以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置MPは、図1に示すように、車両Vのシート1に着座した乗員Mの頭部Hを保護可能なエアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター10と、折り畳まれたエアバッグ20を収納する収納部位としてのケース8と、を備えて構成されている。
シート1は、座部2と、背もたれ部3と、を備えて構成され、背もたれ部3は、下部側の乗員Mの背中B側を受け止め可能な本体部4と、上端側の乗員頭部Hの背面(後面)Hb側を受け止め可能なヘッドレスト部5と、を備えて構成され、背もたれ部3の本体部4の上部側におけるヘッドレスト部5の下方の背面4a側に、ケース8を取り付ける取付ベース6が配設されている。
なお、シート1が搭載される車両Vは、自動走行可能なものである。そのため、乗員保護装置MPが作動して、膨張を完了させたエアバッグ20が視界を妨げるように乗員Mとしての運転者の頭部Hを覆っても、支障がない。さらに、乗員保護装置MPは、シート1の背もたれ部3に配設されていることから、乗員Mとしての運転者が、車両Vの走行方向と逆向きとなる向き、すなわち、フロントウインドシールドWSと反対側に向けてシート1に着座している状態で、乗員保護装置MPが作動しても、支障なく、膨張を完了させたエアバッグ20が、乗員Mとしての運転者の頭部Hを覆って、乗員頭部Hを受け止めて保護できることとなる。
また、明細書中の前後左右の方向の基準は、シート1の着座した乗員Mの頭部Hを中心として、正面Hf側を前とし、背面Hb側を後とし、左側面Hl側を左とし、右側面Hr側を右としている。
ケース8は、背もたれ部3の本体部4の背面4a側の上部位置で、取付ベース6に取り付けられ、上部側の開口8aを、膨張するエアバッグ20に押し開かれる蓋部9により、塞がれている。
インフレーター10(L,R)は、円柱状の本体11と、本体11の先端側に配設されて、作動時に膨張用ガスGを吐出するガス吐出部12と、を備え、ケース8の底壁部8bに取り付けられている(図1,10参照)。インフレーター10の底壁部8bへの取付は、本体11にボルトからなる取付部13が配設され、取付部13を底壁部8bに挿通させて、ナット止め(図示せず)することにより、インフレーター10が底壁部8bに取り付けられている。なお、インフレーター10は、実施形態の場合、2個使用されて、それぞれ、膨張完了時のエアバッグ20の後下端側に配置される円筒状の接続口部51(L,R)に対し、取付部13を突出させて挿入され、そして、取付部13を利用してケース8の底壁部8bに取り付けられる際、接続口部51L,51Rもケース8の底壁部8bに取付固定される。ちなみに、接続口部51L,51Rは、インフレーター10の本体11を挿入させた後、膨張用ガスの漏れを防止できるように、別途、図示しないクランプを利用して、本体11の外周面に巻き付け固定されている。各インフレーター10L,10Rの本体11には、本体11へ作動信号を入力させる所定の制御装置から延びる図示しないリード線が、結線されている。制御装置は、車両Vの衝突を検知した際に、若しくは、車両Vの衝突を予測した際に、作動信号を本体11へ出力する。
なお、エアバッグ20は、接続口部51L,51Rの他に、膨張完了時のエアバッグ20の後下端付近(後述する下縁部31d)の左右両縁が、底壁部8bにボルト止めされる2本ずつの連結ベルト60(図10参照)により、ケース8の底壁部8bに対して取付固定される。
エアバッグ20は、図1〜9,21に示すように、膨張完了形状として、ケース8から上方へ延びて乗員Mの頭部Hの背面Hb側、詳しくは、ヘッドレスト部5の背面5aから上方に延びるように配置される後カバー部21、後カバー部21の上端(上縁)21aから頭部Hの上方を覆って前方に延びる天井カバー部22、天井カバー部22の前端(前縁)22aから下方に延びて、頭部Hの正面Hf側に配置される前カバー部23、及び、後カバー部21と前カバー部23とを連結するように頭部Hの左右両側に配置される左カバー部24と右カバー部25、を備える底面側を開口させた略カップ状、詳しくは、底面側に、左右方向より前後方向を長くした略長方形状の開口20aを設けた略直方体形状としている。
さらに、このエアバッグ20は、膨張用ガスを流入させて膨張する部位の構成として、外周側の外側膨張部30と、内周側の内側膨張部53と、を備えて構成されている。
外側膨張部30は、後カバー部21を構成する後壁部31、天井カバー部22を構成する天井壁部32、前カバー部23の外表面側を構成する前壁部33、左カバー部24の外表面側を構成して、後壁部31と前壁部33とを連結する左側部34、及び、右カバー部25の外表面側を構成して、後壁部31と前壁部33とを連結する右側部35、を備えて構成されている。外側膨張部30は、膨張用ガスを流入させて、後壁部31、天井壁部32、前壁部33、左側部34、及び、右側部35を、乗員Mの頭部Hの周囲に略カップ状(詳しくは略直方体形状)に展開させ、かつ、そのカップ状の外形形状(直方体形状)を維持可能に膨張を完了させる構成としている。
内側膨張部53は、外側膨張部30に支持可能に外側膨張部30の内周側に配置されるとともに、頭部Hの正面Hf側から頭部Hの左右両側の左側面Hl側と右側面Hr側とを受け止め可能に膨張するように、構成されている。
