JP6623320B2 - 表面処理銅箔、並びにこれを用いた銅張積層板及びプリント配線板 - Google Patents
表面処理銅箔、並びにこれを用いた銅張積層板及びプリント配線板 Download PDFInfo
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Description
[1] 銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔であって、
前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、
前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、
前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、
下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%である、表面処理銅箔。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕
[2] 前記表面処理皮膜の表面における20度鏡面光沢度Gs(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度Gs(85°)の各値により下記式(2)で算出される値が0〜10である、上記[1]に記載の表面処理銅箔。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2)
[3] 前記表面処理皮膜の表面において、20度鏡面光沢度Gs(20°)が0.5〜120%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が5〜200%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が75〜120%である、上記[1]又は[2]に記載の表面処理銅箔。
[4] 前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値が0.02〜0.15μmである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
[5] 前記表面処理皮膜の表面において、十点平均粗さRzjis値が0.5〜2.0μmである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔を用いて形成してなる、銅張積層板。
[7] 上記[6]に記載の銅張積層板を用いて形成してなる、プリント配線板。
本発明に従う表面処理銅箔は、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有し、前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%であることを特徴とする。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕
始めに、図3(a)の様に、輪郭線上にある計測しようとする凸部(粗化粒子)について、粒子の成長方向に、凸部の頂点Vを通る線Lを引く。次に、図3(b)の様に、この線Lに垂直に交わる上下2辺をもつ長方形(正方形も含む)Sqを描く。この長方形Sqは、上辺が頂点Vと交わり、下辺のいずれか一方の角が、凸部の根元のうち頂点から遠い方と交わる(この角を「R1」とする)。さらに長方形Sqの下辺のもう一方の角(この角を「R2」とする)は、上辺方向から線Lと平行に伸びる一辺と直交し、該一辺上に凸部の根元のもう一方が位置する(この点を「R2’」とする)。そして、図3(c)に示すように、このような長方形Sqの辺のうち、線Lと平行な一辺の寸法を粗化粒子の粒子高さ(h)とし、線Lと垂直な一辺の寸法を粗化粒子の粒子幅(w)とする。なお、以下の特殊な例を除き、長方形Sqを描いて計測した全て凸部を、それぞれ一粗化粒子とみなす。
まず、特に図示しないが、前記基準で計測される凸部のうち、粒子高さ(h)が0.02μm未満のものは、本発明の注目する密着性と高周波特性に影響を及ぼさず、また正確な測定も困難であるため、計測対象とはせず、この場合は本発明の「粗化粒子」には含めないものとする。
なお、特に図示はしないが、主部から分岐した突起部が複数ある場合は、それぞれの突起部毎に上記基準に沿って個別に判断する。
上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。
例えば、同じ線密度(d)をもつ粗化面であっても、粗化粒子の粒子幅が小さい場合には、すなわち、線被覆率(c)が小さい場合には、粗化粒子が存在しない部分が多くなるため、上述の切り取り線の効果は薄れると考えられる。一方、粗化粒子の粒子幅が大きい場合には、すなわち、線被覆率(c)が大きい場合には、粗化粒子が存在しない部分が少なくなるため、上述の切り取り線の効果は高まると考えられる。
通常、鏡面光沢度の測定は、単一の受光角で測定評価することが一般的であるが、本発明の表面処理銅箔の粗化面は、粗化粒子の形成により複雑な形状となっているため、単一の受光角ではその表面形状の特性を十分に評価することは困難である。そのため、本発明の表面処理銅箔の粗化面においては、下記の3つの受光角を使って鏡面光沢度を測定することにより、粗化面の表面形状を更に詳しく評価することが可能となる。
なお、本発明の表面処理銅箔においては、上述の粗化粒子の高さ(h)の平均値、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値、及び粗化粒子の線被覆率(c)の評価がより優先されるが、鏡面光沢度にもある程度の傾向が見られるため、上記評価に加え、下記の3つの受光角による鏡面光沢度の評価を加えることにより、本発明の銅箔の粗化面における粗化粒子の微細な形状の特徴についても、更に詳しく評価することができる。
なお、当然ではあるが、上述の通り粗化面における鏡面光沢度の測定は、平滑な表面における測定ではないため、3つの受光角における測定値は単純な比例関係にあるものではない。
60度鏡面光沢度Gs(60°)は、特に高周波特性と耐熱密着性とを両立させる観点で、好ましくは5〜200%であり、より好ましくは10〜200%であり、更に好ましくは20〜200%であり、より更に好ましくは20〜150%である。
