以下、本発明の一実施の形態に係る、チェーンブロックとしての補助モータ付きチェーンブロック10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1において右側をX1側(一方側)、左側をX2側(他方側)とし、ロードチェーンC1から見て上フック14が位置する側をZ1側(上側)、上フック14から見てロードチェーンC1が位置する側をZ2側(下側)とする。
<補助モータ付きチェーンブロックの構成について>
図1は、補助モータ付きチェーンブロック10の構成を示す側断面図である。また、図2は、図1の補助モータ付きチェーンブロック10のうち、ハンドホイール60よりもケース体110側(X2側)の構成を示す部分的な側断面図である。図1および図2に示すように、補助モータ付きチェーンブロック10は、第1フレーム11と、第2フレーム12と、ギヤケース13と、上フック14と、図示を省略する下フックと、ロードシーブ中空軸20と、減速機構30と、駆動軸40と、ブレーキ機構50と、ハンドホイール60と、トルクセンサ70と、モータドライバ80と、ケース体110と、補助モータ140と、延長軸150とを主要な構成要素としている。
第1フレーム11、第2フレーム12およびギヤケース13は、スタッドボルトSB(固着具に対応)およびナットNを介して固定されている。第1フレーム11と第2フレーム12の間には、ロードシーブとなるロードシーブ中空軸20のフランジ部21で囲まれたチェーンポケット22が位置している。また、チェーンポケット22の上方側(Z1側)には、繋ぎ軸15が位置し、この繋ぎ軸15を介して上フック14が上側(Z1側)に向かい突出している。
また、ケース体110を構成するカバーフレーム120(後述)と第2フレーム12の間には、ブレーキ機構50およびハンドホイール60が位置している。さらに、カバーフレーム120のフレーム部121よりも他方側(X2側)には、モータドライバ80および補助モータ140が位置し、これらがケース体110(カバーフレーム120、モータカバー130)で覆われている。以下、各部材につき詳述する。
第1フレーム11と第2フレーム12との間には、ロードシーブ中空軸20が位置していて、このロードシーブ中空軸20が軸受B1,B2を介して第1フレーム11および第2フレーム12に軸支されている。なお、ロードシーブ中空軸20は、ロードシーブ部材に対応する。ロードシーブ中空軸20は、一対のフランジ部21を有していて、さらに一対のフランジ部21の間には、チェーンポケット22が設けられている。チェーンポケット22には、ロードチェーンC1が嵌まり込んでいる。それにより、ロードシーブ中空軸20の回転に伴って、ロードチェーンC1が上下方向に移動し、その移動によって荷の昇降が可能となっている。
また、ロードシーブ中空軸20には、中空孔23が設けられている。中空孔23には、駆動軸40が差し込まれるが、その中空孔23の第2フレーム12側の端部には、駆動軸40を軸支する軸受B3が位置する軸受凹部24が設けられている。また、ロードシーブ中空軸20の一端側(X1側)の部位には、ギヤ嵌合部25が設けられていて、このギヤ嵌合部25には、減速機構30を構成するロードギヤ31がスプライン結合状態で保持される。
減速機構30は、上述したギヤケース13で覆われている部分であるが、この減速機構30は、ロードギヤ31以外に、図示を省略する小径ギヤおよび大径ギヤ321を備える減速ギヤ部材32を備えている。小径ギヤは、ロードギヤ31に噛み合い、また大径ギヤ321は、駆動軸40のピニオンギヤ41と噛み合っている。
駆動軸40は、後述するハンドホイール60および補助モータ140からの駆動力を、上述した減速機構30を介してロードシーブ中空軸20に伝達する部分である。かかる駆動力の伝達のために、駆動軸40はホイルカバー130の近傍まで延伸して、後述する延長軸150と嵌合している。それにより、ハンドホイール60および補助モータ140の駆動力は、延長軸150を介して駆動軸40に伝達される。また、駆動軸40は、軸受B3によりロードシーブ中空軸20に対して回転自在に設けられているが、その他に、駆動軸40の一端側(X1側)が軸受B4によりギヤケース13に軸支されている。
また、駆動軸40のロードシーブ中空軸20の中空孔23から他方側(X2側)に向かい、多条ねじ42が形成されている。多条ねじ42は、ブレーキ機構50を構成するブレーキ受け51の雌ネジ部51aや、メネジ部材52の雌ネジ部52aが捩じ込まれる。この多条ねじ42よりも一方側(X1側)に向かい、駆動軸40のうちロードシーブ中空軸20の手前の位置には、段部43が設けられていて、この段部43を境に、駆動軸40の一方側(X1側)よりも他方側(X2側)が小径に設けられている。多条ねじ42での捩じ込みにより段部43にブレーキ受け51が係合すると、以後は、ブレーキ受け51は駆動軸40と一体的に回転する。
