JP6618410B2 - チタン銅箔、伸銅品、電子機器部品およびオートフォーカスカメラモジュール - Google Patents

チタン銅箔、伸銅品、電子機器部品およびオートフォーカスカメラモジュール Download PDF

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Description

本発明は、チタン銅箔、伸銅品、電子機器部品およびオートフォーカスカメラモジュールに関するものであり、特に、オートフォーカスカメラモジュール等の導電性ばね材に用いることに適した良好なはんだ付け性を有するCu−Ti系銅合金箔に関するものである。
携帯電話のカメラレンズ部には、オートフォーカスカメラモジュールと呼ばれる電子部品が使用される。携帯電話のカメラのオートフォーカス機能は、オートフォーカスカメラモジュールに使用される材料のばね力により、レンズを一定方向に動かすとともに、周囲に巻かれたコイルに電流を流すことで発生する電磁力により、レンズを材料のばね力が働く方向とは反対方向へ動かす。このような機構でカメラレンズが駆動してオートフォーカス機能が発揮される。
オートフォーカスカメラモジュールには、箔厚0.1mm以下で、1100MPa以上の引張強さまたは0.2%耐力を有するCu−Ni−Sn系銅合金箔が使用されてきた。しかし、近年のコストダウン要求により、Cu−Ni−Sn系銅合金より比較的材料価格が安いチCu−Ti系銅合金箔が使用されるようになり、その需要は増加しつつある。
なお、この種のCu−Ti系銅合金箔に関し、たとえば特許文献1では、箔厚が0.1mm以下と薄い場合、材料に荷重を加え変形させた後に荷重を除去すると、へたりが生じるという問題に着目されている。そして特許文献1では、この問題を解決するため、「箔厚が0.1mm以下であり、1.5〜4.5質量%Tiを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での0.2%耐力が1100MPa以上であり、且つ、圧延方向に直角な方向での算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下である」ものが提案されている。
ところで、Cu−Ti合金は、極めて活性で酸化しやすい元素であるTiを含有することから、最終工程の時効処理において強固な酸化膜が生成される。このような強固な酸化膜は、はんだ付け性を著しく低下させることから、チタン銅板・条等といった比較的厚みが厚いCu−Ti合金では、たとえば特許文献2に記載されているように、時効処理後に、化学研磨(酸洗)、さらに機械研磨を実施して、酸化膜を除去することが一般に行われている。
Cu−Ti合金で酸化膜を除去するには、まず化学研磨を行う。チタン酸化物を含有するCu−Ti合金の酸化膜は酸に対して非常に安定であることから、化学研磨では、弗酸または硫酸に過酸化水素を混合した溶液などの極めて腐食力の高い化学研磨液を用いる必要がある。
但し、このように極めて強い腐食力を有する化学研磨液を用いた場合、酸化膜だけでなく未酸化部分も腐食されることがあり、化学研磨後の表面には不均一な凹凸や変色が生じるおそれがある。また、腐食が均一に進行せず、酸化膜が局部的に残留するおそれもある。そこで、表面の凹凸、変色および残留酸化膜を除去するため、上記化学研磨を施した後に例えばバフなどを用いて機械研磨を施す。
機械研磨の後は、最終の表面処理として防錆処理を行い板・条製品とする。チタン銅箔の防錆処理には、一般の銅および銅合金の板・条に用いるものと同じく、ベンゾトリアゾル(BTA)の水溶液が用いられる。
特許第5723849号公報 特許第4068413号公報
しかしながら、チタン銅板・条の場合とは異なり、たとえば厚みが0.1μm以下と薄いチタン銅箔では、時効処理で生成される酸化膜を除去してはんだ付け性を向上させるための機械研磨を行うことが困難である。その理由は二つあり、一つ目は機械研磨ラインの通箔に関するものであり、また二つ目は機械研磨ラインでの板厚制御に関するものである。
