JP6618997B2 - マイクロ化学プラント - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロリアクターに関する。
マイクロリアクターは、従来のバッチ型反応器に代わる反応器として注目されており、それについて様々な研究が行われている。マイクロリアクターとは、化学・生化学反応が行われる反応系の空間スケールが、例えばマイクロメートル程度であるフロー型の反応装置の総称である。マイクロリアクターは、反応に用いられる物質の輸送経路を有している。その輸送経路の内径は、例えばマイクロメートル程度である。マイクロリアクターによれば、複数の物質を効率的に混合して反応させることができる。また、一定の温度で反応を均一に進行させることが可能である。そのため、マイクロリアクターによれば、反応選択性を改善するとともに、反応速度を増大させることができる。さらに、マイクロリアクターは、従来のバッチ式の反応器よりも、ラボレベルから生産プロセスへの移行が容易であると言われている。しかし、マイクロリアクターの製造コストは高く、技術的な課題も多い。そのため、生産を目的としたマイクロ化学プラントは、あまり多く実現されていない。
マイクロリアクターは、従来のバッチ式反応器よりも生産性が低い。マイクロ化学プラントの生産量を増やすために、ナンバリングアップという方法が検討されている。ナンバリングアップとは、複数のマイクロリアクターを並列化する方法である。
ポンプを含む同じ装置を何台も並列化してナンバリングアップを実現することができる。このナンバリングアップの方法は、装置の製造コストが高くなるという問題がある。この方法は、反応条件等を変えずに、ラボレベルから生産プロセスへ移行できるため、工業化が容易である。
特許文献1には、流路を分岐させるナンバリングアップの方法が記載されている。この方法は、ポンプから送られてくる液体原料を、分岐した複数の流路に分配するとともに、ミキサを並列に並べる方法である。
特許文献2には、分岐した配管を用いないで、複数のマイクロリアクターに均一に液体を分配する方法が記載されている。
特許文献3には、積層された複数の流路ユニットからなるマイクロチャンネルリアクタが記載されている。
特許文献4には、マイクロ化学プラントの低コスト化や小型化を目的としたマイクロリアクターが記載されている。
特開2007−136253号公報 特開2011−36773号公報 特開2014−217823号公報 特開2010−94660号公報
流路を分岐させるナンバリングアップは、何本もの流路に液体原料を均等に流すことが難しいと言われている。また、1つの流路が閉塞したときに、他の流路において流速が変化してしまうため、閉塞を防止する必要がある。また、各流路において閉塞が生じていないか、常時モニタリングしなければならないという欠点がある。
このように、流路を分岐させることによるナンバリングアップは、技術的な課題を多く含む。そのため、装置の並列化によるナンバリングアップの方が、より工業化が容易である。しかし、このナンバリングアップは、装置の製造コストが莫大となるため、より安価にナンバリングアップが可能なマイクロリアクターの実現が望まれている。
マイクロリアクターの製造コストを左右する要因の一つとして、ポンプの価格と性能が挙げられる。一般に、マイクロリアクターでは、反応させる物質(液体原料及び/又は原料の溶液)を移送する手段として、シリンジポンプやプランジャポンプが使用されている。
シリンジポンプは脈動がないが、連続運転のためには1系統につき2台以上のポンプが必要である。流量を精密に制御するためには、高価なシリンジポンプシステムが必要である。また、連続運転中にシリンジが劣化し、液漏れや破損の危険性があるため、禁水試薬を移送する場合には特に注意が必要である。
プランジャポンプは連続運転が容易であるが、ピストンが1個だと脈動が大きくなり、反応条件にばらつきが生じてしまう。そのため、2個あるいは3個のピストンを連結した、高価な2連あるいは3連のポンプを使用する必要がある。
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、より安価に製造することが可能なマイクロリアクターを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段は、以下の発明である。
(1)気体の圧力によって液体原料を移送する移送手段を備えるマイクロリアクター。
(2)前記液体原料を貯留するための原料タンクを備えており、
前記移送手段は、前記原料タンク内の気体の圧力によって、前記原料タンク内に貯留されている液体原料を移送する、(1)に記載のマイクロリアクター。
(3)前記原料タンク内に気体を供給する気体供給手段を備える、(2)に記載のマイクロリアクター。
(4)前記原料タンク内の気体の圧力を調整するための圧力調整手段を備える、(2)または(3)に記載のマイクロリアクター。
(5)前記原料タンクは耐圧タンクで構成されている、(2)から(4)のうちいずれかに記載のマイクロリアクター。
(6)前記液体原料と他の原料とを混合するためのミキサを備え、
前記原料タンクと前記ミキサを接続する配管に小径部が設けられている、(2)から(5)のうちいずれかに記載のマイクロリアクター。
(7)前記小径部は、その上流側及び/または下流側の配管の内径よりも小さい内径を有するチューブで構成されている、(6)に記載のマイクロリアクター。
(8)前記原料タンクと前記小径部を接続する配管の内部の圧力が1.5MPa以下である、(6)または(7)に記載のマイクロリアクター。
(9)前記原料タンクを複数有しており、
前記複数の原料タンクから移送される液体原料が前記ミキサによって混合される、(6)から(8)のうちいずれかに記載のマイクロリアクター。
(10)前記気体は窒素である、(1)から(9)のうちいずれかに記載のマイクロリアクター。
(11) (1)から(10)のうちいずれかに記載のマイクロリアクターを複数備えたマイクロ化学プラントであって、
前記複数のマイクロリアクターが並列に接続されている、マイクロ化学プラント。
(12) (1)から(10)のうちいずれかに記載のマイクロリアクターを備えたマイクロ化学プラントであって、
前記原料タンクに複数の流路が接続されている、マイクロ化学プラント。
本発明によれば、より安価に製造することが可能なマイクロリアクターを提供することができる。
第1実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。 第2実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。 第3実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。 第4実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。 小径部の拡大断面図である。 小径部の別の例を示している。 小径部の別の例を示している。 実施例5に係るマイクロリアクターのフローを示している。 実施例6に係るマイクロリアクターのフローを示している。 実施例7に係るマイクロリアクターのフローを示している。 実施例8に係るマイクロリアクターのフローを示している。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。
図1に示すように、第1実施形態に係るマイクロリアクター10は、原料タンク12と、恒温槽14と、反応物タンク16を備えている。原料タンク12は、液体原料を貯留するためのタンクである。恒温槽14は、液体原料を加熱するための槽である。液体原料を加熱することによって得られた反応物は、反応物タンク16に貯留される。原料タンク12と後述する小径部28は、配管18によって接続されている。小径部28と反応物タンク16は、配管20によって接続されている。配管20を流れる液体原料は、恒温槽14内を通過することで所定の温度に加熱される。
