JP2019031740A - めっき層を有するチタン銅箔 - Google Patents
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Abstract
【課題】半田との密着性に優れ、高温多湿環境、酸液又はアルカリ液に対する耐変色性が高く、更にはエッチング加工性にも優れたチタン銅箔を提供する。
【解決手段】チタン銅箔であって、母材が1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、母材の厚みが0.018〜0.1mmであり、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有し、明細書中の定義に従う半田密着強度試験における密着強度が1N以上であるチタン銅箔。
【選択図】なし
【解決手段】チタン銅箔であって、母材が1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、母材の厚みが0.018〜0.1mmであり、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有し、明細書中の定義に従う半田密着強度試験における密着強度が1N以上であるチタン銅箔。
【選択図】なし
Description
本発明はめっき層を有するチタン銅箔に関する。とりわけ、本発明はオートフォーカスカメラモジュール(AFM)用の導電性ばね材として好適なチタン銅箔に関する。
携帯電話のカメラレンズ部にはオートフォーカスカメラモジュール(AFM)と呼ばれる電子部品が使用される。携帯電話のカメラのオートフォーカス機能は、AFMに使用される材料のばね力でレンズを一定方向に動かす一方、周囲に巻かれたコイルに電流を流すことで発生する電磁力によりレンズを材料のばね力が働く方向とは反対方向へ動かす。このような機構でカメラレンズが駆動しオートフォーカス機能が発揮される(例えば、特許文献1、2)。
したがって、AFMに使用される銅合金箔には、電磁力による材料変形に耐え得るほどの強度が必要になる。強度が低いと、電磁力による変位に材料が耐えることができず、永久変形(へたり)が発生する。へたりが生じると、一定の電流を流したとき、レンズが所望の位置に移動できずオートフォーカス機能が発揮されない。
AFM用のばね材には従来、箔厚0.1mm以下で、1100MPa以上の引張強さを有するCu−Ni−Sn系銅合金箔が使用されてきた。しかし、近年のコストダウン要求により、Cu−Ni−Sn系銅合金より比較的材料価格が安いチタン銅箔が使用されるようになり、その需要は増加しつつある。
このような背景の下、AFM用のばね材として好適なチタン銅が種々提案されている。例えば特許文献3においては、チタン銅箔の0.2%耐力と耐へたり性を向上するために、1.5〜5.0質量%Tiを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での0.2%耐力が1100MPa以上であり、且つ、圧延面においてX線回折を用いて測定した(220)面の積分強度I(220)と(311)面の積分強度I(311)に対し、I(220)/I(311)≧15なる関係を満足するチタン銅箔を提案している。また、特許文献4では、耐へたり性を向上することを目的として、1.5〜5.0質量%Tiを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な方向での0.2%耐力が1100MPa以上であり、且つ、圧延方向に直角な方向での算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であるチタン銅箔を提案している。
一方、チタン銅箔からAFM用のばね材を製造する過程では、チタン銅箔をエッチングにより形状加工する方法が採用されている。また、チタン銅箔からなるばね材の用途によっては、変色防止等の目的でめっき加工が施される他、半田付け、樹脂との貼り合わせ、樹脂による封止をする場合もある。AFM用にあっても得られたばね材は、半田を介してコイルに接合される。しかしながら、従来のAFM用チタン銅箔の開発は強度向上や耐へたり性の向上を目的としたものが主流であり、これらのエッチング加工、めっき加工及び半田との接合を実施する際の考慮が不足していた。
エッチング加工においては、所望の形状に精度良く成形するためにエッチング加工性が優れていることがチタン銅箔に対する基本的な要求性能として挙げられる。
また、エッチング加工又はめっき加工では、酸液又はアルカリ液にて被処理材を処理する工程を含む。めっき加工においては更にめっき液にて処理する工程を含む。そのような各種の処理液を用いる工程では、処理液を除去するため水洗と乾燥が行われる。板・条の伸銅品で厚みの厚いものは、処理液の水洗と乾燥は容易に行うことができ、ロール式又はブロワ式といった方法により除去される。一方、部品の形状が微細でかつ厚みが薄いと、処理液や水洗水に含まれる水分の除去を十分に行うことが難しくなる。水分が残存すると、水分中に不可避的に残留する処理液成分が被処理材と反応して化合物を形成し、水が蒸発した後に残渣として表面に付着する。特にチタン銅の場合は活性元素であるTiを含有するため、処理液成分と反応して複雑な化合物が生成し、残渣を生じやすい傾向がある。残渣があると、部品等の形状にエッチング加工したあと変色が生じやすくなり(変色があると製品の外観検査で異常と判断されて歩留まりが低下する。)、また、半田や樹脂等の部材との接着において接合強度が低下するという問題も生じやすい。
フォトリソグラフィーを使ったエッチング加工においては、部品形状に対応した形状のレジスト膜を被エッチング材の表面に作製する。このレジスト膜は所定の強度で被エッチング材に接着していることが必要で、強度が不足するとエッチング時に剥離する。また、エッチング中にレジストが剥離した場合、均一にエッチングすることが出来ず、目標の寸法・形状が得られ難い。そこで、接合強度を高めるためエッチング前に整面処理を行う場合がある。整面処理は、酸により表層を腐食し表面を粗くする処理であり、レジスト膜の接合強度を高める効果がある。また、めっき加工においても表面の汚染物及び酸化膜を除去し新生面を露出するため、めっき前処理において酸により表層を腐食する場合がある。しかしながら、このような整面処理やめっき前処理をチタン銅の表面に直接行うと、エッチング加工後に表面残渣が生じて、逆に部材との接合強度が低下するおそれがある。また、半田付け、樹脂との貼り合わせ、樹脂による封止等の他の部材との接合においては、良好な密着強度が求められる。
上記事情に鑑み、本発明は半田との密着性に優れ、高温多湿環境、酸液又はアルカリ液に対する耐変色性が高く、更にはエッチング加工性にも優れたチタン銅箔を提供することを課題とする。
本発明者は当初、チタン銅の表面を保護するために、酸化されにくい元素であるNiでチタン銅の表面をめっきすることを検討した。これにより、表面酸化が抑制され、酸液やアルカリ液に対する耐性を高めることが可能であることは確認出来たが、逆にエッチング加工性が悪化してしまい、AFM用ばね材としては好適に使用できないことが分かった。そこで、本発明者は更に検討を重ねたところ、母材表面の光沢度を制御しつつ、Cu下地めっき層、Snめっき層の順番にチタン銅箔の表面に形成することで、酸液やアルカリ液に対する耐性を高められるとともに、エッチング加工性も確保することが可能であることを見出した。
