JP6620031B2 - 貴金属元素の定量方法 - Google Patents

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Description

本発明は、貴金属元素を含有する物質中の貴金属元素を短時間で高精度に定量分析する方法に関する。さらに、自動車部品で白金族三元触媒を含む燃焼排ガスコンバータのスクラップ、使用済半導体ターゲット治具等の産業廃棄物等の様に貴金属元素を含有する物質中の貴金属元素の定量方法に関する。
近年、貴金属の回収技術の開発が進み、例えばμg/gオーダーの極微量の貴金属元素を含む材料から貴金属元素を回収することも可能になってきている。貴金属元素の回収を行う上では、スクラップ等の回収対象物に含まれる貴金属元素の量を高精度かつ迅速に定量することが要求されている。貴金属元素の定量を迅速に行うためには、前記の貴金属元素を複数種類含有する回収対象物から、一度の処理で全ての貴金属元素を抽出することが望ましい。しかし、Au、PtおよびPdは王水に容易に溶解するが、Rh、Ir、OsおよびRuは王水に溶解し難い等の理由により、単一の処理工程で複数の貴金属元素全てを短時間で抽出して定量するのは困難であった。なお、本発明において貴金属元素とは、一般的なAuおよび白金族元素(Pt、Pd、Rh、Ir、OsおよびRu)である。また、対象物(定量分析用の試料)には貴金属元素以外に、例えばW、Ti、Cu、Fe等の元素が含まれる場合がある。
例えばAuなどの貴金属元素の微量分析方法としては、従来から乾式試金法が行われてきた(非特許文献1)。ここで乾式試金法とは、測定試料を酸化鉛(II)およびソーダ灰、ホウ砂、ケイ砂等と混合して坩堝内で加熱融解し、Au等の貴金属元素を鉛ボタン中に分離・捕集した後、鉛ボタンを灰吹することにより貴金属元素だけを取り出してから定量する方法である。
特開2002−372518号公報(特許文献1)には、難融解性の白金族元素であるRh、Os、IrおよびRuを含む測定試料をニッケル粉、硫黄粉、炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂等と混合して坩堝内で加熱融解し、得られた硫化ニッケルボタンに塩酸を加えて加温溶解し、濾別して沈澱を採取し、その沈澱をテルル共存下で塩酸、硝酸及び過酸化水素水を用いて溶解し、得られた水溶液中の貴金属元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)で測定する技術(NiSマット法)が開示されている。
特開2009−128315号公報(特許文献2)には、固体試料に分離処理することなくNa化合物を用いてアルカリ融解し、その融解物を水により加熱浸出し、さらに塩酸を加えて再度加熱溶解した後、得られた水溶液中の貴金属元素濃度をICP−MSにより測定する技術、および、その測定に適したICP−MS装置が開示されている。
しかし、前記の貴金属元素定量法には、以下に述べる問題があった。
乾式試金法では、処理に2日程度の長時間を要する上に、白金族元素が鉛ボタンに完全には吸収されず、またRuやOsが一部酸化物で揮散するため、前記の貴金属元素を一度の処理により一括して捕集することは困難であった。また、乾式試金法の場合には大型の電気炉を必要とする等、作業環境の面でも問題があった。
NiSマット法の場合には、前記の乾式試金法程ではないが、貴金属元素の捕集のための試料の前処理に長時間を要し、大型の電気炉を必要とする等の問題点は乾式試金法と同様である。また、特許文献1で用いられているICP−MS法は、質量分析のアナライザーが高真空を必要とするために装置が大型・高額化するため、定量分析のコストが増大するという問題もあった。
特許文献2に開示された定量方法の場合には、貴金属元素の分離のための前処理を行わず、測定試料を直接アルカリ融解するため、試料によっては融解が不十分となる場合があり、また、得られる測定溶液は、アルカリ融解に使用するNa塩を大量に含むことになり、そのNa塩の存在が定量分析の段階で各種の干渉を起こすという欠点があった。そのため、特許文献2に開示の方法では、高額のICP−MS装置にさらに特殊な改良を施している。
