〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、液体噴射ヘッドユニットの一例としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッドユニット(以下、ヘッドユニットと称する。)について説明する。また、液体噴射装置の一例としてヘッドユニットを搭載したインクジェット式記録装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
インクジェット式記録装置Iは、ヘッドユニット1を具備する。詳細は後述するが、ヘッドユニット1は、インクを噴射するノズルを有する複数のヘッドを備えている。ヘッドユニット1は、キャリッジ3に搭載されている。キャリッジ3は、媒体Sとヘッドユニット1との間におけるX方向の相対的な往復移動を行う部材である。本実施形態では、キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5の軸方向に往復移動可能に設けられている。前記X方向は、本実施形態では、キャリッジ3の移動方向であり、以後、第1の方向Xと称する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の媒体Sが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。本実施形態では、搬送ローラー8によって媒体Sが第1の方向Xに直交する第2の方向Y(請求項のY方向)に搬送されるようにした。なお、媒体Sを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
また、本実施形態では、第1の方向X及び第2の方向Yの両方に直交する方向を第3の方向Zと称する。なお、本実施形態では、各方向(X、Y、Z)は互いに直交しているが、各方向は必ずしも直交していなくてもよい。各図において、各方向の原点から矢印が記載された先端に向かう方向を正方向、その反対方向を負方向と称する。また、各方向において矢印が記載された先端側を正方向側、反対側を負方向側と称する。本実施形態では、第1の方向Xの負方向側は、キャリッジ3が印刷を行わないときなどに配置されるホームポジション側であり、正方向側はその反対側である。第2の方向Yの正方向側は媒体Sが投入される側であり、負方向側は媒体Sが排出される側である。第3の方向Zの正方向側は、ヘッドユニット1がインクを噴射する噴射面側であり、負方向側はその反対側である。
キャリッジ3に搭載されたヘッドユニット1には、液体としてインクが貯留されたインクタンク等の液体供給手段2(請求項の供給源の一例である)がチューブ等の供給管2aを介して接続されている。なお、本実施形態では、液体供給手段2を供給管2aを介してヘッドユニット1に接続するようにしたが、特にこれに限定されず、インクカートリッジ等の液体供給手段2をヘッドユニット1と共にキャリッジ3に搭載するようにしてもよい。
また、キャリッジ3の移動方向の端部である非印刷領域には、ヘッドユニット1に設けられたインクを吐出するノズルから、ヘッドユニット1の流路内のインクや気泡等を吸引する負圧機構160が設けられている。負圧機構160は、ヘッドユニット1の各ヘッドに設けられたノズルを覆うキャップ161内を負圧にする装置である。具体的には負圧機構は、キャップ161と、キャップ161に吸引管162を介して接続された例えば真空ポンプ等の吸引部材163とを具備する。また、キャップ161は、第3の方向Zに移動可能に設けられている。具体的には、キャップ161の移動は、図示しない駆動モーターや電磁石等の移動手段によって行うことができる。このような移動手段により、キャップ161をノズルが開口する噴射面に当接させることができる。
このような構成の負圧機構160は、上述した移動手段により、ヘッドユニット1のノズルが開口した噴射面にキャップ161を当接させ、吸引部材163に吸引動作を行わせる。吸引部材163が吸引動作を行うと、キャップ161の内部は負圧となり、ヘッドユニット1のヘッドのノズルから、当該ヘッドの流路に存在するインクが気泡と共に吸引される。このような吸引動作によれば、ヘッドユニット1の各ヘッド内に生じた沈降物などをノズルから排出することができる。また、吸引動作を行わず、非印刷時には、キャップ161によってノズルを封止することによりノズルの乾燥を抑制するようにしてもよい。
インクジェット式記録装置Iには、インクジェット式記録装置Iの動作を制御する制御装置(図示せず)が設けられている。制御装置は、ヘッドユニット1の動作や、負圧機構160等の動作を制御する装置である。
ここで、ヘッドユニット1の一例について図2〜図10を参照して説明する。図2は本実施形態に係るヘッドユニットを示す分解斜視図であり、図3はヘッドユニットの斜視図であり、図4は流路ホルダーを示す分解斜視図であり、図5はヘッドユニットの底面図であり、図6は図5のA−A′線断面図であり、図7は図5のB−B′線断面図であり、図8は図7の一部を拡大した断面図であり、図9は回路基板80の平面図であり、図10は補強板20の平面図である。図5は固定板10及びノズルプレート120を示し、流路ホルダー30の図示は省略している。
なお、本実施形態では、ヘッドユニット1の各方向について、インクジェット式記録装置Iに搭載された際の方向、すなわち、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zに基づいて説明する。もちろん、ヘッドユニット1のインクジェット式記録装置I内の配置は以下に示すものに限定されるものではない。
本実施形態のヘッドユニット1は、複数の開口11が設けられた固定板10と、開口11ごとに設けられた複数のヘッド100と、各ヘッド100にインクを供給する流路が設けられて固定板10との間で複数のヘッド100を収容する流路ホルダー30と、固定板10に積層される補強板20と、回路基板80とを備えている。
ここで、本実施形態のヘッド100について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12はヘッドの分解斜視図であり、図13はヘッドの断面図である。
ヘッド100は、流路基板110を具備する。流路基板110は、第3の方向Zの負方向側の面には振動板150が形成されている。本実施形態では、流路基板110は、シリコン単結晶基板からなり、第3の方向Zの正方向側の面を異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室112が第2の方向Yに沿って形成されている。この第2の方向Yに沿った複数の圧力発生室112からなる列が、第1の方向Xに2列形成されている。また、各列の圧力発生室112の第1の方向Xの外側には、後述する保護基板130に設けられるマニホールド部131と連通し、各圧力発生室112の共通のインク室となるマニホールド1000を構成する連通部113が形成されている。また、連通部113は、インク供給路114を介して各圧力発生室112の第1の方向Xの一端部とそれぞれ連通されている。
