JP6625336B2 - 非水系二次電池負極用炭素材及び非水系二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水系二次電池に用いる非水系二次電池負極用炭素材と、その炭素材を用いて形成された負極を備える非水系二次電池に関するものである。
リチウムイオンを吸蔵・放出できる正極及び負極、並びにLiPFおよびLiBFなどのリチウム塩を溶解させた非水系電解液からなる非水系二次電池が開発され、実用に供されている。
この電池の負極材としては種々のものが提案されているが、高容量であること及び放電電位の平坦性に優れていることなどから、天然黒鉛、コークス等の黒鉛化で得られる人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズピッチ、黒鉛化炭素繊維などの黒鉛質の炭素材料が用いられている。
一方、昨今非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池の用途展開が図られ、また、ノート型パソコンや、移動通信機器、携帯型カメラ、携帯型ゲーム機の小型化によりラミネート型電池の需要が高まっている。
ラミネート型電池においては、従来の角型や円筒電池と異なり、電池の膨れ抑制が非常に重要な技術である。
そこで、充放電時の負極の膨張収縮を抑制しつつ、高い放電容量を有する非水系二次電池を与える負極材の開発が求められている。
こうした中で、特許文献1には、フリーカーボン含有量0.3質量%以下のタールやピッチを400〜600℃で熱処理して得たバルクメソフェーズを炭化、黒鉛化、粉砕することにより、放電容量が350mAh/gを超える炭素材料を得ることが記載されている。
また特許文献2には、フリーカーボン含有量が1質量%以下のタールやピッチを400〜900℃で熱処理して得たバルクメソフェーズを粉砕し、高温熱処理して黒鉛化することにより、タップ密度1.2g/cm3以上、放電容量348〜360mAh/gの、黒鉛粉末を得ることが記載されている。
特開2001−316105号公報 特開2002−47006号公報
ところで、電池の充電時に、リチウムとの合金化や黒鉛層間化合物の生成により電極が膨張すると、非水系二次電池の単位体積当たりに充填できる活物質量が減少し、結果として電池容量が低下する課題がある。したがって、非水系二次電池の高容量化においては、活物質の充填密度の向上、活物質の高容量化だけでなく、電池充電時の膨張を抑制することが強く求められている。
しかしながら、特許文献1、2に開示される従来の黒鉛負極材料では、電極の活物質の充填密度が高く、活物質が高容量であっても、電池の充電時の膨張を抑制する点で不十分であった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものである。即ち、本発明は、放電容量が高く、且つ、充電時の電極膨張が小さい、高性能の非水系二次電池を得ることが可能な非水系二次電池負極用炭素材及びその製造方法、並びに、それを用いた非水系二次電池を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、電極の活物質の所定の配向比が所定範囲内に存在し、且つ、所定の結晶性を有する炭素材料を用いることで、放電容量が大きく、かつ、充電時の電極膨張が小さい高性能の非水系二次電池が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は下記に示すとおりである。
<1> 黒鉛を含み、次の要件(1)及び(2)を満たす非水系二次電池負極用炭素材:
(1)該炭素材にバインダー樹脂及び溶媒を加えてスラリーとし、該スラリーを金属製集電体上に塗布、乾燥して該集電体上に活物質層を形成した後、該活物質層の密度が1.35g/cmになるようにプレスして作製された電極において、前記活物質層を広角X線回折測定して得られる格子面(110)及び(004)に対応するピークの強度比から算出される配向パラメータの強度比I(110)/I(004)が0.15以上である。
(2)偏光顕微鏡で、前記炭素材の任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて、鏡面処理した断面を観察して各炭素材粒子の結晶ドメインの長径の最大値を求めたとき、その最大値の平均が6μm以上17μm以下である。
<2> 前記非水系二次電池負極用炭素材が、バルクメソフェーズを原料として製造された人造黒鉛である、前記<1>に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
<3> 前記非水系二次電池負極用炭素材が、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率が80〜92%であるバルクメソフェーズを原料として製造される、前記<1>または<2>に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
<4> 前記非水系二次電池負極用炭素材が、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の硫黄量(S)に対するニッケル量(Ni)の比率(Ni/S×100(%))が0.3%以上であるバルクメソフェーズを原料として製造される、前記<1>〜<3>のいずれか一つに記載の非水系二次電池負極用炭素材。
<5> 常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率が80〜92%であるバルクメソフェーズを粉砕する工程と、粉砕されたバルクメソフェーズを黒鉛化する工程とを有し、前記粉砕工程の後かつ前記黒鉛化工程の前に、粉砕されたバルクメソフェーズを焼成する工程を有してもよい、前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
<6> リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えた非水系二次電池であって、該負極が、集電体と、該集電体上に形成された前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の非水系二次電池負極用炭素材を含有する活物質層とを備える、非水系二次電池。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材によれば、放電容量が高く、且つ、充電時の電極膨張が小さい、優れた非水系二次電池を提供することができる。
また、本発明の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法によれば、上記の非水系二次電池負極用炭素材を効率よく安定して製造することができるため、工業上非常に有用である。
実施例1で得られた炭素材Aの偏光顕微鏡観察を実施して得られた、炭素材Aの1粒子の鏡面処理した断面の画像を示し、結晶ドメインの長径のうち最大のものをあわせて示す。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に実施の形態を変更して実施することができる。
[非水系二次電池負極用炭素材]
本発明の非水系二次電池負極用炭素材(以下、「本発明の炭素材」という場合もある)について、以下に説明する。
本発明の炭素材は、黒鉛を含むものであり、以下に説明する要件(1)及び(2)を満たすものであれば、特に制限されない。その例としては、ピッチ原料を熱処理して得られるバルクメソフェーズを原料として製造した人造黒鉛が挙げられる。
(炭素材の特性)
(1)配向パラメータ強度比I(110)/I(004)
本発明の炭素材は、以下に説明する配向パラメータ強度比I(110)/I(004)が0.15以上であることを要件の1つとする。
I(110)は黒鉛(グラファイト)の格子面(110)を有する結晶に由来するピーク強度を示しており、I(004)は、黒鉛の格子面(004)を有する結晶に由来するピーク強度を示している。
