JP7252936B2 - 分析用試料の調製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分析用試料の調製方法に関する。
半導体関連分野、医療器具製造分野、食品成分分析分野、など様々な分野において、試料(原料、食品など)に含まれる元素を分析し、定量する必要が生じることがある。そのため、それら分析および定量方法のそれぞれに合わせて、分析用試料を適切に調製する必要がある。
試料中の微量無機不純物元素、特にほう素およびリンを定量する場合、分析用試料の調製方法としては、マイクロウェーブ分解法、および灰化法などが一般的に用いられている。
マイクロウェーブ分解法は、密閉系にて試料をマイクロ波で加熱溶解するため、高温で揮散しやすいほう素およびリンをロスすることなく回収し、分析および定量に供することが可能である。
灰化法は、試料量はあまり制限されず(1g以上処理可能)、ほとんどの有機物試料の分解が可能である。
灰化法をさらに改良した方法を含む、ほう素の定量方法として、従来、次の(第一工程)~(第五工程)の工程を含む定量方法が提供されている(特許文献1):(第一工程)黒鉛をカルシウム化合物の存在下に灰化して上記黒鉛中のほう素を灰化物に捕捉する工程;(第二工程)第一工程で得られた灰化物を酸で溶解して灰化物水溶液を得る工程;(第三工程)第二工程で得られた灰化物水溶液に含まれるほう素を陰イオン交換樹脂に捕捉する工程;(第四工程)第三工程で陰イオン交換樹脂に捕捉されたほう素を酸性水溶液に溶離して溶離液を得る工程;(第五工程)第四工程で得た溶離液中のほう素を誘導結合プラズマ-質量分析法により定量する工程。
特開2008-203122号公報(2008年9月4日公開)
しかしながら、一般的なマイクロウェーブ分解法、および灰化法などの従来技術には、以下のような問題がある。
マイクロウェーブ分解法には、処理可能な試料量が限られる(0.1g程度)という問題、および、試料性状によっては分解が困難であるという問題、がある。
また、従来の灰化法には、開放系でありかつ高温で処理するため、元素によっては(特にほう素およびリンは)、灰化時に揮散してしまうおそれがある、という問題がある。
これらの技術的課題を解決するため、従来、上述したような、灰化法を基とした分析用試料の調製方法を含む、黒鉛中のほう素の定量方法が開発された(特許文献1)。特許文献1に記載の技術は、処理可能な試料量の問題、または、元素が揮発してしまう問題、を解決する上でかなり有用であった。しかし、試料に含まれている元素を分析するための分析用試料を得るために、さらに有用な分析用試料の調製方法の開発が望まれていた。
例えば、特許文献1において、黒鉛中の定量可能な元素はほう素であり、特許文献1の技術はほう素以外の定量に用いるための技術ではなかった。
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料に含まれている元素を、ほう素および/またはリンに限定することなく、簡便に分析することを可能とする、新規の分析用試料の調製方法を提供することである。
すなわち本発明の一実施形態に係る分析用試料の調製方法は、試料に含まれている元素を分析するための分析用試料の調製方法であり、上記試料を捕捉剤の存在下に灰化することによって、上記試料中の元素が捕捉された灰化物を得る、灰化工程と、上記灰化工程において得られた上記灰化物を酸に溶解することによって、灰化物水溶液を得る、酸溶解工程と、上記酸溶解工程において得られた上記灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、上記捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得る、陽イオン交換樹脂接触工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の一実施形態によれば、試料に含まれている元素を、ほう素および/またはリンに限定することなく、簡便に分析することを可能とする、分析用試料を提供できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。本発明はまた、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
本発明の一実施形態に係る分析用試料の調製方法は、試料に含まれている元素を分析するための分析用試料の調製方法であり、上記試料を捕捉剤の存在下に灰化することによって、上記試料中の元素が捕捉された灰化物を得る、灰化工程と、上記灰化工程において得られた上記灰化物を酸に溶解することによって、灰化物水溶液を得る、酸溶解工程と、上記酸溶解工程において得られた上記灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、上記捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得る、陽イオン交換樹脂接触工程と、を含んでいる。
