≪黒色組成物≫
黒色組成物は、(A)基材成分と、(B)カーボンブラックと、(C)加熱により所定の構造のイミダゾール化合物を発生させる化合物(以下、(C)熱イミダゾール発生剤とも記す。)とを含む。黒色組成物に含まれる(B)カーボンブラックは、ポリアミック酸を分散剤として用いて分散処理されたものである。以下、黒色組成物が含んでいてもよい、必須又は任意の成分について順に説明する。
<(A)基材成分>
(A)基材成分は、黒色組成物に、当該黒色組成物を膜形状や種々の三次元の立体形状に成形可能とする賦形性を与える成分である。(A)基材成分は、黒色組成物に所望する賦形性を与えることができる材料であれば特に限定されない。(A)基材成分としては、典型的には高分子化合物からなる樹脂材料や、加熱により架橋して高分子化合物を生じる反応性の低分子化合物が用いられる。
〔樹脂材料〕
(A)基材成分のうち、樹脂材料の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等)、FR−AS樹脂、FR−ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR−ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等が挙げられる。
〔反応性の低分子化合物〕
(A)基材成分のうち、加熱により架橋して高分子化合物を生じる反応性の低分子化合物としては、2官能以上の多官能エポキシ化合物が挙げられる。多官能エポキシ化合物を基材成分として含む黒色組成物が所定の温度以上に加熱されると、後述する(C)熱イミダゾール発生剤が発生させるイミダゾール化合物の作用によって、多官能エポキシ化合物が有するエポキシ基同士が架橋され、耐熱性や機械的特性に優れる黒色成形体が得られる。
多官能エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されない。多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、脂環式エポキシ化合物も、高硬度の硬化物を与える点で多官能エポキシ化合物として好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂や、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。これらの脂環式エポキシ化合物の具体例の中では、高硬度の硬化物を与えることから、下記式(a1)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましい。
(式(a1)中、Zは単結合、−O−、−O−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−CBr
2−、−C(CBr
3)
2−、−C(CF
3)
2−、及び−R
a19−O−CO−からなる群より選択される2価の基であり、R
a19は炭素原子数1〜8のアルキレン基であり、R
a1〜R
a18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
式(a1)中、Ra19は、炭素原子数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
Ra1〜Ra18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該有機基は、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
Ra1〜Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、及び炭素原子数1〜5のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましい。特に黒色組成物を用いて形成される黒色成形体の硬度の観点からRa1〜Ra18が全て水素原子であるのがより好ましい。
式(a1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては以下の化合物1及び2が挙げられる。
また、(A)基材成分としては、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂が好ましい。後述する(C)熱イミダゾール発生剤は、(A)基材成分における、加熱による、分子内での芳香環形成反応及び/又は分子間での架橋反応を促進させる。
分子内での芳香環形成反応によれば、樹脂を構成する分子鎖の構造が剛直化し、黒色組成物を用いて耐熱性及び機械的特性に優れる黒色成形体を得やすい。分子内での芳香環形成反応のうち好ましい反応としては、例えば、下式(I)〜(VI)で示される反応が挙げられる。なお、下式中の反応は芳香環形成反応の一例にすぎず、(A)基材成分として使用される、加熱により分子内での芳香環形成反応を生じさせる樹脂の構造は、下式中に示される前駆体ポリマーの構造に限定されない。
分子間での架橋反応によれば、樹脂を構成する分子鎖が相互に架橋され、三次元架橋構造が形成される。このため、加熱により架橋反応を生じさせる樹脂を(A)基材成分として含む黒色組成物を用いると、耐熱性及び機械的特性に優れる黒色成形体が得られる。
加熱により分子間の架橋反応を生じさせる樹脂としては、分子中に、水酸基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、及びエポキシ基から選択される基を有する樹脂が好ましい。水酸基を有する樹脂を用いる場合、後述する(C)熱イミダゾール発生剤が生じさせるイミダゾール化合物の作用によって、樹脂に含まれる分子間に水酸基間の脱水縮合による架橋が生じる。カルボン酸無水物基を有する樹脂を用いる場合、酸無水物基の加水分解により生じるカルボキシル基同士が、(C)熱イミダゾール発生剤が生じさせるイミダゾール化合物の作用によって脱水縮合して架橋する。カルボキシル基を有する樹脂を用いる場合、(C)熱イミダゾール発生剤が生じさせるイミダゾール化合物の作用によって、樹脂に含まれる分子間にカルボキシル基間の脱水縮合による架橋が生じる。エポキシ基を有する樹脂を用いる場合、(C)熱イミダゾール発生剤が生じさせるイミダゾール化合物の作用によって、樹脂に含まれる分子間にエポキシ基間の重付加反応による架橋が生じる。
分子中に水酸基を有する樹脂としては、例えばノボラック樹脂が挙げられる。ノボラック樹脂としては、特に限定されないが、フェノール類1モルに対して、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド等の縮合剤を0.5〜1.0モルの割合で、酸性触媒下で縮合反応させることにより得られるものが好ましい。
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(前記いずれのアルキル基も炭素数1〜4である)、α−ナフトール、β−ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
フェノール類の中でも、m−クレゾール及びp−クレゾールが好ましく、m−クレゾールとp−クレゾールとを併用することがより好ましい。両者の配合比率を調整することによって、ホトレジストとしての感度、耐熱性等の諸特性を調節することができる。m−クレゾールとp−クレゾールの配合比率は特に限定されないが、m−クレゾール/p−クレゾール=3/7〜8/2(質量比)が好ましい。m−クレゾールの比率が上記下限値未満になると感度が低下する場合があり、上記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
ノボラック樹脂の製造に使用される酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類、蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸性触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算によるノボラック樹脂の質量平均分子量は、1000〜50000が好ましい。
分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂としては、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、及びイタコン酸無水物から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。このような重合体としては、スチレン−マレイン酸共重合体が好ましい。
分子中にカルボキシル基を有する樹脂としては、前述の分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂中の酸無水物基を加水分解して得られる樹脂や、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びイタコン酸から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。
分子中にエポキシ基を有するエポキシ基含有樹脂については、詳細に後述する。
このような加熱により分子内での芳香環形成反応や、分子間での架橋反応を生じさせる化合物の中では、黒色組成物を用いて耐熱性に優れる黒色成形体を形成しやすいことから、ポリアミック酸、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾチアゾール前駆体、ポリベンゾイミダゾール前駆体、スチレン−マレイン酸共重合体、及びエポキシ基含有樹脂が好ましい。以下、これらの樹脂について説明する。
〔ポリアミック酸〕
ポリアミック酸は、ポリイミド樹脂の前駆体となる基材成分である。黒色組成物を所望の形状に成形した後、黒色組成物を、後述する(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度よりも高い温度に加熱すると、黒色組成物中でイミダゾール化合物が発生する。このため、(A)基材成分としてのポリアミック酸と、(C)熱イミダゾール発生剤と、を含む黒色組成物を用いる場合、加熱により発生するイミダゾール化合物の作用によって、ポリアミック酸からポリイミド樹脂が生成する閉環反応が促進され、耐熱性に優れるポリイミド樹脂をマトリックスとして含有する、耐熱性に優れる黒色成形体が形成される。
ポリアミック酸の分子量は、質量平均分子量として、5,000〜30,000であるのが好ましく、10,000〜20,000であるのがより好ましい。かかる範囲内の質量平均分子量のポリアミック酸を用いる場合、耐熱性に優れる黒色成形体を形成しやすい。
好適なポリアミック酸としては、例えば、下式(A1)で表される構成単位からなるポリアミック酸が挙げられる。
(式(A1)中、R
a20は4価の有機基であり、R
a21は2価の有機基であり、nは式(A1)で表される構成単位の繰り返し数である。)
式(A1)中、Ra20及びRa21の炭素数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。Ra20及びRa21は、それぞれ、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組み合わせた基であってもよい。Ra20及びRa21は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Ra20及びRa21が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra20及びRa21に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra20及びRa21に含まれるのがより好ましい。
ポリアミック酸は、通常、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させることにより調製される。以下、ポリアミック酸の調製に用いられる、テトラカルボン酸二無水物成分、ジアミン成分、及びポリアミック酸の製造方法について説明する。
[テトラカルボン酸二無水物成分]
ポリアミック酸の合成原料となるテトラカルボン酸二無水物成分は、ジアミン成分と反応することによりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物成分は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよく、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
[ジアミン成分]