外側膨張部30と内側膨張部53との膨張形態は、外側膨張部30が一次膨張部とし、内側膨張部53が二次膨張部として、内側膨張部53が、外側膨張部30より遅れて膨張を開始する構成としている。内側膨張部53の膨張開始タイミングは、膨張時の外側膨張部30が後壁部31、天井壁部32、前壁部33、左側部34、及び、右側部35を、頭部Hの周囲に略カップ状に展開させたタイミング以降として、設定されている。実施形態では、外側膨張部30が頭部Hの周囲に略カップ状に展開させたタイミングで、後述する流入口58から流入する膨張用ガスにより、直ちに膨張を開始するように設定されている。
また、内側膨張部53へ膨張用ガスを流入させる流入口58(L,R)は、膨張完了時の前端53a側に配設されて(図3〜5,7参照)、内側膨張部53は、外側膨張部30における前壁部33に配設される部位、詳しくは、後述する前下横杆部45と連通するように、配設されている。
さらに、実施形態の場合、内側膨張部53は、左右に分離された左右一対の支持膨張部54(L,R)から構成され、左右の支持膨張部54L,54Rが、それぞれ、乗員Mの胸部Cの上部Cu付近より上側の正面Hf,Cf側(胸部Cの正面Cf側だけで無く、頭部Hの正面Hf側も含む)を拘束可能な前側支持部55(L,R)と、前側支持部55L,55Rの上部から後方側に延びて、乗員Mの頭部Hの左右方向の側面(左側面Hlや右側面Hr)側を拘束可能な側方支持部56L,56Rと、を備えて構成されている(図7,9,21参照)。
左右の支持膨張部54L,54Rの前側支持部55L,55Rは、胸部Cの上部Cuの正面側の左右の片側ずつと、頭部Hの正面側の下部である顎Jaや頬Chの左右の片側ずつと、を受け止め可能に構成され、左右の前側支持部55L,55Rの上部から後方へ延びる側方支持部56L,56Rは、膨張完了時、側方支持部56Lが、頭部Hの正面側の下部である顎Jaや頬Chの左縁側から後方に延びて、左方側に移動する頭部Hを受け止め可能に、左肩Slの上方における頭部Hの左側面Hl側の側方に配置される。膨張完了時の側方支持部56Rは、頭部Hの正面側の下部である顎Jaや頬Chの右縁側から後方に延びて、右方側に移動する頭部Hを受け止め可能に、右肩Srの上方における頭部Hの右側面Hr側の側方に配置される。
支持膨張部54L,54Rは、それぞれ、前端54a(前側支持部55の前端でもある)の流入口58L,58Rを、前壁部33の膨張部位である前下横杆部45の左右両側付近に開口させて、前下横杆部45から膨張用ガスを流入させるように構成され、後端54b(側方支持部56の後端でもある)を後壁部31の左右両縁付近の上端側の非膨張部位に、詳しくは、後壁部31の左右上縁付近における左側部34や右側部35との連結部位に、結合させている。
なお、実施形態の場合、支持膨張部54L,54Rの前側支持部55L,55Rの下端は、標準男性(ダミーAM50)の胸部Cの上下方向の中央(みぞおち、あるいは、剣状突起の下端)付近まで延びるように、構成されている。
また、実施形態の外側膨張部30は、棒状に膨張するフレーム状膨張部38を備えて構成されている。フレーム状膨張部38は、図2〜6に示すように、後壁部31の左右両縁付近から左側部34と右側部35との外周縁側を経て、前壁部33の左右両縁の下端付近まで延びる略逆U字状とした左右の縦杆部39(L,R)と、左右の縦杆部39L,39Rを連結するように左右方向に沿って配置される複数の横杆部45,46,47と、を備えて構成され、縦杆部39L,39Rの後下端側から、膨張用ガスGを流入させるように、構成されている。
左右の縦杆部39L,39Rは、外側膨張部30の膨張完了時の状態で、後壁部31の左右両縁で上下方向に沿うように配置される後縦杆部40(L,R)と、後縦杆部40L,40Rのそれぞれの上端から前方側へ延びて、天井壁部32の左右両縁で前後方向に沿うように配置される上縦杆部41(L,R)と、上縦杆部41L,41Rのそれぞれの前端から下方側へ延びて、前壁部33の左右両縁で上下方向に沿うように配置される前縦杆部42(L,R)と、を備えて構成されている。
横杆部としては、外側膨張部30の膨張完了時の状態で、前壁部33の下縁33b側に配置される前下横杆部45、前壁部33の上縁33a側における天井壁部32の前縁32a側との交差部位に配置される前上横杆部46、及び、後壁部31の上縁31a側における天井壁部32の後縁32b側との交差部位に配置される後上横杆部47、を備えて構成されている。
さらに、実施形態の場合、横杆部としては、後壁部31の下縁31b側に配置される後下横杆部48を備えて構成されている。後下横杆部48の左右方向の中央には、縦杆部39L,39Rの後下端側から、すなわち、後縦杆部40L,40Rの下端側から、縦杆部39L,39R内へ膨張用ガスを流入可能に、膨張用ガスGの流入口50が配設されている。流入口50は、下方側で左右に二又状に分岐して、既述したように、インフレーター10L,10Rと接続させる接続口部51L,51Rを連通させている。
外側膨張部30のフレーム状膨張部38を除く非膨張部位としては、フレーム状膨張部38に囲まれた後シート部31c、天井シート部32c、及び、前シート部33cがある。後シート部31cは、後壁部31に配設されるもので、左右の後縦杆部40L,40Rの間における後上横杆部47と後下横杆部48とに囲まれて構成されている。天井シート部32cは、天井壁部32に配設されるもので、左右の上縦杆部41L,41Rの間における後上横杆部47と前上横杆部46とに囲まれて構成されている。前シート部33cは、前壁部33に配設されるもので、左右の前縦杆部42L,42Rの間における前上横杆部46と前下横杆部45とに囲まれて構成されている。