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係る分析用試料の調製方法」を単に「本調製方法」とも称する。用語「本調製方法」は、分析用試料の調製方法をなんら限定するものではなく、単に上記分析用試料の調製方法の一実施形態を示すにすぎない。
〔試料〕
本調製方法の対象である試料は、灰化が可能な試料であれば特に限定されるものではなく、炭素非含有試料、炭素含有試料、またはこれらの組み合わせであり得る。
炭素非含有試料は、炭素を含有していない物質のみを含む試料である。炭素非含有試料としては、例えば、金属、セラミックス、および水溶液などが挙げられるが、炭素を含有していない限りこれらに限定されない。
炭素含有試料は、炭素を含有している物質を含む試料である。上記「炭素を含有している物質」としては、(1)黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、ガラス状炭素、炭素繊維、カーボンブラック、活性炭などの、炭素からなる物質、(2)生体試料のような炭素を含有する物質、および、(3)樹脂、有機化合物、およびフッ素樹脂などの炭素を含有している物質が挙げられる。
炭素含有試料は、炭素を含有している物質を含んでいればよく、炭素を含有している物質とそれ以外の物質との複合体(例えば、黒鉛複合材)であってもよい。また、炭素含有試料は、炭素を含有している物質を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。また、炭素含有試料は、天然物に由来するものであってもよく、人工物であってもよい。天然物に由来する炭素含有試料には、例えば、生体試料;米などの穀物等が含まれる。また、人工物に由来する炭素含有試料には、例えば、樹脂等が含まれる。
本調製方法は、詳しくは後述するように、捕捉剤の存在下に上記試料を灰化することによって、試料中の元素が捕捉された灰化物を得る、灰化工程を含んでいる。試料を効率よく、かつ完全に灰化させる観点から、試料は、炭素含有試料であることが好ましい。
本調製方法では、通常、試料は粉末状態で本調製方法の灰化工程に供せられる。試料が塊状または成形された物体である場合には、試料を切削または粉砕して、粉末状とすることにより、本調製方法の灰化工程に供せられ得る。従って、本調製方法では、試料の形態および大きさは特に限定されるものではない。
本調製方法の1回あたりにおける試料の使用量は、通常0.001g~100g、好ましくは0.005g~50g、より好ましくは0.01g~10gである。
〔灰化工程〕
灰化工程は、試料を捕捉剤の存在下に灰化することによって、上記試料中の元素が捕捉された灰化物を得る工程である。
捕捉剤は、灰化工程において、灰化物中に、試料に含まれる測定対象元素を捕捉することができる化合物であれば特に限定されない。捕捉剤は、灰化工程において、灰化物中に、試料に含まれる元素の全てを捕捉するものでなくてもよい。すなわち、捕捉剤は、試料に含まれ得るほう素およびリン、ならびにほう素及びリン以外の少なくとも一つの元素、を灰化物中に捕捉できる化合物である。捕捉剤としては、上記化合物を、1種類のみを単独で、または2種以上の上記化合物を組み合わせて用いることができる。
また、上記捕捉剤は、当該捕捉剤由来の元素の陽イオンが、後述する陽イオン交換樹脂接触工程において、陽イオン交換樹脂に捕捉され得る捕捉剤である。これにより、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得ることができる。
したがって、上記捕捉剤としては、測定対象とする元素を含まない捕捉剤を用いることが好ましい。上記捕捉剤は、試料に含まれ得るほう素およびリン、ならびにほう素及びリン以外の少なくとも一つの元素を含まないことがより好ましい。
捕捉剤の具体的な一例としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素(例えばカルシウム)、ランタノイド系列元素(例えばランタン)などを含む化合物を挙げることができる。これら化合物は、1種類のみを単独で、または2種以上の上記化合物を組み合わせて用いることができる。
また、上記化合物は酸化物であってもよく、例えば、酸化カルシウム、酸化ランタン等を好適に用いることができる。上記化合物は、通常、灰化工程で酸化されて酸化物となり、試料中の元素は、この酸化物と結合することにより、灰化物中に捕捉されると考えられる。したがって、上記化合物は、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより酸化物に酸化されうる酸化物前駆体であってもよい。酸化物前駆体としては、例えば炭酸塩、フッ化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、および水酸化物等が挙げられる。