一つ目の理由である機械研磨ラインの通箔に関しては、バフを用いる場合、バフロールの回転に伴い、バフがチタン銅箔に引っ掛かり、引っ掛かった箇所を起点にチタン銅箔が破断する場合がある。バフ研磨は、円柱形のバフロールの中心軸を軸に回転しチタン銅箔の表面を研磨するものである。バフロールは、研磨粒(SiCなどの砥粒)が分散した樹脂を海綿状の有機繊維に固定したもので、樹脂のかたまりがチタン銅箔のエッジで凹凸の大きいところに引っ掛かり、チタン銅箔の強度を超える張力が作用すると破断する。
二つ目の理由である機械研磨ラインでの板厚制御に関しては、円柱形のバフロールには研磨するために圧下荷重が負荷されており、また、チタン銅箔にはラインを通箔するために張力が付与されている。この圧下荷重および張力は、いずれも多かれ少なかれ周期性のある震動成分を有しており、この震動はチャタリングと呼ばれる。チャタリングの震動周期によってはそれぞれの震動が共振することもあり得る。共振が大きい場合、チャタリングにより機械研磨する対象の研磨面に畳状の模様が現出する。チャタリングにより生じた模様はチャタマークと呼ばれる。これは、模様に応じて研磨量が異なること、言い換えるとチタン銅箔の研磨量がばらつくことを示すものである。ここで、チタン銅箔の場合、チタン銅板・条に比べ厚みが薄いので、研磨量のばらつきが及ぼす影響は大きい。すなわち、チタン銅箔をバフ研磨すると厚みの変動が大きくなり、これをばねとして用いるとばね特性のばらつきが大きくなり、これは好ましいことではない。
したがって、厚みの薄いチタン銅箔では、チタン銅板・条に比べて、バフなどを用いて機械研磨をすることが難しいことから、チタン銅板・条のような化学研磨および機械研磨による酸化膜の有効な除去が困難である。加えて、近年は、健康上の理由から鉛フリーはんだが広く用いられるようになっており、この鉛フリーはんだは、これまでの鉛入りはんだに比べて、はんだ付け性が劣る。
それにより、厚みの薄いチタン銅箔では、はんだ付け性の低下が否めず、特にオートフォーカスカメラモジュールを製造する際に必要なはんだ濡れ性及びはんだ密着性を確保できないという問題があった。
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、箔厚が0.1μm以下と薄いチタン銅箔で、はんだ濡れ性およびはんだ密着強度に優れ、オートフォーカスカメラモジュール等の電子機器部品に使用される導電性ばね材として好適に用いることのできるチタン銅箔およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者は鋭意検討の結果、箔厚が0.1mm以下のチタン銅箔で、圧延方向に平行な方向における表面の最大高さ粗さRzを、所定の範囲内に調整することにより、酸化膜が存在してなお、良好なはんだ濡れ性を確保できるとともに、いわゆるアンカー効果に基く高い密着強度を発揮できることを見出した。また、このような表面粗さRzは、圧延でオイルピットが形成されることにより変化させることが可能であること、および、それにより、チタン銅箔を製造する際の最終冷間圧延の加工度を制御することで、所定の範囲の最大表面粗さRzを有するチタン銅箔を製造できることの知見を得た。
かかる知見の下、本発明のチタン銅箔は、箔厚が0.1mm以下であり、Tiを1.5〜4.5質量%で含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での表面の最大粗さRzが0.1μm〜1μmであるものである。
ここで、本発明のチタン銅箔は、引張強さが1100MPa以上であることが好ましい。
またここで、本発明のチタン銅箔は、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、CrおよびZrのうちの一種以上を総量で0〜1.0質量%含有するものとすることができる。
本発明の伸銅品は、上記の何れかのチタン銅箔を備えたものである。
本発明の電子機器部品は、上記の何れかのチタン銅箔を備えたものである。
この電子機器部品は、オートフォーカスカメラモジュールであることが好適である。
