JP6620930B2 - 変性セルロース繊維の製造方法、樹脂組成物の製造方法、およびゴム組成物の製造方法 - Google Patents

変性セルロース繊維の製造方法、樹脂組成物の製造方法、およびゴム組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゴムへの添加に好適な変性セルロース繊維の製造方法、当該変性セルロース繊維を含む樹脂組成物の製造方法、及び当該樹樹脂組成物を含むゴム組成物の製造方法に関する。
従来、成形材料用樹脂に用いられる補強材料として、炭素繊維やガラス繊維等が広く一般的に使用されている。しかしながら、炭素繊維は難燃性であるためサーマルリサイクルに不向きで、かつ価格が高い。また、ガラス繊維は比較的安価であるが、廃棄に問題がある。
一方、セルロース繊維は比較的安価であり、かつサーマルリサイクルに優れているため、ゴム材料の充填剤として活用する技術の開発が検討されている。しかしながら、親水性であるセルロース繊維は、疎水性であるゴム又は樹脂中での分散性が低いため、ゴムへ添加したセルロース繊維が凝集して補強効果が発現せず、逆に強度等の機械的特性が悪化する原因となる。
このような課題に対して、セルロース繊維のゴム中での分散性を改善させるために各種検討がなされている。特許文献1においては、ミクロフィブリル化したセルロース繊維をシランカップリング剤で表面処理し、樹脂に添加することで機械的強度の優れた樹脂材料が得られるとしている。しかしながら、この方法を用いる場合にはセルロースを予め数十倍量の分散媒中でミクロフィブリル化しなければならないために生産性が悪く、加えて、セルロース‐樹脂界面の接着性を十分に改良できないために補強効果が弱いという問題点が有った。
特許文献2と特許文献3では、アミノ基又は硫黄原子を有するシランカップリング剤で処理したセルロース繊維を水中でミクロフィブリル化し、ゴムラテックスと混合することで破断特性又は剛性の高いゴム組成物が得られるとしている。しかしながら、この方法を用いる場合には、セルロース繊維の疎水性が十分ではなく、疎水性を持つゴムと混合した際にゴム組成物内の分散性が不十分であるために補強効果が弱いという問題点があった。
特開2008‐266630 特開2011‐231204 特開2011‐231205
本発明は、ゴムとの親和性を高めた変性セルロース繊維、当該変性セルロース繊維をゴム中へ簡便かつ微細に分散させることができる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を含むゴム組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セルロース繊維にシランカップリング剤と疎水化剤を反応させた変性セルロース繊維を合成し、ゴム及び樹脂との親和性が高い解繊助剤と混練して繊維を微細化することにより、生産性が良く、ゴムへ添加した際に変性セルロース繊維が簡便かつ高度に分散する樹脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)を提供する。
(1)セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と、アミノ基と反応可能な官能基を有する疎水化剤(B)と、を反応させることによって得られ、
セルロース繊維100質量部に対し、前記シランカップリング剤(A)を3〜80質量部使用し、
前記シランカップリング剤(A)の全アミノ基に対し、前記疎水化剤(B)を10〜200モル%使用することを特徴とする、変性セルロース繊維の製造方法、
(2)セルロース繊維に、更に硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を反応させることによって得られ、
セルロース繊維100質量部に対し、前記シランカップリング剤(C)を1〜25質量部使用することを特徴とする、前記(1)に記載の変性セルロース繊維の製造方法、
(3)前記疎水化剤(B)が、アシルケテン等価体である、前記(1)(2)に記載の変性セルロース繊維の製造方法、
(4)前記(1)〜(3)に記載の製造方法で得られた変性セルロース繊維を20〜75質量%、
数平均分子量が320〜60000であり、かつガラス転移点が100℃以下である解繊助剤(D)を25〜80質量%の割合で用いて微細化することを特徴とする、樹脂組成物の製造方法、
(5)混練することにより変性セルロース繊維を微細化する工程を有する、前記(4)に記載の樹脂組成物の製造方法、
(6)前記(4)または(5)に記載の製造方法で得られた樹脂組成物を含有し、ゴム100質量部に対して変性セルロース繊維中から変性部分を除いたセルロース繊維分を0.01〜30質量部の割合で含有する、ゴム組成物の製造方法。
本発明の変性セルロース繊維の製造方法においては、セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と、アミノ基と反応可能な官能基を有する疎水化剤(B)と、を反応させる。具体的には、セルロース繊維が有する水酸基と、シランカップリング剤(A)が有する反応性シリル基と、を反応させ、シランカップリング剤(A)が有するアミノ基と、疎水化剤が有するアミノ基に反応可能な官能基と、を反応させる。これら前記した原料の反応順は特に限定されないが、例えば、以下の2通りの方法が考えられる。
(方法1)
セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)を反応させた後、疎水化剤(B)を反応させる
(方法2)
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)とを反応させた後、セルロース繊維を反応させる
前記した製造方法により得られる変性セルロースは、いずれも、セルロース繊維と疎水化剤(B)とがアミノ基含有シランカップリング剤(A)を介して結合した構造を有する。本発明の方法によれば、セルロース繊維の水酸基部位に対して効率良く疎水基を導入することができるため、ゴムに対する親和性をセルロース繊維に付与することができる。
前記変性セルロース繊維を得るために用いることができるセルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートなどに含まれる植物由来の繊維、前記植物由来の繊維から得られるセルロース、マーセル化を施したセルロース繊維、レーヨンやリヨセル等の再生セルロース繊維、酸無水物変性セルロース繊維などが挙げられる。これらの中でも、好ましいセルロース繊維原料としては木材が挙げられ、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシアなどが挙げられる。そして、これらを原料として得られるセルロースや紙、あるいは古紙を解繊したものがセルロース繊維として好適に用いられる。セルロース繊維は、1種単独で用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。