一方、特開平10−195552号公報(特許文献3)には、PtとPd以外の難溶性白金族元素(Ru、Rh、OsおよびIr)を複数含有する固体原料粉末を一括して可溶化する技術が開示されている。この技術は、貴金属元素の回収のための技術であり、特に定量分析の前処理を目的としたものではないが、貴金属元素が可溶化されると定量分析の対象となる。この技術の場合、難溶性白金属元素を含有する固体原料粉末を白金族元素と合金化しうる合金化元素粉末と混合し、該難溶性白金族元素及び合金化元素の融点未満で且つ合金の共融点未満の温度で加熱処理することによって、各粉末中の原子が接触面を介して相互に拡散するので、融解を経ることなく、可溶化した難溶性白金族元素を含む合金が粉末として得られる。また、具体的には融解する温度を低下させるためにFeとFeC3の共晶反応によるFeの融点低下を利用しているものと考えられ、固体原料粉末、Fe粉末および炭素粉末を混合し、還元雰囲気下、電気炉中、貴金属元素の融点以下の温度である950℃以上1153℃以下で加熱し、合金粉末を得ている。
しかし、この技術の場合、加熱温度が1153℃以下と低いため、高融点の白金族元素とFeの合金化に時間がかかるという問題があった。例えば、特許文献3の実施例1では、加熱時間を3時間または6時間とし、得られた合金粉末を塩酸溶液中に懸濁させて塩素化処理を5時間行っている。
特開2002−372518号公報 特開2009−128315号公報 特開平10−195552号公報
日本工業規格M8111「鉱石中の金及び銀の定量方法」
本発明は、上記の問題点に鑑み、貴金属元素を含有する対象物に含まれる貴金属元素の量を高精度、短時間、かつ低コストで定量することが可能な、貴金属元素の定量方法を提供することを目的とする。
上記の目的は、貴金属元素を含有する固体試料とニッケルをグラファイト容器に入れ、非酸化性雰囲気下で加熱して融解した後、融解物を前記加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度を50℃/秒以下として室温まで冷却して凝固させ、凝固物を粉砕した後王水に溶解し、王水中に溶出した貴金属元素の濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定する、貴金属元素の定量方法によって達成される。さらに、前記の貴金属元素が金、白金族元素の1種または2種以上であり、融解における加熱手段がインパルス加熱であり、前記凝固物をグラファイト容器とともに粉砕すること、前記グラファイト容器がグラファイト坩堝であり、前記加熱温度が1350℃以上であり、加熱温度における保持時間が30分以下であることが好ましい。
本発明によれば、貴金属元素を含有する対象物に含まれる貴金属元素の量を高精度、迅速、かつ低コストで定量分析することが可能になった。
本発明の定量分析方法の手順を示すフローチャートである。 インパルス炉への印加出力と加熱温度との関係を示すグラフである。
以下、図1に示すフローチャートの手順に沿って、本発明の貴金属元素定量方法の詳細について説明する。
(試料準備)
[固体試料(対象試料)]
本発明の貴金属元素の定量方法の対象となるのは、前記の様に三元触媒を含むスクラップや、非鉄精錬工程での中間生成物、半導体の製造時に用いられるターゲットやその治具の廃材等、1種または2種以上の種類の貴金属元素を含む固体状態の試料であり、例えば1質量ppm程度から数10質量%程度の貴金属元素を含有するものである。また、対象試料は前記貴金属元素以外に、W、Ti、Cu、Fe、Al等の金属元素、非金属元素などを含んでもよい。
[貴金属元素]
本発明において貴金属元素とは、金(Au)と白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウムム(Os)およびルテニウム(Ru)の白金族元素(金属)を指す。ここでRh、Ir、OsおよびRuは王水に溶解し難いことから、難溶性白金族元素と呼ばれているが、これらの貴金属元素は酸化物の状態で存在することも多い。
[ニッケル(Ni)]
Niは、カプセル、板(箔)、塊、または粉末等の形態のものを使用することができる。また、Niの純度は、前記の貴金属元素を含まなければ、98質量%程度の純度のものでも構わないが、99質量%以上の純度の高いものを使用するのが好ましい。また、Niの量は貴金属元素を十分に融解するために、質量比で固体試料の1.5〜20倍程度、さらには1.8〜15倍程度であることが好ましい。
[グラファイト容器]
本発明の貴金属元素の定量方法では、グラファイト容器に貴金属元素を含有する固体試料とNiとを入れ、所定の加熱温度で加熱することにより貴金属元素とNiを融解して合金化する。
