することができ、噴霧制御を良好に行うことができる。
第1電圧V1と第2電圧V2とに基づいて、電圧と電流の関係を示す第1関数F1を求め、第1関数F1と目標電流値Ipとに基づいて、噴霧用電圧Vsを特定するので、目標電流値Ipが第1電流値I1および第2電流値I2とは異なる値であっても、目標電流値Ipに対応した噴霧用電圧Vsを適切に特定することができる。
第3関数F3に基づいて、待機状態または準備状態における圧力を決定したので、待機状態または準備状態において定着液Lが噴霧されるのを抑えることができる。
第4関数F4の切片電圧Vcを目標電圧VAよりも高い値に設定したので、電圧Vを印加していないときに、定着液Lが液だれするのを抑えることができる。
待機状態または準備状態において、切片電圧Vcと目標電圧VAとの差分に相当する第7電圧V7を第1電極74に印加することで、ノズル先端の定着液Lの空気との界面を、定着液L側に凹んだ状態から略平らな状態にすることができるので、界面の表面積を小さくして、ノズル先端の定着液Lの乾燥を抑えることができる。
複数の定着ヘッド71A〜71Cに対して個別に状態把握制御および噴霧制御を実行するので、各定着ヘッド71A〜71Cの定着液Lの状態に応じた噴霧制御を実行することができる。
状態把握制御を、所定時間が経過するたび、つまり環境が変わる可能性があるたびに行うので、定着液Lの状態を精度良く把握することができる。
状態把握制御を、温度差が生じるたびに行うので、定着液Lの状態を精度良く把握することができる。
状態把握制御を、定着液カートリッジ76の交換のたびに行うので、交換された新たな定着液カートリッジ76から定着ヘッド71に供給される定着液Lの状態を精度良く把握することができる。
噴霧用電圧Vsを上限値Vmax未満の値に設定することで、上限値Vmax以上の電圧を定着液Lに印加することにより定着液Lが分離するのを抑えることができる。また、噴霧用電圧Vsが上限値Vmax以上の場合に、噴霧用電圧Vsを上限値Vmax未満の値に再設定することで噴霧量が小さくなるが、この場合に、用紙Pの搬送速度を遅くすることで、単位面積当たりへの噴霧量を必要な量まで大きくすることができるので、噴霧制御を禁止することなく、遅い搬送速度で実行することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記実施形態では、各定着ヘッド71A〜71Cを搬送方向に並べたが、本発明はこれに限定されず、例えば図14に示すように、複数の定着ヘッド71D〜71Hを左右方向
に並べてもよい。なお、各定着ヘッド71D〜71Hは、前記実施形態に係る第1定着ヘッド71A等と大きさが異なるだけで構造自体は略同じであるため、各定着ヘッド71D〜71Hを構成する部品(ノズルN等)については同一の符号を付し、その説明は省略する。また、定着ヘッドは、1つであってもよい。
前記実施形態では、噴霧用電圧Vsが上限値Vmax以上である場合に、噴霧用電圧Vsを再設定するとともに搬送速度を遅くしたが、本発明はこれに限定されず、図15に示すように、噴霧用電圧Vsが上限値Vmax以上である場合には(S44:No)、噴霧制御を禁止して、エラーを報知するようにしてもよい(S47)。この場合も、上限値Vmax以上の電圧を定着液Lに印加することにより定着液Lが分離するのを抑えることができる。
前記実施形態では、状態把握制御において、各関数F1〜F3を求めて定着液Lの状態を把握したが、本発明はこれに限定されず、関数を求めずに、第1電圧から定着液の状態を把握してもよい。詳しくは、定着液の粘度が高くなるほど、第1電流値の電流を流すために必要な第1電圧の大きさが大きくなるので、これを利用して、定着液の状態を把握することができる。そして、第1電流値と第1電圧の関係を利用して、噴霧制御時における電圧を決定することができる。つまり、第1電圧に基づいて噴霧制御を実行することができる。
前記実施形態では、定着液Lの状態に応じて圧力を調整したが、本発明はこれに限定されず、定着液Lの状態に関わらず、定着液Lに加える圧力を一定としてもよい。また、圧力を一定値、例えば第1圧力P1とした場合には、第1関数F1のみを算出し、第1関数F1と目標電流値Ipとに基づいて噴霧用電圧Vsを決定してもよい。
また、この場合には、待機状態または準備状態において、第1電極74に印加する電圧を、第1関数F1において電流値が0になるときの値以下で、かつ、0以上となる第3電圧に設定するのが望ましい。これによれば、待機状態または準備状態において、定着液Lが噴霧されるのを抑えることができる。
前記実施形態では、圧力付与手段として、定着液カートリッジ76内の空気を加圧する加圧装置75を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、定着液カートリッジ76内から各定着ヘッド71A〜71C内に定着液Lを送り込むことでポンプと、各定着ヘッド71A〜71C内から定着液Lを逃がすことで減圧する減圧弁とを有する加圧装置であってもよい。
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
前記実施形態では、第1電極74を収容部73の内部に配置したが、本発明はこれに限定されず、例えばノズルおよび収容部を金属等の導電性部材で形成して、ノズルまたは収容部に対して電圧を印加してもよい。なお、この場合には、電圧が印加されるノズルまたは収容部が、第1電極として機能する。また、収容部を樹脂等の非導電性の部材で形成し、ノズルを金属等の導電性の部材で形成し、ノズルに電圧を印加するようにしてもよい。なお、この場合には、ノズルが第1電極として機能する。
また、第2電極72は、必ずしもノズルNと対向する必要は無く、用紙の搬送方向上流側や下流側にずれて配置されていてもよい。
前記実施形態では、圧力と電圧の関係を示す第3関数F3を、第1関数F1の切片電圧Vaと、第1関数F1に対応した第1圧力P1と、第2関数F2の切片電圧Vbと、第2関数F2に対応した第2圧力P2とに基づいて算出したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図16に示すように、第1圧力P1と、定着液Lに加える圧力を第1圧力P1としたときに取得される第1電圧V1と、第1圧力P1とは異なる第2圧力P2と、定着液Lに加える圧力を第2圧力P2としたときに取得される第1電圧V11とに基づいて、図17に示す第3関数F3を求めてもよい。なお、第3関数F3の求め方は、前記実施形態と同じ方法を採用することができる。また、第4圧力P4の求め方も、前記実施形態と同じ方法を採用することができる。
前記実施形態では、状態把握制御において、電位差形成部に流れる電流が予め定められた第1電流値I1となったときの第1電圧V1を記憶部110に記憶したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電圧が予め定められた第1電圧になったときの第1電流値を記憶部に記憶させてもよい。この場合、記憶部に記憶した第1電流値に基づいて噴霧制御を実行してもよい。