JP7392393B2 - タングステン及び元素評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料中のタングステン及び元素の濃度を評価するタングステン及び元素評価方法に関する。
タングステンは、金属において最も融点が高く、大きな電気抵抗を持つため、これまで電球のフィラメントとして長く使用されてきたほか、熱膨張率が低く、超高温での形状安定性に極めて優れており、破壊され難いことから、現在も、高温炉材、照明部品、医療・薄膜技術などの様々な分野で、幅広く使用されている。
例えば、炭素とタングステンの化合物は、ダイヤモンド、炭化ホウ素などに次ぐ超硬材料として、切削工具や耐摩耗工具に使用されている。また、比重が大きい性質から、環境汚染におけるギャングエレメントの1つである鉛の代替素材として、最有力候補となっており、放射線の遮蔽用材料をはじめ、釣具、スキー板の防振、テニスラケットのバランサー、ゴルフ用具、弦楽器のテールガットやエンドピンなどに使用されているほか、音響インピーダンスが高いにも関わらず、大きな音速を持つ特徴を活かして、楽器やオーディオ関連の部品としても使用されている。
最近では、リチウムイオン二次電池に使用されている電極材料などに関して、タングステン化合物が高いリチウムイオン伝導性を有する物質として注目されており、タングステン化合物を添加した新素材が開発され、その製造工程で得られる中間物や、最終製品のタングステンを、高濃度のみならず、微量濃度まで、正確にモニターできる方法の開発が待望されている。
タングステン評価方法としては、JIS-M-8128(鉱石中のタングステン定量方法)に記載された、「シンコニン沈澱分離酸化タングステン(VI)重量法」が主に用いられており、それ以外にも、試料を硝酸カリウムと水酸化ナトリウムの混合液に溶解し、溶解液中のナトリウムをドデシルベンゼンスルホン酸で除去後、オキソ酸として存在するタングステンをイオンクロマトグラフで測定する方法(例えば、特許文献1を参照)、試料をリン酸、塩酸、硝酸の混合酸で加熱分解し、濾過した後、ICPを用いて、濾液を検量線法で、残留物を炭酸ナトリウムで融解した溶解液を、標準添加法で測定する方法(例えば、非特許文献1を参照)、試料をフッ化水素酸および過酸化水素水で溶解し、溶解液を陰イオン交換樹脂に通して、タングステンを樹脂に吸着させ、主成分と分離した後、硝酸と過酸化水素水と水からなる溶離液を用い、樹脂からタングステンを溶出させ、溶出液をICPで測定する方法(例えば、非特許文献2を参照)などが、開示されている。
特開昭63-157052号公報
BUNNSEKI KAGAKU Vol.19,pp.207-212(1970). BUNNSEKI KAGAKU Vol.54,No.11,pp.1039-1045(2005).
しかし、JIS法では、タングステン含有量がppb~ppmオーダーの微量な試料に対応出来ず、特許文献1に開示の方法では、硝酸カリウムと水酸化ナトリウムの混合液に溶解可能な試料にしか対応できない。また、非特許文献1に開示の方法では、JIS法と同じく微量分析には適していないほか、濾過後の残留物を別途処理する必要があり、分析操作が煩雑となる。さらに、非特許文献2に開示の方法では、試料の溶解およびタングステンの陰イオン交換樹脂への吸着に、触れると激しく体を腐食する、危険な毒物として知られるフッ化水素酸を多量使用しており、安全性が損なわれることがある。
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タングステンが微量な場合や共存元素が含まれる場合でも、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することを目的とする。また、上記と同じ測定溶液でタングステンと共に他の元素も評価する技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るタングステン評価方法は、試料中のタングステンの濃度を評価するタングステン評価方法であって、前記試料中にスパイクタングステンを添加して溶解し、溶解液を得る第1溶解工程と、前記溶解液に共沈させる金属を含む金属溶液を添加し、酸およびアンモニア水でpH調整した後に煮沸し、金属水酸化物の沈澱を得る沈澱工程と、前記沈澱を溶解し、測定溶液を得る第2溶解工程と、前記測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、同位体希釈法で測定することにより、前記タングステンを定量する分析工程と、を有し、前記金属溶液は、前記金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩の1種以上を水で溶解したもの、或いは、前記金属を、塩酸、硝酸、硫酸の1種以上で溶解したものであることを特徴とする。

このようにすれば、タングステンが微量な場合や、共存元素が含まれる場合でも、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することができる。
このとき、前記金属が、鉄、ランタン、アルミニウム、錫、ビスマス、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ガリウム、インジウム、ニオブ、タンタル、アンチモンの1種以上としてもよい。
このようにすれば、金属溶液に含まれる上記金属が共沈し、それらの金属水酸化物を生成・沈澱させ、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記金属が、2価(II)又は3価(III)の形態としてもよい。
このようにすれば、より容易に共沈を生じさせることができる。
このとき、本発明の一態様では、前記金属が、鉄(II)、鉄(III)、ランタン(III)、アルミニウム(III)の1種以上としてもよい。