前記セルロースとしては、例えば、前記植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してセルロース化することで得られるケミカルセルロース、セミケミカルセルロース(SCP)、ケミグランドセルロース(CGP)、ケミメカニカルセルロース(CMP)、砕木セルロース(GP)、リファイナーメカニカルセルロース(RMP)、サーモメカニカルセルロース(TMP)、ケミサーモメカニカルセルロース(CTMP)等が挙げられ、ケミメカニカルセルロース(クラフトセルロース(KP)、亜硫酸セルロース(SP))が好ましく、ケミメカニカルセルロースの中でもクラフトセルロース(KP)が特に好ましい。
前記セルロース繊維は、シランカップリング剤との反応性や樹脂に対する相溶性などに悪影響を与えず、所望の分散性を有する樹脂組成物を得るのに差支えない範囲であれば、セルロース繊維が有する水酸基のエステル化されたものやシリルエーテル化されたもの、カルボキシル基などの官能基により一部水酸基が置換されたものを用いても構わない。また、セルロース繊維を高圧ホモジナイザーで解繊処理して平均繊維径0.1〜10μm程度に微細化されたセルロース繊維の水分散液を更にグラインダー等で繰り返し磨砕処理して平均繊維径2〜200nm程度にナノ化したセルロース繊維などを用いても構わない。
本発明で用いるシランカップリング剤(A)は、1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、疎水化剤との反応性の観点から、一級アミンを有する3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N−メチル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N−メチル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N ,N ’−ジメチル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N ,N ’−ジメチル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好適に用いられる。これらは1種単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)の量は、反応効率とゴムへの親和性を考慮するとセルロース繊維100質量部に対して3〜80質量部とする範囲であり、5〜60質量部がより好ましい。3質量部を下回ると、疎水化剤(B)との反応点が限定され、ゴムとの親和性が不十分となり、分散が不十分となるためにゴム組成物の機械的強度が低下する。80質量部を超えるとセルロース繊維中のセルロースの結晶化度が低下し、変性セルロース繊維の機械的強度に悪影響を及ぼす。なお、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)の反応率は、後述する実施例において行われる算出方法により算出することができる。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)は、セルロース繊維に混合する際、有機溶剤で希釈したものを加えることが好ましい。希釈を行わない場合、セルロース繊維に対して局所的にシランカップリング剤が結合し、変性セルロース繊維の機械的強度に悪影響を及ぼす恐れがある。また、希釈時に、有機溶剤と水を併用し、シランカップリング剤のアルコキシ基の加水分解反応を進行させた後に添加してもよい。
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。特に好ましくは、シランカップリング剤と反応することなく、かつセルロースを防潤させられるN−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどが好ましく、これらは1種単独でもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
本発明で用いる疎水化剤(B)は、アミノ基と反応する官能基を1分子中に少なくとも1つ有し、その反応時に水を生じないものであれば特に限定されないが、具体的には、アシルケテン等価体、アルキルエステル、ジイソシアネート類を挙げることができる。
アシルケテン等価体としては、下記一般式(1)〜(3)で表わされるものを用いることができる。ここで、アシルケテン等価体とは、熱分解によりアシルケテンを生じ得る化合物の一群を示す。一般式(1)〜(3)において、R及びRは炭素数8〜30の飽和炭化水素基又は炭素数8〜30の不飽和炭化水素基であり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。R又はRの炭化水素基は、例えば、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等のアルキル基、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル等のアルケニル基、オクチルフェニル、ノニルフェニル、ドデシルフェニル等の置換フェニル基等が挙げられる。
Figure 0006620930
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アルキルエステルとしては、下記一般式(4)で表わされるものを用いることができる。一般式(4)において、Rは炭素数8〜30の飽和炭化水素基又は炭素数8〜30の不飽和炭化水素基であり、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素を表す。Rの炭化水素基は、例えば、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等のアルキル基、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル等のアルケニル基、オクチルフェニル、ノニルフェニル、ドデシルフェニル等の置換フェニル基等が挙げられ、Rの炭化水素基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル基等が挙げられる。
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ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
これらのうち、好ましくはアシルケテン等価体が挙げられ、より好ましくはアルキルケテンダイマーが好適に用いられ、更に好ましくは一般式(2)においてR及びRがテトラデシル基及びヘキサデシル基のアルキルケテンダイマーが好ましい。