本発明は上記知見に基づいて完成したものであり、一側面において、チタン銅箔であって、母材が1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、母材の厚みが0.018〜0.1mmであり、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有し、明細書中の定義に従う半田密着強度試験における密着強度が1N以上であるチタン銅箔である。
本発明に係るチタン銅箔の一実施形態においては、前記Cu下地めっき層の厚みが0.01〜2.0μmである。
本発明に係るチタン銅箔の別の一実施形態においては、前記Snめっき層の厚みが0.01〜2.0μmである。
本発明に係るチタン銅箔の更に別の一実施形態においては、母材が更に、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上の元素を総量で0〜1.0質量%含有する。
本発明に係るチタン銅箔の更に別の一実施形態においては、圧延方向に平行な方向での引張強さが1100MPa以上である。
本発明に係るチタン銅箔の更に別の一実施形態においては、前記密着強度が20N以上である。
本発明に係るチタン銅箔の更に別の一実施形態においては、温度85℃で100時間加熱後の前記密着強度の加熱前に対する低下率が5%未満である。
本発明に係るチタン銅箔の更に別の一実施形態においては、チタン銅箔はエッチング加工に用いられる。
本発明は別の一側面において、本発明に係るチタン銅箔を備えた電子部品である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係るチタン銅箔と半田の接合体であって、チタン銅箔のめっき層表面に半田との接合部位を有する接合体である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係るチタン銅箔をエッチングにより形状加工する工程と、得られたチタン銅箔の形状加工品を前記めっき層を有する箇所において半田付けにより導電性部材と接合する工程とを含むチタン銅箔と導電性部材の接続方法である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係るチタン銅箔をばね材として備えたオートフォーカスモジュールである。
本発明は更に別の一側面において、レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢する本発明に係るチタン銅箔を材料としたばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備えたオートフォーカスカメラモジュールであって、前記電磁駆動手段はコイルを備えており、ばね部材は前記めっき層を有する箇所において半田付けによりコイルと接合されているオートフォーカスカメラモジュールである。
本発明は更に別の一側面において、1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、厚みが0.018〜0.1mmであり、表面の光沢度が100〜200である母材を準備する工程と、
母材の表面にCu下地めっき層及びSnめっき層を順に積層する工程と、
を含むチタン銅箔の製造方法である。
母材の表面にCu下地めっき層及びSnめっき層を順に積層する工程と、
を含むチタン銅箔の製造方法である。
本発明に係るチタン銅箔の製造方法は一実施形態において、前記Cu下地めっき層の厚みが0.01〜2.0μmである。
本発明に係るチタン銅箔の製造方法は別の一実施形態において、前記Snめっき層の厚みが0.01〜2.0μmである。
本発明に係るチタン銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、母材が更に、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上の元素を総量で0〜1.0質量%含有する。
本発明に係るチタン銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、表面の光沢度が100〜200である母材表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下である。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、エッチング加工やめっき加工後に表面残渣が生じにくい。これによってチタン銅箔の変色が防止され、部材との接着強度の低下も抑制することが可能となる。また、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔はエッチング加工やめっき加工後の表面残渣を抑制するという特性を有しながら、エッチング加工性にも優れているという特性を有する。このため、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は強度、耐変色性、エッチング性及び半田付け性を兼備することが要求されるAFM用のばね材としても好適に利用可能である。
(1)Ti濃度
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔においては、1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有するチタン銅を母材として使用することができる。不可避的不純物とは、おおむね、金属製品において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、金属製品の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物とすることができる。また、不可避的不純物の総量は一般的には50質量ppm以下であり、典型的には30質量ppm以下であり、より典型的には10質量ppm以下である。チタン銅は、溶体化処理によりCuマトリックス中へTiを固溶させ、時効処理により微細な析出物を合金中に分散させることにより、強度及び導電率を上昇させることが可能である。Ti濃度が1.5質量%未満になると、析出物の析出が不充分となり所望の強度が得られない。Ti濃度が5.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなる。強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましいTi濃度は2.9〜3.5質量%である。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔においては、1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有するチタン銅を母材として使用することができる。不可避的不純物とは、おおむね、金属製品において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、金属製品の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物とすることができる。また、不可避的不純物の総量は一般的には50質量ppm以下であり、典型的には30質量ppm以下であり、より典型的には10質量ppm以下である。チタン銅は、溶体化処理によりCuマトリックス中へTiを固溶させ、時効処理により微細な析出物を合金中に分散させることにより、強度及び導電率を上昇させることが可能である。Ti濃度が1.5質量%未満になると、析出物の析出が不充分となり所望の強度が得られない。Ti濃度が5.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなる。強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましいTi濃度は2.9〜3.5質量%である。