このようにすれば、さらに容易に共沈を生じさせることができ、試料に含まれるタングステンを効率的に回収することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記試料中には、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムの1種以上を含まれるとしてもよい。
このようにすれば、上記金属に対する共存元素の妨害・干渉を抑制し、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる。
このとき、本発明の一態様では、前記沈澱工程では、前記溶解液のpHを前記酸および/又は前記アンモニア水で6~12に調整した後に煮沸してもよい。
このようにすれば、沈澱工程の沈澱におけるpHが最適となり、効率よく沈澱させることができ、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる。
このとき、本発明の一態様では、前記同位体希釈法を適用した後のタングステン回収率が90%以上としてもよい。
このようにすれば、タングステンが高回収率となり、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる。
このとき、本発明の他の態様では、タングステン評価方法において、前記第2溶解工程における前記測定溶液の一部を、誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、検量線法で測定することにより、前記タングステン以外の元素を定量することを特徴とする。
このようにすれば、同じ測定溶液でタングステンと共に定量できる。
このとき、本発明の他の態様では、前記タングステン以外の元素が、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスとしてもよい。
このようにすれば、同じ測定溶液で、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスをタングステンと共に定量できる。
本発明によれば、タングステンが微量な場合や、共存元素が含まれる場合でも、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することができる。また、上記と同じ測定溶液でタングステンと共に他の元素も評価する技術を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法の概略を示す工程図である。
以下、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法の概略から説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
<1.タングステン評価方法の概略>
本発明者らは、上記課題を解決すべく、試料からタングステンを分離濃縮する手段として、共沈分離を選択し、タングステンを金属水酸化物と共沈させる際、沈澱pHの制御に用いるアルカリをアンモニア水とすること、および、煮沸して沈澱を熟成させることにより、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、亜鉛などアンミン錯体を形成する共存元素の妨害・干渉を抑制できることに着目した。また、評価の過程において、試料溶解、共沈分離、沈澱濾過、沈澱溶解などの各操作で、タングステンが損失し、タングステンの定量値や回収率が低下する恐れに対して、ICP-MS測定で同位体希釈法を適用することにより、低下した定量値および回収率を補正し、タングステンを精度良く正確に評価できることにも着目した。
共沈分離では、タングステンが含まれる試料溶液に、共沈させる金属を含む金属溶液を添加することにより、共沈剤となる金属水酸化物と共にタングステンを沈澱させる。この沈澱を濾過採取し、沈澱を溶解して得られた測定溶液に含まれるタングステンを、分析装置で測定することにより、タングステンを定量することができる。この共沈分離によれば、溶媒抽出やイオン交換など、その他の分離操作と比べて、タングステンが微量であっても迅速に分離できるだけでなく、分離を簡易に行うことができる。また、フッ化水素酸のような危険性の高い毒物を使用しなくてもよく、安全に分離操作を行うことができる。
共沈剤としては、例えば、鉄、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、マンガンなどの金属水酸化物が知られている。しかし、これらの共沈剤を生成させるためのアルカリとして、水酸化ナトリウムを用いた場合、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛など幅広いpH範囲で水酸化物を生成する金属が試料溶液に共存していると、これらの金属もタングステンと共に沈澱するため、分離操作を行うことが困難となる。それ故、共存する金属が沈澱するpH範囲を避けて共沈剤を使用出来なければ、共存する金属が沈澱するのを抑制させられるマスキング剤を検討する必要がある。アンモニア水には、pH調整時のアルカリとしてだけではなく、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛などをアンミン錯体化することによる沈澱抑制効果があり、マスキング剤として非常に好ましい。さらに、沈澱生成後の溶液を煮沸することにより、沈澱が熟成して、共存する金属との分離状態が、より一層良好となる。
