JP7524790B2 - 貴金属元素の分析方法およびその分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、貴金属元素の分析方法およびその分離方法に関する。
貴金属元素のうちイリジウム、ルテニウムおよびロジウムの定量方法としては、対象となる試料を種々の鉱酸あるいは、酸化力を有するアルカリ融剤を利用した溶融法等を利用して溶液化した後に、試料中に含まれる他の元素から分離する分離分析法が利用されている。その具体例として、特許文献1および2に記載された技術が知られている。
特許文献1の[実施例]に記載された技術では、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムを含む試料に、これら元素に対する捕集剤として所定量の金属銅粉や金属銅粒を添加して混合して完成する混合物を得る。
混合物を坩堝に入れアルカリ融剤(過酸化ナトリウム:炭酸ナトリウムが等量からなる重量割合の混合物)を用いて、混合物を高温で溶融し、冷却して得られた溶融塩を温湯浸出してアルカリ性溶液を得る。
そして、エタノールを還元剤として添加して目的元素を沈殿捕集させ、固液分離することでイリジウム、ルテニウム、ロジウムを含む沈殿物を得ることを特徴とする分離方法が記載されている([請求項1])。この技術ならば一括定量が可能であることが記載され、更に元素全体を数10ppmオーダーで含む試料の分析できることが記載されている([0001][0015])。
定量下限について改善を図った特許文献2に記載された技術では、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムの少なくとも一種以上を合計で10ppm未満にて含み、かつ、鉄または銅の化合物を含む試料をアルカリ融剤とともに加熱して溶融して得られた溶融物を冷却し、温水で浸出して得られた溶液にエタノールを添加して沈殿を生成させ、固液分離する第一の工程と、第一の工程で得られた沈殿物を水とエタノールに浸出させ、得た溶液に塩酸を添加して加熱溶解させた後、必要に応じて塩化ナトリウム溶液を添加して、加熱乾固する第二の工程と、第二の工程で得られた沈殿物に塩酸を加えて加熱して溶解させた後、冷却して得られた溶液を陽イオン交換樹脂に通液する第三の工程を含む微量貴金属の分離方法である([請求項1])。
特開2002-30357号公報 特開2015-232167号公報
特許文献1および2に記載のアルコール還元法だと、イリジウム、ルテニウム、ロジウムとともに水酸化物沈殿を形成する夾雑物を試料に含む場合、該夾雑物のせいでイリジウム、ルテニウム、ロジウムの分離が不十分となるおそれがあり、定量精度について改善の余地がある。
本発明の課題は、試料中の複数の貴金属元素を各々精度良く定量することにある。
本発明の別の課題は、試料中の複数の貴金属元素を選択的に分離することにある。
上記の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
複数の貴金属元素を含有する試料における各貴金属元素を分析する方法であって、
溶解された試料を含有する酸性溶液から各貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程と、
共沈還元分離された各貴金属元素を溶解して溶解液を得る工程と、
前記溶解液に対して各貴金属元素の分析を行う工程と、
を有する、貴金属元素の分析方法である。
本発明の第2の態様は、
前記金属担体は、標準酸化還元電位が0~0.5Vの範囲の遷移金属である、第1の態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第3の態様は、
前記共沈還元分離する工程の開始時の前記酸性溶液の酸濃度が0.1mol/L以上である、第1または第2の態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第4の態様は、
前記還元剤は、水素還元能を有する金属である、第1~3のいずれかの態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第5の態様は、
前記共沈還元分離する工程の開始時の酸性溶液の酸濃度が0.1mol/L以上且つ1mol/L未満であり、
前記金属担体はBiであり、