なお、駆動軸40の他端部(X2側の端部)は、後述するメネジ部材52の内筒部に挿入されていて、その内筒部から突出しない状態に設けられている。
図3は、補助モータ付きチェーンブロック10のうち、メネジ部材52、延長軸150およびハンドホイール60付近の構成を示す分解斜視図である。図1から図3に示すように、ブレーキ機構50は、ブレーキ受け51、メネジ部材52、一対のブレーキ板53a,53b、爪車54を構成要素としている。ブレーキ受け51は、上述した雌ネジ部51a以外に、フランジ部51bを有していて、このフランジ部51bには他方側(X2側)からブレーキ板53aが接触し、爪車54との間でブレーキ板53aを挟持する。
メネジ部材52も、上述した雌ネジ部52a以外に、フランジ部52bを有していて、このフランジ部52bには一方側(X1側)からブレーキ板53bが接触し、爪車54との間で、ブレーキ板53bを挟持する。また、メネジ部材52は、筒状部52cを有している。筒状部52cは、ホイールハブ62のハブ筒部62aの内部に位置しているが、その筒状部52cの軸方向における長さは、ハブ筒部62aの軸方向における長さよりも十分に短くなるように設けられている。なお、筒状部52cとハブ筒部62aの間では、駆動力が直接伝達されない構成となっている。
また、図3に示すように、筒状部52cの軸方向における他端側(X2側)には、すり割り部52c1が設けられている。このすり割り部52c1は、係合部に対応する。すり割り部52c1は、後述する延長軸150の連結端部152が入り込むように、筒状部52cを構成する周壁の一部を180度間隔で窪ませた部分である。このように、すり割り部52c1に連結端部152が入り込むことで、荷を上昇させる巻上げ時には、延長軸150から駆動軸40へと駆動力が伝達される。
また、ブレーキ受け51の外周側には、爪車54が設けられている。爪車54は、ブレーキ板53a,53bとの係合によってブレーキ機構50の一部としても機能するが、不図示の爪部材と係合してワンウェイクラッチとしても機能する。なお、ロードシーブ中空軸20が荷を巻下げる方向に回転しようとして、減速機構30を介して駆動軸40を回転させようとする場合、ブレーキ受け51は段部43で受け止められているので駆動軸40と共に回転しようとするが、爪車54は爪部材によって回転が阻止されている。したがって、爪車54は、巻下げ方向に回転しようとする駆動軸40には追従しない。
一方、ハンドホイール60側が回転させられていない状態では、メネジ部材52も回転しないが、その場合、メネジ部材52に対して駆動軸40が回転しようとすると、雌ネジ部52aの多条ねじ42との噛合により、メネジ部材52のフランジ部52bがブレーキ板53bを介して爪車54を圧接する。その圧接の力は、ブレーキ板53aを介してブレーキ受け51にも作用する。ここで、ブレーキ受け51は段部43で受け止められているため、上述の圧接の力によって、メネジ部材52とブレーキ受け51には、ブレーキ力が作用する。したがって、メネジ部材52に対する駆動軸40の回転が阻止される。
次に、ハンドホイール60について説明する。図1および図2に示すように、ハンドホイール60は、ホイールリング61と、このホイールリング61を固定しているホイールハブ62とを有している。環状のホイールリング61は、チェーンポケット61aを有していて、そのチェーンポケット61aには、ハンドチェーンC2が嵌まり込んでいる。それにより、ハンドチェーンC2を介して、ハンドホイール60はいずれかの方向に回転させられる。
ホイールハブ62は、他端側(X2側)に向かい延伸する筒状のハブ筒部62aを有していて、そのハブ筒部62aは、ケース体110の内部に入り込んでいる。このハブ筒部62aには、大径筒部62bと、小径筒部62cとが設けられている。大径筒部62bは、ハブ筒部62aの付け根側に位置していて、その内筒部分には、上述したメネジ部材52の筒状部52cおよび延長軸150の連結端部152が入り込んでいる。そのため、連結端部152は、大径筒部62bの内筒部分にて、すり割り部52c1に嵌まり込んでいる。