本実施形態に係るマイクロリアクター10は、液体原料を加熱して目的とする物質を得ることのできる装置である。本明細書において、液体原料とは、反応させる液体の物質を意味する。または、液体原料とは、反応させる物質を含む溶液を意味する。マイクロリアクター10は、対象である物質を反応温度にまで加熱する。マイクロリアクター10は、対象である物質を加熱して反応させることで目的物質を得ることができる。
原料タンク12は、液体原料を貯留できるのであれば特に制限はなく、例えば、金属製、樹脂製あるいはガラス製のタンクによって構成することができる。本実施形態では、原料タンク12は、ポリエチレン製の耐圧タンクによって構成されている。原料タンク12を耐圧タンクで構成することによって、原料タンク12の内部を高圧に維持できる。
恒温槽14は、液体原料を所定の温度にまで加熱することができるのであれば特に制限はなく、例えば市販されている公知の恒温槽によって構成することができる。
反応物タンク16は、液体原料を加熱することによって得られた反応物を貯留できるのであれば特に制限はなく、例えば、金属製、樹脂製あるいはガラス製のタンクによって構成することができる。
マイクロリアクター10は、図示しない窒素タンクを備えている。窒素タンクから、原料タンク12内に窒素ガス(Nガス)を供給することができる。窒素タンクと原料タンク12は、窒素供給配管22によって接続されている。窒素供給配管22には、圧力調整弁24(レギュレータ)が設けられている。圧力調整弁24によって、原料タンク12内の窒素ガスの圧力を調整することができる。
窒素ガスが、本発明の「気体」に対応している。窒素ガスを供給するための窒素タンク及び窒素供給配管22が、本発明の「気体供給手段」に対応している。原料タンク12内に充填されている窒素ガスの圧力を調整する圧力調整弁24が、本発明の「圧力調整手段」に対応している。圧力調整弁24によって、原料タンク12から恒温槽14に移送される液体原料の流量を調整することができる。原料タンク12に供給されるガスの圧力範囲は1kPaから200MPaであり、好ましくは10kPaから15MPaである。
原料タンク12内には液体原料が貯留されている。貯留されている液体原料の上方の空間には、窒素ガスが充填されている。液体原料の上方に存在する窒素ガスの圧力によって、液体原料を原料タンク12から配管18を介して恒温槽14に移送することができる。つまり、原料タンク12は、その内部に充填されている窒素ガス(気体)の圧力によって、液体原料を次の機器に移送することができる。原料タンク12及びその内部に充填されている窒素ガスが、本発明の「移送手段」に対応している。
原料タンク12と小径部28を接続する配管18は、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。配管18には、開閉バルブ26が設けられている。開閉バルブ26は、配管18の内部を流れる液体原料のON/OFFを制御するためのバルブである。開閉バルブ26は、例えば、電磁弁によって構成されている。原料タンク12と小径部28を接続する配管18の内部の圧力は、開閉バルブ26の許容圧力を超えないことが好ましい。開閉バルブ26が電磁弁によって構成される場合、原料タンク12と小径部28を接続する配管18の内部の圧力は、1.5MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましい。
配管18には、小径部28が設けられている。小径部28は、その上流側及び/または下流側の配管の内径よりも小さい内径を有する。小径部28は、その上流側及び/または下流側の配管の内径よりも小さい内径を有するチューブであってもよい。小径部28の内径は、例えば、φ0.01mm〜0.3mmであることが好ましい。小径部28は、例えば、内径0.2mmのPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のチューブによって構成されている。配管18と小径部28は、図5に示すように、コネクタ19aによって連結されている。小径部28とその下流側の配管20は、コネクタ19bによって連結されている。
小径部28と反応物タンク16を接続する配管20は、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。原料タンク12に貯留されていた液体原料は、恒温槽14によって反応温度以上に加熱された後、配管20を介して反応物タンク16移送される。液体原料が加熱されることにより、液体原料に含まれる物質が反応する。反応によって得られた目的物質は、反応物タンク16内に貯留される。
上述のように構成された第1実施形態に係るマイクロリアクター10の作用及び効果について説明する。
従来のマイクロリアクターは、液体原料を移送するために、高価なシリンジポンプやプランジャポンプを備えていた。そのため、装置全体の製造コストが莫大になるという問題があった。
本実施形態に係るマイクロリアクター10によれば、原料タンク12に充填されている窒素ガスの圧力によって、液体原料を移送することができるため、シリンジポンプやプランジャポンプが不要である。したがって、装置全体の製造コストを大幅に削減することができる。
本実施形態に係るマイクロリアクター10によれば、圧力調整弁24によって原料タンク12内の窒素ガスの圧力を一定に維持できるため、配管20を流れる液体原料の流量が変動することを防止することができる。
さらに、原料タンク12と配管20を接続する配管18には、小径部28が設けられている。この小径部28によって圧力損失を調整することができる。圧力損失を調整することによって、配管18を流れる液体原料の流量を調整することができる。その結果、配管20を流れる液体原料の流量を一定に維持することができる。また、反応を均一に進行させることが可能であり、一定の品質を有する目的物を安定的に製造することができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、第2実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。
図2に示すように、第2実施形態に係るマイクロリアクター110は、2つの原料タンク112a、112bと、ミキサ114と、反応物タンク116を備えている。原料タンク112a、112bは、2種類の液体原料を貯留するためのタンクである。原料タンク112a、112bから送られてくる液体原料は、ミキサ114によって混合される。液体原料を混合して得られた反応物は、反応物タンク116に貯留される。原料タンク112aとミキサ114は、配管118aによって接続されている。原料タンク112bとミキサ114は、配管118bによって接続されている。ミキサ114と反応物タンク116は、配管120によって接続されている。
本実施形態に係るマイクロリアクター110は、2種類の液体原料を混合することのできる装置である。2種類の液体原料を混合して反応させることによって、目的とする反応物を得ることができる。
原料タンク112a、112bは、液体原料を貯留できるのであれば特に制限はなく、例えば、金属製、樹脂製、あるいはガラス製のタンクによって構成することができる。本実施形態では、原料タンク112a、112bは、ポリエチレン製の耐圧タンクによって構成されている。原料タンク112a、112bを耐圧タンクで構成することによって、原料タンク112a、112bの内部を高圧に維持できる。