また、実施形態の場合、外側膨張部30の左側部34と右側部35とは、非膨張部位として、シート状に配設され、それぞれ、略半円形の上縁34a,35a側が、後壁部31、天井壁部32、及び、前壁部33の縦杆部39L,39Rの外縁側(各壁部31,32,33の左縁部31e,32d,33dと右縁部31f,32e,33e(図10参照))に結合されている。
また、後壁部31の後下横杆部48の下方の非膨張部位の下縁31b側の部位(後述する下縁部31d)には、左右両縁付近に、ケース8の底壁部8bに連結固定される連結ベルト60が、2本ずつ、結合されている(図10参照)。
エアバッグ20を構成するエアバッグ用基布66は、可撓性を有したポリアミド等の布帛等のシート材からなり、図10に示すように、外表側基布67、外裏側基布68、2枚ずつの横基布69(L,R),内外側基布70(L,R),内中側基布71(L,R)、及び、4本のベルト用基布74、から構成されている。外表側基布67は、外側膨張部30における後壁部31、天井壁部32、及び、前壁部33の外周側を形成する部位とし、外裏側基布68は、外側膨張部30における後壁部31、天井壁部32、及び、前壁部33の内周側を形成する部位としている。横基布69(L,R)は、外側膨張部30の左側部34と右側部35とをそれぞれ形成する部位としている。内外側基布70(L,R)は、一対の支持膨張部54L,54Rのそれぞれの左右方向の外側を形成する部位とし、内中側基布71(L,R)は、一対の支持膨張部54L,54Rのそれぞれの左右方向の内側を形成する部位としている。
これらのエアバッグ用基布66を使用したエアバッグ20の製造工程を簡単に説明すると、まず、外裏側基布68の左右の切欠き68aの前後方向に沿った縁68bに、それぞれ、内中側基布71L,71Rの先端側の流入口58L,58R用の縁71aを縫合し、また、外裏側基布68の左右の切欠き68aの左右方向に沿った縁68bに、内外側基布70L,70Rの先端側の流入口58L,58R用の縁70aを縫合する。ついで、支持膨張部54L,54Rを形成するように、内中側基布71Lと内外側基布70Lとの対応する外周縁相互と、内中側基布71Rと内外側基布70Rとの対応する外周縁相互とを、それぞれ、縫合する。
ついで、外表側基布67の裏面側に、外裏側基布68を重ねて、外表側基布67と外裏側基布68とのフレーム状膨張部38の外縁38a側相互や接続口部51L,51Rの外縁51a,51b側相互を縫合するとともに、フレーム状膨張部38の内縁38b,38c,38d側相互を縫合する。この時、切欠き68を塞ぐように、内外側基布70L,70Rの先端側の円弧状の縁70bと対応する外表側基布67の円弧状の縁67aとを相互に縫合する。これらの縫合により、外側膨張部30の後壁部31、天井壁部32、及び、前壁部33が形成される。また、支持膨張部54L,54Rが、流入口58L,58Rを連通させて、前壁部33の前下横杆部45に結合された状態となる。
ついで、ベルト用基布74を三つ折りし、かつ、縫合して形成した連結ベルト60を、外表側基布67と外裏側基布68とを縫合して形成された後壁部31における後下横杆部48の下方側となる下縁部31dに、縫合するとともに、外表側基布67と外裏側基布68とを縫合して形成された後壁部31、天井壁部32、前壁部33を曲げて、それらの左縁部31e,32d,33dと横基布69Lの円弧状の縁69aとを相互に縫合するとともに、それらの右縁部31f,32e,33eと横基布69Rの円弧状の縁69aとを相互に縫合する。また、この時、支持膨張部54Lの後端54bを、後壁部31に結合させるように、左縁部31eと横基布69Lの縁69aとの相互の縫合時に、共縫いし、同様に、支持膨張部54Rの後端54bを、後壁部31に結合させるように、右縁部31fと横基布69Rの縁69aとの相互の縫合時に、共縫いする。そして、これらの部位を縫合すれば、エアバッグ20を製造することができる。
このように製造したエアバッグ20は、図1,16に示すように、収納部位としてのケース8に収納可能な折畳完了体98に折り畳む。この折畳完了体98は、二つのロール折り部位85,86と二つの蛇腹折り部位88,95とを備えるように構成され、エアバッグ20からなる図11に示す初期折畳体77を、図12に示すロール折り工程と図14,15に示す蛇腹折り工程とにより、折り畳んで形成する。
なお、折畳工程に関しては、エアバッグ20の支持膨張部54L,54Rが、平らに展開されて、外側膨張部30の内周側における左側部34や右側部35の内周面側や前壁部33の左側部34側や右側部35側の内周面側に重なっており、エアバッグ20の略直方体形状に膨張した周壁を、一枚状の後カバー部21、天井カバー部22、前カバー部23、左カバー部24、及び、右カバー部25、から構成されているものとして、説明する。また、折畳工程での各カバー部の上下や前後の縁に関しては、エアバッグ20の膨張完了状態での配置位置を基準として、説明する。
初期折畳体77は、図11に示すように、前カバー部23に左右方向に沿って谷折りした横方向折目78を付け、かつ、左カバー部24と右カバー部25とに前後方向に沿うような縦方向折目79(L,R)を付けて、天井カバー部22と後カバー部21とを、開口20aに被せるように、平らに展開させることにより、形成されている。横方向折目78は、実施形態の場合、前カバー部23の下縁23bからの距離L1を、前カバー部23の上下方向の長さ寸法LF(図10参照)の2/3程度とした位置に、配置させている。
