JP6614091B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の方法では、肩部から直胴部への移行に伴う有転位化の発生を防止するために、その移行時を含む特定の期間内で、引き上げ速度を1.4mm/分以下に設定している。
本発明は、上述のような知見に基づいて完成されたものである。
0.9≦B/A≦1.1 … (1)
本発明によれば、肩部形成から直胴部形成に移行するときの成長速度の変化を無くすことで、シリコン単結晶における欠陥発生を抑制できる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔単結晶引き上げ装置の構成〕
図1に示すように、単結晶引き上げ装置1は、CZ法(チョクラルスキー法)に用いられる装置であって、引き上げ装置本体2と、制御部3とを備えている。
引き上げ装置本体2は、チャンバ21と、このチャンバ21内の中心部に配置された坩堝22と、この坩堝22を加熱する加熱部23と、断熱筒24と、引き上げ部としての引き上げケーブル25と、熱遮蔽体26とを備えている。
チャンバ21内には、制御部3の制御により、チャンバ21上部のガス導入口21Aから、不活性ガスが所定のガス流量で導入される。そして、導入されたガスが、チャンバ21下部のガス排気口21Bから排出されることで、不活性ガスがチャンバ21内の上方から下方に向かって流れる構成となっている。
チャンバ21内の圧力(炉内圧)は、制御部3により制御可能となっている。
加熱部23は、坩堝22の周囲に配置されており、坩堝22内のシリコンを融解する。
断熱筒24は、坩堝22および加熱部23を取り囲むように配置されている。
引き上げケーブル25は、一端が、坩堝22上方に配置された図示しない引き上げ駆動部に接続され、他端に、種結晶SCが取り付けられる。引き上げケーブル25は、制御部3による引き上げ駆動部の制御により、所定の速度で昇降するとともに、当該引き上げケーブル25の軸を中心にして回転する。
熱遮蔽体26は、加熱部23から上方に向かって放射される輻射熱を遮断する。
次に、シリコン単結晶SMの製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、直胴部の設定直径が150mmのシリコン単結晶SMを製造する場合を例示するが、200mm、300mm、450mmなど、他の設定直径のシリコン単結晶SMを製造してもよい。
シリコン単結晶SMの製造方法は、シリコン単結晶SMの育成条件を設定する条件設定工程と、育成条件に基づいて、シリコン単結晶SMを育成する育成工程とを備えている。
条件設定工程は、図2に示すように、ステップS1,S9〜S11の工程を備え、育成工程は、ステップS2〜S8の工程を備えている。
以下、処理の流れに沿って、各工程を説明する。
抵抗率は、ドーパントが砒素の場合、1.2mΩ・cm以上5.0mΩ・cm以下にすることが好ましく、赤リンの場合、0.5mΩ・cm以上2.0mΩ・cm以下にすることが好ましく、アンチモンの場合、10mΩ・cm以上30mΩ・cm以下にすることが好ましい。
肩部SM2を形成するとき、制御部3は、ステップS1で設定された速度で引き上げケーブル25を引き上げる。具体的には、肩部SM2の外周部における引き上げ方向の成長長さ(以下、「外周成長長さ」と言う)と外周成長速度比との関係が、図3の破線で示す関係となるように引き上げケーブル25を引き上げる。
なお、外周成長速度比とは、肩部SM2下端における外周成長速度に対する所定の外周成長長さでの外周成長速度の比(所定の外周成長長さでの外周成長速度/肩部SM2下端における外周成長速度×100)である。この外周成長速度比は、外周成長速度が急変しないように設定されている。また、肩部SM2下端における外周成長速度は、直胴部上端における外周成長速度と同じである。
外周成長速度設定工程では、まず、作業者は、有転位化が発生した育成した肩部SM2を単結晶引き上げ装置1から取り出し、それを図4に示すように肩部SM2の中心軸を通る切断面で切断し、成長縞Lの発生状況を確認する。
例えば、外周成長長さが10mmごとの位置に存在する成長縞Lを特定する。そして、作業者は、この特定した成長縞Lのうち上下に並ぶ成長縞Lの中心の間隔を、中心成長長さHとして求め、例えば外周成長長さと中心成長長さHとを制御部3に入力する。なお、中心成長長さHを求める処理を、制御部3が例えば画像処理で行ってもよい。