(2)その他の添加元素
また、母材に対して、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrのうち1種以上を総量で0〜1.0質量%含有させることにより、強度を更に向上させることができる。これら元素の合計含有量が0、つまり、これら元素を含まなくても良い。これら元素の合計含有量の上限を1.0質量%としたのは、1.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなるからである。強度及び加工性のバランスを考慮すると、上記元素の1種以上を総量で0.005〜0.5質量%含有させることが好ましい。
また、母材に対して、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrのうち1種以上を総量で0〜1.0質量%含有させることにより、強度を更に向上させることができる。これら元素の合計含有量が0、つまり、これら元素を含まなくても良い。これら元素の合計含有量の上限を1.0質量%としたのは、1.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなるからである。強度及び加工性のバランスを考慮すると、上記元素の1種以上を総量で0.005〜0.5質量%含有させることが好ましい。
また、Agの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.1質量%以下である。Bの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.05質量%以下である。Coの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.1質量%以下である。Feの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.25質量%以下である。Mgの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.1質量%以下である。Mnの好ましい添加量は0.1質量%以下であり、より好ましい添加量は0.05質量%以下である。Moの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.3質量%以下である。Niの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.1質量%以下である。Pの好ましい添加量は0.1質量%以下であり、より好ましい添加量は0.05質量%以下である。Siの好ましい添加量は0.1質量%以下であり、より好ましい添加量は0.05質量%以下である。Crの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.4質量%以下である。Zrの好ましい添加量は0.5質量%以下であり、より好ましい添加量は0.1質量%以下である。ただし、上記の添加量に限定されない。
(3)引張強さ
オートフォーカスカメラモジュールの導電性ばね材として好適なチタン銅に必要な引張強さは1100MPa以上であるところ、本発明に係るチタン銅においては、圧延方向に平行な方向での引張強さが1100MPa以上を達成することができる。本発明に係るチタン銅の引張強さは好ましい実施形態において1200MPa以上であり、更に好ましい実施形態において1300MPa以上である。
オートフォーカスカメラモジュールの導電性ばね材として好適なチタン銅に必要な引張強さは1100MPa以上であるところ、本発明に係るチタン銅においては、圧延方向に平行な方向での引張強さが1100MPa以上を達成することができる。本発明に係るチタン銅の引張強さは好ましい実施形態において1200MPa以上であり、更に好ましい実施形態において1300MPa以上である。
引張強さの上限値は、本発明が目的とする強度の点からは特に規制されないが、手間及び費用がかかるため、本発明に係るチタン銅の引張強さは一般には2000MPa以下であり、典型的には1600MPa以下である。
本発明においては、チタン銅の圧延方向に平行な方向での引張強さは、JIS Z2241−2011(金属材料引張試験方法)に準拠して測定する。
(4)チタン銅の形態
本発明に係るめっき層を有するチタン銅の母材は、厚みが0.018〜0.1mmの箔の形態として提供される。母材の厚みを0.018μm以上とすることで、ばね材として必要な強度を確保することができる。母材の厚みは好ましくは0.03mm以上である。また、母材の厚みを0.1μm以下とすることで、チタン銅箔を用いてばね材等の電子部品を形成するときに電子部品の小型化に寄与する。母材の厚みは好ましくは0.08mm以下であり、より好ましくは0.06mm以下である。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅の母材は、厚みが0.018〜0.1mmの箔の形態として提供される。母材の厚みを0.018μm以上とすることで、ばね材として必要な強度を確保することができる。母材の厚みは好ましくは0.03mm以上である。また、母材の厚みを0.1μm以下とすることで、チタン銅箔を用いてばね材等の電子部品を形成するときに電子部品の小型化に寄与する。母材の厚みは好ましくは0.08mm以下であり、より好ましくは0.06mm以下である。
(5)めっき層
本発明に係るめっき層を有するチタン銅は、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有することが特徴の一つである。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、Cu下地めっき層及びSnめっき層を順に積層することで、酸液やアルカリ液に対する耐性が高くなり、エッチング加工やめっき加工後に表面残渣が生じにくくなると考えられる。これによってチタン銅箔の変色が防止され、半田や樹脂等の部材との接着強度の低下も抑制される。また、Cuめっき層及びSnめっき層はエッチング加工性にも優れていることから、ばね材等の微細な電子部品を製造する場合も高い寸法精度を確保可能である。Snめっき層はリフローSnめっき層とすることも可能である。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅は、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有することが特徴の一つである。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、Cu下地めっき層及びSnめっき層を順に積層することで、酸液やアルカリ液に対する耐性が高くなり、エッチング加工やめっき加工後に表面残渣が生じにくくなると考えられる。これによってチタン銅箔の変色が防止され、半田や樹脂等の部材との接着強度の低下も抑制される。また、Cuめっき層及びSnめっき層はエッチング加工性にも優れていることから、ばね材等の微細な電子部品を製造する場合も高い寸法精度を確保可能である。Snめっき層はリフローSnめっき層とすることも可能である。