疎水化剤(B)は、反応に用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤(A)の全アミノ基に対して10モル〜200モル%の範囲で使用する。この範囲内であれば、変性セルロースとゴムとの親和性及び分散性が良好となり、優れたゴム組成物の機械的強度が得られる。好ましくは、20モル%以上150モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以上100モル%以下で使用する。なお、疎水化剤(B)のセルロース繊維に対する付加率は、後述する実施例において行われる算出方法により算出することができる。
本発明で用いる硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)は、硫黄原子を含有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、ゴムとの親和性の観点からチオール基やスルフィド結合を有していることが好ましく、具体的には、ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
また、本発明の変性セルロース繊維の製造方法においては、好ましくは、セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と、硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)と、アミノ基と反応可能な官能基を有する疎水化剤(B)と、を反応させる。具体的には、セルロース繊維が有する水酸基と、シランカップリング剤(A)及びシランカップリング剤(C)が有する反応性シリル基と、を反応させ、シランカップリング剤(A)が有するアミノ基と、疎水化剤が有するアミノ基に反応可能な官能基と、を反応させる。これら前記した原料の反応順も特に限定されないが、例えば、以下の2通りの方法が考えられる。
(方法3)
セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)及び硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を反応させた後、疎水化剤(B)を反応させる
(方法4)
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)とを反応させた後、セルロース繊維及び硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を反応させる
前記した製造方法により得られる変性セルロースは、いずれも、セルロース繊維と疎水化剤(B)とがアミノ基含有シランカップリング剤(A)を介して結合した構造と、セルロース繊維に硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)が結合した構造を有する。本発明の方法によれば、セルロース繊維の水酸基部位に対して効率良く疎水基を導入することができるため、ゴムに対する親和性をセルロース繊維に付与することができるばかりでなく、硫黄原子を持つシランカップリング剤により、変性セルロース繊維にゴムとの架橋点が導入されるので、混合後加熱することにより、硫黄原子とゴム中の二重結合が反応し、変性セルロース繊維とゴムとの結合が生じるため、変性セルロース繊維によるゴムの補強効果が更に向上する。
セルロース繊維の処理に用いる硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)の量は、反応効率とゴムへの親和性を考慮するとセルロース繊維100質量部に対して1〜25質量部とする範囲が好ましく、コストと補強効果を勘案すれば3〜15質量部がより好ましい。
本発明の製造方法には含まれないが、前記した(方法2)や(方法4)に類似する方法として、セルロース繊維に反応性シリル基を有する疎水化剤(E)を反応させることで、セルロース繊維の水酸基部位に対して効率良く疎水基を導入した変性セルロースを得る方法が挙げられる。この場合、疎水化剤(E)単独でもある程度の効果が期待できるが、現時点では、高価な上に工業用グレードで大量に入手することが困難であることから、好ましくは、疎水化剤(B)と任意の割合で併用する。単独で用いる場合は、セルロース繊維100質量部に対し、反応性シリル基を有する疎水化剤(E)は5質量部〜200質量部の範囲で使用することができ、好ましくは10質量部〜100質量部、更に好ましくは15〜70質量部使用することができる。また、疎水化剤(B)と併用する場合は、用いる疎水化剤(B)と疎水化剤(E)の合計量に対して、好ましくは0.1〜50質量%の割合で使用することができ、更に好ましくは0.5〜30質量%、最も好ましくは1〜10質量%使用することができる。
反応性シリル基を有する疎水化剤(E)としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ヘキシセニルトリメトキシシラン、n−オクテニルトリメトキシシラン、デセニルトリメトキシシラン、ドデセニルトリメトキシシラン、ヘキサデセニルトリメトキシシラン、n−オクタデセニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤(B)及び反応性シリル基を有する疎水化剤(E)は、前述の有機溶媒中で反応することが好ましい。有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。特に好ましくは、上記耐水化剤と反応することなく良好に溶解し、かつセルロースを防潤させられるN−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどが好ましく、これらは1種単独でもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
次に、反応の詳細について説明する。まず水及び後述の有機溶媒に分散させたセルロース繊維を調製する。水若しくは有機溶媒単独だけでも変性セルロース繊維を製造することは可能だが、シランカップリング剤中のアルコキシ基の加水分解を進行させる必要、及び長鎖アルキル基を持つシランカップリング剤は水単独ではセルロース繊維と相溶することが困難なために、水と有機溶媒との併用が好ましい。セルロース繊維に混合する水の比率は、セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して質量基準で0.01〜20倍が好ましく、より好ましくは0.1〜10倍、0.5〜5倍がさらに好ましい。セルロース繊維に混合する有機溶媒の比率は、セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して質量基準で0.1〜10倍が好ましく、1〜5倍がより好ましい。
(セルロース繊維とアミノ基を有するシランカップリング剤との反応)
