以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図3は、図2(a)のA−A′線断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド200は、液体としてインク滴を噴射するヘッド本体210と、ヘッド本体210にインクを供給する供給部材220と、供給部材220に保持された回路基板250と、回路基板250に接続された外部配線基板260と、固定板であるカバーヘッド270と、を具備する。
本実施形態のヘッド本体210は、詳しくは後述するが、インクを噴射するノズル開口21が開口する液体噴射面20aが設けられている。本実施形態では、ヘッド本体210の液体噴射面20aに開口するノズル開口21は、複数が並設されてノズル開口21の列を構成している。ここで、ノズル開口21が並設された方向を第1の方向Xと称する。また、本実施形態では、第1の方向Xに並設されたノズル開口21の列は、第1の方向Xと直交する方向に2列設けられている。本実施形態では、第1の方向Xに直交する方向を第2の方向Yと称する。また、本実施形態では、第1の方向X及び第2の方向Yに直交する方向を第3の方向Zと称し、第3の方向Zにおいて供給部材220に対する液体噴射面20a側をZ1側、液体噴射面20aとは反対側をZ2側と称する。
このようなヘッド本体210のノズル開口21が開口する液体噴射面20a側には、ノズル開口21を露出した状態で保護するカバーヘッド270が固定されている。
また、ヘッド本体210の液体噴射面20aであるZ1側とは反対側のZ2側からは、配線基板121が引き出されている。配線基板121は、詳しくは後述するが、フレキシブル基板からなり、ヘッド本体210の詳しくは後述する圧力発生手段である圧電アクチュエーター300に接続されている。
供給部材220は、ヘッド本体210の液体噴射面20aであるZ1側とは反対側のZ2側に固定されている。本実施形態では、供給部材220に螺合される2つのネジ部材280によってヘッド本体210は供給部材220に固定されている。
供給部材220は、供給部材本体221と、供給部材本体221の両側面、本実施形態では、第2の方向Yの両側にそれぞれ設けられた第1蓋部材222と第2蓋部材223とを具備する。本実施形態では、第2の方向Yにおいて、第1蓋部材222が設けられた側をY1側、第2蓋部材223が設けられた側をY2側と称する。
供給部材220には、液体としてインクが貯留された液体貯留手段(図示なし)からヘッド本体210にインクを供給すると共に、ヘッド本体210からのインクを液体貯留手段に回収する液体流路400が設けられている。本実施形態の液体流路400は、供給流路410と回収流路420とを有し、供給流路410及び回収流路420には、インクを貯留する液体貯留手段が直接又はチューブを介して接続されている。
供給流路410は、液体貯留手段からのインクをヘッド本体210に供給する往路であり、供給部材220の第1の方向Xの一端部側に設けられている。
また、回収流路420は、ヘッド本体210からのインクを液体貯留手段に回収する復路であり、供給部材220の第1の方向Xの他端部側に設けられている。本実施形態では、第1の方向Xにおいて、供給流路410が設けられた一端部側をX1側と称し、回収流路420が設けられた他端部側をX2側と称する。
また、供給流路410には、インクに含まれる気泡やゴミなどの異物を除去するためのフィルター224が設けられている。液体貯留手段から供給されたインクは、フィルター224を通過して異物が除去されてヘッド本体210に供給される。
また、供給部材本体221には、第2の方向Yの一方面側に開口する第1空間部用凹部225と、第2の方向Yの他方面側に開口する第2空間部用凹部226とが設けられている。
供給部材220の第1空間部用凹部225の開口は、第1蓋部材222によって覆われており、第1空間部用凹部225と第1蓋部材222との間には第1空間部430が形成されている。
また、第2空間部用凹部226の開口は、第2蓋部材223によって覆われており、第2空間部用凹部226と第2蓋部材223との間には第2空間部431が形成されている。
そして、第2空間部431内に本実施形態のリジット基板である回路基板250が保持されている。また、供給部材220のヘッド本体210側、すなわちZ1側には、第2空間部431とZ1側の面とを連通する連通孔228が設けられている。ヘッド本体210の配線基板121は、連通孔228を挿通されて第2空間部431内で回路基板250と接続されている。
また、供給部材220のZ2側には、第2空間部431と外部とを連通する外部配線接続孔229が設けられている。外部配線基板260は、外部配線接続孔229を挿通されて第2空間部431内で回路基板250と接続されている。なお、外部配線接続孔229は、図示しないシール部材によって密封されている。これにより、外部配線接続孔229からインクが侵入するのを抑制している。また、外部配線基板260は、フレキシブル基板(FPC)等からなる。
このように外部の制御回路等からの印刷信号は外部配線基板260、回路基板250及び配線基板121を介して駆動信号としてヘッド本体210の圧力発生手段に供給される。
また、第1蓋部材222には、第1空間部430と外部とを連通する大気開放口231が設けられている。そして、供給部材本体221の第1空間部用凹部225と第2空間部用凹部226とを区画する壁部には、第1空間部430と第2空間部431とを連通する接続路230が設けられている。なお、接続路230は、大気開放口231よりも鉛直方向上側、すなわち、Z2側に設けるのが好ましい。これは、大気開放口231から第1空間部430内にインクが浸入した際に、第1空間部430内のインクが接続路230を介して第2空間部431に侵入して、回路基板250、外部配線基板260及び配線基板121がインクによって破壊されるのを抑制するためである。すなわち、接続路230が大気開放口231よりも鉛直方向上側であるZ2側に配置されることで、第1空間部430内に貯留されたインクの液面は大気開放口231よりも鉛直方向上になることがない。