格子面(004)は黒鉛の層方向の結晶性の強度を示している。特に電極(金属製集電体上に黒鉛を含む活物質層が形成されたもの)を測定した際の格子面(004)のピーク強度は、集電体と平行に黒鉛層が存在している状態を示している。この値が大きいとリチウムの挿入により集電体と垂直方向への膨張が大きくなり、ひいては電極の厚み方向の膨張に寄与することになる。
一方、格子面(110)は黒鉛の層と垂直方向の強度を示している。特に電極を測定した際の格子面(110)のピーク強度は、集電体と垂直方向に黒鉛層が存在している状態を示している。そのためこの値が大きくともリチウムの挿入による集電体と垂直方向の膨張は小さく、電極の厚み方向の膨張には寄与しにくい。
配向パラメータ強度比I(110)/I(004)は本発明の炭素材の結晶が集電体に対してどのように存在しているかを示すものである。
本発明の炭素材においては、前記配向パラメータ強度比I(110)/I(004)が0.15以上であること、そして下記にて説明する(2)の要件を満たすことにより、前記炭素材を使用して得られる非水系二次電池(以下、単に「非水系二次電池」ともいう)における高い容量と、電極膨張の抑制という両者を達成している。
このような電池容量と電極膨張の抑制という観点から、本発明の炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.23以上、更に好ましくは0.24以上、特に好ましくは0.26以上である。また、通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.37以下、特に好ましくは0.3以下である。前記範囲を下回ると(0.15未満であると)、非水系二次電池を作製したときの電池充電時の電極膨張が大きくなり、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくできない。一方、前記範囲を上回ると(1.0を超えると)、非水系二次電池を作製したときの活物質の結晶性が低くなり、電池の放電容量を大きくし難いか、又は、プレス後の電極の充填密度を上げ難い場合がある。
なお、以上説明した本発明の炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)を測定する具体的な手順は、次の通りである。
・配向パラメータ強度比I(110)/I(004)の測定方法
(イ)電極の形成:
炭素材にバインダー樹脂及び溶媒を加えてスラリーを形成する。具体的には、炭素材と、バインダー樹脂としてSBR(スチレン・ブタジエンゴム)水溶液と、さらに増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)水溶液とを、黒鉛材料(炭素材)とCMCとSBRとの混合物の乾燥後の総質量に対して、CMC及びSBRの質量割合がそれぞれ1質量%になるように混合撹拌し、スラリーとする。ここではSBR及びCMC水溶液を構成する水が溶媒となる。
次いで、得られたスラリーを金属製集電体上に塗布、乾燥して集電体上に活物質層を形成し、所定の密度になるように調整する。具体的には、ドクターブレードを用いて18μm厚さの金属製集電体(本明細書においては銅箔とする)上に前記スラリーを塗布する。塗布厚さは、乾燥後の電極目付(銅箔を除く)が9mg/cm2になるようにギャップを選択する。この電極を110℃で乾燥した後、電極密度(銅箔を除く活物質層の部分の密度)が1.35g/cm3(1.35±0.03g/cm3を意味するものとする)になるようにプレスを行なう。
(ロ)配向パラメータ強度比I(110)/I(004)の測定
プレス後の電極について、広角X線回折により集電体上の活物質層の炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)を測定する。具体的手法は特に制限されないが、標準的な方法としては、X線回折により炭素材の(110)面と(004)面とのチャートを測定し、測定したチャートについて、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIピーク関数を用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)面と(004)面のピークの積分強度を算出する。
そして、得られた積分強度から、(110)面の積分強度/(004)面の積分強度で表わされる比率を算出し、これを炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)と定義する。
なお、ここでのX線回折測定条件は次のとおりである。また、下記記載において2θは回折角を示す。
ターゲット: Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
スリット : 発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面 : 76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面 : 53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
試料調製 : 硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
以上説明した方法により、本発明の炭素材の、広角X線回折による配向パラメータ強度比I(110)/I(004)を求めることができる。
(2)偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均
本発明の炭素材は、下記に測定方法を説明する、偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均が、6μm以上17μm以下であることを要件の1つとする。
結晶ドメインの長径の最大値が小さすぎると結晶が十分に成長していないことを示し、非水系二次電池にした際の放電容量が不十分である。一方結晶ドメインの長径の最大値が大きすぎると炭素材粒子が鱗片状になりやすく充電時の電極膨張を十分抑制できない。
[背景技術]にて述べた特許文献1,2は、本発明のような非水系二次電池の放電容量と電極膨張抑制の両立については着目しておらず、また、配向パラメータ強度比や炭素材粒子の結晶ドメインの長径の最大値についても着目していない。このような文献に記載の従来の黒鉛負極材料は、負極粒子内の結晶が同一方向に並び易いため、高い放電容量は達成することができても、配向性をある範囲(本発明で規定される配向パラメータ強度比)に制御して電極膨張抑制を同時に達成することができなかった。
電極膨張抑制の観点から、偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均は、好ましくは8μm以上、より好ましく10μm以上、特に好ましくは13μm以上であり、好ましくは16.5μm以下、より好ましくは16μm以下、更に好ましくは15.5μm以下である。
なお、偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均を測定する具体的な手順は、次の通りである。
・偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均の測定方法
(イ)偏向顕微鏡観察用の試料作製方法
本発明の炭素材とエポキシ樹脂をテフロン板上で混合する。具体的には、テフロン板上に、サンプル(炭素材の粉体)と、サンプルとほぼ同体積の熱硬化性エポキシ樹脂(商品名:G2 販売会社:日本電子株式会社)を載せ、ガラス棒を用いて、よく混合する。混合により混合物中に気泡が含まれてしまうため、気泡を取り除くことを目的として1〜2分程度の真空脱気を行い、混合物を得る。
そして得られた混合物を型に流し込んで硬化させて成形体を得て、これを偏光顕微鏡観察しやすくするために鏡面処理するが、鏡面処理は回転研磨機やクロスセクションポリッシャーなどにより行う。