また、小径筒部62cは、大径筒部62bよりも小径に設けられている部分である。この小径筒部62cの内筒部分には、延長軸150が挿通している。また、小径筒部62cの外周側には、トルクセンサ70が取り付けられている。具体的には、小径筒部62cの外周側には、磁歪部分62d(後述)が設けられている。また、小径筒部62cの内筒部分の他端側(X2側)には、延長軸150のキー溝151aと噛み合うキー62eが設けられている。キー62eは、噛み合い部に対応するが、かかるキー62eとキー溝151aとの噛み合いにより、巻上げ時においては、ハンドホイール60の回転力が延長軸150に伝達され、さらに延長軸150からメネジ部材52へと伝達される。また、トルクセンサ70で、たとえば規定以上の捩じりトルクを検出した場合には、補助モータ140の駆動力が延長軸150に伝達されるが、噛み合い部分においてハンドホイール60の回転力と合算されて、メネジ部材52側へと伝達される。
次に、トルクセンサ70について説明する。トルクセンサ70は、たとえば磁歪式であるが、そのトルクセンサ70は、上述した磁歪部分62dと、コイル71とを備えている。磁歪部分62dは、少なくとも表面が磁歪材から形成されていて、その磁歪部分62dは、同じくトルクセンサ70を構成するコイル71と対向している。この磁歪部分62dに捩じれが生じると、その磁歪部分62dで透磁率の差が生じて、その透磁率の差がコイル71でインダクタンスの変化として検出される。なお、トルクセンサ70としては、磁歪方式以外の方式としても良く、たとえばスリップリング方式のような接触式のものを用いても良い。
トルクセンサ70のコイル71は、モータドライバ80に電気的に接続されている。モータドライバ80は、コイル71での検出結果に基づいて、トルクに対応した電流をステータ141のコイルに導通させる。すなわち、ハンドホイール60の巻き上げに要する力が大きいと、磁歪部分62dを捩じるトルクが大きくなるので、補助モータ140に導通させる電流が大きくなり、逆の場合には磁歪部分62dを捩じるトルクが小さくなるので、補助モータ140に導通させる電流が小さくなる。
次に、補助モータユニット100について説明する。補助モータユニット100は、ケース体110と、補助モータ140とを備えている。ケース体110は、カバーフレーム120と、モータカバー130とを備えている。カバーフレーム120とモータカバー130とは、たとえば液状ガスケット等の封止部材を介して取り付けられており、両者の間では、気密に封止された状態となっている。
図1および図2に示すように、カバーフレーム120は、フレーム部121と、外周壁部122と、内周壁部123とを主要な構成要素としている。詳述すると、フレーム部121は、ハンドホイール60と対向しているフレーム状の部分である。また、外周壁部122は、フレーム部121の周縁部から一定の高さを有するように突出する周壁状の部分であり、外周壁部122のうちフレーム部121からの突出端部側が、モータカバー130のカバー端面部132の突出側端部と突き合わされている。
また、フレーム部121の径方向の中心側には、中心孔121aが設けられていて、その中心孔121aを囲むように、内周壁部123が設けられている。内周壁部123は、外周壁部122で囲まれた部位において、フレーム部121と同じ向きに向かって突出する筒状の部分である。しかしながら、内周壁部123は外周壁部122よりも軸方向の他方側(X2側)に向かって突出していて、その内周壁部123の他端側がモータカバー130の内部に入り込んでいる。
このように、内周壁部123が外周壁部122よりも軸方向の寸法が長く設けられることにより、内周壁部123の内部に、トルクセンサ70およびハブ筒部62aを位置させることが可能となっている。なお、トルクセンサ70およびハブ筒部62aは、図1および図2に示す構成では、内周壁部123から若干突出しているものの、完全に内周壁部123の内部に位置する構成としても良い。
ところで、上述したように、カバーフレーム120とモータカバー130とは、液状ガスケット等を介して機密に封止されている。そして、ケース体110においては、中心孔121a以外には開口部分は存在していない。したがって、内周壁部123の開口付近の内壁と、ハブ筒部62aの大径筒部62bの間には、OリングOL1が設けられている。それにより、ケース体110の内部を封止する構成としている。ここで、OリングOL1は、大径筒部62bの外周側に、たとえば圧入等によって取り付けられているが、内周壁部123の内壁には、OリングOL1を受け止めるための段状の受部123aも設けられている。なお、OリングOL1は、ハブ筒部62aが回転するのを許容する回転用の封止部材である。
なお、OリングOL1を受け止めるための段状の受部123aを形成すると共に、このOリングOL1を介して内周壁部123にてハンドホイール60を支持する構成のため、内周壁部123の肉厚は、フレーム部121よりも厚く設けられている。
また、内周壁部123の軸方向の先端側(X2側)には、補助モータ140のステータ支持部143が備える支持凸部143bを支持するためのステータ支持部123bが設けられている。ステータ支持部123bは、内周壁部123の端面部123b1の周囲に軸方向の他方側(X2側)に突出するフランジ部123b2を備えていて、支持凸部143bが位置ずれしないように受け止めることを可能としている。