流路基板110の第3の方向Zの正方向側には、各圧力発生室112のインク供給路114とは反対側で連通するノズル121が穿設されたノズルプレート120が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。すなわち、1つのヘッド100には、ノズル121が第2の方向Yに並設されたノズル列122が第1の方向Xに2列設けられている。
流路基板110の第3の方向Zの負方向側には、振動板150上に、導電性材料で形成された第1電極と、圧電材料で形成された圧電体層と、導電性材料で形成された第2電極とを順次積層することで形成された圧電アクチュエーター300が形成されている。このような圧電アクチュエーター300が形成された流路基板110上には、マニホールド1000の少なくとも一部を構成するマニホールド部131を有する保護基板130が接合されている。マニホールド部131は、本実施形態では、保護基板130を第3の方向Zに貫通して、第2の方向Yにおいて複数の圧力発生室112に亘って連続して形成されており、上述のように流路基板110の連通部113と連通されて各圧力発生室112の共通のインク室となるマニホールド1000を構成している。
保護基板130の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部132が設けられている。このような保護基板130としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができるが、流路基板110の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本実施形態では、流路基板110と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板130には、第3の方向Zに貫通する第1貫通孔133が設けられている。振動板150上には、圧電アクチュエーター300の個別電極から第1貫通孔133に向けて引き出されたリード電極(図示せず)が設けられている。このリード電極の端部は、第1貫通孔133内に露出している。当該リード電極には、駆動IC等の駆動回路201を実装したケーブル200が第1貫通孔133内で電気的に接続されている。
このような保護基板130上には、コンプライアンス基板140が接合されている。コンプライアンス基板140のマニホールド1000に対向する領域には、マニホールド1000にインクを供給するためのインク導入口144が厚さ方向に貫通することで形成されている。また、コンプライアンス基板140のマニホールド1000に対向する領域のインク導入口144以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部143となっており、マニホールド1000は、可撓部143により封止されている。この可撓部143により、マニホールド1000内にコンプライアンスを与えている。
コンプライアンス基板140上には、インク導入口144に連通するインク供給連通路231が設けられたヘッドケース230が設けられている。詳細は後述するが、インク供給連通路231は、流路ホルダー30に設けられた流路に連通しており、流路ホルダー30からのインクをインク導入口144に供給する。また、ヘッドケース230には、可撓部143に対向する領域に凹部232が形成され、可撓部143の撓み変形が適宜行われるようになっている。
また、ヘッドケース230には、厚さ方向に貫通した第2貫通孔233が形成されている。第2貫通孔233は、保護基板130の第1貫通孔133に連通してケーブル200が挿通される。
ケーブル200は、例えば、可撓性を有するフレキシブルケーブル等からなる。詳細は後述するが、ケーブル200のヘッド100に接続された出力側とは反対側の入力側は、回路基板80(図7、図9参照)に電気的に接続され、当該回路基板80を介して外部からの印刷信号等の各種信号が供給される。ケーブル200には、半導体素子である駆動回路201が実装されているが、もちろん、ケーブル200は、駆動回路201が設けられていなくてもよい。
さらに本実施形態のケーブル200は、後述する回路基板80に接続される入力側の幅が、ヘッド100に接続される出力側の幅よりも狭い。このケーブル200の形状や回路基板80に接続される態様については後述する。
このようなヘッド100は、インク供給連通路231が開口する面が流路ホルダー30に固定されて、液体供給手段2からのインクが流路ホルダー30を介して供給される。
なお、図2及び図3に示すように、流路ホルダー30には、ヘッド100が複数個、本実施形態では、ノズル列122の列設方向である第1の方向Xに5個並設された列が、第2の方向Yに2列設けられている。すなわち、1つのヘッドユニット1には、合計20列のノズル列122が第1の方向Xに並設されている。ちなみに、ヘッド100と流路ホルダー30との固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤による接着や、ネジ等による固定であってもよい。
図2〜図7に戻り、ヘッドユニット1を構成する流路ホルダー30について説明する。
流路ホルダー30は、インクが流通する複数の流路が設けられ、固定板10との間で複数のヘッド100を収容する部材である。本実施形態では、流路ホルダー30は、流路部材40、第1ホルダー50、第2ホルダー60、及び水平流路形成板70を備えている。なお、流路ホルダー30を構成する流路部材40、第1ホルダー50、第2ホルダー60及び水平流路形成板70は、樹脂材料を成型することで、コストを低減することができる。もちろん、材料は樹脂材料に限定されず、金属材料等で形成してもよく、また、製造方法は成型に限定されるものではない。また、流路ホルダー30は、上述したような複数の部材から構成される場合に限定されず、単一の部材から構成されていてもよい。
図2及び図7に示すように、流路部材40は、インクが流通する流路を有し、液体供給手段2からのインクが供給される部材である。具体的には、流路部材40の第3の方向Zの負方向側には、供給管2a(図1参照)に接続される接続部41が設けられている。本実施形態の接続部41は、第3の方向Zの負方向に突出し、供給管2aの開口に差し込まれることが可能な針状に形成されている。