まず、本発明の製造方法の(方法1)について、順を追って具体的に説明する。セルロース繊維とアミノ基を有するシランカップリング剤(A)を混合し、反応させる際の反応温度は、シランカップリング剤とセルロース表面の水酸基との縮合反応を選択的に進める観点から、10℃〜90℃の範囲が好ましく、25℃〜80℃の範囲がより好ましい。
セルロース繊維とアミノ基を有するシランカップリング剤(A)を混合し、反応させる際の反応時間は、シランカップリング剤とセルロース表面の水酸基との縮合反応を十分に進行させる観点から、5分〜48時間の範囲が好ましく、10分〜24時間の範囲がより好ましい。
(アミノ基が導入されたセルロース繊維と疎水化剤との反応)
続いて、アミノ基が導入されたセルロース繊維と疎水化剤(B)との反応を行う。この工程を行うことにより、ゴムとの親和性に優れた疎水化された変性セルロースを得ることができる。まず最初に脱水工程を行い、水及び有機溶媒に分散したアミノ基導入セルロースを減圧下加熱する。脱水工程を行うことは、疎水化剤(B)と水の副反応を防止する観点から好ましい。脱水工程時の加熱温度は、急激な水の脱離による変性セルロース同士の凝集を防ぐ観点から、30℃〜80℃が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。
アミノ基導入セルロースと疎水化剤(B)とを混合し、反応させる際の有機溶媒の比率は、セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して質量基準で1〜10倍が好ましく、2〜5倍がより好ましい
アミノ基導入セルロースと疎水化剤(B)とを混合し、反応させる際の反応温度は、アミノ基と疎水化剤との反応を十分に進行させつつ、セルロースの熱劣化を防止する観点から150℃以下の範囲が好ましく、70℃〜100℃の範囲がより好ましい。反応時間は、アミノ基と疎水化剤との反応を十分に進行させる観点から、30分〜24時間の範囲が好ましく、2時間〜12時間の範囲がより好ましい。
更に、疎水化剤(B)との反応後、有機溶媒に分散した変性セルロースを減圧下加熱脱溶媒工程を行う。脱溶媒工程時の加熱温度は、変性セルロース同士の凝集及び熱劣化を防ぐ観点から、40℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
(アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応)
次に、予めアミノ基を有するシランカップリング剤(A)とアミノ基と反応可能な官能基を有する疎水化剤(B)とを反応し、その後セルロース繊維と反応させる、本発明の製造方法の(方法2)について、順を追って具体的に説明する。アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応は、それぞれを混合後加熱してもよいし、前述の有機溶媒中で行っても構わない。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)を合成する際の反応温度は、20℃〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜80℃の範囲がより好ましい。反応時間は、アミノ基と疎水化剤との反応を十分に進行させる観点から、30分〜24時間の範囲が好ましく、2時間〜12時間の範囲がより好ましい。
(アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物と、セルロース繊維との反応)
次いで、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物に、セルロース繊維を反応させる。まず水及び後述の有機溶媒に分散させたセルロース繊維を調製する。水若しくは有機溶媒単独だけでも変性セルロース繊維を製造することは可能だが、シランカップリング剤中のアルコキシ基の加水分解を進行させる必要、及び疎水基を持つシランカップリング剤は水単独ではセルロース繊維と相溶することが困難なために、水と有機溶媒との併用が好ましい。
セルロース繊維に混合する水の比率は、セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して質量基準で0.01〜20倍が好ましく、より好ましくは0.1〜10倍、0.5〜5倍がさらに好ましい。セルロース繊維に混合する有機溶媒の比率は、セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して質量基準で0.1〜10倍が好ましく、1〜5倍がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物とセルロース繊維との添加順序は特に制限は無いが、セルロース繊維と混合する際、前述した有機溶剤で希釈したものを加えることが好ましい。希釈を行わないと、セルロース繊維に対して局所的にシリル基が結合し、変性セルロース繊維の機械的強度に悪影響を及ぼす。また、希釈時に、有機溶剤と水を併用し、アルコキシ基の加水分解反応を進行させた後に添加してもよい。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物とセルロース繊維とを反応させる際の反応温度は、シランカップリング剤とセルロース表面の水酸基との縮合反応を選択的に進める観点から、10℃〜90℃の範囲が好ましく、25℃〜80℃の範囲がより好ましい。反応時間は、シランカップリング剤とセルロース表面の水酸基との縮合反応を十分に進行させる観点から、5分〜48時間の範囲が好ましく、10分〜24時間の範囲がより好ましい。
(セルロース繊維と硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)との反応)
セルロース繊維に硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を反応させることで、セルロース繊維にゴムとの架橋点を導入することができる。硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)とアミノ基を有するシランカップリング剤は、添加順序や添加方法は特に限定されず、各々を同時に添加しても構わないし、硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を先に添加し反応を進めた後に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)を添加し反応しても良いし、逆の順序で反応しても良い。
硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)、及びアミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物に関しても添加順序や添加方法は特に限定されず、硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を先に添加し反応を進めた後に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応物を添加し反応しても良いし、逆の順序で反応しても良い。