本発明においてグラファイト容器を使用することには、幾つかの理由がある。すなわち本発明の場合、貴金属元素とNiを合金化するための加熱温度が高いので、耐熱性に優れたグラファイト容器を使用する。
また、前記の難溶性白金族元素が酸化物の状態で存在する場合には、高温で加熱した際に、グラファイト容器自体が還元剤として作用し、酸化物を金属状態まで還元することができる。難溶性白金族元素の酸化物は、そのままではNiとの合金化がほとんど進行せず、合金を得るためには還元して金属状態にする必要があると考えられる。
さらに、合金化のための加熱を高速で実施可能な後記のインパルス加熱で行う場合には、導電性を有するグラファイト容器(坩堝)を使用する必要がある。
なお、グラファイト坩堝としては、二重坩堝を使用することが破損や割れに強く、温度も安定するので好ましい。
(融解工程)
[融解(合金化)]
本発明の貴金属元素の定量方法においては、貴金属元素を含有する固体試料とニッケルをグラファイト容器に入れた後、当該試料を所定の加熱温度に加熱して行う。
加熱温度は1350℃以上、より好ましくは1400℃以上、さらには1600℃以上であることが好ましい。なお、ここで加熱温度とは(試料の加熱温度とほぼ同じと推測される)グラファイト容器(グラファイト坩堝)の温度を意味する。貴金属元素とNi、(グラファイト容器からの)カーボンとの合金化を迅速に行わせるためには、高温で加熱することが好ましい。
本発明においては、合金化のための加熱温度の上限は特に規定するものではないが、加熱温度が高くなると試料が飛散する場合があり、また容器(坩堝)を構成するグラファイト(カーボン:C)が混合試料中のNi等の金属と反応して融解する量が増加し、後述する貴金属元素等とNiとCの合金の王水による溶解反応を遅延させる恐れがあるので、2400℃以下とすることが好ましく、2200℃以下とすることがさらに好ましい。
また、Niの融点は1455℃であるが、本発明者らによる実験結果によると試料は概ね1350℃以上、さらには1400℃以上に加熱すると融解する。その理由は確認されていないが、NiとC(2.3mass%)の共晶点が1327℃であるのでそれ以上の温度で融解すると考えられること、或いは固体試料中にAu等の貴金属が含まれると試料の融点が低下すること、また、固体試料やNiが粉体の場合は表面積が大きいために試料の融点が下がることも考えられる。合金化のための加熱温度は、NiとCの共晶温度より高温であること、さらにはNiの融点以上であることが好ましい。
前記加熱温度における保持時間は、処理時間の短縮のため、またグラファイト容器と融解物との過剰な反応を抑制する意味で、30分以下であることが好ましく、さらには10分以下、より好ましくは5分以下である。なお、本発明の場合、Niと貴金属元素の融解および合金化は極めて短時間で進行し、例えば後述する様に、インパルス加熱の場合には融解は30秒以内に完了すると考えられる。よって、保持時間は30秒以上とすることが好ましい。
[インパルス加熱]
前記の貴金属元素とNiの合金化のための加熱は、インパルス加熱により行うことが好ましい。本発明のインパルス加熱とは、グラファイト坩堝に直接通電してそれ自体を発熱体とする加熱方法で、数秒で所定の加熱温度(例えば1350℃〜2500℃程度)まで昇温することができる。例えばJISG1239:2014「鉄及び鋼−酸素定量方法−不活性ガス融解−赤外線吸収法」では以下の様に定義されている。
「3.9 インパルス加熱
黒鉛るつぼに直接通電し、るつぼを数秒間で2000−2800℃に昇温する加熱方式。
3.10 インパルス炉
固定された上部水冷銅電極及び上下に移動ができる下部水冷銅電極で構成し、両電極の間に挟んだ黒鉛るつぼのインパルス加熱が可能な炉。」
インパルス加熱を用いると、短時間で合金化温度まで昇温することが可能となるので、貴金属元素の定量に要する時間を大幅に短縮することができる。なお、市販のインパルス炉の場合、グラファイト坩堝を2500℃以上(3400℃程度)まで加熱することが可能である。また、インパルス炉の場合、黒鉛(グラファイト)坩堝が水冷電極で冷却されているので、加熱保持温度から室温までの冷却速度が非常に大きいのも特徴である。
[加熱雰囲気]
本発明の微量貴金属元素の定量方法においては、貴金属元素とNiとの合金化のための加熱は、前記の難溶性白金族元素の酸化を防止するために、非酸化性の雰囲気下で行う。非酸化性雰囲気とするために、炉内をHe、Ar、窒素等の不活性ガスでパージするが、合金との反応性の低いHeまたはArを用いることが好ましい。
(凝固工程)
[冷却速度]