前記還元剤はZnである、第1~4のいずれかの態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第6の態様は、
前記共沈還元分離する工程前に、前記酸性溶液中の酸化剤を失活させる工程を有する、第1~5のいずれかの態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第7の態様は、
前記共沈還元分離する工程後の溶液のpHが2未満であり、且つ、前記共沈還元分離する工程中のORPは200mV以下に維持する、第1~6のいずれかの態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第8の態様は、
前記分析を行う工程においては、ICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置および原子吸光分析装置の少なくともいずれかを用いた、測定に供する溶液を最適化するための分離分析法により、夾雑金属を除去することで、定量下限を0.01ppmとして各貴金属元素の定量を行う、第1~7のいずれかの態様に記載の貴金属元素の分析方法である。
本発明の第9の態様は、
貴金属元素を含有する試料における貴金属元素を分離する方法であって、
溶解された試料を含有する酸性溶液から貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程を有する、貴金属元素の分離方法である。
本発明によれば、試料中の複数の貴金属元素を各々精度良く定量できる。
また、本発明によれば、試料中の複数の貴金属元素を選択的に分離できる。
図1は、実施例1に係るフローチャートである。 図2は、実施例2の結果を示す図であり、横軸は、還元剤の種類、金属担体の種類、塩酸か硫酸かを示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。 図3は、実施例3の結果を示す図であり、横軸は、酸性溶液の種類を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。 図4は、実施例4において酸濃度0.2mol/Lの場合の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[min]を示し、左縦軸はpHを示し、右縦軸はORP[mV]を示す。 図5は、実施例4において酸濃度0.2mol/Lから1mol/Lの範囲で、共沈還元分離の際の酸性溶液のORP(Ag/AgCl参照電極)の経時変化を測定した結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[min]を示し、縦軸はORP[mV]を示す。 図6は、実施例5の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[h]を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。 図7は、実施例5の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[h]を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。 図8は、実施例6に係るフローチャートである。
本発明の実施の形態について、以下に説明する。本明細書において「~」は所定の値以上且つ所定の値以下を指す。
本実施形態は以下の構成を有する。
「複数の貴金属元素を含有する試料における各貴金属元素を分析する方法であって、
溶解された試料を含有する酸性溶液から各貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程(後掲の工程2)と、
共沈還元分離された各貴金属元素を溶解して溶解液を得る工程(後掲の工程3)と、
前記溶解液に対して各貴金属元素の分析を行う工程(後掲の工程4)と、
を有する、貴金属元素の分析方法。」
以下、実施例1の一連の作業内容について説明する。
図1は、実施例1に係るフローチャートである。
「複数の貴金属元素を含有する試料」としては、カナダ天然資源省から供給されている貴金属含有ニッケル銅マット(PTM-1a)認証標準物質(CRM)を採用した。この標準物質は硫化物であり、これを下段落に記載の試料とする。