接続部41の先端には、特に図示しないが、流路が開口しており、供給管2aからのインクが当該開口を介して流路に供給される。なお、接続部41はこのような態様に限定されない。そして、接続部41の先端に開口した流路は、流路部材40の内部で二つに分岐している。流路部材40の第3の方向Zの正方向側には、一つの流路につき2つの出口部42が設けられている。出口部42には特に図示しないが、分岐した二つの流路の出口がそれぞれ開口している。このように接続部41に供給されたインクは、流路部材40の内部で二つに分岐し、二つの出口部42のそれぞれから送出される。
本実施形態では、一つの流路部材40には、第1の方向X及び第2の方向Yに沿ってそれぞれ二つずつ配置された合計4つの接続部41が設けられている。上述したように、一つのヘッド100には2つのマニホールド1000が設けられている。また、詳細は後述するが、各出口部42は、各ヘッド100の各マニホールド1000に連通している。したがって、一つの流路部材40の4つの接続部41から供給されたインクは、出口部42から送出され、8つのマニホールド1000のそれぞれに供給される。
そして、流路部材40は、第1の方向Xに沿って3つ並設されている。したがって、流路部材40全体としては、12個の接続部41から供給されたインクを、12個のヘッド100の24個のマニホールド1000に供給することができる。
なお、流路部材40に設けられる流路の形状、本数は特に限定はない。また、流路部材40の内部に、流路内のインクに含まれる気泡や異物を除去するためのフィルターを設けてもよい。さらに流路は、流路部材40内で3つ以上に分岐されていてもよいし、分岐していなくてもよい。
また、接続部41に供給されたインクを各ヘッド100の各マニホールド1000に供給する態様については特に限定はない。本実施形態では、第1の方向Xで隣り合う2つのヘッド100の少なくとも一方のノズル列122に同じインクが供給されるようになっている。そして、同じインクを噴射する2つのヘッド100を互いに第2の方向Yにずらして配置することで、2つのヘッド100によって第2の方向Yに長いノズル列を形成している。
図2〜図7に示すように、第1ホルダー50及び第2ホルダー60が第3の方向Zに積層されている。
第1ホルダー50は、上述した流路部材40を保持するとともに、第2ホルダー60との間で回路基板80を保持する部材である。
第1ホルダー50には、第3の方向Zの負方向側の面に、流路部材40が載置される載置部55が形成されている。本実施形態の載置部55は、第3の方向Zに第1ホルダー50の一部が窪んだ凹形状となっている。載置部55には、第3の方向Zに貫通した第1挿通孔51が設けられている。第1挿通孔51は、流路部材40の出口部42のそれぞれに対向する位置に形成されており、本実施形態では24個形成されている。この第1挿通孔51は後述するインク供給管71が挿通される。
また、第1ホルダー50の載置部55以外の領域であって、第1の方向Xの両端側に、第3の方向Zに貫通したコネクタ挿通孔52が形成されている。このコネクタ挿通孔52には、回路基板80のコネクタ85に電気的に接続される配線が挿通される。当該配線は、回路基板80と外部の制御装置等とを接続し、制御装置等からの印刷信号を回路基板80に伝達するためのものである。
図4〜図7に示すように、第2ホルダー60は、流路部材40の流路と連通してインクをヘッド100に供給する流路67を備えるとともに、固定板10とでヘッド100を収容する部材である。また、本実施形態では、第2ホルダー60は、第1ホルダー50との間で回路基板80を保持する。
第2ホルダー60には、第3の方向Zの負方向側の面に、回路基板80が収容される収容部65が形成されている。本実施形態の収容部65は、第3の方向Zに第2ホルダー60の一部が窪んだ凹形状となっている。収容部65は、回路基板80が収容される程度の大きさ、形状に形成されている。第1ホルダー50と第2ホルダー60とが積層されることで、回路基板80が第1ホルダー50に覆われた状態で収容部65に収容される。
また、第2ホルダー60は、流路67を備えている。本実施形態では、流路67は第2ホルダー60に形成された第1流路68及び第2流路69、水平流路形成板70に形成された第3流路73からなる。
水平流路形成板70は、第2ホルダー60との接合面において水平な流路である第2流路69を形成するための板状の部材である。本実施形態では、第2ホルダー60の収容部65には、第3の方向Zに一部窪んだ凹部66が形成されている。水平流路形成板70は凹部66内で第2ホルダー60に接合されている。なお、凹部66は、水平流路形成板70が収容可能な大きさ、形状に形成されている。
第1流路68は、第2ホルダー60を第3の方向Zに貫通させて形成された流路である。第1流路68は、凹部66に開口するとともに、後述するヘッド収容部62に開口している。第1流路68は、ヘッド収容部62に収容されたヘッド100のインク供給連通路231(図12、図13参照)に対向する位置に設けられている。
第2流路69は、凹部66に形成された溝が水平流路形成板70に封止されることで形成された流路である。第2流路69の一端は第1流路68に接続し、第2流路69の他端は、流路部材40の出口部42に対向するように配置されている。
水平流路形成板70には、第3の方向Zの負方向側の面において、第1ホルダー50側に突出したインク供給管71が形成されている。インク供給管71は、流路部材40の出口部42に対向するように配置されている。本実施形態では、流路部材40の出口部42は合計24個であるので、これらに対応して24個のインク供給管71が設けられている。
第3流路73は、インク供給管71の内部を通り、水平流路形成板70を第3の方向Zに貫通して形成されている。第3流路73は、流路部材40の出口部42に対向するとともに、第2流路69の一端に連通するように配置されている。
このように第2ホルダー60に水平流路形成板70が接合されることで、第1流路68、第2流路69及び第3流路73からなる流路67が形成されている。
本実施形態のように、流路67が水平な流路である第2流路69を含むことで、インクをXY平面内で任意の方向に導くことができる。したがって、インクをXY平面で適宜導くことで、ヘッド収容部62に収容されたヘッド100の配置に対応して、インクを供給することができる。なお、流路67は、このような水平な第2流路69を含まなくてもよい。例えば、第2ホルダー60に第3の方向Zに対して傾斜した流路を設けることで、流路部材40の出口部42から各ヘッド100にインクを供給するようにしてもよい。