内外成長倍率は、外周成長速度(A)に対する中心成長速度(B)の割合(B/A)と同じであり、1より大きい場合、中心成長速度が外周成長速度よりも速いことを表し、1より小さい場合、中心成長速度が外周成長速度よりも遅いことを表す。図5に示す内外成長倍率の関係から、中心成長速度が急変して以下の式(1)を満たさない部分があるときに、この部分で有転位化が発生しやいと考えられる。
0.9≦B/A≦1.1 … (1)
そこで、理論的に中心成長速度と外周成長速度とを同じにするために、制御部3は、図5に一点鎖線で示すような内外成長倍率の逆数を求め、この逆数を図3に破線で示す外周成長速度比に乗じることで、図3に一点鎖線で示す第1の補正外周成長速度比を求める。この第1の補正外周成長速度比は、所定の外周成長長さ(成長位置)と、外周成長速度との関係を表し、外周成長速度が急変しないような値になる。
さらに、制御部3は、肩部の下端における外周成長速度比が、直胴部の上端の外周部における成長速度比と同じになるように、第2の補正外周成長速度比を補正する境界合わせ補正工程を行う(ステップS11)。この境界合わせ補正工程では、肩部SM2下端、すなわち外周成長長さが110mmの位置における第2の補正外周成長速度比が100になるように、全外周成長長さにおける第2の補正外周成長速度比を同じ値だけ大きく、または、小さくすることで、図3に実線で示す第3の補正外周成長速度比を求める。
なお、第1の補正外周成長速度比は外周成長速度が急変しないような値であるため、この第1の補正外周成長速度比に対して近似工程、境界合わせ補正工程を行うことで得られた第2,第3の補正外周成長速度比も、外周成長速度が急変しないような値になる。
上記第3の補正外周成長速度比に基づく外周成長速度で肩部SM2を形成することで、肩部SM2の全ての部分において上記式(1)が満たされ、有転位化の発生が抑制される。
上記実施形態では、第3の補正外周成長速度比に基づいて、上記式(1)を満たすように肩部SM2を育成することで、中心成長速度の急変が抑制され、肩部SM2での有転位化の発生を抑制できる。有転位化は、肩部SM2で発生し易く、直胴部では肩部SM2と比べて発生し難いため、シリコン単結晶SM全体でも発生が抑制される。
上記式(1)は中心成長速度の急変抑制によりシリコン単結晶SM内部からの有転位化を抑制する条件のため、上述のような製造効率の低下を抑制できる。
さらに、肩部SM2下端の外周成長速度比と直胴部上端の外周成長速度比とを同じにした第3の補正外周成長速度比に基づいて、外周成長速度を制御するため、肩部SM2形成から直胴部形成に移行するときの成長速度の変化を無くすことができ、シリコン単結晶SMの欠陥発生を抑制できる。
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能であり、その他、本発明の実施の際の具体的な手順、及び構造などは本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
また、ステップS9〜S11の処理を実験として行い、この実験で得られた第3の補正外周成長速度比をステップS1における初期条件として設定して、シリコン単結晶SMの量産を行ってもよい。
さらに、ステップS10,S11の処理を行わずに、第1の補正外周成長速度比に基づいて、あるいは、ステップS11の処理を行わずに、第2の補正外周成長速度比に基づいて、さらには、ステップS10の処理を行わずに、第1の補正外周成長速度比に対してステップS11の処理を行うことで得られた補正外周成長速度比に基づいて、外周成長速度を制御してもよい。これらいずれの場合も、内外成長倍率の逆数に基づき求められた補正外周成長速度比に基づいて、外周成長速度が制御されるため、肩部SM2の全ての部分において上記式(1)が満たされ、有転位化の発生を抑制されると考えられる。
〔比較例1〕
図1に示すような単結晶引き上げ装置を用い、アンチモンをドーパントとして、直胴部の設定直径が150mm、抵抗率が10mΩ・cm以上20mΩ・cm以下のシリコン単結晶を育成した。
肩部の形成に際し、図6に破線で示す比較例1の外周成長速度比に基づき、急変が抑制された外周成長速度を設定して、引き上げたところ、肩部の形成途中に有転位化が発生した。このため、引き上げを停止して肩部を取り出し、成長縞の発生状況に基づいて比較例1の内外成長倍率を求めた。その結果を図7に破線で示す。
比較例1の内外成長倍率は、B/Aと同じ値であり、その最大値は1.2、最小値は0.8であった。このことから、比較例1では、中心成長速度が急変して上記式(1)を満たさないことが確認できた。