なお、前カバー部23は、左右両縁を左カバー部24や右カバー部と結合させていることから、初期折畳体77の形成時、左カバー部24と右カバー部25とに縦方向折目79を付けることに伴ない、下縁23b側の左右両縁23bl,23br(図2,3参照)を、左右方向の中央側に、接近させて、展開されることとなる。
ロール折り工程は、図12に示すように、二つのロール折り部位の第1ロール折り部85と第2ロール折り部86とを形成して、ロール折畳部84を形成する工程である。
第1ロール折り部85は、図11,図12のAに示すように、初期折畳体77における前カバー部23の下縁23b側を、前カバー部23の内周側に向けて、横方向折目78の折りを解消するように、横方向折目78の位置までロール折りして、形成される。
第2ロール折り部86は、第1ロール折り部85を形成した後、図12のBに示すように、初期折畳体77における前カバー部23の上縁23a側と天井カバー部22の前縁22a側とを重ねた状態で、前カバー部23の上縁23a側と天井カバー部22の前縁22a側との交差部位80を、天井カバー部22の外周側に向けて、横方向折目78の折りを解消するように、横方向折目78の位置までロール折りして、形成される。
ロール折り工程において、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86とを形成すれば、ロール折畳部84が形成される。
なお、蛇腹折り工程の前には、ロール折畳部84としては、ケース8に収納可能な左右方向の幅寸法となるように、ロール折り工程後のエアバッグ20の左右両縁を天井カバー部22の外表面側の中央側に折り返しておく(図12のB,図13のA参照)。
蛇腹折り工程は、図14,15に示すように、二つの蛇腹折り部位の第1蛇腹折り部88と第2蛇腹折り部95とを形成する工程である。
第1蛇腹折り部88は、図14のA,B,図15のAに示すように、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86とを並設させたロール折畳部84を、初期折畳体77の後カバー部21の上縁21a側に接近させるように、第2ロール折り部86から後カバー部21の上縁21a付近までの天井カバー部22を、左右方向に沿う複数の折目90を付けて、折り重ねて形成される。そして、ロール折畳部84に第1蛇腹折り部88を設けると、折畳集合体93が形成される。
また、実施形態の場合、この第1蛇腹折り部88は、車両搭載状態での乗員保護装置MPの作動時、ロール折畳部84の上端84aを車両Vの天井部RHに当接させるまで(図17のA参照)、前後で並んだ第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との並設状態を維持する分離抑制手段91を構成するように、折り畳まれている。
すなわち、第1蛇腹折り部88は、図13のBの二点鎖線に示すように、横方向折目78を解消した位置側、すなわち、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86とを連続的に包んだ前カバー部23の横方向折目78であった部位を除き、横方向折目78を解消した位置の反対側、すなわち、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との間から天井カバー部22が突出する側84bを中心として、その前側84c(図13のBでは下方側であるが図17のAの上端84aの部位を基準とすれば前側となる)と後側84d(図13のBでは上方側であるが図17のAの上端84aの部位を基準とすれば後側となる)とで、ロール折畳部84の周囲を包むように、第1蛇腹折り部88の折重部位88aを、ロール折畳部84に巻き付けることにより、構成されている。
さらに、第2蛇腹折り部95は、図15のBに示すように、ロール折畳部84と第1蛇腹折折り部88とからなる折畳集合体93を後カバー部21の下縁21b側に接近させるように、後カバー部21に左右方向に沿う複数の折目96を付けて、折り重ねることにより、形成されている。
なお、第1蛇腹折り部88と第2蛇腹折り部95との境界部位は、厳密に、後カバー部21の上縁21aの部位でなくとも、後カバー部21の上縁21aから後カバー部21の下縁21b側にずれたり、あるいは、後カバー部21の上縁21aから天井カバー部22の後縁22bを越えた前縁22a側にずれてもよい。
そして、折畳完了体98は、折畳集合体93の下面側に第2蛇腹折り部95を配設させて、形成されている。
このように折り畳んだ折畳完了体98は、取付部13を突出させてインフレーター10L,10Rを接続口部51L,51Rに挿入し、さらに、図示しないクランプを使用して、接続口部51L,51Rをインフレーター10L,10Rの本体11の外周面に巻き付け、接続口部51(L,R)にインフレーター10(L,R)を接続し、そして、エアバッグ20の膨張時に破断可能な折り崩れ防止用のラップ材で包めば、エアバッグ組付体を形成できる。さらに、ケース8の底壁部8bに対し、取付部13と連結ベルト60とをナット止めすれば、インフレーター10(L,R)、接続口部51(L,R)、及び、エアバッグ20の下縁部31dを、ケース8の底壁部8bに取付固定することができて、さらに、ケース8に蓋部9を取り付ければ、乗員保護装置MPを組み立てることができる。その後、インフレーター10(L,R)に所定の制御装置から延びる作動信号入力用のリード線を結線しつつ、ケース8を車両Vのシート1における取付ベース6に取り付ければ、乗員保護装置MPを車両Vに搭載することができる。