セルロース繊維と硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)とを混合し、反応させる際の反応温度及び反応時間は、前述のセルロース繊維とアミノ基を有するシランカップリング剤(A)との反応条件、及びセルロース繊維とアミノ基を有するシランカップリング剤(A)と疎水化剤(B)との反応条件に準ずる。
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物の製造においては、前記変性セルロース繊維の製造方法で得られた変性セルロース繊維と解繊助剤(D)とを混練する。混練時、変性セルロース繊維は解繊助剤(D)中に分散しながら微細化が進行する。製造に使用する混練機は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸押出機、及びオープンロールなどが挙げられる。
本発明で用いる解繊助剤(D)は、ゴムとの相溶性が良い添加剤であれば種類は特に限定されない。例えば、石油系樹脂、石炭系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール樹脂、セルロースエステル、液状ゴム、プロセスオイル、ファクチス等が挙げられる。テルペン系樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール樹脂、液状ゴムが好ましく、テルペン系樹脂、石油系樹脂が特に好ましい。
前記石油系樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
前記石炭系樹脂としては、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
前記テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンや、前記ロジンを原料とした水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、アルコールと縮合したエステル化ロジン、フェノール変性ロジンが挙げられる。
前記フェノール樹脂としては、フェノール骨格を有する化合物とホルムアルデヒドの反応物であれば特に限定されないが、例えば、ノボラック、レゾールが挙げられ、ノボラックが好ましく、硬化剤を含まないノボラックがより好ましい。
前記液状ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、及びそれらの変性物が挙げられる。これらの中でもポリイソプレン、ポリブタジエン、及びこれらの変性物のうち何れか1種以上が好ましく、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び/又は無水マレイン酸変性ポリイソプレンが特に好ましい。
本発明の製造方法で得られる樹脂組成物に含まれる変性セルロース繊維は、20〜75質量%が好ましく、より好ましくは25〜70質量%である。変性セルロース繊維分がこの範囲であると、溶融混練時に十分なせん断力が掛かるために繊維同士の凝集が起こり難く、ゴムへの分散性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
樹脂組成物に含まれる変性セルロース繊維から変性部分を除いたセルロース繊維分は10〜55質量%が好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。セルロース繊維分がこの範囲であると、溶融混練時に十分なせん断力が掛かるために繊維同士の凝集が起こり難く、ゴムへの分散性に優れたゴム用添加剤を得ることができる。
本発明で用いる解繊助剤(D)は、ガラス転移点が100℃以下の中から選ばれる少なくとも1種以上である。ガラス転移点が100℃を超えると、変性セルロース繊維含有ゴム用添加剤をゴムへ添加した際に混練が行い難く、分散が不十分となり、ゴム組成物の機械的強度が低下する。解繊助剤(D)のガラス転移点としては90℃以下が特に好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましく、60℃以下が最も好ましい。
本発明で用いる解繊助剤(D)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量で320〜60000が好ましく、より好ましくは500〜55000、更に好ましくは600〜50000である。数平均分子量が400未満であると、溶融粘度が低過ぎるために変性セルロース繊維(A)の微細化が不十分となり、その結果、成形体の機械的強度を低下させる恐れがある。また、数平均分子量が60000を超えると溶融粘度が高くなるため、変性セルロース繊維と解繊助剤(D)との混練、もしくはとゴムの混練が行い難く、変性セルロース繊維の分散が不十分となり、成形体の機械的強度を低下させる恐れがある。
本発明において、変性セルロース繊維が微細化されるとは、変性セルロース繊維が解繊されることを意味し、具体的には、変性セルロース繊維が幅方向に5μm以下に解繊されていることを意味する。なお、繊維の解繊状態は後述する実施例において行われる方法により観察することができる。
(ゴム組成物の製造)
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記の樹脂組成物とゴムを混練する。混練時、樹脂組成物がゴムに溶解し、樹脂組成物内で微細化された変性セルロースがゴム中に分散することで、硬度に優れたゴム組成物が得られる。製造に使用する混練機は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸押出機、及びオープンロールなどが挙げられる。
本発明の製造方法で得られる樹脂組成物とゴムとの混合質量比は、ゴムの強度を高める効果と加工性のバランスから、ゴム100質量部に対して変性セルロース繊維から変性部分を除いたセルロース繊維分は0.01〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
本発明の樹脂組成物を添加するゴム(以下、マトリックスゴムと記載する。)としては特に限定されないが、具体的には天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリスチレン、塩素化ポリスチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴムなどが挙げられ、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム及びそれらの変性物が好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<変性セルロース繊維の製造>