捕捉剤としては、試料に含まれ得るほう素およびリン、ならびにほう素及びリン以外の少なくとも一つの元素を捕捉する能力に優れ、かつ、入手が容易なことから、カルシウム化合物を好適に使用できる。
カルシウム化合物として通常は、酸化カルシウムまたはその前駆体が用いられる。酸化カルシウムの前駆体は、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより酸化カルシウムに酸化されうるものである。酸化カルシウムの前駆体としては、具体的には、例えば炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、および水酸化カルシウムが挙げられる。これらの化合物は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カルシウム化合物として通常は、試薬特級以上のグレードで、粉末状のものが用いられる。
本調製方法において、捕捉剤としてカルシウム化合物を含む場合には、灰化工程は、以下のような構成であってもよい。すなわち、灰化工程は、試料をカルシウム化合物の存在下に灰化することによって、試料中の元素が酸化カルシウム(CaO)と結合することにより、試料中の元素が捕捉された灰化物を得る工程である。
捕捉剤の使用量は、酸溶解工程にて捕捉剤の全量が溶解され得る量であれば特に限定されるものではないが、試料に対して通常0.01質量倍~10質量倍の量である。
捕捉剤の存在下に試料を灰化するには、例えば試料を捕捉剤と混合し、得られた混合物を加熱すればよい。灰化工程において、試料および捕捉剤は、例えば白金皿、白金ルツボなどのような容器の中で加熱されることが好ましい。白金皿、白金ルツボなどのような容器は、(a)試料、試料中の元素、および捕捉剤に対して不活性であり、かつ(b)耐熱性である。
また、灰化工程に用いられる容器としては、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ほうけい酸ガラスなどのような、無機ガラス製容器が用いられてもよい。無機ガラス製容器の中では、特に金属不純物の少ない高純度のものを入手できるという点で、石英ガラスが好適に用いられる。
灰化は、酸素を含む雰囲気中、具体的には酸素ガス流通雰囲気下、静止空気雰囲気下、または空気流通雰囲気下に行われ、好ましくは酸素ガス流通雰囲気下に行われる。灰化工程が酸素ガス流通雰囲気下にて行われる場合には、試料を効率よく灰化させるために、酸素ガスの流通速度は、0.5L/分~3L/分であることが好ましい。
灰化のための加熱は、温度制御を行うことが可能である熱電対温度計付きの電気炉(電気マッフル炉)で行われてもよく、単にバーナーで行われてもよい。
灰化温度は通常500℃~1000℃である。灰化時間は、試料および捕捉剤の使用量、灰化工程が行われる雰囲気中の酸素濃度、並びに加熱温度により異なり、適宜設定され得る。試料を捕捉剤の存在下に灰化することにより、試料中の元素が捕捉剤に捕捉された灰化物を得ることができる。
本調製方法における灰化工程では、試料を捕捉剤の存在下に灰化するため、試料が揮発性の高い元素(ほう素およびリンなど)を含む場合であっても、当該元素を灰化物中に捕捉することが可能である。
本調製方法における灰化工程では、ほう素およびリンを揮発させることなく、かつ同時に、ほう素およびリン以外の少なくとも一つの元素を、灰化物中に捕捉することが可能である。
〔酸溶解工程〕
酸溶解工程は、灰化工程において得られた灰化物を酸に溶解することによって、灰化物水溶液を得る工程である。
灰化物を酸に溶解するには、例えば、灰化物を含む容器に酸を加えて加熱すればよい。
酸としては、灰化物を溶解できる酸であれば、特に限定されるものではない。灰化物を溶解できる酸の中でも、灰化工程において使用した容器(白金皿、白金ルツボ、無機ガラス製容器など)を溶解しない酸が好ましい。そのような好ましい酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、過酸化水素水、過塩素酸等の無機酸またはこれらの無機酸の二種類以上を混合した混酸、が挙げられる。灰化工程において使用した容器を溶解しない酸を用いることにより、分析溶液に容器由来の金属不純物を混入させることなく、灰分(すなわち灰化物)を溶解させることができる。また、酸は通常、試薬特級以上のグレードのものが用いられる。また、酸は、酸水溶液であってもよい。
酸の濃度は特に限定されるものではなく、濃塩酸、濃硝酸、濃硫酸などの高濃度の酸をそのまま用いてもよいし、水で希釈して用いてもよい。酸を希釈して使用する場合には、通常、イオン交換水、または超純水(比抵抗値18MΩ・cm以上の水)により希釈される。