ミキサ114は、2種類の液体原料を混合することができるのであれば特に制限はなく、どのようなミキサを使用することもできる。ミキサ114として、例えば、市販されている公知の金属製、樹脂製、あるいはガラス製のマイクロミキサを使用することができる。マイクロミキサとは、複数の液体原料を混合するための微小流路を備えたミキサである。マイクロミキサは、例えば、金属板の一方の面に微小流路を形成し、その金属板の微小流路が形成された面にもう一枚の金属板を重ね合わせることによって製造することができる。微小流路の形状に特に制限はなく、例えば、T字型の微小流路が形成されたミキサや、Y字型の微小流路が形成されたミキサを使用することができる。微小流路の幅は特に制限されないが、例えば、幅の大きさが0.01〜1000μm程度の微小流路が形成されたマイクロミキサを使用することができる。
反応物タンク116は、液体原料を混合して得られた反応物を貯留できるのであれば特に制限はなく、例えば、金属製、樹脂製、あるいはガラス製のタンクによって構成することができる。
マイクロリアクター110は、図示しない窒素タンクを備えている。窒素タンクから、2つの原料タンク112a、112b内に窒素ガス(Nガス)を供給することができる。窒素タンクと原料タンク112a、112bは、窒素供給配管122a、122bによってそれぞれ接続されている。窒素供給配管122a、122bには、圧力調整弁124a、124b(レギュレータ)がそれぞれ設けられている。圧力調整弁124a、124bによって、原料タンク112a、112b内の窒素ガスの圧力をそれぞれ一定に維持することができる。また、圧力調整弁124a、124bによって、2つの原料タンク112a、112bからミキサ114に移送される液体原料の流量をそれぞれ調整することができる。原料タンク112a、112bに供給されるガスの圧力範囲は1kPaから200MPaであり、好ましくは10kPaから15MPaである。
窒素ガスが、本発明の「気体」に対応している。窒素ガスを供給するための窒素タンク及び窒素供給配管122a、122bが、本発明の「気体供給手段」に対応している。原料タンク112a、112b内に充填されている窒素ガスの圧力を調整する圧力調整弁124a、124bが、本発明の「圧力調整手段」に対応している。
2つの原料タンク112a、112b内には、液体原料が貯留されている。貯留されている液体原料の上方の空間には、窒素ガスがそれぞれ充填されている。液体原料の上方に存在する窒素ガスの圧力によって、液体原料を2つの原料タンク112a、112bから配管118a、118bを介してミキサ114に移送することができる。つまり、2つの原料タンク112a、112bは、その内部に充填されている窒素ガス(気体)の圧力によって、液体原料を次の機器に移送することができる。2つの原料タンク112a、112b及びその内部にそれぞれ充填されている窒素ガスが、本発明の「移送手段」に対応している。
2つの原料タンク112a、112bとミキサ114を接続する配管118a、118bは、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。配管118a、118bには、開閉バルブ126a、126bがそれぞれ設けられている。開閉バルブ126a、126bは、配管118a、118bの内部を流れる液体原料のON/OFFを制御するためのバルブである。開閉バルブ126a、126bは、例えば、電磁弁によって構成されている。原料タンク112a、112bと小径部128a、128bを接続する配管118a、118bの内部の圧力は、開閉バルブ126a、126bの許容圧力を超えないことが好ましい。開閉バルブ126a、126bが電磁弁によって構成される場合、原料タンク112a、112bと小径部128a、128bを接続する配管118a、118bの内部の圧力は、1.5MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましい。
2つの原料タンク112a、112bとミキサ114を接続する配管118a、118bには、小径部128a、128bがそれぞれ設けられている。小径部128a、128bは、その上流側及び/又は下流側の配管の内径よりも小さい内径を有するチューブであってもよい。小径部128a、128bは、例えば、内径0.2mmのPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のチューブによって構成されている。配管118a、118bと小径部128a、128bは、図示しないコネクタによってそれぞれ連結されている。
ミキサ114と反応物タンク116を接続する配管120は、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。2つの原料タンク112a、112bに貯留されていた液体原料は、ミキサ114によって混合された後、配管120を介して反応物タンク116に移送される。これにより、2種類の液体原料に含まれる物質が反応することで得られた目的物質が、反応物タンク116内に貯留される。
上述のように構成された第2実施形態に係るマイクロリアクター110の作用及び効果について説明する。
従来のマイクロリアクターは、液体原料を移送するために、高価なシリンジポンプやプランジャポンプを備えていた。そのため、装置全体の製造コストが莫大になるという問題があった。
本実施形態に係るマイクロリアクター110によれば、原料タンク112a、112bに充填されている窒素ガスの圧力によって、液体原料を移送することができるため、シリンジポンプやプランジャポンプが不要である。したがって、装置全体の製造コストを大幅に削減することができる。
本実施形態に係るマイクロリアクター110によれば、圧力調整弁124a、124bによって2つの原料タンク112a、112b内の窒素ガスの圧力を一定に維持できるため、ミキサ114に移送される液体原料の流量が変動することを防止することができる。
さらに、2つの原料タンク112a、112bとミキサ114を接続する配管118a、118bには、小径部128a、128bがそれぞれ設けられている。この小径部128a、128bによって、圧力損失を調整することができる。圧力損失を調整することによって、配管118a、118bを流れる液体原料の流量を調整することができる。また、液体原料が原料タンク112a、112bに逆流することを防止することができる。その結果、ミキサ114に供給される液体原料の流量を一定に調整することができる。また、反応を均一に進行させることが可能であり、一定の品質を有する目的物を安定的に製造することができる。
さらに、本実施形態に係るマイクロリアクター110によれば、2つの原料タンク112a、112bからミキサ114に移送される液体原料の流量比を一定に制御することができる。例えば、2つの原料タンク112a、112bに封入されている窒素ガスの圧力に差が生じた場合、圧力の高い原料タンクから、圧力の低い原料タンクへの逆流が起きやすくなる。本実施形態に係るマイクロリアクター110によれば、小径部128a、128bにおいて圧力損失が調整されるため、液体原料の流量が小さくなる。これにより、液体原料の逆流が防止されるため、ミキサ114に供給される2種類の液体原料の流量比が一定に維持される。
このように、本実施形態に係るマイクロリアクター110によれば、原料タンクとミキサを接続する配管118a、118bに小径部128a、128bがそれぞれ設けられているため、ミキサ114に供給される2種類の液体原料の流量比が一定に維持される。