回転研磨機を用いる場合は、得られた混合物を直径10mm、高さ1mmのシリコーン樹脂製の型に流し込み、120℃、40分で硬化させ、成形体を得る。成形体表面(測定面)の研磨は、回転式の研磨機の回転面に測定面を押しつけるようにすることで行う。用いる耐水研磨紙の番手は、#400、#800、#2000の順であり、最後はアルミナ(商品名:バイカロックス タイプ0.3CR,粒子径0.3μm,製造会社:バイコウスキー,販売会社:バイコウスキージャパン)を用いて鏡面研磨する。
一方クロスセクションポリッシャーを用いる場合は、得られた混合物を10mm(幅)×10mm(奥行き)×1mm(高さ)のシリコーン樹脂製の型に流し込み、120℃、40分で硬化させ、成形体を得る。成形体(測定面)の研磨は、ハンディラップ(日本電子株式会社製)を用いて行う。耐水研磨紙の番手は、#400、#800の順であり、最後はクロスセクションポリッシャー(SM−09010 日本電子株式会社製)を用いて鏡面を得る。
(ロ)偏光顕微鏡像解析方法
成形体を鏡面処理して得られた鏡面について、HOZAN社製L−825USBカメラをアタッチメントで偏光顕微鏡に接続し撮影する。データ解析にはSHIMAZU社製画像解析ソフト MOTIC IMAGES PLUS2.1Sを用いることができる。
成形体の鏡面を撮影した画像中には、鏡面処理を受けた炭素材粒子の断面の像が複数含まれているので、この中から任意に20粒子を選択する。そして選択された各粒子について、結晶ドメインの長径の最大値を測定する。得られた20個の長径の最大値の平均を算出する。
なお、結晶ドメインの長径の最大値の測定は、以下のようにして行う。図1は後述する実施例1で使用した炭素材の粒子の偏光顕微鏡画像であるが、結晶の向きにより、ブルー、イエロー、マゼンダなどに偏光している。連続して存在する同じ色の部分を1つの結晶ドメインとし、粒子内で最も長径が大きいものの値を結晶ドメインの長径の最大値とする。図1では結晶ドメインの長径の最大値は14.9μmであると測定できる。
また、本発明の炭素材は以下のような特性を持つことが好ましい。
(a)炭素材のX線パラメータ
本発明の炭素材の、広角X線回折法により測定した002面の面間隔(d002)は、通常0.345nm以下、好ましくは0.341nm以下、より好ましくは0.337nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、非水系二次電池とした場合に初期不可逆容量が増加する場合がある。一方、面間隔(d002)の下限は、理論的限界として通常0.3354nmである。
また、本発明の炭素材の結晶子サイズ(Lc004)は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、特に好ましくは35nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、非水系二次電池の放電容量が低下する傾向がある。なお、Lcの下限は黒鉛の理論値である。
上記のX線回折により測定した面間隔d002及び結晶子の大きさLc004としては、炭素材料学会の学振法に従って測定される値を用いることができる。なお、学振法においては、100nm(1000Å)以上の値は区別されず、すべて「>1000(Å)」と記述される。
(b)炭素材の体積基準平均粒径(d50
本発明の炭素材の体積基準の平均粒径d50は通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは7μm以上である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、非水系二次電池の初期効率が低下する傾向があり、平均粒径d50が大きすぎると、本発明の炭素材を含むスラリーを使用して塗布により電極を製造する時に塗工むらが生じ易い傾向がある。
体積基準の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、LA−700、堀場製作所社製)を用いて、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2体積%水溶液(約1ml)を炭素材に混合し、イオン交換水を分散媒として測定した値を用いることができる。体積基準の粒度分布50%粒径(d50)から平均粒径(メジアン径)を測定する。
(c)炭素材のアスペクト比
本発明の炭素材のアスペクト比は、通常1以上であり、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。
アスペクト比が大きすぎると、電極とした際に炭素材粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
アスペクト比は、3次元的に観察したときの炭素材粒子の最長となる径Aと、それと直交する径のうち最短となる径Bとしたとき、A/Bであらわされる。前記炭素材粒子の観察は、拡大観察ができる走査型電子顕微鏡で行う。厚さ50μm以下の金属板の端面に固定した任意の50個の炭素材粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、A、Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
(d)炭素材のBET比表面積(SA)
本発明の炭素材のBET法により測定した比表面積は通常0.2m/g以上、好ましくは0.3m/g以上、より好ましくは0.6m/g以上、更に好ましくは0.8m/g以上、特に好ましくは1m/g以上である。また、通常15m/g以下、好ましくは10m/g以下、より好ましくは6m/g以下、更に好ましくは5m/g以下、特に好ましくは4m/g以下である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい非水系二次電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとリチウムイオンが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
BET法で測定した比表面積としては、比表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、測定対象(ここでは本発明の炭素材)に対して、窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行った後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3になるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET6点法によって測定した値を用いることができる。
(e)炭素材のタップ密度
本発明の炭素材のタップ密度は、通常0.5g/cm以上であり、0.7g/cm以上が好ましく、0.9g/cm以上がより好ましく、1.1g/cm以上が更に好ましい。また、通常1.8g/cm以下であり、1.7g/cm以下が好ましく、1.6g/cm以下がより好ましい。
タップ密度が0.5g/cmより小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のリチウムイオンの移動性が落ちることで、非水系二次電池の急速充放電特性が低下する傾向がある。
タップ密度の測定方法は、以下の通りである。目開き300μmの篩を使用し、20cm3のタッピングセルに本発明の炭素材を落下させてセルを満杯に充填した後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いてストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時のタッピング密度を測定する。
(f)炭素材の円形度