そして、詳しくは後述するヘッド本体210の大気開放路500、510は、連通孔228、第2空間部431、接続路230、第1空間部430及び大気開放口231を介して外部と連通して大気開放される。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッド200では、図示しない液体貯留手段からのインクを供給部材220の供給流路410を介してヘッド本体210に供給され、ヘッド本体210の流路をノズル開口21に至るまでインクで満たした後、記録信号に従い圧力発生手段である圧電アクチュエーター300を駆動させることでノズル開口21からインク滴が噴射される。また、ヘッド本体210の内部に導入されたインクは、供給部材220の回収流路420に流出され、回収流路420を介して液体貯留手段に戻される。すなわち、液体貯留手段のインクは、供給流路410を介してヘッド本体210に供給され、ヘッド本体210から回収流路420を介して液体貯留手段に回収される、いわゆる循環が行われる。
ここで、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドに搭載されるヘッド本体についてさらに詳細に説明する。なお、図4は、ヘッド本体の分解斜視図であり、図5は、ヘッド本体の液体噴射面側からの平面図及び接着軌跡を示す図であり、図6は、図5のB−B′線断面図であり、図7は、図5のC−C′線断面図であり、図8は図5のD−D′線断面図である。また、図9は、流路形成基板及び保護基板の平面図及びそのE−E′線断面図であり、図10は、接着軌跡を示す平面図である。
図示するように、ヘッド本体210は、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、保持部材であるケース部材40、コンプライアンス基板91等の複数の部材を備え、これら複数の部材が接着剤等によって接合されて構成されている。
ヘッド本体210を構成する流路形成基板10には、複数の圧力発生室12が複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。この方向を圧力発生室12の並設方向とも称し、第1の方向Xと一致する。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12が第1の方向Xに沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設された列設方向は、第2の方向Yと一致する。なお、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された2列は、一方の圧力発生室12の列に対して、他方の圧力発生室12の列が第1の方向Xで隣り合う圧力発生室12の間隔の半分だけ第1の方向Xにずれた位置に配置されている。これにより、詳しくは後述するノズル開口21も同様に、ノズル開口21の2列が半分の間隔だけ第1の方向Xにずれて配置されて、第1の方向Xの解像度を2倍にしている。もちろん、2列の圧力発生室12の第1の方向Xの位置を同じ位置として、圧力発生室12の列毎に異なるインクが供給されるようにしてもよい。また、本実施形態では、上述のように、第1の方向X及び第2の方向Yに直交する方向を第3の方向Zと称し、第3の方向Zを含む面内において液体噴射方向(後述する被噴射媒体である記録シートS側)はZ1側、反対側はZ2側となる。
流路形成基板10の第3の方向Zの一方面、すなわち、Z1側の面には連通板15が接合されている。また、連通板15のさらに第3の方向ZのZ1側には、ノズル開口21が設けられたノズルプレート20が接合されている。本実施形態では、ノズルプレート20のノズル開口21が開口する第3の方向ZのZ1側が液体噴射面20aとなっている。
連通板15には、圧力発生室12とノズル開口21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このようにノズルプレート20の面積を比較的小さくすることでコストの削減を図ることができる。なお、ここで言う面積とは、第1の方向X及び第2の方向Yを有する面内方向における面積のことである。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を第3の方向Zに貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15を第3の方向Zに貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側、すなわちZ1側に開口して第3の方向Zの途中まで設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、各圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、連通板15を第3の方向Zに貫通して第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側、すなわち、Z2側には、振動板が形成されている。また、振動板上には、第1電極と圧電体層と第2電極とが順次積層されることで、本実施形態の圧力発生手段である圧電アクチュエーター300が構成されている。一般的には圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。
また、流路形成基板10の圧電アクチュエーター300側、すなわちZ2側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護するための空間である保持部31を有する。保持部31は、第1の方向Xに並設された圧電アクチュエーター300の列毎に第2の方向Yに2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、第2の方向Yで並設された2つの保持部31の間に第3の方向Zに貫通する第1接続孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出されたリード電極90の端部は、この第1接続孔32内に露出するように延設され、リード電極90と駆動IC等の駆動回路120を実装した配線基板121とが、第1接続孔32内で電気的に接続されている。本実施形態では、流路形成基板10、連通板15及び保護基板30が流路部材に相当する。もちろん、流路部材は特にこれに限定されず、流路部材として連通板15を設けずに流路形成基板10を連通板15に相当する大きさで形成してもよく、流路部材としてさらに他の部材を設けるようにしてもよい。