ポリアミック酸の合成原料となるジアミン成分は、テトラカルボン酸二無水物成分と反応することによりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。ジアミン成分は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミン成分は、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミン成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジアミンの好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−9H−フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−9H−フルオレン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエタン−1,1−ジイル)]ジアニリン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
[ポリアミック酸の製造方法]
以上説明した、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを、両者を溶解させることができる溶媒中で反応させることにより、ポリアミック酸が得られる。ポリアミック酸を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の使用量は特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物成分1モルに対して、ジアミン成分を0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
ポリアミック酸の合成に用いることができる溶媒としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びγ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶媒や、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを用いるのが好ましい。
ポリアミック酸を合成する際の溶媒の使用量は、所望の分子量のポリアミック酸を合成できれば特に限定されない。典型的には、溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物成分の量とジアミン成分の量との合計100質量部に対して、100〜4000質量部が好ましく、150〜2000質量部がより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させる際の温度は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分との反応温度は、−5〜150℃が好ましく、0〜120℃がより好ましく、0〜70℃が特に好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させる時間は、反応温度によっても異なるが、典型的には、1〜50時間が好ましく、2〜40時間がより好ましく、5〜30時間が特に好ましい。
以上の方法によれば、ポリアミック酸の溶液又はペーストが得られる。かかる溶液又はペーストをそのまま黒色組成物の調製に用いてもよい。また、ポリアミック酸の溶液又はペーストから溶媒除去して得られる固体状のポリアミック酸を黒色組成物の調製に用いてもよい。
〔ポリベンゾオキサゾール前駆体〕
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、典型的には、芳香族ジアミンジオールと、特定の構造のジカルボニル化合物とを反応させて製造される。以下、芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物と、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に用いられる溶剤と、ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法とについて説明する。
[芳香族ジアミンジオール]
芳香族ジアミンジオールとしては、従来よりポリベンゾオキサゾールの合成に使用されているものを特に制限なく使用することができる。芳香族ジアミンジオールとしては、下式(a2)で表される化合物を用いるのが好ましい。芳香族ジアミンジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(式(a2)中、R
a22は1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、式(a2)で表される芳香族ジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせに関して、それぞれの組み合わせでは、アミノ基と水酸基とは、R
a22に含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合している。)
式(a2)中、Ra22は、1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、その炭素原子数は6〜50が好ましく、6〜30がより好ましい。Ra22は、芳香族基であってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。Ra22に含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−等が挙げられ、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−が好ましい。
Ra22に含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。Ra22中のアミノ基及び水酸基と結合する芳香環はベンゼン環であるのが好ましい。Ra22中のアミノ基及び水酸基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基及び水酸基と結合する環はベンゼン環であるのが好ましい。
R
a22の好適な例としては、下記式(a1−1)〜(a1−9)で表される基が挙げられる。
(式(a1−1)中、X
1は、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。式(a1−2)〜(a1−5)中、Y
1は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。)
上記式(a1−1)〜(a1−9)で表される基は、芳香環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
上記式(a2)で表される化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3−フルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,6−ジアミノ−1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノ−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルフィド、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、ジ[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ジ[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシジベンゾフラン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシフルオレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシキサンテン、9,9−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
これらの中では、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
[ジカルボニル化合物]
ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成原料としては、以上説明した芳香族ジアミンジオールとともに、下式(a3)で表されるジカルボニル化合物を用いる。前述の芳香族ジアミンジオールと、下式(a3)で表されるジカルボニル化合物とを縮合させることにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
(式(a3)中、R
a23は2価の有機基であり、Aは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
式(a3)中のRa23は、芳香族基であってもよく、脂肪族基であってもよく、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基であってもよい。得られるポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性、機械的特性、耐薬品性等が良好である点から、Ra23は、芳香族基及び/又は脂環式基を含む基であるのが好ましい。Ra23に含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
Ra23は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Ra23が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra23に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra23に含まれるのがより好ましい。
式(a3)中、2つのAの一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子であってもよいが、2つのAがともに水素原子であるか、2つのAがともにハロゲン原子であるのが好ましい。Aがハロゲン原子である場合、Aとして塩素、臭素、及びヨウ素が好ましく、塩素がより好ましい。
式(a3)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともに水素原子であるジアルデヒド化合物を用いる場合、下式(A2)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体が製造される。
(式(A2)中、R
a22及びR
a23は、式(a2)及び式(a3)と同様であり、nは式(A2)で表される単位の繰り返し数である。)
式(a3)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともにハロゲン原子であるジカルボン酸ジハライドを用いる場合、下式(A3)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体が製造される。
(式(A3)中、R
a22及びR
a23は、式(a2)及び式(a3)と同様であり、nは式(A3)で表される単位の繰り返し数である。)
以下、ジカルボニル化合物として好適な化合物である、ジアルデヒド化合物と、ジカルボン酸ジハライドとについて説明する。
(ジアルデヒド化合物)
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジアルデヒド化合物は、下式(2−1)で表される化合物である。ジアルデヒド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(式(a2−1)中、R
a23は、式(a3)と同様である。)
式(a2−1)中のR
a23として好適な芳香族基又は芳香環含有基としては、以下の基が挙げられる。
(上記式中、X
2は、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。X
2が複数である場合、複数のX
2は同一でも異なっていてもよい。Y
2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。p及びqは、それぞれ0〜3の整数である。)
式(a2−1)中のR
a23として好適な脂環式基又は脂環含有基としては、以下の基が挙げられる。
(上記式中、X
2は、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。X
2が複数である場合、複数のX
2は同一でも異なっていてもよい。Y
2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Zは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、及び−CH=CH−からなる群より選択される1種である。pは、それぞれ0〜3の整数である。)
