以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明に係るMEMSデバイスの一形態であり、圧電デバイスもしくは液体噴射ヘッドの一形態でもあるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)、および、この記録ヘッドを搭載した液体噴射装置の一形態であるインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(液体の被着弾物(液体の着弾対象)の一種)の表面に液体の一種であるインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、複数の記録ヘッド3を有するヘッドユニット4と、記録媒体2を搬送する搬送機構5と、ヘッドユニット4における各記録ヘッド3の底面(ノズル面)に記録媒体2を相対させた状態で支持する媒体支持部材6と、を装置本体7の内部に備えている。
本実施形態におけるヘッドユニット4は、複数の記録ヘッド3をホルダー8に取り付けてユニット化されたものであり、各記録ヘッド3のノズル面を媒体支持部材6(プラテン)に向けた姿勢で装置本体7に固定されている。本実施形態においては、3つの記録ヘッド3が、隣り合う記録ヘッド3の記録媒体搬送方向(以下、第1の方向)における位置が互い違いとなるように、第1の方向に交差する方向(以下、第2の方向)に配置されている。そして、第2の方向で見て各記録ヘッド3のノズル列を連ねた全長が、プリンター1において印刷可能な記録媒体2の最大サイズに対応可能な長さとなっている。すなわち、本実施形態におけるプリンター1は、記録ヘッド3(ヘッドユニット4)と記録媒体2との第2の方向における相対移動を行うことなく記録が行われる所謂ライン型プリンターである。ヘッドユニット4の各記録ヘッド3には、本発明における液体の一種であるインクを貯留した図示しないインクカートリッジ(液体貯留手段)からのインクが供給されるように構成されている。このインクカートリッジは、ヘッドユニット4上に装着される構成であってもよいし、装置本体7においてヘッドユニット4とは異なる位置に配置されて供給チューブ等を介して各記録ヘッド3にインクが供給される構成であってもよい。また、ヘッドユニット4に搭載される記録ヘッド3は3つに限られず、1つ以上であればよい。したがって、本発明は、単一の液体噴射ヘッドを搭載し、当該液体噴射ヘッドと記録媒体等の液体の被着弾物とを第2の方向に相対移動させつつ液体を噴射させる構成の液体噴射装置にも採用することができる。
搬送機構5は、媒体支持部材6よりも記録媒体2の搬送方向における上流側に上下一対に配置された第1の搬送ローラー10aと、媒体支持部材6よりも搬送方向における下流側に上下一対に配置された第2の搬送ローラー10bと、を備えており、これらの搬送ローラー10a,10bを駆動させることにより、供給側からの記録媒体2を、上下のローラーで挟んだ状態で媒体支持部材6上を通過させて排出側に向けて搬送する。本実施形態における媒体支持部材6は、記録ヘッド3の並設方向に沿って長手な板状の支持台であり、画像等の記録が行われる対象である記録媒体2を支持する。なお、搬送機構5が、無端ベルトやドラムにより構成されるものもあり、このような構成では、ベルトやドラムが媒体支持部材として機能する。また、媒体支持部材6としては、記録媒体2を静電気力により吸着させる構成のものや、負圧を発生させることで記録媒体2を吸着させる構成のものを採用することもできる。
次にヘッドユニット4および記録ヘッド3について説明する。図2は、ヘッドユニット4の構成の一例を説明する分解斜視図である。また、図3は、本実施形態における記録ヘッド3の要部断面図である。なお、図2においては、流路構造体13および保護部材27の図示が省略されている。また、図3においては、流路接続部53を除き流路構造体13の図示が省略されている。本実施形態におけるヘッドユニット4は、各記録ヘッド3に共通なホルダー8に、各記録ヘッド3の個別部材や各記録ヘッド3に共通な部材等を取り付けて構成されている。各記録ヘッド3は、駆動素子ユニット12と、固定板14と、共通部材15と、回路基板9と、流路構造体13と、を有している。これらの構成部材のうち、本実施形態においては、ホルダー8、共通部材15、回路基板9、および流路構造体13が、各記録ヘッド3に共通な部材となっている。なお、これらの部材についても、記録ヘッド3毎に個別の部材とすることもできる。