同位体希釈法は、試料に含まれる分析対象元素Xが、複数の同位体を持つ場合に適用できる。元素Xにおける特定の同位体のみを濃縮した濃縮安定同位体(以降、スパイクとも記載する)を、試料に一定量添加し、元素Xを化学的に分離濃縮した後、ICP-MSなどの質量分析装置で、元素Xの同位体比を測定する。そして、得られた同位体比をはじめ、スパイク添加量、スパイクの同位体存在比、天然の同位体存在比から、試料に含まれる元素Xの量を算出する。試料とスパイクが均一に混合されることにより、分離濃縮の各操作で損失が起こっても、元素Xとスパイクは同一元素であり、損失においても同じ挙動を示すこととなる。故に、一定量添加したスパイクの損失分を、元素Xの定量値や回収率に反映し、補正することで、非常に正確な評価結果を得ることが可能となる。
即ち、同位体希釈法を適用する前の実質の回収率、例えば、スパイクを添加しない検量線法を用いた場合の回収率が、損失によって低値を示したとしても、同位体希釈法を適用した後の補正された回収率はより100%に近い値となる。なお、測定で得られた同位体比(R)は、次の式(1)で表される。
R=(YA+Za)/(YB+Zb) (1)
Y:試料に含まれる元素Xのモル数
Z:スパイクのモル数
A:元素Xの定量に用いる質量数における天然の同位体存在比
B:スパイクの質量数における天然の同位体存在比
a:元素Xの定量に用いる質量数におけるスパイクの同位体存在比
b:スパイクの質量数におけるスパイクの同位体存在比
さらに、式(1)は、次の式(2)に変換できる。
Y=(Za-ZbR)/(BR-A) (2)
本発明は、上記知見に基づいて、なされたものである。以下、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法について図1を用いて説明する。
本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法は、第1溶解工程S1と、沈澱工程S2、第2溶解工程S3、分析工程S4とを有する。本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法において、以下試料とは、少なくとも、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムの1種以上を含むものを示し、その試料中のタングステンを評価する場合を一例とする。以下、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法の各工程について具体的に説明する。
<2.第1溶解工程S1>
第1溶解工程S1では、試料中に上記スパイクタングステンを添加して溶解し、溶解液を得る。例えば、まず分析対象となる試料に、濃縮安定同位体であるスパイクタングステンを添加する。融解に用いる高純度ニッケルルツボへ試料を秤量し、その試料の上に、溶液化されたスパイクタングステンを添加した後、低温で乾燥する。
次に、スパイクタングステンが添加された試料を溶解して、溶解液を得る。試料の溶解方法は、特に限定されないが、試料を容易に溶解したいなら、試料を融解した後に、その融体を酸で溶解することが好ましい。具体的には、試料とアルカリ塩とをルツボに入れて混合した後、混合物を加熱し、例えば、800℃まで昇温させて試料を融解する。そして、得られた融体を、室温まで放冷した後、融体を酸で溶解することで溶解液を得る。
融解に用いるアルカリ塩としては、例えば、過酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、二硫酸カリウム、硫酸水素カリウムなどが挙げられる。この中でも、酸化力の観点から、過酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが好ましい。これらは、それぞれ単独で用いてもよいが、酸化力を調整するために併用してもよい。
融解における加熱方法としては、例えば、電気マッフル炉、ブンゼンバーナなどで加熱するとよい。また、融解に用いる容器としては、高純度ニッケル、高純度アルミナ、高純度ジルコニアなどの材質からなるルツボが挙げられるが、後工程の沈澱工程において、ルツボからの溶出金属の妨害・干渉を抑制する観点からは、アンモニア水でアンミン錯体化できるニッケルからなる、高純度ニッケルルツボが好ましい。
融体の溶解に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。融体が完全に溶解せず、未溶解の残渣が生じる場合、残渣を含む溶解液を低温で加熱して、溶解を促進させるとよい。また、試料に高濃度のケイ酸が含まれると、ゲル状のケイ酸化合物が生成して、融体が十分に溶解できないことがある。その場合は、融体と酸との混合物を、例えば、水浴で冷却しながら融体を溶解させるとよい。
<3.沈澱工程S2>
沈澱工程S2では、溶解液に共沈させる金属を含む金属溶液を添加し、酸および/又はアンモニア水でpH調整した後に煮沸し、金属水酸化物の沈澱を得る。本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法では、上記金属として、鉄、ランタン、アルミニウム、錫、ビスマス、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ガリウム、インジウム、ニオブ、タンタル、アンチモンの1種以上を含む金属溶液を用いることが好ましいが、この中でも、金属が2価(II)又は3価(III)の形態であるものが特に好ましい。
また、沈澱pH範囲、濾過効率、コストのほか、後工程の分析工程S4における測定装置の汚染防止などの観点から、鉄(II)、鉄(III)、ランタン(III)、アルミニウム(III)の1種以上を含むものがより好ましく、さらに、タングステン回収率の観点から、鉄(II)を含むものが特に好ましい。なお、金属溶液は、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの金属塩を水で溶解したもの、或いは、金属を酸などで溶解したものを用いることができる。例えば、鉄(III)の場合、塩化鉄(III)を水で溶解したもの、或いは、鉄メタルを希塩酸に溶解し、過酸化水素水で3価(III)の形態に酸化させたものなどを用いることができる。