なお、実施形態の場合、エアバッグ20の折畳完了体98は、車両搭載状態で、膨張用ガスGを流入させて収納部位としてのケース8から上方へ突出する際、第1ロール折り部85を第2ロール折り部86の前方側に配置させた状態でロール折畳部84の上端84aを、車両Vの天井部RHに当接させるように(図17のA参照)、後カバー部21の下端21b側が収納部位としてのケース8の底壁部8bに連結され、かつ、第1蛇腹折り部88が、ロール折畳部84の周囲に折り重ねられているように、連結ベルト60の底壁部8bへの取付部60aからの後カバー部21の上縁21aまでの長さ寸法L2(図10参照)、第1蛇腹折り部88の折り畳んだ長さ寸法L3(図13参照)、第2蛇腹折り部95の折り畳んだ長さ寸法L4(図13参照)が、設定されている。
車両Vへ搭載された乗員保護装置MPが作動して、インフレーター10L,10Rが膨張用ガスGを吐出させれば、膨張用ガスGが、外側膨張部30のフレーム状膨張部38の後端側から前端側、すなわち、後カバー部21、天井カバー部22、及び、前カバー部23に順に流れようとして、図示しないラップ材を破断するとともに蓋部9を押し開きつつ、エアバッグ20を展開膨張させる。その際、図16のA,Bに示すように、まず、後カバー部21を折り畳んだ第2蛇腹折り部95が、折りを解消しようとすることから、第2蛇腹折り部95の折りの解消に伴ない、後カバー部21が、上方に延びるように、収納部位としてケース8から突出して、折畳集合体93を押し上げ、さらに、押し上げられた折畳集合体93は、図17のAに示すように、天井カバー部22の後カバー部21側における第1蛇腹折り部88も折りを解消しようとして、その第1蛇腹折り部88の折りの解消に伴ない、ロール折畳部84を上方から前方に押し出す。そして、ロール折畳部84が折りを解消しようとする際には、図17のBに示すように、前カバー部23より先に膨張用ガスGを流入させる天井カバー部22を有した第2ロール折り部86が、折りを解消しようとする。この第2ロール折り部86の折りの解消時には、前カバー部23への膨張用ガスGの流入が抑制された状態で、先に膨張用ガスGを流入された天井カバー部22がロール折りの巻きを解消する。その巻きの解消の挙動は、第2ロール折り部86が、前カバー部23の上縁23a側と天井カバー部22の前縁22a側とを重ねた状態における前カバー部23と天井カバー部22との交差部位80から、天井カバー部22の外周側で巻くロール折りであることから、天井カバー部22の第2ロール折り部86自体は、折りの解消時、後ろ上方向に巻きを解く挙動となる。但し、第2ロール折り部86の前カバー部23にも膨張用ガスGが流入すれば、天井カバー部22の巻きの解きに伴なって、前カバー部23の上縁23a側は、前方移動し、さらに、その移動により、天井カバー部22自体の前縁22a側も前方移動しつつ、巻きを解くこととなる。その後、第1ロール折り部85の折りの解消時には、図18のA,Bに示すように、第1ロール折り部85が前カバー部23の下縁23b側を前カバー部23の内周側に巻く折り畳みであり、前カバー部23の下縁23b側が、前下側に向かって巻きを解く挙動となる。
すなわち、これらの膨張用ガスGの流入当初からの挙動は、第2蛇腹折り部86の折りの解消により、後カバー部21が、シート1の背もたれ部3におけるヘッドレスト部5の下方の本体部4の背面4a側に配設されたケース8から上方に突出し(図16のB参照)、第2蛇腹折り部86と第1蛇腹折り部85との折りの解消により、ロール折畳部84が、図16のB,図17のA,Bに示すようにケース8から、ヘッドレスト部5や乗員Mの頭部Hより高く、後カバー部21の上端(上縁)21a付近まで上方へ突出し、さらに、天井カバー部22の後縁22b側の前方移動とともに、ヘッドレスト部5や乗員Mの頭部Hの上方を通過するように、前方へ突出し、ついで、図18のAに示すように、天井カバー部22の第2ロール折り部86の折りの解消に伴ない、天井カバー部22の前縁22a側と前カバー部23の上縁23a側とが、前方移動し、さらに、図18のA,Bに示すように、第1ロール折り部85の折りの解消にともない、前カバー部23が下縁23b側を下方に向けて展開膨張することとなる。換言すれば、実施形態の乗員保護装置MPでは、エアバッグ20の展開膨張時、後カバー部21とロール折畳部84がシート1の背面側に配設されたケース8から上方に突出し、さらに、ロール折畳部84と天井カバー部22の後縁22b側とが前方側へ突出し、さらに、天井カバー部22の前縁22a側と前カバー部23とが前方側へ突出し、ついで、前カバー部23が巻きを解いて下縁側を下方に突出させることとなり、その際、前カバー部23に連結された左カバー部24や右カバー部25も降下し、その結果、後カバー部21が乗員Mの頭部Hの背面Hb側に配置され、かつ、天井カバー部22が乗員Mの頭部Hの上方側に配置された状態で、前カバー部23が乗員Mの頭部Hの正面Hf側に配置されるとともに、頭部Hの左右の側方側に左カバー部24と右カバー部25とが配置され、エアバッグ20の外側膨張部30が、乗員Mの頭部Hと干渉すること無く、円滑に、乗員Mの頭部Hの周囲を囲うように、展開して膨張を完了させることができる。そして、前カバー部23が乗員Mの正面Hf側を広く覆う構成であっても、前カバー部23は、展開時、天井カバー部22の前縁22a側から巻きを解いて下縁23b側を下方へ突出させることから、乗員Mの頭部Hの前方側での展開を確保できて、乗員Mと干渉せずに、円滑に、乗員Mの正面Hf,Cf側に配置される。