本発明の炭素材の円形度は、通常0.75以上、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上である。また、円形度は通常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。円形度が小さすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。円形度が大きすぎると導電パス切れ抑制効果の低減、サイクル特性の低下を招く傾向がある。
円形度は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シメックスインダストリアル社製FPIA)を用いて、測定対象(ここでは本発明の炭素材)0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2体積%水溶液50mLに混合し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径3〜40μmの範囲の粒子について測定した以下の式で与えられる円形度の平均値をいう。
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長
(g)炭素材のラマンR値
本発明の炭素材のラマンR値は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.05以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
ラマンスペクトルはラマン分光器で測定できる。具体的には、測定対象(本発明の炭素材)粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。ラマンR値は、1580cm−1付近のピークPの強度Iと、1360cm−1付近のピークPの強度Iとを測定し、その強度比(R=I/I)と定義する。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :532nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
<炭素材の製造方法>
本発明の炭素材の製造方法は、上記で説明した(1)及び(2)の要件を満たす炭素材が製造できる限り特に限定されないが、例えば、本発明の炭素材は、以下に挙げる製造方法によって得ることができる。
(出発材料)
本発明の炭素材の出発材料としては、ピッチ原料を用いる。なお、本明細書において「ピッチ原料」とは、ピッチ及びそれに準ずるものであり、熱処理などを行なうことによって黒鉛化することができるものをいう。
具体的なピッチ原料の例としては、石油系重質油、石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油などが挙げられる。
前記石油系重質油としては、原油、ナフサなどの熱分解時に副生するエチレンタール等の分解系重質油などが好ましく、
前記石炭系重質油としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、乾留液化油等が好ましく、
前記直流系重質油としては、常圧残油、減圧残油等が好ましく、
前記分解系石油重質油としては、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタールなどが好ましい。
これらの中でも石油系重質油がランダムで均一な結晶成長が起こりやすく、より好ましい。これらのピッチ原料は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(熱処理による原料の調製)
まず、選択したピッチ原料を出発材料として用いて、熱処理を施し、黒鉛結晶の前駆体であるバルクメソフェーズ(熱処理した黒鉛結晶前駆体)を得る。このバルクメソフェーズが本発明の炭素材の製造原料となる。
そして前記バルクメソフェーズを、下記に説明するとおり粉砕して、その後必要に応じて焼成等の再熱処理を行うが、この際に、バルクメソフェーズの一部又は全部が溶融する。ここで、バルクメソフェーズを調製するための熱処理によって揮発分の含量を調整しておくことにより、その溶融状態を適切に制御することができる。なお、バルクメソフェーズに含まれる揮発分としては、通常、水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。
バルクメソフェーズを得るための熱処理の際の温度条件は、好ましくは400〜600℃である。熱処理の温度が400℃未満であると揮発分が多くなるため、大気中で安全にバルクメソフェーズの粉砕が行い難くなる一方で、600℃を超えると黒鉛結晶が過度に発達してしまい、高タップ密度の炭素材を得ることが困難となる恐れがある。
また、熱処理を行なう時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは10〜24時間である。熱処理の時間が1時間未満であると不均一なバルクメソフェーズとなり不適切である一方で、48時間を超えると生産性が良好ではなくなり、処理費用が高くなり、製造上難しい。
なお、熱処理の温度及び累積時間が上記の範囲内であれば、複数回に分けて熱処理を行なってもよい。
熱処理は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、ピッチ原料から発生する揮発分雰囲気下で行うことが好ましい。
熱処理に用いる装置に特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉、オートクレーブ等の反応槽、コーカー(コークス製造の熱処理槽)などを用いることができる。熱処理時には、必要に応じて炉内等で攪拌を行なってもよい。
(バルクメソフェーズの焼成時の質量残存率)
本発明の炭素材の原料となるバルクメソフェーズは、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率が通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であり、通常96%以下、好ましくは92%以下である。上記範囲内であれば粉砕時のダメージが小さく、簡易的に粉砕が可能であるため好ましい。
なお、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率の測定は、焼成前のバルクメソフェーズの質量に対する焼成後のバルクメソフェーズの質量の比(以下の式)から算出することができる。
常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率[%]=(焼成後のバルクメソフェーズの質量)/(焼成前のバルクメソフェーズの質量)×100(%)
(バルクメソフェーズの焼成時の硫黄量及びニッケル量の比率)
本発明の炭素材の原料となるバルクメソフェーズは、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時、それに含まれる硫黄量(S)に対するニッケル量(Ni)の比率(Ni/S×100(%))が、通常0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、更に好ましくは3%以上であり、また通常10%以下、より好ましくは5%以下である。
硫黄はコークスの不純物の主成分であり、黒鉛化を阻害する物質である。一方ニッケルは黒鉛化を促進する物質であると考えられている。1000℃で焼成した時のバルクメソフェーズ中の硫黄量に対するニッケル量の比率が上記範囲内であれば、結晶ドメインの長軸方向の成長を適度に阻害するので、上記要件(1)及び(2)を満たす、高容量かつ電極膨張を抑制した非水系二次電池を与えることができる、本発明の炭素材の製造が可能となる。このように不純物(S及びNi)量が適切に制御されたバルクメソフェーズを使用することが、本発明の炭素材の製造において重要である。
硫黄量に対するニッケル量の比率が大きすぎると、黒鉛化時に灰分の生成が多くなり、炭素材の生産性が損なわれる恐れがある。一方前記比率が小さすぎると、結晶化が阻害され、高容量を達成することができない。
