JP2008082951A - 水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】定量に使用する測定装置内部の汚染を防止することができるとともに、短時間で安全且つ簡便に精度良く水酸化ルテニウム中のクロムなどの不純物を定量することができる、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法を提供する。
【解決手段】クロムなどの不純物を含有する水酸化ルテニウムの試料に過塩素酸と硫酸を添加し、加熱して蒸発乾固することにより試料中のルテニウムを揮発させて除去し、得られた試料を放冷した後、水と塩酸を加えて試料を再溶解することにより得られた試料溶液中に含まれる不純物を定量する。
【選択図】図1
【解決手段】クロムなどの不純物を含有する水酸化ルテニウムの試料に過塩素酸と硫酸を添加し、加熱して蒸発乾固することにより試料中のルテニウムを揮発させて除去し、得られた試料を放冷した後、水と塩酸を加えて試料を再溶解することにより得られた試料溶液中に含まれる不純物を定量する。
【選択図】図1
Description
本発明は、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法に関し、特に、水酸化ルテニウム中に不純物として含まれるクロムの定量方法に関する。
近年、不揮発性強誘電体メモリの電極膜などの材料として、ルテニウムからなるターゲット材を酸素雰囲気中でスパッタリングすることによって形成された酸化ルテニウムを使用することが試みられている。このようなターゲット材として使用するルテニウムは、高純度のルテニウムであることが求められており、そのため、ルテニウムや水酸化ルテニウム中の不純物を精度良く定量することが重要になる。
従来、水酸化ルテニウム中に不純物として含まれるクロムの定量方法として、図2に示すような所謂アルカリ溶融法が知られている。この定量方法では、まず、水酸化ルテニウム試料を秤量してアルミナ坩堝に入れ、アルカリ溶剤として水酸化カリウムと硝酸カリウムを加えて、ヒータ上で加熱した後、アルミナ坩堝を電気炉に入れて段階的に加熱して試料を溶融する。その後、アルミナ坩堝を放冷してテフロン(登録商標)のビーカーに入れ、アルミナ坩堝に純水と塩酸を加えて加温溶解する。次いで、ビーカーを冷却した後、アルミナ坩堝を純水で洗いながら取り出し、試料溶液をメスフラスコに定容して、誘導結合プラズマ発光分光装置(以下、「ICP−AES」と略記)によって測定を行う。
しかし、このアルカリ溶融法では、測定に使用する試料溶液を調製するために3時間程度の長時間を要し、また、試料によっては完全に溶解できない場合もある。また、主成分であるルテニウムが試料溶液中に残っているために、測定の際にICPのトーチが黒くなって装置内部がルテニウムで汚染され易くなる。そのため、この定量方法では、分析に使用するための専用のトーチ、ネブライザ、チャンバなどを使用している。また、アルカリ溶融法による定量下限は50ppmであり、不純物の測定精度を向上させるためには、予め試料溶液からルテニウムを除去しておく必要がある。
これらの問題を解決する方法として、ルテニウムまたは酸化ルテニウムの固体試料を水酸化第四アンモニウム水溶液中に加えた後、塩素ガスや次亜塩素酸溶液を加えて加水分解し、得られた溶液にさらに塩素ガスや次亜塩素酸溶液を加えて加熱することによってルテニウムを揮発させ、得られた試料溶液中の不純物を定量する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この定量方法では、固体試料の主成分であるルテニウムを揮発させて除去しているため、測定装置内にルテニウムが入ることがないので、ルテニウムによる測定装置内部の汚染を防止することができ、ICP−AESや黒鉛炉原子吸光分析装置(以下、「AAS」と略記)による測定精度の向上が期待され、さらに、誘導結合プラズマ質量分析装置(以下、「ICP−MS」と略記)によって測定する場合に問題となる2価のルテニウムの干渉を無視することができる。