このような流路67の一部を形成するインク供給管71は、回路基板80に設けられた第3の方向Zに貫通する第2挿通孔82と、第1ホルダー50に形成された第1挿通孔51を挿通している。本実施形態では、回路基板80には、インク供給管71に対向する位置に合計24個の第2挿通孔82が形成されている。なお、回路基板80の詳細については後述する。
インク供給管71は、第1挿通孔51及び第2挿通孔82を挿通して載置部55に露出している。載置部55に露出したインク供給管71は、シール部材90を介して流路部材40の出口部42に接続されている。
シール部材90は、第3の方向Zに貫通した連通路91が形成されている。連通路91には、インク供給管71が挿入される。本実施形態では、シール部材90には、インク供給管71に対向する位置に合計24この連通路91が形成されている。そして、この連通路91は出口部42に開口した流路部材40の流路に連通している。
このように、インク供給管71がシール部材90の連通路91に挿入され、流路部材40の流路が出口部42で連通路91に連通することで、流路部材40の流路と、インク供給管71に開口した流路67とが連通している。
上述したように、流路部材40は合計24個の出口部42を有しており、それぞれの出口部42に対応して24本の流路67が形成されている。
第2ホルダー60には、第3の方向Zの正方向側に、ヘッド100を収容するヘッド収容部62が形成されている。本実施形態では、ヘッド収容部62は、第2ホルダー60の一部が第3の方向Zに窪んだ凹形状に形成されている。後述するようにヘッド100は、固定板10に固定されている。ヘッド収容部62の第3の方向Zの深さは、ヘッド100が固定された固定板10を第2ホルダー60に固定したときに、ヘッド100がヘッド収容部62の底面(第3の方向Zの正方向に向いた面)に接着するような深さとなっている。
また、ヘッド収容部62は、複数のヘッド100の配置に対応して、個別に形成されている。本実施形態では、12個のヘッド100に対応して12個設けられている。なお、ヘッド収容部62は、ヘッド100ごとに形成されている必要はなく、共通のヘッド収容部62に複数のヘッド100が収容されるようにしてもよい。
このようなヘッド収容部62には、第1連通孔61が開口している。第1連通孔61は、第2ホルダー60を第3の方向Zに貫通した貫通孔である。第1連通孔61は、本実施形態では、12個形成されたヘッド収容部62のそれぞれに、一つの第1連通孔61が形成されている。
また、水平流路形成板70には、第2連通孔72が設けられている。第2連通孔72は、水平流路形成板70を第3の方向Zに貫通した貫通孔である。本実施形態では、第2連通孔72は、12個形成された第1連通孔61のそれぞれに対向する位置に合計12個形成されている。これらの第1連通孔61及び第2連通孔72は連通し、さらに後述する回路基板80の配線用開口83に連通している。回路基板80の詳細については後述する。
ここで、図2、図3、図5及び図6を用いて、固定板10について説明する。固定板10は、複数の開口11が設けられて、互いに位置合わせされたヘッド100が固定される部材である。本実施形態の固定板10は、底面部12と、底面部12に連続して底面部12に対して屈曲された側面部13とを具備する。
底面部12は、平板状を有し、第3の方向Zから平面視した際に、長方形状を基本として4つの角部を面取りした形状を有する。
側面部13は、底面部12から第1面15側に延設されている。すなわち、側面部13は、底面部12に連続した部分を第1面15側である第3の方向Zの負方向側に屈曲することで形成されている。本実施形態では、第1の方向Xに沿った二つの側面部13と、第2の方向Yに沿った二つの側面部13が形成されている。
底面部12は、ヘッド100が固定される第1面15(第3の方向Zの負方向側の面)と、第1面15とは反対側の第2面16とを有する。このような底面部12には、第1面15と第2面16とを貫通した複数の開口11が設けられている。各開口11は、各ヘッド100のノズル列122がそれぞれ独立して露出するように設けられている。本実施形態では、12個のヘッド100毎に、開口11が合計12個設けられている。
なお、このような固定板は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料からなる板状部材を固定板10の形状に切り出した後、側面部13を屈曲することで形成される。このため、絞り加工によって側面部13を形成する場合に比べて、底面部12の平坦度を高くすることができる。
図5に示すように、固定板10には、上述した複数の開口11からなる組を複数含む。本実施形態では、隣り合う2つの開口11を一組とし、合計6組が固定板10に設けられている。第1の方向Xの負方向側から正方向側へ順に、各組をそれぞれ組A、組B、組C、組D、組E、組Fと称する。
各組A〜Fを構成する開口11は、ノズル列122が沿う第2の方向Yにおいて一部のみ重なり、第1の方向Xにおいて重ならない配置となっている。
組Aを構成する開口11が第2の方向Yにおいて一部のみが重なるとは、組Aを構成する2つの開口11の第2の方向Yへの射影y1、射影y2が一部のみで重なっていることをいう。すなわち、射影y1、射影y2が完全に重なった場合と全く重ならない場合を含まない。一組に含まれる開口11が3以上であっても同様であり、また、組B〜組Fについても同様である。
組Aを構成する開口11が第1の方向Xにおいて重ならないとは、組Aを構成する2つの開口11の第1の方向Xへの射影x1、射影x2が重ならないことをいう。一組に含まれる開口11が3以上であっても同様であり、また、組B〜組Fについても同様である。
図5及び図7に示すように、開口11は、ヘッド100のノズルプレート120よりも若干小さく形成され、底面部12の第1面15は、開口11の開口縁部においてノズルプレート120と固定される。なお、底面部12とノズルプレート120とは、例えば、接着剤18によって固定されている。
このように、各ヘッド100は、第1面15に固定されることで、固定板10の第2面16とノズルプレート120により噴射面を規定している。噴射面とは、インクが噴射される媒体に対向する位置にある面をいう。本実施形態の噴射面は、第2面16と開口11から露出したノズルプレート120とからなる。そして、各ヘッド100が第1面15に固定されて噴射面を規定するとは、各ヘッド100は、各ヘッド100同士の第3の方向Zにおける配置が固定板10の第1面15により位置合わせされた状態で噴射面を規定していることをいう。
図7に示すように、ヘッド収容部62にヘッド100が収容され、各ヘッド100のヘッド収容部62に対向する第3の方向Zの負方向側は、接着剤等(図示せず)を介して、ヘッド収容部62に接着されている。このように、ヘッド100は、第3の方向Zの負方向側でヘッド収容部62に、正方向側で固定板10に固定されていることになる。