なお、モータカバー130は、周壁部131と、カバー端面部132とを備えている。このモータカバー130は、所定の径を有するカバー端面部132の外周縁部から周壁部131が立ち上がることにより、外観がカップ状となるように設けられている。また、周壁部131の突出側の端部は、外周壁部122の突出側の端部に対して、液状ガスケット等を介して突き当てられている。それにより、補助モータ140およびモータドライバ80が外部から封止された状態となっている。
次に、補助モータ140について説明する。補助モータ140は、ステータ141と、アウターロータ142と、ステータ支持部143とを備えている。これらについて詳述すると、内周壁部123の他端側(X2側)には、補助モータ140のステータ141を支持するためのステータ支持部143が固定されている。ステータ支持部143は、筒状の部材であり、その外周側にステータ141が取り付けられている。このステータ支持部143には、軸方向に貫通する挿通孔143aが設けられていて、その挿通孔143aには、中心軸部142cが軸受B5,B6を介して回転可能に支持されている。
また、ステータ141は、不図示のコイルが巻回されるティースを備えている。なお、ティースは、周方向に所定の個数配置されている。また、ステータ141の径方向の中心には、孔部141aが設けられていて、その孔部141aには上述したステータ支持部143が位置している。
ここで、補助モータ140は、アウターロータ方式のモータであるが、かかるアウターロータ方式のモータであれば、どのようなタイプであっても良い。たとえば同期モータ、ブラシレスDCモータ、ステッピングモータ等、種々のタイプのモータを、補助モータ140として用いることができる。
アウターロータ142は、ロータ端面部142aと、外周部142bと、中心軸部142cとを備えている。ロータ端面部142aは、ステータ141よりも他端側(X2側)に位置している円盤状の部分である。このロータ端面部142aの外周縁部からは、周壁状の外周部142bが一方側(X1側)に向かい延伸している。それにより、外周部142bは、ステータ141と対向する状態で配置される。外周部142bには、周方向に所定の間隔で磁石が取り付けられ、電磁石となるステータ141のコイルとの間で磁力を生じさせる。
また、ロータ端面部142aの径方向の中心には、孔部142a1が設けられていて、その孔部142a1には、中心軸部142cが差し込まれた状態で取り付けられている。中心軸部142cは、ロータ端面部142aよりも一端側(X1側)に向かい延伸する部分である。この中心軸部142cは、本実施の形態では、ロータ端面部142aとは別部材であり、当該ロータ端面部142aにネジ等を介して固定されている。この中心軸部142cは、筒状の部材であり、筒状の内部の内筒部142c1には、延長軸150が差し込まれている。
なお、中心軸部142cは、延長軸150と一体的に回転する。そのため、内筒部142c1の内壁には、延長軸150のキー溝151aと噛み合うためのキー142c2が形成されている。
次に、延長軸150について説明する。延長軸150は、補助モータ140およびホイールハブ62の径方向中心に位置する部材であり、中心伝達機構に対応する。この延長軸150は、ハンドホイール60側からの駆動力が伝達されると共に、補助モータ140からの駆動力も伝達可能となっている。
図2および図3に示すように、延長軸150は、円柱状の軸部151と、その軸部151の一端側(X1側)に設けられている連結端部152とを備えている。この軸部151の外周側には、軸方向の所定の長さに亘りキー溝151aが設けられている。キー溝151aには、キー142c2が噛み合うが、その噛み合いによって、アウターロータ142の回転に延長軸150が伴っている。
また、キー溝151aの軸方向の一方側(X1側)では、ホイールハブ62のキー62eも噛み合っている。そのため、ホイールハブ62(ハンドホイール60)の回転が、延長軸150に伝達される構成となっている。
図4は、巻上げ時におけるハンドホイール60、延長軸150およびメネジ部材52の回転位置の関係を模式的に示す正面図であり、(A)は回転位置の関係を全体的に示し、(B)は(A)におけるA部付近を拡大して示す図である。図5は、巻下げ時におけるハンドホイール60、延長軸150およびメネジ部材52の回転位置の関係を模式的に示す正面図であり、(A)は回転位置の関係を全体的に示し、(B)は(A)におけるB部付近を拡大して示す図である。