試料を0.5gから1g程度秤量し、硝酸(70質量%濃度、以降同様)10mLおよび臭素2mLを用いて硫化物を酸化分解した。その後塩酸(37質量%濃度、以降同様)および(硫酸1+水1)(64質量%濃度、以降同様)10mL共存下で、残る試料を分解し、硫酸白煙に達した後、しばらく加熱濃縮を継続した(工程1)。硫酸塩が生じたことにより、試料が硫酸塩を形成したとみなし、酸化剤と遊離酸の除去が完了したとみなした。この状態の溶液を反応前溶液と称する。
得られた硫酸塩に適量の純水と少量の硫酸(64質量%濃度の硫酸)1mLを添加して、硫酸塩を加熱溶解した。更に、金属担体としてビスマス(Bi)を選択し、加熱溶解した硫酸塩に対して塩化ビスマス溶液の一定量(Biが20mg)を添加した。添加後液を十分に均質化した後、還元剤として0.1mm程度の粒径を持つ金属亜鉛(Zn)を2g添加した。その後、液温70℃で1時間放置することにより、Biを還元し、同時にIr、Ru、Rhを共沈させた(工程2)。
その後、共沈物を含めて共沈還元後の溶液に対して0.1μmのPTFEメンブレンフィルターで濾過し、共沈した還元金属(Bi、Ir、Ru、Rh)と溶液を固液分離した。
この共沈した還元金属は、再び塩酸および硝酸からなる溶液で溶解させた後(工程3)、一定量(50mL)に定容した。その後、定容後溶液の一部を分液し、内部標準物質として多種の希土類を含む溶液とともに適宜希釈した。この希釈した溶液を、ICP発光分光分析装置(Agilent Technologies製 ICP-OES 5100SVDV)およびICP質量分析装置(Agilent Technologies製 ICP-MS 7700x)を用いた測定に供した(HMI-8,Non Gas,He,HEHeモード)(工程4)。その結果を示すのが表1である。表1の左欄は、認証標準液に付与されている値(CRM認証値)である。表1の右欄は、実施例1にて得られた分析値である。
表1が示すように、実施例1で得られた分析値は、認証標準液に付与されている値(CRM認証値)に対し、95%信頼限界内の値であった。
なお、本発明の技術的思想において、分析にかけられる試料には限定は無い。
「複数の貴金属元素」とは、金 (Au)、銀 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム (Ir)、ルテニウム (Ru)、の少なくとも2つ以上の組み合わせであり、好ましくはイリジウム、ルテニウム、ロジウムの組み合わせである。
「複数の貴金属元素を含有する試料」にも限定は無く、例えば貴金属元素の硫化物、酸化物、金属単体等が挙げられる。
試料が硫化物であれば湿式酸分解、乾式溶融法等により溶液化可能である。本実施形態では、この溶液を「溶解された試料を含有する酸性溶液」とする。但し、本発明はこの例に限定されず、試料の性状に応じ、溶液化の手法を適宜選択すればよい。
共沈還元分離する工程前に、酸性溶液中の酸化剤を失活させる工程(上記工程1)を有するのが好ましい。酸化剤は、共沈還元分離の支障になり得るためである。酸化剤と同様、遊離酸も共沈還元分離の支障になり得るため、遊離酸も除去するのが好ましい。
「金属担体」「還元剤」は、各貴金属元素を共沈により還元して分離可能なものであれば限定は無い。
「金属担体」は、標準酸化還元電位が0~0.5V(詳しくは0を超え且つ0.5V以下)の範囲の遷移金属であるのが好ましい。この数値範囲は、還元剤が水素還元能を有する金属である場合、特に効果的である。
「金属担体」の一例としては、すず属、例えば実施例1で採用したビスマス(Bi)、それ以外にはテルル(Te)、セレン(Se)、が挙げられ、パラジウム(Pd)でもよい。
「還元剤」の一例としては、亜鉛(Zn)が挙げられる。その他にもマグネシウム(Mg)が挙げられる。
「還元剤」がZnであるとき、「金属担体」はTe、Pd、Biが好適であり、諸々の事情を勘案すると特に好適なのはBiである。そのことを示す実施例2について、以下、説明する。
実施例2では、上記の実施例1に比べ、以下の点を相違させた。
・予め濃度既知である貴金属を反応前溶液に添加することで反応溶液を調製した。この反応溶液が認証標準溶液に該当する。
・溶解された試料を含有する酸性溶液の酸濃度が2mol/Lとなるよう設定した。
・そのうえで、上記酸性溶液を塩酸のみで実現する場合と、硫酸のみで実現する場合とに分けて試験を行った。