上記のRa23として好適な基に含まれる芳香環又は脂環は、その環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
式(a2−1)で表されるジアルデヒド化合物が芳香族ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、ベンゼンジアルデヒド類、ピリジンジアルデヒド類、ピラジンジアルデヒド類、ピリミジンジアルデヒド類、ナフタレンジアルデヒド類、ビフェニルジアルデヒド類、ジフェニルエーテルジアルデヒド類、ジフェニルスルホンジアルデヒド類、ジフェニルスルフィドジアルデヒド類、ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類、[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類、2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類、及び含フルオレンジアルデヒドが挙げられる。
ベンゼンジアルデヒド類の具体例としては、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、3−フルオロフタルアルデヒド、4−フルオロフタルアルデヒド、2−フルオロイソフタルアルデヒド、4−フルオロイソフタルアルデヒド、5−フルオロイソフタルアルデヒド、2−フルオロテレフタルアルデヒド、3−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、5−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルテレフタルアルデヒド、3,4,5,6−テトラフルオロフタルアルデヒド、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタルアルデヒド、及び2,3,5,6−テトラフルオロテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
ピリジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリジン−2,3−ジアルデヒド、ピリジン−3,4−ジアルデヒド、及びピリジン−3,5−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピラジンジアルデヒド類の具体例としては、ピラジン−2,3−ジアルデヒド、ピラジン−2,5−ジアルデヒド、及びピラジン−2,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピリミジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリミジン−2,4−ジアルデヒド、ピリミジン−4,5−ジアルデヒド、及びピリミジン−4,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
ナフタレンジアルデヒド類の具体例としては、ナフタレン−1,5−ジアルデヒド、ナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジアルデヒド、2,3,4,5,6,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチル−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−ビス(トリフルオロメチル)メトキシ−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、及び1,5−ビス[ビス(トリフルオロメチル)メトキシ]−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド等が挙げられる。
ビフェニルジアルデヒド類の具体例としては、ビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、ビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、ビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、ビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、及び6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
ジフェニルエーテルジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,4’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルエーテル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
ジフェニルスルホンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルホン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
ジフェニルスルフィドジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
ジフェニルケトンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルケトン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルケトン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類の具体例としては、ベンゼン1,3−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−ホルミルフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類の具体例としては、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド等が挙げられる。
2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類の具体例としては、2,2−ビス[4−(2−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド等が挙げられる。
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
含フルオレンジアルデヒドの具体例としては、フルオレン−2,6−ジアルデヒド、フルオレン−2,7−ジアルデヒド、ジベンゾフラン−3,7−ジアルデヒド、9,9−ビス(4−ホルミルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ホルミルフェニル)フルオレン、及び9−(3−ホルミルフェニル)−9−(4’−ホルミルフェニル)フルオレン等が挙げられる
また、下式で表される、ジフェニルアルカンジアルデヒド又はジフェニルフルオロアルカンジアルデヒドも、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用できる。
さらに、下記式で表されるイミド結合を有する化合物も、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用することができる。
式(a2−1)で表されるジカルボニル化合物が脂環式基を含む脂環式ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、シクロヘキサン−1,4−ジアルデヒド、シクロヘキサン−1,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,4−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−エン−8,9−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,4−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−7,8−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロヘキシル−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−4,4’−ジアルデヒド、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、3,3’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、3,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、4,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6’−ジアルデヒド、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,6’−ジアルデヒド、及び1,3−ジホルミルアダマンタン等が挙げられる。
以上説明したジアルデヒド化合物の中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を与えるポリベンゾオキサゾール前駆体を得やすいことから、イソフタルアルデヒドが好ましい。
(ジカルボン酸ジハライド)
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジカルボン酸ジハライドは、下式(a2−2)で表される化合物である。ジカルボン酸ジハライドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(式(a2−2)中、R
a23は、式(a3)と同様であり、Halはハロゲン原子である。)
式(a2−2)中、Halとしては、塩素、臭素、及びヨウ素が好ましく、塩素がより好ましい。
式(a2−2)で表される化合物として好適な化合物としては、ジアルデヒド化合物の好適な例として前述した化合物が有する2つのアルデヒド基を、ハロカルボニル基、好ましくはクロロカルボニル基に置換した化合物が挙げられる。
以上説明したジカルボン酸ジハライドの中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を与えるポリベンゾオキサゾール前駆体を得やすいことから、テレフタル酸二クロライドが好ましい。
[溶剤]
ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤は特に限定されず、従来からポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に使用されていた溶剤から適宜選択できる。ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤としては、下式(a4)で表される化合物を含む溶剤を用いるのが好ましい。
(式(a4)中、R
a24及びR
a25は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R
a26は下式(a4−1)又は下式(a4−2):
で表される基である。式(a4−1)中、R
a27は、水素原子又は水酸基であり、R
a28及びR
a29は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。式(a4−2)中、R
a30及びR
a31は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
上記式(a4)で表される化合物を含む溶剤を用いてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合、ポリベンゾオキサゾール前駆体を低温で熱処理する場合でも、ポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱する際の樹脂の着色による透明性の低下を抑制しつつ、引張伸度のような機械的特性や耐薬品性に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を製造できる。
また、上記式(a4)で表される化合物を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱してポリベンゾオキサゾール樹脂を製造する場合、ポリベンゾオキサゾール樹脂の表面での、膨れ、割れ、発泡等の欠陥の発生を抑制できる。このため、上記式(a4)で表される化合物を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を含む膜を加熱してポリベンゾオキサゾール樹脂のフィルムを製造する場合、割れ、ブリスター、ピンホール等の欠陥がなく外観に優れるフィルムを製造しやすい。
