JP2008309767A - 固体試料の分解方法及びそれを用いたクロム定量方法 - Google Patents

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博 内原
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Abstract

【課題】酸、アルカリ、水のいずれに対しても不溶性であるCrが試料中に含まれていても、簡便な操作で、固体試料中の全クロムを迅速かつ正確に定量する方法を提供する。
【解決手段】固体試料に硫酸を添加して加熱する酸分解工程、及び、前記固体試料の酸分解物に過マンガン酸カリウムを添加して加熱する工程を有するようにした。
【選択図】なし

Description

この発明は、酸、アルカリ、水のいずれに対しても不溶性であるCrが試料中に含まれていても、簡便な操作で、固体試料中の全クロムを迅速かつ正確に定量しうる方法に関するものである。
2006年7月より施行されたEUのRoHS規制(欧州有害物質規制)では、電気電子機器における特定有害物質の含有が禁止され、Pb(鉛)、Cd(カドミウム)、Cr6+(6価クロム)、Hg(水銀)、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)の6種が規制対象となっている。電気電子機器に使用されるプラスチックには、その着色料等にクロムが含まれていることがあるので、電気電子機器に使用されるプラスチックは、6価クロム含有量を定量することが必要となる。
試料中の6価クロムのみを選択的に測定する方法としては、ジフェニルカルバジド吸光光度法があり(特許文献1、非特許文献1)、ジフェニルカルバジド吸光光度法における前処理法としては、ポリマー物質や電子部品に対してはアルカリ分解抽出法(EPA3060A)が、金属物質に対しては熱水抽出法(JIS H8625)が推奨されており、これらの方法により溶出したクロムがジフェニルカルバジド吸光光度法により測定される。しかし、プラスチックを含む全てのサンプルに当該前処理法を適用することは困難であり、6価クロムの選択的測定方法は未だ確立した方法とは言えない。このため、プラスチック等の固体試料に含まれる6価クロムは全ての価数のクロムを合計した全クロムにより評価されているのが現状である。
プラスチック中のクロムを定量する場合は、まず前処理として開放系湿式酸分解法等の分解方法を用いてプラスチックを分解した後、得られた分解液をICP発光分光分析装置等で分析しクロムの含有量を定量している。また、プラスチック中のカドミウムの測定方法としては、非特許文献2に記載されている方法があり、当該方法では、まず、前処理として試料を硝酸、硫酸、過酸化水素を用いて分解し、次いで、分解後の液を分析することで試料中のカドミウムを定量している。しかし、後述するようにこの方法を、Cr(酸化クロム(III)(三酸化二クロム))を含む試料のクロムの定量に用いることはできない。
特開平1−54353 JIS K0102 65.1.1(全クロム測定法) BS EN 1122:2001 "Plastics-Determination ofcadmium-Wet decomposition method", BRITISH STANDARD (2001)
開放系湿式酸分解法では、硫酸、硝酸を使用してプラスチックを分解するが、Crがプラスチック中に含まれていると、Crは極めて安定な化合物で酸にも溶解しないので、得られたクロム含有量が実際の含有量より低くなり、また、そのことに気が付かずにクロムが含有されていないと評価されることもある。
Crを溶解するには、プラスチックの分解液を別途ろ過して、ろ紙上の残渣をアルカリで融解する操作が必要となる。この融解操作は手間がかかる上、融解液中のアルカリの塩濃度が高くなり、その後の分析を行なうICP発光分光分析装置のネブライザーのキャピラリーが詰まりやすくなったり、分析装置が汚染されることが懸念される。