また、図9に示すように、保護基板30には、保持部31と外部とを連通する第1大気開放路500が設けられている。本実施形態では、圧電アクチュエーター300の列毎に設けられた2つの保持部31は、保護基板30の第1の方向XのX1側の端部において、第1大気開放路500を介して互いに連通して設けられている。すなわち、本実施形態では、2つの保持部31に対して、1つの第1大気開放路500が設けられている。なお、2つの保持部31を互いに連通させずに独立して設け、第1大気開放路500を独立する保持部31毎に個別に設けるようにしてもよい。
第1大気開放路500は、本実施形態では、保持部31に連通する第1凹部501と、第1凹部501に連通する第1貫通孔502と、第1貫通孔502に連通すると共に第1接続孔32又は第2接続孔43に連通する第2凹部503と、を具備する。
第1凹部501は、保護基板30と流路形成基板10との接合面に凹形状に形成されて一端が保持部31に連通して設けられている。なお、第1凹部501は、本実施形態では、保護基板30の第3の方向ZのZ1側に開口する溝によって形成されている。もちろん、第1凹部501は特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の保護基板30側の面に開口する溝によって形成してもよい。また、第1凹部501は、流路形成基板10に設けられた溝と保護基板30に設けられた溝とによって形成されていてもよい。
第1貫通孔502は、一端が第1凹部501に連通すると共に、保護基板30を厚さ方向である第3の方向Zに貫通して設けられている。第1貫通孔502は、本実施形態では、保護基板30の第1の方向Xの一端部側、すなわち、X1側に第2の方向Yの一方側であるY2側に設けられている。
第2凹部503は、保護基板30と詳しくは後述するケース部材40との接合面に凹形状に形成されて、一端が第1貫通孔502に連通すると共に他端が第1接続孔32又は第2接続孔43に連通して設けられている。なお、第2凹部503は、本実施形態では、ケース部材40の保護基板30側の面に開口する溝によって形成されている。もちろん、第2凹部503はこれに限定されず、例えば、保護基板30のケース部材40側の面に開口する溝によって形成してもよい。また、第2凹部503は、ケース部材40に設けられた溝と保護基板30に設けられた溝とによって形成されてもいてもよい。なお、第2凹部503は、詳しくは後述する第2大気開放路510と連通する。
このような第1凹部501、第1貫通孔502及び第2凹部503で構成された第1大気開放路500によって保持部31は、第1接続孔32又は第2接続孔43と連通されている。そして、保持部31に連通する第1大気開放路500は、第1接続孔32又は第2接続孔43を介して供給部材220の連通孔228と連通される。この結果、保持部31は、第1大気開放路500、第1接続孔32又は第2接続孔43、供給部材220の連通孔228、第2空間部431、接続路230、第1空間部430及び大気開放口231を介して外部と連通して大気開放される。
また、図4、図6及び図7に示すように、保護基板30及び連通板15には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10及び保護基板30と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、保護基板30に接合されると共に連通板15に接合されている。具体的には、ケース部材40は、Z1側の面に開口して、連通板15が収容される深さの凹形状を有する第1収容部41aを有する。また、第1収容部41aは、第2の方向Yの側面にも開口して設けられている。すなわち、第1収容部41aの第1の方向Xの両側には、Z1側に突出する足部45が設けられており、足部45のZ1側の先端面が後述するカバーヘッド270に接合されている。このような第1収容部41aは、連通板15を挿入可能なように、連通板15よりも若干大きな開口で形成されている。
また、第1収容部41aの底面、すなわちケース部材40のZ1側の面には、さらに流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹形状を有する第2収容部41bが設けられている。この第2収容部41bは、保護基板30のZ2側の面よりも若干広い開口面積を有する。そして、第2収容部41b内に流路形成基板10及び保護基板30等が収容されて第2収容部41bのZ1側の開口が連通板15によって封止される。
また、第1収容部41aの底面、すなわちケース部材40のZ1側の面には、Z1側の面に開口する凹形状を有する第3マニホールド部42が形成されている。なお、第2収容部41bと第3マニホールド部42とは、その開口面に連通板15が接合されることで、連通することなく区画されている。そして、ケース部材40に形成された第3マニホールド部42と、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18とによって本実施形態のマニホールド100が構成されている。なお、本実施形態では、流路形成基板10の第2の方向Yを挟んだ両側にマニホールド100を形成するようにした。もちろん、マニホールド100は、特にこれに限定されず、例えば、第3マニホールド部42のみで構成されていてもよく、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42で構成されていてもよい。ただし、本実施形態のようにマニホールド100を第1マニホールド部17、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42で構成することで、インクジェット式記録ヘッド200を大型化することなく、マニホールド100をできるだけ大きな容積で形成することができる。