本発明の貴金属元素の定量方法においては、前記の加熱により融解した試料を所定の加熱温度で一定時間保持した後、加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度を50℃/秒以下として室温まで冷却して凝固させ凝固物(合金等)を得る。30℃/秒以下であることがより好ましい。冷却速度が50℃/秒を超えると、後述する貴金属元素とNi、C等の凝固物(合金)の王水による溶解反応が遅くなったり、凝固物の粉砕が困難になる(時間がかかる)等で、短時間で正確な定量(分析)値を得ることが困難となる恐れがある。冷却速度を50℃/秒以下とした場合に、前記合金の王水中での溶解速度が増大する理由は現時点では明確には判明していないが、合金中のカーボンの濃度や分布が影響しているのではないかと思われる。合金の表面はカーボン濃度が高い(結晶質のキッシュグラファイトのような)物質で覆われて凝固しているように観察されることもあり、また、内部組織もカーボンの晶出或いは析出状態が冷却速度によって異なり、このような組織が凝固物の粉砕や貴金属とNi等との合金の王水中での溶解速度に影響があると考えられる。
凝固物(合金)を切断して断面をEPMAで観察したところ、表面はカーボン濃度の高い厚さ5〜20μm程度の層で覆われ、また、内部の合金のマトリックス中に棒状のカーボン濃度の高い組織(長さが10μm〜数mm程度、幅が数μm〜10μm程度)が観察された。本発明の平均冷却速度で作製した合金は、急冷した本発明の範囲外の合金に比べて表面のカーボン濃度の高い層の厚さが比較的薄く(10μm程度)、内部の合金のマトリックス中に棒状の組織の比較的細かいもの(長さが概ね200μm以下)が多く見られた。
本発明においては、冷却速度の下限は特に規定するものではないが、処理時間を短縮するために、5℃/秒以上、さらには10℃/秒以上の冷却速度とすることが好ましい。
(粉砕工程)
前記までの工程で得られた貴金属元素とNiとの合金が凝固した凝固物の粉砕は、乳鉢で潰したりハンマーで叩くなどにより行う。凝固物はグラファイト容器のCとも反応して合金化しており、そのままではグラファイト坩堝から対象試料のみ全てを取り出すことが困難である場合があるので、グラファイト容器(坩堝)とともに粉砕して回収することが好ましい。また坩堝が2重坩堝の場合、内側の坩堝を取り出して内側の坩堝ともに凝固物を粉砕するのが好ましい。
(定量分析)
前記までの工程で得られた貴金属元素とNiとの合金が凝固した凝固物とグラファイトを含む粉砕物を王水に溶解した後、ろ過などで固液分離し、得られた貴金属元素を含む王水溶液を供試試料として、貴金属元素量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)により測定する。ろ過の残渣はカーボンである。
(実施例1〜6)
[定量分析の手順]
供試試料の定量分析は以下の手順で行った。
試料の秤量→Ni添加→融解→冷却→グラファイト坩堝の粉砕→王水で溶解→濾過→定容→希釈→ICP−AES測定。
[供試試料]
Au(添川理化学株式会社製、純度99.99%以上)、Pt(エコシステムリサイクリング株式会社製、純度99.9%)、Pd(小島化学薬品株式会社製、純度99.9%)、Rh(和光純薬工業株式会社製、純度99.9%)、Ir(株式会社フルヤ金属社製、純度99.9307%)およびRu(エコシステムリサイクリング株式会社、純度98.63%)の6元素の標準物質を用い、模擬的な供試試料(固体試料)を作製した。これらの標準物質について、それぞれ表1の実施例1〜6に示される量を秤量し、グラファイト2重坩堝の内側の坩堝に入れ、供試試料とした。
[Ni添加]
Niは、Niカプセル(LECO社製 型番Part No 502−822)を準備し、供試試料の入っているグラファイト坩堝に添加した。Niの添加量は全ての実施例で1.1gとした。
Figure 0006620031
[融解、冷却]
供試試料とNiを融解するため加熱炉としてインパルス炉を使用した。インパルス炉は酸素・窒素・水素分析装置(LECO社製 ONH836)に備えられたものを用いた。加熱温度については、坩堝への印加電力と坩堝の温度の関係を図2の曲線に示すように予め求めておき、実際の操作では印加電力を変更することで加熱温度を設定した。なお、図2はLECO社の装置マニュアルに記載されたデータを例示したものである。
上記グラファイト(黒鉛)坩堝には、上記酸素・窒素・水素分析装置用の二重坩堝(LECO社製 型番 Part No 775−433(アウター用)、755−431(インナー用))を用いた。