本実施形態におけるホルダー8は、記録ヘッド3のノズル面(ノズルプレート17)に交差(直交)する複数の壁11により、記録ヘッド3の駆動素子ユニット12を収容する収容空間20の一部(側面)を区画する枠状の合成樹脂部材である。ホルダー8の下面(媒体支持部材6と対向する面)には固定板14が接着剤25により接合され、同じく上面には共通部材15が接着剤24により接合されることにより、密閉された空間である収容空間20(本発明における空間の一種)が画成されている。また、ホルダー8の上面に接合された共通部材15の上には、回路基板9が配置され、さらにこの回路基板9の上には、回路基板9を保護するとともに流路の接続部分をシールする機能を有するエラストマー等の弾性材からなる保護部材27(図3参照)を介して流路構造体13(図1参照)が配置されている。
固定板14は、収容空間20の底面をなす底板14aと、ホルダー8の壁11に沿うように当該ホルダー8の上面側に向けて屈曲された側壁14b(図2参照)とを有している。底板14aは、収容空間20の下面側の開口を塞ぎ得る形状・大きさに設定されている。この底板14aには、ノズルプレート17に形成されたノズル18を露出させるため、ノズル列方向に長手な開口16が形成されている。各駆動素子ユニット12は、それぞれ対応する開口16にノズル18を露出させた状態で接着剤25により、固定板14における底板14aの上面(媒体支持部材6側とは反対側の面)に接合される。この底板14aに駆動素子ユニット12が接合されることにより駆動素子ユニット12の高さ、すなわち、ノズル面に垂直な方向の位置がそれぞれ規定される。また、固定板14の底板14aは、ホルダー8の壁11の下端面に接着剤25により接合されている。
共通部材15は、他の部材の厚みよりも厚く剛性が比較的高い金属製の板材であり、収容空間20の上面側の開口を塞ぎ得る形状・大きさに設定されている。本実施形態における共通部材15は、ヘッドユニット4全体を補強する機能と、流路構造体13からのインクを各駆動素子ユニット12側に供給する流路としての機能とを奏する。すなわち、この共通部材15がホルダー8に接合されることにより、ヘッドユニット4全体の歪み等の変形が抑制される。本実施形態における共通部材15には、厚さ方向を貫通して連通流路22が形成されている。この連通流路22は、流路構造体13の導出口54と駆動素子ユニット12の流路(導入口36)とを連通する流路である。この共通部材15は、駆動素子ユニット12に一端側が接続されたフレキシブル基板23をホルダー8における壁11の上端面との間に挟んだ状態で収容空間20の上面側の開口を塞ぐように壁11の上端面に接着剤24により接合されている。そして、上記のようにホルダー8の下面に固定板14が接合されるとともにホルダー8の上面に共通部材15が接合されることで収容空間20が画成される。この収容空間20は、駆動素子ユニット12の流路から当該流路を形成する壁面の一部(例えば、後述するコンプライアンスシート34a)を透過した水分の過剰な蒸発を抑制する水分蒸発管理領域となる。この収容空間20は、完全に密閉された空間ではなく、図示しない大気開放路を通じて大気開放されている。また、共通部材15には、フレキシブル基板23において共通部材15とホルダー8との間に挟まれた部分よりも先の部分(駆動素子ユニット12と接続された一端側とは反対側の他端側)が挿通される貫通口21が、収容空間20から外れた位置に開設されている。この貫通口21は、回路基板9に開設された挿通口49と連通する。
本実施形態における駆動素子ユニット12は、ノズルプレート17、流路形成基板26、振動板28、圧電素子29(駆動素子若しくはアクチュエーターの一種)、保護基板30(本発明における基板の一種)、駆動IC31がこの順に積層されてヘッドケース32に取り付けられている。ヘッドケース32は、合成樹脂製の箱体状部材であり、その内部には、下面側に開口したユニット収容空部32aが形成されている。このユニット収容空部32aの下面側の開口から駆動素子ユニット12の構成部材が収容されている。より具体的には、圧電素子29、保護基板30、および駆動IC31がユニット収容空部32aに収容された状態で、振動板28が積層された流路形成基板26にヘッドケース32が接合されている。また、ヘッドケース32において、ユニット収容空部32aよりも上面側には、当該上面に開口する状態でインク導入路33(平面流路)が形成されている。このインク導入路33は、ユニット収容空部32aから外れた位置にヘッドケース32の高さ方向を貫通して形成された図示しない供給流路を通じて流路形成基板26のインク流路と連通されて本発明における液体流路を構成している。さらに、このヘッドケース32の上面には、インク導入路33の開口を塞ぐ状態でコンプライアンス部材34が接合されている。このコンプライアンス部材34は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の可撓性を有するコンプライアンスシート34aと、このコンプライアンスシート34aを支持する金属製のシート支持板34bとが積層されて構成されている部材である。なお、コンプライアンスシート34aとしては、インク流路(インク導入路33)内の圧力変化に応じて撓むことが可能な可撓部材であれば、例えば、ごく薄いステンレス鋼等の金属板を用いることもできる。