めっき層は母材である箔表面の一部又は全部に形成されていてもよい。また、母材である箔の主表面の一方又は両方の面にめっき層を形成してもよい。めっき層は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき等により得ることができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
めっき層は、後述する半田密着強度試験をした際の半田密着強度が1N以上であることが好ましく、2N以上であることがより好ましい。半田密着強度が1N未満であるめっき層を有するチタン銅箔は、化学的性質が劣りエッチング加工、めっき加工、樹脂貼り付け、及び樹脂封止等において不具合が生じやすい。すなわち、各種の表面処理をした際に変色が生じたり、あるいは他の部材とチタン銅箔との接合をした際に欠陥が生じたりする。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、Cu下地めっき、Snめっきの順にめっき層を形成した後、所望の形状に加工可能である。例えば、オートフォーカスモジュール用のばね材として本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔を使用する場合、当該チタン銅箔をエッチングによって回路部分やばね部分を形成するなどして所望の形状に加工することが可能である。エッチングによる形状加工自体は公知の手法により行えばよいが、例えばエッチング後に残したい箇所の母材表面をエッチングレジストで保護した後、ドライエッチング又はウェットエッチングを行って形状加工を行い、その後にレジストを除去する方法が挙げられる。
Cu下地めっき層の厚みは本発明が意図する効果を効果的に発現するという観点から、0.01〜2.0μmであることが望ましい。半田との密着強度を重視するという観点からはCu下地めっき層の厚みは大きい方がよく、具体的には0.1〜2.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmがより好ましい。一方で、Cu下地めっき層の厚みを大きくすると経済性(コスト)を悪化させる。また、本発明に係るめっき構造を採用すればめっきの厚みが小さくても半田との密着強度を実用性の高いレベルまで引き上げることが可能である。そのため、めっきのコストを重視するという観点からはCu下地めっき層の厚みは0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.01〜0.1μmであることがより好ましい。更に、半田との密着強度及びめっきのコストをバランスさせるという観点からは、Cu下地めっき層の厚みは0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
Snめっき層の厚みは本発明が意図する効果を効果的に発現するという観点から、0.01〜2.0μmであることが望ましい。半田との密着強度を重視するという観点からはSnめっき層の厚みは大きい方がよく、具体的には0.1〜2.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmがより好ましい。一方で、Snめっき層の厚みを大きくすると経済性(コスト)を悪化させる。また、本発明に係るめっき構造を採用すればめっきの厚みが小さくても半田との密着強度を実用性の高いレベルまで引き上げることが可能である。そのため、めっきのコストを重視するという観点からはSnめっき層の厚みは0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.01〜0.1μmであることがより好ましい。更に、半田との密着強度及びめっきのコストをバランスさせるという観点からは、Snめっき層の厚みは0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。また、コスト、歩留り等の観点から、事業者は任意のめっき厚みを選定することができる。
本発明においては、めっき層の厚みはJIS H8501−1999の蛍光X線式試験方法に準拠して測定する。実施例では、(株)日立ハイテクサイエンス製の蛍光X線膜厚計(SFT9250)を用いて測定した。
(6)半田密着性
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、優れた半田密着性を有することができる。好ましい実施形態において、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、下記の半田密着強度試験における平均密着強度を1N以上とすることができ、好ましくは2N以上とすることができ、より好ましくは5N以上とすることができ、更により好ましくは10N以上とすることができ、更により好ましくは15N以上とすることができ、更により好ましくは20N以上とすることができ、更により好ましくは25N以上とすることができ、更により好ましくは30N以上とすることができ、例えば1〜40N以上とすることができる。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、優れた半田密着性を有することができる。好ましい実施形態において、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、下記の半田密着強度試験における平均密着強度を1N以上とすることができ、好ましくは2N以上とすることができ、より好ましくは5N以上とすることができ、更により好ましくは10N以上とすることができ、更により好ましくは15N以上とすることができ、更により好ましくは20N以上とすることができ、更により好ましくは25N以上とすることができ、更により好ましくは30N以上とすることができ、例えば1〜40N以上とすることができる。
また、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は耐熱性に優れており、一実施形態において、85℃で100時間加熱後の半田密着強度の低下を5%未満に抑えることが可能である。
半田密着強度試験の手順を説明する。めっき層を有するチタン銅箔及び純銅箔(JIS H3100−2012に規定する合金番号C1100、箔厚0.02mm〜0.05mm)を鉛フリー半田(Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu)を介して接合する。チタン銅箔は幅15mm、長さ200mmの短冊状とし、純銅箔は幅20mm、長さ200mmの短冊状とし、長さ方向に対して中央部30mm×15mmの面積に鉛フリー半田(直径0.4±0.02mm、長さ120±1mm)を上記の面積内に収まるように配置した上で、接合温度を245℃±5℃として接合する。接合後、180°引き剥がし試験を100mm/minの速度で行うことにより、その密着強度を測定する。引き剥がし変位の30mmから70mmまでの40mmの区間における荷重(N)の平均値を密着強度とする。半田密着強度試験における測定結果の一例を図4に示す。
(7)用途
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、限定的ではないが、スイッチ、コネクタ(特に、過酷な曲げ加工性を必要としないフォーク型のFPCコネクタ)、オートフォーカスカメラモジュール、ジャック、端子、リレー等の電子部品の材料として好適に使用することができる。また、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔と絶縁基板をめっき層が露出するように貼り合わせて銅張積層板を形成し、エッチング工程を経て配線を形成することでプリント配線板とし、プリント配線板の金属配線上に各種の電子部品が半田付けにより搭載されることにより、プリント回路板を製造することもできる。