1000℃で焼成したバルクメソフェーズの硫黄量及びニッケル量は、蛍光X線分析(XRF)により求めることができる。具体的には、測定対象となる試料(1000℃で焼成したバルクメソフェーズ)5gとステアリン酸1gとエタノール600μlとを混合し、80℃で乾燥した後、XRFに適した成型体にする。これを測定サンプルとして、RIGAKU社製蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII)を用いて蛍光X線分析測定を行い、付属のSQXソフトウェアを用いて不純物量(ppm)を算出し、硫黄の測定量(ppm)とニッケルの測定量(ppm)を求め、これらから硫黄量に対するニッケル量の比率を算出する。なお、測定限界以下の場合は量は0ppmとする。
なお、1000℃での焼成は、下記に説明する粉砕工程を経たバルクメソフェーズに対して行うものとする。
(粉砕)
次に、バルクメソフェーズを粉砕する。1000℃で焼成した時の重量残存率を上記のように70〜96質量%に制御した状態で粉砕することにより、粉砕時のダメージを低減し、さらに粉砕後の黒鉛化時に、揮発分の一部が黒鉛化して欠陥を修復できるので好ましい。
なお、前記粉砕の手法としては通常の粉砕を採用することができるが、それは、物質に力を加えて、その大きさを減少させ、物質の粒径や粒度分布等を調節する操作をいう。
粉砕は、バルクメソフェーズの粒度が、好ましくは1〜2000μm、より好ましくは5〜1000μm、中でも好ましくは5〜500μm、更に好ましくは5〜200μm、特に好ましくは5〜50μmとなるように行なう。上記粒度が1μm未満では、粉砕中若しくは粉砕後にバルクメソフェーズの表面が空気と触れることで酸化し、黒鉛化過程での結晶性の向上が阻害され、黒鉛化後の非水系二次電池における放電容量の低下を招くことがある。
一方、上記粒度が大きすぎると、電極の形成の際に集電体上に炭素材を含むスラリーを塗布することが難しい。
なお、粒度とは、例えばレーザー回折/散乱法粒度分布測定による体積基準の粒度分布から得られる50%粒径(d50)をいう。
粉砕に用いる装置は、特に制限はないが、その例として、粗粉砕機としてはジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはターボミル、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
(焼成)
必要に応じて、粉砕処理されたバルクメソフェーズを焼成する。本明細書においては、以下、焼成されたバルクメソフェーズを黒鉛結晶前駆体という。焼成は、バルクメソフェーズの有機物由来の揮発分を除去するために行う。
焼成を行なう際の温度は、好ましくは800〜1800℃、より好ましくは1000〜1500℃である。温度が800℃未満であると、揮発分が除去され難くなる。一方、温度が1800℃を超えると、焼成設備に費用が掛かる場合がある。
焼成を行う時に、温度を上記範囲に保持する保持時間は特に制限されないが、通常30分以上72時間以下である。
焼成は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、バルクメソフェーズから発生するガスによる非酸化性雰囲気下で行なう。また、製造工程の簡略化のため、焼成工程を組み込まずに、バルクメソフェーズに対して直接、次に説明する黒鉛化を行なうことも可能である。
焼成に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン等を用いることができる。
なお、バルクメソフェーズの1000℃で焼成した時の質量残存率は、本工程において測定することができる。
(黒鉛化)
粉砕されたバルクメソフェーズ、又はそれに対して以上説明した焼成を行って得られた黒鉛結晶前駆体に対して、次に黒鉛化を行うことで、本発明の炭素材を得ることができる。
黒鉛化は、電池評価における放電容量を大きくするべく、炭素材の結晶性を向上させるために行う。
黒鉛化を行なう際の温度は、好ましくは2000〜3200℃、より好ましくは3000〜3200℃である。黒鉛化の温度が3200℃を超えると黒鉛の昇華量が多くなり易い。また、黒鉛化の温度が2000℃未満であると非水系二次電池の可逆容量が小さくなる虞があり、高容量な電池を作り難い場合がある。
黒鉛化を行なう時の前記の温度の保持時間は特に制限されないが、通常1分よりも長い時間であり、そして72時間以下である。
黒鉛化は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、焼成した黒鉛結晶前駆体から発生するガスによる非酸化性雰囲気下や炭素粉に黒鉛結晶前駆体を埋め込んだ状態で行なう。
黒鉛化に使用する装置としては特に制限はないが、その例として、直接通電炉、アチソン炉、間接通電式として抵抗加熱炉、誘導加熱炉等が挙げられる。
なお、黒鉛化を行う時、若しくはそれ以前の工程、即ち、ピッチ原料の熱処理から焼成までの工程において、Si、B、Ni等の黒鉛化触媒を材料(ピッチ原料又はバルクメソフェーズ)の中に組み込むか、材料の表面に前記黒鉛化触媒を接触させてもよい。
(その他の処理)
その他、発明の効果が妨げられない限りにおいて、本発明の炭素材の製造において、上記の各処理に加え、再分級処理等の各種の処理を行なうことができる。再分級処理は、焼成後又は黒鉛化処理後の、黒鉛結晶前駆体又は炭素材の粒度を目的の粒径にするべく、粗粉や微粉を除去するためのものである。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い、
乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)、湿式篩い分け、機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
〔本発明の炭素材と他の炭素材との混合〕
本発明の炭素材(これを炭素材粉末(A)と呼ぶ場合がある)は、このまま単独で負極材料として用いることができる。また、物性の数値が異なる、二種以上の炭素材粉末(A)を任意の比率で任意に組み合わせ用いてもよい。更には、この負極材料、即ち炭素材粉末(A)一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上の負極材料(B)(炭素材粉末(A)とは形状又は物性の異なる炭素材料)と混合し、これを負極材料として用いてもよい。
炭素材粉末(A)に負極材料(B)を混合する場合、炭素材粉末(A)及び負極材料(B)の総量に対する負極材料(B)の混合割合は、好ましくは0.1〜50.0質量%、より好ましくは1.0〜40.0質量%の範囲である。負極材料(B)の混合割合が0.1質量%未満であると、負極材料(B)を添加した効果が現れ難くなる。一方、50.0質量%を超えると、炭素材粉末(A)の特性が損なわれ、本発明の効果が現われ難くなる。
負極材料(B)としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素被覆黒鉛、樹脂被覆黒鉛、非晶質炭素、Si系材料などのLiを充放電可能な物質の中から選ばれる材料を用いる。これらの材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率で任意に組み合わせて用いてもよい。
前記天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛や球形化した黒鉛を用いることができる。天然黒鉛の体積基準平均粒径は、好ましくは8〜60μm、より好ましくは12〜40μmの範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、好ましくは4.0〜7.0m/g、より好ましくは4.5〜5.5m/gである。
前記人造黒鉛としては、例えば、コークス粉や天然黒鉛をバインダーで複合化した粒子、単一の黒鉛前駆体粒子を粉状のまま焼成、黒鉛化した粒子等を用いることができる。
