JP2009014512A - 有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 有機化合物を含む試料中の臭素を、前処理段階でロスすることなく定量する方法を提供する。
【解決手段】 有機化合物を含む試料を坩堝に秤量して、水酸化アルカリ及びアルコールと混合して低温で加熱し、坩堝の内容物を乾固させた後坩堝を高温に加熱し、坩堝内容物を融解して得られた融解物を酸溶液に溶解し、得られた溶液中のハロゲン化物をイオンクロマトグラフィー法または高分解能型−ICP質量分析装置を用いて定量する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、有機化合物を含む試料中に存在するハロゲン化物を定量するための方法に関するものである。
近年、世界各国では化学物質の有害性に着目した法規制が整備されつつあり、欧州連合では、2006年よりRoHS (Restriction of Hazardous Substances)指令を制定し、全ての電気・電子機器製品中から鉛,カドミウム,六価クロムおよび水銀と臭素系難燃剤であるポリ臭化ビフェニール類(PBBs)およびポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)の計6つの特定有害物質の使用を制限している。このため、電気・電子機器製品および部品中の環境有害物質の含有量を正確に把握することが必要となっている。
これら特定有害物質のうち有機化合物である臭素系難燃剤の存在の確認については、まず、フーリエ変換−赤外分光法(FT−IR法)または蛍光X線分析法(XRF法)を用いてスクリーニングが行われ、臭素系難燃剤が検出されたものに対してガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)法等を適用して詳細分析を行い、その含有量を求めることが行われる。
これら特定有害物質のうち有機化合物である臭素系難燃剤の存在の確認については、まず、フーリエ変換−赤外分光法(FT−IR法)または蛍光X線分析法(XRF法)を用いてスクリーニングが行われ、臭素系難燃剤が検出されたものに対してガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)法等を適用して詳細分析を行い、その含有量を求めることが行われる。
ところで、前記FT−IR法は、測定は簡便であるが、検出下限が数%程度で、RoHS指令の最大許容値である0.1%以下の定量を行うには困難性がある。また、XRF法には、マトリックスにおける強度変化が大きいため定量性は低いという問題があり、また、分析試料が液体の場合には真空中での測定が困難であり、測定感度が低下するといった問題もある。
また、GC−MS法は高感度であり定量性も高いという利点があるものの、多くの場合、熱抽出または溶媒抽出等の前処理を必要とするという問題点がある。さらに、PBBsとPBDEsは200以上に及ぶ異性体が存在するため、それらに対応する標品を揃えなければならないという問題点もある。
また、GC−MS法は高感度であり定量性も高いという利点があるものの、多くの場合、熱抽出または溶媒抽出等の前処理を必要とするという問題点がある。さらに、PBBsとPBDEsは200以上に及ぶ異性体が存在するため、それらに対応する標品を揃えなければならないという問題点もある。
こうした問題点を解消するために、有機化合物を含む試料中の全臭素量を湿式分析によって定量することが考えられる。しかし、PBBs及びPBDEsといった有機臭素化合物を通常の酸分解法で分解すると、分解中に臭素が揮散してしまい定量できないという問題がある。
有機化合物に含まれる臭素のように分析対象物が極めて揮発性の高い成分である場合、その損失を抑制するために密閉系で加熱・加圧分解することが考えられない訳ではないが、分解条件によっては、分解容器(ポリ四フッ化エチレン製)に吸着、浸透し定量値が低くなることが懸念される。
先に本出願人は、有機化合物中の臭素ではないがこれと同様に揮発成分である有機珪素化合物中の珪素の定量方法を開示した(例えば、特許文献1参照。)。
この方法は、有機珪素化合物をニッケル、ジルコニア、鉄等で作成された坩堝内に秤量して、これに水酸化アルカリ及びアルコールを添加し、混合し、坩堝をホットプレート上で加熱し、内容物を乾固し、その後バーナーを用いて坩堝を加熱して内容物を融解する。その後、融解物を塩酸溶液に溶解させ、その溶液中の珪素をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置、比色法、原子吸光法などで測定し、その測定値から有機珪素化合物中の珪素を定量するものである。
特開2004−069413号公報
有機化合物に含まれる臭素のように分析対象物が極めて揮発性の高い成分である場合、その損失を抑制するために密閉系で加熱・加圧分解することが考えられない訳ではないが、分解条件によっては、分解容器(ポリ四フッ化エチレン製)に吸着、浸透し定量値が低くなることが懸念される。