各供試試料について、印加電力4000W(2037℃:坩堝の温度、以下同じ。)で10min間加熱した後、ただちに(約5秒後)坩堝を装置(インパルス炉)の電極から降し室温の空気中で冷却した。加熱温度から(坩堝に当てた熱電対の測温で)100℃になるまでの平均冷却速度は30℃/秒以下であった。
[粉砕、溶解、定量分析]
その後坩堝を取り出し、内坩堝を取り出し凝固物(合金)ごとSUS鉢に入れて粉砕し、得られた粉砕物を全量200℃の王水(濃塩酸30mL+濃硝酸10mL)で約30分加温溶解し、ろ紙(No.5C)を用いてろ過を行い、ろ液をメスフラスコで定容、希釈操作を経てICP−AESを用いて各貴金属元素(成分)特有の波長を用いて定量した。
[誘導結合プラズマ発光分光分析;ICP−AES]
ICP−AES(株式会社日立ハイテクサイエンス社製(型式 SPS3500DD))を用い、JISK0116:2014「発光分光分析通則」に従い、誘導結合プラズマ発光分光分析による貴金属元素の定量分析を行った。
[貴金属元素の回収率]
測定結果を表2に示す。各元素の回収率は98.72〜100.07%であり、極めて良好な結果が得られた。
なお、各元素の回収率は以下の式で求めた。
回収率(%)=(定量分析値から算出した供試試料中の貴金属元素量(g)÷秤量した供試試料中の貴金属元素量(g))×100
また、Niと供試試料の貴金属の質量比(Ni/貴金属(合計))は2.8〜6.1であった。
Figure 0006620031
(実施例7〜16、比較例1)
[加熱温度の検討]
供試試料としてRh標準物質0.1〜0.5gを用い、印加電力を1500W(1109℃)〜4000W(2037℃)に変化させた以外は実施例1と同じ条件で、Rhの定量分析を行い、回収率を計算した結果を表3に示す。加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度は30℃/秒以下であった。
表3の結果から、実施例7〜16より、加熱温度1350℃(印加電力2000W)以上で回収率99.4以上であり、Rhの定量分析が精度よく良好に行われることが判った。
なお、加熱温度が1109℃(1500W)の比較例1では試料が融解せず、王水に溶解しない試料が多く、定量分析は実施しなかった。
また、Niと供試試料の貴金属の質量比(Ni/貴金属(Rh))は2.2〜11であった。
Figure 0006620031
(実施例17〜19)
[Ni添加量の検討]
供試試料としてRh標準物質0.3gを用い、Ni粉末を0.58〜1.16g(Ni/Rh比:1.93〜3.87)を添加し、印加電力を3000W(1748℃)とした以外は実施例1と同じ条件で、Rhの回収率を測定した。加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度は30℃/秒以下であった。結果を表4に示す。表4の結果から、Niの添加量は、貴金属元素量の概ね1.8倍以上あれば良いことが判った。
Figure 0006620031
(実施例20〜26)
[加熱時間の検討]
供試試料としてRh標準物質0.5gを用い、Niを1.0g(Ni/Rh比:2.0)を添加し、印加電力を3000W(1748℃)、加熱保持時間を30秒〜240秒とした以外は実施例1と同じ条件で、Rhの回収率を測定した。結果を表5に示す。また、加熱時および加熱保持時間において、酸素の測定を酸素・窒素・水素分析装置(LECO社製 ONH836)で同時実施したところ、30秒より短い時間でどのサンプルも酸素が放出されていることが確認され、また表5の回収率の結果から、融解は30秒で完了していることが推定される。なお、加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度は20℃/秒以下であった。
Figure 0006620031
(実施例27、比較例2)
[冷却速度の検討]
比較例2は供試試料としてRh標準物質0.3gを用い、Niを0.6g(Ni/Rh比:2.0)を添加し、印加電力を3000W(1748℃)、加熱保持時間を1分とし、融解後坩堝を電極に置いたまま冷却した以外は実施例1と同じ条件で試料を合金化した。この場合、加熱温度から100℃までの平均冷却速度は94℃/秒であった。このように炉内で冷却した場合、1時間を超えても合金の全量が王水に溶解しなかった。