したがって、実施形態の乗員保護装置MPでは、シート1の背面4a側の収納部位としてのケース8から飛び出るエアバッグ20を、円滑に展開させ、乗員Mの頭部Hの正面Hf側を広く覆って、頭部Hの周囲に配置させることができる。
なお、実施形態のエアバッグ20の膨張完了形態を詳しく説明すると、インフレーター10L,10Rから吐出する膨張用ガスGを流入させて膨張する際、まず、フレーム状膨張部38を有した一次膨張部としての外側膨張部30が膨張する。ついで、図19のA,B、図20に示すように、二次膨張部としての内側膨張部53が膨張する。一次膨張部としての外側膨張部30は、膨張する際、図17のA,B,図18のA,Bに示すように、後壁部31、天井壁部32、前壁部33、左側部34、及び、右側部35を、頭部Hの周囲に略カップ状に展開させ、ついで、図19のAに示すように、カップ状の形状を維持できるように膨張を完了させる。そして、二次膨張部としての内側膨張部53は、図19のA,Bや図7の二点鎖線に示すように、外側膨張部30が略カップ状に展開を完了させた後に、膨張し始めることから、乗員Mの頭部Hの正面Hf側や側面Hl,Hr側を受け止め可能に厚く膨らむこととなっても、頭部Hの周囲に既に展開を完了させた状態の外側膨張部30の内側で、膨張を開始させるため、円滑に膨張を完了させることができる。すなわち、エアバッグ20の外側膨張部30がカップ状に展開した後に、乗員Mの頭部Hを保護可能に拘束する内側膨張部53が、膨張を開始することから、エアバッグ20は、干渉することなく、乗員Mの頭部Hの正面Hf側を広く覆って、頭部Hの周囲に薄い状態で展開でき、そしてその後、乗員Mの頭部Hを保護可能に厚く膨張を完了させることができる。
また、実施形態の乗員保護装置MPのエアバッグ20では、膨張用ガスGを流入させてケース8から上方へ突出する際、図17のAに示すように、第1ロール折り部85を第2ロール折り部86の前方側に配置させた状態でロール折畳部84の上端84aを、車両Vの天井部RHに当接させるように、後カバー部21の下端側の連結ベルト60が所定長さでケース8の底壁部8bに連結され、かつ、第1蛇腹折り部88や第2蛇腹折り部95が、所定長さ分折り畳まれて、ロール折畳部84の周囲に折り重ねられている。
そのため、実施形態では、エアバッグ20の展開膨張時、第2蛇腹折り部95が折りを解消して、後カバー部21がケース8から突出し、かつ、折畳集合体93を上方へ押し上げ、さらに、第1蛇腹折り部88が折りを解消して、ロール折畳部84を押し上げた際、ロール折畳部84が、第1ロール折り部85を第2ロール折り部86の前方側に配置させた状態で、上端84aを天井部RHの下面RHbに当接させる。そのため、その後の第2ロール折り部86の折りの解消時において、天井カバー部22の前縁22a側と前カバー部23の上縁23a側との前方移動時、天井部RHの下面RHbに沿って、ヘッドレスト部5や乗員Mの頭部Hから安定して上方に離れた状態として、天井カバー部22の前縁22a側と前カバー部23の上縁23a側とが、前進移動できることから、その後の第1ロール折り部85の折りの解消時、前カバー部23の下縁23b側は、安定して、乗員Mの正面Hf側の前方側で、乗員Mの頭部Hから離れて、展開できる。すなわち、一層、乗員Mの頭部Hとの干渉を防止して、エアバッグ20の外側膨張部30を、乗員Mの頭部Hの周囲に展開させて膨張を完了させることができる。
また、実施形態における乗員保護装置MPのエアバッグ20は、ロール折畳部84の上端84aを天井部RHに当接させるまで、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との並設状態を維持する分離抑制手段91、を備えて構成されている。
そのため、実施形態では、分離抑制手段91により、ロール折畳部84の上端84aを天井部RHに当接させるまで、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との並設状態を維持できることから、第2ロール折り部86の折りの解消を、第2ロール折り部86が天井部RHに当接する状態として開始させることができて、第2ロール折り部86の折りの解消に伴なう天井カバー部22の前縁22a側と前カバー部23の上縁23a側とを、一層、安定して前進移動させることができる。
特に、実施形態の分離抑制手段91は、第1蛇腹折り部88から構成されている。この第1蛇腹折り部88では、横方向折目78を解消した位置側の前カバー部23側を除き、横方向折目78を解消した位置の反対側84bを中心として、ロール折畳部84の周囲の前側84cと後側84dとを包むように、第1蛇腹折り部88の折重部位88aを、ロール折畳部84に巻き付けて、分離抑制手段91を構成している。