本実施形態に係るマイクロリアクター110は、原料タンク内のガス圧によって液体原料を移送することができる。また、本実施形態に係るマイクロリアクター110は、小径部128a、128bを備えているため、ガス圧によって液体原料を安定的に移送することができる。本実施形態に係るマイクロリアクター110は、これらのことを実現できた点が極めて斬新であり、画期的な発明である。
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
第3実施形態は、上記で説明した第2実施形態とほぼ同様であるが、3種類の液体原料を2段階で反応させる点が異なっている。以下、第2実施形態と同様の部分については説明を省略することがある。
図3は、本発明の第3実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。
図3に示すように、本実施形態に係るマイクロリアクター210は、3つの原料タンク212a、212b、212cと、2つのミキサ214a、214bと、反応物タンク216を備えている。原料タンク212a、212b、212cは、3種類の液体原料を貯留するためのタンクである。原料タンク212a、212b、212cから送られてくる液体原料は、2つのミキサ214a、214bによって混合される。3種類の液体原料を混合して得られた反応物は、反応物タンク216に貯留される。原料タンク212aとミキサ214aは、配管218aによって接続されている。原料タンク212bとミキサ214aは、配管218bによって接続されている。原料タンク212cとミキサ214bは、配管218cによって接続されている。ミキサ214aとミキサ214bは、配管218dによって接続されている。ミキサ214bと反応物タンク216は、配管220によって接続されている。
本実施形態に係るマイクロリアクター210は、3種類の液体原料を2段階で混合することのできる装置である。
最初に、第1の原料タンク212aから送られてくる液体原料と、第2の原料タンク212bから送られてくる液体原料を、第1のミキサ214aによって混合する。次に、第1のミキサ214aによって混合された2種類の液体原料と、第3の原料タンク212cから送られてくる液体原料を、第2のミキサ214bによって混合する。これにより、3種類の液体原料を、2段階で混合して反応させることができる。
マイクロリアクター210は、図示しない窒素タンクを備えている。窒素タンクから、3つの原料タンク212a、212b、212c内に窒素ガス(Nガス)を供給することができる。窒素タンクと原料タンク212a、212b、212cは、窒素供給配管222a、222b、222cによってそれぞれ接続されている。窒素供給配管222a、222b、222cには、圧力調整弁224a、224b、224c(レギュレータ)がそれぞれ設けられている。圧力調整弁224a、224b、224cによって、原料タンク212a、212b、212c内の窒素ガスの圧力をそれぞれ一定に維持することができる。また、圧力調整弁224a、224b、224cによって、3つの原料タンク212a、212b、212cからミキサ214a、214bに移送される液体原料の流量をそれぞれ調整することができる。原料タンク212a、212b、212cに供給されるガスの圧力範囲は1kPaから200MPaであり、好ましくは10kPaから15MPaである。
窒素ガスが、本発明の「気体」に対応している。窒素ガスを供給するための窒素タンク及び窒素供給配管222a、222b、222cが、本発明の「気体供給手段」に対応している。原料タンク212a、212b、212c内に充填されている窒素ガスの圧力を調整する圧力調整弁224a、224b、224cが、本発明の「圧力調整手段」に対応している。
3つの原料タンク212a、212b、212c内には、液体原料が貯留されている。貯留されている液体原料の上方の空間には、窒素ガスがそれぞれ充填されている。液体原料の上方に存在する窒素ガスの圧力によって、液体原料を次の機器に移送することができる。すなわち、第1の原料タンク212aに貯留されている液体原料を、第1のミキサ214aに移送することができる。第2の原料タンク212bに貯留されている液体原料を、第1のミキサ214aに移送することができる。第3の原料タンク212cに貯留されている液体原料を、第2のミキサ214bに移送することができる。3つの原料タンク212a、212b、212c及びその内部にそれぞれ充填されている窒素ガスが、本発明の「移送手段」に対応している。
原料タンクとミキサを接続する配管218a、218b、218cは、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。配管218a、218b、218cには、開閉バルブ226a、226b、226cがそれぞれ設けられている。開閉バルブ226a、226b、226cは、配管218a、218b、218cの内部を流れる液体原料のON/OFFを制御するためのバルブである。開閉バルブ226a、226b、226cは、例えば、電磁弁によって構成されている。原料タンク212a、212b、212cと小径部228a、228b、228cを接続する配管218a、218b、218cの内部の圧力は、開閉バルブ226a、226b、226cの許容圧力を超えないことが好ましい。開閉バルブ226a、226b、226cが電磁弁によって構成される場合、原料タンク212a、212b、212cと小径部228a、228b、228cを接続する配管218a、218b、218cの内部の圧力は、1.5MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましい。
原料タンクとミキサを接続する配管218a、218b、218cには、小径部228a、228b、228cがそれぞれ設けられている。小径部228a、228b、228cは、その上流側及び/又は下流側の配管の内径よりも小さい内径を有するチューブであってもよい。小径部228a、228b、228cは、例えば、内径0.2mmのPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のチューブによって構成されている。配管218a、218b、218cと小径部228a、228b、228cは、図示しないコネクタによってそれぞれ連結されている。
ミキサ214bと反応物タンク216を接続する配管220は、例えば内径1.0mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブによって構成されている。3つの原料タンク212a、212b、212cに貯留されていた液体原料は、ミキサ214a、214bによって2段階で混合された後、配管220を介して反応物タンク216に移送される。これにより、3種類の液体原料に含まれる物質が反応することで得られた目的物質が、反応物タンク216内に貯留される。
上述のように構成された第3実施形態に係るマイクロリアクター210の作用及び効果について説明する。
従来のマイクロリアクターは、液体原料を移送するために、高価なシリンジポンプやプランジャポンプを備えていた。そのため、装置全体の製造コストが莫大になるという問題があった。
本実施形態に係るマイクロリアクター210によれば、原料タンク212a、212b、212cに充填されている窒素ガスの圧力によって、液体原料を移送することができるため、シリンジポンプやプランジャポンプが不要である。したがって、装置全体の製造コストを大幅に削減することができる。
本実施形態に係るマイクロリアクター210によれば、圧力調整弁224a、224b、224cによって3つの原料タンク212a、212b、212c内の窒素ガスの圧力を一定に維持できるため、ミキサ214a、214bに移送される液体原料の流量が変動することを防止することができる。