共沈剤の生成量については、タングステン捕集率をはじめ、濾過効率、コストなども関係するが、後工程の分析工程S4で用いるICP-MS装置に、最も大きく依存する。ICP-MS装置では、測定溶液導入部におけるサンプリングコーンの目詰り、スキマーコーンおよびイオンレンズ系の汚れが発生するため、高い塩濃度の測定溶液を導入することは好ましくない。通常の測定では、塩濃度を100mg/l以下にすることが好ましく、これに合わせて、共沈剤の生成量も、高い塩濃度とならないように、制御することが好ましい。
沈澱pHの調整では、酸には、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸を用いるほか、先述した通り、共存する金属との分離の観点から、アルカリには、アンモニア水を用いることが好ましい。沈澱pH範囲については、共沈剤となる金属水酸化物の種類により変化するが、鉄(II)、鉄(III)、ランタン(III)、アルミニウム(III)の1種以上を含むものの場合、pH6~12に調整することが好ましい。
沈澱工程S2では、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛など、共存する金属との分離の観点から、沈澱を分離採取する前に、溶液を低温で加熱し、煮沸することで沈澱を熟成させるとよい。煮沸により沈澱の生成速度が上がり、沈澱が他の成分を吸着するのを抑制しつつ、沈澱粒子を粗大化できるので、沈澱の洗浄効率も向上する。
また、分離採取は、例えば、通常の自然濾過のほか、吸引濾過などの公知の手段で行うとよく、濾過に用いる濾紙としては、例えば、通常の定量濾紙(5A、5B、5Cなど)、酢酸セルロース濾紙、親水性PTFE濾紙などを用いるとよい。その他、分離採取した沈澱は、例えば、希アンモニア水(1+100)で、5~6回洗浄するとよい。「1+100」とは、希アンモニア水の場合、体積でアンモニア1+水100を意味する。
<4.第2溶解工程S3>
第2溶解工程S3では、沈澱を溶解し、測定溶液を得る。例えば、分離採取で得られた沈澱に酸を添加し、低温で加熱溶解した後、定容することにより、タングステンを含む測定溶液を調製する。沈澱を溶解する酸としては、他の酸よりも粘度が高い硫酸を用いることもできるが、後工程の分析工程S4において、粘度による測定装置への導入負荷を低減する観点からは、塩酸、硝酸、王水などを用いることが好ましい。
<5.分析工程S4>
分析工程S4では、測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、同位体希釈法で測定することにより、タングステンを定量する。先述した通り、同位体希釈法では、スパイクが分析対象元素と同一元素であり、試料に添加したスパイクが、分析対象元素に対して、化学的・物理的性質が完全一致した内標準物質として働く。
例えば、タングステンは、質量数が180、182、183、184、186というように、複数の同位体を持つため、質量分析装置での測定において、スパイクタングステンに182Wを用い、その他の質量数である180W、183W、184W、186Wを定量に用いることにより、分析対象元素であるタングステンを、スパイクであるタングステンで補正することが可能である。
<6.元素評価方法>
元素評価方法は、上記タングステン評価方法において、上記第2溶解工程S3における上記測定溶液の一部を、誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、検量線法で測定することにより、上記タングステン以外の元素を定量することを特徴とする。つまり、第2溶解工程S3において、タングステン評価方法に用いられる測定溶液の一部を、タングステン以外の元素を定量する元素評価方法に用いる。このようにすれば、同じ測定溶液でタングステンと共に定量できる。
また、上記タングステン以外の元素が、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスとしてもよい。このようにすれば、同じ測定溶液で、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスをタングステンと共に定量できる。
以上より、タングステンが微量な場合や、共存元素が含まれる場合でも、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することができる。また、上記と同じ測定溶液でタングステンと共に他の元素も評価する技術を提供することができる。
次に、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法について、実施例等により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
図1に示す工程図に従って、試料A、Bに含まれるタングステンの評価を行った。誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で別途分析した、試料A、Bにおけるマトリックス元素の組成を表1に、ICP-MS装置の測定条件を表2に示す。試料Aには、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンが、試料Bには、リチウム、ニッケル、コバルト、アルミニウムが主成分として、分析対象元素であるタングステンと共存している。
Figure 0007392393000001
Figure 0007392393000002