なお、第2収容部41b内において、流路形成基板10及び保護基板30は、ケース部材40に第3接着剤603によって接着されている。この第3接着剤603は、保護基板30とケース部材40との間に設けられている。
また、連通板15とケース部材40の第1収容部41aの底面であるZ1側の面とは、第4接着剤604によって接着されている。このように連通板15とケース部材40とを第4接着剤604で接着することで、マニホールド100内のインクが連通板15とケース部材40との間から第2収容部41b内や外部に流出するのを抑制している。なお、第4接着剤604の軌跡については詳しくは後述する。また、本実施形態では、第4接着剤604が、特許請求の範囲に記載の第3接着剤に相当する。
また、ケース部材40には、保護基板30の第1接続孔32に連通してケース部材40を第3の方向Zに貫通する第2接続孔43が設けられている。この第2接続孔43を挿通した配線基板121が第1接続孔32に挿通されて、圧電アクチュエーター300から引き出された引き出し配線であるリード電極90と接続されている。
さらに、ケース部材40には、特に図示していないが、供給部材220の供給流路410に連通してマニホールド100にインクを供給する流入路と、供給部材220の回収流路420に連通してマニホールド100内のインクを流出させる流出路と、が設けられている。例えば、流入路を第1の方向Xの一方側であるX1側に設け、流出路を第1の方向Xの他方側であるX2側に設けるようにすればよい。なお、供給流路410は途中で2つに分岐して同じインクを2つのマニホールド100に供給してもよく、マニホールド100毎に独立して流入路を設けるようにしてもよい。同様に、2つのマニホールド100に連通する流出路が途中で1つに合流してもよく、流出路を途中で合流することなく、マニホールド100毎に独立して設けるようにしてもよい。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板91が設けられている。このコンプライアンス基板91が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の開口を封止している。すなわち、本実施形態の流路形成基板10、連通板15及び保護基板30で構成された流路部材の流路とは、第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18であり、コンプライアンス基板91は、第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18の液体噴射面20a側であるZ1側を封止する。
このようなコンプライアンス基板91は、本実施形態では、封止膜92と、固定基板93と、を具備する。封止膜92は、可撓性を有する薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やステンレス鋼(SUS)等により形成されている。また、固定基板93は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板93のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部94となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜92のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部95となっている。
なお、コンプライアンス基板91は、ノズルプレート20の周囲に亘って連続して設けられている。すなわち、コンプライアンス基板91には、ノズルプレート20が配置される領域に当該ノズルプレート20よりも若干大きな内径を有する第1露出開口部96が設けられている。
このようなヘッド本体210のノズル開口21が開口する液体噴射面20a側には、ノズル開口21を露出した状態で保護するカバーヘッド270が固定されている。
カバーヘッド270は、図7及び図8に示すように、コンプライアンス基板91の固定基板93と、ケース部材40とに接合される。すなわち、ケース部材40には、上述のように第1収容部41aの第1の方向Xの両側に足部45が形成されているため、カバーヘッド270は固定基板93と、ケース部材40の足部45の先端面であるZ1側の端面とに接合される。
ここで、ケース部材40の第1収容部41aの第3の方向Zの深さは、コンプライアンス基板91の固定基板93のZ1側の表面が、足部45のZ1側の面よりもZ1側に突出するように形成されている。すなわち、第3の方向Zにおいて、足部45のZ1側の面に対するコンプライアンス基板91のZ1側の面の高さは、第1収容部41aの第3の方向Zの深さと、連通板15とコンプライアンス基板91とを接合した接合体の高さとによって決定される。このコンプライアンス基板91のZ1側の面は、第1収容部41aの深さや、連通板15の厚さ、コンプライアンス基板91を構成する封止膜92及び固定基板93の厚さ及びこれらを接着する接着剤の厚さ等によってばらつきが生じてしまう。このため、第1収容部41aの深さ、連通板15の厚さ、コンプライアンス基板91を構成する封止膜92及び固定基板93の厚さなどの寸法公差や、これらを接着する接着剤の厚さばらつきを考慮して、コンプライアンス基板91の固定基板93のZ1側の表面が、足部45のZ1側の面よりもZ1側となるように形成する。
このようなカバーヘッド270は、コンプライアンス基板91の第1露出開口部96に連通する第2露出開口部271が設けられた板状部材のベース部272と、ベース部272の第1の方向Xの両端部に設けられて、板状部材を第3の方向Zに向かって折り曲げて形成した第1折り曲げ部273と、ベース部272の第2の方向Yの両端部に設けられて板状部材を第3の方向Zに折り曲げて形成した第2折り曲げ部274と、を具備する。
ベース部272は、第1の方向Xに長尺となるように、すなわち、第1の方向Xが長手方向となる矩形状の板状部材で形成されている。
このようなベース部272の第2露出開口部271は、コンプライアンス基板91の第1露出開口部96と略同じ大きさの開口面積で形成されて、ノズルプレート20の液体噴射面20aを露出する。