また本発明のオートフォーカスカメラモジュールは、レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢するばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備え、前記ばね部材が上記の何れかのチタン銅箔であるものである。
本発明によれば、圧延方向に平行な方向での表面の最大高さ粗さRzを0.1〜1μmとしたことにより、はんだ付け性および密着強度に優れたチタン銅箔を提供することができる。このようなチタン銅箔は、電子機器部品、なかでもオートフォーカスカメラモジュールの用途に特に適している。
本発明の一の実施形態のオートフォーカスカメラモジュールを示す断面図である。 図1のオートフォーカスカメラモジュールの分解斜視図である。 図1のオートフォーカスカメラモジュールの動作を示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の一の実施形態のチタン銅箔は、箔厚が0.1mm以下であり、Tiを1.5〜4.5質量で%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での表面の最大高さ粗さRzが0.1μm〜1μmであるものである。
(Ti濃度)
本発明のチタン銅箔では、Ti濃度を1.5〜4.5質量%とする。チタン銅は、溶体化処理によりCuマトリックス中へTiを固溶させ、時効処理により微細な析出物を合金中に分散させることにより、強度及び導電率を上昇させる。
Ti濃度が1.5質量%未満になると、析出物の析出が不充分となり所望の強度が得られない。Ti濃度が4.5質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなる。強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましいTi濃度は2.9〜3.5質量%である。
(その他の添加元素)
本発明に係るチタン銅箔においては、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、CrおよびZrのうちの一種以上を総量で0〜1.0質量%含有させることにより、強度を更に向上させることができる。これら元素の合計含有量は0、つまり、これら元素は含まなくてもよい。これら元素の合計含有量の上限を1.0質量%としたのは、1.0質量%を超えると、加工性が劣化し、熱間圧延の際に材料が割れやすくなるからである。
(引張強さ)
オートフォーカスカメラモジュールの導電性ばね材等として好適なチタン銅箔に必要な引張強さは1100MPa以上であり、好ましくは1200MPa以上、より好ましくは1300MPa以上である。本発明においては、チタン銅箔の圧延方向に平行な方向の引張強さを測定し、引張強さはJIS Z2241(金属材料引張試験方法)に準拠して測定する。
(表面粗さ)
本発明のチタン銅箔は、その表面の、圧延方向に平行な方向における最大高さ粗さRzが、0.1〜1μmの範囲内にある。これにより、所要の優れたはんだ付け性を確保することができ、また、はんだによる密着強度を高めることができるので、特にオートフォーカスカメラモジュールに用いる場合のその製造に有利である。
ここで、圧延方向に平行な方向の最大高さ粗さRzを規定する理由は、圧延時のオイルピットの量の多い場合と少ない場合で表面粗さが顕著に変化するのが、圧延方向に平行な方向だからである。
より詳細には、圧延平行方向の粗さRzが0.1〜1μmの範囲内であれば、実表面積が大きすぎないことから、はんだが濡れ広がりやすく、また、適度な凹凸があることからはんだの密着性に優れるからである。なお、圧延方向と直角な方向の最大高さ粗さRzも、0.1〜1μmとすることが好ましい。
これを言い換えれば、圧延方向に平行な方向の最大表面粗さRzが0.1μm未満であると、アンカー効果が得られず、密着性が悪い。一方、圧延方向に平行な方向の最大表面粗さRzが1μmを超える場合、はんだの濡れに要する時間が多くかかることになり、はんだ濡れ性が悪い。
この観点より、圧延方向に平行な方向における表面の最大高さ粗さRzは、0.1μm〜0.4μmであることがより好ましく、さらに0.1μm〜0.25μmであることが特に好ましい。