また、使用する酸の種類は、試料が含みうる元素(すなわち、測定対象とする元素)の種類に応じて適宜選択すればよく、試料が含みうる元素を溶解可能な酸を適宜選択すればよい。
灰化物を溶解するときの酸の使用量は、灰化物の全量を溶解しうる量であれば特に限定されるものではないが、通常は灰化物に対して10質量倍~500質量倍の量である。
灰化物を酸(酸水溶液)に溶解させるときの溶解温度は、酸水溶液の凝固点以上沸点以下であれば特に限定されるものではないが、迅速に溶解しうる点で、50℃以上であることが好ましい。上記溶解温度は、灰化物および酸を含む容器を加熱するときの、加熱温度ともいえる。加熱に用いる装置としては、例えば、ヒーター、ホットプレートなどが挙げられる。
灰化物を酸に溶解させるときの溶解時間は、灰化物の全量を溶解しうる時間であれば特に限定されるものではない。上記溶解時間は、灰化物および酸を含む容器を加熱するときの、加熱時間ともいえる。
酸による灰化物の溶解が完了したことは、目視観察によって確認することができる。具体的には、例えば、目視によって残渣、沈殿等がないことを確認するか、またはさらに遠心分離後に沈殿が生じないことを目視で確認することによって、酸による灰化物の溶解が完了したことを確認できる。
得られた灰化物水溶液は、イオン交換水または超純水で希釈してもよい。
本調製方法における酸溶解工程では、ほう素、リン、ならびに、ほう素およびリン以外の少なくとも一つの元素を、含んでいる灰化物水溶液を得ることが可能である。
〔陽イオン交換樹脂接触工程〕
陽イオン交換樹脂接触工程は、酸溶解工程において得られた灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得る工程である。なお、「上記陽イオンの元素」は、「捕捉対象元素」とも称し、捕捉剤に由来する元素である。
陽イオン交換樹脂接触工程では、酸溶解工程において得られた灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉させることができる。これにより、陽イオン交換樹脂接触工程では、捕捉対象元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得ることができる。すなわち、捕捉剤(例えば捕捉剤の酸化物)に捕捉されていた上記試料中の元素が、捕捉剤由来の元素の陽イオンから分離されて、当該分離された元素を含む分析溶液を得ることができる。なお、陽イオン交換樹脂接触工程では、捕捉剤由来の元素の陽イオン全てが、陽イオン交換樹脂に捕捉されなくてもよい。
本調製方法において、捕捉剤としてカルシウム化合物を含む場合には、陽イオン交換樹脂接触工程は、以下のような構成であってもよい。すなわち、陽イオン交換樹脂接触工程は、酸溶解工程において得られた灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、上記灰化物水溶液に含まれるカルシウムイオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、カルシウムイオン以外の元素を含んでいる分析溶液を得る工程でありうる。
なお、上記「捕捉対象元素以外の元素を含んでいる分析溶液」とは、試料に含まれている捕捉対象元素以外の元素うち、少なくとも一種類の元素を含んでいる分析溶液を意図している。すなわち、試料に含まれている捕捉対象元素以外の全ての元素を含んでいる分析溶液を意図しているのではない。上記分析溶液が含んでいる元素は、具体的には、灰化物水溶液に含まれる元素のうち、陽イオン交換樹脂によって捕捉されない元素でもあり得る。陽イオン交換樹脂接触工程において、陽イオン交換樹脂によって捕捉されない元素としては、例えば、〔遷移金属元素〕Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au;〔ホウ素族元素〕B、Al、Ga、In、Tl;〔炭素族元素〕Si、Ge、Sn、Pb;〔ニクトゲン元素〕P、As、Sb、Bi;〔カルコゲン元素〕S、Se、Te;のうちの少なくとも一つの元素が挙げられる。従って、分析溶液は、列挙した元素のうちの少なくとも一つの元素を含んでいてもよい。
本調製方法における陽イオン交換樹脂接触工程では、ほう素、リン、ならびに、ほう素およびリン以外の少なくとも一つの元素を、含んでいる分析溶液を得ることが可能である。
灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させるには、具体的には、例えば、灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを混合してもよいし、陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに灰化物水溶液を通液させてもよい。灰化物水溶液中の捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に効率よく捕捉させる観点から、灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させる方法としては、陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに灰化物水溶液を通液させる方法が好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではなく、通常、粒状、または粉末状のものが使用される。陽イオン交換樹脂として具体的には、例えばDOWEX強酸性型陽イオン交換樹脂(H型)、およびDOWEX MARATHON(Na型)(ダウ・ケミカル社製);ダイヤイオン(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
陽イオン交換樹脂の使用量としては、特に限定されるものではなく、使用される陽イオン交換樹脂の総交換容量をもとに決定する。
灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを混合した場合には、混合後(換言すれば、試料中の捕捉剤由来の元素の陽イオンを捕捉させた後)の陽イオン交換樹脂は、通常の固液分離法により灰化物水溶液から分離される。これによって、陽イオン交換樹脂と混合後の灰化物水溶液として、捕捉対象元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得ることができる。固液分離法としては、傾斜法、遠心分離法、および濾過法などが挙げられる。
灰化物水溶液から分離した後の陽イオン交換樹脂は、水洗されてもよいが、水洗は必ずしも必要とされない。水洗には通常、イオン交換水、または超純水が用いられる。陽イオン交換樹脂が水洗された場合には、再度固液分離法が行われることにより、陽イオン交換樹脂は洗浄水から分離される。分離された洗浄水は、先に得られた分析溶液と混合され得る。これら水洗に係る操作によって、捕捉対象元素以外の元素を、分析溶液として、より確実に回収することが可能となる。
陽イオン交換樹脂が充填されたカラム(陽イオン交換樹脂カラム、とも称する)に灰化物水溶液を通液させる場合、耐酸性の観点から、石英ウールを支持体として陽イオン交換樹脂を充填したカラムが使用されることが好ましい。支持体として使用される石英ウールの使用量は特に限定されないが、陽イオン交換樹脂に対して、0.01質量倍量~0.1質量倍量であることが好ましい。また、陽イオン交換樹脂カラムの支持体として石英ウールを使用することにより、当該カラムの予備洗浄において、当該カラムに含まれる不純物を除去することが可能となる。
陽イオン交換樹脂が充填されたカラム(陽イオン交換樹脂カラム、とも称する)に灰化物水溶液を通液させた場合には、陽イオン交換樹脂カラム通液後の灰化物水溶液として、捕捉対象元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得ることが可能である。灰化物水溶液が通液された後の陽イオン交換樹脂カラムは、イオン交換水、または超純水などを用いて水洗されてもよいが、水洗は必ずしも必要とされない。陽イオン交換樹脂カラム通液後の洗浄水は、先に得られた分析溶液と混合され得る。これら水洗に係る操作によって、捕捉対象元素以外の元素を、分析溶液として、より確実に回収することが可能となる。
陽イオン交換樹脂接触工程において、灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させるときの接触温度および接触時間は特に限定されない。接触温度としては、例えば、陽イオン交換樹脂の温度、および灰化物水溶液の温度などが挙げられる。接触時間としては、例えば、灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂との混合時間、および灰化物水溶液の陽イオン交換樹脂カラムにおける通液速度などが挙げられる。
本発明の他の一実施形態は、分析方法を提供する。本発明の他の一実施形態に係る分析方法は、本調製方法により得られた上記分析溶液に含まれている元素を、分析装置で測定する分析工程を含んでいる。
本発明書中では、「本発明の他の一実施形態に係る分析方法」を単に「本分析方法」とも称する。用語「本分析方法」は、分析方法をなんら限定するものではなく、単に上記分析方法の一実施形態を示すにすぎない。
〔分析工程〕
分析工程は、上述した本調製方法により得られた上記分析溶液に含まれている元素を、分析装置で測定する工程である。なお、上記「元素を、分析装置で測定する」とは、元素を検出してその種類を特定すること、元素を定量すること、またはその両方が意図される。