式(a4)で表される化合物のうち、Ra26が式(a4−1)で表される基である場合の具体例としては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−エチル,N,2−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチル−2−メチルプロピオンアミド、N,N,2−トリメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、N−エチル−N,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、及びN,N−ジエチル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド等が挙げられる。
式(a4)で表される化合物のうち、Ra26が式(a4−2)で表される基である場合の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,N’,N’−テトラエチルウレア等が挙げられる。
式(a4)で表される化合物のうち、特に好ましいものとしては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアが好ましい。N,N,2−トリメチルプロピオンアミドの大気圧下での沸点は175℃であって、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの大気圧下での沸点は177℃である。このように、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、芳香族ジアミンジオール、ジカルボニル化合物、及び生成するポリベンゾオキサゾール前駆体を溶解可能な溶媒の中では比較的沸点が低い。このため、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアから選択される少なくとも1種を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を用いてポリベンゾオキサゾール樹脂を形成すると、ポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱する際に、生成するポリベンゾオキサゾール樹脂中に溶剤が残存しにくく、得られるポリベンゾオキサゾール樹脂の引張伸度の低下等を招きにくい。
さらに、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、EU(欧州連合)でのREACH規則において、有害性が懸念される物質であるSVHC(Substance of Very High Concern、高懸念物質)に指定されていないように、有害性が低い物質である点でも有用である。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤が式(a4)で表される化合物を含む場合、溶剤中の式(a4)で表される化合物の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
溶剤が式(a4)で表される化合物を含む場合に、式(a4)で表される化合物とともに使用することができる有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素極性溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸−n−ブチル等のエステル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状エステル類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
[ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法]
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、前述の芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物とを、溶剤中で、周知の方法に従って反応させることによって製造される。以下ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法の代表的な例として、ジカルボニル化合物がジアルデヒド化合物である場合の製造方法と、ジカルボニル化合物がジカルボン酸ハライドである場合の製造方法とについて説明する。
(芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応)
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応はシッフ塩基の形成反応であり、周知の方法に従って行うことができる。反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、100〜160℃が特に好ましい。
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤にエントレーナーを添加し、還流脱水しながら行われてもよい。エントレーナーとしては、特に限定されず、水と共沸混合物を形成し、室温にて水と二相系を形成する有機溶剤から適宜選択される。エントレーナーの好適な例としては、酢酸イソブチル、酢酸アリル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、及びプロピオン酸イソブチル等のエステル;ジクロロメチルエーテル、及びエチルイソアミルエーテル等のエーテル類;エチルプロピルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジアルデヒド化合物の使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジアルデヒド化合物の質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
(芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応)
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとを反応させる反応温度は特に限定されないが、通常、−20〜150℃が好ましく、−10〜150℃がより好ましく、−5〜70℃が特に好ましい。芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応ではハロゲン化水素が副生する。かかるハロゲン化水素を中和するために、トリエチルアミン、ピリジン、及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を、反応液中に少量加えてもよい。
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジカルボン酸ジハライドの使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジカルボン酸ジハライドの質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
以上説明した方法により、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液が得られる。黒色組成物を調製する際には、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液をそのまま用いてもよい。また、減圧下に、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリベンゾオキサゾール樹脂への変換が生じない程度の低温で、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液から溶剤の少なくとも一部を除去して得られる、ポリベンゾオキサゾール前駆体のペースト又は固体を、黒色組成物の調製に用いることもできる。
〔ポリベンゾチアゾール前駆体〕
ポリベンゾチアゾール前駆体は、典型的には、芳香族ジアミンジチオールと、特定の構造のジカルボニル化合物とを反応させて製造される。芳香族ジアミンジチオールとしては、ポリベンゾオキサール前駆体の合成に使用される芳香族ジアミンジオールの水酸基がメルカプト基に置換された化合物を用いることができる。ジカルボニル化合物としては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用されるものと同様のものを使用することができる。
芳香族ジアミンジチオールとジカルボニル化合物とを反応させてポリベンゾチアゾール前駆体を合成する際の、反応方法、反応条件等は、芳香族ジアミンジオールとジカルボニル化合物とを反応させてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合と同様である。
〔ポリベンゾイミダゾール前駆体〕
ポリベンゾイミダゾール前駆体は、典型的には、芳香族テトラアミンと、ジカルボン酸ジハライドとを反応させて製造される。芳香族テトラアミンとしては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用される芳香族ジアミンジオールの水酸基がアミノ基に置換された化合物を用いることができる。ジカルボン酸ジハライドとしては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用されるものと同様のものを使用することができる。
芳香族テトラアミンとジカルボン酸ジハライドとを反応させてポリベンゾイミダゾール前駆体を合成する際の、反応方法、反応条件等は、芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとを反応させてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合と同様である。
〔スチレン−マレイン酸共重合体〕
スチレン−マレイン酸共重合体の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。スチレン−マレイン酸共重合体における、スチレン/マレイン酸の共重合比率(質量比)は、1/9〜9/1が好ましく、2/8〜8/1がより好ましく、1/1〜8/1が特に好ましい。スチレン−マレイン酸共重合体の分子量は特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、1000〜100000であるのが好ましく、5000〜12000であるのがより好ましい。
〔エポキシ基含有樹脂〕
エポキシ基含有樹脂を(A)基材成分として含む黒色組成物が所定の温度以上に加熱されると、後述する(C)熱イミダゾール発生剤が発生させるイミダゾール化合物の作用によって、多官能エポキシ化合物が有するエポキシ基同士が架橋される。その結果、耐熱性や機械的特性に優れる黒色の硬化物が得られる。エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する分子から構成される樹脂であれば特に限定されない。
エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよい。エポキシ基含有樹脂は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入したものであってもよい。入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体が好ましい。
エポキシ基含有樹脂の好ましい一例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
また、エポキシ基含有樹脂の中では、調製が容易であったり、黒色組成物を用いて形成される黒色成形体の物性の調整が容易であったりすることから、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(−O−CO−)中のオキシ基(−O−)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(−O−)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3〜20が好ましく、3〜15がより好ましく、3〜10が特に好ましい。