シート支持板34bにおいてインク導入路33に対応する位置には、当該インク導入路33の上面側の開口形状に倣った形状のコンプライアンス開口35が板厚方向を貫通する状態で形成されている。ヘッドケース32の上面にコンプライアンス部材34が位置決めされた状態で接合されると、インク導入路33の開口部が、コンプライアンス部材34のコンプライアンスシート34aによって封止される。これにより、インク導入路33における圧力変動に応じて当該部分のコンプライアンスシート34aが変位する(撓む)ことができる。また、シート支持板34bには、インク導入路33と連通する導入口36が開設されている。この導入口36には、上記共通部材15の連通流路22の導出口が液密状態で接続される。連通流路22側から導入口36を通じてインク導入路33に導入されたインクは、上記供給流路を通じて流路形成基板26内のインク流路に供給される。
また、ヘッドケース32には、ユニット収容空部32aに連通する配線挿通口38が形成されている。この配線挿通口38には、プリンター1の制御回路側からの駆動信号等を駆動IC31に伝送するフレキシブル基板23の一端側が挿通されて、ユニット収容空部32a内における保護基板30の上面(実装面)に形成された基板電極端子39に接続されている。
ノズルプレート17は、シリコン製あるいはステンレス鋼等の金属製の板材である。本実施形態では、このノズルプレート17には、複数のノズル18が列状に並設されている。この並設された複数のノズル18は、ドット形成密度に対応したピッチで、記録媒体2の幅方向に対応する第2の方向に沿って等間隔に設けられてノズル列を構成している。本実施形態における流路形成基板26は、シリコン製の板材である。この流路形成基板26には、ノズル18毎に対応した複数の圧力室40となる空部と、圧力室40とノズル18とを連通させるノズル連通口41等のインク流路が形成されている。
振動板28は、弾性を有する薄膜状の部材であり、流路形成基板26の上面(ノズルプレート17側とは反対側の面)に設けられている。この振動板28によって、圧力室40となるべき空間の上部開口が封止されている。換言すると、当該振動板28によって、圧力室40の上面(天井面)が区画されている。この振動板28における圧力室40の上部開口に対応する部分は、圧電素子29の撓み変形に伴ってノズル18から遠ざかる方向あるいは近接する方向に変位する変位部として機能する。すなわち、振動板28における圧力室40の上部開口に対応する領域が、撓み変形が許容される駆動領域となる。この駆動領域の変形により、圧力室の容積が変化する。
振動板28の上(流路形成基板26とは反対側の面)における各圧力室40に対応する駆動領域には、圧電素子29がそれぞれ積層されている。本実施形態の圧電素子29は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子29は、例えば、振動板28上に、下電極層、圧電体層及び上電極層が順次積層されてなる。このように構成された圧電素子29は、保護基板30の上部に配置された駆動IC31から出力された駆動信号が印加されて下電極層と上電極層との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると、ノズル18から遠ざかる方向あるいは近接する方向に撓み変形する。
本実施形態における保護基板30は、圧電素子29を保護する保護基板として機能するとともに所謂インターポーザーとしても機能する板材である。この保護基板30は、ノズル列方向(第2の方向)に長尺であって、ノズル列方向に交差する方向(第1の方向)に短尺なシリコン製の基板からなり、長手方向と短手方向を有している。そして、この保護基板30は、振動板28との間に圧電素子29を収容する空間43を形成する状態で配置されている。この保護基板30の上面側には、圧電素子29の駆動に係る駆動信号を出力する駆動IC31が配置されている。この保護基板30には、厚さ方向を貫通する図示しない貫通電極を有しており、この貫通電極を介して駆動IC31の出力端子45と各圧電素子29の素子電極端子とが導通されている。駆動IC31は、フレキシブル基板23を通じて制御回路からの駆動信号や噴射データ(ラスターデータ)等が入力され、当該噴射データに基づいて駆動信号の中から各圧電素子29にそれぞれ出力する駆動パルスの選択制御を行う。この駆動IC31の下面(保護基板30側の面)には、フレキシブル基板23からの駆動信号等が入力される入力端子44と、各圧電素子29に対応して設けられた出力端子45と、が設けられている。