以下、固形分の測定には赤外線水分計((株)ケット科学研究所製:「FD−620」)を用いた。また、変性セルロース繊維の評価方法は次の通りである。
(実施例1)
[変性セルロース繊維(A−1)の製造]
容器へ水を含んだ針葉樹晒クラフトセルロース(以下、NBKPと記載する)500.0質量部(固形分100.0質量部)とジエチレングリコールジメチルエーテル400.0質量部を仕込み、3−アミノプロピルトリエトキシシラン3.0質量部を投入し、80℃で3時間反応した。反応後減圧脱水により水分を留去し、アルキルケテンダイマー(KEMIRA社製 製品名:C1895 ステアリン酸誘導体)26.2質量部(アミノ基に対するアルキルケテンダイマーの仕込み量:100モル%)を投入した後、80℃で4時間反応した。最後に減圧蒸留により溶媒を留去し、変性セルロースA−1を得た。
(実施例2〜5)
[変性セルロース繊維(A−2)〜(A−5)の製造]
3−アミノプロピルエトキシシラン、アルキルケテンダイマーの仕込み量を表1の通りに変えた他は、実施例1に準じて、変性セルロース繊維A−2〜A−5を得た。
(実施例6)
[変性セルロース繊維(A−6)の製造]
容器へ水を含んだNBKP500.0質量部(固形分100.0質量部)とジエチレングリコールジメチルエーテル400.0質量部を仕込み、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.1質量部を仕込み、80℃で3時間反応した。その後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン23.7質量部を投入し、80℃で3時間反応した。反応後減圧脱水により水分を留去し、アルキルケテンダイマー(C1895)65.6質量部(アミノ基に対するアルキルケテンダイマーの仕込み量:100モル%)を投入した後、80℃で4時間反応した。最後に減圧蒸留により溶媒を留去し、変性セルロースA−6を得た。
(実施例7〜11)
[変性セルロース繊維(A−7)〜(A−11)の製造]
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランの仕込み量を表1の通りに変えた他は、実施例6に準じて、変性セルロース繊維A−7〜A−11を得た。
(実施例12)
[変性セルロース繊維(A−12)の製造]
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランをビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドに変更し、仕込み量を表1の通りに変えた他は、実施例6に準じて、変性セルロース繊維A−12を得た。
(実施例13)
[変性セルロース繊維(A−13)の製造]
容器にジエチレングリコールジメチルエーテル200.0質量部、3−アミノプロピルエトキシシラン23.7質量部及びアルキルケテンダイマー(C1895)65.6質量部(アミノ基に対するアルキルケテンダイマーの仕込み量:100モル%)を仕込み80℃で3時間反応し、反応物を得た。更に、水を含んだNBKP500.0質量部(固形分100.0質量部)、ジエチレングリコールジメチルエーテル400.0質量部、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン10.1質量部を仕込み、80℃で3時間反応した。次いで減圧脱水により水分を留去し、最後に減圧蒸留により溶媒を留去し、変性セルロースA−13を得た。
(比較例1)
[変性セルロース繊維(RA−1)の製造]
容器へ水を含んだNBKP500.0質量部(固形分100.0質量部)とジエチレングリコールジメチルエーテル400.0質量部を仕込み、3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.4質量部を投入し、80℃で3時間反応した。反応後減圧脱水により水分を留去し、アルキルケテンダイマー(C1895) 6.6質量部(アミノ基に対するアルキルケテンダイマーの仕込み量:100モル%)を投入した後、80℃で4時間反応した。最後に減圧蒸留により溶媒を留去し、変性セルロースRA−1を得た。
(比較例2〜3)
[変性セルロース繊維(RA2)〜(RA−3)の製造]
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルキルケテンダイマーの仕込み量を表1の通りに変えた他は、比較例1に準じて、変性セルロース繊維RA−2〜RA−3を得た。
(比較例4)
[変性セルロース繊維(RA−4)の製造]
容器へ水を含んだNBKP500.0質量部(固形分100.0質量部)とジエチレングリコールジメチルエーテル400.0質量部を仕込み、3−アミノプロピルトリエトキシシラン23.7質量部を投入し、80℃で3時間反応した。反応後減圧脱水により水分を留去し、アルキルケテンダイマー(C1895) 144.4質量部(アミノ基に対するアルキルケテンダイマーの仕込み量:220モル%)を投入した後、直ちに減圧蒸留により溶媒を留去し、変性セルロースRA−4を得た。
(参考例1)
[変性セルロース繊維(SA−1)の製造]
3−アミノプロピルトリエトキシシランをオクテニルトリメトキシシランに変更し、仕込み量を表1の通りに変えた他は、実施例1に準じて、変性セルロース繊維SA−1を得た。
Figure 0006620930
表中の略号は次の通りである。
KBE−903:信越化学工業(株)製 3−アミノプロピルトリエトキシシラン
KBM−803:信越化学工業(株)製 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
KBE−846:信越化学工業(株)製 ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
KBM−1083:信越化学工業(株)製 オクテニルトリメトシキシラン
AKD:KEMIRA社製 C1895 ステアリン酸誘導体
<樹脂組成物の製造及び評価>
(解繊性の評価)
樹脂組成物(もしくは樹脂組成物を添加したゴム)0.2gとテトラヒドロフラン(もしくはトルエン)100gをフラスコに入れ、超音波を掛けて可溶部を溶かして変性セルロース繊維を分散させ、変性セルロース繊維スラリーを得た。その後スラリーをサンプリングし、CCDカメラ((株)キーエンス製 VHX−600)を用いて倍率1000倍で繊維の分散状態を観察した。
幅5μm以上の繊維が100本中0本である場合を◎、
幅5μm以上の繊維が100本中1本又は2本存在する場合を○、
幅5μm以上の繊維が100本中3本以上存在し、かつ、幅10μm以上の繊維が100本中1本又は0本存在する場合を△、
幅10μm以上の繊維が100本中2本以上存在する場合を×とする。