また、プラスチック中の有害物質を定量する際の前処理法としては、プラスチックに硫酸を加えて加熱分解した後、電気炉で加熱灰化し、酸で溶解する乾式分解法(硫酸灰化法)も知られているが、この方法ではプラスチック中に含まれるクロム化合物が略全てCrに変化してしまうので、プラスチック中のクロム含有量を定量するためには不適当であるとされている。
その他の前処理法として、密閉系マイクロウェーブ酸分解法や加圧分解法も公知であるが、いずれも高温下での強酸による処理法であるので、安全性の確保が煩雑であるという問題がある。またCrは、臭素酸アルカリと混合して熱するか又は臭素酸アルカリ水溶液を添加して加熱すると溶けるが、いずれの場合も高濃度の臭素酸アルカリが必要となるので、溶解液の塩濃度は高くなり、その後の分析を行なうICP発光分光分析装置のネブライザーのキャピラリーが詰まりやすくなったり、分析装置が汚染されることが懸念される。
そこで本発明は、酸、アルカリ、水のいずれに対しても不溶性であるCrが試料中に含まれていても、簡便な操作で、試料中の全クロムを迅速かつ正確に定量しうる方法を提供すべく図ったものである。
本発明者は、固体試料を湿式分解又は乾式分解した後、過マンガン酸カリウム(KMnO)で処理することにより、固体試料中に酸、アルカリ、水に不溶性のCrが含まれていても、これを溶解できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
すなわち本発明に係る固体試料の分解方法は、前記固体試料に硫酸を添加して加熱する酸分解工程、及び、前記固体試料の酸分解物に過マンガン酸カリウムを添加して加熱する工程、を有することを特徴とする。
前記酸分解工程においては、必要に応じて、前記固体試料に硝酸を添加して加熱してもよい。この際、硫酸と硝酸とを添加する順番は特に限定されず、硫酸が先であっても硝酸が先であっても良く、また、硫酸と硝酸との混合液を添加してもよい。
従来の開放系湿式酸分解法のように、硫酸と硝酸を使用してプラスチック等の固体試料を湿式分解する場合、固体試料中にCrが含まれていると、Crは得られた分解液中に溶けずに残存する。また、従来の硫酸灰化法のように、硫酸を使用してプラスチックや土壌等の固体試料を乾式分解する場合、固体試料中にクロム化合物が含まれていると、それらが略全てCrに変化する。これに対して、本発明では、過マンガン酸カリウムを併用することにより、難溶性のCrを溶解することができるので、得られた分解物をそのまま分析用のサンプルとして使用して、正確な全クロム含有量を測定することができる。
なお、特許文献1には、ジフェニルカルバジド吸光光度法を実施する際に、試料水中のクロム(III)に硫酸と過マンガン酸カリウムとを添加することにより、クロム(III)をクロム(VI)に酸化することが記載されているが、このクロム(III)は不溶性のCrではなく水溶性のものである。また、非特許文献1には、ジフェニルカルバジド吸光光度法において、試料に硫酸を添加し加熱する段階で過熱状態になると不溶解性の硫酸クロム(III)が生成するので好ましくない旨の記載があり(非特許文献1の注(4))、必ずしも固体試料中のクロムの定量に適用できることを示唆するものではない。
本発明を湿式において行なう場合は、まず、固体試料に硫酸を添加して加熱することが好ましい。これにより固体試料が炭化された分解物が得られる。当該分解物はタール状で粘度の高いものである。次いで、得られた分解物に硝酸を添加して加熱することが好ましい。これにより、微黄色で粘度が低い分解液が得られる。当該分解液中では有機物は完全に分解しているが、固体試料中にCrが含まれている場合は溶けずに残存している。この段階までは、従来の開放系湿式酸分解法と同様の操作であっても良い。最後に、得られた酸分解液に過マンガン酸カリウム水溶液を添加して加熱することが好ましい。これにより、固体試料中にCrが含まれていても、Crが溶解して分析用サンプルとして供することが可能な最終分解液が得られる。
前記過マンガン酸カリウム水溶液の濃度は固体試料ごとに適宜決定すればよいが、3〜20%の濃度であることが好ましい。濃度が低すぎるとCrが完全に溶解せず一部残存することがあり、濃度が高すぎるとICP発光分光分析装置でクロムを定量する際に、ICP発光分光分析装置のネブライザーのキャピラリーが塩で詰まることがある