最大高さ粗さRzは、チタン銅箔の圧延方向と平行な方向または直角な方向に沿って、基準長さ300μmの粗さ曲線を採取し、その曲線から、JIS B0601(2013)に準拠して測定することができる。
(銅箔の厚み)
本発明のチタン銅箔は、箔厚が0.1mm以下であり、典型的な実施形態では箔厚が0.018mm〜0.08mmであり、より典型的な実施形態では箔厚が0.02mm〜0.05mmである。
(製造方法)
上述したようなチタン銅箔を製造するには、まず溶解炉で電気銅、Ti等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。チタンの酸化磨耗を防止するため、溶解及び鋳造は真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。その後、インゴットに対し、典型的には、熱間圧延、第一冷間圧延、溶体化処理、第二冷間圧延、時効処理、第三冷間圧延(最終冷間圧延)をこの順で実施し、所望の厚み及び特性を有する箔に仕上げる。
熱間圧延及びその後の第一冷間圧延の条件はチタン銅の製造で行われている慣例的な条件で行えば足り、ここでは特段要求される条件はない。また、溶体化処理についても慣例的な条件で構わないが、例えば700〜1000℃の温度で5秒間〜30分間の間にわたって行うことができる。
上述の強度を得るため、第二冷間圧延の圧下率は55%以上に設定することが好ましい。より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上である。この圧下率が55%未満になると、1100MPa以上の引張強さを得るのは困難になる。圧下率の上限は、本発明が目的とする強度の点からは特に規定されないが、工業的に99.8%を超えることはない。
時効処理の加熱温度は200〜300℃とし、加熱時間は2時間〜20時間とする。加熱温度が200℃未満であると1100MPa以上の引張強さを得ることが困難になる。300℃を超えると酸化膜が過剰に生成することとなる。加熱時間が2時間未満又は20時間を越えると1100MPa以上の引張強さを得ることが困難になる。
そして、本発明のチタン銅箔を得るためには、最終冷間圧延で、小径ロールを有する圧延機を用いること、圧下率を制御すること、及び、最終パスを所定の粗さのワークロールで圧延することが肝要である。
具体的には、チタン銅箔は高強度の硬い箔であり潰れにくいことから、最終冷間圧延では、直径が30mm〜120mmの小径ロールを有する圧延機を用いることが好ましい。ロール直径が大きすぎと、チタン銅箔が目的の厚みまでつぶれず、また、圧延の際に圧延油の噛みこみ量が多くなることからオイルピットが発生しやすくなる可能性があり、また、ロール直径が小さすぎると、圧延速度が低く制限されることから、生産性が低下することが懸念される。そのため、ロール直径が40mm〜100mmのものを用いることがより好ましい。
また最終冷間圧延では、箔表面にオイルビットが形成されることにより、製造するチタン銅箔の表面粗さRzが変化する。そのため、最終パスの圧下率を9%〜35%とすることが好適である。この圧下率が大きすぎると、圧延ロールと材料の間に巻き込まれる圧延油の量が減ることから、製造したチタン銅箔の表面粗さRzが小さくなり、はんだ密着性の低下を招く。この一方で、圧下率が小さすぎると、圧延ロールと材料の間に巻き込まれる圧延油の量が増えるので、製造したチタン銅箔の表面粗さRzが増大して、はんだ濡れ性が低下する。したがって、最終パスの圧下率は、より好ましくは9%〜30%とする。
さらに、使用するワークロールの材質はダイス鋼とし、最終パスは、表面が0.1μm以下の算術平均粗さRaであるワークロールで圧延することが有効である。最終パスのワークロールの算術平均粗さRaが大きい場合は、材料の表面粗さRzが1μmを超えやすいと考えられる。このワークロールの算術平均粗さ(Ra)は、長手方向に対して、つまり、上述した材料の圧延方向に対する直角方向に対応する方向に対して、基準長さ400μmの粗さ曲線を採取し、JIS B0601に準拠して測定する。