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、5−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、6−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a5−1)〜(a5−15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a5−1)〜(a5−5)で表される化合物が好ましく、下記式(a5−1)〜(a5−3)で表される化合物がより好ましい。
上記式中、Ra32は水素原子又はメチル基を示し、Ra33は炭素原子数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra34は炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基を示し、tは0〜10の整数を示す。Ra33としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra34としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。黒色組成物の保存安定性や、黒色成物を用いて形成される黒色成形体のアルカリ等に対する耐薬品性の点からは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する単位を含まないのが好ましい。
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(a6−1)〜(a6−8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(a6−3)〜(a6−8)で表される化合物が好ましく、下記式(a6−3)又は(a6−4)で表される化合物がより好ましい。
上記式中、Ra35は水素原子又はメチル基を示し、Ra36は単結合又は炭素原子数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra37は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。Ra36としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra37としては、メチル基、エチル基が好ましい。
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
エポキシ基含有樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000〜30,000が好ましく、5,000〜15,000がより好ましい。
以上説明した(A)基材成分の黒色組成物中の含有量は、黒色組成物の固形分中、5〜90質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましい。
<(B)カーボンブラック>
(B)カーボンブラックとしては、ポリアミック酸を分散剤として用いて分散処理されたものを用いる。ポリアミック酸を用いて分散処理されるカーボンブラックの種類は特に限定されず、従来から市販されている種々のカーボンブラックを特に制限なく用いることができる。
(B)カーボンブラックとしては、得られる黒色組成物や、当該黒色組成物を用いて形成される黒色成形体の絶縁性が高いことから、酸性基を導入する処理を施されたカーボンブラックが好ましい。
この場合、カーボンブラックに導入される酸性基は、ブレンステッドの定義による酸性を示す官能基である。酸性基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。カーボンブラックに導入された酸性基は、塩を形成していてもよい。酸性基と塩を形成するカチオンは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カチオンの例としては、種々の金属イオン、含窒素化合物のカチオン、アンモニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオンが好ましい。
以上説明した酸性基を導入する処理を施されたカーボンブラックの中では、得られる黒色組成物や、当該黒色組成物を用いて形成される黒色成形体の絶縁性が高い点で、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基からなる群より選択される1種以上の官能基を有するカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックに酸性基を導入する方法は特に限定されない。酸性基を導入する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
1)濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等を用いる直接置換法や、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等を用いる間接置換法により、カーボンブラックにスルホン酸基を導入する方法。
2)アミノ基と酸性基とを有する有機化合物と、カーボンブラックとをジアゾカップリングさせる方法。
3)ハロゲン原子と酸性基とを有する有機化合物と、水酸基を有するカーボンブラックとをウィリアムソンのエーテル化法により反応させる方法。
4)ハロカルボニル基と保護基により保護された酸性基とを有する有機化合物と、水酸基を有するカーボンブラックとを反応させる方法。
5)ハロカルボニル基と保護基により保護された酸性基とを有する有機化合物を用いて、カーボンブラックに対してフリーデルクラフツ反応を行った後、脱保護する方法。
これらの方法の中では、酸性基の導入処理が、容易且つ安全であることから、方法2)が好ましい。方法2)で使用されるアミノ基と酸性基とを有する有機化合物としては、芳香族基にアミノ基と酸性基とが結合した化合物が好ましい。このような化合物の例としては、スルファニル酸のようなアミノベンゼンスルホン酸や、4−アミノ安息香酸のようなアミノ安息香酸が挙げられる。
カーボンブラックに導入される酸性基のモル数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カーボンブラックに導入される酸性基のモル数は、カーボンブラック100gに対して、1〜200mmolが好ましく、5〜100mmolがより好ましい。
また、(B)カーボンブラックは、黒色組成物を基材に塗布して黒色成形体を形成する場合の、黒色成形体の基材への密着性を向上させる目的等でシランカップリング剤により処理されていてもよい。シランカップリング剤による処理は、カーボンブラックに酸性基を導入する処理の前後のいずれにおいて行われてもよく、ポリアミック酸を分散剤として用いる分散処理の前後のいずれにおいて行われてもよい。
(B)カーボンブラックの処理に用いるシランカップリング剤は、従来知られるシランカップリング剤から適宜選択し得る。(B)カーボンブラックの処理に用いるシランカップリング剤としては、下記式(B1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。黒色組成物が下記式(B1)で表されるシランカップリング剤を用いて処理された(B)カーボンブラックを含む場合、黒色組成物を用いて形成された黒色成形体が加熱される際の、黒色成形体の絶縁性の低下を抑制することができる。
Rb1 aRb2 (3−a)Si−Rb3−NH−C(O)−Yb−Rb4−Xb・・・(B1)
(式(B1)中、Rb1はアルコキシ基であり、Rb2はアルキル基であり、aは1〜3の整数であり、Rb3はアルキレン基であり、Ybは−NH−、−O−、又は−S−であり、Rb4は単結合、又はアルキレン基であり、Xbは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、Xb中の−Y−Rb4−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Y−Rb4−は前記含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。)
式(B1)中、Rb1はアルコキシ基である。Rb1について、アルコキシ基の炭素原子数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rb1の好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、及びn−ヘキシルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましい。
アルコキシ基であるRb1が加水分解されて生成するシラノール基がカーボンブラックの表面に存在する水酸基、カルボキシル基等の活性水素原子を含む官能基と反応することで、シランカップリング剤がカーボンブラックの表面に結合する。このため、シランカップリング剤をカーボンブラックの表面に結合させやすい点から、aは3であるのが好ましい。
式(B1)中、Rb2はアルキル基である。Rb2について、アルキル基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rb2の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びn−ドデシル基が挙げられる。
式(B1)中、Rb3はアルキレン基である。Rb3について、アルキレン基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい。Rb3の好ましい具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、及びヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、及びドデカン−1,12−ジイル基が挙げられる。これらのアルキレン基の中では、1,2−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、及びブタン−1,4−ジイル基が好ましい。
Ybは−NH−、−O−、又は−S−であり、−NH−であるのが好ましい。これは、−CO−O−、又は−CO−S−で表される結合よりも、−CO−NH−で表される結合のほうが加水分解を受けにくいためである。Ybが−NH−である化合物をシランカップリング剤として用いて処理された(B)カーボンブラックを含む黒色組成物を用いて黒色成形体を形成する場合、酸や塩基等の作用によってシランカップリング剤の構造が変化しにくいため、シランカップリング剤の使用による所望する効果を得やすい。
Rb4は単結合、又はアルキレン基であり、単結合であるのが好ましい。Rb4がアルキレン基である場合の好ましい例は、Rb3と同様である。
Xbは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、Xb中の−Yb−Rb4−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Yb−Rb4−は該含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。理由は不明であるが、このようなXを有する化合物をシランカップリング剤として含む黒色組成物を用いると、基材への密着性、耐水性、及び耐溶剤性に優れる黒色成形体を形成できる。
Xbが多環ヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基は、複数の単環が縮合した基であってもよく、複数の単環が単結合を介して結合した基であってもよい。Xbが多環ヘテロアリール基である場合、多環ヘテロアリール基に含まれる環数は1〜3が好ましい。Xbが多環ヘテロアリール基である場合、Xb中の含窒素6員芳香環に縮合又は結合する環は、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、芳香環であっても芳香環でなくてもよい。
含窒素ヘテロアリール基であるXbが有していてもよい置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。Xbが有する置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Xbが有する置換基の数は、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。Xbが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同じであっても、異なっていてもよい。
X
bの好ましい例としては、下記式の基が挙げられる。
上記の基の中でも、下記式の基がX
bとしてより好ましい。
以上説明した、式(B1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1〜8が挙げられる。
(B)カーボンブラックのシランカップリング剤による処理方法は特に限定されず、シランカップリング剤による処理は周知の方法に従って行われる。典型的には、シランカップリング剤が可溶である有機溶媒中で、水の存在下に、(B)カーボンブラックとシランカップリング剤とを反応させる方法が好ましい。