すなわち、ベース部272は、コンプライアンス基板91のコンプライアンス部95を覆う大きさ、つまり、固定基板93の開口部94の封止膜92とは反対面側であるZ1側の開口を塞ぐことが可能な大きさで設けられている。
そして、ベース部272は、長手方向である第1の方向Xの中央側で、コンプライアンス基板91の固定基板93と第1接着剤601によって接着されている。また、ベース部272は、第1の方向Xの両端部側でケース部材40の足部45のZ1側の端面と第2接着剤602によって接着されている。
つまり、上述のように、ケース部材40の足部45は、第1収容部41aの第1の方向Xの両側に設けられているため、足部45は、第1収容部41aに収容されたコンプライアンス基板91の第1の方向Xの両側に設けられている。したがって、第1の方向Xにおいて、カバーヘッド270には、2つの足部45が第1の方向Xの両端部側で第2接着剤602によって接着され、足部45の間に挟まれた位置でコンプライアンス基板91が第1接着剤601によって接着される。
このようなベース部272は、本実施形態では、Z2側に平坦面を有するため、第3の方向Zにおいて略同じ高さで固定基板93と足部45とに跨がって接着されている。もちろん、ベース部272を屈曲させて設け、第3の方向Zで異なる高さで固定基板93と足部45とに跨がって接着させるようにしてもよい。
そして、上述のように、固定基板93のZ1側の面は、ケース部材40の足部45のZ1側の面よりもZ1側に突出して設けられているため、カバーヘッド270のベース部272と固定基板93との間隔は、カバーヘッド270のベース部272と足部45との間隔よりも狭くなる。つまり、第3の方向Zにおいて、カバーヘッド270のベース部272と固定基板93との間に設けられた第1接着剤601は、カバーヘッド270のベース部272とケース部材40の足部45との間に設けられた第2接着剤602よりも薄い厚さで形成される。
ここで、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91を接着する第1接着剤601は、カバーヘッド270と足部45とを接着する第2接着剤602よりも、粘度が低い。なお、粘度とは、接着される2部材間のいずれかの面に接着剤を塗布した状態の粘度のことであり、チキソトロピー指数が種々の接着剤であっても、塗布後の粘度が比較的高い接着剤であれば接着層を厚い状態で維持することができる。逆に塗布後の粘度が比較的低い接着剤であれば接着層を薄い状態で維持することができる。
第1接着剤601として、粘度が比較的低い接着剤を用いることで、カバーヘッド270と固定基板93との間に第1接着剤601を薄く塗ることができる。これにより、固定基板93に対してカバーヘッド270を所定の圧力で押圧した際に、第1接着剤601が固定基板93とカバーヘッド270との間から流出するのを抑制することができる。ちなみに、第1接着剤601が流出してコンプライアンス部95に付着すると、付着した第1接着剤601がコンプライアンス部95の変形を阻害し、コンプライアンス部95の変形によるマニホールド100内の圧力吸収を正常に行うことができず、クロストークが発生するなどの不具合が生じる。そして、このような第1接着剤601の流出は、例えば、粘度が比較的高い接着剤を第1接着剤601として用いた場合、第1接着剤601が比較的厚く塗布されることで主に発生する。すなわち、第1接着剤601として、粘度が比較的高い接着剤を用いると、第1接着剤601の量が増えて流出しやすくなってしまうが、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91の間隔を狭くすることで、第1接着剤601として粘度が比較的低い接着剤を用いて薄く形成しても、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91とを確実に接着することができると共に、第1接着剤601を薄く形成して量を少なくすることができるため、第1接着剤601が流出するのを抑制することができる。
また、カバーヘッド270とケース部材40の足部45とを接着する第2接着剤602は、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91とを接着する第1接着剤601よりも粘度が高い。このように第2接着剤602として、粘度が比較的高い接着剤を用いることで、カバーヘッド270とケース部材40の足部との間に第2接着剤602を厚く塗布することができる。したがって、カバーヘッド270とケース部材40との間を第2接着剤602によって確実に接着することができると共に接着剤の不足によりインクが浸入する隙間が発生するのを抑制することができる。
ちなみに、例えば、コンプライアンス基板91の固定基板93のZ1側の表面が、足部45のZ1側の面よりもZ2側となっていると、カバーヘッド270を足部45及びコンプライアンス基板91に接合した際に、カバーヘッド270と足部45との隙間よりも、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91の固定基板93との隙間の方が大きくなる。このため、カバーヘッド270とコンプライアンス基板91とを接着する第1接着剤601として粘度が高い接着剤が必要になる。しかしながら、粘度が高い接着剤を用いて厚く塗布した場合、第1接着剤601の量が増えることからはみ出し量も増えてしまい、流出した第1接着剤601がコンプライアンス部95に付着する可能性が高くなる。