また、保護基板30の上面(実装面)には、上記駆動IC31の入力端子44に接続されると共にフレキシブル基板23の一端側端子46に接続される基板電極端子39が形成されている。本実施形態においては、保護基板30の上面において当該保護基板30の長手方向(第2の方向)の一側(図3においては左側)の端部に、駆動IC31の入力端子44にそれぞれ対応して当該保護基板30の短辺(短手方向)に沿って複数並設されている。この基板電極端子39の列が、本発明における端子列に相当する。それぞれの基板電極端子39は、保護基板30の上面における駆動IC31の入力端子44に対向する位置からフレキシブル基板23の一端側端子46が接続される領域に至るまで保護基板30の長手方向に延在している。
フレキシブル基板23は、ポリイミド等からなる可撓性を有する基材フィルムの一方の面に配線のパターンが形成されている配線基板である。また、フレキシブル基板23の一端側には一端側端子46が、基板電極端子39に対応して複数並設され、また、他端側には、回路基板9の回路基板端子48と接続される他端側端子47が複数並設さている。他端側端子47には、回路基板9を介して制御回路からの駆動信号等が入力される。そして、フレキシブル基板23において配線端子以外の配線パターンの表面は、ソルダーレジストで覆われている。本実施形態におけるフレキシブル基板23は、例えばCOFのような駆動ICを備えているフレキシブル基板とは異なり、駆動IC31を有していない。すなわち、本実施形態において、COFの駆動ICに相当する駆動IC31は、保護基板30の上面に配置されているので、フレキシブル基板23は、駆動IC31とは別個独立した基板となっており、一端側端子46から他端側端子47まで途中に駆動ICを介することなく配線が形成されている。このため、本実施形態におけるフレキシブル基板23は、寸法や屈曲位置等について少なくとも駆動IC31を有することによる制約が無い。これにより、フレキシブル基板23の寸法(全長および幅)をCOF等の駆動ICを備えるものよりも小さくすることができ、また、記録ヘッド3におけるフレキシブル基板23の引き回し(配線レイアウト)の自由度が向上している。
本実施形態においては、水分蒸発管理領域となる収容空間20をできるだけ小さくするべく、従来の駆動ICを備えているフレキシブル基板を採用する構成では困難であった配線レイアウトが採用されている。具体的には、フレキシブル基板23は、当該フレキシブル基板23の配線延在方向に交差する幅方向が保護基板30の短辺に沿った姿勢で保護基板30と接続され、配線挿通口38からヘッドケース32の外側に引き出され、ホルダー8(本発明における第1部材の一種)と共通部材15(本発明における第2部材の一種)との間に挟まれた状態で、その表裏が接着剤24によりホルダー8と共通部材15とのそれぞれに接着されている。そして、水分蒸発管理領域である収容空間20の外側に引き出されたフレキシブル基板23の他端側(ホルダー8と共通部材15との間に挟まれた部分よりも先の部分)は、共通部材15の貫通口21および回路基板9の挿通口49に挿通されて回路基板9の上面側に引き出され、その他端側端子47が回路基板9の上面に設けられた回路基板端子48と電気的に接続されている。
これにより、本実施形態においては、ホルダー8と、これに接合される共通部材15および固定板14(本発明における第3部材の一種)とにより、水分蒸発管理領域(収容空間20)の大きさ(容積)が規定され、従来の構成のように駆動素子ユニット12よりも上部(ノズル面側とは反対側)に配置されている回路基板等の部材にフレキシブル基板23を回路基板の上面側に通すための挿通孔が不要となり、その分だけ水分蒸発管理領域となる収容空間20を小さくすることが可能となる。これにより、駆動素子ユニット12内のインクの蒸発をより確実に抑制することが可能となる。また、上記のようにフレキシブル基板23が駆動ICを有していない(駆動IC31が保護基板30上に配置されている)ことから、フレキシブル基板23の寸法、特に幅をその分小さくすることができる。このため、ノズル列方向に長い保護基板30の短辺(短手方向)に沿って並設された基板電極端子39にフレキシブル基板23の一端側端子46が接続される構成を採用することができ、ホルダー8と共通部材15とでフレキシブル基板23が挟まれている領域(挟持領域)をより小さくすることができる。ここで、ホルダー8と共通部材15との間において、接着剤24のみで封止されている領域と、フレキシブル基板23を挟んでいる領域(挟持領域)とを比較した場合、後者の方で水分がリークするリスクが高いので、このフレキシブル基板23を挟んでいる領域を小さくすることにより、水分がリークするリスクをより低減することが可能となる。そして、このような構成を採用することにより、回路基板9が水分蒸発管理領域(収容空間20)の外部に配置されているため、当該回路基板9が高湿度環境に晒されない。これにより、高湿度下におけるイオンマイグレーションが生じることが抑制されるので、MEMSデバイス、圧電デバイス、もしくは液体噴射ヘッドの一形態である記録ヘッド3およびこれを備えるプリンター1の信頼性が向上する。
