以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の自動二輪車用エアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置とする)10は、図1に示すように、スクータ型の自動二輪車(以下、単に二輪車という)1に搭載されるものであり、この二輪車1は、乗員Dの着座するシート7とシート7の前方のハンドル5との間に、乗員Dの足部Fを載せるステップ6が配設され、エアバッグ装置10は、シート7の前端付近に配設されている。
なお、本願の明細書等での前後左右の方向は、前進時の二輪車1を基準としており、二輪車1に着座した乗員Dの前後左右の方向と一致するものである。
エアバッグ装置10は、図1〜3に示すように、エアバッグ11、エアバッグ11に膨張用ガスを供給するインフレーター44、折り畳まれたエアバッグ11を収納して保持するとともにインフレーター44を保持するケース48、膨張したエアバッグ11の前面11c側を後面57b側で支持する支持材57、支持材57を引き上げるための前側ベルト32、及び、エアバッグ11の後面11d側とケース48における周壁部50の後面50c側とを連結する後側ベルト37、を備えて構成されている。
ケース48は、折り畳まれたエアバッグ11の収納部位を構成するものであり、上端にエアバッグ11の突出用の開口50aを備えた箱形状の板金製として、長方形板状の取付壁部49と、取付壁部49の外周縁付近から上方に延びる略四角筒形状の周壁部50と、を備えて構成されている。取付壁部49には、周壁部50の下部を塞ぐ部位に、インフレーター44の本体部45を下方から挿入させる円形の開口49aが形成されている。なお、ケース48には、図示しない連結ブラケットが配設されて、この連結ブラケットが二輪車1のボディ(車体)2側のフレーム3から延びるブラケット4に連結固定されている(図1参照)。その結果、エアバッグ11とインフレーター44とを保持したケース48が、シート7の前端付近における着座した乗員Dの左右の膝部K(KL,KR,図14参照)間付近に配置されて、ボディ2側に連結固定されている。
また、ケース48の周壁部50は、図2,3に示すように、前後で対向する後壁部50bと前壁部50dの他、左右で対向する側壁部50e,50eを備えて構成されている。前壁部50dは、取付壁部49から支持材57の横棒部58付近まで上方に延びて、膨張時のエアバッグ11が、横棒部58の下方に侵入しないように、配設されている。そして、ケース48の後部48aでは、図2,15に示すように、取付壁部49が周壁部50における後壁部50bの後面50cより後方へ延び、その後端49bの上面49c側には、後側ベルト37の下端39を連結する固定杆52が、ボルト54とカラー55とを利用して、取り付けられている。
固定杆52は、図15に示すように、左右両端に、取付孔53を上下方向に貫通させている。そして、固定杆52は、下面側の取付孔53周縁と取付壁部49の後端49bの上面49cとの間に、カラー55を配設し、固定杆52の上方から、取付孔53とカラー55とを挿通して、後端49bに締め付けられるボルト54により、取付壁部49の後端49bの上面49cとの間に、隙間hを設けて、取付壁部49に固定されている。そして、後側ベルト37のループ状の下端39が、巻き掛けられて固定杆52に連結されている。
インフレーター44は、図2に示すように、上部側に複数のガス吐出口45aを備えた円柱状の本体部45と、本体部45の外周面から突出するフランジ部46と、を備えて構成され、フランジ部46が、ケース48の取付壁部49の下面側に固定されている。
なお、エアバッグ11の流入用開口12aの周縁には、四隅にボルト41aを備えた略四角環状のリテーナ41が配置されている。そして、リテーナ41のボルト41aを、エアバッグ11の流入用開口12aの周縁、ケース48の取付壁部49、及び、フランジ部46に貫通させて、ナット42止めすることにより、インフレーター44のフランジ部46が、エアバッグ11とともに、ケース48の取付壁部49に対して、固定されることとなる。
また、インフレーター44は、図示しないリード線によって、二輪車1に搭載された図示しない制御回路に電気的に接続され、二輪車1に衝撃が作用した際、制御回路が、衝撃を検知した所定の検知センサからの信号を入力して、インフレーター44に作動信号を出力することとなる。