次に、図7の破線で示される比較例1の関係に基づいて、上記実施形態のステップS9と同じ処理で第1の補正外周成長速度比を求めた。次に、この第1の補正外周成長速度比に対してステップS10の処理を行わずに、ステップS11の処理を行い、肩部下端における外周成長速度比が、直胴部上端の外周部における成長速度比と同じになるように、全外周成長長さにおける第1の補正外周成長速度比を同じ値だけ調整して、図6に一点鎖線で示す実施例1の補正外周成長速度比を求めた。
そして、この実施例1の補正外周成長速度比に基づき外周成長速度を設定して肩部を形成したところ、肩部で有転位化が発生しなかった。
実施例1の内外成長倍率は、B/Aと同じ値であり、その最大値は1.1、最小値は0.95であった。このことから、実施例1では、中心成長速度の急変が抑制され、上記式(1)を満たすことが確認できた。また、実施例1の内外成長倍率と実施例1の補正外周成長速度比とを乗じることで、実施例1の中心成長速度比を求めた。その結果を図6に一点鎖線で示す。
以上のことから、上記式(1)を満たすように外周成長速度を設定することで、中心成長速度の急変に起因する有転位化を抑制できることが確認できた。
〔比較例2〕
図1に示すような単結晶引き上げ装置を用い、上記実験1と同様のドーパント、抵抗率、形状のシリコン単結晶を育成した。
この際、肩部の形成時の外周成長速度を、図3に破線で示す外周成長速度比に基づき設定し、図2に示すステップS1〜S5の処理を行った。ステップS3で有転位化が確認された場合には、再溶融(ステップS8)して、外周成長速度を再設定することなく引き上げを再開し、有転位化が発生せずにシリコン単結晶の製造が終了するまで上記処理を繰り返した。
上記シリコン単結晶の製造を2バッチ行った。
肩部の形成時の外周成長速度を、図3に実線で示す第3の補正外周成長速度比に基づき設定したこと以外は、比較例2と同様の条件でシリコン単結晶の製造を32バッチ行った。
図8に示すように、1バッチあたりの再溶融回数は、比較例2では1.13回であったのに対して、実施例2では0.44回であった。
このことから、上記式(1)を満たすように外周成長速度を設定することで、中心成長速度の急変に起因する有転位化を抑制でき、再溶融回数も最小限に抑えることができることが確認できた。
Claims (4)
- チョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造方法であって、
シリコン単結晶の育成条件を設定する条件設定工程と、
前記育成条件に基づいて、前記シリコン単結晶を育成する育成工程とを備え、
前記条件設定工程は、前記シリコン単結晶の外周部における引き上げ方向の外周成長速度をA、中心部における中心成長速度をBとした場合、以下の式(1)を満たすように前記外周成長速度を設定する外周成長速度設定工程を備えることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法(ただし、炭素をドープしてシリコン単結晶を製造する方法を除く)。
0.9≦B/A≦1.1 … (1) - 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記条件設定工程は、前記シリコン単結晶の複数の成長位置と前記外周成長速度との関係を多項式で近似する近似工程を備え、
前記育成工程は、前記多項式に基づいて、前記シリコン単結晶を育成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記外周成長速度および前記中心成長速度は、シリコン単結晶の肩部における成長速度であり、
前記条件設定工程は、前記外周成長速度設定工程で設定された前記肩部の下端における前記外周成長速度が、直胴部の上端の外周部における成長速度と同じになるように、前記肩部の外周成長速度を補正する境界合わせ補正工程を備えることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記外周成長速度設定工程は、従前に育成したシリコン単結晶の成長縞の発生状況に基づいて、当該従前のシリコン単結晶における引き上げ方向の従前の外周成長速度と従前の中心成長速度とを特定し、前記従前の外周成長速度と前記従前の中心成長速度とに基づいて、前記式(1)を満たすように前記外周成長速度を設定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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