先に本出願人は、有機化合物中の臭素ではないがこれと同様に揮発成分である有機珪素化合物中の珪素の定量方法を開示した(例えば、特許文献1参照。)。
この方法は、有機珪素化合物をニッケル、ジルコニア、鉄等で作成された坩堝内に秤量して、これに水酸化アルカリ及びアルコールを添加し、混合し、坩堝をホットプレート上で加熱し、内容物を乾固し、その後バーナーを用いて坩堝を加熱して内容物を融解する。その後、融解物を塩酸溶液に溶解させ、その溶液中の珪素をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置、比色法、原子吸光法などで測定し、その測定値から有機珪素化合物中の珪素を定量するものである。
しかしながら、上記特許文献1の方法には、有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量に適用できるかどうかの開示は何らなされていない。
また、近年、揮発性成分の定量には密閉系で分解可能なマイクロ波加熱分解法等が適用されるケースが多いが、この場合において、珪素にあっては、揮発性が比較的低いため、上記特許文献1の方法でも正確な定量が可能であるが、ハロゲン化合物(特に塩素)にあっては、揮発性が高いため、依然として分解容器であるPTFE製容器への吸着が懸念され、このままでは正確な定量ができないという問題がある。
本発明は、有機化合物を含む試料中のハロゲン化物を定量する方法の提供を目的とする。
また、近年、揮発性成分の定量には密閉系で分解可能なマイクロ波加熱分解法等が適用されるケースが多いが、この場合において、珪素にあっては、揮発性が比較的低いため、上記特許文献1の方法でも正確な定量が可能であるが、ハロゲン化合物(特に塩素)にあっては、揮発性が高いため、依然として分解容器であるPTFE製容器への吸着が懸念され、このままでは正確な定量ができないという問題がある。
本発明は、有機化合物を含む試料中のハロゲン化物を定量する方法の提供を目的とする。
前記課題を解決するため本発明の一つは、有機化合物を含む試料を坩堝に秤量して、水酸化アルカリ及びアルコールと混合して低温で加熱し、坩堝の内容物を乾固させた後坩堝を高温に加熱し、坩堝内容物を融解して得られた融解物を酸溶液に溶解し、得られた溶液中のハロゲン化物をイオンクロマトグラフィー法により、または高分解能型−ICP質量分析装置を用いて定量する、有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法である。
そして、本発明の他の一つは、有機化合物を含む試料を坩堝に秤量して、水酸化アルカリ及びアルコールと混合して低温で加熱し、坩堝の内容物を乾固させた後坩堝を高温に加熱し、坩堝内容物を融解して得られた融解物を酸溶液に溶解し、前記融解物を酸溶液に溶解して得られた溶液を遠沈管に入れ、さらに該溶液中のハロゲンとは異なるハロゲン化カリウム溶液と硝酸銀溶液とを添加してハロゲン化銀を析出させ、該ハロゲン化銀を遠心分離して得られたハロゲン化銀を洗浄し、還元溶解して得られた溶液中のハロゲン化物をイオンクロマトグラフィー法により、または高分解能型−ICP質量分析装置を用いて試料中のハロゲン化物の定量値を求めるものである。
更に、本発明の方法においては、前記坩堝にニッケル製、ジルコニア製及び鉄製の坩堝のいずれかを用いることができる。
また、本発明の方法においては、前記水酸化アルカリとして、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを用い、アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノールの内の少なくとも1種を用いることが好ましい。
そして、例えば1gの有機臭素化合物に対して5〜10gの水酸化アルカリ、及び5〜10mlのアルコールとを混合し、低温で加熱し、内容物を乾固させた後、高温で加熱融解することができる。
本発明の方法においては、前記低温加熱をホットプレートを用いて40℃〜240℃に徐々に加熱することができる。
また、前記高温加熱はガスバーナーを用いて300℃以上に加熱することができる。
また、本発明の方法においては、前記水酸化アルカリとして、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを用い、アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノールの内の少なくとも1種を用いることが好ましい。
そして、例えば1gの有機臭素化合物に対して5〜10gの水酸化アルカリ、及び5〜10mlのアルコールとを混合し、低温で加熱し、内容物を乾固させた後、高温で加熱融解することができる。
本発明の方法においては、前記低温加熱をホットプレートを用いて40℃〜240℃に徐々に加熱することができる。
また、前記高温加熱はガスバーナーを用いて300℃以上に加熱することができる。
本発明に係るハロゲン化物の定量方法によれば、有機化合物を含む試料中に含まれるハロゲン化物の定量を、前処理段階でロスすることなく定量することが可能である。