本発明の一実施形態に係る分析工程では、ほう素、リン、ならびに、ほう素およびリン以外の少なくとも一つの元素を、同時に、分析装置で測定することが可能である。
分析装置としては、公知の分析装置を用いることが可能であり、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)、原子吸光分析装置(AAS)などを挙げることができる。また、ICP-MSは、四重極型誘導結合プラズマ-質量分析装置(Q-ICP-MS)、トリプル四重極型誘導結合プラズマ-質量分析装置(ICP-QQQ-MS)、または高分解能型誘導結合プラズマ質量分析装置(二重収束型誘導結合プラズマ質量分析装置(HR-ICP-MS))であってもよい。
分析工程では、使用される分析装置に合わせて、適宜公知の方法により元素を測定することが可能である。
分析工程では、分析溶液に含まれている元素のうち、少なくとも一つの元素を検出し、定量することを意図している。
分析工程における、分析装置および測定方法は、測定対象とする元素の種類に応じて適宜選択すればよい。
〔本調製方法の効果〕
従来は、特定の元素を分析するための分析用試料の調製方法として、試料中の元素が捕捉された灰化物を酸に溶解して得た灰化物水溶液から、分析対象の元素を捕捉および濃縮して単離する方法が用いられていた。例えば、特許文献1では、ほう素を分析するために、灰化物水溶液から、陰イオン交換樹脂を用いてほう素を捕捉および濃縮して、単離する方法が用いられている。
すなわち、従来法では、陰イオン交換樹脂に捕捉した元素のみしか測定することができなかったが、本調製方法では、試料に含まれる多くの元素を一度に測定するための分析用試料を調製することができる。
また、本調製方法では、酸溶解工程にて得られた灰化物水溶液を、追加の処理(例えばpH調整など)を行うことなく、続く陽イオン交換樹脂接触工程にて陽イオン交換樹脂と接触させることが可能である。一方、従来技術として、例えば特許文献1では、第二工程において得られた灰化物水溶液を第三工程にて陰イオン交換樹脂と接触させる前に、灰化物水溶液にアルカリを加えるなどして灰化物水溶液の水素濃度を調節する操作を行う必要がある。
また、本調製方法では、陽イオン交換樹脂接触工程にて灰化物水溶液と接触させた後の陽イオン交換樹脂を洗浄する操作は不要である。灰化物水溶液と接触させた後の陽イオン交換樹脂を洗浄する場合であっても、実施例で後述するように、陽イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂カラム)を一度洗浄すれば十分である。一方、従来技術として、例えば特許文献1では、灰化物水溶液を接触させた陰イオン交換樹脂から分析対象以外の物質を除去するための洗浄操作が非常に煩雑である。
さらに、本調製方法では、本調製方法の陽イオン交換樹脂接触工程にて陽イオン交換樹脂と接触させた後の灰化物水溶液を、さらに特別な操作を行うことなく分析溶液として、本分析方法に供することが可能である。一方、従来技術として、例えば特許文献1では、分析対象であるほう素は、第三工程にて陰イオン交換樹脂に捕捉される。そのため、続く第四工程にて陰イオン交換樹脂に捕捉されたほう素を酸性水溶液で溶離する必要があり、得られた溶離液を定量に用いている。
上述したように、本調製方法は、従来法と比較して、試料に含まれている元素を、簡便に分析することを可能とする。
さらに、本調製方法では、工程(または操作)が少ないので、最終的な分析試料(分析溶液)の汚染を低減することができる。その結果、本調製方法は、分析対象ではない元素を捕捉した残りの液を分析するにもかかわらず、分析対象の元素を捕捉および濃縮して単離する従来法と同等の感度を達成することができる。本調製方法では、特に、ほう素およびリンを高感度に分析することを可能とする、分析用試料を提供できる。
すなわち、本調製方法は、試料に含まれている元素を、ほう素および/またはリンに限定することなく、簡便に分析することを可能とする分析用試料の調製方法を提供可能である。
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
〔1〕試料に含まれている元素を分析するための分析用試料の調製方法であり、上記試料を捕捉剤の存在下に灰化することによって、上記試料中の元素が捕捉された灰化物を得る、灰化工程と、上記灰化工程において得られた上記灰化物を酸に溶解することによって、灰化物水溶液を得る、酸溶解工程と、上記酸溶解工程において得られた上記灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、上記捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得る、陽イオン交換樹脂接触工程と、を含むことを特徴とする、分析用試料の調製方法。