(応用実施例1−a)
[樹脂組成物(M−1)の製造]
変性セルロース繊維A−1 60質量部と解繊助剤(D)であるYSレジンPX1000(ヤスハラケミカル(株)製、テルペン樹脂、数平均分子量800、ガラス転移点50℃)40質量部をラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、ブレード回転数30rpm、混練時間60分、混練温度100℃で溶融混練して樹脂組成物M−1を得た。
(応用実施例2−a〜13−a)
[樹脂組成物(M−2)〜(M−13)の製造]
変性セルロース繊維の種類を表2のように変えた他は、応用実施例1−aに準じて、樹脂組成物(M−2)〜(M−13)を得た。
(応用実施例14−a、15−a)
変性セルロース繊維と解繊助剤(D)の量を表2のように変えた他は、応用実施例8−aに準じて、樹脂組成物(M−14)、(M−15)を得た。
(応用実施例16−a〜19−a)
[樹脂組成物(M−16)〜(M−19)の製造]
解繊助剤(D)の種類を表2のように変えた他は、応用実施例8−aに準じて、樹脂組成物(M−16)〜(M−19)を得た。
(応用比較例1−a〜4−a)
[樹脂組成物(RM−1)〜(RM−4)の製造]
変性セルロース繊維の種類を表2の通りに変えた他は、応用実施例3−aに準じて、樹脂組成物RM−1〜RM−4を得た。
(応用参考例1−a)
[樹脂組成物(SM−1)の製造]
変性セルロース繊維の種類を表2のように変えた他は、応用実施例3−aに準じて、樹脂組成物(SM−1)を得た。
(応用参考例2−a、3−a)
[樹脂組成物(SM−2)、(SM−3)の製造]
変性セルロース繊維と解繊助剤(D)の量を表2の通りに変えた他は、応用実施例8−aに準じて、樹脂組成物SM−2、SM−3を得た。
(応用参考例4−a〜6−a)
[樹脂組成物(SM−4)〜(SM−6)の製造]
解繊助剤(D)の種類を表2のように変えた他は、応用実施例8−aに準じて、樹脂組成物SM−4〜SM−6を得た。
Figure 0006620930
表中の略号は次の通りである。
Tg:ガラス転移点
PX1000:YSレジンPX1000、ヤスハラケミカル(株)製、テルペン樹脂、数平均分子量800、ガラス転移点50℃
Q1105:クイントン1105、日本ゼオン(株)製、DCPD系石油樹脂、数平均分子量340、ガラス転移点40℃
LIR−50:クラレ(株)製、液状ポリイソプレンゴム、数平均分子量54000、ガラス転移点−63℃
U115:YSポリスターU115、ヤスハラケミカル(株)製、テルペン樹脂、数平均分子量670、ガラス転移点57℃
R100:クイントンR100、日本ゼオン(株)製、脂肪族系石油樹脂、数平均分子量1100、ガラス転移点45℃
ロジン:ガムロジン 数平均分子量300、ガラス転移点50℃
BR1220:Nipol BR1220 日本ゼオン(株)製、ブタジエンゴム 数平均分子量150000、ガラス転移点−95℃
170S:日石ネオポリマー170S、JX日鉱日石エネルギー(株)製、芳香族系石油樹脂、数平均分子量990、ガラス転移点105℃
(樹脂組成物における、変性セルロース繊維の解繊性評価)
実施例1、3、5の変性セルロース繊維A−1、A−3、A−5を用いた応用実施例1−a、3−a、5−aの樹脂組成物M−1、M−3、M−5と、比較例1、2の変性セルロース繊維RA−1、RA−2を用いた応用比較例1−a、2−aの樹脂組成物RM−1、RM−2とから、セルロース繊維100質量部に対するアミノ基を有するシランカップリング剤(A)の使用量が、本発明で規定する範囲内であると、良好な解繊性を示すことが分かる。
実施例2、3、4の変性セルロース繊維A−2、A−3、A−4を用いた応用実施例2−a、3−a、4−aの樹脂組成物M−2、M−3、M−4と、比較例3、4の変性セルロース繊維RA−3、RA−4を用いた応用比較例3−a、4−aの樹脂組成物RM−3、RM−4とから、セルロース繊維に導入されたアミノ基に対する疎水化剤の使用量が、本発明で規定する範囲内であると、良好な解繊性を示すことがわかる。
実施例6〜9の変性セルロース繊維A−6〜A−9を用いた応用実施例6−a〜9−aの樹脂組成物M−8〜M−9と、実施例3、10の変性セルロース繊維A−3、A−10を用いた応用実施例3−a、10−aの樹脂組成物M−3、M−10とから、セルロース繊維100質量部に対する硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)の使用量が、本発明で規定する範囲内であると、より良好な解繊性を示すことがわかる。
実施例8、13の変性セルロース繊維A−8、A−13を用いた応用実施例8−a、13−aの樹脂組成物M−8、M−13から、セルロース繊維、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)、及び疎水化剤(B)の反応順序を変更しても、良好な解繊性が得られる事がわかる。
本発明の変性セルロース繊維と解繊助剤(D)とを混練して樹脂組成物とする場合において、その割合は特に限定されないが、応用実施例8−a、14−a、15−aと、応用参考例2−a、3−aとから、樹脂組成物中の変性セルロース繊維と解繊助剤(D)との割合が、好ましくは本発明で規定する範囲内であると、良好な解繊性を示すことがわかる。
同様に、応用実施例8−a、16−a、17−aと、応用参考例4−a、5−aとから、解繊助剤(D)の分子量が、好ましくは本発明で規定する範囲内であると、良好な解繊性を示すことがわかる。
更に、応用実施例8−aと応用参考例6−aとから、解繊助剤(D)のガラス転移点が、好ましくは本発明で規定する範囲内であると、良好な解繊性を示すことがわかる。
<ゴム組成物の製造及び評価>
(ゴムへの分散性)
得られたゴム組成物を100℃でプレスし、厚さ0.1mmのゴムフィルムを作成した。その後、プレスフィルムをクロスニコルの状態とした偏光版で挟み、CCDカメラ((株)キーエンス製 VHX−600)を用いて倍率100倍でゴム中での繊維の分散状態を観察した。
短軸長100μm以上の繊維凝集物が無い場合を◎、
短軸長100μm以上の繊維凝集物が1〜3個存在する場合を○、
短軸長100μm以上の繊維凝集物が4〜10個存在する場合を△、
短軸長200μm以上の繊維凝集物が1個以上、かつ、短軸長100μm以上の繊維凝集物が1個以上存在する場合を×とする。
(応用実施例1−b)
[ゴム組成物(G−1)の製造]
天然ゴム(TSR−20)とブタジエンゴム(Nipol BR1220 日本ゼオン(株)製)の質量比が75:25になるよう混合して作成したゴムと、樹脂組成物M−1を、ゴム100質量部に対してセルロース繊維分が5phrになるようにラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、ブレード回転数50rpm、混練時間20分、混練温度60℃で混練してゴム組成物G−1を得た。
(応用実施例2−b〜22−b)