(スパイクタングステン溶液)
同位体希釈法に用いるスパイクタングステン溶液は、以下のように作製した。なお、本実施例において、濃縮安定同位体であるスパイクタングステンを除く試薬類は、全て富士フィルム和光純薬株式会社製のものを用いた。
(a)原液:スパイク182W溶液(7.93mg/l)の作製
濃縮安定同位体であるスパイクタングステンは、米国エネルギー省の研究機関である、オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)製を用い、タングステンの質量数が180、182、183、184、186の中で最も濃縮率が高いスパイク182W(三酸化タングステン:182WO)を用いた。上記のスパイクタングステンを、白金ルツボへ10mg精秤し、炭酸ナトリウム2gを加え、1000℃で30分間融解した後、放冷済みの融体を温水200mlで溶解し、溶解液を全量フラスコ(1L)に移し入れ、水で1Lに定容した。その後、よく振り混ぜてから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製容器(1L)に移し替え、冷所で保管した。
(b)スパイク溶液(希釈液):スパイク182W溶液(0.396mg/l)の作製
上記原液10mlを、ホールピペット(10ml)で分取し、全量フラスコ(200ml)に移し入れ、水で200mlに定容した。その後、よく振り混ぜてから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製容器(200ml)に移し替え、冷所で保管した。
(参考例)
本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法を、実施例と比較例により説明する前に、同位体希釈法を適用する前の実質のタングステン回収率について、検量線法(内標準法を採用)を用いて調査した結果を、参考例として評価した。
なお、検量線法とは、分析対象元素の濃度を段階的に変えて準備した、複数の標準溶液を用い、分析装置の測定シグナル数値との関係式である検量線を作成し、その検量線を基準として、試料に含まれる分析対象元素の量を求める方法である。
さらに、内標準法とは、検量線法の標準溶液と、試料を前処理した測定溶液の両方に、分析装置での測定において、分析対象元素と類似した物理的挙動を示す元素を、内標準元素として一定量添加し、内標準元素が受ける影響をモニターすることにより、分析対象元素の測定値を補正する方法(元々、試料に内標準元素が含まれていないことが前提)である。
特に、内標準法とは、本来、分析装置での測定において、マトリックス成分の影響による測定溶液の導入効率の低下など、分析対象元素が測定で受ける物理的干渉を、補正するための方法である。ところが、分析装置での測定段階からではなく、同位体希釈法と同様に、試料を秤量した直後から、内標準元素を添加・混合し、その後、前処理操作を行うことがある。しかしながら、この場合、分析対象元素と内標準元素が、全く同じ化学的・物理的性質を示すことは、皆無で、かつ有り得ないことであり、互いの諸性質の違いが、例えば、前処理操作の煩雑化により、逆に顕著な分析誤差として表れ、悪影響を及ぼす危険性があるため、厳重な注意が必要となる。
(参考例1)
試料Aについて、3検体を併行して前処理し、検体1~3を作製した。まず、試料を、高純度ニッケルルツボに0.5g秤量した。この際、スパイク溶液は添加せずに、アルカリ塩として、過酸化ナトリウムを2.5g、炭酸ナトリウムを2.5g、それぞれルツボに添加し、混合した後、混合物を800℃まで昇温して融解させた。
ルツボを室温となるまで放冷した後、ビーカー(300ml)へ移し、温水150mlと塩酸30mlとを加えて、融体を中和熱により十分に溶解させた。この時、未溶解残渣がある場合は、80~120℃の低温で加熱した。また、試料がケイ酸を高濃度で含有する場合には、ビーカーを水浴で冷やしながら、融体を溶解させた。なお、後述の例を含め、ビーカーでの加熱および冷却には、時計皿を蓋として使用した。
得られた溶液を放冷し、ビーカーからルツボを取り出した後、共沈させる金属を含む金属溶液として、塩化鉄(II)を水で溶解した、鉄(II)溶液(鉄を1g/l含む)を1ml添加し、十分に撹拌した。そして、塩酸(1+1)およびアンモニア水(28%)を用いて、沈澱pHを9~11の範囲に制御した。これにより、共沈剤となる黒褐色の水酸化鉄(II)の沈澱(金属水酸化物)を生成させた。
生成した沈澱を、120℃で煮沸するまで加熱し、15分以上保持して、加熱熟成を行った。その後、5B濾紙を用いて自然濾過を行うことにより、沈澱を分離採取し、希アンモニア水(1+100)で、5~6回洗浄した。濾別した沈澱の上に、温塩酸(1+1)10mlを滴下し、沈澱を溶解すると共に、その溶解液を全量フラスコ(100ml)に受けた。濾紙を、純水で、5~6回洗浄し、内標準法用のイットリウム溶液(1mg/l)を1ml加えて、純水で100mlに定容することにより、測定溶液を得た。
検体1~3とは別に、同位体希釈法を適用する前の実質のタングステン回収率を調査するため、タングステン添加検体である4、5を作製した。まず、高純度ニッケルルツボに、通常の検体と同量の試料を秤量し、その試料の上に、天然タングステン溶液(1mg/l)を0.5ml添加した後、60~80℃で乾燥する。ルツボを放冷した後、図1に示す操作フローに従い、過酸化ナトリウムを2.5g、炭酸ナトリウムを2.5g、それぞれルツボに添加して、それ以降は、検体1~3の作製と同様の操作を行った。
さらに、検体1~5とは別に、空試験(以降、ブランクとも記載する)検体である6、7を作製した。高純度ニッケルルツボに、試料を秤量しない以外は、図1に示す工程図に従い、検体1~3の作製と同様の操作を行った。