さらに、原料タンク212a、212b、212cとミキサ214a、214bを接続する配管218a、218b、218cには、小径部228a、228b、228cがそれぞれ設けられている。この小径部228a、228b、228cによって、圧力損失を調整することができる。圧力損失を調整することによって、配管218a、218b、218cを流れる液体原料の流量を調整することができる。また、液体原料が原料タンク212a、212b、212cに逆流することを防止することができる。その結果、ミキサ214a、214bに供給される液体原料の流量を一定に調整することができる。また、反応を均一に進行させることが可能であり、一定の品質を有する目的物を安定的に製造することができる。
さらに、本実施形態に係るマイクロリアクター210によれば、2つの原料タンク212a、212bからミキサ214aに移送される液体原料の流量比を一定に制御することができる。例えば、2つの原料タンク212a、212bに封入されている窒素ガスの圧力に差が生じた場合、圧力の高い原料タンクから、圧力の低い原料タンクへの逆流が起きやすくなる。本実施形態に係るマイクロリアクター210によれば、小径部228a、228bにおいて圧力損失が調整されるため、液体原料の流量が小さくなる。これにより、液体原料の逆流が防止されるため、ミキサ214aに供給される2種類の液体原料の流量比が一定に維持される。同様に、第2のミキサ214bにおいても、原料タンク212c及びミキサ214aから移送される液体原料の流量比が一定に維持される。
このように、本実施形態に係るマイクロリアクター210によれば、原料タンクとミキサを接続する配管218a、218b、218cに小径部228a、228b、228cがそれぞれ設けられているため、ミキサ214a、214bに供給される3種類の液体原料の流量比が一定に維持される。
本実施形態に係るマイクロリアクター210は、原料タンク内のガス圧によって液体原料を移送することができる。また、本実施形態に係るマイクロリアクター210は、小径部228a、228b、228cを備えているため、ガス圧によって液体原料を安定的に移送することができる。本実施形態に係るマイクロリアクター210は、これらのことを実現できた点が極めて斬新であり、画期的な発明である。
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
第4実施形態は、上記で説明した第2実施形態とほぼ同様であるが、2種類の液体原料を混合するのではなく、液体原料と気体原料を混合する点が異なっている。以下、第2実施形態と同様の部分については説明を省略することがある。
図4は、本発明の第4実施形態に係るマイクロリアクターのフローを示している。
図4に示すように、本実施形態に係るマイクロリアクター310は、原料タンク312と、原料タンク313と、ミキサ314と、反応物タンク316を備えている。原料タンク312は、液体原料を貯留するためのタンクである。原料タンク313は、気体原料を貯留するためのタンクである。液体原料と気体原料は、ミキサ314によって混合される。液体原料と気体原料を混合して得られた反応物は、反応物タンク316に貯留される。原料タンク312とミキサ314は、配管318aによって接続されている。原料タンク313とミキサ314は、配管318bによって接続されている。ミキサ314と反応物タンク316は、配管320によって接続されている。
本実施形態に係るマイクロリアクター310は、液体原料と気体原料を混合して反応物を得ることのできる装置である。
マイクロリアクター310は、図示しない窒素タンクを備えている。窒素タンクから、原料タンク312内に窒素ガス(Nガス)を供給することができる。窒素タンクと原料タンク312は、窒素供給配管322によって接続されている。窒素供給配管322には、圧力調整弁324(レギュレータ)が設けられている。圧力調整弁324によって、原料タンク312内の窒素ガスの圧力を一定に維持することができる。また、圧力調整弁324によって、原料タンク312からミキサ314に移送される液体原料の流量を調整することができる。原料タンク312に供給されるガスの圧力範囲は1kPaから200MPaであり、好ましくは10kPaから15MPaである。
窒素ガスが、本発明の「気体」に対応している。窒素ガスを供給するための窒素タンク及び窒素供給配管322が、本発明の「気体供給手段」に対応している。原料タンク312内に充填されている窒素ガスの圧力を調整する圧力調整弁324が、本発明の「圧力調整手段」に対応している。
原料タンク312内には、液体原料が貯留されている。貯留されている液体原料の上方の空間には、窒素ガスが充填されている。液体原料の上方に存在する窒素ガスの圧力によって、原料タンク312に貯留されている液体原料を、ミキサ314に移送することができる。原料タンク312及びその内部に充填されている窒素ガスが、本発明の「移送手段」に対応している。
原料タンク312とミキサ314を接続する配管318aには、小径部328が設けられている。小径部328は、その上流側及び/又は下流側の配管の内径よりも小さい内径を有するチューブであってもよい。小径部328は、例えば、内径0.2mmのPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のチューブによって構成されている。配管318aと小径部328は、図示しないコネクタによって連結されている。
原料タンク313とミキサ314を接続する配管318bには、圧力調整弁325(レギュレータ)が設けられている。圧力調整弁325によって、原料タンク313からミキサ314に供給される気体原料の圧力を調整することが可能である。また、圧力調整弁325によって、ミキサ314に供給される気体原料の流量を一定に維持することができる。
第4の実施形態に係るマイクロリアクター310によれば、第2の実施形態に係るマイクロリアクター110と同様の作用効果を得ることができる。
本発明のマイクロリアクターは、2種類の液体原料を混合する反応系だけでなく、液体原料と気体原料を混合する反応系に適用することも可能である。
<その他の実施形態>
(1)上記実施形態では、原料タンクの数が1つ、2つ、または3つである例を示したが、原料タンクの数はこれらに限定されない。
(2)上記実施形態では、配管の材質が樹脂である例を示したが、配管の材質はこれに限定されない。配管は、例えば金属によって形成されてもよい。
(3)上記実施形態では、小径部は、樹脂製のチューブの例を示したが、小径部はこれに限定されない。小径部は、例えば、金属のチューブによって形成されてもよい。また、HPLCやイオンクロマトの背圧を調整するために使用されている公知のバックプレッシャーチューブやバックプレッシャーレギュレーターを、小径部として使用してもよい。
(4)上記実施形態では、液体原料を移送するための気体が窒素である例を示したが、気体の種類はこれに限定されない。液体原料を移送するための気体は、例えば、空気やアルゴンガスであってもよい。
(5)上記実施形態では、反応させる物質(液体原料及び/又は原料の溶液)を移送する例を示したが、原料の希釈用溶剤、反応停止剤、あるいは抽出用溶剤等を移送してもよい。
上記実施形態では、原料タンクと小径部が1本の配管によって接続されている例を示したが、原料タンクに接続されている配管が2本以上に分岐してもよい。すなわち、原料タンクから複数の配管が分岐しており、その分岐した配管のそれぞれに小径部が接続されてもよい。
小径部は、その上流側及び/又は下流側の配管の内径よりも小さい内径を有する。好ましくは、小径部は、その上流側及び下流側の配管の内径よりも小さい内径を有する。以下、小径部について更に詳細に説明する。