・還元剤としてZn以外に塩化すず(SnCl)、ヒドラジン(N)、しゅう酸(HCOOH)を採用した場合の試験も行った。
・液温は70℃とするのは実施例1と同じだが、放置時間を、酸性共沈分離を十分実施し得る4時間とした。
図2は、実施例2の結果を示す図であり、横軸は、還元剤の種類、金属担体の種類、酸性溶液における酸の基が塩酸か硫酸かを示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。本明細書における還元捕集率は、予め濃度既知である貴金属を反応前溶液に添加することで調製された反応溶液から、各種の還元剤を用いて回収される、上記工程4で得られた定量値の百分率である。
図2に示すように、還元剤としてZnを採用した時、還元捕集率において明らかに有意である。還元剤としてZnを採用した中でも、金属担体がPd、Biだと更に良好な還元捕集率を実現できている。Pdは白金族元素であり高価であるため、Biだと費用面で好適である。
図2に示すように、酸性溶液は硫酸のみで実現する場合の方が、更に良好な還元捕集率を実現できているため好ましい。但し、実施例1では塩酸および硫酸共存下で酸化剤の除去が行われ、硫酸による加熱溶解が行われる際にも塩酸が存在していると推測されるが、良好な結果が得られている。そのため、酸性溶液の酸濃度の基が硫酸が主であれば限定は無い。例えば、酸濃度のうち硫酸によるものが最大であれば(一例としては51質量%以上であれば)限定は無い。
以上が、金属担体、還元剤の選択に係る実施例2である。金属担体、還元剤の選択に加え、共沈還元分離にかける酸性溶液の酸濃度に好適な範囲があることを本発明者は知見した。そして、酸性溶液の酸濃度に好適な範囲内に収めることにより、試料中に他金属マトリックスが共存していたとしても、各貴金属元素の還元分離に与える影響を抑制し得ることを知見した。そのことを示す実施例3について、以下、説明する。
実施例3では、上記の実施例1に比べ、以下の点を相違させた。
・予め濃度既知である貴金属の認証標準溶液を反応前溶液に添加することで反応溶液を調製した。
・溶解された試料を含有する酸性溶液の酸濃度が2mol/Lとなるよう設定した。
・上記試料の酸性溶液とは別に、該酸性溶液にNi硫酸塩を添加したもの、該酸性溶液に銅(Cu)硫酸塩を添加したもの、該酸性溶液に両硫酸塩を添加したものを用意した。
・上記各々の溶液に対し、実施例1と同様の試験を行った。
図3は、実施例3の結果を示す図であり、横軸は、酸性溶液の種類を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。
図3に示すように、試料中に他金属マトリックス(夾雑金属)が共存する場合、還元捕集率は有効な数値を示したものの、他金属マトリックスが共存しない場合に比べ、還元捕集率は低下した。その原因を調査したところ、共沈還元分離後のろ過後のろ液に、共沈しているはずのBiが検出された。これは、共沈物が酸性溶液により再溶解していることを示唆している。この再溶解により、還元捕集率が低下していると推察される。この知見に基づき、酸濃度等についての検討を行った。この検討結果を示す実施例4について、以下、説明する。
実施例4では、上記の実施例1に比べ、以下の点を相違させた。
・溶解された試料を含有する酸性溶液の酸濃度(硫酸のみで実現)を0.2mol/Lから1mol/Lの範囲で、共沈還元分離の際の酸性溶液のpHとORP(Ag/AgCl参照電極)の経時変化を測定した。
つまり、実施例4では、共沈還元分離(すなわち工程2)までを行った。
なお、本明細書におけるpHの測定は、pH/ION/EC/DO計(東亜ディケーケー製 MM-60R)を用いた。
図4は、実施例4において酸濃度0.2mol/Lの場合の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[min]を示し、左縦軸はpHを示し、右縦軸はORP[mV]を示す。
図5は、実施例4において酸濃度0.2mol/Lから1mol/Lの範囲で、共沈還元分離の際の酸性溶液のORP(Ag/AgCl参照電極)の経時変化を測定した結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[min]を示し、縦軸はORP[mV]を示す。