図3から図5に示すように、連結端部152は、円弧状部152aと、一対の平面部152bとを備えているが、一対の平面部152bは、径方向中心から所定の距離だけ離れた位置で、径方向の両側を互いに平行を維持しつつカットしたような形状に設けられている。この平面部152bは、上述した筒状部52cのすり割り部52c1に嵌め込まれる。ただし、すり割り部52c1に対する連結端部152の嵌め込みは、公差程度の嵌め込みではなく、両者の間に十分な間隔が形成される状態となっている。
したがって、荷を昇降させる巻上げ時には、図4(B)に示すように、延長軸150の回転により、連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接していない状態から所定角度だけ回転して(傾斜して)、すり割り部52c1の内壁に連結端部152が当接する状態へと切り替わる。それにより、巻上げ時には、延長軸150の回転がメネジ部材52に直接伝達される構成となっている。ここで、荷を昇降させる巻上げ時には、ハンドチェーンC2の手引きによるハンドホイール60の回転と共に、補助モータ140の駆動によるアシスト力も加わる。そして、これらが合算された回転力が、連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接する部位を介して、メネジ部材52に伝達される。
しかしながら、巻下げ時には、後述するように、延長軸150の回転によって連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接するよりも前に、押圧ピン160が係合凹部52eの内壁52e1に当接する(後述)。したがって、巻下げ時には、延長軸150の回転はメネジ部材52に直接伝達されない構成となっている。
また、図3から図5に示すように、ハンドホイール60には、押圧ピン160が一体的となるように取り付けられている。押圧ピン160は、ハンドホイール60のホイールハブ62の外周側に存在する取付孔62fに、たとえば圧入したり捻じ込む等によって取り付けられている。なお、図3においては、押圧ピン160は、取付孔62fから取り外された状態で示されているが、実際には、押圧ピン160は取付孔62fに取り付けられている。また、メネジ部材52のフランジ部52bの外周側には、上述した押圧ピン160が位置する係合凹部52eが設けられている。係合凹部52eは、フランジ部52bを所定の深さだけ窪ませた部分であり、フランジ部52bを貫通しないように設けられている。
ここで、押圧ピン160は、係合凹部52eの底面を押圧するように設けられている。具体的には、メネジ部材52がブレーキ板53bから離れようとした場合でも、メネジ部材52をブレーキ板53bから完全に離さず、メネジ部材52とブレーキ板53bとが部分当たりするように設けられている。
なお、押圧ピン160の個数は、幾つであっても良い。たとえば1つのみ設けても良く、2つ以上設けても良い。また、押圧ピン160を2つ以上設ける場合、ハンドホイール60の周方向において、不均等な配置となるのが好ましい。不均等な配置とする場合、メネジ部材52がブレーキ板53bに対して、部分当たりし易くなるためである。
また、係合凹部52eは、フランジ部52bの周方向における長さが、押圧ピン160の直径よりも十分に長くなるように設けられている。ここで、巻上げ時においては、図4(A)に示すように、押圧ピン160は、係合凹部52eの内壁52e1には当接しない状態となっている。このとき、図4(B)に示すように、連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接することで、巻上げ時には、延長軸150の回転がメネジ部材52に直接伝達される構成となっている。
一方、巻下げ時においては、図4(B)に示すように、押圧ピン160は、係合凹部52eの内壁52e1に当接するので、ホイールハブ62(ハンドホイール60)の回転力は、押圧ピン160から直接的にメネジ部材52に伝達される。このとき、図4(A)に示すように、連結端部152はすり割り部52c1の内壁には当接していないので、巻下げ時には、延長軸150の回転がメネジ部材52には直接は伝達されない構成となっている。
<2.作用について>
次に、上述した補助モータ付きチェーンブロック10の作用について、説明する。不図示の下フックに荷を掛けた状態で、ハンドチェーンC2を巻き上げ方向に操作すると、ハンドホイール60が回転する。そして、ハンドホイール60の回転に伴い、ホイールハブのキー62eとキー溝151aで噛み合っている延長軸150も回転する。このとき、磁歪部分62dが捩じられ、その捩じりに応じたトルクがトルクセンサ70にて検出される。そして、モータドライバ80は、トルクセンサ70から受信した捩じりトルクに応じた信号に基づいて、その捩じりトルクに応じた電流を補助モータ140に導通させる。