小径部は、バルブで構成してもよい。例えば、流路の大きさを調整することのできる弁体やスプールを備えたバルブを、小径部として使用することができる。例えば、ゲートバルブやグローブバルブを、小径部として使用することができる。例えば、流路の大きさを調整することのできる「2−wayバルブ」(ジーエルサイエンス株式会社製)を、小径部として使用することができる。
小径部は、オリフィスで構成してもよい。例えば、薄い樹脂製あるいは金属製のプレートに、上流側及び下流側の配管の内径よりも小さい開口が形成されたオリフィスを、小径部として使用することができる。オリフィスは、1枚のプレートに1つの開口が形成されたものでもよく、1枚のプレートに複数の開口が形成されたものでもよい。例えば、HPLCやイオンクロマトグラフィー用インラインフィルタを、小径部として使用することができる。例えば、HPLC用PEEK製プレカラムフィルター(株式会社島津ジーエルシー製)を、小径部として使用することができる。
図6に示すように、小径部400は、金属板402aの一方の面に微小流路404を形成し、その金属板402aの微小流路404が形成された面にもう一枚の金属板402bを重ね合わせることによって製造することができる。すなわち、小径部400は、上述のマイクロミキサと同様に、金属板402aに微小流路404を形成したものであってもよい。微小流路404は、小径部400の上流側の配管406及び下流側の配管408の内径よりも小さい内径を有する。
図7に示すように、小径部410は、金属製あるいは樹脂製のチューブ412を物理的に変形させて、そのチューブ412の内径を部分的に小さくしたものであってもよい。チューブ412の変形した部分の内径414は、その上流側及び/又は下流側の配管の内径よりも小さい内径を有する。
以下、本発明をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
実施形態1で説明したマイクロリアクター10を、以下の式(1)に示すDiels―Alder反応に適用した。
無水マレイン酸(A)9.8g(10mmol)と1,3―シクロヘキサジエン(B)8.0g(10mmol)を、トルエン100mlに溶解させることで液体原料を得た。得られた液体原料を、原料タンクに貯留した。
原料タンクに貯留されている液体原料を、原料タンク内に充填されている窒素ガスの圧力によって、恒温槽に移送した。このとき、原料タンク内の窒素ガスの圧力は、0.02MPaに調整した。原料タンクと恒温槽を通る配管には、小径部として、内径0.2mm、長さ15cmのチューブを取り付けた。恒温槽を通る配管は、内径1.0mmであり、長さ4mである。恒温槽の設定温度は、80℃である。
液体原料を恒温槽に一定の流速で移送することによって、Diels―Alder付加体(C)を定量的に得ることができた。
(実施例2)
実施形態2で説明したマイクロリアクター110を、以下の式(2)に示すカルバゾールの臭素化反応に適用した。
カルバゾール(D)25g(0.15mol)をDMFに溶解させることで液体原料250mlを得た。得られた液体原料を、第1の原料タンクに貯留した。
N−ブロモスクシイミド(NBS)26.6g(0.15mol)をDMFに溶解させることで液体原料250mlを得た。得られた液体原料を、第2の原料タンクに貯留した。
原料タンクに貯留されている液体原料を、原料タンク内に充填されている窒素ガスの圧力によって、ミキサに移送した。このとき、第1の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.14MPaに調整した。第2の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.03MPaに調整した。
内径1.0mmのT字型の微小流路が形成されたミキサ(YMC社製 YMC−P−0020)を用いて、2種類の液体原料を混合した。第1の原料タンクとミキサを接続する配管には、小径部として、内径0.2mm、長さ5cmのチューブを取り付けた。
ミキサと反応物タンクは、その周囲が−5℃に冷却された内径1.0mm、長さ1mの配管によって接続されている。ミキサによって混合された2種類の液体原料をこの配管に流すことによって、臭素化反応が進行し、ブロモカルバゾール(E)が80%の反応転化率で得られた。このとき、ジブロモ体(F)が、7%生成した。
(実施例3)
実施形態2で説明したマイクロリアクター110を、以下の式(3)に示すスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)(H)の合成反応に適用した。
スチレンスルホン酸ナトリウムモノマー(G)50gを水に溶解させることで液体原料250mlを得た。得られた液体原料を、第1の原料タンクに貯留した。
過硫酸ナトリウム0.5gを水に溶解させることで液体原料250mlを得た。得られた液体原料を、第2の原料タンクに貯留した。
原料タンクに貯留されている液体原料を、原料タンク内に充填されている窒素ガスの圧力によって、ミキサに移送した。このとき、第1の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.03MPaに調整した。第2の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.03MPaに調整した。
内径1.0mmのT字型の微小流路が形成されたミキサ(YMC社製 YMC−P−0020)を用いて、2種類の液体原料を混合した。2つの原料タンクとミキサを接続する配管には、小径部として、内径0.2mm、長さ10cmのチューブをそれぞれ取り付けた。
ミキサと反応物タンクは、その周囲が80℃に加熱された内径1.0mm、長さ10mの配管によって接続されている。ミキサによって混合された2種類の液体原料をこの配管に流すことによって、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(H)(Mn:83191, Mw:148234, Mw/Mn:1.78)が反応物として得られた。
マイクロリアクターの運転を18時間連続して行ったが、液体原料を安定的に移送することができた。また、反応物を安定的に製造することができた。
(実施例4)
実施形態3で説明したマイクロリアクター210を、以下の式(4)に示すナフチルボロン酸の合成反応に適用した。
1−ブロモナフタレン(I)6.3gをTHFに溶解させることで液体原料100ml(0.31M)を得た。得られた液体原料を、第1の原料タンクに貯留した。
1.6M n−BuLi ヘキサン溶液25mlをシクロペンチルメチルエーテル(CPME)75mlで希釈することで液体原料100ml(0.4M)を得た。得られた液体原料を、第2の原料タンクに貯留した。
ホウ酸トリイソプロピル(B(OiPr))11.6gをTHFに溶解させることで液体原料100ml(0.62M)を得た。得られた液体原料を、第3の原料タンクに貯留した。
第1及び第2の原料タンクに貯留されている液体原料を、原料タンク内に充填されている窒素ガスの圧力によって、第1のミキサに移送した。このとき、第1の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.07MPaに調整した。第2の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.07MPaに調整した。2種類の液体原料を第1のミキサによって室温で混合し、内径1.0mm、長さ20cmの配管内でLi化させた。
第3の原料タンクに貯留されている液体原料を、原料タンク内に充填されている窒素ガスの圧力によって、第2のミキサに移送した。このとき、第3の原料タンク内の窒素ガスの圧力を、0.07MPaに調整した。