85度鏡面光沢度Gs(85°)は特に高周波特性と耐熱密着性とを両立させる観点で、好ましくは75〜120%であり、より好ましくは75〜115%であり、更に好ましくは80〜115%であり、より更に好ましくは85〜115%である。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2)
なお、詳しい測定条件は後述の実施例にて説明する。
次に、本発明の表面処理銅箔の好ましい製造方法について、その一例を説明する。本発明では、銅箔基体の表面に、粗化粒子を形成する粗化処理を行うことが好ましい。
銅箔基体としては、粗大な凹凸が存在しない平滑で光沢のある表面をもつ、電解銅箔や圧延銅箔を用いることが好ましい。中でも、生産性やコストの観点で電解銅箔を用いることが好ましく、特に、「両面光沢箔」と一般的に呼称されている両面が平滑な電解銅箔を用いることがより好ましい。
なお、上記のような銅箔基体の表面において、本発明の微細な粗化粒子を正常に形成する観点から、銅箔基体の表面における20度鏡面光沢度Gs(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度Gs(85°)は、いずれも50%以上であることが望ましい。
粗化処理は、例えば下記に示すような粗化めっき処理(1)を行うことが好ましい。なお、必要に応じて固定めっき処理(2)を組み合せてもよい。
粗化めっき処理(1)は、銅箔基体の少なくとも一方の面上に粗化粒子を形成する処理である。具体的には硫酸銅浴でめっき処理を行う。このような硫酸銅浴(粗化めっき液基本浴)には、粗化粒子の脱落、即ち「粉落ち」の防止を目的としたモリブデン(Mo)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、セレン(Se)、テルル(Te)、タングステン(W)等の従来から知られている添加剤の添加が可能であり、特にモリブデン(Mo)を添加することが好ましい。本発明者は、鋭意研究を行った結果、下記の要因が表面処理銅箔の表面性状に影響を及ぼすことを見出し、精妙にそれらの条件を設定することで、本発明の効果である高周波特性及び密着性(常態密着性及び耐熱密着性)の要求特性を高い水準で満足させることができることを発見した。
本発明において、めっき処理の方式は、例えば大量生産及び生産コストの観点で、ロール・ツー・ロール方式でのめっき処理が好ましい。
例えば、バッチ式のようなロール・ツー・ロール方式以外のめっき処理の場合、本発明の処理は長くとも3秒程度という非常に短時間で終了するため、このようなガス発生による攪拌は特に考慮する必要は無い。
固定めっき処理(2)は、上記粗化めっき処理(1)で表面処理をした銅箔基体に平滑なかぶせめっきを行う処理である。具体的には硫酸銅浴でめっき処理を行う。通常、この処理は、粗化粒子の脱落を防止するため、すなわち粗化粒子を固定化するために行なわれる。本発明では、固定めっき処理(2)は必須ではなく、必要に応じて行うことができ、例えば、銅張積層板の製造において、ポリイミド樹脂等の硬い樹脂を用いたフレキシブル基板と組み合わせる場合などに、粗化面を硬い樹脂に対応させるために行うことが好ましい。
めっき処理の方式は、例えば大量生産及び生産コストの観点で、ロール・ツー・ロール方式でのめっき処理が好ましい。固定めっき処理をロール・ツー・ロール方式で行う場合に、処理速度と、極間流速との差分の絶対値は、9m/分未満とすると、正常な固定めっきを施すことが難しくなり、粉落ちが発生し易くなる。また、24m/分を超えると、粗化粒子の根元が埋まり易くなり、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値を大きくすることが難しくなり、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、処理速度と極間流速との差分の絶対値は、9〜24m/分とすることが好ましい。なお、固定めっき処理では、処理速度の流の方向(処理方向)と極間流速の流の方向とは一致していなくてもよく、互いに逆向きになる場合は、一方の流速は他方の流速に対してマイナスの流速として計算する。
すなわち、本発明の表面処理銅箔において、粗化面における鏡面光沢度は、粗化粒子の高さ(h)の平均値、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値、及び粗化粒子の線被覆率(c)等で表される粗化粒子の粒子形状の特徴を総合的に反映した値であり、特に、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値と粗化粒子の線被覆率(c)との積に、概ね相関する値となる。そのため、粗化面における鏡面光沢度のみを判断指標として、粗化面の表面性状を制御することは困難であるが、上記相関関係を考慮して、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値及び粗化粒子の線被覆率(c)を適宜制御することにより、所望の鏡面光沢度とすることができる。
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、5〜13g/L
硫酸・・・100〜250g/L
モリブデン酸アンモニウム・・・モリブデン(原子)換算で、500〜1000mg/L
処理速度・・・5〜20m/分
処理方向極間流速・・・5〜20m/分
電流密度・・・5〜50A/dm2
処理時間・・・0.5〜3.0秒
浴温・・・15〜20℃
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、50〜70g/L
硫酸・・・80〜160g/L
処理速度・・・5〜20m/分
極間流速・・・1〜30m/分
電流密度・・・1〜5A/dm2
処理時間・・・1〜10秒
浴温・・・50〜70℃
以下に、本発明の表面処理銅箔の作製方法をまとめる。
本発明では、以下の形成工程(S1)〜(S5)に従い、表面処理銅箔を作製することが好ましい。
(S1)粗化処理層の形成工程
銅箔基体上に、粗化粒子の電析により、微細な凹凸表面をもつ粗化処理層を形成する。
(S2)下地層の形成工程
粗化処理層上に、必要によりNiを含有する下地層を形成する。
(S3)耐熱処理層の形成工程
粗化処理層上又は下地層上に、必要によりZnを含有する耐熱処理層を形成する。