前記非晶質炭素被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質炭素前駆体を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質をCVD法により被覆した粒子を用いることができる。
前記樹脂被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に高分子材料を被覆、乾燥して得た粒子等を用いることができる。
前記非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素前駆体を不融化処理し焼成した粒子を用いることができる。
前記Si系材料としては、Si微粒子、SiOx粒子、Si−C複合粒子などを用いることができる
炭素材粉末(A)に負極材料(B)を混合するに際して、負極材料(B)の選択に特に制限は無いが、例えば、混合することによって、導電性の向上による非水系二次電池のサイクル特性の向上や充電受入性の向上、不可逆容量の低減、また、プレス性の向上ができるような負極材料(B)を場合に応じて選択することが可能である。
炭素材粉末(A)と負極材料(B)との混合に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬型混合機、
固定型混合機の場合:らせん型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pugmill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
[負極]
本発明の炭素材(場合によりこれに上記負極材料(B)を混合してもよいことは、上述の通りである)を活物質として含有する活物質層を集電体上に形成することにより、非水系二次電池用負極を作製することができる。
負極の製造方法は特に制限されず、本発明の炭素材を使用して、常法にしたがって製造すればよい。例えば、炭素材に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
このようにして得られる活物質層の密度は、好ましくは1.30g/cm3以上、より好ましくは1.40g/cm3以上、更に好ましくは1.60g/cm3以上とすると、非水系二次電池の容量が増加するので好ましい。なお、活物質層とは集電体上の活物質、結着剤、導電剤などよりなる層をいい、その密度とは非水系二次電池に組立てる時点での密度をいう。
前記結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体等が使用可能である。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で任意に組み合わせて用いてもよい。
前記増粘剤としては公知のものを任意に選択して用いることができるが、例えば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、酸化スターチ、リン酸化スターチ及びガゼイン等が使用可能である。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で任意に組み合わせて用いてもよい。
前記導電材としては、銅又はニッケル等の金属材料;グラファイト又はカーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で任意に組み合わせて用いてもよい。
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケル又はステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工しやすいという点及びコストの点から銅箔が好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で任意に組み合わせて用いてもよい。
[非水系二次電池]
本発明の炭素材は、非水系二次電池の負極の材料として有用である。特に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水系二次電池において、前記負極として、上述した本発明の炭素材を活物質層中に有するものを用いることは、極めて有用である。
例えば、上記の方法にしたがって製造した、本発明の炭素材を活物質層中に有する負極と、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水系二次電池は、放電容量が大きく、また、充電時の電極膨張が小さいのでサイクル特性に優れている。さらに、前記非水系二次電池は、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、急速充放電容量が高く、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
このような非水系二次電池を構成する正極、電解質等の電池構成上必要な部材の選択については、特に制限されない。以下において、本発明の炭素材を用いた非水系二次電池を構成する部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
正極には、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などのリチウムを吸蔵・放出可能な材料を使用することができる。具体的には、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24及びこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb34、Mo34、CoS2、V25、P25、CrO3、V33、TeO2、GeO2等を用いることができる。正極の製造方法は特に制限されず、上記の負極の製造方法と同様の方法により製造することができる。
正極集電体には、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いることが好ましい。弁金属としては、IIIa、IVa、Va、IIIb族(3、4、5、13族)に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高く、望ましい。
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。なおここで電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
前記電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23からなる群から選択される1以上の化合物を用いることが好ましい。
前記非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。
以上説明した電解液において、溶質及び非水系溶媒はそれぞれ1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも非水系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有するものを使用することが好ましい。
また、上記固体電解質は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状または、ゴム状、或いは固体シート状にしたものである。
前記有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
非水系二次電池に使用されるセパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであることが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択することが好ましい。そのような材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられ、これらを用いて、上記電解液を含浸させることができる。