このため、延長軸150には、ハンドホイール60側からの回転力と、補助モータ140側からの回転力とを合算した回転力が与えられる。そして、図4(A),(B)に示すように、延長軸150が回転することで、連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接し、延長軸150の回転がメネジ部材52に直接伝達される。
ここで、メネジ部材52の雌ネジ部52aは、多条ねじ42と噛み合っていて、巻上げ時には、メネジ部材52がブレーキ板53b、爪車54およびブレーキ板53aを介して、ブレーキ受け51を段部43に押し付け、ブレーキ受け51が軸方向に移動不能とする。その状態でさらにメネジ部材52が回転させられると、駆動軸40が巻上げ方向に回転し、その回転は、減速機構30を介してロードシーブ中空軸20へと伝達される。それによって、ロードシーブ中空軸20が巻上げ方向に回転し、荷がロードチェーンC1を介して上昇する。
このように、巻上げ時においては、連結端部152とすり割り部52c1の接触によって、回転が伝達されるので、メネジ部材52の径方向における中心側で回転が伝達される構成となっている。
次に、荷を降下させる巻下げ時の動作について説明する。図6は、本実施の形態における補助モータ付きチェーンブロック10において、メネジ部材52とブレーキ板53bの間の挙動を示す図であり、メネジ部材52とブレーキ板53bの間が圧接されたブレーキ状態を示している。図7は、図6に示す状態からメネジ部材52の回転によりブレーキ板53bへの圧接が緩められた状態を示している。図8は、従来の補助モータ付きチェーンブロックにおいて、メネジ部材とブレーキ板の間の挙動を示す図であり、メネジ部材とブレーキ板の間が圧接されたブレーキ状態を示している。図9は、図8に示す状態からメネジ部材の回転によりブレーキ板への圧接が緩められた状態を示している。
ハンドチェーンC2を巻き下げ方向に操作すると、ハンドホイール60は巻上げ時とは逆向きに回転する。このときも、ハンドホイール60の回転に伴い、ホイールハブのキー62eとキー溝151aで噛み合っている延長軸150も回転する。しかしながら、連結端部152がすり割り部52c1の内壁に当接するよりも先に、押圧ピン160が係合凹部52eの内壁52e1に当接する。そのため、ホイールハブ62(ハンドホイール60)の回転力は、押圧ピン160から直接的にメネジ部材52に伝達される。
すなわち、巻下げ時においては、係合凹部52eにおいて、押圧ピン160を介して回転が伝達されるので、メネジ部材52の径方向の外周側において、回転が伝達される状態となっている。
そして、メネジ部材52の雌ネジ部52aは、多条ねじ42との噛み合いによって、ブレーキ板53bへの圧接を解除する向き(メネジ部材52がブレーキ板53bから離れる向き)に回転する。
ここで、従来の補助モータ付きチェーンブロックにおいては、図8に示すようなブレーキ板53bへのメネジ部材52の圧接状態から、メネジ部材52を回転させてブレーキ板53bへの圧接を緩めると、図9に示すように、メネジ部材52は、ブレーキ板53bから瞬間的に、完全に離れた状態が生じる。すると、ロードチェーンC1に掛けられている荷の荷重により、ロードシーブ中空軸20が回転して、その回転力が減速機構30を介して駆動軸40に伝達される。そして、ブレーキ板53bがメネジ部材52に強固に圧接されるまで、駆動軸40の回転は加速するので、ブレーキ板53bは、メネジ部材52に対して、衝撃を伴う状態で衝突する。
すなわち、従来の補助モータ付きチェーンブロックでは、メネジ部材52とブレーキ板53bとが完全に離れた状態から、急激に衝突する状態となり、巻上げ時の間において、完全に離れた状態と急激に衝突する状態とを繰り返す。そして、急激に衝突する際に、両者の間で、騒音(ブレーキ鳴き)を生じてしまう。なお、メネジ部材52はブレーキ板53bに対して離れていて、単独で容易に振動する状態となっている。したがって、メネジ部材52の振動によっても騒音(ブレーキ鳴き)を生じさせている。
これに対して、本実施の形態の補助モータ付きチェーンブロック10では、図6に示すようなブレーキ板53bへのメネジ部材52の圧接状態から、メネジ部材52を回転させてブレーキ板53bへの圧接を緩めた場合、図7に示すように、メネジ部材52は、係合凹部52eにおいて押圧ピン160で押圧されており、メネジ部材52はブレーキ板53bに対して、接触面内において押圧に強弱の有る状態で接触する。なお、接触面内において他の部位よりも強く接触している部位であっても、図6に示すような圧接状態と比べて、押圧力は弱いか、または全く接触しない状態となっている。