上述したように、各ヘッド100は第1面15に固定されて噴射面を規定している。すなわち、各ヘッド100は、第2面16を基準に噴射面が面一、すなわちノズルプレート120同士が面一となるように配置されている。したがって、各ヘッド100と固定板10との第3の方向Zの間隔のばらつきは、各ヘッド100とヘッド収容部62との第3の方向Zの間隔のばらつきよりも小さくなっている。
このように、媒体Sに近い噴射面側において、各ヘッド100の第3の方向Zの位置を位置決めしているので、噴射面の第3の方向Zの位置のばらつきを高精度に抑えることができる。なお、噴射面とは反対側のヘッド収容部62に各ヘッド100を固定した場合では、噴射面の第3の方向Zの位置のばらつきが大きくなってしまう。
また、複数の開口11からなる各組は、第1の方向X及び第2の方向Yにおける配置が上述したような所定の配置となっている。したがって、これらの各組の開口11に対して各ヘッド100が固定されることで、ヘッド100についても第1の方向Xにおいては重ならず、第2の方向Yにおいては一部のみが重なるような配置となっている。
すなわち、各組A〜組Fを構成する二つの開口11にそれぞれ固定されたヘッド100は、第2の方向Yにおいては一部のみが重なっている。具体的には各ヘッド100のノズル121の一部が第2の方向Yにおいて同じ位置になるように、各ヘッド100の一部のみが重なっている。このように第2の方向Yにおいてヘッド100の一部のみが重なっているので、1つのヘッド100のノズル列122よりも、2つのヘッド100によって第2の方向Yに長いノズル列が形成されている。
また、上述したように、本実施形態では、各組A〜組Fを構成する第1の方向Xで隣り合う2つのヘッド100には、少なくとも一方のノズル列122に同じインクが供給されるようになっている。したがって、2つのヘッド100によって形成されたノズル列からは同一のインクが噴射される。すなわち、各組の開口11にヘッド100を固定することで、ノズル列を長尺化させた場合と同様に第2の方向に亘って広い範囲でインク滴を噴射させることができる。
そして、本実施形態では、複数の組が第1の方向Xに亘って配置されているので、各組の開口11にヘッド100を固定することで、第2の方向Yに長尺化させたノズル列を第1の方向Xに多列化させることができる。
図2、図7、図8及び図10に示すように、上述した各ヘッド100が固定された固定板10は、補強板20を介して第2ホルダー60に固定されている。
補強板20は、固定板10に積層され、ヘッド100が挿通される貫通孔21を複数有し、固定板10よりも厚い板状の部材である。
補強板20は、固定板10の第1面15側に積層される。本実施形態では、固定板10の第1面15側に、ヘッド100と同じ接着剤18により接着されている。もちろん、ヘッド100と固定板10との接着に用いた接着剤18とは異なる接着剤で補強板20を固定板10に固定してもよい。
補強板20は、第3の方向Zに貫通した貫通孔21を複数有している。この貫通孔21は、ヘッド100が挿通可能な大きさ、形状であり、ヘッド100ごとに形成されている。本実施形態では、各貫通孔21は、固定板10の開口11に対向する位置に形成されている。固定板10の各組は6組で開口11が12個であるので、この開口11に合わせて、12個の貫通孔21が補強板20に設けられている。
補強板20は、固定板10よりも厚く形成されている。固定板10よりも厚い補強板20を固定板10に積層させることで、固定板10が補強され、折り曲げ等の外力に対して剛性を向上させることができる。
なお、固定板10の厚さを厚く形成することで剛性を向上させることも可能ではある。しかしながら、図6に示すように、ヘッド100はノズルプレート120が固定板10の第1面15上に接着されている。このため、ノズルプレート120と媒体Sとの、いわゆるペーパーギャップは、固定板10の厚さを厚くした分だけ拡大してしまう。一方、補強板20を固定板10に積層することで、固定板10の厚さを薄くしてペーパーギャップを小さくするとともに、固定板10の剛性を向上させることができる。
図8及び図10に示すように、貫通孔21は、ヘッド100との間隔が第1の間隔Mの第1内周面23と、ヘッド100との間隔が第1の間隔Mよりも広い第2の間隔Nの第2内周面24とを有している。本実施形態では、貫通孔21は、ヘッド100が挿通可能な矩形状であり、かつ一部が半円形状に切り欠かれて形成されている。このような貫通孔21の矩形状の内周面が第1内周面23であり、半円形状に切りかかれた内周面が第2内周面24である。もちろん、第1内周面23及び第2内周面24の形状はこのような態様に限定されない。すなわち、第2内周面24とヘッド100との第2の間隔Nが第1内周面23とヘッド100との第1の間隔Mよりも広くなるように貫通孔21が形成されていればよい。
このような貫通孔21には、第2内周面24に接する接着剤19を備えている。接着剤19は、第2内周面24と、ヘッド100の第2内周面24に対向する側面との間に設けられ、ヘッド100を第2内周面24に接着している。このような第2内周面24に設けられた接着剤19は、第1の方向X及び第2の方向Yにおけるヘッド100の位置ずれを抑制することができる。
このように、第1内周面23は、第2内周面24よりもヘッド100との間隔が狭い。したがってこのような狭い第1内周面23には接着剤を充填し難い。一方、第1内周面23よりも広い第2の間隔Nを有する第2内周面24には、接着剤を充填し易い。これにより、ヘッド100のノズルプレート120を第1面15に接着剤18のみで固定する場合に比較して、ヘッド100は接着剤18で第1面15に、接着剤19で補強板20に固定されるので、より強固にヘッド100を固定することができる。したがって、所定の配置に位置合わせしたヘッド100同士の配置がずれてしまうことを抑制できる。
また、第1内周面23は、第1の間隔Mが第2の間隔Nよりも狭い。すなわち、接着剤19が充填される部位としては第2内周面24を一部に設けたので、第2内周面24以外の第1内周面23としては、接着剤19が充填される領域を設ける必要がなく、ヘッド100との第1の間隔Mを狭くすることができる。
図8に示すように、固定板10のうち、補強板20の貫通孔21内に露出した部分を開口縁部14と称する。開口縁部14は、固定板10の開口11周辺の一部であって、固定板10の補強板20により補強されていない部分である。一方、上述したように第1内周面23の第1の間隔Mは狭くすることができる。このように第1の間隔Mが狭くなれば、開口縁部14の幅も狭くなり、補強板20に補強されていない開口縁部14の幅を狭くすることができる。これにより、固定板10の開口縁部14が屈曲するおそれが低減され、固定板10の平坦度を維持することができる。