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水系二次電池を製造する方法は、特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
また、非水系二次電池には、電解液、負極、正極の他に、必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケースなどを用いることもできる。
本発明の非水系二次電池の製造方法の例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
非水系二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。本発明の炭素材からは、電極膨張が抑制された非水系二次電池が得られるので、前記のコインタイプなど、積層型の電池において、特に顕著に本発明の効果が奏される。
[非水系二次電池の特性]
次に、本発明の炭素材を活物質として用いて得られる、本発明の非水系二次電池の特性について、以下に説明する。
<放電容量>
本発明の非水系二次電池の放電容量は、通常200mAh/g以上、好ましくは230mAh/g以上である。放電容量がこの範囲を下回ると、電池容量の低下が生じることがある。また、放電容量は高ければ高い方が好ましいが、その上限は通常365mAh/g程度である。
具体的な放電容量の測定方法について特に制限はないが、標準的な測定方法を示すと、次の通りである。
まず本発明の炭素材を用いて負極を作製する。炭素材と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液と、バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)水溶液とを、乾燥後の混合物全体に対してCMC及びSBRの質量割合がそれぞれ1質量%になるように混合撹拌してスラリーとする。ドクターブレードを用いて、集電体である銅箔上にこのスラリーを塗布し、乾燥して、集電体上に活物質層を形成することにより、負極を作製する。活物質層の目付は6〜12mg/cm3とすることが好ましい。また、電極密度は1.30g/cm3〜1.95g/cm3とすることが好ましい。
・放電容量測定
放電容量の評価は、作製した負極について、対極に金属リチウムを用いた2極式コインセルを作製し、その充放電試験をすることにより行なう。
2極式コインセルの電解液は任意であるが、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比でDEC/EC=1/1となるように混合した混合液、又は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比でEMC/EC=1/1となるように混合した混合液を用いることができる。
電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、この用途に用い得ることが知られている公知のリチウム塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiClO、LiBrO、LiClOなどの過ハロゲン酸塩、LiPF、LiBF、LiAsFなどの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCSOなどのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CFSONLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられ、これらの中でもLiClO、LiPF、LiBF、が好ましい。
リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常0.5M以上2.0M以下の範囲である。
また、2極式コインセルに用いるセパレータも任意であるが、例えば、厚さ15μm〜35μmのポリエチレンシートを用いることができる。
こうして作製した2極式コインセルを用いて充放電試験を行ない、放電容量を求める。
具体的には、0.2mA/cm2の電流密度で、リチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.02mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.4mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう、という充放電サイクルを3サイクル繰り返し、3サイクル目の放電値を放電容量とする。
<電極の膨張>
本発明の非水系二次電池は、本発明の炭素材を使用して得られるものであるので、充電時の電極(負極)の膨張が有効に抑制されている。具体的には、以下に説明する方法で測定される充電電極膨張率が、通常130%以下であり、好ましくは120%以下である。
・充電時極板膨れ測定
上記「放電容量測定」にて説明したのと同様の方法で作成した2極式コインセルを用いて、上記と同様の充放電サイクルを繰り返し、4サイクル目に300mAh/gまで充電した非水系二次電池を作成する。その電池をAr雰囲気下で解体し電極を取り出す。取り出した電極をジメチルエーテルを用いて洗浄し、デジマチックインジケーターを用いてその厚みを測定する。測定した厚みから集電体の厚みを差し引いた厚みを充電電極の厚み、コインセルを組む前の電極の厚みから集電体の厚みを差し引いた値を充電前電極の厚みとする。これらの値と以下の式を用いて、充電時の電極の膨張量を示す、充電電極膨張率を求める。
充電電極膨張率[%]=(充電電極の厚み)/(充電前電極の厚み)×100
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。なお、各種物性値の測定・評価は、上述した方法により行った。
[実施例1]
石油系バルクメソフェーズAを中間粉砕機(セイシン企業社製オリエントミル)を用いて粉砕後、更に粉砕機(アーステクニカ社製クリプトロン)を用いて粉砕し、体積基準の平均粒径16μmの微細化したバルクメソフェーズ粉末Aを得た。
得られた粉末を容器に入れ電気炉にて窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成して黒鉛結晶前駆体Aを得た。黒鉛結晶前駆体Aにおける、硫黄量に対するニッケル量の割合は3.7%であった。また、バルクメソフェーズ粉末Aの、常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した(以下、「1000℃で焼成した」)時の質量残存率は89%であった。
焼成後更に、焼成した粉末を黒鉛坩堝に移し替え、超高温炉(中外炉工業社製)を用いて3000℃で1時間かけて黒鉛化し、炭素材Aを得た。
この炭素材Aを用いて、配向パラメータの強度比I(110)/I(004)及び偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均を求めた。偏光顕微鏡観察で撮影された、炭素材1粒子の鏡面処理した断面の画像を図1に示す。図1のカラー画像においては、マゼンダ、イエロー、ブルーに偏光した部分があり、これら1つ1つを結晶ドメインとし、その中で長径の最大値は14.9μmであることがわかった。このような測定を20粒子について行い、その平均値を求めた。
また、前記炭素材Aを用いて非水系二次電池(2極式コインセル)を作成し、放電容量及び電極の膨張について評価を実施した。以上の結果を下記表1に示した。
[比較例1]
実施例1のバルクメソフェーズAをバルクメソフェーズB(バルクメソフェーズAよりも芳香族性が高いピッチ原料を用い製造されたバルクメソフェーズで、バルクメソフェーズAよりも結晶ドメインが発達し易いもの)に変更した以外は実施例1と同様の操作を実施して炭素材Bを得た。黒鉛結晶前駆体Bの硫黄量に対するニッケル量の割合は0.2%であり、バルクメソフェーズ粉末Bの平均粒径は17μmであり、1000℃で焼成した時の質量残存率は93%であった。