図4に示すように、酸濃度が低い場合には、Bi、Znによる共沈還元分離が進行するに従い、pH<1からpH=1.5まで上昇した。ORPは還元当初は50mV程度まで下がったものの、その後は150mV付近で安定した。これは、Bi、Znによる共沈還元により、溶液中のHを消費するためpHは上昇するものの、ORPは一定に維持されるものと推測される。
ところが、酸濃度が高い場合(すなわち塩溶解時の硫酸添加量を増やした場合、酸濃度1mol/L)、Bi、Znによる共沈還元中の溶液pHの変化は小さくなるが、図5に示すように、ORPは酸化雰囲気を示した。このため、Bi、Znによる共沈還元時の硫酸量が増えた場合には、還元されたBiが再溶解し、同時に共沈したIrおよびRuも溶解したために還元捕集率が悪化したと推測される。
その結果、共沈還元分離する工程後の溶液のpHが2未満であり、且つ、前記共沈還元分離する工程中のORPは200mV以下に維持するのが好ましい。なお、BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときの初期pHは0.5~0.9が好ましく、0.6~0.8がより好ましい。また、共沈還元分離する工程前、すなわち該工程の開始時の酸性溶液の酸濃度は上記の通り0.1mol/L以上であるのが好ましく、且つ、1mol/L未満(好適には0.8mol/L以下、より好適には0.5mol/L以下)であるのが好ましい。共沈還元分離する工程の開始時の酸性溶液の酸濃度とは、BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときの酸性溶液の酸濃度を指す。
実施例5は、実施例1の共沈還元分離にて設定した時間(1時間)を決定した理由となる試験例である。実施例5では、実施例1の共沈還元分離の最中の酸性溶液を還元時間に応じて採取し、各採取溶液に対して貴金属元素の還元捕集率を測定した。
図6は、実施例5の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[h]を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。
図7は、実施例5の結果を示す図であり、横軸は還元時間(BiとZnとを酸性溶液中に存在開始したときからの時間)[h]を示し、縦軸は還元捕集率[%]を示す。
図6に示すように、実施例1ならば、Ir、Ru、Rhが試料に含有していた場合、どれだけ長くても1時間あれば共沈還元分離を完了させられる。Ruが試料に含有していない場合、30分あれば共沈還元分離を完了させられる。なお、図7に示すように、試料に他金属マトリックス(Cu、Ni)を共存させた場合でも、これらの時間に変化はなかった。
以上、実施例1によれば、試料中の複数の貴金属元素を各々精度良く定量できる。例えば、上記表1に示すように、定量下限を0.01ppmとして各貴金属元素の定量を行うことが可能となる。
図8は、実施例6に係るフローチャートである。
実施例6では、「複数の貴金属元素を含有する試料」として、ロシア産出のニッケル鉱石(No.1702-86)認証標準物質(CRM)を採用した。この標準物質はニッケル酸化物であり、これを下段落に記載の試料とする。
試料を0.4gから0.5g程度秤量し、酸化ナトリウム2gおよび炭酸ナトリウム2gによりアルカリ融解した。
その後、塩酸(37質量%濃度)40mLおよび(硫酸1+水1)(64質量%濃度)10mL共存下で、酸浸出を行い、硫酸白煙に達した後、しばらく加熱濃縮を継続した(工程1)。
得られた硫酸塩に適量の純水と少量の硫酸(64質量%濃度の硫酸)1mLを添加して、硫酸塩を加熱溶解した。更に、金属担体としてビスマス(Bi)を選択し、加熱溶解した硫酸塩に対して塩化ビスマス溶液の一定量(Biが20mg)を添加した。添加後液を十分に均質化した後、還元剤として0.1mm程度の粒径を持つ金属亜鉛(Zn)を2g添加した。その後、液温70℃で1時間放置することにより、Biを還元し、同時にIr、Ru、Rhを共沈させた(工程2)。
その後、共沈物を含めて共沈還元後の溶液に対して0.1μmのPTFEメンブレンフィルターで濾過し、共沈した還元金属(Bi、Ir、Ru、Rh)と溶液を固液分離した。