内径1.0mmのT字型の微小流路が形成されたミキサ(YMC社製 YMC−P−0020)を用いて、液体原料を混合した。原料タンクとミキサを接続する配管には、小径部として、内径0.2mm、長さ5cmのチューブをそれぞれ取り付けた。
第1のミキサによって混合された2種類の液体原料と、第3の原料タンクに貯留されている液体原料を、第2のミキサによって混合し、内径1mm、長さ100cmの配管内で反応させた。これにより、目的とする反応物である1−ナフチルボロン酸(K)を得た。
得られた反応物をHPLCで分析した結果は、1−ナフチルボロン酸(K)92%、1−ブロモナフタレン(I)0.4%、脱ブロモ体であるナフタレン(L)4%であった。高温条件で生成しやすいブチル付加体(M)の生成は確認されなかった。
(実施例5)
原料タンクを2つ用いて、図8に示す装置を組み立てた。この装置を用いて、3流路のナンバリングアップについて検討した。
図8に示すように、共通の窒素ガス供給源から、原料タンクAと原料タンクBに窒素ガスを供給した。窒素ガス供給源の出口側の配管に、圧力調整弁(レギュレータ)を取り付けた。圧力調整弁の先を分岐させて、その分岐させた先にコック及び原料タンクをそれぞれ接続した。
原料タンクAには、1/8インチ、内径1.58mm、長さ1300mm(800mmと500mmのチューブを接続したチューブ)の PTFE製チューブを2本接続した。これらのチューブを、流路A1、流路A2と呼ぶ。
原料タンクBには、上記と同じPTFE製チューブを1本接続した。このチューブを、流路Bと呼ぶ。
それぞれのチューブの先に、三方バルブ、ドレイン、及び、1/16インチ、内径1mm、長さ300mmのPTFE製チューブを接続した。そのチューブの先に、1/16インチ、内径0.25mm、長さ80mmのPEEK製チューブを接続した。このPEEK製のチューブは、本発明の小径部に相当する。その小径部の先に、反応物タンクを接続した。
各原料タンクに、水を入れた。原料タンクに供給するガスの圧力を、50kPaに設定した。流路A1のバルブを開放してから30秒後に、流路A2のバルブを開放した。流路A2のバルブを開放してから30秒後に、流路Bのバルブを開放した。バルブを開放してから10分後に、それぞれのバルブを閉めた。バルブを閉めた後、反応物タンクの重量を計測した。計測された反応物タンクの重量から、各流路の流速を求めた。このような手順により、流速を3回測定した。測定結果を、以下の表1に示す。
3本の流路の流速を比較すると、ばらつきの指標となるRSD(相対標準偏差)は0.5%程度であり、流速のばらつきは小さかった。このように、本発明のマイクロリアクターによれば、原料タンクからほぼ均等に複数の流路に液体を流すことができる。
本発明のマイクロリアクターによれば、装置の並列化によるナンバリングアップが可能であるとともに、1つの原料タンクに複数の流路を接続することによってナンバリングアップが可能である。
原料タンクAには2本の流路が接続しており、原料タンクBには1本の流路が接続している。原料タンクAと原料タンクBに接続する流路の数が異なるにもかかわらず、それぞれの流路の流速は同じである。本発明のマイクロリアクターによって、複数の流路にほぼ均等に液体を流せることがわかる。このような特徴的な効果は、小径部を使用することによって得られる。これに対して、従来のシリンジポンプやプランジャポンプを使用した場合、流路A1と流路A2の流速は、流路Bの約半分になる。
(実施例6)
1つの原料タンクに10本の流路を接続して、図9に示す装置を組み立てた。この装置を用いて、10流路のナンバリングアップについて検討した。
図9に示すように、窒素ガス供給源から、原料タンクに高圧の窒素ガスを供給した。この原料タンクに、1/8インチ、内径1.58mm、長さ1300mm(800mmと500mmのチューブを接続したチューブ)の PTFE製チューブを10本接続した。それぞれのチューブの先に、三方バルブ、及び、1/16インチ、内径1mm、長さ300mmのPTFE製チューブを接続した。そのチューブの先に、内径0.25mm、長さ200mmのPEEK製チューブを接続した。このPEEK製のチューブは、本発明の小径部に相当する。その小径部の先に、反応物タンクをそれぞれ接続した。
原料タンクに、水を入れた。原料タンクに供給するガスの圧力を、0.1MPaに設定した。10本の流路にそれぞれ設けられているバルブを、5秒毎に順に開放した。バルブを開放してから10分後に、それぞれのバルブを閉めた。バルブを閉めた後、反応物タンクの重量を計測した。計測された反応物タンクの重量から、各流路の流速を求めた。このような手順により、流速を3回測定した。測定結果を、以下の表2及び表3に示す。
10本の流路の流速を比較すると、ばらつきの指標となるRSD(相対標準偏差)は1%程度であり、流速のばらつきは小さかった。このように、本発明のマイクロリアクターによれば、1つの原料タンクから分岐する複数の流路に、液体をほぼ均等に流すことができる。本発明のマイクロリアクターによれば、1つの原料タンクに複数の流路を接続することによって、ナンバリングアップが可能である。
次に、原料タンク内の圧力及び装置の構成を変えずに、10流路のうちの一部を使用して、各流路の流速を比較した。具体的には、10流路のうち、1流路、2流路、及び、5流路を使用した。測定結果を、以下の表4に示す。
表4に示すように、原料タンク内の圧力を変えずに流路の数を変化させた場合、流路の流速は変化しなかった。具体的には、流路の数を1、2、5、及び10に変化させた場合、流路の流速は変化しなかった。
従来のシリンジポンプやプランジャポンプを使用した場合、流路の数に応じて、ポンプの流速を変化させる必要があった。一部の流路が閉塞した場合にも、ポンプの流速を変化させる必要があった。したがって、従来のマイクロリアクターは、流路を分岐させることによるナンバリングアップが困難であった。
これに対して、本発明のマイクロリアクターによれば、流路の数に応じて原料タンク内の圧力を変化させる必要がない。また、一部の流路が閉塞した場合でも、他の流路の流速にはほとんど影響がない。したがって、流路を分岐させることによるナンバリングアップが容易である。
(実施例7)
1つの原料タンクに10本の流路を接続して、図10に示す装置を組み立てた。この装置を用いて、10流路のナンバリングアップについて検討した。具体的には、図10に示す装置を、以下の式(2)に示すカルバゾールの臭素化反応に適用した。
内径1.0mmのT字型の微小流路が形成されたミキサ(YMC社製 YMC−P−0020)を用いて、2種類の液体原料を混合した。第1の原料タンクとミキサを接続する配管には、小径部として、内径0.25mm、長さ20cmのチューブを取り付けた。第2の原料タンクとミキサを接続する配管には、小径部として、内径0.25mm、長さ10cmのチューブを取り付けた。ミキサと反応物タンクは、内径1.0mm、長さ1mの配管によって接続されている。
カルバゾール(D)10g(60mmol)をDMFに溶解させることで液体原料1000mlを得た。得られた液体原料を、第1の原料タンクに貯留した。
N−ブロモスクシイミド(NBS)7.5g(42mmol)をDMFに溶解させることで液体原料1000mlを得た。得られた液体原料を、第2の原料タンクに貯留した。
第1の原料タンク内の圧力を、56kPaに設定した。第2の原料タンク内の圧力を、48kPaに設定した。原料タンク内の圧力によって、2種類の液体原料をミキサに送った。ミキサによって混合された2種類の液体原料を、配管に送った。配管内で臭素化反応が進行し、ブロモカルバゾール(E)が平均80.2%の反応転化率、RSD2.1%で得られた。結果を以下の表5に示す。
(実施例8)
図11に示す装置を、以下の式(4)に示す1−ナフチルボロン酸の合成反応に適用した。