エアバッグ11は、図1〜6に示すように、膨張完了時の形状として、底壁部12、前壁部13、後壁部14、左側壁部15、右側壁部16、及び、天井壁部17を備えた略四角柱状としている。さらに具体的に説明すると、第1実施形態のエアバッグ11は、膨張完了時の形状として、前方側から見た形状を、下部11b側より上部11a側の左右方向の幅寸法を大きくする上広がりの略台形形状とするとともに、乗員Dを受け止める後面11dを拘束面22として、側方から見た形状を、下部11b側から上部11a側に向かうにつれて、前後方向の厚さ寸法を後方側へ増大させるテーパ形状として、構成されている。
そして、エアバッグ11は、収納部位であるケース48から突出して膨張を完了させた際、左右方向の幅寸法を、下部11b側が、シート7に着座した乗員Dの左右の大腿部TL,TR(図14参照)間に配置可能とし、上部11a側が、乗員Dの腰部Wと胸部Bとの拘束が可能な範囲で、かつ、シート7に着座した乗員Dの乗車姿勢で、乗員Dの左右の腕部Aに干渉しない寸法として、設定されている。なお、第1実施形態の場合、上部11a側は、左右方向の幅寸法として、乗員Dの腰部Wの左右方向の幅寸法と略等しくなるように、設定されている。
エアバッグ11の底壁部12には、膨張用ガスを流入させるための円形の流入用開口12aが形成されて、流入用開口12aの周縁には、リテーナ41の各ボルト41aを挿通させる取付孔12b(図7,8参照)が、形成されている。この流入用開口12aの周縁は、リテーナ41に押えられて、ケース48の取付壁部49に取り付けられる取付固定部位11eとなる(図2参照)。
そして、第1実施形態のエアバッグ11は、区画壁18によって、一次膨張バッグ部20と二次膨張バッグ部21との前後二室に、区画されている。一次膨張バッグ部20は、前壁20aを前壁部13の左右方向の中央部位13aと重ねて共用させる状態で、長方形状の底壁部12の全域から上方に延びる略四角錐形状としており、区画壁18は、横断面をコ字形として、「コ」の字の横棒の先端を前壁部13に連ならせるように、配設されている。エアバッグ11の膨張完了時、二次膨張バッグ部21は、底壁部12の部位を除いて、一次膨張バッグ部20の後方と左右両側とを覆うように配設されている。そして、一次膨張バッグ部20が、膨張用ガスの流入当初時に最先に膨張を完了させるように、二次膨張バッグ部21は、一次膨張バッグ部20に流入した膨張用ガスを利用して、膨張するように構成されている。すなわち、一次膨張バッグ部20の後壁20bにおける上端20t側の区画壁18の部位に、円形に開口する流通口19が配設され、一次膨張バッグ部20が略膨張を完了させた後に、流通口19から二次膨張バッグ部21側へ流出する膨張用ガスにより、二次膨張バッグ部21が膨張するように構成されている。
第1実施形態の場合、流通口19は、支持位置SPに配置された支持材57における前側ベルト32との連結部位である横棒部58(上部57a)と略等しい高さ位置として、区画壁18に配設されている(図13参照)。なお、この流通口19より上方の一次膨張バッグ部20の上端20t側の部位(上端部)は、支持材57の引き上げ時に、膨張用ガスを貯留させるガス溜り部20cとなって、このガス溜り部20cが、前側ベルト32を連結させた一次膨張バッグ部20の上端部として、流入用開口12aから流入する膨張用ガスに押し上げられ、支持材57を引き上げることとなる(図10,11参照)。
さらに、第1実施形態のエアバッグ11は、袋状のアウタバッグ23内に袋状のインナバッグ27を配設させて構成されている。アウタバッグ23は、エアバッグ11の膨張完了時の外周壁を構成しており、第1実施形態の場合、図7に示すように、一枚の第1基布24と、二枚の第2基布25,25と、を備えて構成されている。第1基布24は、底壁部12、前壁部13、後壁部14、及び、天井壁部17に配置される部位を備える長尺状として構成され、二枚の第2基布25は、それぞれ、左側壁部15と右側壁部16とに配置される部位を構成している。そして、アウタバッグ23は、第1基布24の左右の左縁24aと右縁24bとに、それぞれ、第2基布25の外周縁25aを縫合して、形成されている。
インナバッグ27は、アウタバッグ23の内周側に配置されて、エアバッグ11の底壁部12、前壁部13の左右方向の中央部位13a、及び、区画壁18に配置される部位を備えて構成されている。このインナバッグ27は、帯状の第3基布28の両端部28a相互を重ねるように、二つ折りして、重ねた外周縁28b相互を縫合することにより形成されている。両端部28aは、それぞれ、半円板状としている。
なお、第1基布24、第2基布25、及び、第3基布28は、可撓性を有したポリアミドやポリエステル等の織布から形成されている。