図6及び図7に示すように、このような補強板20が積層された固定板10は、第1面15が第2ホルダー60の第3の方向Zの正方向側の面に接合されている。具体的には、固定板10に固定された各ヘッド100が第2ホルダー60のヘッド収容部62にそれぞれ収容された状態で、補強板20を介して固定板10が第2ホルダー60の第3の方向Zの正方向側に固定されている。なお、補強板20と第2ホルダー60とは、例えば、接着剤25で接着されている。
このようにして、流路ホルダー30の第2ホルダー60と補強板20が接合された固定板10との間で複数のヘッド100が収容されているが、補強板20を用いない場合は、固定板10を第2ホルダー60に直接接合してもよい。
そして、固定板10に固定されたヘッド100はヘッド収容部62に収容されて第3の方向Zの負方向側が接着剤(図示せず)等で接着され、ヘッド100のインク供給連通路231(図13参照)が流路67に接続され、ヘッド100の第2貫通孔233(図13参照)が流路ホルダー30の第1連通孔61に連通している。
ここで、図4、図7及び図9を用いて、回路基板80について説明する。回路基板80は、図示しない電子部品や配線等が設けられたプリント基板からなる。回路基板80には、複数の配線用開口83が設けられている。配線用開口83は、回路基板80を第3の方向Zに貫通した貫通孔であり、ヘッド100に接続されたケーブル200が挿通される。本実施形態では、配線用開口83は、12個形成された第2連通孔72のそれぞれに対向する位置に合計12個形成されている。
回路基板80には、配線用開口83ごとに接続端子84が設けられている。ヘッド100に接続されたケーブル200は、第1連通孔61、第2連通孔72及び配線用開口83を挿通し、第3の方向Zの負方向側の一端が回路基板80側に折り曲げられ、接続端子84に電気的に接続されている。このように、複数のヘッド100のそれぞれは、配線用開口83ごとに挿通されたケーブル200及び接続端子84を介して回路基板80と電気的に接続されている。
上述した複数の配線用開口83のうち、固定板10の開口11の組に対応する配線用開口83は、第2の方向Yにおいて離間して配置されている。すなわち、図9に示すように、固定板10の開口11の組A〜組F(図5参照)に対応する配線用開口83からなる組が回路基板80に設けられている。第1の方向Xの負方向側から正方向側へ順に、配線用開口83の各組をそれぞれ組a、組b、組c、組d、組e、組fと称する。
これらの組aを構成する2つの配線用開口83は、第2の方向Yにおいて離間して配置されている。2つの配線用開口83が第2の方向Yにおいて離間しているとは、組aを構成する2つの配線用開口83の第2の方向Yへの射影y1、射影y2が重ならないことをいう。一組に含まれる配線用開口83が3以上であっても同様であり、また、組b〜組fについても同様である。
このように、各組a〜組fを構成する配線用開口83は、第2の方向Yにおいて離間して配置されているので、回路基板80上に設けられた配線、例えば、接続端子84とコネクタ85とを接続する配線などを、第2の方向Yにおいて離間した配線用開口83の間に引き回すことができる。このように、本実施形態のヘッドユニット1によれば、回路基板80において配線用開口83を第2の方向Yにおいて離間したので、回路基板80上の配線の引き回しの自由度を高くすることができる。
仮に、各組a〜組fを構成する配線用開口83が第2の方向Yにおいて一部が重なっているとする。この場合では、回路基板80上に設けられた配線を第2の方向Yにおいて一部重なっている配線用開口83の間は非常に狭く、引き回すことは困難である。
このような回路基板80は、水平流路形成板70が取り付けられた第2ホルダー60の収容部65に収容される。この状態では、第1連通孔61、第2連通孔72、及び配線用開口83が連通し、一連の連通孔となっている。これらの連通孔には、ケーブル200が挿通している。そして、ケーブル200の一端はヘッド収容部62に収容されたヘッド100に接続され、他端は回路基板80の接続端子84に接続されている。
図9を用いて、ケーブル200が回路基板80の接続端子84に接続される態様について詳細に説明する。
複数のケーブル200のそれぞれは、配線用開口83に対して第1の方向Xの正方向側(請求項の一方側)及び第1の方向Xの負方向側(請求項の他方向側)の何れかのみにおいて回路基板80の接続端子84と固定されている。
本実施形態では、複数の配線用開口83が第1の方向Xに並設されて列を成している。すなわち、一つの列は第2の方向Yにおける位置が同じ配線用開口83から構成されている。この配線用開口83からなる列が第2の方向Yに沿って2列設けられている。
これらの配線用開口83からなる2列のうち、第2の方向Yにおいて相対的に正方向側に配置された6つの配線用開口83を第1開口列と称し、第2の方向Yにおいて相対的に負方向側に配置された6つの配線用開口83を第2開口列と称する。
第1開口列の各配線用開口83を挿通したケーブル200を第1のケーブルグループと称する。すなわち、第1のケーブルグループは、第2の方向Yにおける位置が同じであるケーブル200をいう。第2の方向Yにおける位置が同じであるケーブル200とは、ケーブル200の第2の方向Yへの射影が少なくとも一部重なっていることをいう。同様に、第2開口列の各配線用開口83を挿通したケーブル200を第2のケーブルグループと称する。
第1のケーブルグループは、当該グループを構成する全てのケーブル200が第1の方向Xの正方向側に折り曲げられ、各配線用開口83に対して第1の方向Xの正方向側(請求項の一方向側)に設けられた接続端子84に固定されている。第2のケーブルグループは、当該グループを構成する全てのケーブル200が第1の方向Xの負方向側(請求項の他方側)に折り曲げられ、各配線用開口83に対して第1の方向Xの負方向側に設けられた接続端子84に固定されている。
上述したように第1のケーブルグループのケーブル200を接続端子84の第1の方向Xの正方向側に固定することで、複数の接続端子84から引き出される配線の全てを第1の方向Xの正方向側にあるコネクタ85へ集約することができる。第2のケーブルグループのケーブル200についても同様に、複数の接続端子84から引き出される配線の全てを第1の方向Xの負方向側にあるコネクタ85へ集約することができる。
このように回路基板80上の配線を第1のケーブルグループ又は第2のケーブルグループ単位で一方のコネクタ85へ集約させることができるので、回路基板80上の配線を簡素化することができる。