また、本実施形態においては、ホルダー8と共通部材15とは、フレキシブル基板23を間に挟んだ状態で接着剤24により接合されて収容空間20を封止しているので、フレキシブル基板23を間に挟むことにより、互いにがたつき(傾き)が生じたとしてもこれを接着剤24の厚みで吸収することができる。このため、両者をねじ止め等の他の接合方法で接合する構成と比較して水分蒸発管理領域の密閉性をより確実に確保することができる。さらに、本実施形態においては、ホルダー8と共通部材15と固定板14とにより、水分蒸発管理領域(収容空間20)が画成されているので、本実施形態におけるホルダー8のように第1部材の一方の面(上面)と他方の面(下面)が開口した構成においても第2部材(共通部材15)および第3部材(固定板14)でこれらの開口を塞ぐことで水分蒸発管理領域となる空間を画成することができる。そして、第1部材と第2部材との少なくとも一方に、フレキシブル基板23の幅に対応する幅およびフレキシブル基板23の厚み分の深さを有する溝が形成され、当該溝にフレキシブル基板23が嵌め込まれた状態で第1部材と第2部材とが接着されることで上記がたつきが生じない構成とすることがより望ましい。当該構成によれば、水分蒸発管理領域の密閉性を一層向上することができる。なお、この溝は第1部材側の溝の一部と第2部材側の溝の一部とが組み合わされて形成されるものであってもよい。
共通部材15の上面に配置された回路基板9(本発明におけるプリント基板の一種)は、プリンター本体側からの駆動信号や吐出データ等を駆動素子ユニット12側の圧電素子29へ供給するための配線パターン等が形成されたリジッド基板である。この回路基板9の上面には、複数の回路基板端子48(本発明におけるプリント基板端子)が記録ヘッド3毎に第1の方向に沿って並設されており、また、プリンター本体側からのFFC5が接続されるコネクター50(図2参照)やその他の電子部品等が実装されている。回路基板9は、コネクター50に接続された図示しないFFC等を介してプリンター本体側から駆動信号等を受ける。また、回路基板9には、厚さ方向を貫通する挿通口49が回路基板端子48に隣接させて開設されている。上記のように、挿通口49は、共通部材15の貫通口21と連通している。さらに、回路基板9において、共通部材15の連通流路22に対応する位置には、厚さ方向を貫通する逃げ穴51が開設されている。この逃げ穴51には、流路構造体13の導出口54と共通部材15の連通流路22との連通部分である保護部材27のシール部27aが配置される。
流路構造体13は、インクカートリッジ等のインク供給源(インク貯留部材)から送られてきたインクを受けて各記録ヘッド3に分配する部材である。この流路構造体13の内部には、インクの種類毎(色毎)の導入流路と、導入流路を流通するインクを濾過するフィルターと、導入流路からそれぞれ分岐され記録ヘッド3に応じた数の分岐流路群等が設けられている。また、流路構造体13の下面側(インク導入部19が開設された上面側とは反対側)には、インクの種類に応じた数の分岐流路群の導出口54が、記録ヘッド3毎に対応してそれぞれ開設されている。導出口54の開口周縁部は、駆動素子ユニット12側に向けて突出した流路接続部53となっている。共通部材15の上面に流路構造体13の下面が位置決めされた状態で接合されると、当該共通部材15の逃げ穴51を通して各分岐流路の導出口54と共通部材15の連通流路22とがシール部27aを介して相互に連通される。
そして、上記のように形成された記録ヘッド3は、インク流路内がインクで満たされた状態で、フレキシブル基板23を通じて駆動IC31に入力された駆動信号や噴射データに応じて当該駆動IC31から圧電素子29に選択的に駆動信号が印加される。これにより、圧電素子29が駆動されて圧力室40に圧力変動が生じ、この圧力変動が制御されることにより、ノズル18からインク滴が噴射される。