このため、ブレーキ板53bがメネジ部材52に対して完全に離れた状態が存在しない。したがって、ロードチェーンC1に掛けられている荷の荷重によって、駆動軸40が加速的に回転しても、急激的な衝突とはならず、騒音(ブレーキ鳴き)が低減される。そして、巻下げ時の間において、メネジ部材52とブレーキ板53bとの押圧面内において、強弱のある状態と、押圧面が全体的に強く押圧される(圧接される)状態とを繰り返す。
なお、メネジ部材52は、係合凹部52eの内壁52e1において押圧ピン160で押圧されているので、メネジ部材52が単独では振動し難い状態となる。したがって、メネジ部材52の振動を抑えることができ、それによって騒音(ブレーキ鳴き)を低減することができる。また、押圧ピン160が内壁52e1を押圧する場合、メネジ部材52の雌ネジ部52aが多条ねじ42との噛み合い部分の中心を含む面内(軸方向に直交する面内)にて押圧することは稀であり、その中心を含む面からずれた位置を押圧するのが通常である。したがって、押圧ピン160が内壁52e1を押圧する場合、メネジ部材52は軸方向に対して傾くような回転モーメントが生じ易い。それによっても、メネジ部材52はブレーキ板53bに対して、接触面内において押圧に強弱の有る状態で接触する状態となる。
また、上述のように、巻下げ時においては、メネジ部材52の径方向の外周側において、押圧ピン160で押圧されながら回転が伝達されている。したがって、メネジ部材52は、その軸中心が駆動軸40の軸中心に対して傾き易くなり、それによってもメネジ部材52はブレーキ板53bに接触し易い状態となり、それによっても騒音(ブレーキ鳴き)を低減する構成となっている。
<3.効果について>
以上のような構成の補助モータ付きチェーンブロック10には、中心伝達機構に対応する延長軸150が設けられ、この延長軸150は、メネジ部材52と径方向の中心で連結可能に設けられると共に、荷を上昇させる巻上げ時には径方向の中心側においてハンドホイール60からメネジ部材52へ駆動力を伝達させている。また、補助モータ付きチェーンブロック10には、外周伝達機構に対応する押圧ピン160および係合凹部52eが設けられ、これらは、ハンドホイール60とメネジ部材52との間に設けられ、荷を下降させる巻下げ時にはメネジ部材52の外周側においてハンドホイール60からメネジ部材52へ駆動力を伝達させる。
このため、巻上げ時には、メネジ部材52の径方向の中心側において延長軸150からメネジ部材52へと駆動力が伝達される一方、巻下げ時には、メネジ部材52の径方向の外周側において延長軸150からメネジ部材52へと駆動力が伝達される。
ここで、従来の構成のように、巻下げ時において、メネジ部材52の径方向の中心で延長軸150からメネジ部材52に駆動力が伝達される場合、図8に示すようなブレーキ板53bへのメネジ部材52の圧接状態から、図9に示すように、メネジ部材52は、ブレーキ板53bから瞬間的に、完全に離れ、その後にメネジ部材52がブレーキ板53bに急激に衝突することで、両者の間で、騒音(ブレーキ鳴き)を生じさせている。このとき、メネジ部材52の外周側は、フリーとなることで、容易に振動するため、その振動によって、騒音(ブレーキ鳴き)が生じ易くなっている。
しかしながら、本実施の形態では、図5(A),(B)、図6および図7に示すように、巻下げ時には、メネジ部材52は、係合凹部52eにおいて押圧されている押圧ピン160を介して、駆動力が伝達される。このため、メネジ部材52の外周側がフリーとはならず、それによりメネジ部材52の振動が低減される。そのため、騒音(ブレーキ鳴き)を低減させることが可能となる。
また、本実施の形態では、外周伝達機構は、ハンドホイール60に設けられていると共にメネジ部材52に向かって突出する押圧ピン160と、この押圧ピン160が移動可能な状態で位置すると共に内壁52e1を押圧可能な係合凹部52eとを備えている。そして、荷を降下させる巻下げ時には、押圧ピン160が係合凹部52eの内壁52e1を押圧することにより、ハンドホイール60からメネジ部材52へ回転を伝達させる伝達状態となると共に、荷を上昇させる巻上げ時には押圧ピン160が係合凹部52eの内壁52e1から離れることによりハンドホイール60からメネジ部材52への回転を伝達しない回転の非伝達状態となる。
このため、巻下げ時には、押圧ピン160は、メネジ部材52の内壁52e1を押圧する。かかる押圧では、メネジ部材52は軸方向に対して傾斜し易い状態となり、それによってメネジ部材52はブレーキ板53bに対して、接触面内において押圧に強弱の有る状態で接触する。したがって、ブレーキ板53bがメネジ部材52に対して完全に離れた状態が存在しないので、ロードチェーンC1に掛けられている荷の荷重によって、駆動軸40が加速的に回転しても、急激的な衝突とはならず、騒音(ブレーキ鳴き)が低減される。