エアバッグ11の製造は、まず、アウタバッグ23を構成する第1基布24におけるエアバッグ11の内周面側の前壁部13の中央部位13aに、インナバッグ27の第3基布28におけるエアバッグ11の前壁部13となる部位を、縫合して結合するように、結合部30,30を形成する。この結合部30,30は、上端30aを、前側ベルト32の上端32aを連結させる中央部位13aの上部13bに配置させ、下端30bを、底壁部12の部位における流入用開口12aの周縁付近に配置させている。
そして、第1基布24に第3基布28を縫合して結合させた後、第1基布24と第3基布28との底壁部12の部位に、流入用開口12aと取付孔12bとを設けるように穴開け加工し、また、第3基布28に、流通口19を穴開け加工する。なお、これらの流入用開口12a、取付孔12b、及び、流通口19は、適宜、第1基布24や第3基布28に、予め形成しておいてもよい。さらに、図7に示すように、流入用開口12aの周縁には、取付孔12cの配置エリアを含めて、補強布(図符号省略)を設けてもよい。
その後、第3基布28の両端部28a,28aを重ねて、重ねた外周縁28b相互を縫合して結合し、インナバッグ27を形成する。そして、第1基布24の左縁24aと右縁24bとに、それぞれ、各第2基布25の外周縁25aを縫合して結合すれば、エアバッグ11を形成することができる。
なお、第1実施形態のエアバッグ11では、インナバッグ27自体を、帯状の第3基布28を二つ折りして形成し、かつ、アウタバッグ23とインナバッグ27とにおける前壁部13の左右方向の中央部位13aとなる部位相互が結合されて、構成されている。そのため、インナバッグ27により形成される一次膨張バッグ部20は、リテーナ41を配置されて底壁部12の部位が長方形状となって前後方向に幅広となり、そして、第3基布28の両端部28aが、半円板状の先細り状とした状態で、相互に結合されて、インナバッグ27の上端27a(図13参照)が前後方向に厚さを狭めることとなる。そしてさらに、そのインナバッグ27が、アウタバッグ23における前壁部13の左右方向の中央部位13aに結合されることから、一次膨張バッグ部20は、膨張完了形状として、後壁20bを前壁20aに接近させつつ、上端20t側の容積を狭めるような先細り形状として、構成されることとなる(図4,12,13参照)。
前側ベルト32は、図2〜5に示すように、エアバッグ11の前面11cにおける前壁部13の左右方向の中央部位13aの上部13b側に、上端32aを縫合させて連結させている。前側ベルト32は、可撓性を有したポリアミドやポリエステル等の二枚の織布を二枚重ねとして形成されている。そして、下端32b側は、支持材57の横棒部58に連結させている。下端32bは、横棒部58を包む二又状として、金属製の当板33,33で挟んで、当板33,33相互を、複数のボルト34とナット35とを利用して、結合させることにより、横棒部58を包んで、横棒部58と連結されている。
この前側ベルト32における上端32aと下端32bとの間における本体部32cの長さ寸法LF(図2参照)は、折り畳まれて収納されているエアバッグ11が、膨張用ガスを流入させて展開膨張する際、前側ベルト32を利用して、ケース48の前方で収納されている状態から支持材57を引き上げ、膨張完了時のエアバッグ11の前面11c側で、エアバッグ11を支持できる高さ位置まで、支持材57を引き上げることができるように、設定されている。
さらに、エアバッグ11の後面11d側には、図2,4〜5に示すように、後側ベルト37が、上端38側を膨張完了時の後壁部14の下部14a側に連結させて、配設されている。後側ベルト37は、下端39側を、ケース48の周壁部50における後壁部50bの後面50cより後方側、すなわち、取付壁部49の後端49bに固定された固定杆52に、連結させている。この後側ベルト37は、可撓性を有したポリアミドやポリエステル等の織布から形成されて、後壁部14の左右方向の中央の下部14a側に、上端38を、縫合させて連結させ、下端39側を、固定杆52に連結させている(図2参照)。後側ベルト37は、一枚の帯状の布材を二つ折りして、下端39側に折目を配置させて、上端38側をエアバッグ11に連結させている。そのため、下端39側がループ状に形成されている。そして、ループ状の下端39には、固定杆52が挿通されており、下端39が、固定杆52の周りで揺動可能とするように、固定杆52に巻き掛けられた状態で、固定杆52に連結されている。
そして、この後側ベルト37の左右方向の幅寸法WBは、図15に示すように、ケース48の周壁部50の外周側における左右方向の幅寸法WCと等しくしている。また、後側ベルト37は、その上端38のエアバッグ11の後面11dへの縫合部位38aの幅寸法WSも、極力広くして、ケース48の周壁部50の左右方向の幅寸法WCより、僅かに小さな略同等の寸法としている。