また、このような第2接着剤602は、硬化後の常温時のヤング率が第1接着剤601の硬化後の常温時のヤング率よりも小さいことが好ましい。このように、長手方向の両端部においてカバーヘッド270とケース部材40の足部45とを接着する第2接着剤602のヤング率を小さくすることで、インクジェット式記録ヘッド200が加熱された際の線膨張係数の違いによる反りの応力を第2接着剤602で吸収することができ、インクジェット式記録ヘッド200の第1の方向Xの反りを低減することができる。もちろん、第1接着剤601の硬化後のヤング率についても第2接着剤602と同様のヤング率に小さくすれば、インクジェット式記録ヘッド200の反りを低減することができる。ちなみに、インクジェット式記録ヘッド200が加熱されるのは、例えば、カバーヘッド270とケース部材40の足部45とを第2接着剤602で接着する際に硬化させる際などである。このとき、カバーヘッド270とケース部材40とが同時に加熱されるため、第2接着剤602が硬化した後、常温(室温)に冷却された際に、両者の材料の違いによる線膨張係数の違いによって反りが発生する。つまり、反りは第1の方向Xにおいて発生しやすいと共に、第1の方向Xにおいてカバーヘッド270にはケース部材40とコンプライアンス基板91の固定基板93という異なる部材が接着されるため、第1の方向Xに反りが発生する。このように第1の方向Xでの反りに最も影響を与える長手方向の両端部の第2接着剤602について、硬化後のヤング率を小さくすることで、インクジェット式記録ヘッド200の第1の方向Xの反りを効果的に低減することができる。
さらに、このような第2接着剤602は、熱収縮率が第1接着剤601の熱収縮率よりも小さいことが好ましい。上述の硬化後のヤング率の関係と同様に、熱収縮率がこのような関係であれば、インクジェット式記録ヘッド200の第1の方向Xの反りを低減することができる。
もちろん、カバーヘッド270とケース部材40との線膨張係数が比較的近く、反りの応力が小さい場合には、第2接着剤602のヤング率は第1接着剤601よりも高いものを用いてもよい。また、熱収縮率についても同様である。
このように第1接着剤601によってカバーヘッド270とコンプライアンス基板91の固定基板93とが接着されることで、カバーヘッド270とコンプライアンス部95との間には、開口部94によってコンプライアンス空間97が形成される。このコンプライアンス空間97が密封されていると、コンプライアンス空間97内の気体が移動できずに、コンプライアンス部95が撓み変形できなくなる。したがって、コンプライアンス空間97を外部に連通させて大気開放する必要がある。しかしながら、カバーヘッド270に大気開放口を設けて被噴射媒体側に大気開放するのは好ましくない。これは、被噴射媒体側から大気開放口を介してインクが入り込み、封止膜92に付着するなどして封止膜92が撓み変形できなくなり、コンプライアンス部95が機能しなくなる虞があるからである。また、大気開放口からコンプライアンス空間97にインクが浸入し、予期せぬタイミングでインクが被噴射媒体に落下して汚してしまう虞がある。このため、本実施形態では、コンプライアンス空間97を液体噴射面20aとは反対面側で第2大気開放路510を介して外部と連通させて大気開放させるようにした。
ここで、図7、図8及び図10に示すように、コンプライアンス空間97を大気開放させる第2大気開放路510は、2つのコンプライアンス空間97に連通すると共に途中で一つに合流して設けられたものであり、コンプライアンス空間97に連通する第2貫通孔511と、第2貫通孔511に連通する第3凹部512と、第3凹部512に連通する第4凹部513と、を具備する。
第2貫通孔511は、連通板15を第3の方向Zに貫通して設けられて、一端がコンプライアンス空間97に連通して設けられている。すなわち、第2貫通孔511は、第3の方向Zにおいてコンプライアンス空間97に相対向する位置に設けられている。本実施形態では、コンプライアンス空間97の第1の方向XのX1側の端部に連通するように第2貫通孔511を設けるようにした。また、第2貫通孔511は、各コンプライアンス空間97に対応してそれぞれ独立して設けられている。
第3凹部512は、連通板15とケース部材40との接合面に凹形状に形成されて、一端が第2貫通孔511に連通する。本実施形態の第3凹部512は、ケース部材40の連通板15側に開口する溝によって形成されている。このような第3凹部512は、第1の方向X及び第2の方向Yの面内に設けられている。本実施形態では、図10に示すように、2つのコンプライアンス空間97に対応して設けられた2つの第2貫通孔511に連通する一端部側から第2の方向Yに沿って延設されたて合流した後、第1の方向Xに沿ってX1側からX2側に向かって延設されている。なお、第3凹部512はこれに限定されず、例えば、連通板15のケース部材40側の面に開口する溝によって形成してもよい。また、第3凹部512は、ケース部材40に設けられた溝と連通板15に設けられた溝とによって形成されていてもよい。
第4凹部513は、流路形成基板10及び保護基板30とケース部材40との接合面に凹形状に形成されて、一端が第3凹部512に連通する。本実施形態の第4凹部513は、ケース部材40の流路形成基板10及び連通板15側に開口する溝によって形成されている。このような第4凹部513は、第3凹部512に連通する一端部側から流路形成基板10及び保護基板30のX1側の端面に第3の方向Zに沿ってZ1からZ2に向かって延設された後、保護基板30とケース部材40との間に第1の方向Xに沿ってX1側からX2側に向かって延設されている。なお、第4凹部513は、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10又は保護基板30のケース部材40側の面に開口する溝によって形成してもよい。また、第2凹部503は、ケース部材40に設けられた溝と流路形成基板10又は保護基板30に設けられた溝とによって形成されてもいてもよい。
そして、このような第4凹部513が、第1大気開放路500の第2凹部503に連通して設けられている。したがって、第2貫通孔511、第3凹部512、第4凹部513を具備する第2大気開放路510は、第1大気開放路500の第2凹部503を介して第1接続孔32又は第2接続孔43に連通される。また、第2大気開放路510が連通された第1接続孔32又は第2接続孔43は、第1大気開放路500と同様に供給部材220の連通孔228、第2空間部431、接続路230、第1空間部430及び大気開放口231を介して外部と連通して大気開放される。