なお一般に、熱処理後は、表面に生成した酸化皮膜または酸化物層を除去するため、表面の酸洗や研磨等を行う。本発明でも熱処理後に表面の酸洗や研磨等を行うことも可能である。また、第二冷間圧延の後に低温焼鈍を行ってもよい。
最終冷間圧延後、防錆処理を施すことができる。この防錆処理は従来と同様の条件で行うことが可能であり、ベンゾトリアゾル(BTA)の水溶液等を用いることができる。
(用途)
本発明のチタン銅箔は様々な用途に用いることが可能であるが、特に、スイッチ、コネクタ、ジャック、端子、リレー等の電子機器用部品の材料として好適に使用することができ、なかでもオートフォーカスカメラモジュール等の電子機器部品に使用される導電性ばね材として好適に使用することができる。
オートフォーカスカメラモジュールは、たとえば、レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢するばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備えるものとすることができる。そしてここでは、当該ばね部材を、本発明のチタン銅箔とすることができる。
電磁駆動手段は例示的には、コの字形円筒形状のヨークと、ヨークの内周壁の内側に収容されるコイルと、コイルを囲繞すると共にヨークの外周壁の内側に収容されるマグネットを備えることができる。
図1は、本発明に係るオートフォーカスカメラモジュールの一例を示す断面図であり、図2は、図1のオートフォーカスカメラモジュールの分解斜視図であり、図3は、図1のートフォーカスカメラモジュールの動作を示す断面図である。
オートフォーカスカメラモジュール1は、コの字形円筒形状のヨーク2と、ヨーク2の外壁に取付けられるマグネット4と、中央位置にレンズ3を備えるキャリア5と、キャリア5に装着されるコイル6と、ヨーク2が装着されるベース7と、ベース7を支えるフレーム8と、キャリア5を上下で支持する2個のばね部材9a、9bと、これらの上下を覆う2個のキャップ10a、10bとを備えている。2個のばね部材9a、9bは同一品であり、同一の位置関係でキャリア5を上下から挟んで支持すると共に、コイル6への給電経路として機能している。コイル6に電流を印加することによってキャリア5は上方に移動する。尚、本明細書においては、上及び下の文言を適宜、使用するが、図1における上下を指し、上はカメラから被写体に向う位置関係を表わす。
ヨーク2は軟鉄等の磁性体であり、上面部が閉じたコの字形の円筒形状を成し、円筒状の内壁2aと外壁2bを持つ。コの字形の外壁2bの内面には、リング状のマグネット4が装着(接着)される。
キャリア5は底面部を持った円筒形状構造の合成樹脂等による成形品であり、中央位置でレンズを支持し、底面外側上に予め成形されたコイル6が接着されて搭載される。矩形上樹脂成形品のベース7の内周部にヨーク2を嵌合させて組込み、更に樹脂成形品のフレーム8でヨーク2全体を固定する。
ばね部材9a、9bは、いずれも最外周部がそれぞれフレーム8とベース7に挟まれて固定され、内周部120°毎の切欠き溝部がキャリア5に嵌合し、熱カシメ等にて固定される。
ばね部材9bとベース7およびばね部材9aとフレーム8間は接着および熱カシメ等にて固定され更に、キャップ10bはベース7の底面に取付け、キャップ10aはフレーム8の上部に取付けられ、それぞればね部材9bをベース7とキャップ10b間に、ばね部材9aをフレーム8とキャップ10a間に挟み込み固着している。
コイル6の一方のリード線は、キャリア5の内周面に設けた溝内を通って上に伸ばし、ばね部材9aに半田付けする。他方のリード線はキャリア5底面に設けた溝内を通って下方に伸ばし、ばね部材9bに半田付けする。
ばね部材9a、9bは、本発明に係るチタン銅箔の板バネである。バネ性を持ち、レンズ3を光軸方向の初期位置に弾性付勢する。同時に、コイル6への給電経路としても作用する。ばね部材9a、9bの外周部の一箇所は外側に突出させて、給電端子として機能させている。
円筒状のマグネット4はラジアル(径)方向に磁化されており、コの字形状ヨーク2の内壁2a、上面部及び外壁2bを経路とした磁路を形成し、マグネット4と内壁2a間のギャップには、コイル6が配置される。