さらに、この後側ベルト37における上端38と下端39との間における本体部37aの長さ寸法LB(図2参照)は、膨張完了時にエアバッグ11の後面11d側の拘束面22を乗員Dの受け止め位置に配置可能とし、かつ、支持材57の引き上げ時における一次膨張バッグ部20の前方移動を規制可能とする長さ寸法としている。この長さ寸法LBは、後側ベルト37が、エアバッグ11の膨張完了後だけでなく、膨張途中の状態においても、エアバッグ11への連結部位14bを利用して、一次膨張バッグ部20の前方移動を規制できる寸法に設定されており、従来のエアバッグ11の底壁部12の補強用の後側ベルトに比べて、エアバッグ11の膨張完了時には、上端38を連結させたエアバッグ11の連結部位14bを下方の固定杆52側に引張る引張力を、強くするように、設定されている。すなわち、図2に示すように、後壁部14の連結部位14bの下方におけるケース48近傍の下端部14cが、後側ベルト37によってタックを設けられるように長さを余すこととなって、後側ベルト37の本体部37a側に膨らむ状態となるように、後側ベルト37が、連結部位14bに対して、下向きの引張力を作用させている。
支持材57は、図2,3に示すように、ケース48の前壁部50dの前方側に隣接して配設され、第1実施形態の場合、左右方向に延びた横棒部58と、横棒部58の左右両端から下方に延びる縦棒部59,59と、を備えた逆U字形の一体構造としたパイプ材から、形成されている。この支持材57は、縦棒部59,59が、それぞれ、案内スリーブ61によって、上下動可能に保持されている。案内スリーブ61は、ボディ2側のフレーム3から延びる図示しないブラケットに、固定されている。
なお、支持材57は、左右方向の幅寸法WPを、乗員Dの両膝部KL,KR付近間から上方に突出可能に、構成され、第1実施形態の場合、ケース48の左右方向の幅寸法WCより僅かに小さな略同等としている。また、支持材57の上方への突出を完了させたエアバッグ11の支持位置SPへの配置時、上部57aの配置位置は、膨張を完了させたエアバッグ11の上部11aの前面側を支持でき、かつ、後面57b側が上部11aによって覆われる位置、としている。
また、支持材57とエアバッグ11とは、収納状態で、シート7の前端側を構成しているカバー8によって覆われていることから、上方へ突出する際、このカバー8を押し開かせて、上方へ突出することとなる。
つぎに、エアバッグ装置10の二輪車1への搭載の概略を述べると、先ず、エアバッグ11を折り畳む。この折り畳みは、各ボルト41aを取付孔12bから突出させるように、リテーナ41をエアバッグ11内に収納させた状態で、図8のAに示すように、まず、前面11c側と後面11d側とを前後方向で重ねるように、平らに展開させる。この時、平らに展開させ易いように、中央付近の左右に、上下方向に沿うようなタック64を設け、また、底壁部12も、平らに重ねて展開させておく。なお、図8では、前側ベルト32と後側ベルト37とは、図示していないが、共に、上端32a,38側が、既に、エアバッグ11の所定部位に連結されている。
ついで、図8のA,Bに示すように、ケース48に収納できる左右方向の幅寸法となるように、すなわち、ケース48の内周側の左右方向の幅寸法Wd(図15参照)より僅かに小さくなるように、上下方向に沿う折目を付けて左右の幅寸法を小さくする左右縮小折りを行う。第1実施形態の場合、左右縮小折りは、ロール折りであり、平らに展開した展開エアバッグ63の左右の縁65,66を、後面11d側で中央側に接近させて巻くように、行っている。ちなみに、第1実施形態では、縁65,66を後面11d側で巻いているが、縁65,66を前面11c側で巻くロール折りとしてもよい。
その後、ケース48に収納できる前後方向の幅寸法となるように、左右方向の折目を付けて折り畳む前後縮小折りを行う。第1実施形態の場合の前後縮小折りは、左右縮小折り後の中間折りエアバッグ67の上端68を底壁部12側に接近させるように、折り重ねる蛇腹折りにより、行っている。
なお、折り畳みを完了したエアバッグ11は、折り崩れしないように、破断可能なラッピング材で包んでおく。ちなみに、前側ベルト32と後側ベルト37とは、下端32b,39側を、ラッピング材から突出させるとともに、リテーナ41の各ボルト41aも、ラッピング材から突出させておき、さらに、エアバッグ11の流入用開口12aも、インフレーター44の本体部45を挿入可能となるように、開口させておく。
そして、折り畳みを完了したエアバッグ11は、各ボルト41aを取付壁部49から突出させるようにして、ケース48内に収納し、各ボルト41aをフランジ部46に挿通させつつ、ケース48の取付壁部49の下方から、インフレーター44の本体部45を、開口49a,12aに挿入させ、各ボルト41aにナット42を締結する。