シランカップリング剤による(B)カーボンブラックの処理に好適に使用できる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、及びn−ブタノール等の1価アルカノール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、及び2−ブテン−1,4−ジオール、及びグリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、及び4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤が挙げられる。有機溶媒の使用量は、カーボンブラックとシランカップリング剤とを含む処理液を容易に撹拌できる量であれば特に限定されない。有機溶媒の使用量は、(B)カーボンブラックとシランカップリング剤とを含む処理液の固形分濃度が、5〜60質量%となるような量が好ましい。
シランカップリング剤の使用量は、所望する効果が得られる限り特に限定されない。シランカップリング剤の使用量は、(B)カーボンブラック100質量部に対して、0.5〜15質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
シランカップリング剤による(B)カーボンブラックの処理は、水の存在下に行われる。水は、(B)カーボンブラックとシランカップリング剤とを含む処理液に添加されてもよいが、必ずしも、処理液に水が添加される必要はない。シランカップリング剤による処理が水分を十分に含む空気雰囲気下で行われる場合、空気中の水分により、シランカップリング剤が有するアルコキシ基が加水分解され、シラノール基が生成する。
シランカップリング剤による(B)カーボンブラックの処理を行う際の温度は、シランカップリング剤と(B)カーボンブラックとの反応が良好に進行する限り特に限定されない。シランカップリング剤による(B)カーボンブラックの処理は、典型的には、25〜100℃で行われる。
以上説明した(B)カーボンブラックは、ポリアミック酸を分散剤として用いて分散処理された状態で、黒色組成物に含まれる。ポリアミック酸の分子鎖は、水素結合や、カーボンブラック表面との分子間力のような相互作用によってカーボンブラック一次粒子の表面に点で結合すると思われる。このため、カーボンブラックの一次粒子の表面で、ポリアミック酸の分子鎖がスペーサ的な作用を奏し、カーボンブラックの分散を促進させるとともに、分散を安定化させると考えられる。
よって、ポリアミック酸を分散剤として用いて調製される(B)カーボンブラックを含有する黒色組成物中ではカーボンブラックの凝集が起こりにくい。このため、当該黒色組成物を用いて形成される黒色成形体は、光学密度(OD)が高く、少量のカーボンブラックでも濃い黒色の色相を呈する。
また、上記の通り、(B)カーボンブラックの表面にはポリアミック酸が吸着される。そして、黒色組成物は、後述する(C)熱イミダゾール発生剤を含む。(C)熱イミダゾール発生剤を加熱することにより発生するイミダゾール化合物は、加熱によるポリアミック酸のイミド化を促進させる。このため、黒色組成物を所望の形状に成形した後に、黒色成形体を、(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度より高い温度に加熱すると、(B)カーボンブラックの表面に吸着されたポリアミック酸がポリイミドに変換され、耐熱性に優れる黒色組成物が形成される。
通常、(B)カーボンブラックは、ポリアミック酸を分散剤として用いて調製されたカーボンブラック分散液として、黒色組成物に配合される。
また、(A)基材成分がポリアミック酸である場合は、(B)カーボンブラックが分散される条件にて、黒色組成物に含まれる各成分を均一に混合することでも、ポリアミック酸がカーボンブラックの一次粒子の表面に吸着され、ポリアミック酸により分散処理された(B)カーボンブラックを含む黒色組成物が調製される。この場合、分散剤として(B)カーボンブラックに吸着したポリアミック酸の残余の量のポリアミック酸が、(A)基材成分として作用する。この方法において、黒色組成物を調製するための混合装置としては、後述する、カーボンブラック分散液の調製に用いる分散装置と同様の装置を使用することができる。
〔カーボンブラック分散液の調製方法〕
分散媒中で、分散剤であるポリアミック酸の存在下に、(B)カーボンブラックを激しく撹拌したり、(B)カーボンブラックに対して剪断力を加えたりすることによって、ポリアミック酸により分散された(B)カーボンブラックを含むカーボンブラック分散液が得られる。
[ポリアミック酸]
分散剤として使用されるポリアミック酸としては、基材成分について説明したものと同様のものを使用することができる。分散剤として使用されるポリアミック酸の分子量は、質量平均分子量として、5,000〜30,000であるのが好ましく、10,000〜20,000であるのがより好ましい。ポリアミック酸の分子量がかかる範囲内であると、黒色組成物の特性に大きな影響を与えない程度の量のポリアミック酸を用いて、カーボンブラックを良好に分散させることができる。
ポリアミック酸の使用量は、(B)カーボンブラックが良好に分散される限り特に限定されない。(B)カーボンブラックの分散の容易さの点からは、ポリアミック酸は、(B)カーボンブラック100質量部に対して、20〜80質量部使用されるのが好ましく、30〜70質量部使用されるのがより好ましい。
なお、カーボンブラック分散液は、ポリアミック酸以外の樹脂成分を含まないのが好ましい。カーボンブラック分散液がポリアミック酸以外の樹脂成分を含むと、カーボンブラックの一次粒子の凝集体が樹脂により被覆されることにより、凝集体が崩れにくくなったり、カーボンブラックの一次粒子の表面へのポリアミック酸の分子の吸着が阻害されたりすることで、(B)カーボンブラックの分散が困難である場合がある。
[分散媒]
分散媒の種類は、(B)カーボンブラックを良好に分散させることが可能である限り特に限定されない。分散媒の好適な具体例としては、水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、及び2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピレンエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等の多価アルコールエーテル類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、及び2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、及びN,N,N’,N’−テトラエチルウレア等のウレア類;2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、及びピペラジン等の複素環化合物類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類が挙げられる。分散媒は、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
以上説明した分散媒の中では、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを含有する有機溶媒が好ましい。N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを含有する有機溶媒中で、ポリアミック酸を分散剤として(B)カーボンブラックを分散させることによって、カーボンブラックを速やか且つ良好に分散させることができる。
分散媒が、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを含有する場合、分散媒中のN,N,N’,N’−テトラメチルウレアの含有量は、(B)カーボンブラックの分散状態を良好に保てる範囲で特に限定されない。典型的には、分散媒中の、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの含有量は、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのが特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
カーボンブラック分散液中の、分散媒の含有量は、カーボンブラックの分散状態を良好に保てる限り特に限定されない。カーボンブラック分散液は、通常、カーボンブラック分散液の固形分濃度が、5〜60質量%、好ましくは20〜40質量%となるような量で、分散媒を含む。
[その他の成分]
カーボンブラック分散液は、従来、カーボンブラック分散液に配合されている種々の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、粘度調整剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、及び消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤は、カーボンブラック分散液の性質に悪影響を与えない範囲で、従来、カーボンブラック分散液に配合される量と同様の量用いられる。
[(B)カーボンブラックの分散方法]
(B)カーボンブラックの分散処理に使用される分散装置としては、従来、顔料の分散に使用されている種々の分散装置を使用することができる。好適な分散装置の具体例としては、ニーダー、ソルトミリングニーダー、ロールミル、プラネタリーミキサー、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、 高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散装置がメディアを使用するものである場合、当該メディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることができる。
超音波ホモジナイザーで分散処理を行う際は、予め上記のニーダー、ソルトミリングニーダー、ロールミル、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、及びビーズミル等を用いて、予備分散されたカーボンブラックを用いるのが好ましい。
(B)カーボンブラックを分散させる場合、カーボンブラック、ポリアミック酸、及び分散媒は、それぞれ、前述の範囲の量、使用される。
以上説明した方法により、(B)カーボンブラックを分散させることにより、カーボンブラックを短時間で良好に分散させて、カーボンブラック分散液を得ることができる。
以上のようにして分散処理された(B)カーボンブラックの黒色組成物中の含有量は、黒色組成物の固形分中、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
<(C)加熱によりイミダゾール化合物を発生させる化合物>
黒色組成物は、(C)加熱により下記式(C1):
(式(C1)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
で表されるイミダゾール化合物を発生する化合物(本出願に関する明細書において、(C)熱イミダゾール発生剤とも記す。)を含有する。
黒色組成物が(C)熱イミダゾール発生剤を含む場合、黒色組成物を所望する形状に成形した後、成形された黒色組成物を、(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度よりも高い温度に加熱することによって、耐熱性に優れる黒色成形体を得ることができる。
黒色組成物には、ポリアミック酸を分散剤として用いて分散された(B)カーボンブラックが含まれる。そして、黒色組成物を加熱することで発生する式(C1)で表されるイミダゾール化合物は、カーボンブラックの一次粒子の表面に吸着されたポリアミック酸の、耐熱性の高いポリイミドへの変換を促進させる。このため、本発明にかかる黒色組成物を用いて、加熱を含む所定の方法に従って黒色成形体を製造すると、耐熱性に優れる黒色成形体が得られる。
また、黒色組成物の加熱により発生する式(C1)で表されるイミダゾール化合物は、(A)基材成分について説明した通り、(A)基材成分として用いた材料が、分子内での芳香環形成反応や、分子間での架橋反応を生じさせ得る構造を有する場合に、当該芳香環形成反応や架橋反応を促進させ、(A)基材成分からなるマトリックスの耐熱性を向上させる。
Rc1、Rc2、及びRc3における有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