本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔は、限定的ではないが、スイッチ、コネクタ(特に、過酷な曲げ加工性を必要としないフォーク型のFPCコネクタ)、オートフォーカスカメラモジュール、ジャック、端子、リレー等の電子部品の材料として好適に使用することができる。また、本発明に係るめっき層を有するチタン銅箔と絶縁基板をめっき層が露出するように貼り合わせて銅張積層板を形成し、エッチング工程を経て配線を形成することでプリント配線板とし、プリント配線板の金属配線上に各種の電子部品が半田付けにより搭載されることにより、プリント回路板を製造することもできる。
とりわけ、本発明に係るめっき層を有するチタン銅はオートフォーカスモジュール用のばね材として好適に使用できる。そのため、本発明は一側面において、本発明に係るチタン銅をばね材として備えたオートフォーカスモジュールである。典型的なオートフォーカスモジュールにおいては、レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢する本発明に係るめっき層を有するチタン銅製のばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備える。前記電磁駆動手段は例示的には、コの字形円筒形状のヨークと、ヨークの内周壁の内側に収容されるコイルと、コイルを囲繞すると共にヨークの外周壁の内側に収容されるマグネットを備えることができる。ばね部材は前記めっき層を有する箇所において半田付けによりコイル(典型的にはコイルのリード線)と接合することができる。
図1は、本発明に係るオートフォーカスカメラモジュールの一例を示す断面図であり、図2は、図1のオートフォーカスカメラモジュールの分解斜視図であり、図3は、図1のオートフォーカスカメラモジュールの動作を示す断面図である。
オートフォーカスカメラモジュール1は、コの字形円筒形状のヨーク2と、ヨーク2の外壁に取付けられるマグネット4と、中央位置にレンズ3を備えるキャリア5と、キャリア5に装着されるコイル6と、ヨーク2が装着されるベース7と、ベース7を支えるフレーム8と、キャリア5を上下で支持する2個のばね部材9a、9bと、これらの上下を覆う2個のキャップ10a、10bとを備えている。2個のばね部材9a、9bは同一品であり、同一の位置関係でキャリア5を上下から挟んで支持すると共に、コイル6への給電経路として機能している。コイル6に電流を印加することによってキャリア5は上方に移動する。尚、本明細書においては、上及び下の文言を適宜、使用するが、図1における上下を指し、上はカメラから被写体に向う位置関係を表わす。
ヨーク2は軟鉄等の磁性体であり、上面部が閉じたコの字形の円筒形状を成し、円筒状の内壁2aと外壁2bを持つ。コの字形の外壁2bの内面には、リング状のマグネット4が装着(接着)される。
キャリア5は底面部を持った円筒形状構造の合成樹脂等による成形品であり、中央位置でレンズを支持し、底面外側上に予め成形されたコイル6が接着されて搭載される。矩形状樹脂成形品のベース7の内周部にヨーク2を嵌合させて組込み、更に樹脂成形品のフレーム8でヨーク2全体を固定する。
ばね部材9a、9bは、いずれも最外周部がそれぞれフレーム8とベース7に挟まれて固定され、内周部120°毎の切欠き溝部がキャリア5に嵌合し、熱カシメ等にて固定される。
ばね部材9bとベース7及びばね部材9aとフレーム8間は接着及び熱カシメ等にて固定され更に、キャップ10bはベース7の底面に取付け、キャップ10aはフレーム8の上部に取付けられ、それぞればね部材9bをベース7とキャップ10b間に、ばね部材9aをフレーム8とキャップ10a間に挟み込み固着している。
コイル6の一方のリード線は、キャリア5の内周面に設けた溝内を通って上に伸ばし、ばね部材9aに半田付けする。他方のリード線はキャリア5底面に設けた溝内を通って下方に伸ばし、ばね部材9bに半田付けする。
ばね部材9a、9bは、本発明に係るチタン銅箔の板ばねである。ばね性を持ち、レンズ3を光軸方向の初期位置に弾性付勢する。同時に、コイル6への給電経路としても作用する。ばね部材9a、9bの外周部の一箇所は外側に突出させて、給電端子として機能させている。
円筒状のマグネット4はラジアル(径)方向に磁化されており、コの字形状ヨーク2の内壁2a、上面部及び外壁2bを経路とした磁路を形成し、マグネット4と内壁2a間のギャップには、コイル6が配置される。
ばね部材9a、9bは同一形状であり、図1及び2に示すように同一の位置関係で取付けているので、キャリア5が上方へ移動したときの軸ズレを抑制することができる。コイル6は、巻線後に加圧成形して製作するので、仕上がり外径の精度が向上し、所定の狭いギャップに容易に配置することができる。キャリア5は、最下位置でベース7に突当り、最上位置でヨーク2に突当るので、上下方向に突当て機構を備えることとなり、脱落することを防いでいる。
図3は、コイル6に電流を印加して、オートフォーカス用にレンズ3を備えたキャリア5を上方に移動させた時の断面図を示している。ばね部材9a、9bの給電端子に電源が印加されると、コイル6に電流が流れてキャリア5には上方への電磁力が働く。一方、キャリア5には、連結された2個のばね部材9a、9bの復元力が下方に働く。従って、キャリア5の上方への移動距離は電磁力と復元力が釣合った位置となる。これによって、コイル6に印加する電流量によって、キャリア5の移動量を決定することができる。
上側ばね部材9aはキャリア5の上面を支持し、下側ばね部材9bはキャリア5の下面を支持しているので、復元力はキャリア5の上面及び下面で均等に下方に働くこととなり、レンズ3の軸ズレを小さく抑えることができる。
従って、キャリア5の上方への移動にあたって、リブ等によるガイドは必要なく、使っていない。ガイドによる摺動摩擦がないので、キャリア5の移動量は、純粋に電磁力と復元力の釣合いで支配されることとなり、円滑で精度良いレンズ3の移動を実現している。これによってレンズブレの少ないオートフォーカスを達成している。
なお、マグネット4は円筒形状として説明したが、これに拘わるものでなく、3乃至4分割してラジアル方向に磁化し、これをヨーク2の外壁2bの内面に貼付けて固着しても良い。
(8)製造方法
本発明に係るチタン銅の母材の製造方法の一例について説明する。まず、溶解及び鋳造によりインゴットを製造する。溶解及び鋳造は、チタンの酸化磨耗を防止するため、基本的に真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。溶解において添加元素の溶け残りがあると、強度の向上に対して有効に作用しない。よって、溶け残りをなくすため、FeやCr等の高融点の第三元素は、添加してから十分に攪拌したうえで、一定時間保持する必要がある。一方、TiはCu中に比較的溶け易いので第三元素の溶解後に添加すればよい。従って、Cuに、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上を添加し、次いでTiを所定量添加してインゴットを製造することが望ましい。