その後、後側ベルト37のループ状の下端39に、固定杆52を挿入させるとともに、固定杆52の下面側の取付孔53周縁にカラー55を配設させて、左右の各取付孔53にボルト54を挿入させて、各ボルト54を、カラー55を経て、ケース48の取付壁部49に締結して、固定杆52をケース48の取付壁部49に固定する。
そして、ケース48を、図示しない連結ブラケットを利用して、ブラケット4に取り付けるとともに、当板33、ボルト34、及び、ナット35を使用して、前側ベルト32の下端32bを、フレーム3側に取り付け済みの支持材57の横棒部58に連結する。
その後、インフレーター44に、所定の作動信号を入力させるリード線を結線するとともに、シート7を装着すれば、エアバッグ装置10を二輪車1に搭載することができる。
そして、この第1実施形態の二輪車1では、走行時に四輪自動車等と衝突して、エアバッグ装置10が作動すれば、エアバッグ11の流入用開口12aに挿入されたインフレーター44が、各ガス吐出口45aから膨張用ガスを吐出させることから、膨張用ガスGを流入させたエアバッグ11は、図9〜13や図14に示すように、シート7に着座した乗員Dの左右の脚部LL・LRの間付近の収納部位(ケース48)から上方側へ展開膨張して、前方側へ移動する乗員Dの少なくとも腰部Wを拘束可能な形状に膨張を完了させる。
その作動時、第1実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ11が、流入用開口12aから膨張用ガスGを一次膨張バッグ部20に流入させて、一次膨張バッグ部20の膨張を最先に完了させるため、図9〜11に示すように、一次膨張バッグ部20の前壁20a側に連結された前側ベルト32が、一次膨張バッグ部20の底壁部12から上方へ延びるような展開膨張に伴い、上方へ移動し、前側ベルト32を上部57aに連結させた支持材57も、一次膨張バッグ部20の上端20tや前側ベルト32の上昇に伴って、エアバッグ11の支持位置SPまで引き上げられる。
この時、支持材57の引き上げは、一次膨張バッグ部20における底壁部12から前側ベルト32を連結させた一次膨張バッグ部20の上端20t付近(ガス溜り部20c)まで、ある程度、膨張用ガスGが充填されて、一次膨張バッグ部20の内圧が支持材57を引き上げ可能な値まで上昇すれば、開始される。そして、支持材57の引き上げ開始時や引き上げ途中において、一次膨張バッグ部20の上端20tは、支持材57の上端(上部)57aより上方に配置されて、支持材57が前面11c側に配置されておらず、前方側に突出するように自由膨張できる(図9,10の一点鎖線参照)。しかし、第1実施形態のエアバッグ装置10では、後側ベルト37が、支持材57の引き上げ時における一次膨張バッグ部20の前方移動を規制可能とする長さ寸法LBとして、エアバッグ11の後面11d側とケース48の後面50c側とを連結している。そのため、一次膨張バッグ部20は、支持材57より前方側へ突出する突出量を抑えて、図9,10の一点鎖線のような状態とならずに、支持材57を引き上げ易い上方側へ膨張し、その結果、支持材57が迅速に引き上げられることとなる。なお、後側ベルト37は、その上端38が膨張完了時のエアバッグ11の後面11d側に連結されており、その上端38自体が、二次膨張バッグ部21の後面21a側に連結されて、一次膨張バッグ部20自体に直接連結されていなくとも、一次膨張バッグ部20の膨張途中では、図9,10に示すように、二次膨張バッグ部21自体が膨張しておらず、一次膨張バッグ部20と二次膨張バッグ部21との後面(後壁)20b,21aが、一枚状に重なって膨らむため、支障なく、後側ベルト37の上端38が、エアバッグ11の後面(後壁)21a側を介在させて、一次膨張バッグ部20の上端20tを後方へ牽引する状態を、確保でき、その状態で、一次膨張バッグ部20が、膨張しつつ上昇することとなる。
そしてさらに、この後側ベルト37は、図15に示すように、その左右方向の幅寸法WBをケース48の周壁部50の左右方向の幅寸法WCと同等として、かつ、ケース48側への連結部位(下端)39を、ケース48の周壁部50の後面50c側、すなわち、周壁部50の外側における取付壁部49の後端49bに連結させているため、収納されていたケース48の周壁部50からエアバッグ11が突出する時点を含めて、ケース48の周壁部50の左右方向の幅寸法WCと同等の左右方向の広いエリアで、後側ベルト37のエアバッグ11への連結部位14bに、後方側への牽引力を作用させることが可能となる。このような牽引力は、後側ベルト37が、エアバッグ11の膨張完了時のように伸びておらず、折れ曲がっていっても、ケース48の周壁部50や折り畳まれたエアバッグ11の部位、さらには、カバー8等の周囲の部材との摩擦等によって移動し難くなっているため、発生すると推定される。