Rc1及びRc2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合をさらに含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基に含まれる結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、Rc1、Rc2、及びRc3は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。Rc1、Rc2、及びRc3の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
Rc1、Rc2、及びRc3としては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
(C)熱イミダゾール発生剤は、加熱により上記式(C1)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から種々の組成物に配合されている、熱の作用によりアミンを発生する化合物(熱塩基発生剤)について、加熱時に発生するアミンに由来する骨格を、上記式(C1)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、(C)熱イミダゾール発生剤として使用される化合物が得られる。
好適な(C)熱イミダゾール発生剤としては、下記式(C2):
(式(C2)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、R
c4及びR
c5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、Arは置換基を有してもよい芳香族基である。)
で表される化合物が挙げられる。
式(C2)において、Rc1、Rc2、及びRc3は、式(C1)について説明したものと同様である。
式(C2)において、Rc4及びRc5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
Rc4及びRc5における有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3について例示したものが挙げられる。この有機基は、Rc1、Rc2、及びRc3の場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
以上の中でも、Rc4及びRc5としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COOR、−OCOR:Rは炭化水素基を示す)、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、Rc4及びRc5の両方が水素原子であるか、又はRc4がメチル基であり、Rc5が水素原子である。
式(C2)において、Arは置換基を有してもよい芳香族基である。芳香族基は、芳香族炭化水素基でも、芳香族複素環基でもよい。芳香族基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、フェナンスレニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が挙げられる。これらの芳香族基の中では、フェニル基、及びチエニル基が好ましい。
式(C2)で表される化合物の中でも好ましい化合物としては、下記式(C3):
(式(C3)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
c4及びR
c5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
c6、R
c7、R
c8、R
c9、及びR
c10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R
c6、R
c7、R
c8、R
c9、及びR
c10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
式(C3)において、Rc1、Rc2、及びRc3は、式(C1)について説明したものと同様であり、Rc4、及びRc5は、式(C2)について説明したものと同様である。
式(C3)において、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10における有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rc1及びRc2の場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それらの2つ以上が結合して、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
以上の中でも、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
また、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10としては、それらの2つ以上が結合して、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も好ましい。
上記式(C3)で表される化合物の中では、下記式(C4):
(式(C4)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、式(C1)と同義である。R
c4〜R
c9は式(C3)と同義である。R
c11は、水素原子又は有機基を示す。R
c6及びR
c7が水酸基となることはない。R
c6、R
c7、R
c8、及びR
c9は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が好ましい。
式(C4)で表される化合物は、置換基−O−Rc11を有するため、有機溶媒に対する溶解性に優れる。
式(C4)において、Rc11は、水素原子又は有機基である。Rc11が有機基である場合、有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3において例示したものが挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Rc11としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
(C)熱イミダゾール発生剤として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
黒色組成物中の(C)熱イミダゾール発生剤の含有量は、黒色組成物の固形分中、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
<(D)オキシムエステル化合物>
黒色組成物は、(D)オキシムエステル化合物を含んでいてもよい。黒色組成物は、(B)カーボンブラックを分散させる分散剤としてアルカリ可溶性のポリアミック酸を含有するため、アルカリ現像液に可溶である。他方、黒色組成物は、前述の(C)熱イミダゾール発生剤を含むため、露光されることによりアルカリ現像液に対する溶解性が低下する。これは、(C)熱イミダゾール発生剤が光の作用によってもイミダゾール化合物を発生させ得るためである。露光により(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させると、露光された感光性組成物に含まれるポリアミック酸の閉環によるポリイミド樹脂の生成が進むからである。
このように、黒色組成物は、もともとフォトリソ特性を備えるものであるが、黒色組成物が(D)オキシムエステル化合物を含む場合、黒色組成物のフォトリソ特性が特に良好である。このため、(D)オキシムエステル化合物を含む黒色組成物を用いると、フォトリソグラフィー法により黒色成形体の微細パターンを形成することが可能となる。これは、(D)オキシムエステル化合物が、光及び熱の少なくとも一方の作用により分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生させ、発生した塩基又は酸により、黒色組成物中に、分散剤又は(A)基材成分として含まれるポリアミック酸の閉環が促進されるからである。
オキシムエステル化合物は、2つの有機基が=N−O−CO−で表されるオキシムエステル結合を介して結合した化合物であれば特に限定されない。好適なオキシムエステル化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
黒色組成物中の(D)オキシムエステル化合物の含有量は、黒色組成物の固形分中、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
<(S)有機溶剤>
黒色組成物は、希釈のための(S)有機溶剤を含有することが好ましい。(S)有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、及びN,N,N’,N’−テトラエチルウレア等のウレア類;2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、及びピペラジン等の複素環化合物類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類等が挙げられる。
これらの中でも、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、及びN,N,N’,N’−テトラエチルウレア等のウレア類;2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン等の複素環化合物類が好ましい。これらの(S)有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(S)有機溶剤の含有量は、黒色組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。
<(E)その他の成分>
本発明にかかる黒色組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
密着促進剤としては、シランカップリング剤が好ましい。黒色組成物に対して、シランカップリング剤を配合することによって、基材への密着性に極めて優れる黒色成形体を形成できる。
密着促進剤として使用されるシランカップリング剤は特に限定されず、(B)カーボンブラックの処理に用いるシランカップリング剤として前述した式(B1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
式(B1)で表される化合物のうち、密着促進剤として使用されるシランカップリング剤として特に好適な化合物の具体例としては、式(B1)で表される化合物の好適な例として前述した化合物1〜8が挙げられる。
式(B1)で表されるシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の好適な例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミンが挙げられる。
≪黒色成形体の製造方法≫
以上説明した黒色成組成物を用いて黒色成形体を製造する方法は特に限定されない。典型的には、黒色組成物を所定の形状に成形した後に、成形された黒色組成物を、前記(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度よりも高い温度で熱処理することで、黒色成形体が製造される。
黒色組成物を所定の形状に成形する方法は特に限定されない。黒色組成物を所定の形状に成形する方法としては、種々の基材上に黒色組成物を塗布する方法や、所望する形状のモールド内に黒色組成物を充填する方法等が挙げられる。
黒色組成物を基材上に塗布する方法としては、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
黒色組成物が所定の形状に成形された後は、黒色組成物を乾燥させて(S)有機溶剤を除去するのが好ましい。
所定の形状に成形された黒色組成物は、(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度よりも高い温度で熱処理される。(C)熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度は、TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により測定することができる。具体的には、(C)熱イミダゾール発生剤のTG−DTA分析により得られるTG曲線において、熱分解による重量減少の開始を示す、ベースライン上の最も低温側の変曲点の温度を、(C)熱イミダゾール発生剤が熱分解によりイミダゾール化合物を発生させる温度とすればよい。黒色組成物を熱処理する際の温度の上限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。熱処理は、典型的には400℃以下の温度で行われ、130〜300℃の範囲内の温度で行われるのが好ましい。