また、第1のケーブルグループと第2のケーブルグループとは、Y方向において一部のみ重なっている。本実施形態では、第1のケーブルグループ及び第2のケーブルグループのケーブル200は、出力側(ヘッド100に接続される側)がY方向において一部のみ重なっている。図5に示した開口11の組がY方向に一部のみ重なっているが、このような開口11の組と同様に、ケーブル200もY方向において一部のみ重なっている。一方、図9に示すように、ケーブル200の入力側(回路基板80に接続される側)は、Y方向において重なっていない。
第1のケーブルグループに属するケーブル200と、第2のケーブルグループに属するケーブル200とは、出力側がY方向に一部重なった構成となっている。このように、第1のケーブルグループ及び第2のケーブルグループのケーブル200をY方向に一部重ねることでY方向にヘッドユニット1を小型化することができる。
また、上述したように、配線用開口83に挿通されるヘッド100のケーブル200は、回路基板80に接続される入力側の幅が、ヘッド100に接続される出力側の幅よりも狭い(図12参照)。したがって、当該ケーブル200が挿通される配線用開口83の第2の方向Yにおける開口幅を、少なくともケーブル200の出力側の幅よりも狭くすることができる。
換言すれば、第1のケーブルグループ及び第2のケーブルグループのケーブル200の入力側についてはY方向に重なっていない。したがって、配線用開口83同士の第2の方向Yにおける間隔をより広くして配線を引き回す領域として利用することができ、回路基板80上の配線を引き回す自由度をさらに向上させることができる。
このように、ヘッドユニットIのY方向への小型化と、回路基板80上の配線を引き回す自由度を高くすることを両立することができる。
以上に説明した本実施形態のヘッドユニット1は、固定板10との間でヘッド100を収容した流路ホルダー30に供給管2aからインクが供給され、流路ホルダー30に形成された流路67を介して各ヘッド100に当該インクが供給される。そして、制御装置等からの印刷信号が回路基板80を介して各ヘッド100の駆動回路201に伝達され、駆動回路201で生成された駆動波形に基づいて圧電アクチュエーター300が駆動されて、ノズル121からインクが噴射される。
また、本実施形態に係るヘッドユニット1は、固定板10に設けた組を構成する開口11を、第1の方向Xにおいては重ならず、かつ、第2の方向Yにおいては一部のみが重なるように配置した。そして、開口11ごとにヘッド100を配置し、ノズルプレート120と固定板10の第2面16とからなる噴射面を規定した。これにより、ヘッド100は、第1の方向Xにおいては重ならず、第2の方向Yにおいては一部のみが重なるような配置となっており、2つのヘッド100によって第2の方向Yに長いノズル列が形成されている。そして、第1の方向Xに複数並設された各組の開口11にヘッド100を固定することで、第2の方向Yに長尺化させたノズル列を第1の方向Xに多列化させることができる。
このようにノズルプレート120と共に噴射面を規定する固定板10に複数のヘッド100を位置合わせして固定することで、第1の方向X及び第2の方向Yの双方にノズル列が分布する領域を広範にし、一度にインク滴を噴射できる領域を拡大することができる。
そして、一つの固定板10にヘッド100が固定されているので、ノズル列122を第2の方向Yに長尺化、第1の方向Xに多列化しても、ヘッドユニット1の第1の方向X及び第2の方向Yにおける大きさを小型化できる。このように、大きさを小型化しながらも、ノズル列122の長尺化及び多列化が実現できるので、ノズル列122の高密度化を実現することができる。
ちなみに、例えば、ヘッドが配置された複数の固定板を第1の方向X及び第2の方向Yに並設した構成のヘッドユニットでは、ノズル列122を第2の方向Yに長尺化し、第1の方向Xに多列化することも可能である。しかし、固定板の底面部が干渉しないように所定の間隔を設ける必要があり、その分、ヘッドユニット1が大型化してしまう。
さらに、一つの固定板10にヘッド100を固定し、噴射面を規定したので、複数の固定板にヘッド100を固定する構成と比較して、第3の方向Zにおける噴射面のばらつきが少ない高精度なヘッド100の配置を実現できる。さらに、噴射面を構成するノズルプレート120は、直接固定板10に固定されているので、従来技術のようにノズルプレートを保護するカバーヘッド等を介して固定板に固定する構成と比較して、ペーパーギャップを小さくすることができる。このように、噴射面のばらつきが小さく、またペーパーギャップも小さくすることができるので、ヘッドユニット1は高精度なインクの噴射を実現することができる。
そして、このようなヘッドユニット1を搭載することで、複数のヘッド100同士を高精度に配置し、かつ複数のヘッド100を高密度で配置することができるインクジェット式記録装置Iが提供される。
また、本実施形態のヘッドユニット1は、固定板10よりも厚く形成された補強板20を備えている。この補強板20は、貫通孔21にヘッド100が挿通されているのであって、ヘッド100と固定板10との間に介在していない。したがって、第3の方向Zにおける大きさを小型化することができる。仮に、補強板20の貫通孔21の開口縁部にヘッド100を固定した場合、この補強板20の厚さの分だけ、第3の方向Zにヘッドユニット1が大型化してしまう。
また、補強板20を設けても、補強板20にヘッド100が固定されていない。すなわち、各ヘッド100のノズルプレート120同士の第3の方向Zにおける位置精度は、補強板20に影響されず、固定板10によってのみ規定される。これにより、補強板20により固定板10の剛性を向上させるとともに、噴射面の第3の方向Zにおける位置を高精度にすることができる。
さらに、ヘッド100を補強する補強板20は固定板10と別であるので、固定板10は、十分薄く形成することができる。薄く固定板10を形成することで、ヘッドユニット1の製造時において、固定板10常盤に配置したさいに、常盤に倣いやすく、ヘッド100を高精度に位置合わせしやすい。また、固定板10を薄くしても、補強板20を十分厚くすることで固定板10の強度を向上させ、平面度を維持することができる。
また、図1及び図5に示すように、インクジェット式記録装置Iに設けられた負圧機構160のキャップ161は、固定板10に形成された開口11のうち、同じ組の開口11を封止する。つまり、同じ組の開口11の間には他の組に属する開口11が配置されておらず、キャップ161は、同じ組の開口11のみを封止する。具体的には、キャップ161は、一つの組を構成する2つの開口11の全体を覆う矩形状に形成されている。このようなキャップ161が固定板10の第2面16に当接することで、開口11がキャップ161により封止される。