その結果、一次膨張バッグ部20が、ケース48の周壁部50から上方へ突出し始める時点から、後側ベルト37により、後方側へ牽引される状態となって、一層、円滑に、支持材57より前方側へ突出する突出量を抑えて、支持材57を引き上げ易い方向となる上方側へ、膨張することとなる。
そして、支持材57の引き上げが完了すれば、二次膨張バッグ部21も流通口19から膨張用ガスGを流入させて迅速に膨張を完了させることとなる。その際、第1実施形態のエアバッグ11では、図11,12に示すように、一次膨張バッグ部20の上端20tや二次膨張バッグ部21の上端21tが、支持位置SPに配置された支持材57の上方に延びても、後面11d側が、後側ベルト37により、ケース48における取付壁部49の後端49b側の後下方側に引張られた状態となり、エアバッグ11の上端11tは、支持位置SPに配置された支持材57の上部57aを乗り越えて前方側に突出する現象を、抑制される。そのため、エアバッグ11は、二次膨張バッグ部21が、一次膨張バッグ部20の流通口19から流入させる膨張用ガスGにより、前後方向の揺動を抑制される。すなわち、エアバッグ11は、図12の二点鎖線に示す状態と一点鎖線に示す状態とを繰り返すような前後方向の揺動運動が、抑制されて、図12の実線で示す状態から、図13の二点鎖線に示す状態、さらに、図13の実線に示す状態となるように、円滑に厚さを厚くするように膨張を完了させることとなり、その結果、前後方向に揺動させることなく、迅速に、拘束面22を乗員Dに正対させることが可能となる。
そのため、作動直後に、乗員Dが前進してきても、支持材57によって支持されて膨張完了済みのエアバッグ11が、クッション性良く、拘束面22によって乗員を受け止めることとなる。
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置10では、作動時に、後側ベルト37の制御により、一次膨張バッグ部20を上向きの挙動で膨張させ易くなって、支持材57を迅速にエアバッグ11の支持位置SPに配置させることができて、作動直後に、接近していた乗員Dが前進してきても、支持材57に支持されたエアバッグ11が、その後面11dの拘束面22によって的確に受け止めることができる。
勿論、後側ベルト37は、膨張完了時にエアバッグ11の後面11dを乗員Dの受け止め位置に配置可能な長さ寸法LBで設定されているため、乗員Dを受け止めるエアバッグ11の後面11d(拘束面22)を引き下げたり傾けたりするように牽引しすぎることを抑制されており、換言すれば、膨張を完了させたエアバッグ11の前面11c側を支持材57の後面57bから大きく離すような状態も抑制できることから、膨張完了後のエアバッグ11は、支持材57で支持された状態として、その後面11d(拘束面22)によって、前進移動する乗員Dを支障なく、受け止めることができる。そして、エアバッグ11が、乗員Dを受け止めて、前倒れしようとしても、後側ベルト37が、エアバッグ11の前倒れの後面11d(後壁部14)に作用する引張力に対抗して、エアバッグ11の底壁部12を補強できるため、エアバッグ11の底壁部12の破損を、防止でき、逆に、後側ベルト37のエアバッグ11側への連結部位14bが破損する虞れが生ずるが、その連結部位14bは、後側ベルト37の左右方向の幅寸法WBと同等の幅広に形成できるため、引張力を左右方向で分散でき、後側ベルト37が連結されるエアバッグ11自体の後面11d側の破損も、防止可能となる。
そして、第1実施形態では、エアバッグ11の二次膨張バッグ部21が、膨張完了時の一次膨張バッグ部20の左右両側と後方側とを覆うように配設されるとともに、一次膨張バッグ部20の容積より大きな容積として(約5倍程度)、構成されている。そのため、第1実施形態では、エアバッグ11の全体の容積の内の一次膨張バッグ部20の容積の割合を、小さくすることができ、換言すれば、エアバッグ11への膨張用ガスGの流入当初に、一次膨張バッグ部20を、内圧を高めて膨張完了させることが、一層、迅速に行えることとなる。その結果、第1実施形態のエアバッグ装置10では、一層、素早く、支持材57の支持位置SPへの配置を完了させることができ、膨張途中のエアバッグ11に乗員Dが侵入してきても、ある程度の内圧を維持して膨張を完了させ、そして、支持材57に前方を支持された一次膨張バッグ部20で、その乗員Dを受け止めることが可能となる。