より具体的には、例えば以下のようにして、固体試料を湿式分解する。
(1)コニカルビーカ(100mL又は200mL用)に固体試料0.5〜1.0g程度を正確に秤量する。
(2)濃硫酸を5〜10mL加える。
(3)ホットプレート上で固体試料が炭化され硫酸ヒュームが生じるまで穏やかに加熱する。必要に応じて時計皿で蓋をして還流分解する。
(4)一旦加熱を止め、室温まで冷却した後に、濃硝酸を10mL加える。
(5)再びコニカルビーカをホットプレート上で加熱する。分解液の色が微黄色になるまで(4)〜(5)の操作を繰り返す。
(6)完全に有機物が分解した後、酸分解液を充分に空冷する。
(7)前記酸分解液に5%過マンガン酸カリウム水溶液を0.1mL滴下し、混合して150℃のホットプレートで加熱する。
(8)暗紫色が次第に脱色してもとの淡黄色に戻れば、ホットプレートからおろし、室温まで冷却して、再び(7)の操作を繰り返す。
(9)分解液を室温まで冷却した後、フラスコに移し、全量を50mL乃至100mLにメスアップすることで最終分解液を得る。
(10)得られた最終分解液を定量する。
なお、本操作手順は0.05〜0.5g程度の固体試料にも適用可能である。
本発明を乾式において行なう場合は、前記固体試料の酸分解物にフッ酸(フッ化水素酸)を添加し加熱する工程を有していてもよい。このようなフッ酸処理を行うことにより、固体試料中に含まれるケイ素化合物が分解、揮散するので、分析を行なう際にゲル化したケイ素化合物によりICP発光分光分析装置のネブライザーのキャピラリーが詰まるような事態を防ぐことができる。なお、フッ酸処理に替えてろ過を行いケイ素化合物を除去してもよい。
本発明を乾式において行なう場合は、まず、固体試料に硫酸、又は、硫酸と硝酸との混合物を添加して加熱することが好ましい。これにより固体試料が炭化された分解物が得られる。当該分解物としては、プラスチック等の有機物を多く含む固体試料を分解した場合はタール状で粘度の高いものが得られ、ケイ素化合物を多く含む固体試料を分解した場合は灰白色の粘土状のものが得られる。次いで、得られた分解物を450℃程度で加熱焼却して灰化する。得られた酸分解物中では有機物は完全に分解、揮散しているがケイ素化合物は分解せずに残存しており、また、固体試料中に含まれていたクロム化合物は略全てがCrに変化している。この段階までは、従来の硫酸灰化法と同様の操作であっても良い。次いで、得られた分解物に対し、硫酸、又は、硫酸と硝酸との混合物を加え、必要に応じてフッ酸処理を行いケイ素化合物を分解、揮散する。
ケイ素化合物を含まない固体試料の場合は、灰化物に硫酸と硝酸を加え、更に過マンガン酸カリウム水溶液を添加して加熱することが好ましい。これにより、固体試料中にCrが含まれていても、また、他のクロム化合物がCrに変化していても、Crが溶解して分析用サンプルとして供することが可能な最終分解液が得られる。
ケイ素化合物を含む固体試料の場合は、灰化物に硫酸と硝酸を加え、更にフッ酸(フッ化水素酸)を加えて加熱することが好ましい。ケイ素化合物はフッ酸によって分解、揮散し、取り除かれる。この後過マンガン酸カリウム水溶液を添加して加熱することが好ましい。これにより、固体試料中にCrが含まれていても、また、他のクロム化合物がCrに変化していても、Crが溶解して分析用サンプルとして供することが可能な最終分解液が得られる。
前記過マンガン酸カリウム水溶液の濃度は、本発明を湿式で行なう場合と同じであってよい。
より具体的には、例えば以下のようにして、固体試料を乾式分解する。
(1)磁性ルツボ(50mL又は100mL)に試料0.5〜1.0g程度を正確に秤量する。
(2)濃硫酸、又は、濃硫酸と濃硝酸との混合液を、5〜10mL加える。
(3)ホットプレート上で固体試料が炭化され硫酸ヒュームが生じるまで穏やかに加熱する。必要に応じて蓋をして還流乾固する。
(4)得られた分解物を電気炉にいれ、約450℃で数時間加熱焼却する。
(5)完全に灰化後、酸分解物を充分に空冷する。
(6)冷却した酸分解物にフッ酸処理を施す。
(7)得られた分解液に5%過マンガン酸カリウム水溶液を0.1mL滴下し、混合して150℃のホットプレートで加熱する。