本発明に係るチタン銅の母材の製造方法の一例について説明する。まず、溶解及び鋳造によりインゴットを製造する。溶解及び鋳造は、チタンの酸化磨耗を防止するため、基本的に真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。溶解において添加元素の溶け残りがあると、強度の向上に対して有効に作用しない。よって、溶け残りをなくすため、FeやCr等の高融点の第三元素は、添加してから十分に攪拌したうえで、一定時間保持する必要がある。一方、TiはCu中に比較的溶け易いので第三元素の溶解後に添加すればよい。従って、Cuに、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上を添加し、次いでTiを所定量添加してインゴットを製造することが望ましい。
その後、熱間圧延、冷間圧延1、溶体化処理、冷間圧延2、時効処理をこの順で実施し、所望の厚み及び特性を有する銅合金に仕上げることができる。高強度を得るために、時効処理の後に冷間圧延3を行ってもよい。熱間圧延及びその後の冷間圧延1の条件はチタン銅の製造で行われている慣例的な条件で行えば足り、特段要求される条件はない。また、溶体化処理についても慣例的な条件で構わないが、例えば700〜1000℃で5秒間〜30分間の条件で行うことができる。
高強度を得るためには、冷間圧延2の圧下率を55%以上に規定するのが好ましい。より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上である。圧下率の上限は、本発明が目的とする強度の点からは特に規定されないが、工業的に99.8%を超えることはない。
時効処理の加熱温度は200〜450℃、加熱時間は2〜20時間とするのが好ましい。加熱温度が200℃未満又は450℃を超えると高強度を得られにくくなる。加熱時間が2時間未満又は20時間を越えた場合も高強度が得られにくくなる。
冷間圧延3を実施する場合の圧下率は35%以上に規定するのが好ましい。より好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上である。この圧下率が35%未満になると、高強度が得られにくくなる。圧下率の上限は、強度の点からは特に規定されないが、工業的に99.8%を超えることはない。
なお、当業者であれば、上記各工程の合間に適宜、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗等の工程を行なうことができることは理解できるだろう。
製品の厚みに仕上げる冷間圧延工程(冷間圧延2が当該工程に相当し、冷間圧延3を実施する場合は冷間圧延3が当該工程に相当する。)においては、その後のめっき工程でめっき密着強度が1N以上になるようにするため表面の微小凹凸を調整する。表面の微小凹凸が大きいと、アンカー効果の発現あるいは密着面積の増加によりめっき密着強度は高いものになる。すなわち、冷間圧延においてオイルピットを適正に生成させることにより表面に微小凹凸を付与し、高いめっき密着強度を得る。この表面の微小凹凸は、表面粗さRa等によっては表示できないほどに微細なものであって、光沢度によって表示することができる。本発明に係る光沢度は、JIS Z8741−1997に準拠した圧延方向の入射角60度で測定したときの鏡面光沢度として定義される。
光沢度が低いものは微小凹凸が大きく、光沢度が高いものは微小凹凸が小さい。後述する実施例において記載する半田付け試験をした際の半田密着強度を1N以上になるようにするためには、チタン銅箔の場合は光沢度がたとえば100〜200であることが好ましく、半田との密着強度の面からは100〜170が望ましく、100〜130であることがより好ましい。製品の厚みに仕上げる冷間圧延工程においては、光沢度が100〜200になるようにパススケジュールを設計する。パススケジュールとは、1回の圧延パスにおける加工度、圧延油の粘度や温度、圧延速度、圧延張力、圧延ロールの材質、または、圧延ロールの直径等の事項である。光沢度が100〜200になるようにするためには、たとえば、引張強さが1200MPaであるチタン銅箔の場合は製品の厚みに仕上げる冷間圧延の最終パスにおける圧延速度を50m/分以上とする。圧延速度が高いと、圧延ロールとチタン銅箔との間への圧延油の流入が促進されオイルピットが生成しやすくなる。圧延速度が50m/分未満であると圧延油の流入が不十分なため健全なオイルピットが生成しない。その結果、光沢度が200を超え、表面の微小凹凸が小さいためめっき密着強度は2N未満となる。なお、光沢度が100未満であっても密着強度に対して悪影響はないが、100未満の光沢度を得るためには更に圧延速度を高くする必要がある。圧延速度が高い場合、ロールの熱膨張により、均一な形状が得られにくく、製造性を悪化させやすい。このため、光沢度は100以上に設定するのが好ましい。
なお、製品の厚みに仕上げる冷間圧延工程を実施した後、めっき工程前におけるチタン銅箔表面の圧延方向に平行な方向の算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準拠して測定することとする。チタン銅箔のような薄い材料の場合、表面粗さが大きくなると、局部的に板厚の厚い部分または薄い部分が生じるため、ばねとしての性能が得られにくくなる。したがって、均一なばね性を得るという観点からチタン銅箔表面のRaは0.5μm以下に調整することが好ましく、0.1μm以下とすることがより好ましく、例えば0.01〜0.5μmとすることができ、典型的には0.02〜0.2μmとすることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をより良く理解するために提示するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
各サンプルの母材は、表1に記載の所定の合金成分を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、表1に記載の合金組成が得られるよう合金元素を添加した。この溶湯を鋳鉄製の鋳型に鋳込み、厚さ30mm、幅60mm、長さ120mmのインゴットを製造した。このインゴットを熱間圧延した後、次の工程順で加工し、0.03mmの箔厚をもつチタン銅箔を作製した。
(1)熱間圧延:インゴットを950℃で3時間加熱し、厚さ10mmまで圧延した。
(2)研削:熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削後の厚みは9mmであった。
(3)冷間圧延1:最終の箔厚が得られるように、冷間圧延2の圧下率を考慮して圧下率を調整した。
(4)溶体化処理:800℃に昇温した電気炉に材料を装入し、5分間保持した後、試料を水槽に入れて急冷却した。
(5)冷間圧延2:圧下率98%で圧延した。この際、冷間圧延の最終パスにおける圧延速度を表1に記載の速度に調整することで光沢度を変化させた。
(6)時効処理:材料を300℃に加熱して2時間、Ar雰囲気中で加熱した。
(2)研削:熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削後の厚みは9mmであった。
(3)冷間圧延1:最終の箔厚が得られるように、冷間圧延2の圧下率を考慮して圧下率を調整した。
(4)溶体化処理:800℃に昇温した電気炉に材料を装入し、5分間保持した後、試料を水槽に入れて急冷却した。
(5)冷間圧延2:圧下率98%で圧延した。この際、冷間圧延の最終パスにおける圧延速度を表1に記載の速度に調整することで光沢度を変化させた。
(6)時効処理:材料を300℃に加熱して2時間、Ar雰囲気中で加熱した。
得られた各チタン銅箔の表面を脱脂及び酸洗して清浄化した後、表1に記載のめっき種類及び厚みで当該表面にめっき処理を行った。
Cuめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Cuイオン:62g/L
・浴温度:60℃
・電流密度:4.0A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
Snめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Snイオン:29g/L
・浴温度:40℃
・電流密度:1.7A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
また、試験番号によってはSnめっき後、リフローを行った。リフロー条件は一般的に用いられる方法で良く、本件では400℃×100秒の条件で行った。
Niめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Niイオン:20g/L
・pH:3.0
・浴温度:50℃
・電流密度:5A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
なお、実際のめっき層中には不可避的不純物が存在する。めっき厚みは上述した蛍光X線膜厚計により測定した。
Cuめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Cuイオン:62g/L
・浴温度:60℃
・電流密度:4.0A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
Snめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Snイオン:29g/L
・浴温度:40℃
・電流密度:1.7A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
また、試験番号によってはSnめっき後、リフローを行った。リフロー条件は一般的に用いられる方法で良く、本件では400℃×100秒の条件で行った。
Niめっき層は以下の電気めっき条件で形成した。
・Niイオン:20g/L
・pH:3.0
・浴温度:50℃
・電流密度:5A/dm2
・時間:めっき厚さによって調整
なお、実際のめっき層中には不可避的不純物が存在する。めっき厚みは上述した蛍光X線膜厚計により測定した。
<1.表面粗さ>
圧延加工によって得られた各チタン銅箔の表面を脱脂及び酸洗して清浄化した後、JIS B0601−2001に準拠して、当該表面の圧延方向に平行な方向の算術平均粗さRaを(株)小坂研究所製の接触式粗さ計(SE−3400)によって測定した。
圧延加工によって得られた各チタン銅箔の表面を脱脂及び酸洗して清浄化した後、JIS B0601−2001に準拠して、当該表面の圧延方向に平行な方向の算術平均粗さRaを(株)小坂研究所製の接触式粗さ計(SE−3400)によって測定した。
<2.光沢度測定>
特に、圧延によって製造される銅箔の場合は、その表面状態は粗さ(Ra等)だけでなく光沢度で示すことができる。先述のように光沢度はオイルピット量によって変化する数値であり、同じ表面粗さを持つ材料でも光沢度が異なる場合があるため、オイルピットによるアンカー効果への影響を考慮する必要がある。したがって、圧延加工によって得られた各チタン銅箔の表面を脱脂及び酸洗して清浄化した後、JIS Z8741−1997に準拠した日本電色工業(株)製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用し、圧延方向の入射角60度で表面処理前の銅箔の光沢度を求めた。
特に、圧延によって製造される銅箔の場合は、その表面状態は粗さ(Ra等)だけでなく光沢度で示すことができる。先述のように光沢度はオイルピット量によって変化する数値であり、同じ表面粗さを持つ材料でも光沢度が異なる場合があるため、オイルピットによるアンカー効果への影響を考慮する必要がある。したがって、圧延加工によって得られた各チタン銅箔の表面を脱脂及び酸洗して清浄化した後、JIS Z8741−1997に準拠した日本電色工業(株)製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用し、圧延方向の入射角60度で表面処理前の銅箔の光沢度を求めた。
<3.半田密着強度試験>
先述した半田密着強度試験の手順に従って、半田密着強度を測定した。めっき後の各サンプル箔(比較例1はめっき無し)及び純銅箔(C1100、箔厚0.035mm)を千住金属工業(株)製Pbフリー半田(ESC M705、組成:Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu)を介して接合し、アイコーエンジニアリング(株)製の精密荷重測定器(MODEL−1605NL)を用いて180°引き剥がし試験を100mm/minの速度で行うことにより、その平均密着強度を測定した。半田接合後、密着強度の測定を、加熱前と加熱後の両方について行い、加熱条件は温度85℃、100時間とした。加熱後の密着強度については、加熱前の密着強度に対して加熱後の密着強度の低下が5%未満であった場合を○、5%以上であった場合を×と評価した。
先述した半田密着強度試験の手順に従って、半田密着強度を測定した。めっき後の各サンプル箔(比較例1はめっき無し)及び純銅箔(C1100、箔厚0.035mm)を千住金属工業(株)製Pbフリー半田(ESC M705、組成:Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu)を介して接合し、アイコーエンジニアリング(株)製の精密荷重測定器(MODEL−1605NL)を用いて180°引き剥がし試験を100mm/minの速度で行うことにより、その平均密着強度を測定した。半田接合後、密着強度の測定を、加熱前と加熱後の両方について行い、加熱条件は温度85℃、100時間とした。加熱後の密着強度については、加熱前の密着強度に対して加熱後の密着強度の低下が5%未満であった場合を○、5%以上であった場合を×と評価した。
<4.複合環境試験>
各サンプル箔を温度85℃、相対湿度85%の恒温槽内で100時間保持したときの変色度合いを調査した。0.1μmのNiめっき材(比較例2)と比べて同等であった場合を◎、裸材(比較例1)と比較して変色が小さかった場合を○、裸材(比較例1)と比較して変色が同等であったか又は大きかった場合(比較例1を含む)を×で評価した。本試験により、耐変色性が高いという結果が得られた場合、それはサンプル箔表面における残渣発生量(金属間化合物発生量)が少ないことを間接的に示すこととなる。
各サンプル箔を温度85℃、相対湿度85%の恒温槽内で100時間保持したときの変色度合いを調査した。0.1μmのNiめっき材(比較例2)と比べて同等であった場合を◎、裸材(比較例1)と比較して変色が小さかった場合を○、裸材(比較例1)と比較して変色が同等であったか又は大きかった場合(比較例1を含む)を×で評価した。本試験により、耐変色性が高いという結果が得られた場合、それはサンプル箔表面における残渣発生量(金属間化合物発生量)が少ないことを間接的に示すこととなる。
<5.ガス腐食試験>
各サンプル箔を温度40℃、相対湿度50%に保持した(株)山崎精機研究所製のガス腐食試験装置(GH−180)内で3±1ppmの硫化水素ガスを20分間噴霧したときの変色度合いを調査した。変色が生じた場合を×、変色が生じなかった場合を○で評価した。本試験により、耐変色性が高いという結果が得られた場合、それはサンプル箔表面における残渣発生量(金属間化合物発生量)が少ないことを間接的に示すこととなる。