[ゴム組成物(G−2)〜(G−22)の製造]
樹脂組成物とゴムの種類及び量を表3の通りに変えた他は、応用実施例1−bに準じてゴム組成物G−2〜G−22を得た。
(応用比較例1−b〜4−b)
[ゴム組成物(RG−1)〜(RG−4)の製造]
樹脂組成物とゴムの種類及び量を表3の通りに変えた他は、応用実施例1−bに準じてゴム組成物RG−1〜RG−4を得た。
(応用参考例1−b〜6−b)
[ゴム組成物(SG−1〜SG−6)の製造]
樹脂組成物とゴムの種類及び量を表3の通りに変えた他は、応用実施例1−bに準じてゴム組成物SG−1〜SG−6を得た。
(応用参考例7−b)
[変性セルロース繊維(SA−2)の製造]
容器内にミクロフィブリル化セルロース繊維セリッシュKY−100G(ダイセル化学工業(株))22gをエタノール1000mLに浸し、ホモジナイザーに分散させた。その後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン5gを水/エタノール混合溶媒20gに希釈し混合ミクロフィブリル分散液に混合した。2時間後脱溶媒し、変性ミクロフィブリルセルロース繊維SA−2を得た。
[ゴム組成物(SG−7)の製造]
天然ゴム(TSR−20)とブタジエンゴム(Nipol BR1220 日本ゼオン(株)製)の質量比が75:25になるよう混合して作成したゴムと、変性セルロースRA−6を、ゴム100質量部に対してセルロース繊維分が5phrになるようにラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、ブレード回転数50rpm、混練時間20分、混練温度60℃で混練してゴム組成物SG−7を得た。
(応用参考例8−b)
[変性セルロース繊維(SA−3)の製造]
容器内にNBKP250g(固形分50.0質量部)と3−アミノプロピルトリエトキシシラン5質量部を混合し、23℃24時間反応させた。得られた変性セルロースの固形分を30質量%に調整し、二軸押出機にて400rpm、0℃の条件にて処理することで、変性ミクロフィブリル化セルロース繊維SA−3を得た。
[ゴム組成物(SG−8)の製造]
変性セルロース繊維の種類及び量を表3の通りに変えた他は、応用参考例7−bに準じてゴム組成物SG−8を得た。
(応用参考例9−b)
[変性セルロース繊維(SA−4)の製造]
ミクロフィブリル化セルロース繊維(ダイセル化学工業(株)、セリッシュKY−100G)固形分100質量部をエタノール2500質量部へ分散させ、10質量部のビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業製、KBE−846)を添加し、80℃で4時間反応させた。エタノールを留去し、変性ミクロフィブリルセルロース繊維SA−4を得た。
[ゴム組成物(SG−9)の製造]
変性セルロース繊維の種類及び量を表3の通りに変えた他は、応用参考例7−bに準じてゴム組成物SG−9を得た。
Figure 0006620930
表中の略号は次の通りである。
EPDM:エチレンプロピレンゴムEP−24、JSR(株)製
セルロース繊維:変性セルロース繊維から変性部分を除いたセルロース繊維分
(ゴム組成物中の分散性評価)
応用実施例1−b〜22−bと応用比較例1−b〜4−bとから、本発明の樹脂組成物をゴム組成物に用いると、ゴムに対して、セルロース繊維の分散性が良好であることが分かる。
応用実施例1−b〜22−bと応用参考例7−b〜9−bとから、本明細書に示す方法で製造されたゴム組成物は、特許文献1〜3に示された方法で製造されたゴム組成物に比べて、セルロース繊維の分散性が良好であることがわかる。
<加硫ゴム組成物の製造と力学特性評価>
(標準サンプルの作製)
天然ゴム(TSR−20)とブタジエンゴム(Nipol BR1220 日本ゼオン(株)製)の質量比が75:25になるよう混合して作成したゴムに、老化防止剤1質量部、ステアリン酸2質量部、酸化亜鉛4質量部を追加投入して混練した。次いで、加硫促進剤1質量部及び硫黄2質量部を添加、混練した後、170℃でプレス加熱することで、加硫ゴム組成物の標準サンプルを得た。
(加硫ゴム組成物の力学特性)
先の応用実施例で得られた各ゴム組成物(G−8、RG−1〜RG−4、SG−1)に、老化防止剤1質量部、ステアリン酸2質量部、酸化亜鉛4質量部を追加投入して混練した。次いで、加硫促進剤1質量部及び硫黄2質量部を添加、混練した後、170℃でプレス加熱することで加硫ゴム組成物を得た。得られた加硫ゴム組成物は、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、50%伸び、100%伸び、及び200%伸びでの引張強さを測定し、下記の計算式から引張指数を算出した。その結果を表5に示す。引張指数が高いほど、標準サンプルより引張強さが向上しており、力学特性に優れている。
引張指数=(加硫ゴム組成物の各伸びにおける引張強さ)÷(標準サンプルの各伸びにおける引張強さ)×100
Figure 0006620930
応用実施例1−cと応用比較例1−c〜4−cとの結果から、本明細書に示す方法において製造されたゴム組成物は、良好な力学特性を示すことがわかる。

Claims (5)

  1. セルロース繊維に、アミノ基を有するシランカップリング剤(A)と、アミノ基と反応可能な官能基を有する疎水化剤(B)と、を反応させることによって得られ、
    前記疎水化剤(B)が、アシルケテン等価体であり、
    セルロース繊維100質量部に対し、前記シランカップリング剤(A)を3〜80質量部使用し、
    前記シランカップリング剤(A)の全アミノ基に対し、前記疎水化剤(B)を10〜200モル%使用することを特徴とする、変性セルロース繊維の製造方法。
  2. セルロース繊維に、更に硫黄原子を有するシランカップリング剤(C)を反応させることによって得られ、
    セルロース繊維100質量部に対し、前記シランカップリング剤(C)を1〜25質量部使用することを特徴とする、請求項1に記載の変性セルロース繊維の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法で得られた変性セルロース繊維を20〜75質量%、
    数平均分子量が320〜60000であり、かつガラス転移点が100℃以下である解繊助剤(D)を25〜80質量%の割合で用いて微細化することを特徴とする、樹脂組成物の製造方法。
  4. 混練することにより変性セルロース繊維を微細化する工程を有する、請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 請求項またはに記載の製造方法で得られた樹脂組成物を含有し、ゴム100質量部に対して変性セルロース繊維中から変性部分を除いたセルロース繊維分を0.01〜30質量部の割合で含有する、ゴム組成物の製造方法。
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