実施例27は加熱後、ただちに(約5秒後)に炉から試料を取り出し、室温、空気中で冷却した以外は比較例2と同じ条件で試料を合金化した。この場合、加熱温度から100℃までの平均冷却速度は14℃/秒であった。このとき合金の全量が王水に約30分で溶解した。結果を表6に示す。
Figure 0006620031
[実施例28〜30、比較例]
Rhターゲットのスクラップを実試料として、本発明の貴金属元素の定量方法と従来法であるNiSマット法の比較を行った。
まず、前記スクラップを予備分析として蛍光X線分析装置でおよその組成を把握した。その結果、Rh以外に検出された1質量%以上含まれる元素はTi(3.4質量%)、Cr(1.5質量%)、Fe(3.9質量%)、W(61.5質量%)であった。よって、Rhは残部で30質量%程度含有されることが予測される。
本発明の貴金属元素の定量方法の場合には、前記実試料を0.1g(実施例28)、0.2g(実施例29)および0.3g(実施例30)秤量し、Niのカプセルをそれぞれの試料の4.7倍(実施例28)、1.9倍(実施例29)、2.1倍(実施例30)の質量添加し、印加電力3000W(1748℃)で1分間加熱した後、ただちにインパルス炉から取り出し室温で空冷した。加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度は20℃/秒以下であった。その後の手順は前記の実施例1と同様である。Niの添加量とRhの量の測定結果等を表7に示す。本発明の微量貴金属元素の定量方法による測定結果は平均値が29.6mass%であり、極めて再現性が良好である。なお、実施例28〜30について、試料秤量から王水で溶解し終わるまでの時間は約1時間であった。
NiSマット法については、特許文献1に記載の手順でNiSマットを作製した後、それを王水に溶解してICP−AES測定を行った。この場合、NiSマットの作製に3時間以上を要した。NiSマット法により測定したRhの濃度は29.2mass%であり、本発明の微量貴金属元素の定量方法の信頼性が確認できた。
Figure 0006620031
以上の結果から明らかな様に、本発明の定量方法を用いると、スクラップ等の貴金属元素回収対象物に含まれる複数種類の貴金属元素を単一の処理で回収し、回収された貴金属元素の量を高精度、迅速、かつ低コストで定量することが可能になる。

Claims (7)

  1. 貴金属元素を含有する固体試料とニッケルをグラファイト容器に入れ、非酸化性雰囲気下で加熱して融解する融解工程、
    前記の融解工程で得られた融解物を前記の加熱温度から100℃になるまでの平均冷却速度を50℃/秒以下として室温まで冷却して凝固させる凝固工程、
    前記の凝固工程で得られた凝固物を粉砕する粉砕工程、
    前記の粉砕工程で得られた粉砕物を王水で溶解する溶解工程、
    前記の溶解工程で得られた貴金属元素を含有する王水中の貴金属元素の濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定する工程、
    を含む、貴金属元素の定量方法。
  2. 前記の貴金属元素が金および白金族元素の中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の貴金属元素の定量方法。
  3. 前記の融解工程における加熱手段がインパルス加熱である、請求項1または2に記載の貴金属元素の定量方法。
  4. 前記粉砕工程において、凝固物をグラファイト容器とともに粉砕する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貴金属元素の定量方法。
  5. 前記グラファイト容器がグラファイト坩堝である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貴金属元素の定量方法。
  6. 前記融解工程の加熱温度が1350℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の貴金属元素の定量方法。
  7. 前記融解工程における前記加熱温度における保持時間が30分以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の貴金属元素の定量方法。
JP2016026555A 2016-02-16 2016-02-16 貴金属元素の定量方法 Active JP6620031B2 (ja)

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