(S4)防錆処理層の形成工程
粗化処理層上、又は必要により粗化処理層上に形成した下地層及び/又は耐熱処理層上に、必要によりCrを含有する防錆処理層を形成する。
(S5)シランカップリング剤層の形成工程
粗化処理層上に、直接シランカップリング剤層を形成するか、又は下地層、耐熱処理層及び防錆処理層の少なくとも1層を形成した中間層を介してシランカップリング剤層を形成する。
粗化処理を施すための基材となる銅箔基体として、下記カソード及びアノードを用い、下記組成の硫酸銅電解液を使用して下記電解条件により、M面における十点平均粗さRzjisが0.9〜1.8μmであり、20度鏡面光沢度Gs(20°)が179.0〜195.2%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が365.8〜412.1%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が121.5〜125.7%であり、厚さ18μmである、ロール状の電解銅箔(両面光沢箔)を作製した。なお、電解銅箔のM面における十点平均粗さRzjisと鏡面光沢度は、後述する表面処理銅箔と同様の条件で測定された値である。詳しくは、後述の評価方法の欄にて説明する。
カソード:#1000〜#2000のバフ研磨により粗さを調整されたチタン製の回転ドラム
アノード:寸法安定性陽極DSA(登録商標)
<電解液組成>
Cu :80g/L
H2SO4 :70g/L
塩素濃度 :25mg/L
(添加剤)
・3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム :2mg/L
・ヒドロキシエチルセルロース :10mg/L
・低分子量膠(分子量3000) :50mg/L
<電解条件>
浴温 :55℃
電流密度 :45A/dm2
実施例1では、以下の工程[1]〜[3]を行い、表面処理銅箔を得た。以下詳しく説明する。
上記製造例にて作製した、M面における十点平均粗さRzjisが0.9μmであり、20度鏡面光沢度Gs(20°)が188.7%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が385.7%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が121.5%である電解銅箔を銅箔基体とし、該M面に、ロール・ツー・ロール方式で粗化めっき処理を施した。この粗化めっき処理は、必要に応じて2段階の電気めっき処理により行った。粗化めっき処理(1)は、下記の粗化めっき液基本浴組成を用い、銅濃度とモリブデン(Mo)濃度を下記表1記載の通りとし、かつ、処理速度、処理方向極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとした。モリブデン(Mo)濃度は、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物を粗化めっき液基本浴に添加し溶解させることで調整した。また、続けて固定めっき処理(2)を行う場合は、下記固定めっき液組成を用い、処理速度、極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとして行った。なお、固定めっき処理を行わない場合は下記[2]の工程に進んだ。
H2SO4 :150g/L
浴温 :18℃
Cu :60g/L
H2SO4 :120g/L
浴温 :60℃
続いて、上記[1]で形成した粗化処理層の表面に、下記の条件で、Ni、Zn、Crの順に金属めっきを施して金属処理層(中間層)を形成した。
Ni :40g/L
H3BO3 :5g/L
浴温 :20℃
pH :3.6
電流密度 :0.2A/dm2
処理時間 :10秒
Zn :2.5g/L
NaOH :40g/L
浴温 :20℃
電流密度 :0.3A/dm2
処理時間 :5秒
Cr :5g/L
浴温 :30℃
pH :2.2
電流密度 :5A/dm2
処理時間 :5秒
最後に、上記[2]にて形成した金属処理層(特に、最表面のCrめっき層)の上に、濃度0.2質量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液を塗布し、100℃で乾燥させ、シランカップリング剤層を形成した。
実施例2〜9及び比較例1〜7は、粗化処理層の形成工程[1]において、銅箔基体として、上記表1に示す十点平均粗さRzjisと鏡面光沢度を有するM面をもつ上記製造例の電解銅箔を用い、粗化めっき処理(1)及び固定めっき処理(2)の各条件を、上記表1記載の通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて、表面処理銅箔を得た。
上記実施例及び比較例に係る表面処理銅箔について、下記に示す特性評価を行った。
各特性の評価条件は下記の通りであり、特に断らない限り、各測定は常温(20℃±5℃)にて行ったものである。結果を表2に示す。
表面処理銅箔の断面観察は、以下手順ステップ(i)〜(iii)にて、画像解析により行った。
まず、(i)表面処理銅箔を5mm角で切出し、表面処理銅箔の粗化面側から、粗化面に対して垂直に切断し、切断面をイオンミリング装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「IM4000」)を用いて、ステージモードC1(スイング角度:±15°、スイング速度:6往復/min)、加速電圧6kVの条件で、30分間精密研磨する。作製した測定用試料の表面に露出した表面処理銅箔の加工面を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「SU8020」)を用いて、加工面の垂直方向から加速電圧3kVにて5万倍の二次電子像を観察し、粗化面付近の断面写真(SEM画像、縦1.89μm×横2.54μm)を準備する。
表面処理銅箔の粗化面について、光沢度計(日本電色工業株式会社製、VG7000)を使用し、JIS Z 8741−1997に基づき、20度鏡面光沢Gs(20°)、60度鏡面光沢Gs(60°)及び85度鏡面光沢Gs(85°)をそれぞれ測定した。なお、測定は、受光角毎に、表面処理銅箔の長手方向(搬送方向)に対して直交方向で3回実施し、測定値の全て(N=3)を平均して、各受光角に対応する鏡面光沢度とした。