この炭素材Bを用いて、実施例1と同様に種々の評価を実施した。結果を下記表1に示した。
[比較例2]
実施例1のバルクメソフェーズAをバルクメソフェーズC(バルクメソフェーズAよりも芳香族性が高いピッチ原料を用い製造されたバルクメソフェーズであるが、結晶阻害物質をバルクメソフェーズBよりも多く含有しており、結晶ドメインが発達し難いもの)に変更した以外は実施例1と同様の操作を実施して炭素材Cを得た。黒鉛結晶前駆体Cの硫黄量に対するニッケル量の割合は0.1%であり、バルクメソフェーズ粉末Cの平均粒径は16μmであり、1000℃で焼成した時の質量残存率は93%であった。
この炭素材Cを用いて、実施例1と同様に種々の評価を実施した。結果を下記表1に示した。
[比較例3]
実施例1のバルクメソフェーズAをバルクメソフェーズD(バルクメソフェーズAよりも芳香族性が高いピッチ原料を用い製造されたバルクメソフェーズであるが、結晶阻害物質をバルクメソフェーズCよりも多く含有しており、結晶ドメインが発達し難いもの)に変更した以外は実施例1と同様の操作を実施して炭素材Dを得た。黒鉛結晶前駆体Dの硫黄量に対するニッケル量の割合は0.1%であり、バルクメソフェーズ粉末Dの平均粒径は16μmであり、1000℃で焼成した時の質量残存率は94%であった。
この炭素材Dを用いて、実施例1と同様に種々の評価を実施した。結果を下記表1に示した。
表1に示すように、実施例1と比較例1(本発明の炭素材が満たす(1)及び(2)の要件をともに満たさない)及び2(要件(2)は満たすが(1)は満たさない)とを比較すると、放電容量は同等にもかかわらず充電時の電極膨張率が実施例1のほうが小さいことがわかる。また実施例1と比較例3(要件(1)は満たすが(2)は満たさない)を比較すると、充電時の電極膨張率が同等にもかかわらず放電容量が実施例1の方が大きいことがわかる。
以上の結果より、配向パラメータの強度比と偏光顕微鏡観察による結晶ドメインの長径の最大値の平均が本発明で規定される範囲を満たす実施例1は、その他の比較例1〜3と比較し、放電容量が高く、充電時の電極膨張率が小さい有用な負極材であることが確認された。
本発明は、放電容量が高く、且つ、充電時の電極膨張が小さい、高性能の非水系二次電池を得ることが可能な炭素材を与えるものであり、この負極材料は効率よく安定して製造することができるため、産業上有用である。

Claims (7)

  1. 黒鉛を含み、次の要件(1)及び(2)を満たす非水系二次電池負極用炭素材:
    (1)下記条件で作成された電極において、活物質層を下記条件で広角X線回折測定して得られる格子面(110)及び(004)に対応するピークの強度比から算出される配向パラメータの強度比I(110)/I(004)が0.15以上である。
    (イ)電極の形成:
    炭素材と、バインダー樹脂としてSBR(スチレン・ブタジエンゴム)水溶液と、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)水溶液とを、黒鉛材料(炭素材)とCMCとSBRとの混合物の乾燥後の総質量に対して、CMC及びSBRの質量割合がそれぞれ1質量%になるように混合撹拌し、スラリーとする。
    ドクターブレードを用いて18μm厚さの金属製集電体(銅箔)上に前記スラリーを塗布する。塗布厚さは、乾燥後の電極目付(銅箔を除く)が9mg/cm になるようにギャップを選択する。この電極を110℃で乾燥した後、電極密度(銅箔を除く活物質層の部分の密度)が1.35±0.03g/cm になるようにプレスを行なう。
    (ロ)配向パラメータ強度比I(110)/I(004)の測定
    プレス後の電極について、広角X線回折により集電体上の活物質層の炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)を測定する。X線回折により炭素材の(110)面と(004)面とのチャートを測定し、測定したチャートについて、プロファイル関数として非対称ピアソンVII ピーク関数を用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)面と(004)面のピークの積分強度を算出する。
    得られた積分強度から、(110)面の積分強度/(004)面の積分強度で表わされる比率を算出し、これを炭素材の配向パラメータ強度比I(110)/I(004)と定義する。
    X線回折測定条件は次のとおりである。また、下記記載において2θは回折角を示す。
    ターゲット: Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
    スリット : 発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
    測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
    (110)面 : 76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
    (004)面 : 53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
    試料調製 : 硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
    2)偏光顕微鏡で、前記炭素材の任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて、鏡面処理した断面を観察して各炭素材粒子の結晶ドメインの長径の最大値を求めたとき、その最大値の平均が6μm以上17μm以下である。
  2. 請求項1に記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法であって、
    ルクメソフェーズを原料とする、非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
  3. 常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率が80〜92%であるバルクメソフェーズを原料とする、請求項2に記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
  4. 常温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の硫黄量(S)に対するニッケル量(Ni)の比率(Ni/S×100(%))が0.3%以上であるバルクメソフェーズを原料とする、請求項2または3に記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
  5. 請求項1に記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法であって、
    温から1000℃まで昇温し、更に1000℃で1時間保持して焼成した時の質量残存率が80〜92%であるバルクメソフェーズを粉砕する工程と、
    粉砕されたバルクメソフェーズを黒鉛化する工程とを有する、非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
  6. 前記粉砕工程の後かつ前記黒鉛化工程の前に、粉砕されたバルクメソフェーズを焼成する工程を有する、請求項5に記載の非水系二次電池負極用炭素材の製造方法。
  7. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えた非水系二次電池であって、該負極が、集電体と、該集電体上に形成された請求項に記載の非水系二次電池負極用炭素材を含有する活物質層とを備える、非水系二次電池。
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