また、本発明に係るハロゲン化物の定量方法によれば、臭素のみでなく塩素、ヨウ素等に対しても適用でき、これらの定量法として極めて有用である。
また、本発明に係るハロゲン化物の定量方法によれば、臭素のみでなく塩素、ヨウ素等に対しても適用でき、これらの定量法として極めて有用である。
以下、本発明の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法を,特に、臭素の定量方法を中心に、より詳細に述べる。
分解容器として坩堝を使用し、分解試薬として水酸化アルカリ及びアルコールを使用する。試料と水酸化アルカリとアルコールとの混合物を、まず低温で加熱する。これにより試料中の臭素を揮散しない形(臭化アルカリ)として固定し、次に高温で融解して試料を分解する。この結果、分解操作中に臭素を揮散させることなく、試料を完全に分解することが可能となる。
本発明において用いうる坩堝は、耐熱性、耐食性の観点よりニッケル製、ジルコニア製、鉄製のいずれかとすることが好ましい。
分解の際水酸化アルカリを加えるのは、前記したように臭素を臭化アルカリとして固定するためであり、水酸化アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を用いることができる。なお、有機化合物中の有機臭素化物を完全に分解するためには、1gの有機臭素化合物に対して5〜10gの水酸化アルカリを加えることが好ましい。これより少ない量では臭素の揮散が押さえられず、これより多くても更なる効果は期待できないからである。
分解容器として坩堝を使用し、分解試薬として水酸化アルカリ及びアルコールを使用する。試料と水酸化アルカリとアルコールとの混合物を、まず低温で加熱する。これにより試料中の臭素を揮散しない形(臭化アルカリ)として固定し、次に高温で融解して試料を分解する。この結果、分解操作中に臭素を揮散させることなく、試料を完全に分解することが可能となる。
本発明において用いうる坩堝は、耐熱性、耐食性の観点よりニッケル製、ジルコニア製、鉄製のいずれかとすることが好ましい。
分解の際水酸化アルカリを加えるのは、前記したように臭素を臭化アルカリとして固定するためであり、水酸化アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を用いることができる。なお、有機化合物中の有機臭素化物を完全に分解するためには、1gの有機臭素化合物に対して5〜10gの水酸化アルカリを加えることが好ましい。これより少ない量では臭素の揮散が押さえられず、これより多くても更なる効果は期待できないからである。
また、アルコールを加えるのは、水酸化アルカリの融点は300℃以上であり、加熱により水酸化アルカリが溶解して試料と反応する前に試料中の臭素が揮散してしまうからである。これを防止するために常温で水酸化アルカリを溶解する溶媒を共存させることが必要となる。代表的な溶媒としては水、アルコールが挙げられるが、水の場合、試料が有機物であるために、試料との濡れ性が悪く、水酸化アルカリ溶液と試料が完全に接していない部分から、臭素が揮散してしまう虞がある。
一方、アルコールは水と比較して表面張力が低いため試料との濡れ性もよく、加熱分解過程での臭素の損失を防止できる。加えて、アルコールの方が沸点が低く、昇温段階での反応も緩やかに行えるため、反応による飛散等も水と比較して抑えることが可能である。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノールの内の少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、有機臭素化物を完全に分解するためには、1gの有機臭素化合物に対して5〜10mlのアルコールを加えることが好ましい。前記水酸化アルカリの項で述べた理由と同様に、これより少ない量では臭素の揮散が押さえられず、これより多くてもさらなる効果は期待できないからである。
一方、アルコールは水と比較して表面張力が低いため試料との濡れ性もよく、加熱分解過程での臭素の損失を防止できる。加えて、アルコールの方が沸点が低く、昇温段階での反応も緩やかに行えるため、反応による飛散等も水と比較して抑えることが可能である。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノールの内の少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、有機臭素化物を完全に分解するためには、1gの有機臭素化合物に対して5〜10mlのアルコールを加えることが好ましい。前記水酸化アルカリの項で述べた理由と同様に、これより少ない量では臭素の揮散が押さえられず、これより多くてもさらなる効果は期待できないからである。
低温での加熱には、ホットプレート等の温度制御可能なものが好ましく、試料と水酸化アルカリとアルコールとの混合物を、用いるアルコールにもよるが、40℃〜240℃程度まで徐々に昇温して坩堝内容物を乾固させる。