各検体を、それぞれ高分解能二重収束型のICP-MS装置(サーモフィッシャー・サイエンティフィック株式会社製の「ELEMENT2/XR」)に導入し、検量線法(内標準法を採用)で測定した。タングステンの測定に用いる検量線は、タングステン濃度を、0μg/l、1μg/l、2μg/l、5μg/l、10μg/lと、段階的に変えて準備した標準溶液により作成した。
各検体におけるタングステンの測定値から、試料に含まれるタングステンの定量値を算出した。具体的には、検体1~3の測定値(試料測定値)と、ブランク検体6、7の測定値(空試験値)とから、次の式(3)により、タングステンの定量値を算出した。
タングステンの定量値[ppm]
=(試料測定値[ng]-空試験値[ng])/試料量[g]/1000 (3)
また、各検体におけるタングステンの測定値から、タングステンの回収率を算出した。具体的には、タングステン添加検体4、5の測定値(添加測定値)と検体1~3の測定値(試料測定値)とから、次の式(4)により、タングステンの回収率を算出した。
タングステンの回収率[%]
=(添加測定値[ng]-試料測定値[ng])/添加量[μg]/10 (4)
(参考例2)
金属溶液として、塩化鉄(III)を水で溶解した、鉄(III)溶液(鉄を1g/l含む)を使用し、沈澱pHを6~9の範囲に制御して、共沈剤となる茶褐色の水酸化鉄(III)の沈澱を生成させ、自然濾過に5A濾紙を使用したこと以外、参考例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(参考例3)
金属溶液として、塩化ランタン(III)7水和物を水で溶解したランタン(III)溶液(ランタンを1g/l含む)を使用し、共沈剤となる白色の水酸化ランタン(III)の沈澱(金属水酸化物)を生成させたこと以外、参考例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(参考例4)
金属溶液として、塩化アルミニウム(III)6水和物を水で溶解した、アルミニウム(III)溶液(アルミニウムを1g/l含む)を使用して、共沈剤となる灰白色の水酸化アルミニウム(III)の沈澱(金属水酸化物)を生成させたこと以外、参考例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(参考例5)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、参考例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(参考例6)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、参考例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(参考例7)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、参考例3と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
参考例における結果を表3に示した。
Figure 0007392393000003
参考例1~7によると、同位体希釈法を適用する前の実質のタングステン回収率は、共沈剤である金属水酸化物の種類により良悪の差が大きく、鉄(II)を用いた場合が最も良好であった。また、試料Aのほうが、試料Bよりも回収率が良い傾向であることを確認したが、これについては、沈澱pH範囲の影響が考えられる。アンモニア水を添加してもアンミン錯体化しないアルミニウムが共存する試料Bでは、アルミニウムの妨害・干渉を避けるため、両性金属であるアルミニウムが、高いpHにおいてAlO の形態で溶解する特徴を考慮して、沈澱pH範囲を11~12に制御している。従って、タングステンを共沈剤と共に沈澱させる上で、沈澱pH範囲は、アルカリ領域よりも中性領域のほうが有利であると言える。なお、同位体希釈法を適用する前の実質のタングステン回収率は、全体的に見て5%以上であり、低くて9.72%、高くても83.9%であることが分かった。以下実施例および比較例を示す。
<タングステンの評価方法>
(実施例1)
試料Aを、高純度ニッケルルツボに秤量する際、その試料の上に、スパイク溶液を0.5ml添加した後、60~80℃で乾燥した。また、測定溶液を作製する際、内標準(イットリウム)溶液を添加せず、ICP-MS装置による測定の際、同位体希釈法でタングステンを測定した。同位体比の測定では、測定溶液のほか、天然タングステン測定溶液(天然タングステン1000ng/水100ml)、スパイクタングステン測定溶液(スパイクタングステン990ng/水100ml)を用いた。上記以外は、参考例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例2)
金属溶液として、塩化鉄(III)を水で溶解した、鉄(III)溶液(鉄を1g/l含む)を使用し、沈澱pHを6~9の範囲に制御して、共沈剤となる茶褐色の水酸化鉄(III)の沈澱を生成させ、自然濾過に5A濾紙を使用したこと以外、実施例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例3)
金属溶液として、塩化ランタン(III)7水和物を水で溶解したランタン(III)溶液(ランタンを1g/l含む)を使用し、共沈剤となる白色の水酸化ランタン(III)の沈澱(金属水酸化物)を生成させたこと以外、実施例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例4)