〔2〕上記試料が、炭素含有試料であることを特徴とする、〔1〕に記載の分析用試料の調製方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載の分析用試料の調製方法により得られた上記分析溶液に含まれている元素を、分析装置で測定する分析工程を含むことを特徴とする、分析方法。
本発明の一実施例について以下に説明する。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、以下に示す市販の試料を使用した:N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン、ペンタセン、5,5’-ジ(4-ビフェニルイル)-2,2’-ビチオフェン、N,N’-ジオクチル-3,4,9,10-ペリレンジカルボキシミド、および4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル。
上記試料を用いて、本発明の一実施形態に係る調製方法に基づいて分析用試料を調製した。続いて、得られた分析用試料を用いて、本発明の一実施形態に係る分析方法に基づいて上記試料(分析用試料)中の元素(具体的にはほう素(B)およびリン(P))を測定した。具体的な操作手順は以下の通りである。なお、実施例1では、捕捉剤として炭酸カルシウムを用いた。
(1.灰化工程)
粉末状の試料10mgを石英ビーカーに採取した。当該石英ビーカーに炭酸カルシウム(試薬特級、粉末状)を加えて、試料と炭酸カルシウムとを混合し、これらの混合物を得た。その後、石英ビーカーをバーナーで加熱することによって、混合物を灰化し、灰化物を得た。
(2.酸溶解工程)
得られた灰化物を含む石英ビーカー内に超純水(比抵抗値18Ω・cm以上)、および20質量%塩酸を加えた。次いで、石英ビーカーを100℃~150℃のホットプレート上に設置し、加熱することによって灰化物を溶解させ、灰化物水溶液を得た。ここで、当該灰化物水溶液における塩化水素の濃度は約4質量%であった。
(3.陽イオン交換樹脂接触工程)
石英ウール、および陽イオン交換樹脂(DOWEX強酸性型陽イオン交換樹脂(H型);ダウ・ケミカル社製)を順次カラムに充填し、陽イオン交換樹脂カラム(以下、単にカラムとも称する)を作製した。カラムに5質量%塩酸および超純水を通液して、カラムをコンディショニングした。
次いで、コンディショニングしたカラムに、酸溶解工程で得た灰化物水溶液を通液させ、カラム通過後の灰化物水溶液を、分析溶液として回収した。さらに、灰化物水溶液を含んでいた石英ビーカーに超純水を加えて、当該石英ビーカーを洗浄し、洗浄後の超純水を、カラムに通液した。カラム通過後の超純水を回収し、上記分析溶液に加えた。その後、カラムに超純水を通液し、カラムを洗浄した。カラム通過後の超純水(洗浄液)を回収し、上記分析溶液にさらに加えた。
得られた分析溶液に20質量%塩酸を加え、さらに超純水を用いて塩化水素濃度約4質量%の分析溶液を作製した。
(4.分析工程)
上記陽イオン交換樹脂接触工程で得た分析溶液を、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(「ELAN DRCII」、米国パーキンエルマー社製、四重極誘導結合プラズマ-質量分析装置)に導入して、分析溶液中の元素(具体的にはほう素(B)およびリン(P))を測定した。
測定結果を表1に示す。
(比較例1:マイクロウェーブ分解法による元素の定量)
実施例1で用いたのと同じ試料を用いて、従来法であるマイクロウェーブ分解法に基づいて分析用試料を調製し、続いて上記試料中の元素(具体的にはほう素(B)およびリン(P))を定量した。具体的な操作手順は以下の通りである。
粉末状の試料100mgをフッ素樹脂製のマイクロウェーブ分解容器に採取した。当該容器に硝酸(超微量分析用、和光純薬工業株式会社)を加えて密閉し、その後マイクロウェーブ分解した。分解後の試料溶液を回収し、超純水を用いて硝酸濃度約25質量%の分析溶液を作製した。
上記マイクロウェーブ分解法で得た分析溶液を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)(「iCAP6500」、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に導入して、分析溶液中の元素(具体的にはほう素(B)およびリン(P))を測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0007252936000001
*表1において、「B」はほう素を表しており、「P」はリンを示している。
*表1において、「<(数値)」は数値(定量下限値)よりも小さい値であったことから、定量できなかったことを示している。