次にガスバーナー等のさらに高温に加熱できる熱源を用いて坩堝を加熱し、坩堝内容物を融解する。この際も、徐々に昇温しながら未分解の有機物を分解し、最終的に試料を300℃以上に加熱して完全に融解させる。
次にガスバーナー等のさらに高温に加熱できる熱源を用いて坩堝を加熱し、坩堝内容物を融解する。この際も、徐々に昇温しながら未分解の有機物を分解し、最終的に試料を300℃以上に加熱して完全に融解させる。
以上の方法で得られた融解物を、無機酸溶液、好ましくは硫酸溶液で溶解した後,水を加えて溶液量を一定の容量に合わせ試料溶液とする。この溶液を適宜希釈して測定に供する。測定装置が高マトリックスを嫌う場合、臭素とマトリックス成分とを分離した後、測定し定量を行うことが好ましい。
臭素とマトリックスとの分離方法は、例えば、融解後得られた試料溶液を遠沈管に移入し、臭素を確実に回収するために試料溶液に塩化カリウム溶液を加え、さらに硝酸銀溶液を加えて臭化銀を析出させる。臭化銀の沈殿を熟成させた後、遠心分離器に遠沈管を装着して臭化銀を遠心沈降させる。その後、上澄み液を破棄し、水を加えて攪拌し、沈降分離する。
こうして洗浄して得た臭化銀に、例えば水素化ホウ素ナトリウム溶液といった還元剤溶液を加え還元して銀を析出させて臭素と銀とを分離する。次に銀をろ過して得た溶液を測定溶液として臭素を定量分析する。
臭素とマトリックスとの分離方法は、例えば、融解後得られた試料溶液を遠沈管に移入し、臭素を確実に回収するために試料溶液に塩化カリウム溶液を加え、さらに硝酸銀溶液を加えて臭化銀を析出させる。臭化銀の沈殿を熟成させた後、遠心分離器に遠沈管を装着して臭化銀を遠心沈降させる。その後、上澄み液を破棄し、水を加えて攪拌し、沈降分離する。
こうして洗浄して得た臭化銀に、例えば水素化ホウ素ナトリウム溶液といった還元剤溶液を加え還元して銀を析出させて臭素と銀とを分離する。次に銀をろ過して得た溶液を測定溶液として臭素を定量分析する。
本発明において測定溶液中には臭素と塩素とが共存するため、臭素の定量に用いる方法としてはイオンクロマトグラフィー法や高分解能型−ICP質量分析装置を用いて行うことが好ましい。
なお、本発明の方法は有機化合物を含む試料中の臭素のみではなく、塩素やヨウ素の定量にも有効であることは論を待たない。
以下、実施例を用いて更に説明する。
なお、本発明の方法は有機化合物を含む試料中の臭素のみではなく、塩素やヨウ素の定量にも有効であることは論を待たない。
以下、実施例を用いて更に説明する。
タングステン酸化物を10〜30%含有した有機物試料をニッケル坩堝に秤取し、坩堝内にメタノールを2ml、水酸化カリウムを2g加えた。次に坩堝をホットプレート上にのせて温度を40℃から240℃まで徐々に昇温して坩堝内の溶媒を揮散させ、乾固させた。この際、坩堝内の試料溶液からの臭素の揮散は見られなかった。
その後坩堝をガスバーナーで加熱して坩堝内の有機物を分解し、試料を完全に融解し、完全に融解したことを確認した後、放冷した。
放冷後、坩堝内の融解物を過酸化水素水1%含有硫酸(1+10)溶液50mlで溶解した。得られた溶液を100mlの全量フラスコに移し入れ、水を加えて容量を100mlに合わせた。この溶液5mlを遠沈管に分取し、0.2%塩化カリウム溶液0.3mlおよび20%硝酸銀溶液0.5mlを遠沈管に加えて塩化銀を析出させた。その後、暗所で15分間放置して塩化銀を熟成後、遠心分離器に遠沈管をセットして塩化銀を沈降させた。
放冷後、坩堝内の融解物を過酸化水素水1%含有硫酸(1+10)溶液50mlで溶解した。得られた溶液を100mlの全量フラスコに移し入れ、水を加えて容量を100mlに合わせた。この溶液5mlを遠沈管に分取し、0.2%塩化カリウム溶液0.3mlおよび20%硝酸銀溶液0.5mlを遠沈管に加えて塩化銀を析出させた。その後、暗所で15分間放置して塩化銀を熟成後、遠心分離器に遠沈管をセットして塩化銀を沈降させた。
遠沈管内の上澄み液を廃棄し、水を加えて攪拌し、再度遠心分離器で塩化銀を沈降させることにより塩化銀を洗浄した。
次に、遠沈管中の洗浄液を廃棄し、遠沈管内に0.5%水素化ホウ素ナトリウム溶液1mlを加え攪拌して銀を還元析出させて塩素と臭素を溶液中に遊離させた。得られた溶液に水を加えて5mlに定容後、ろ過して銀を分離し、測定液を得た。
この測定液中の臭素濃度を3つの試料に分けてイオンクロマトグラフィーにより測定し、定量値を求めた。 定量結果を表1に示した。また、試料前処理の妥当性を確認するため、予め臭素100μgを添加して処理を行ったものの添加回収率を併記する。表1の結果より、本方法が妥当であることがわかる。
次に、遠沈管中の洗浄液を廃棄し、遠沈管内に0.5%水素化ホウ素ナトリウム溶液1mlを加え攪拌して銀を還元析出させて塩素と臭素を溶液中に遊離させた。得られた溶液に水を加えて5mlに定容後、ろ過して銀を分離し、測定液を得た。