金属溶液として、塩化アルミニウム(III)6水和物を水で溶解した、アルミニウム(III)溶液(アルミニウムを1g/l含む)を使用して、共沈剤となる灰白色の水酸化アルミニウム(III)の沈澱(金属水酸化物)を生成させたこと以外、実施例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例5)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例6)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(実施例7)
試料Bを評価し、沈澱pHを11~12の範囲に制御したこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
以上の実施例1~7における評価結果を表4に示した。
Figure 0007392393000004
実施例1~7によると、同位体希釈法を適用した後のタングステン回収率においても、共沈剤に鉄(II)を用いた場合が最も良好であった。また、同位体希釈法を適用した後のタングステン回収率は、全体的に見て90%以上であることが分かった。さらに、同位体希釈法を適用する前の実質のタングステン回収率が高い程、同位体希釈法を適用した後のタングステン回収率も良好であることを確認した。
<元素評価方法>
次に、タングステンの定量のための操作で得られた測定溶液の一部を、誘導結合プラズマ質量分析装置(サーモフィッシャー・サイエンティフィック株式会社製の「ELEMENT2/XR」)へ導入し、検量線法を適用して測定することにより、タングステンの重要度に準ずるタングステン以外の元素を定量出来ないかどうかを確認した。
(実施例8)
実施例8では、タングステン以外の元素として、モリブデンを用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例1の操作を行いつつ、モリブデンの定量には、モリブデン回収率を調査するため、モリブデン添加検体である4、5を作製した以外は、参考例1と同様の操作を行い、モリブデンの定量値および回収率を算出した。
(実施例9)
実施例9では、タングステン以外の元素として、モリブデンを用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例2の操作を行いつつ、モリブデンの定量には、モリブデン回収率を調査するため、モリブデン添加検体である4、5を作製した以外は、参考例2と同様の操作を行い、モリブデンの定量値および回収率を算出した。
(実施例10)
実施例10では、タングステン以外の元素として、アンチモンを用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例3の操作を行いつつ、アンチモンの定量には、アンチモン回収率を調査するため、アンチモン添加検体である4、5を作製した以外は、参考例3と同様の操作を行い、アンチモンの定量値および回収率を算出した。
(実施例11)
実施例11では、タングステン以外の元素として、亜鉛を用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例4の操作を行いつつ、亜鉛の定量には、亜鉛回収率を調査するため、亜鉛添加検体である4、5を作製した以外は、参考例4と同様の操作を行い、亜鉛の定量値および回収率を算出した。
(実施例12)
実施例12では、タングステン以外の元素として、モリブデンを用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例5の操作を行いつつ、モリブデンの定量には、モリブデン回収率を調査するため、モリブデン添加検体である4、5を作製した以外は、参考例5と同様の操作を行い、モリブデンの定量値および回収率を算出した。
(実施例13)
実施例13では、タングステン以外の元素として、鉛を用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例6の操作を行いつつ、鉛の定量には、鉛回収率を調査するため、鉛添加検体である4、5を作製した以外は、参考例6と同様の操作を行い、鉛の定量値および回収率を算出した。
(実施例14)
実施例14では、タングステン以外の元素として、ビスマスを用いた。つまり、タングステンの定量のため、実施例7の操作を行いつつ、ビスマスの定量には、ビスマス回収率を調査するため、ビスマス添加検体である4、5を作製した以外は、参考例7と同様の操作を行い、ビスマスの定量値および回収率を算出した。
以上の実施例8~14における評価結果を表4に示した。
Figure 0007392393000005
実施例8~14によると、タングステン以外の元素として選択した、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスの回収率は、いずれも98%以上で良好であることが分かった。この結果より、タングステン以外の元素を、同位体希釈法ではなく、検量線法を適用して、同じ測定溶液で、タングステンと共に他の元素も定量出来ることを確認した。
(比較例1)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例2)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例3)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例4)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例5)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例5と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例6)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例6と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