このように、第1大気開放路500と第2大気開放路510とを、液体噴射面20aから離れた位置、すなわち、インクジェット式記録ヘッド200のZ1側に設けられた液体噴射面20aに対して、Z2側に設けられた大気開放口231を介して大気開放させることで、液体噴射面20aから噴射されたインクが、大気開放口231から侵入するのを抑制することができる。また、本実施形態では、第1大気開放路500と第2大気開放路510とを途中で連通させて、1つの大気開放口231で外部と連通させて大気開放させるようにした。特に、ヘッド本体210内で第1大気開放路500と第2大気開放路510とを連通させることで、供給部材220等に大気開放口231と第1大気開放路500及び第2大気開放路510とを個別に連通する路が不要になって、構造を簡略化させて、液体噴射面20aとは第3の方向Zに離れた位置で大気開放させることが可能となる。もちろん、第1大気開放路500と第2大気開放路510とは、ヘッド本体210内において途中で連通することなく個別に設けてもよいし、供給部材220内においても個別に大気開放口231と連通するようにしてもよい。
ここで、カバーヘッド270とケース部材40の足部45のZ2側の端面とを接着する第2接着剤602の接着領域、ケース部材40と保護基板30及び流路形成基板10とを接着する第3接着剤603の接着領域、及びケース部材40と連通板15とを接着する第4の接着領域について、図7、図9に加えて図10を参照してさらに詳細に説明する。
図示するように、ケース部材40とカバーヘッド270とを接着する第2接着剤602の接着領域、つまり、第2接着剤602の軌跡は、足部45のZ2側の端面において、コンプライアンス基板91側の辺以外の周縁部に亘って設けられている。すなわち、X1側の足部45において、第2接着剤は、第2の方向YのY1側とY2側とに第1の方向Xに沿って設けられていると共に、第1の方向XのX1側において第2の方向Yに沿って形成されている。これにより、第2接着剤602は、コンプライアンス基板91側であるX2側の辺以外の辺に亘って形成されている。
一方、流路形成基板10及び保護基板30とケース部材40とを接着する第3接着剤603は、上述のように、保護基板30とケース部材40との間に、保護基板30の第2の方向Yの両側に第1の方向Xに沿って設けられている。
また、連通板15とケース部材40とを接着する第4接着剤604は、マニホールド100の周囲に亘って連続して設けられている。
また、第4接着剤604は、第2の方向YのY1側の辺及びY2側の辺に第1の方向Xに沿って足部45側に向かって延設された第1延設部605と、X1側及びX2側の辺に、第2の方向Yに沿って延設された第2延設部606と、を具備する。
第1延設部605は、マニホールド100の周囲から連続して足部45に向かって延設されたものである。また、第2延設部606は、2つの第1延設部605の足部45側の端部を接続するように連続して設けられている。このような2つの第1延設部605及び第2延設部606は、X1側及びX2側の両端部にそれぞれ設けられている。そして、第4接着剤604の内側、つまり、第4接着剤604によって囲まれた部分には、封止された第1封止空間610が設けられている。つまり、封止空間は、ケース部材40と連通板15との間に、連通板15の外周に沿って第4接着剤604を連続して設けることで形成されている。
このような第1封止空間610には、上述したコンプライアンス空間97を大気開放させる第2大気開放路510の第2貫通孔511が開口して設けられている。すなわち、連通板15に形成された第2貫通孔511は、第3の方向Zから見た際に、コンプライアンス基板91側では開口部94に重なる位置に設けられ、ケース部材40側では封止空間に重なる位置に設けられている。言い換えると、コンプライアンス基板91の開口部94は、少なくともX1側において、マニホールド100よりもX1側に第4接着剤604の接着領域よりも外側に達する大きさで形成されている。
また、第2大気開放路510の第3凹部512も、第2貫通孔511と同様に第1封止空間610内に設けられている。さらに、第2大気開放路510の第4凹部513も第1封止空間610内に設けられている。
同様に、保持部31を大気開放させる第1大気開放路500の第1凹部501、第1貫通孔502及び第2凹部503も、すべて第1封止空間610内に設けられている。したがって、第1大気開放路500及びこの第1大気開放路500に連通する第2大気開放路510は、第1封止空間610内に設けられている。
ちなみに、第4接着剤604の第2延設部606は、図7及び図8に示すように、第1の方向Xにおいて、連通板15の端面とケース部材40の第1収容部41aの側面との間にまで延設されている。また、ケース部材40の足部45とカバーヘッド270とを接着する第2接着剤602も同様に、第1収容部41aの第1の方向Xの側面と、連通板15との間にも設けられている。したがって、足部45のZ2側の面とカバーヘッド270のZ1側の面との間には、第2接着剤602と第4接着剤604の第2延設部606とによって封止された第2封止空間611が設けられている。
このように、第1封止空間610の第1の方向Xの両側に第2封止空間611を形成することで、第1の方向Xで見ると、第1大気開放路500及び第2大気開放路510は、第2封止空間611を形成する第2接着剤602と、第1封止空間610を形成する第4接着剤604とによって二重に封止されていることになる。したがって、第1の方向Xにおいてカバーヘッド270の外側から第1大気開放路500及び第2大気開放路510へのインクの浸入は、第2接着剤602と第4接着剤604とによって2重に抑制されるため、第1大気開放路500及び第2大気開放路510内へのインクの侵入を抑制することができる。つまり、第1大気開放路500や第2大気開放路510を第1接着剤601と第2接着剤602との間に形成された部分を介さずに、第1封止空間610内を介して大気開放させることで、第1接着剤601と第2接着剤602との間に形成された部分、つまり第2封止空間611に相当する部分にインクが浸入したとしても、第1大気開放路500及び第2大気開放路510を介してインクが侵入するのを抑制することができる。ちなみに、第1大気開放路500内にインクが浸入すると、保持部31内の圧電アクチュエーター300等にインクが付着し、圧電アクチュエーター300が破壊されてしまうなどの不具合が発生する。また、第1大気開放路500にインクが浸入すると、配線基板121等にインクが付着し、短絡するなどの不具合が発生する。本実施形態では、第1大気開放路500及び第2大気開放路510にインクが浸入するのを抑制して、インクジェット式記録ヘッド200の内部にインクが浸入することによる不具合を抑制することができる。