熱処理時間は、特に限定されないが、20〜300分が好ましく、30〜180分がより好ましい。
以上の方法に従って形成される黒色成形体は、良好に分散されたカーボンブラックを含有し、所望する濃度の黒色に着色され、且つ、耐熱性に優れるため、種々の用途に好適に使用される。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例2は参考例2と読み替えるものとする。
実施例及び比較例において、基材成分として、以下のBR−1〜BR−8を用いた。
BR−1:下記調製例1で調製されたポリアミック酸
BR−2:下記調製例2で調製されたポリアミック酸
BR−3:下記調製例3で調製されたポリベンゾオキサゾール前駆体
BR−4:下記調製例4で調製されたポリイミド樹脂
BR−5:スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA1000、川原油化株式会社製)
BR−6:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
BR−7:下記調製例5で調製されたポリベンゾイミダゾール樹脂
BR−8:クレゾールノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール比率=6/4、質量平均分子量:80000)
〔調製例1〕
(BR−1の調製)
窒素導入管、撹拌機、及び冷却器を備えた容量5Lのセパラブルフラスコに、ピロメリット酸二無水物654.4gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル672.8gと、NMP2518gとを投入した。窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコの内容物を撹拌しながら、50℃で20時間、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて、溶媒を留去しポリアミック酸であるBR−1を得た。
〔調製例2〕
(BR−2の調製)
ピロメリット酸に変えて、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物228.2g、及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物441.3gを用いることと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルに変えて9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン1170.8gを用いた以外はBR−1と同様にして、ポリアミック酸であるBR−2を得た。
〔調製例3〕
(BR−3の調製)
回転子を入れた三角フラスコに、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル2mmolと、NMP1mLを加えた後、マグネッチックスターラーを用いてフラスコの内容物5分間撹拌した。その後、イソフタルアルデヒド2mmolをフラスコ内に入れ、窒素雰囲気下でフラスコの内容物を3時間還流させて反応を行った。次いで、減圧蒸留にて、反応液を脱水し、溶媒を留去して下記構造のポリベンゾオキサゾール前駆体であるBR−3を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量は約1500であった。
(上記式中、nは括弧内の単位の繰り返し数)
〔調製例4〕
(BR−4の調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71g(50mmol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.01g(50mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン181.30gとを、窒素導入管、撹拌機、及び冷却器を備えたガラス製の反応容器に仕込んだ。反応容器の内容物を、1時間かけて室温から160℃まで昇温し、重合とイミド化とを進行させて前重合液を得た。前重合液に含まれるポリイミドは、イミド化率90%以上であり、対数粘度1.02であった。また、前重合液の140℃での回転粘度は1.1Pa・sであった。
得られた前重合液を11g(約8ml)を、容器内面がガラスでコートされたオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内の気相を窒素に置換した。次いで、オートクレーブを密閉した後、前重合液を180℃に昇温して後重合を行い、溶媒を留去してポリイミド樹脂であるBR−4を得た。
〔調製例5〕
(BR−7の調製)
窒素導入管、撹拌機、及び冷却器を備えたガラス製の反応容器に、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル56.35g(263mmol)と、イソフタル酸43.69g(0.263mmol)と、亜リン酸トリフェニルを加えた。窒素雰囲気下に、フラスコの内容物を撹拌しながら、1時間かけてフラスコの内温を415℃まで上げた。フラスコの内温が415℃に到達した後、さらに1時間同温度で反応を続けた。反応終了後、フラスコの内容物を室温まで冷却し、ポリベンゾイミダゾール樹脂であるBR−7を得た。得られたポリベンゾイミダゾール樹脂の質量平均分子量は140000であった。
実施例及び比較例において、カーボンブラック分散液を用いて黒色組成物を調製した。カーボンブラック分散液の調製には、以下のカーボンブラックCBと、CB−Aとを用いた。
CB:カーボンブラック(Regal 250R、Cabot社製)
CB−A:下記方法に従って調製された、酸性基を導入する処理を施されたカーボンブラック。
〔CB−Aの調製例〕
カーボンブラックCB(Regal 250R、Cabot社製)550g、スルファニル酸31.5g、及びイオン交換水1000gを、ジャケット温度60℃に設定された、ジャケットと撹拌装置とを備える反応容器に加えた。亜硝酸ナトリウム12.6gを脱イオン水100gに溶解させた溶液をブラウミキサー内に加えた後、ミキサー内の混合物60℃、50回転/分の条件で2時間撹拌し、ジアゾカップリング反応を行った。撹拌後、ミキサーの内容物を室温まで冷却した。次いで、ミキサーの内容物に含まれるカーボンブラックを、脱イオン水を用いてダイアフィルトレーション法で精製した。洗浄水からは、スルファニル酸に由来するベンゼンスルホン酸類は検出されず、ジアゾカップリング反応によりカーボンブラックにベンゼンスルホン酸基が導入されたことが分かった。精製されたカーボンブラックを、75℃で一晩乾燥させた後に粉砕して、ベンゼンスルホン酸基が導入されたカーボンブラック(CB−A)を得た。
〔シランカップリング剤処理〕
実施例3及び実施例6では、以下の方法に従ってシランカップリング剤により処理されたカーボンブラックを用いた。シランカップリング剤としては、下記SC−Aを用いた。また、SC−Aは、実施例7において、密着促進剤としても用いた。
表1に記載の種類のカーボンブラック50gと、濃度1.25質量%のシランカップリング剤のイソプロピルアルコール溶液200gとを混合し、60℃で3時間撹拌した。撹拌後のカーボンブラックを含む懸濁液を100℃に加熱して、イソプロピルアルコールと、副生メタノールとを揮発させ、シランカップリング剤で処理されたカーボンブラックの粉体を得た。
以上説明したカーボンブラックを用いて、下記方法に従ってカーボンブラック分散液を調製した。
カーボンブラック分散液を調製する際、分散剤として、下記DP−1〜DP−3を用いた。
DP−1:上記調製例1で得られたポリアミック酸(BR−1)
DP−2:上記調製例2で得られたポリアミック酸(BR−2)
DP−3:ウレタン系高分子分散剤(BYK−167、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
カーボンブラック分散液を調製する際、溶剤として、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、又はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
〔カーボンブラック分散液調製方法〕
未処理のカーボンブラック10g、又はシランカップリング剤で処理されたカーボンブラック10.5gと、表1に記載の種類の分散剤3gとに対して、表1に記載の種類の溶剤をカーボンブラック分散液の総量が100gとなるように加えた。得られた混合液を撹拌して、カーボンブラックを分散させて、カーボンブラック分散液を得た。
実施例及び比較例において、熱イミダゾール発生剤として、下記化合物を用いた。下記化合物がイミダゾールを発生させる温度は180℃未満である。
実施例及び比較例において、黒色組成物を希釈するための有機溶剤として、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、又はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いた。
〔実施例1〜17、比較例1〜8〕
実施例1〜17、及び比較例2については、表1に記載の種類及び量の基材成分と、表1に記載の構成のカーボンブラック分散液27.5gと、熱イミダゾール発生剤0.3gと、表1に記載の種類の有機溶剤66.3gとを均一に混合して、黒色組成物を得た。
比較例1、及び比較例3〜8については、表1に記載の種類及び量の基材成分と、表1に記載の構成のカーボンブラック分散液27.5gと、表1に記載の種類の有機溶剤66.3gとを均一に混合して、黒色組成物を得た。
なお、実施例7については、密着促進剤としてシランカップリング剤である上記SC−A0.1gを黒色組成物に加え、実施例16については、オキシムエステル化合物として、下記化合物0.3gを加えた。
得られた黒色組成物を用いて形成された黒色成形体(フィルム)の耐熱性と、光学密度とを以下の方法に従って評価した。
<耐熱性評価>
黒色組成物をウエハ基板上に、スピンコーターを用いて塗布した。ウエハ基板上の塗布膜を180℃で1時間加熱して、膜厚約1.0μmの硬化膜(黒色成形体)を形成した。
形成された硬化膜から、耐熱性評価用の試料5μgを削り取った。耐熱性評価用の試料を用いて、示差熱/熱重量測定装置(TG/DTA−6200、セイコーインスツル株式会社製)により、空気気流中、昇温速度10℃/分の条件下で測定を行い、TG曲線を得た。得られたTG曲線から、試料の5%重量減少温度を求めた。5%重量減少温度の測定結果を表2に記す。
<光学密度評価>
耐熱性評価と同様にして、膜厚約1.0μmの硬化膜(黒色成形体)を形成した。
形成された硬化膜のOD値を、透過率測定器(D−200II、グレタグマクベス社製)を用いて測定した。測定されたOD値を、表2に記す。
<パターン形成評価>
実施例16の黒色組成物については、以下の方法に従って、フォトリソグラフィー法によるパターン形成能について確認した。
ガラス基板(100mm×100mm)上に、スピンコーターを用いて実施例16の黒色組成物を塗布した後、100℃で120秒間塗布膜を加熱して、膜厚1.0μmの塗布膜を形成した。
ミラープロジェクションアライナー(製品名:TME−150RTO、株式会社トプコン製)を用いて、露光ギャップ50μmにて、線幅5μmのラインパターンが形成されたネガマスクを介して、形成された塗布膜に紫外線を照射した。露光量は20mJ/cm2であった。露光された塗布膜を、25℃の濃度0.4質量%のKOH水溶液を用いて30秒間現像した。
現像後230℃にて30分間ベークを行いラインパターンを形成した。形成されたラインパターンを光学顕微鏡により観察されたところ、線幅5μmのラインがガラス基板から剥離することなく形成されていることが分かった。
つまり、実施例16の黒色組成物は、良好な、フォトリソグラフィー法によるパターン形成能を備える。
表1及び表2によれば、基材成分と、ポリアミック酸により分散されたカーボンブラックと、所定の構造の熱イミダゾール発生剤とを含む実施例の黒色組成物を、熱イミダゾール発生剤がイミダゾール化合物を発生させる温度よりも高い温度で加熱して形成された黒色成形体は、良好に分散されたカーボンブラックを含むため光学密度が高く、耐熱性も優れることが分かる。
比較例1及び比較例3〜8によれば、黒色組成物が、基材成分と、ポリアミック酸により分散されたカーボンブラックとを含んでいても、所定の構造の熱イミダゾール発生剤を含まない場合、耐熱性に優れる黒色成形体の形成が困難であることが分かる。
比較例2によれば、黒色組成物が、基材成分と、カーボンブラックと、所定の構造の熱イミダゾール発生剤を含んでいても、カーボンブラックがポリアミック酸により分散されていない場合、光学密度が高く、耐熱性に優れる黒色成形体の形成が困難である。比較例2の黒色組成物を用いて形成された硬化膜を観察した結果、硬化膜中でのカーボンブラックの凝集が認められた。