図4は、本発明の第2の実施形態における記録ヘッド3の断面図である。上記第1の実施形態では、ホルダー8の上面(ノズル面側とは反対側の面)に収容空間20が開口した構成を例示したが、これには限られない。本実施形態においては、収容空間20は、ホルダー8の下面から高さ方向の途中まで形成されており、ホルダー8において収容空間20よりも上部には平面流路56が形成されている。この平面流路56は、共通部材15の連通流路22と駆動素子ユニット12のインク導入路33とを連通する流路である。また、ホルダー8において平面流路56から外れた位置には上面から収容空間20まで貫通する状態で配線開口58が開設されている。配線開口58はヘッドケース32の配線挿通口38と連通する。そして、基板電極端子39に一端側端子46が接続されたフレキシブル基板23は、配線挿通口38および配線開口58に通されてホルダー8(第1部材の一種)と共通部材15(第2部材の一種)との間に挟まれた状態で、その表裏が接着剤24によりホルダー8と共通部材15とのそれぞれに接着されている。そして、水分蒸発管理領域である収容空間20の外側に引き出されたフレキシブル基板23の他端側は、上記第1の実施形態と同様に、共通部材15の貫通口21および回路基板9の挿通口49に挿通されて回路基板9の上面側に引き出され、その他端側端子47が回路基板9の上面に設けられた回路基板端子48と電気的に接続されている。本実施形態においても、ホルダー8と、これに接合される共通部材15および固定板14(第3部材の一種)とにより、水分蒸発管理領域としての収容空間20の大きさが規定され、水分蒸発管理領域を小さく抑えることが可能となる。なお、他の構成については第1の実施形態と同様である。
図5は、本発明の第3の実施形態における記録ヘッド3の断面図である。上記第1の実施形態および第2の実施形態では、フレキシブル基板23がホルダー8と共通部材15とにより挟まれた構成を例示したが、これには限られない。本実施形態においては、ホルダー8の下面、すなわち、壁11の下端面と固定板14とによりフレキシブル基板23が挟まれ、当該フレキシブル基板23の他端側が収容空間20の外側に引き出されている。すなわち、本実施形態において、ホルダー8が本発明における第1部材に相当し、固定板14が本発明における第2部材に相当する。本実施形態におけるホルダー8は、一方の面である下面側(固定板14側)が開口している一方、他方の面である上面側(回路基板9側)が開口していない(流路の開口は除く)。そして、フレキシブル基板23は、ヘッドケース32の側壁に形成された配線引出開口60を通じて収容空間20に引き出され、ホルダー8の下面側の開口を通じ、収容空間20の外に引き出されている。そして、引き出されたフレキシブル基板23は、ホルダー8と固定板14との間に挟まれた状態で、その表裏が接着剤25によりホルダー8と固定板14とのそれぞれに接着されている。なお、他の構成については第1の実施形態と同様である。本実施形態においても、ホルダー8と、これに接合される固定板14とにより、水分蒸発管理領域の大きさが規定され、水分蒸発管理領域となる収容空間20をより小さく抑えることが可能となる。
また、上記各実施形態では、ホルダー8と、これに接合される共通部材15あるいは固定板14とにより水分蒸発管理領域である収容空間20が画成される構成を例示したが、これには限られない。例えば、上記共通部材15に相当する構成を有さない構成であって、回路基板や他の流路部材等の第2部材あるいは第3部材により第1部材としてのホルダーの開口面(固定板側とは反対側の面)が塞がれて水分蒸発管理領域となる収容空間が画成される構成を採用することもできる。この場合、第1部材との間にフレキシブル基板を挟み込む状態で第1部材に接合されて水分蒸発管理領域となる空間を画成するものが第2部材であり、これ以外で第1部材に接合されて水分蒸発管理領域となる空間を画成するものが第3部材である。
そして、本発明は、駆動素子の駆動に係るフレキシブル基板を備え、駆動素子ユニットにおいて液体を取り扱うMEMSデバイスであれば適用することが可能である。同様に、駆動素子としての圧電素子の駆動に係るフレキシブル基板を備え、駆動領域の振動あるいは変位等を検出するセンサー等の圧電デバイスにも本発明を適用することができる。この場合、駆動素子から出力される信号が配線基板としても機能する保護基板を介して駆動ICに出力され、さらにこの駆動ICおよびフレキシブル基板を通じて回路基板(プリント基板)側に出力される。
また、駆動素子としては、圧電素子に限られず、発熱素子や静電アクチュエーター等の種々の駆動素子を採用することができる。
そして、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドとしてインクジェット式記録ヘッド3を例に挙げて説明したが、本発明は、他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドでは液体の一種としてR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液体の一種として液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは液体の一種として生体有機物の溶液を噴射する。