(8)暗紫色が次第に脱色してもとの淡黄色に戻れば、ホットプレートからおろし、室温まで冷却して、再び(7)の操作を繰り返す。
(9)分解液を室温まで冷却した後、フラスコに移し、全量を50mL乃至100mLにメスアップすることで最終分解液を得る。
(10)得られた最終分解液を定量する。
なお、本操作手順は0.05〜0.5g程度の固体試料にも適用可能である。
一旦従来の硫酸灰化法により処理した固体試料では、上述のとおり、固体試料中のクロムが略全てCrに変化してしまうが、このようなものであっても、本発明によればCrを溶解することができるので、全クロム含有量を測定することが可能となる。
本発明を適用する固体試料としては特に限定されないが、例えば、プラスチックや土壌に対し好適に用いられる。電気電子機器の材料として用いられるプラスチックが含有する全クロムを定量する場合、本発明を湿式及び乾式のいずれで行なってもよく、一方、土壌中に含まれる全クロム量を測定する場合は、土壌中の有機物を乾式で分解除去し、次いで、ケイ素化合物をフッ酸処理で分解除去した後、過マンガン酸カリウムによる処理を行なうのが好ましい。
本発明に係る固体試料の分解方法をクロム等の重金属の定量方法の前処理方法として用いると、得られた固体試料の最終分解物をそのままクロムの定量分析に供することができる。このような、本発明に係る方法を用いて固体試料を分解する工程を有する重金属定量方法もまた、本発明の1つである。なお、当該重金属定量方法は、クロム以外に、鉛、カドミウム等にも適用可能である。
本発明により得られた固体試料の最終分解物を分析用サンプルとして用いて重金属の定量分析を行なうには、例えば、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、原子吸光分析法等の分析方法を使用することができる。また他に吸光光度法を使用してもよい。
このように本発明によれば、Crを溶解することができるので、湿式分解する場合は、固体試料中にCrが含まれていても、別途ろ過を行いアルカリ融解させる操作が不要であり、また、乾式分解する場合は、固体試料中に含まれているクロム化合物がCrに変化しても溶解することができ、いずれの方式によっても最終分解物をそのままクロムの定量分析に供することができる。このため、簡便な操作で迅速かつ正確に固体試料の全クロム含有量を測定することが可能となる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<酸化剤の評価>
Pb、Cd及びCrの含有量が未知のポリエチレンサンプルであるP2について、酸化剤を変えて前処理を行い、Pb、Cd及びCrの含有量を測定した。
前処理として、次のような処理を行なった。すなわち、ビーカに試料約0.05gを正確に秤量し、これに濃硫酸(ナカライテスク製)2mLを加え、ホットプレート上で完全に炭化されるまで加熱分解した。これに濃硝酸(ナカライテスク製)を少量加え、更に加熱分解を行い分解液の色が微黄色になるまで硝酸添加の操作を繰り返した。実験No.1においては、この段階で得られた分解液を、室温まで冷却し、全量フラスコに移し蒸留水で25mLまでメスアップし、分析用分解液とした。
実験No.2〜4においては、硝酸による処理後の分解液に30%過酸化水素水(No.2)、5%過硫酸アンモニウム水溶液(No.3)、又は、5%過マンガン酸カリウム水溶液(No.4)を加え加熱後、室温まで冷却し、全量フラスコに移し蒸留水で25mLまでメスアップし、分析用分解液とした。
得られた分解液に対して、堀場製作所製ULTIMA2(ICP−OES)を用いて、全Pb、Cd及びCrの定量を行なった。結果を表1に示した。なお、Pb及びCrについて、それぞれ他の分析法により別途その含有量を測定したところ、Pb(硫酸灰化法)が455.49ppmであり、Cr(蛍光X線分析)が417.9ppmであった。
表1に示すとおり、Pb及びCdの含有量(分析値)は、酸化剤を使用しない従来の開放系湿式酸分解法による場合(No.1)も、いずれの酸化剤を使用した場合(No.2〜4)も、ほぼ同程度であった。これに対して、Crの含有量(分析値)は、従来の開放系湿式酸分解法による場合(No.1)と、酸化剤として過酸化水素を併用した場合(No.2)と、酸化剤として過硫酸アンモニウムを併用した場合(No.3)とでは、蛍光X線分析による測定値よりはるかに低い値が測定されたが、酸化剤として過マンガン酸カリウムを併用した場合(No.4)のみで蛍光X線分析による測定値と同程度の値が得られた。