なお、上記製造例で作製した電解銅箔のM面における鏡面光沢度についても、同様の条件で測定した。
表面処理銅箔の粗化面において、接触式表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製、「サーフコーダーSE1700」)用いて、JIS B 0601:2001で定義される十点平均粗さRzjis(μm)を表面処理銅箔の長手方向(搬送方向)に対して直交方向で測定した。
なお、上記製造例で作製した電解銅箔のM面における十点平均粗さRzjis(μm)についても、同様の条件で測定した。
高周波特性の評価として高周波帯域での伝送損失を測定した。詳細を以下に説明する。
表面処理銅箔の粗化面を、パナソニック株式会社製のポリフェニレンエーテル系低誘電率樹脂基材であるMEGTRON7(厚さ60μm)を2枚重ねた両面に面圧3.5MPa、200℃の条件で2時間プレスすることにより貼り合わせて、両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板に回路加工を行い、伝送路幅300μm、長さ70mmのマイクロストリップラインを形成した回路基板を作製した。この回路基板の伝送路に、ネットワークアナライザ(KeysightTechnologies社製、「N5247A」)を用いて高周波信号を伝送し、伝送損失を測定した。特性インピーダンスは50Ωとした。
伝送損失の測定値は、絶対値が小さいほど伝送損失が少なく、高周波特性が良好であることを意味する。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき高周波特性を評価した。
○:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB未満、且つ100GHzにおける伝送損失の絶対値が6dB未満
△:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB未満、且つ100GHzにおける伝送損失の絶対値が6dB以上
×:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB以上
常態密着性の評価として、JIS C 6481:1996に基づき、剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分(表面処理銅箔)を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。株式会社東洋精機製作所製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき密着性を評価した。
<常態密着性の評価基準>
○:剥離強度が0.55kN/m以上
△:剥離強度が0.50kN/m以上0.55kN/m未満
×:剥離強度が0.50kN/m未満
耐熱密着性の評価として、JIS C 6481:1996に基づき、加熱処理後の剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。この回路配線板を、300℃の加熱オーブンにて1時間加熱した後、常温まで自然空冷した。その後、株式会社東洋精機製作所製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき耐熱密着性を評価した。
<耐熱密着性の評価基準>
○:剥離強度が0.50kN/m以上
△:剥離強度が0.40kN/m以上0.50kN/m未満
×:剥離強度が0.40kN/m未満
上記の高周波特性、常態密着性及び耐熱密着性のすべてを総合し、下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でA及びBを合格レベルとした。
<総合評価の評価基準>
A(優):全ての評価が○である。
B(合格):全ての評価で×評価がない。
C(不合格):少なくとも1つの評価が×である。
Claims (7)
- 銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔であって、
前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、
前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、
前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、
下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%である、表面処理銅箔。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕 - 前記表面処理皮膜の表面における20度鏡面光沢度Gs(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度Gs(85°)の各値により下記式(2)で算出される値が0〜10である、請求項1に記載の表面処理銅箔。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2) - 前記表面処理皮膜の表面において、20度鏡面光沢度Gs(20°)が0.5〜120%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が5〜200%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が75〜120%である、請求項1又は2に記載の表面処理銅箔。
- 前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値が0.02〜0.15μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
- 前記表面処理皮膜の表面において、十点平均粗さRzjis値が0.5〜2.0μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理銅箔の前記表面処理皮膜が形成された面を樹脂基材と貼着させてなる、銅張積層板。
- 請求項6に記載の銅張積層板を用いて形成してなる、プリント配線板。
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