しかし、特許文献1の定量方法では、塩素ガスなどを使用しているので、安全面において充分であるとはいえない。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、定量に使用する測定装置内部の汚染を防止することができるとともに、短時間で安全且つ簡便に精度良く水酸化ルテニウム中のクロムなどの不純物を定量することができる、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、クロムなどの不純物を含有する水酸化ルテニウムの試料に過塩素酸と硫酸を添加し、加熱して蒸発乾固することにより試料中のルテニウムを揮発させて除去し、得られた試料を放冷した後、水と塩酸を加えて試料を再溶解することにより得られた試料溶液中に含まれる不純物を定量することにより、定量に使用する測定装置内部の汚染を防止することができるとともに、短時間で安全且つ簡便に精度良く水酸化ルテニウム中のクロムなどの不純物を定量することができる、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法は、クロムなどの不純物を含有する水酸化ルテニウムの試料に過塩素酸と硫酸を添加し、加熱して蒸発乾固することにより試料中のルテニウムを揮発させて除去し、得られた試料を放冷した後、水と塩酸を加えて試料を再溶解することにより得られた試料溶液中に含まれる不純物を定量することを特徴とする。
本発明によれば、定量に使用する測定装置内部の汚染を防止することができるとともに、短時間で安全且つ簡便に精度良く水酸化ルテニウム中のクロムなどの不純物を定量することができる、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明による水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法の工程を概略的に示している。図1に示すように、本発明による水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法では、まず、水酸化ルテニウム試料を秤量してビーカーに入れ、過塩素酸と硫酸を加えた後、ヒータ上で白煙が発生するまで蒸発乾固させ、主成分であるルテニウムを揮発させて除去する。このように、過塩素酸と硫酸をほぼ同時に加えることによってクロムの揮発を防止することができる。蒸発乾固は約10〜15分で終了するので、従来のアルカリ溶融法に比べて短時間で済み、ルテニウムの除去に塩素ガスなどを使用しないので安全である。その後、ビーカーをヒータから降ろして放冷し、少量の純水をビーカーの縁から回し入れ、塩酸を加えて再溶解する。このようにして得られた試料溶液をメスフラスコに定容して、不純物の定量を行う。
この方法で得られた試料溶液はルテニウムを含まないため、ルテニウムによる測定装置内部の汚染を抑えることができる。また、ICP−MSで測定する場合に問題となる2価のルテニウムによるクロムの測定質量数への干渉も抑制することができる。
以下、本発明による水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
不純物としてクロムを含有する水酸化ルテニウム粉末A、B、Cをそれぞれ0.1gずつ秤量して100mlビーカーに入れ、過塩素酸と硫酸を加えた後、ヒータ上で約10〜15分間加熱して白煙が発生するまで蒸発乾固させ、ルテニウムを揮発させて除去した。
不純物としてクロムを含有する水酸化ルテニウム粉末A、B、Cをそれぞれ0.1gずつ秤量して100mlビーカーに入れ、過塩素酸と硫酸を加えた後、ヒータ上で約10〜15分間加熱して白煙が発生するまで蒸発乾固させ、ルテニウムを揮発させて除去した。
試料が完全に溶解したことを確認した後、ビーカーをヒータから降ろして放冷した。その後、少量の純水をビーカーの縁から回し入れ、塩酸と純水(体積比1:1) の混合溶液を添加して再溶解した。これを50mlメスフラスコに移液し、純水で定容して試料溶液とした。ここまでの操作に要する時間は約30分であった。
試料溶液の定量はICP−MSで行い、コバルトを用いた内標準添加法により測定した。測定元素であるクロムの測定質量数としてm/z=52を用いるとともに、内標準元素であるコバルトの測定質量数としてm/z=59を用いた。
本実施例のクロムの定量結果を表1に示す。なお、試料溶液の調製中に周囲から試料が汚染されることを考慮して、本実施例の操作と同時に空試験を行い、その空試験値により補正した値を表1の定量結果に示している。
[比較例]