このような構成では、第1蛇腹折り部88が折りを完全に解消するまで、第1蛇腹折り部88の折重部位88aが、ロール折畳部84を部分的に包むことから、ロール折畳部84の上端84aを天井部RHに当接させるまで、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との並設状態を維持できることとなる。そして、このような構成では、第1蛇腹折り部88自体で、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86との並設状態を維持できることから、別途、仮止めするように、ロール折畳部84を部分的に包むようなテープ材を利用せずに済み、簡便に、エアバッグ20を折り畳むことができる。
なお、このようなテープ材としては、図22に示すように、ロール折畳部84における蛇腹折り工程の前の左右両縁を左右方向の中央側に折り返した後、第1ロール折り部85と第2ロール折り部86とに、左右方向に沿うように、テープ材87を巻き付けておけば、テープ材87により、分離抑制手段91を構成することができる。なお、この場合の第1蛇腹折り部88は、単に、ロール折畳部84における車両の天井部に当接させる上端84a側の反対側で、折り重ねるように、天井カバー部22を蛇腹折りして、形成すればよい。また、テープ材87は、第1ロール折り部85や第2ロール折り部86に膨張用ガスが流入して折りを解消する際に、破断等して包み状態を解消できる強度として、構成すればよい。
なお、実施形態の乗員保護装置MPでは、エアバッグ20の内側膨張部53が、図7,9に示すように、膨張用ガスGを流入させる流入口58(L,R)を、膨張完了時の前端53a側とし、かつ、外側膨張部30における前壁部33に配設される前下横杆部45と連通するように、配設されている。
そのため、実施形態では、乗員Mの頭部Hを受け止めるように膨張する内側膨張部53は、外側膨張部30がカップ状に展開した後、膨張完了時の前端53a側の流入口58(L,R)から膨張用ガスGを流入させて、後方側に膨らむように膨張を開始する。すなわち、外側膨張部30がカップ状に展開する際には、外側膨張部30は、ケース8から上方に突出し、ついで、前方側に突出し、さらに、下方側に展開する。その際、外側膨張部30は、乗員Mの頭部Hの正面Hf側に配置させる前壁部33を、前方側への突出時の慣性力により、展開完了当初、乗員Mの頭部Hとの間にスペースSfを空けた乗員頭部の前方側に配置させることができる(図18のA,B、図19のA,図7参照)。そのため、内側膨張部53は、乗員Mの頭部Hの正面Hf側との間に所定のスペースSfのある前壁部33の内側から後方側へ向かって厚く膨らむ態様となることから、乗員Mの頭部Hと干渉せずに、膨張を開始でき、そして、膨張を完了させることができる。
さらに、実施形態の乗員保護装置MPでは、エアバッグ20の内側膨張部53が、左右に分離された左右一対の支持膨張部54L,54Rから構成されている。左右の支持膨張部54L,54Rは、それぞれ、乗員Mの胸部Cの上部Cu付近より上側の正面Cf,Hf側を拘束可能な前側支持部55L,55Rと、前側支持部55L,55Rの上部から後方側に延びて、乗員Mの頭部Hの左右方向の側面Hl,Hr側を拘束可能な側方支持部56L,56Rと、を備えて構成されている。
そのため、実施形態では、内側膨張部53における左右一対の支持膨張部54L,54Rが、図9に示すように、前側支持部55L,55Rにより、乗員Mの正面Cf,Hf側における胸部Cと頭部Hとを拘束可能となって、前壁部33側に接近するように移動してくる乗員Mを、広い面でソフトに受け止めることができて、保護性能を向上させることができる。勿論、左右一対の支持膨張部54L,54Rは、図9,21に示すように、頭部Hの左右の側面Hl,Hr側を拘束可能な側方支持部56L,56Rを備えていることから、左右方向に移動する頭部Hも、好適に受け止めることができる。なお、前側支持部55L,55Rは、移動する頭部Hの受け止め時、外側膨張部30における前壁部33の前下横杆部45や前シート部33cに支持され、側方支持部56L,56Rは、移動する頭部Hの受け止め時、外側膨張部30における左側部34や右側部35に支持されるて、共に、頭部Hをクッション性よく拘束することができる。
また、実施形態の乗員保護装置MPでは、エアバッグ20の外側膨張部30が、棒状に膨張するフレーム状膨張部38を備えて構成されている。フレーム状膨張部38は、後壁部31の左右両縁付近から左側部34と右側部35との外周縁(上縁)34a,35a側を経て、前壁部33の左右両縁の下端付近まで延びる略逆U字状とした左右の縦杆部39L,39Rと、左右の縦杆部39L,39Rを連結するよう左右方向に沿って配置される複数の横杆部45,46,47と、を備えて構成され、縦杆部39L,39Rの後下端側から、膨張用ガスGを流入させるように、構成されている。
そのため、実施形態では、膨張用ガスGが、フレーム状膨張部38に流入する際、まず、縦杆部39L,39Rにおける後下端側、すなわち、後縦杆部40L,40Rの下端側から流入して、膨張完了時の後壁部31の左右両縁の部位(後縦杆部40L,40R)を、下端側から上方へ流れ、ついで、膨張完了時の天井壁部32の左右両縁の部位(上縦杆部41L,41R)を、後方から前方に流れ、さらに、膨張完了時の前壁部33の左右両縁の部位(前縦杆部42L,42R)を、上方から下方へと流れることとなる。すなわち、膨張用ガスGが、膨張完了時の左側部34と右側部35の上側の外周縁34a,35a側において、後縁の下端側から上方へ流れ、ついで、前方に流れ、さらに、下方に流れる状態となって、外側膨張部30が、後上方向からカップを乗員Mの頭部Hに被せるように、展開できて(図17のB,図18のA,B参照)、円滑に、乗員Mの頭部Hの正面Hf側を広く覆い、かつ、乗員Mの頭部Hの周囲を囲むように、展開できる。勿論、フレーム状膨張部38が膨張を完了させれば、複数の横杆部45,46,47が、左右の縦杆部39L,39R相互を連結するように膨張するため、カップ形状を維持できる形状保持性を確保して、外側膨張部30の展開膨張を完了させることができることから、外側膨張部30が内側膨張部53を的確に保持できることとなり、その結果、内側膨張部53は、円滑に乗員Mの頭部Hを受け止めることができる。