このため、酸化剤として過マンガン酸カリウムを併用することにより、試料中にCrがどのような化合物形態で含有されていても、正確に全Cr含有量を測定することが可能なことが明らかとなった。また、酸化剤として過マンガン酸カリウムを併用した場合は、Pb及びCdの測定結果も影響を受けず、PbとCrとCdとを同時に測定できることが明らかになった。
<過マンガン酸カリウムを用いた分析(湿式法)>
あらかじめ規定の量のPb(ステアリン酸鉛)、Cd(ステアリン酸カドミウム)及びCr(酸化クロム(III))を含有する標準ポリエチレンサンプルとして、住友化学製のポリエチレンPE1〜PE6を使用して、Pb、Cd及びCrの含有量を測定した。また、Pb、Cd及びCrの含有量が未知のポリエチレンサンプルであるP1及びP2についても同様にPb、Cd及びCrの含有量を測定した。
前処理としては、酸化剤として5%過マンガン酸カリウム水溶液を用いたこと以外は、酸化剤の評価実験におけると同様な処理を行なった。得られた最終分解液に対して、堀場製作所製ULTIMA2(ICP−OES)を用いて、全Pb、Cd及びCrの定量を行なった。結果を表2に示した。
表2中の注記は以下のとおりである。
*1;硫酸灰化法により測定。
*2;蛍光X線分析により測定。
表2に示すとおり、PE1〜PE6の試料を用いた場合は、いずれの試料を用いた場合であっても、Pb、Cd及びCrともに既知の含有量(基準値)と同程度の値が測定された。また、Pb、Cd及びCrの含有量が未知のP1及びP2を分析した場合は、P2については他の分析法により測定されたPb及びCrの含有量と同程度の値が測定された。
<乾式法を用いた分析>
[土壌試料A、乾式法(硫酸灰化法)+KMnO処理+ろ過処理]
ルツボに土壌試料A約0.05gを正確に秤量し、濃硫酸0.5〜2mLを加え、ホットプレート上で硫酸白煙を生じ乾固するまで加熱分解した。得られた加熱分解物を電気炉にいれ、約450℃で約5時間加熱分解し、灰白色の灰化物を得た。この灰化物に濃硫酸2mL、0.5M硝酸2mLを加え、次に5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱した。暗紫色が脱色すれば室温まで冷却し、再度5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱し、脱色しなくなるまでこの操作を繰り返した。
分解液を室温まで冷却し、5Cろ紙でろ過して沈殿を除き、沈殿を0.5M硝酸で洗浄した。ろ液をメスフラスコに移し、蒸留水で25mLまでメスアップし、分析用分解液とした。
得られた分析用分解液に対して、堀場製作所製ULTIMA2(ICP−OES)を用いて、全Pb、Cd及びCrの定量を行なった。この結果を表3のNo.2に示した。また、過マンガン酸カリウム水溶液を加えなかった以外は同様の操作で行なった分析結果を表3のNo.1に示した。
[土壌試料B、乾式法(硫酸灰化法)+KMnO処理+フッ酸処理]
ルツボに土壌試料B約0.1gを正確に秤量し、濃硫酸0.5〜2mLを加え、ホットプレート上で硫酸白煙を生じ乾固するまで加熱分解した。得られた加熱分解物を電気炉にいれ、約450℃で約5時間加熱分解し、灰白色の灰化物を得た。この灰化物をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ビーカに移し、濃硫酸1〜2mL、濃硝酸1〜2mL、50%フッ化水素酸水溶液2mLを加え、ホットプレート上で加熱し、ケイ素化合物を分解し揮散させた。完全にケイ素化合物がなくなるまで2〜3回この操作を繰り返した。
次に5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱した。暗紫色が脱色すれば室温まで冷却し、再度5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱し、脱色しなくなるまでこの操作を繰り返した。