比較例として、実施例1で使用した試料A、B、Cと同じ試料を用い、図2に示すアルカリ溶融法によって水酸化ルテニウム中の不純物としてのクロムを定量した。すなわち、水酸化ルテニウム試料0.5gを秤量してアルミナ坩堝に入れ、水酸化カリウム5gと硝酸カリウム1gを加えて、ヒータ上で徐々に温度を上げて約20分間加熱した。その後、アルミナ坩堝を電気炉に入れ、昇温速度30℃/分で400℃まで昇温して10分間保持し、続いて、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温して10分間保持し、さらに、昇温速度10℃/分で600℃まで昇温して20分間保持して試料を溶融した。その後、アルミナ坩堝を放冷してテフロン(登録商標)のビーカーに入れ、アルミナ坩堝に純水200mlと塩酸35mlを加えて弱熱ヒータ上で約30分間加温して溶解した。この溶液を冷却した後、アルミナ坩堝を純水で洗いながら取り出し、試料溶液を250mlのメスフラスコに定容してICP−AESで測定した。本比較例のクロムの定量結果を表1に示す。
比較例として、実施例1で使用した試料A、B、Cと同じ試料を用い、図2に示すアルカリ溶融法によって水酸化ルテニウム中の不純物としてのクロムを定量した。すなわち、水酸化ルテニウム試料0.5gを秤量してアルミナ坩堝に入れ、水酸化カリウム5gと硝酸カリウム1gを加えて、ヒータ上で徐々に温度を上げて約20分間加熱した。その後、アルミナ坩堝を電気炉に入れ、昇温速度30℃/分で400℃まで昇温して10分間保持し、続いて、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温して10分間保持し、さらに、昇温速度10℃/分で600℃まで昇温して20分間保持して試料を溶融した。その後、アルミナ坩堝を放冷してテフロン(登録商標)のビーカーに入れ、アルミナ坩堝に純水200mlと塩酸35mlを加えて弱熱ヒータ上で約30分間加温して溶解した。この溶液を冷却した後、アルミナ坩堝を純水で洗いながら取り出し、試料溶液を250mlのメスフラスコに定容してICP−AESで測定した。本比較例のクロムの定量結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の方法によって水酸化ルテニウム中の不純物としてクロムを定量したときのクロムの回収率を求めるために、試料溶液中のクロムの濃度が10ppm、20ppm、50ppmになるように、5ppmのクロムを含有する水酸化ルテニウム試料にクロムの原子吸光用標準溶液を添加した。次いで、実施例1と同様の方法によって測定溶液を調製し、ICP−MSによってクロムを定量したところ、クロムの回収率は90〜110%だった。
実施例1と同様の方法によって水酸化ルテニウム中の不純物としてクロムを定量したときのクロムの回収率を求めるために、試料溶液中のクロムの濃度が10ppm、20ppm、50ppmになるように、5ppmのクロムを含有する水酸化ルテニウム試料にクロムの原子吸光用標準溶液を添加した。次いで、実施例1と同様の方法によって測定溶液を調製し、ICP−MSによってクロムを定量したところ、クロムの回収率は90〜110%だった。
[実施例3]
実施例1と同様の方法によって空試験液を調製して、ICP−MSによって繰り返し10回測定を行った。得られた結果から標準偏差を求め、10倍した値をクロム含有水酸化ルテニウム量に換算したところ、実施例1の方法による定量下限は10ppmであった。従って、実施例1の方法は、従来のアルカリ溶融法によるクロムの定量方法の場合と比べてクロムの含有量が低濃度の水酸化ルテニウム試料にも適応できる。
実施例1と同様の方法によって空試験液を調製して、ICP−MSによって繰り返し10回測定を行った。得られた結果から標準偏差を求め、10倍した値をクロム含有水酸化ルテニウム量に換算したところ、実施例1の方法による定量下限は10ppmであった。従って、実施例1の方法は、従来のアルカリ溶融法によるクロムの定量方法の場合と比べてクロムの含有量が低濃度の水酸化ルテニウム試料にも適応できる。
Claims (2)
- 不純物を含有する水酸化ルテニウムの試料に過塩素酸と硫酸を添加し、加熱して蒸発乾固することにより試料中のルテニウムを揮発させて除去し、得られた試料を放冷した後、水と塩酸を加えて試料を再溶解することにより得られた試料溶液中に含まれる不純物を定量することを特徴とする、水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法。
- 前記不純物がクロムであることを特徴とする、請求項1に記載の水酸化ルテニウム中の不純物の定量方法。
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