この共沈した還元金属は、再び塩酸および硝酸からなる溶液で溶解させた後(工程3)、一定量(50mL)に定容した。その後、定容後溶液の一部を分液し、内部標準物質として多種の希土類を含む溶液とともに適宜希釈した。この希釈した溶液を、ICP発光分光分析装置(Agilent Technologies製 ICP-OES 5100SVDV,Axical Viewモード)およびICP質量分析装置(Agilent Technologies製 ICP-MS 7700x,(高マトリックス試料導入条件:HMI-8,分光干渉抑制条件:Non Gas,He,HEHeモード)を用いた測定に供した(工程4)。その結果を示すのが表2である。表2の左欄は、認証標準液に付与されている値(CRM認証値)である。表2の右欄は、実施例6にて得られた分析値である。
表2が示すように、実施例6で得られた分析値は、認証標準液に付与されている値(CRM認証値)に対し、95%信頼限界内の値であった。
なお、本発明の技術的範囲は上記実施例に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
共沈還元分離された各貴金属元素を溶解して得られた溶解液に対して各貴金属元素の分析を行う際の具体的手法は、ICP発光分光分析装置およびICP質量分析装置に限定されない。定量分析を行わない場合は、ICP発光分光分析装置のみを使用してもよい。或いは、ICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置および炭素炉などの原子化設備を利用する原子吸光分析装置などを用いた、測定に供する溶液を最適化するための分離分析法により夾雑金属を除去することで、定量下限を0.01ppmとして各貴金属元素の定量を行ってもよい。
また、本発明は、試料中の複数の貴金属元素を選択的に分離できるという点で技術的に有意である。定量する場合は、各貴金属元素を分離する一方、定量ではなく単に貴金属元素をまとめて選択的に分離する場合、本発明は、貴金属元素の分離方法という技術的思想としても有意である。この技術的思想を表現すると以下の通りである。
「貴金属元素を含有する試料における貴金属元素を分離する方法であって、
溶解された試料を含有する酸性溶液から貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程を有する、貴金属元素の分離方法。」

Claims (6)

  1. 複数の貴金属元素を含有する試料における各貴金属元素を分析する方法であって、
    溶解された試料を含有する、酸濃度が0.2mol/L以上且つ2mol/L以下の硫酸酸性溶液から各貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程と、
    共沈還元分離された各貴金属元素を溶解して溶解液を得る工程と、
    前記溶解液に対して各貴金属元素の分析を行う工程と、
    を有
    前記金属担体は、ビスマス、パラジウムのうち1つ以上の元素を含み、
    前記還元剤は、金属亜鉛である、貴金属元素の分析方法。
  2. 前記共沈還元分離する工程の開始時の前記硫酸酸性溶液の酸濃度が1mol/L未満である、請求項1に記載の貴金属元素の分析方法。
  3. 前記共沈還元分離する工程前に、前記硫酸酸性溶液中の酸化剤を失活させる工程を有する、請求項1または2に記載の貴金属元素の分析方法。
  4. 前記共沈還元分離する工程後の溶液のpHが2未満であり、且つ、前記共沈還元分離する工程中のORPは200mV以下に維持する、請求項1~のいずれかに記載の貴金属元素の分析方法。
  5. 前記分析を行う工程においては、ICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置および原子吸光分析装置の少なくともいずれかを用いた、測定に供する溶液を最適化するための分離分析法により、夾雑金属を除去することで、定量下限を0.01ppmとして各貴金属元素の定量を行う、請求項1~のいずれかに記載の貴金属元素の分析方法。
  6. 貴金属元素を含有する試料における貴金属元素を分離する方法であって、
    溶解された試料を含有する、酸濃度が0.2mol/L以上且つ2mol/L以下の硫酸酸性溶液から貴金属元素を金属担体および還元剤により共沈還元分離する工程を有
    前記金属担体は、ビスマス、パラジウムのうち1つ以上の元素を含み、
    前記還元剤は、金属亜鉛である、貴金属元素の分離方法。
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