分解液を室温まで冷却し、メスフラスコに移し、蒸留水で50mLまでメスアップし、分析用分解液とした。
得られた分析用分解液に対して、堀場製作所製ULTIMA2(ICP−OES)を用いて、全Pb、Cd及びCrの定量を行なった。この結果を表3のNo.3に示した。
[底質試料A及びB、乾式法(硫酸灰化法)+KMnO処理+フッ酸処理]
土壌試料Bと同様の操作を行ない、得られた分析結果を表3のNo.4(底質試料A)とNo.5(底質試料B)に示した。
[プラスチック試料P2、乾式法(硫酸灰化法)+KMnO処理]
ルツボに上述のプラスチック試料P2約0.05gを正確に秤量し、濃硫酸1〜2mLを加え、ホットプレート上で加熱分解した。この際、硫酸白煙を生じ黒褐色タール状から更に乾固するまで加熱した。得られた加熱分解物を電気炉にいれ、約450℃で約5時間加熱分解し、灰白色の灰化物を得た。この灰化物に濃硫酸1〜2mL、0.5M硝酸0.5〜2mL、5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱した。暗紫色が脱色すれば室温まで冷却し、再度5%過マンガン酸カリウム水溶液0.1mLを加え加熱し、脱色しなくなるまでこの操作を繰り返した。
分解液を室温まで冷却し、メスフラスコに移し、蒸留水で20mLまでメスアップし、分析用分解液とした。
得られた分析用分解液に対して、堀場製作所製ULTIMA2(ICP−OES)を用いて、全Pb、Cd及びCrの定量を行なった。この結果を表3のNo.6に示した。
表3に示すように、過マンガン酸カリウム水溶液による処理を行なった実験No.2、3、4、5では、Pb、Cd及びCrともに既知の含有量(基準値)と同程度の値が測定されたが、過マンガン酸カリウム水溶液による処理を行なわなかった実験No.1では、Pb及びCdについては基準値に近い値が得られたものの、Crについては基準値よりも遥かに低い値が測定された。また、実験No.6におけるCr分析でも蛍光X線分析による測定値と同程度の値が測定された。
なお、乾式法を用いた上記の実施例において、秤量した試料に濃硫酸を加える際に濃硝酸を数滴加えても良い。
また、湿式法及び乾式法のいずれの方法においても、前処理により得られた分解液に二酸化マンガンが析出した場合には、これをろ過により除去するか、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液等の還元剤を添加して溶解することで最終分解液を得ることができる。
本発明を用いることにより、試料中のCrの化合物形態によらずに、簡便な処理で迅速かつ正確に全Cr含有量を測定することが可能となる。また、本発明によれば、Pb、Cd及びCrを一括して定量することも可能である。

Claims (7)

  1. 固体試料に硫酸を添加して加熱する酸分解工程、及び、
    前記固体試料の酸分解物に過マンガン酸カリウムを添加して加熱する工程、を有する固体試料の分解方法。
  2. 前記酸分解工程において、前記固体試料に硝酸を添加して加熱する請求項1記載の分解方法。
  3. 前記固体試料の酸分解物にフッ化水素酸を添加する工程を有する請求項1又は2記載の分解方法。
  4. 前記固体試料が、プラスチック又は土壌である請求項1、2又は3記載の分解方法。
  5. 固体試料中の重金属含有量を測定する方法であって、
    請求項1、2、3又は4記載の分解方法を用いて前記固体試料を分解する工程を有する重金属定量方法。
  6. 請求項1、2、3又は4記載の分解方法により得られた最終分解物を、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、又は、原子吸光分析法により分析する請求項5記載の重金属定量方法。
  7. 前記重金属は、Cr、Pb及びCdからなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項5又は6記載の重金属定量方法。
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