ばね部材9a、9bは同一形状であり、図1及び2に示すように同一の位置関係で取付けているので、キャリア5が上方へ移動したときの軸ズレを抑制することができる。コイル6は、巻線後に加圧成形して製作するので、仕上がり外径の精度が向上し、所定の狭いギャップに容易に配置することができる。キャリア5は、最下位置でベース7に突当り、最上位置でヨーク2に突当るので、上下方向に突当て機構を備えることとなり、脱落することを防いでいる。
図3は、コイル6に電流を印加して、オートフォーカス用にレンズ3を備えたキャリア5を上方に移動させた時の断面図を示している。ばね部材9a、9bの給電端子に電源が印加されると、コイル6に電流が流れてキャリア5には上方への電磁力が働く。一方、キャリア5には、連結された2個のばね部材9a、9bの復元力が下方に働く。従って、キャリア5の上方への移動距離は電磁力と復元力が釣合った位置となる。これによって、コイル6に印加する電流量によって、キャリア5の移動量を決定することができる。
上側ばね部材9aはキャリア5の上面を支持し、下側ばね部材9bはキャリア5の下面を支持しているので、復元力はキャリア5の上面及び下面で均等に下方に働くこととなり、レンズ3の軸ズレを小さく抑えることができる。
従って、キャリア5の上方への移動に当って、リブ等によるガイドは必要なく、使っていない。ガイドによる摺動摩擦がないので、キャリア5の移動量は、純粋に電磁力と復元力の釣合いで支配されることとなり、円滑で精度良いレンズ3の移動を実現している。これによってレンズブレの少ないオートフォーカスを達成している。
なお、マグネット4は円筒形状として説明したが、これに拘わるものでなく、3乃至4分割してラジアル方向に磁化し、これをヨーク2の外壁2bの内面に貼付けて固着してもよい。
次に、本発明のチタン銅箔を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
<製造条件>
試作品の製造は次のようにして行った。まず真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、所定の濃度のTiが得られるようTiを添加した。この溶湯を鋳鉄製の鋳型に鋳込み、厚さ30mm、幅60mm、長さ120mmのインゴットを製造した。
このインゴットを950℃で3時間加熱し、厚さ10mmまで圧延する熱間圧延を行った。熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去して研削を行った。なお、この研削後の厚みは9mmであった。次いで、第一冷間圧延を実施し、厚さ1mmまで圧延した。その後の溶体化処理では、800℃に昇温した電気炉に試料を装入し、5分間保持した後、試料を水槽に入れて急冷却した。そして、第二冷間圧延を行い、ここでは圧下率96%にて0.04mmの箔厚まで圧延した。その後は、時効処理として、280℃で10時間加熱した。ここで、時効処理のこの温度は、時効後の引張強さが最大になるように選択した。その後、表1に示す条件にて第三冷間圧延は行わなかった。
以上のように作製した試作品に対し、次の各評価を行った。
<表面粗さ>
試作品の圧延方向と平行な方向に沿って、基準長さ300μmの粗さ曲線を採取し、その曲線から、JIS B0601(2013)に準拠して測定した。
<はんだ濡れ性・はんだ密着性>
千住金属製Pbフリー半田M705系はんだを用い、はんだ付け試験を行った。はんだ濡れ性の評価では、濡れ広がり径1.5mm以上を○、濡れ広がり径1.5mm未満を×と判定し、JIS C60068−2−54に準じ、ソルダーチェッカ(レスカ社製SAT−2000)によりメニスコグラフ法と同じ手順ではんだ付けをし、はんだ付け部の外観を観察した。測定条件はつぎのとおりである。試料の前処理としてアセトンを用いて脱脂した。次に10vol%硫酸水溶液を用いて酸洗を施した。はんだの試験温度は245±5℃とした。フラックスは特に指定はないが、株式会社アサヒ化学研究所製GX5を使用した。また、浸漬深さは2mm、浸漬時間は10秒、浸漬速度は25mm/秒、試料の幅は10mmとした。