この測定液中の臭素濃度を3つの試料に分けてイオンクロマトグラフィーにより測定し、定量値を求めた。 定量結果を表1に示した。また、試料前処理の妥当性を確認するため、予め臭素100μgを添加して処理を行ったものの添加回収率を併記する。表1の結果より、本方法が妥当であることがわかる。
試料溶解の際に用いるアルコールとしてエタノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表2に示す。
試料溶解の際に用いるアルコールとしてプロパノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表3に示す。
試料溶解の際に用いる水酸化アルカリに水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表4に示す。
得られた測定液を高分解能型−ICP質量分析装置により測定した以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表5に示す。
試料がインジウム-スズ複合酸化物を含有する有機物試料であること以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表6に示す。
試料がシリコンオイルである以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表7に示す。
ハロゲン化銀分離を行う際のキャリヤ溶液に臭化カリウムを用い、塩素を定量する以外は、実施例1と同様の方法で定量を行った。その結果を表8に示す。塩素の場合においても良好な回収率が得られ、本方法が塩素にも適用可能であることを示唆する。
(比較例)
実施例1で定量した試料と同様の試料を、マイクロ波加熱分解装置で硝酸、フッ化水素酸および過酸化水素水で分解し、定量した場合の添加回収率を表9に示す。回収率が低く、また一定でないということから、マイクロ波加熱分解装置での分解の際、分解容器内が高圧になり、分解容器に一部臭素が吸着、浸透したと推測される。
実施例1で定量した試料と同様の試料を、マイクロ波加熱分解装置で硝酸、フッ化水素酸および過酸化水素水で分解し、定量した場合の添加回収率を表9に示す。回収率が低く、また一定でないということから、マイクロ波加熱分解装置での分解の際、分解容器内が高圧になり、分解容器に一部臭素が吸着、浸透したと推測される。
Claims (7)
- 有機化合物を含む試料を坩堝に秤量して、水酸化アルカリ及びアルコールと混合して低温で加熱し、坩堝の内容物を乾固させた後坩堝を高温に加熱し、坩堝内容物を融解して得られた融解物を酸溶液に溶解し、得られた溶液中のハロゲン化物をイオンクロマトグラフィー法により、または高分解能型−ICP質量分析装置を用いて定量することを特徴とする有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 有機化合物を含む試料を坩堝に秤量して、水酸化アルカリ及びアルコールと混合して低温で加熱し、坩堝の内容物を乾固させた後坩堝を高温に加熱し、坩堝内容物を融解して得られた融解物を酸溶液に溶解し、前記融解物を酸溶液に溶解して得られた溶液を遠沈管に入れ、さらに該溶液中のハロゲンとは異なるハロゲン化カリウム溶液と硝酸銀溶液とを添加してハロゲン化銀を析出させ、該ハロゲン化銀を遠心分離して得られたハロゲン化銀を洗浄し、還元溶解して得られた溶液中のハロゲン化物をイオンクロマトグラフィー法により、または高分解能型−ICP質量分析装置を用いて定量することを特徴とする有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 前記坩堝にニッケル製、ジルコニア製及び鉄製の坩堝のいずれかを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 前記水酸化アルカリとして、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを用い、アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノールの内の少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 1gの有機臭素化合物に対して5〜10gの水酸化アルカリ、及び5〜10mlのアルコールとを混合し、低温で加熱し、内容物を乾固させた後、高温で加熱融解することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 前記低温加熱を、ホットプレートを用いて40℃〜240℃に徐々に加熱することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
- 前記高温加熱を、ガスバーナーを用いて300℃以上に加熱することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機化合物を含む試料中のハロゲン化物の定量方法。
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