特に、第1実施形態では、支持材57を引き上げる一次膨張バッグ部20が、底壁部12から上端20t側(ガス溜り部20c)にかけて、後壁20bを前壁20aに接近させつつ容積を狭める先細り形状として構成されており、上端20tまで内圧を作用させて膨張を完了させる時間を、短くできる。そして、支持材57の引き上げは、既述したように、一次膨張バッグ部20の内圧が支持材57を引き上げ可能な値まで上昇すれば、開始されることから、先細り形状の一次膨張バッグ部20では、引き上げ可能な内圧値までの達成時間を短縮できて、その結果、支持材57の引き上げ開始も、一層、エアバッグ装置10の作動直後に迅速に行うことができる。
また、第1実施形態のエアバッグ装置10では、作動時、エアバッグ11が、折り畳み工程の逆の順序で、折りを解消して、展開膨張し、その際、先ず、膨張初期に、蛇腹折りの折りを解消することとなって、蛇腹折りの折りの解消は、ロール折りに比べて、折りを解消し易いことから、一次膨張バッグ部20の膨張に伴って、直ちに、上端68側である天井壁部17における左右方向の中央17a付近を、展開膨張完了位置付近に、配置させることができる。そしてその際、左右の縁65,66付近である左右の左側壁部15と右側壁部16付近は、折りを解消し難いロール折りとしているため、天井壁部17の中央17a付近がエアバッグ11の展開膨張完了位置付近に配置された後、流通口19から膨張用ガスGを流入させる二次膨張バッグ部21が、折りを解消して、後方側への膨張と同時に、左右側へ膨らんで、図14のA,Bに示すように、エアバッグ11は、左右方向の幅寸法を広げることとなる。そのため、エアバッグ11は、展開膨張初期時、乗員Dの左右の大腿部TL,TRの間の狭い隙間H(図14参照)から、円滑に上方へ突出し、そしてその後、腰部Wを拘束できる左右方向の幅寸法を確保できるように、円滑に、左右方向に展開膨張することとができる。
なお、第1実施形態のエアバッグ装置10と従来の補強ベルトタイプとした後側ベルトを利用したエアバッグ装置との比較試験を行ったところ、第1実施形態のエアバッグ装置10では、従来の補強ベルトタイプのエアバッグ装置に比べて、支持材57の引き上げ完了時間は、約10%程度低減させることができた。また、ハンドル5に接近させて搭載した状態で作動させた場合を比較すると、第1実施形態のエアバッグ装置10では、後側ベルト37が一次膨張バッグ部20を上向きの膨張となるように制御しており、従来の補強ベルトタイプを使用したエアバッグ装置では、エアバッグがハンドル5に引っ掛かって膨張を完了させることができない場合でも、第1実施形態では、ハンドル5と干渉せずに、エアバッグ11の膨張を完了させることができることが、判明した。
また、図16〜22に示す第2実施形態のエアバッグ装置10Aのように、エアバッグ11に連結する後側ベルト37Aと前側ベルト32Aとを連続する一枚状のベルト材70から形成してもよい。このベルト材70は、可撓性を有したポリアミドやポリエステル等の織布から形成され、前側ベルト32Aにおける一次膨張バッグ部20の前壁20aの上部13bへの連結部位13cから、後側ベルト37Aにおけるエアバッグ11の後壁部14の下部14aへの連結部位14bにかけて、エアバッグ11に結合させずに、膨張完了時のエアバッグ11の外周に密着した状態で架け渡す連結部71を設けて、エアバッグ11に配設されている。なお、このベルト材70の構成の他、後側ベルト37A自体や前側ベルト32A自体は、第1実施形態の後側ベルト37や前側ベルト32と同様の構成であり、さらに、他のエアバッグ11、インフレーター44、ケース48、固定杆52、支持材57、及び、案内スリーブ61等は、第1実施形態と同様であり、第2実施形態の第1実施形態と同一の部位、部材は、第1実施形態と同一の符号を付して、説明を省略する。また、エアバッグ11の折り畳み工程やエアバッグ装置10Aの二輪車1への搭載工程も、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
このエアバッグ装置10Aでは、作動時、第1実施形態と同様に、図18〜21に示すように、前側ベルト32Aと後側ベルト37Aとの作用による一次膨張バッグ部20の膨張によって、支持材57を迅速に引き上げることができ、さらに、支持材57の支持位置SPへの引き上げ直後のエアバッグ11の上端11tの支持材57を乗り越えて前方移動する状態も、後側ベルト37A自体におけるエアバッグ11の後面11dの牽引により、抑制できて、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