表1より、以下のことが分かった。すなわち、マイクロウェーブ分解法では、多くの試料において、ほう素及びリン(特にほう素)の定量値が定量下限値未満であり、正確に定量できなかった。一方、本分析方法では、使用した試料の量がマイクロウェーブ分解法の10分の1の量であるにもかかわらず、多くの試料においてほう素及びリン(特にリン)を正確に定量できたことが分かった。このことより、本分析方法は、従来法よりも、より微量の試料において、試料中のほう素およびリンをより高感度に測定できることが分かった。
(実施例2)
実施例2では、粉末状にした超高純度黒鉛にいくつかの元素を添加して混合物を調製し、当該混合物を試料として用いた。黒鉛に添加した元素は、Ge、As、Te、およびReであり、それら元素の添加量は全て200ngであった。
上記試料(黒鉛)を用いて、本発明の一実施形態に係る調製方法に基づいて分析用試料を調製した。続いて、得られた分析用試料を用いて、本発明の一実施形態に係る分析方法に基づいて上記試料(分析用試料)中の元素を測定した。具体的な操作手順は以下の通りである。なお、実施例2では、捕捉剤として炭酸カルシウムを用いた。
(1.灰化工程)
粉末状の試料10gを白金皿に採取した。当該白金皿に炭酸カルシウム(試薬特級、粉末状)を加えて、試料と炭酸カルシウムとを混合し、これらの混合物を得た。その後、白金皿を電気炉内にて3L/分で酸素を流通させながら900℃、3時間の条件で混合物を灰化し、灰化物を得た。
(2.酸溶解工程)
得られた灰化物を含む白金皿内に超純水(比抵抗値18Ω・cm以上)、および20質量%塩酸を加えた。次いで、白金皿を100℃のホットプレート上に設置し、加熱することによって灰化物を溶解させ、灰化物水溶液を得た。ここで、当該灰化物水溶液における塩化水素の濃度は約4質量%である。
(3.陽イオン交換樹脂接触工程)
石英ウール、および陽イオン交換樹脂(DOWEX強酸性型陽イオン交換樹脂(H型);ダウ・ケミカル社製)を順次カラムに充填し、陽イオン交換樹脂カラム(以下、単にカラムとも称する)を作製した。カラムに5質量%塩酸および超純水を通液して、カラムをコンディショニングした。
次いで、コンディショニングしたカラムに、酸溶解工程で得た灰化物水溶液を通液させ、カラム通過後の灰化物水溶液を、分析溶液として回収した。さらに、灰化物水溶液を含んでいた白金皿に超純水を加えて、当該白金皿を洗浄し、洗浄後の超純水を、カラムに通液した。カラム通過後の超純水を回収し、上記分析溶液に加えた。その後、カラムに超純水を通液し、カラムを洗浄した。カラム通過後の超純水(洗浄液)を回収し、上記分析溶液にさらに加えた。
得られた分析溶液に20質量%塩酸を加え、さらに超純水を用いて塩化水素濃度約4質量%の分析溶液を作製した。
(4.分析工程)
上記陽イオン交換樹脂接触工程で得た分析溶液を、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(「ELAN DRCII」、米国パーキンエルマー社製、四重極誘導結合プラズマ-質量分析装置)に導入して、分析溶液中の元素を測定した。
結果を表2に示す。
Figure 0007252936000002
表2において、「サンプル含有量」とは、使用した超高純度黒鉛そのものに含まれている各種元素の含有量を指している。
表2より、本発明は、ほう素及びリン以外の元素も定量可能な、分析用試料を提供できる、という効果を奏することが分かった。
本発明は、試料に含まれている元素を、ほう素および/またはリンに限定することなく、簡便に分析することができる。従って、本発明は、半導体関連分野、医療器具製造分野、食品成分分析分野、など様々な分野において、試料(原料、食品など)に含まれる元素の分析に利用することができる。

Claims (3)

  1. 試料に含まれている元素を分析するための分析用試料の調製方法であり、
    上記試料を捕捉剤の存在下に灰化することによって、上記試料中の元素が捕捉された灰化物を得る、灰化工程と、
    上記灰化工程において得られた上記灰化物を酸に溶解することによって、灰化物水溶液を得る、酸溶解工程と、
    上記酸溶解工程において得られた上記灰化物水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させることによって、上記捕捉剤由来の元素の陽イオンを陽イオン交換樹脂に捕捉して、上記陽イオンの元素以外の元素を含んでいる分析溶液を得る、陽イオン交換樹脂接触工程と、を含むことを特徴とする、分析用試料の調製方法。
  2. 上記試料が、炭素含有試料であることを特徴とする、請求項1に記載の分析用試料の調製方法。
  3. 請求項1または2に記載の分析用試料の調製方法により得られた上記分析溶液に含まれている元素を、分析装置で測定する分析工程を含むことを特徴とする、分析方法。
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