評価基準は、20倍の実体顕微鏡にて目視観察し、はんだ付け部の全面がはんだで覆われているものを良好(○)とし、はんだ付け部の一部又は全面がはんだで覆われていないものを不良(×)とした。また、はんだ密着性の評価では、剥離強度1N以上を○、剥離強度1N未満を×と判定した。この剥離強度は、めっき層を有するチタン銅箔及び純銅箔(JIS H3100(2012)に規定する合金番号C1100、箔厚0.02mm〜0.05mm)を鉛フリー半田(Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu)を介して接合する。チタン銅箔は幅15mm、長さ200mmの短冊状とし、純銅箔は幅20mm、長さ200mmの短冊状とし、長さ方向に対して中央部30mm×15mmの面積に鉛フリー半田(直径0.4±0.02mm、長さ120±1mm)を上記の面積内に収まるように配置した上で、接合温度を245℃±5℃として接合する。接合後、180°引き剥がし試験を100mm/minの速度で行うことにより、その密着強度を測定する。引き剥がし変位の30mmから70mmまでの40mmの区間における荷重(N)の平均値を密着強度とする。半田密着強度試験における測定結果の一例を図に示す。
表1に示すところから、発明例1〜22では、最終冷間圧延で所定の直径のワークロールを用いて最終パスを所定の圧下率としたことから、圧延平行方向の最大高さ粗さRzが0.1〜1.0μmとなり、その結果として、良好なはんだ濡れ広がり及びはんだ密着性となった。
一方、比較例1では、最終パスの圧下率が小さいことに起因して、圧延平行方向の最大高さ粗さRzが大きくなり、はんだ濡れ性が悪かった。比較例2では、圧下率が大きかったことにより、圧延平行方向の最大高さ粗さRzが小さくなって、はんだ密着性が低下した。
比較例3では、最終冷間圧延で用いたワークロールの直径が小さかったことから、圧延平行方向の最大高さ粗さRzが小さく、はんだ密着性が悪かった。比較例4では、ワークロール直径が大きすぎたことにより、圧延平行方向の最大高さ粗さRzが大きく、はんだ濡れ性が低下した。
比較例5では、Ti含有量が少なかったので、引張強度が小さくなった。
比較例6、7では、Ti又は副成分の含有量が多かったことにより、圧延で割れが生じて、試作品を作製することができなかった。
以上より、この発明によれば、箔厚が0.1μm以下と薄いチタン銅箔で、はんだ濡れ性およびはんだ密着強度を向上できることが解かった。
1 オートフォーカスカメラモジュール
2 ヨーク
3 レンズ
4 マグネット
5 キャリア
6 コイル
7 ベース
8 フレーム
9a 上側のばね部材
9b 下側のばね部材
10a、10b キャップ

Claims (7)

  1. 箔厚が0.1mm以下であり、Tiを1.5〜4.5質量%で含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での表面の最大高さ粗さRzが0.1μm〜1μmであるチタン銅箔。
  2. 引張強度が1100MPa以上である請求項1に記載のチタン銅箔。
  3. Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、CrおよびZrのうちの一種以上を総量で0〜1.0質量%含有する請求項1又は2に記載のチタン銅箔。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のチタン銅箔を備えた伸銅品。
  5. 請求項1〜3の何れか一項に記載のチタン銅箔を備えた電子機器部品。
  6. 電子機器部品がオートフォーカスカメラモジュールである請求項5に記載の電子機器部品。
  7. レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢するばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備え、前記ばね部材が請求項1〜3の何れか一項に記載のチタン銅箔であるオートフォーカスカメラモジュール。
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