なお、このような第1接着剤601、第2接着剤602、第3接着剤603、第4接着剤604は、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤などを用いることができる。
このようなヘッド本体210は、図1及び図2に示すように、供給部材220の第3の方向Zの液体噴射面20a側であるZ1側の面に、供給部材220に螺合される2つのネジ部材280によって固定されている。
また、本実施形態では、インクを循環するインクジェット式記録ヘッド200を例示したが、特にこれに限定されず、循環されない、すなわち、液体貯留手段からインクがインクジェット式記録ヘッド200に供給されるだけのインクジェット式記録ヘッドであってもよい。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、カバーヘッド270の第1折り曲げ部273及び第2折り曲げ部274を同じ折り曲げ量の長さ、すなわち、第3の方向Zへの突出量を同じ大きさとしたが、特にこれに限定されず、例えば、カバーヘッド270の第2折り曲げ部274のベース部272に対する第3の方向Zへの突出量を、第1折り曲げ部273の突出量よりも大きくするようにしてもよい。このようにカバーヘッド270の長尺方向である第1の方向Xでは、第1接着剤601及び第2接着剤602によってコンプライアンス部が二重に封止されているので、第1折り曲げ部の第3の方向Zへの突出量を小さくしてもインクの浸入を抑制することができる。また、短尺方向である第2の方向Yでは、第1接着剤601が長辺である第1の方向Xに沿ってコンプライアンス空間97を囲むように設けられているため、コンプライアンス空間97が第1接着剤601によって一重に封止されているが、第2折り曲げ部274の第3の方向Zへの突出量を大きくすることで、第2の方向Yの両側からのインクの浸入を抑制することができ、コンプライアンス空間97にインクが浸入するのを抑制することができる。なお、カバーヘッド270は、第1折り曲げ部273と第2折り曲げ部274との角部は、絞り加工等によって形成されるため、加工によるベース部272の平面度が低下し易い。しかしながら、この第1折り曲げ部273と第2折り曲げ部274との角部に近い部分は、第1接着剤601と第2接着剤602とによって2重に封止されているため、ベース部272の平面度が低い場合であってもコンプライアンス空間97や封止空間を確実に封止することができる。
また、上述した実施形態1では、固定板としてカバーヘッド270を例示したが、特にこれに限定されず、固定板として第1折り曲げ部273及び第2折り曲げ部274の何れか一方のみが設けられたものや、両方が設けられていないベース部272のみで構成されたものなどを用いることもできる。
また、上述した各実施形態のインクジェット式記録ヘッド200は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置について説明する。なお、図11は、本発明の一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
図11に示すように、インクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッド200を搭載したキャリッジ3を具備する。キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド200を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
また、インクジェット式記録装置Iには、装置本体4に固定されて内部にインクが貯留されたインクタンク等の液体貯留手段2が設けられている。この液体貯留手段2には、インクジェット式記録ヘッド200にインクを供給する供給管2aと、インクジェット式記録ヘッド200からのインクを回収する回収管2bとが接続されている。
供給管2a及び回収管2bは、フレキシブルチューブ等の管状部材からなり、内部にそれぞれインクを供給する供給路と、インクを回収する回収路とが設けられている。そして、供給管2aの一端がインクジェット式記録ヘッド200の供給流路410に接続され、回収管2bの一端が回収流路420に接続されることで、液体貯留手段2のインクをインクジェット式記録ヘッド200に供給すると共に、インクジェット式記録ヘッド200からのインクを液体貯留手段2に回収する。
なお、特に図示していないが、供給管2aの途中又は回収管2bの途中には、加圧ポンプ又は吸引ポンプ等の圧送手段が設けられており、圧送手段の圧送によってインクは液体貯留手段2とインクジェット式記録ヘッド200との間を循環する。
なお、図11示す例では、インクジェット式記録ヘッド200がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド200が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、液体貯留手段2からインクジェット式記録ヘッド200にインクを供給すると共に、液体貯留手段2にインクを回収するインクジェット式記録ヘッド200を例示したが、特にこれに限定されず、液体貯留手段2からインクジェット式記録ヘッド200にインクを供給するだけのインクジェット式記録ヘッドにも本発明を適用することができる。
さらに、上述した例では、液体貯留手段2が装置本体4に固定されて、供給管2aを介してインクジェット式記録ヘッド200にインクを供給するようにしたが、特にこれに限定されず、インクカートリッジ等の液体貯留手段をキャリッジ3に搭載させて、インクジェット式記録ヘッド200と共に液体貯留手段がキャリッジ軸5に沿って移動させるようにしてもよい。また、液体貯留手段がインクジェット式記録装置Iに搭載されていなくてもよい。
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。