さらに、実施形態の場合、横杆部として、前壁部33の下縁33b側に配置される前下横杆部45、前壁部33の上縁33a側に配置される前上横杆部46、及び、後壁部31の上縁31a側に配置される後上横杆部47、を備えて構成されている。
そのため、実施形態では、フレーム状膨張部38の左右の縦杆部39L,39Rを連結する横杆部45,46,47が、前壁部33の下縁33b、前壁部33と天井壁部32との交差部位、天井壁部32と後壁部31との交差部位、の三箇所に配設されて、少ない横杆部45,46,47により、左右の縦杆部39L,39Rの捩れを好適に抑制できる。換言すれば、膨張完了後の外側膨張部30の形状保持性能、すなわち、内側膨張部53の支持性能、を安定して確保できるとともに、少ない横杆部45,46,47で外側膨張部30を構成できることから、外側膨張部30の容量を小さくできて、外側膨張部30の展開と膨張完了とを迅速に行うことができる。
さらに、実施形態の場合、横杆部としては、後壁部31の下縁31b側に配置される後下横杆部48を設けて、後下横杆部48が、縦杆部39L,39Rの後下端側、すなわち、後縦杆部40L,40Rの下端側へ分岐させた膨張用ガスGを供給可能に、左右方向の中央に膨張用ガスGの流入口50を配設させている。
このような構成では、後下横杆部48の流入口50から流入される膨張用ガスGは、後下横杆部48で左右の縦杆部39L,39Rの後下端側に、すなわち、後縦杆部40L,40Rの下端側に、分岐するように流れ(図6参照)、そして、後上横杆部47と前上横杆部46とに流れつつ、縦杆部39L,39R内を前壁部33の下縁33b側まで流れ、前下横杆部45の部位で合流する。そのため、縦杆部39L,39Rの後下端側から前下端側に、すなわち、後縦杆部40L,40Rの下端側から、上縦杆部41L,41Rを経て、前縦杆部42L,42Rの下端側に、流れる膨張用ガスの流入態様を、左右の縦杆部39L,39Rで等しくさせ易く、フレーム状膨張部38の容積の増加を抑えて、外側膨張部30を、左右バランスよく、展開可能となる。
勿論、後下横杆部48L,48Rを設けずに、左右の縦杆部39L,39Rの後下端側(後縦杆部40L,40Rの下端側)に、それぞれ、膨張用ガスGの流入口を配設する構成として、それらの流入口に、それぞれ、別々のインフレーターを、若しくは、インフレーターから二又状に延びるガス供給管部を、接続させるようにしてもよい。
なお、乗員保護装置MPのエアバッグ20では、左カバー部24や右カバー部25を構成する外側膨張部30の左側部34や右側部35として、略半円形状として、外側膨張部30の左右両側の側面の略全域を覆うものを例示した。しかし、外側膨張部30の左側部34や右側部35は、内側膨張部53(特に側方支持部56L,56R)を支持できればよいことから、後壁部31と前壁部33との下端付近相互を連結して、上側に隙間を空けるような帯状の部材から構成してもよい。そして、外側膨張部30のカップ状の展開に支障がなければ、膨張用ガスGを流して膨らむ膨張部位を配設させてもよい。
さらに、本発明に係る乗員保護装置としては、図23のA,Bに示す乗員保護装置MPAのように構成してもよい。この乗員保護装置MPAのエアバッグ20Aでは、実施形態のエアバッグ20と相違している点として、膨張完了時のエアバッグ20Aの左右両側に、前カバー部23としての前壁部33における後カバー部21としての後壁部31側からの離隔を規制可能な牽引材62(L,R)が、前壁部33の下端33f側と後壁部31とを連結するように、配設されている点が、異なっており、他の構成は、エアバッグ20と同様であり、乗員保護装置MPAの他のケース8やインフレーター10の構成も、乗員保護装置MPと同様である。そのため、乗員保護装置MPAでは、乗員保護装置MPと同様な部位には、極力、同じ符号を付して説明を省略する。
牽引材62(L,R)は、前壁部33を有した前カバー部23の下縁23b側をロール折りして第1ロール折り部85を形成した後、前カバー部23の下端23c側である前壁部33の下端33f側と、後カバー部21としての後壁部31と、を連結する。そのため、エアバッグ20Aの外側膨張部30が展開膨張を完了すれば、第1ロール折り部85が巻きを解くように折りを解消し、逆に、牽引材62(L,R)を捩じって実質的に短くさせることから、牽引材62(L,R)に、前壁部33を有した前カバー部23を後壁部31側に牽引する引張力を生じさせる。
そのため、このような構成の乗員保護装置MPAでは、エアバッグ20Aが膨張を完了させれば、前カバー部23の後カバー部21から離れる前方移動を、牽引材62(L,R)により、規制できて、前カバー部23側に移動してくる乗員Mの頭部Hを的確に受け止めることができる。すなわち、実施形態では、前カバー部23における前壁部33に保持された内側膨張部53も前方移動を規制されて、安定して、内側膨張部53が乗員Mの頭部Hを受け止めることができる。