各サンプル箔を温度40℃、相対湿度50%に保持した(株)山崎精機研究所製のガス腐食試験装置(GH−180)内で3±1ppmの硫化水素ガスを20分間噴霧したときの変色度合いを調査した。変色が生じた場合を×、変色が生じなかった場合を○で評価した。本試験により、耐変色性が高いという結果が得られた場合、それはサンプル箔表面における残渣発生量(金属間化合物発生量)が少ないことを間接的に示すこととなる。
<6.エッチング直線性>
37質量%、ボーメ度40°の塩化第二鉄水溶液を用いて、各サンプル箔に対してエッチングを行い、線幅100μm、長さ150mmの直線回路を形成した。走査型電子顕微鏡(日立製、S−4700)を用いて回路を観察し(観察長さ200μm)、最大回路幅と最小回路幅の差が4μm未満であるものを◎、4〜10μmであるものを○、10μmを越えるものを×で評価した。
37質量%、ボーメ度40°の塩化第二鉄水溶液を用いて、各サンプル箔に対してエッチングを行い、線幅100μm、長さ150mmの直線回路を形成した。走査型電子顕微鏡(日立製、S−4700)を用いて回路を観察し(観察長さ200μm)、最大回路幅と最小回路幅の差が4μm未満であるものを◎、4〜10μmであるものを○、10μmを越えるものを×で評価した。
<7.強度試験(引張強さ)>
実施例1のめっき後のサンプル箔について、引張試験機を用いて上述した測定方法に従い圧延方向と平行な方向の引張強さを測定したところ、1415MPaであった。
実施例1のめっき後のサンプル箔について、引張試験機を用いて上述した測定方法に従い圧延方向と平行な方向の引張強さを測定したところ、1415MPaであった。
結果を表1に示す。表1より、Cuめっきを下地としたSnめっきを行うことで、半田との接合強度及び耐変色性を確保しながら、エッチングの直線性を向上できることが分かる。
比較例1はめっきを行っていないため、半田との密着性が悪く、複合環境試験後及びガス腐食試験後に変色が発生した。
チタン銅箔にNiめっきを行った比較例2はチタン銅箔の裸材と比較して半田との密着強度が向上し、複合環境試験及びガス腐食試験後における変色も小さいが、エッチング性が悪化した。
チタン銅箔にCuめっきを施した比較例3は、半田密着強度が裸材と同等でエッチング性も良好であったが、めっき表面に残渣が残ったためにガス腐食試験で変色が生じた。
比較例4及び5は母材の光沢が高すぎたために加熱前及び加熱後の半田密着性が低下した。
チタン銅箔にNiめっきを行った比較例2はチタン銅箔の裸材と比較して半田との密着強度が向上し、複合環境試験及びガス腐食試験後における変色も小さいが、エッチング性が悪化した。
チタン銅箔にCuめっきを施した比較例3は、半田密着強度が裸材と同等でエッチング性も良好であったが、めっき表面に残渣が残ったためにガス腐食試験で変色が生じた。
比較例4及び5は母材の光沢が高すぎたために加熱前及び加熱後の半田密着性が低下した。
1 オートフォーカスカメラモジュール
2 ヨーク
3 レンズ
4 マグネット
5 キャリア
6 コイル
7 ベース
8 フレーム
9a 上側のばね部材
9b 下側のばね部材
10a、10b キャップ
2 ヨーク
3 レンズ
4 マグネット
5 キャリア
6 コイル
7 ベース
8 フレーム
9a 上側のばね部材
9b 下側のばね部材
10a、10b キャップ
Claims (18)
- チタン銅箔であって、母材が1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、母材の厚みが0.018〜0.1mmであり、母材表面にCu下地めっき層及びSnめっき層が順に積層されためっき層を有し、明細書中の手順に従う半田密着強度試験における密着強度が1N以上であるチタン銅箔。
- 前記Cu下地めっき層の厚みが0.01〜2.0μmである請求項1に記載のチタン銅箔。
- 前記Snめっき層の厚みが0.01〜2.0μmである請求項1又は2に記載のチタン銅箔。
- 母材が更に、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上の元素を総量で0〜1.0質量%含有する請求項1〜3の何れか一項に記載のチタン銅箔。
- 圧延方向に平行な方向での引張強さが1100MPa以上である請求項1〜4の何れか一項に記載のチタン銅箔。
- 前記密着強度が20N以上である請求項1〜5の何れか一項に記載のチタン銅箔。
- 温度85℃で100時間加熱後の前記密着強度の加熱前に対する低下率が5%未満である請求項1〜6の何れか一項に記載のチタン銅箔。
- エッチング加工に用いられる請求項1〜7の何れか一項に記載のチタン銅箔。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載のチタン銅箔を備えた電子部品。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載のチタン銅箔と半田の接合体であって、チタン銅箔のめっき層表面に半田との接合部位を有する接合体。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載のチタン銅箔をエッチングにより形状加工する工程と、得られたチタン銅箔の形状加工品を前記めっき層を有する箇所において半田付けにより導電性部材と接合する工程とを含むチタン銅箔と導電性部材の接続方法。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載のチタン銅箔をばね材として備えたオートフォーカスモジュール。
- レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢する請求項1〜8の何れか一項に記載のチタン銅箔を材料としたばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備えたオートフォーカスカメラモジュールであって、前記電磁駆動手段はコイルを備えており、ばね部材は前記めっき層を有する箇所において半田付けによりコイルと接合されているオートフォーカスカメラモジュール。
- 1.5〜5.0質量%のTiを含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有し、厚みが0.018〜0.1mmであり、表面の光沢度(JIS Z8741−1997に準拠した圧延方向の入射角60度で測定したときの鏡面光沢度として定義されるもの。)が100〜200である母材を準備する工程と、
母材の表面にCu下地めっき層及びSnめっき層を順に積層する工程と、
を含むチタン銅箔の製造方法。 - 前記Cu下地めっき層の厚みが0.01〜2.0μmである請求項14に記載のチタン銅箔の製造方法。
- 前記Snめっき層の厚みが0.01〜2.0μmである請求項14又は15に記載のチタン銅箔の製造方法。
- 母材が更に、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上の元素を総量で0〜1.0質量%含有する請求項14〜16の何れか一項に記載のチタン銅箔の製造方法。
- 表面の光沢度(JIS Z8741−1997に準拠した圧延方向の入射角60度で測定したときの鏡面光沢度として定義されるもの。)が100〜200である母材表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下である請求項14〜17の何れか一項に記載のチタン銅箔の製造方法。
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