(比較例7)
沈澱pHを制御するアルカリとして、水酸化ナトリウム溶液(25%)を使用したこと以外は、実施例7と同様の操作を行い、タングステンの定量値および回収率を算出した。
比較例1~7によると、沈澱pHの制御において、共存するニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムなどの金属が、多量の水酸化物を生成し、沈澱したために、タングステンの評価を行うことが出来なかった。
(最終評価)
参考例、実施例、比較例の各結果から、タングステンの共沈剤としては、総合的な観点から、水酸化鉄(II)を用いるのが、最適であることが分かった。また、同位体希釈法を適用する前の実質の回収率が、全体として9.72~83.9%であったのに対し、同位体希釈法を適用した後の補正がなされたタングステン回収率では、全ての例において90%を超え、低くとも94.6%を超える良好な結果が得られた。また、タングステンの定量のための操作で得られた測定溶液で、検量線法を適用して測定することにより、タングステンの重要度に準ずるタングステン以外の元素を定量出来ることも分かった。
ところで、同位体希釈法では、先述の通り、同位体希釈法を適用する前の回収率が、仮に損失のため低値を示しても、同位体希釈法を適用した後には、良好な回収率に補正された。さらに、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法においては、同位体希釈法を適用する前の回収率が高値を示す程、同位体希釈法での補正精度が向上し、より正確な評価結果が得られることも確認できた。
以上より、本発明の一実施形態に係るタングステン評価方法は、タングステンが微量な場合や、共存元素が含まれる場合でも、試料に含まれるタングステンを正確に、かつ、安全に評価できる技術を提供することができた。また、上記と同じ測定溶液でタングステンと共に他の元素も評価する技術を提供することができた。
なお、上記のように本発明の各実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。またタングステン評価方法の構成、動作も本発明の各実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 第1溶解工程、S2 沈澱工程、S3 第2溶解工程、S4 分析工程

Claims (9)

  1. 試料中のタングステンの濃度を評価するタングステン評価方法であって、
    前記試料中にスパイクタングステンを添加して溶解し、溶解液を得る第1溶解工程と、
    前記溶解液に共沈させる金属を含む金属溶液を添加し、酸およびアンモニア水でpH調整した後に煮沸し、金属水酸化物の沈澱を得る沈澱工程と、
    前記沈澱を溶解し、測定溶液を得る第2溶解工程と、
    前記測定溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、同位体希釈法で測定することにより、前記タングステンを定量する分析工程と、を有し、
    前記金属溶液は、前記金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩の1種以上を水で溶解したもの、或いは、前記金属を、塩酸、硝酸、硫酸の1種以上で溶解したものであることを特徴とするタングステン評価方法。
  2. 前記金属が、鉄、ランタン、アルミニウム、錫、ビスマス、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ガリウム、インジウム、ニオブ、タンタル、アンチモンの1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のタングステン評価方法。
  3. 前記金属が、2価(II)又は3価(III)の形態であることを特徴とする請求項2に記載のタングステン評価方法。
  4. 前記金属が、鉄(II)、鉄(III)、ランタン(III)、アルミニウム(III)の1種以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載のタングステン評価方法。
  5. 前記試料中には、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムの1種以上を含まれることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタングステン評価方法。
  6. 前記沈澱工程では、前記溶解液のpHを前記酸と前記アンモニア水で6~12に調整した後に煮沸することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のタングステン評価方法。
  7. 前記同位体希釈法を適用した後のタングステン回収率が90%以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のタングステン評価方法。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のタングステン評価方法において、
    前記第2溶解工程における前記測定溶液の一部を、誘導結合プラズマ質量分析装置へ導入し、検量線法で測定することにより、前記タングステン以外の元素を定量する元素評価方法。
  9. 前記タングステン以外の元素が、モリブデン、アンチモン、亜鉛、鉛、ビスマスであることを特徴とする請求項8に記載の元素評価方法。
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