上述したように、同じ組の開口11に対応するヘッド100は、共通の供給源である液体供給手段2からインクが供給される。本実施形態では、一つのヘッド100には二つのノズル列122があり、二つのヘッド100が同じ組の開口11に対応している。これらの二つのヘッド100の全ノズル列122に共通の液体供給手段2からインクが供給されている。
このように共通の液体供給手段2からインクが供給されるヘッド100については、当該ヘッド100の全てをキャップ161で封止した上で、吸引して負圧にする必要がある。
本実施形態のキャップ161は、同じ組に属する開口11に対応したヘッド100、すなわち、共通の液体供給手段2からインクが供給されるヘッド100のみを封止する。キャップ161は、このような配置の開口11からなる組に対応して形成すればよいので、キャップ161の大きさを小型化することができる。
仮にある特定の組を構成する開口11の間に、他の組を構成する開口11が配置されている場合、例えば、図5の第1の方向Xにおける最も正方向側の開口11と最も負方向側の開口11とを一つの組とした場合では、キャップ161は大型化してしまう。なぜならば、前記特定の組を構成する開口11に対応するヘッド100に、共通の液体供給手段2からインクを供給する場合、その特定の組の開口11を同時に封止することが可能なキャップを形成しなければならない。当該キャップは、実質的には、固定板10と同等の大きさとしなければならず、封止する必要がない他の組の開口11をも覆うような大きさとなってしまう。
〈実施形態2〉
実施形態1に係るヘッドユニット1は、固定板10に設けられた組は、第1の方向Xで隣り合う二つの開口11から構成されていたが、このような態様に限定されない。すなわち、第1の方向Xで隣り合わない複数の開口11から組が構成されていてもよい。
図11は、本実施形態に係るヘッドユニット1の底面図である。なお、図11は固定板10及びノズルプレート120を示し、流路ホルダー30の図示は省略している。また、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
同図に示すように、固定板10には、第2の方向Yにおける位置が同じである複数の開口11が第1の方向Xに並設されて列を成し、当該列が第2の方向Yにずれて2列形成されている。これらの二つの列を第1列α及び第2列βとする。第1列αは、第2列βよりも第1の方向Xにおいて負方向側に配置され、第2の方向Yにおいて正方向側に配置されている。
このような第1列αと第2列βとは第1の方向Xでは重なっていない。この第1列αと第2列βとの間の仮想的な境界線Lを挟んで、対称配置された開口11同士が一つの組を成している。例えば、第1列α及び第2列βのそれぞれのうち、最も境界線Lに近い開口11が一つの組Gを成している。同様に、第1列α及び第2列βのそれぞれのうち、組Gの次に境界線Lに近い開口11が一つの組Hを成している。以降、組I〜組Kについても同様である。そして、各組G〜組Kのそれぞれについて、開口11は、第1の方向Xでは重ならず、第2の方向Yで一部のみが重なっている。
このような態様の固定板10であっても、実施形態1に係るヘッドユニット1と同様の作用効果を奏する。
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、実施形態1に係る固定板10には、12個の開口11が6組設けられていたが、このような態様に限定されない。開口11の数は任意であるし、一組あたりの開口11の個数も2つ以上であってもよい。例えば、一組に属する開口11を3つ以上とし、これらの開口11に固定されるヘッド100を3つ以上並べ、ノズル列122をさらに長尺化してもよい。
実施形態1に係る流路ホルダー30は、複数の部材から構成されていたがこのような態様に限定されない。インクをヘッド100に供給する流路67を備え、固定板10との間でヘッド100を収容可能な構成であればよい。また、流路ホルダー30が単一部材から形成されていてもよい。
実施形態1に係る回路基板80は、流路ホルダー30に収容される構成としたが、このような態様に限定されない。また、回路基板80に形成された複数の配線用開口83のうち、固定板10の開口11の組に対応する配線用開口83は、第2の方向Yにおいて離間して配置されていたが、このような態様に限定されず、第2の方向Yにおいて一部重なっていてもよい。
実施形態1に係る第1ケーブルグループと第2ケーブルグループとは、それぞれが第1の方向Xの正方向側のコネクタ85、負方向側のコネクタ85に集約されて配線されていたが、このような態様に限定されない。各ケーブル200が各コネクタ85に適宜配線されていてもよい。
実施形態1に係るヘッド100のケーブル200は、入力側の幅が出力側の幅よりも狭く形成されていたが、このような態様に限定されない。入力側と出力側の幅が同等であってもよいし、入力側の幅が出力側の幅よりも広く形成されていてもよい。
実施形態1に係るヘッドユニット1は補強板20を備えていたが、必須の構成ではない。すなわち、補強板20を用いずに、固定板10を直接流路ホルダー30に固定してヘッド100を収容するような構成でもよい。また、固定板10と同等または固定板10より薄い補強板20を用いてもよい。
実施形態1に係る補強板20の貫通孔21は、第1内周面23及び第2内周面24を備えていたが、第2内周面24は必須の構成ではない。すなわち、ヘッド100が挿通可能な貫通孔を有する補強板20であってもよい。
実施形態1に係るインクジェット式記録装置Iは、負圧機構160を備えていたが、必須の構成ではない。
実施形態1に係るインクジェット式記録装置Iでは、ヘッドユニット1がキャリッジ3に搭載されて第1の方向X(主走査方向)に移動するものを例示したが、特にこれに限定されない。例えば、ヘッドユニット1が固定されて、紙等の媒体Sを第2の方向Y(副走査方向)に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
さらに、インクジェット式記録装置Iは、液体供給手段2が装置本体4に搭載され、供給管2aを介してインクをヘッドユニット1に供給する構成であるが、これに限定されない。例えば、キャリッジ3にヘッドユニット1と共にインクカートリッジなどの液体供給手段を搭載してもよい。また、液体供給手段2がインクジェット式記録装置Iに搭載されていなくてもよい。
実施形態1に係るヘッド100は、圧力発生室112に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を噴射するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。