そしてさらに、第2実施形態のエアバッグ装置10Aでは、図21,22に示すように、エアバッグ11の膨張完了直前のエアバッグ11の後面11d側の前後揺動運動を抑制できることから、膨張完了時に、迅速に、エアバッグ11の後面11d側の拘束面22を、乗員Dを受け止める位置に、停止させることができる。すなわち、ベルト材70の連結部71が、エアバッグ11の後面21a側の外周と、直接、結合されておらず、エアバッグ11自体と別々に移動可能としている。そのため、ベルト材70の連結部71が、エアバッグ11の膨張完了前から膨張完了時までの間、エアバッグ11における後側ベルト37Aと前側ベルト32Aとのエアバッグ11への連結部位13c,14b間となる連結部位間11fに対して、当たり、その連結部位間11fにおける拘束面22側の後面部位11gの後方移動が抑制され、その反動による後面部位11gの前方移動の移動量も抑えられることとなる。その結果、エアバッグ11の後面11dが、前後に揺動しようとしても、ベルト材70の連結部71が、前後に揺動する振幅を減衰させることとなって、エアバッグ11は、膨張完了時、迅速に、エアバッグ11の後面11d側の拘束面22を、乗員Dを受け止める位置に、停止させることが可能となる。
さらに、このベルト材70は、前側ベルト32の上端32aを、直接、後方へ牽引する作用も生じさせることから、支持材57の支持位置SPへの引き上げ直後のエアバッグ11の上端11tの支持材57を乗り越えて前方移動する状態も、第1実施形態の状態(図12の実線や図21の二点鎖線に示す一次膨張バッグ部20の上端20tの状態参照)より、抑制可能となる(図21の実線に示す一次膨張バッグ部20の上端20tの状態参照)。
なお、第1,2実施形態では、エアバッグ11の一次膨張バッグ部20を、インナバッグ27から形成した場合を示したが、アウタバッグ23の内周側に、一枚状の区画壁を設けて、前壁部13の左右方向の中央部位13aに、一次膨張バッグ部を形成したり、あるいは、前壁部13の左右方向の中央部位13aの左右両側に、略上下方向に沿って後壁部14や天井壁部17まで延びて連結される二枚の区画部を設けて、一次膨張バッグ部の左右両側に二つの二次膨張バッグ部を設けた三室タイプのエアバッグとしてもよい。但し、第1,2実施形態のような、アウタバッグ23内に、袋状のインナバッグ27を結合部30を利用して結合させつつ、一次膨張バッグ部20を形成する構造では、一次膨張バッグ部20自体の気密性を確保し易く、容易に、一次膨張バッグ部20を設けたエアバッグ11を製造することができる。
また、第1,2実施形態では、後側ベルト37,37Aの上端38を、後壁部14の下部14a側に連結させた場合を示したが、拘束面22による乗員Dの拘束に支障がなく、膨張完了時にエアバッグ11の後面11d側の拘束面22を乗員Dの受け止め位置に配置可能とし、かつ、支持材57の引き上げ時における一次膨張バッグ部20の前方移動を規制可能とする長さ寸法LBを確保できれば、後壁部14(二次膨張バッグ部21の後面21a)の上下方向の中間付近を超えるエリアまでの任意の位置に、後側ベルト37,37Aの上端38を連結させてもよい。
さらに、第1,2実施形態では、後側ベルト37,37Aの左右方向の幅寸法WBを、ケース48の周壁部50の左右方向の幅寸法WCと同等とした場合を示したが、その幅寸法WC以上としてもよい。但し、第1,2実施形態のように、後側ベルト37,37Aの下端39側を、ケース48の周壁部50の後面50cより後方の下方である取付壁部49の後端49bに取り付けた固定杆52に連結する場合には、左右の縁がケース48の周壁部50の左右から突き出る状態となって、シート7内に設ける左右方向のスペースが大きくなり、エアバッグ装置10,10Aを搭載し難くなることから、幅寸法WBは小さいことが望ましく、その結果、後側ベルト37,37Aの左右方向の幅寸法WBは、ケース48の周壁部50の外周側における左右方向の幅寸法WCと同等とすることが望ましい。
さらに、支持材57は、第1,2実施形態のような軽量化を図れる一体構造の逆U字形のパイプ材から形成せずに、複数のパイプ材等の剛性を有した金属等の棒材を連結して、形成したり、あるいは、金属等の板材から形成してもよい。
また、第1,2実施形態では、エアバッグ11と支持材57とをシート7の前端付近に収納した場合を示したが、作動時に、支持材に前面側を支持されて前方移動する乗員の腰部を拘束可能に、乗員の腰部の前方側に、腰部に近接して配置されれば、エアバッグと支持材とを、シート7より前方側のボディ2側に、収納させてもよい。
さらに、第1,2実施形態では、エアバッグ装置10,10Aを、シート7の前端付近に搭載したが、タンデムシートの場合には、後席の前端付近にも、本発明のエアバッグ装置を搭載してもよい。
さらにまた、図例の場合には、エアバッグ装置10,10Aを、スクータ型の二輪車1に搭載した場合を示したが、他のスポーツバイクタイプ等の自動二輪車に、本発明のエアバッグ装置を搭載してもよい。