さらに、本実施の形態では、延長軸150は、補助モータ140の駆動力が伝達されると共にハンドホイール60からの回転力が伝達される延長軸150を備えると共に、延長軸150の一端側(X1側)には連結端部152が設けられている。また、メネジ部材52の他端側(X2側)には、連結端部152が差し込まれるすり割り部52c1が設けられていて、荷を上昇させる巻上げ時には、連結端部152がすり割り部52c1に係合することで、延長軸150からメネジ部材52へと回転力が伝達される。また、巻下げ時には、連結端部152がすり割り部52c1に係合しない状態となる。
このため、メネジ部材52の径方向の中心側では、延長軸150からメネジ部材52へと回転が伝達されないので、メネジ部材52の外周側において、押圧ピン160を介して確実に回転力を伝達させることが可能となる。
また、本実施の形態では、ハンドホイール60には、補助モータ140側に向かって突出すると共に内筒部分に延長軸150が挿入される筒状のハブ筒部62aを備えるハンドホイール60が設けられている。そして、ハブ筒部62aには、延長軸150と噛み合うキー62eが設けられていて、このキー62eが延長軸150のキー溝151aと噛み合っていて、ハブ筒部62aと延長軸150とが一体的に回転する。
ここで、特許文献1には、駆動軸40の他端側(X2側)で補助モータ140の中心軸部と嵌合している構成が開示されている。かかる嵌合部分では、ガタつきがあるのが通常であり、そのガタつきの存在により、回転した際の慣性の大きなアウターロータ142が、若干位相差がある状態で回転し始め、また駆動軸40が停止した場合でも、位相差がある状態で停止しようとする。特に、巻下げ時には、ハンドホイール60等の回転を停止させても、上述のガタつきの存在によって、アウターロータ142を介して駆動軸40が若干遅れて回転させられるので、メネジ部材52とブレーキ板53bとが急激に締め付けられる状態となる。
しかしながら、本実施の形態では、駆動軸40とは別途の延長軸150が設けられ、この延長軸150のキー溝151aに、ホイールハブ62のキー62eが噛み合っている。そして、延長軸150にはホイールハブ62側から回転が伝達されると共に、アウターロータ142側からも回転が伝達される。したがって、巻下げ時には、アウターロータ142側から直接、駆動軸40に回転が伝達されないので、メネジ部材52とブレーキ板53bとが急激に締め付けられるのを防止可能となり、それによって、騒音(ブレーキ鳴き)が生じるのを防止可能となる。
さらに、本実施の形態では、ハブ筒部62aは、軸方向の一方側(X1側)でメネジ部材52の筒状部52cを挿入すると共に、その筒状部52cが挿入されている部位よりも軸方向の他方側(X2側)における外周側には、トルクセンサ70が取り付けられている。このように、ハブ筒部62aの軸方向において、筒状部52cが挿入されている部位とは異なる部位に、トルクセンサ70が取り付けられているので、トルクセンサ70が取り付けられる部位のハブ筒部62aの直径を小さくすることができる。したがって、トルクセンサ70が取り付けられる部位のハブ筒部62aの剛性を低くすることができ、磁歪部分62dを捩じる際のひずみを良好に検出することができる。
<4.変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、補助モータ付きチェーンブロック10は、ケース体110を備え、このケース体110で閉塞された内部空間Pに補助モータ140が収納される構成となっている。しかしながら、ケース体110を備えない構成を採用しても良い。たとえば、補助モータとして、アウターロータ方式を用いるものの、ケース体110を備えない構成としても良い。
また、上述の実施の形態では、外周伝達機構として、ホイールハブ62の取付孔62fに押圧ピン160が取り付けられ、メネジ部材52には押圧ピン160が入り込む係合凹部52eが設けられている。しかしながら、このような構成を採用しなくても良い。たとえば、メネジ部材52に押圧ピンに対応する構成を設け、ホイールハブ62に係合凹部に対応する構成を設ける等のように、別途の構成を採用しても良い。
さらに、上述の実施の形態では、中心伝達機構として延長軸150を採用し、その延長軸150の連結端部152が、メネジ部材52のすり割り部52c1に挿入されている。しかしながら、このようなこのような構成を採用しなくても良い。たとえば、メネジ部材52に、連結端部に対応する構成を設け、延長軸150にすり割り部に対応する構成を設ける等のように、別途の構成を採用しても良い。