図11に示すように、3種類の液体原料を貯留するための、6つの原料タンクを準備した(1種類の液体原料につき、2つの原料タンク)。それぞれの原料タンクに、2本の流路を接続した。つまり、1種類の液体原料につき、4流路を用いるナンバリングについて検討を行った。
3組の原料タンクに、窒素ガス供給源をそれぞれ接続した。各原料タンクに、1/8インチ、130cmのPTFE製チューブを接続した。そのチューブに、三方コック及び小径部を取り付けた。原料タンクAのラインでは、小径部として、内径0.25mm、長さ20cm、1/16インチのPEEK製チューブを用いた。原料タンクBのラインでは、小径部として、内径0.25mm、長さ5cm、1/16インチのPEEK製チューブを用いた。原料タンクCのラインでは、小径部として、内径0.2mm、長さ5cm、1/16インチのPEEK製チューブを用いた。
3種類の液体原料を、内径1mm のT字型ミキサを用いて混合した。ミキサとミキサの間には、内径1.0mm、長さ20cm、1/16インチのPTFE製チューブを接続した。ミキサと反応物タンクの間には、長さ100cm、内径1.0mm、1/16インチのPTFE製チューブを接続した。
n-BuLi 31mlにCPME 94mlを加え、0.4Mのn-BuLi-ヘキサン/CPME溶液を125ml調製した。調製した液体原料を、原料タンクA1、A2に貯留した。
1-ブロモナフタレン16.27gを500mlのTHFに溶解させ、0.15Mの1-ブロモナフタレン-THF溶液を調製した。調製した液体原料を、原料タンクB1、B2に貯留した。
ホウ酸トリイソプロピル34.24gを125mlのTHFに溶解させ、0.6Mのホウ酸トリイソプロピル-THF溶液を調製した。調製した液体原料を、原料タンクC1、C2に貯留した。
各原料タンク内の圧力を、0.1MPaに設定した。原料タンク内の気体の圧力によって、3種類の液体原料をミキサに移送した。3種類の液体原料の反応によって、ボロン酸が得られた。得られた反応物は、反応物タンクに貯留された。反応物の測定結果を、以下の表6に示す。
4流路のすべてにおいて上記式(4)に示す反応が進行し、1-ナフチルボロン酸が合成された。本発明のマイクロリアクターにより、4流路のナンバリングアップが可能であることを確認できた。ボロン酸のRSDは1%以下に抑えられ、測定結果のばらつきは小さかった。
(比較例1)
以下、比較例について説明する。
シリンジポンプを用いて液体原料を移送することによって、上記の式(4)に示すナフチルボロン酸の合成反応を行った。
1−ブロモナフタレン(I)6.3gをTHFに溶解させることで液体原料100ml(0.31M)を得た。得られた液体原料を、第1のシリンジポンプに貯留した。
1.6M n−BuLi ヘキサン溶液25mlをシクロペンチルメチルエーテル(CPME)75mlで希釈することで液体原料100ml(0.4M)を得た。得られた液体原料を、第2のシリンジポンプに貯留した。
ホウ酸トリイソプロピル(B(OiPr))11.6gをTHFに溶解させることで液体原料100ml(0.62M)を得た。得られた液体原料を、第3のシリンジポンプに貯留した。
内径1.0mmのT字型の微小流路が形成されたミキサ(YMC社製 YMC−P−0020)を用いて、液体原料を混合した。
第1、第2および第3のシリンジポンプの流量は、5ml/minに設定した。
2種類の液体原料を第1のミキサによって室温で混合し、内径0.5mm、長さ20cmの配管内でLi化させた。
第1のミキサによって混合された2種類の液体原料と、第3の原料タンクに貯留されている液体原料を、第2のミキサによって混合し、内径1mm、長さ100cmの配管内で反応させた。これにより、目的とする反応物である1−ナフチルボロン酸を得た。
得られた反応物をHPLCで分析した結果は、1−ナフチルボロン酸(K)89%、原料の1−ブロモナフタレン(I)0.3%、脱ブロモ体であるナフタレン(L)6.8%であった。高温条件で生成しやすいブチル付加体(M)は1.9%であった。
(比較例2)
図8に示す装置の小径部を取り外して、上記実施例5と同様の測定を行った。これにより、小径部を取り付けることによる効果を実証した。
上記実施例5と同様に、各原料タンクに、水を入れた。原料タンクに供給するガスの圧力を、50kPaに設定した。流路A1のバルブを開放してから30秒後に、流路A2のバルブを開放した。流路A2のバルブを開放してから30秒後に、流路Bのバルブを開放した。バルブを開放してから10分後に、それぞれのバルブを閉めた。バルブを閉めた後、反応物タンクの重量を計測した。計測された反応物タンクの重量から、各流路の流速を求めた。測定結果を、以下の表7に示す。
表7に示す結果より、比較例2よりも、実施例5の方が、流速のばらつきが小さいことが分かる。つまり、原料タンクと反応物タンクを接続する配管に小径部を取り付けた場合の方が、取り外した場合よりも、流速のばらつきが小さくなる。このように、原料タンクに接続する複数の流路に小径部を取り付けることにより、各流路の流速のばらつきが小さくなる。
10、110、210、310 マイクロリアクター
12、112a、112b、112c、212a、212b、212c、312 原料タンク
14 恒温槽
16、116、216、316 反応物タンク
18、20、118a、118b、120、218a、218b、218c、218d、220、318a、318b、320 配管
19a,19b コネクタ
22、122a、122b、222a、222b、222c、322 窒素供給配管
24、124a、124b、224a、224b、224c、324 圧力調整弁
26、126a、126b、226a、226b、226c 開閉バルブ
28、128a、128b、228a、228b、228c、328、400、410 小径部
114、214a、214b、314 ミキサ

Claims (4)

  1. 液体原料を反応させることで目的物質を製造するためのマイクロ化学プラントであって
    記液体原料を貯留するための原料タンクと、
    前記原料タンク内の気体の圧力によって、前記原料タンク内に貯留されている液体原料を移送する移送手段と、を備えており、
    前記原料タンクに複数の配管が接続しており、
    前記原料タンクに接続された複数の配管には、前記液体原料の流量を調整するための小径部がそれぞれ設けられており、
    前記小径部は、その上流側及び下流側の配管の内径よりも小さい内径を有する、チューブまたは金属板に形成された微小流路によって構成されており、
    さらに、前記原料タンク内に気体を供給する気体供給手段と、前記原料タンク内の気体の圧力を調整するための圧力調整手段と、を備え、
    前記原料タンクは耐圧タンクで構成されており、
    さらに、前記液体原料と他の原料とを混合するためのミキサを備え、
    前記ミキサは、幅の大きさが0.01〜1000μm程度の微小流路が形成されたマイクロミキサであり、
    前記原料タンクと前記ミキサを接続する配管に前記小径部が設けられている、
    マイクロ化学プラント。
  2. 前記原料タンクを複数有しており、
    前記複数の原料タンクから移送される液体原料が前記ミキサによって混合される、請求項1に記載のマイクロ化学プラント。
  3. 前記原料タンクと前記小径部を接続する配管の内部の圧力が1.5MPa以下である、請求項1又は請求項2に記載のマイクロ化学プラント。
  4. 前記気体は窒素である、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のマイクロ化学プラント。
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