以下、本発明の一実施の形態に係る、チェーンブロックとしての補助モータ付きチェーンブロック10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1において右側をX1側(一方側)、左側をX2側(他方側)とし、ロードチェーンC1から見て上フック15が位置する側をZ1側(上側)、上フック15から見てロードチェーンC1が位置する側をZ2側(下側)とする。
<補助モータ付きチェーンブロック10の構成について>
図1は、補助モータ付きチェーンブロック10の構成を示す側断面図である。また、図2は、図1の補助モータ付きチェーンブロック10のうち、ハンドホイール60よりもケース体110側(X2側)の構成を示す部分的な側断面図である。図1および図2に示すように、補助モータ付きチェーンブロック10は、第1フレーム11と、第2フレーム12と、第3フレーム13と、ギヤケース14と、上フック15と、図示を省略する下フックと、ロードシーブ中空軸20と、減速機構30と、駆動軸40と、ブレーキ機構50と、ハンドホイール60と、トルクセンサ70と、モータドライバ80と、円筒部材90と、補助モータ100と、ケース体110とを主要な構成要素としている。
第1フレーム11、第2フレーム12、第3フレーム13およびギヤケース14は、スタッドボルトSB(固着具に対応)およびナットNを介して固定されている。第1フレーム11と第2フレーム12の間には、ロードシーブとなるロードシーブ中空軸20のフランジ部21で囲まれたチェーンポケット22が位置している。また、チェーンポケット22の上方側(Z1側)には、繋ぎ軸16が位置し、この繋ぎ軸16を介して上フック15が上側(Z1側)に向かい突出している。
また、第2フレーム12と第3フレーム13(フレームに対応)の間には、ブレーキ機構50およびハンドホイール60が位置している。さらに、第3フレーム13よりも他方側(X2側)には、モータドライバ80、円筒部材90および補助モータ100が位置し、これらがケース体110で覆われている。以下、各部材につき詳述する。
第1フレーム11と第2フレーム12との間には、ロードシーブ中空軸20が位置していて、このロードシーブ中空軸20が軸受B1,B2を介して第1フレーム11および第2フレーム12に軸支されている。なお、ロードシーブ中空軸20は、ロードシーブ部材に対応する。ロードシーブ中空軸20は、一対のフランジ部21を有していて、さらに一対のフランジ部21の間には、チェーンポケット22を有している。チェーンポケット22には、ロードチェーンC1が嵌まり込んでいる。それにより、ロードシーブ中空軸20の回転に伴って、ロードチェーンC1が上下方向に移動し、その移動によって荷の昇降が可能となっている。
また、ロードシーブ中空軸20には、中空孔23が設けられている。中空孔23には、駆動軸40が差し込まれるが、その中空孔23の第2フレーム12側の端部には、駆動軸40を軸支する軸受B3が位置する軸受凹部24が設けられている。また、ロードシーブ中空軸20のX1側の部位には、ギヤ嵌合部25が設けられていて、このギヤ嵌合部25には、減速機構30を構成するロードギヤ31がスプライン結合状態で保持される。
減速機構30は、上述したギヤケース14で覆われている部分であるが、この減速機構30は、ロードギヤ31以外に、図示を省略する小径ギヤおよび大径ギヤ321を備える減速ギヤ部材32を備えている。小径ギヤは、ロードギヤ31に噛み合い、また大径ギヤ321は、駆動軸40のピニオンギヤ41と噛み合っている。
駆動軸40は、後述するハンドホイール60および補助モータ100からの駆動力を、上述した減速機構30を介してロードシーブ中空軸20に伝達する部分である。そのため、駆動軸40は、ギヤケース14側(X1側)から後述するケース体110側まで延伸している。上述したように、駆動軸40は、軸受B3によりロードシーブ中空軸20に対して回転自在に設けられているが、その他に、駆動軸40の一端側(X1側)が軸受B4によりギヤケース14に軸支されている。
また、駆動軸40のロードシーブ中空軸20の中空孔23から他端側(X2側)には、多条ねじ42が形成されている。多条ねじ42は、ブレーキ機構50を構成するブレーキ受け51の雌ネジ部51aや、ホイール支持部材52の雌ネジ部52aが捩じ込まれる。この多条ねじ42よりも一端側(X1側)に向かうと、駆動軸40のうちロードシーブ中空軸20の手前の位置には、段部43が設けられていて、この段部43を境に、駆動軸40の一方側(X1側)よりも他方側(X2側)が小径に設けられている。多条ねじ42での捩じ込みにより段部43にブレーキ受け51が係合すると、以後は、ブレーキ受け51は駆動軸40と一体的に回転する。
また、駆動軸40の他端部(X2側の端部)には、嵌合部44が設けられていて、この嵌合部44がアウターロータ102の嵌合凹部102c1に嵌まり込む。なお、嵌合部44は、キー、スプライン、非円形(たとえば多角形)の嵌め合い等、アウターロータ102の駆動力が駆動軸40に伝達可能であれば、どのような形状であっても良い。
図1に示すように、ブレーキ機構50は、ブレーキ受け51、ホイール支持部材52、一対のブレーキ板53a,53b、爪車54を構成要素としている。ブレーキ受け51は、上述した雌ネジ部51a以外に、フランジ部51bを有していて、このフランジ部51bには他方側(X2側)からブレーキ板53aが接触し、爪車54との間でブレーキ板53aを挟持する。
ホイール支持部材52も、上述した雌ネジ部52a以外に、フランジ部52bを有していて、このフランジ部52bには一方側(X1側)からブレーキ板53bが接触し、爪車54との間で、ブレーキ板53bを挟持する。また、ホイール支持部材52は、筒状部52cを有していて、その筒状部52cは、ホイールハブ62のハブ筒部62aの内部に位置して、このホイールハブ62を支持する。なお、筒状部52cの他端側(X2側)には、スプライン52dが設けられていて、ホイールハブ62のスプライン62bと嵌合して、ホイールハブ62と一体的に回転可能となっている。また、筒状部52cの他端側(X2側)は、ハブ筒部62aから飛び出している。
また、ブレーキ受け51の外周側には、爪車54が設けられている。爪車54は、ブレーキ板53a,53bとの係合によってブレーキ機構50の一部としても機能するが、不図示の爪部材と係合してワンウェイクラッチとしても機能する。なお、ロードシーブ中空軸20が荷を巻き下げる方向に回転しようとして、減速機構30を介して駆動軸40を回転させようとしても、爪車54は爪部材によって回転が阻止される。ここで、ホイール支持部材52に対して駆動軸40が回転しようとすると、雌ネジ部52aの多条ねじ42との噛合により、フランジ部52bがブレーキ板53bを介して爪車54を圧接する。その圧接の力は、ブレーキ板53aを介してブレーキ受け51にも作用し、ブレーキ受け51が駆動軸40と共に回転するのが阻止される。
また、ハンドホイール60は、ホイールリング61と、このホイールリング61を固定しているホイールハブ62とを有している。環状のホイールリング61は、チェーンポケット61aを有していて、そのチェーンポケット61aには、ハンドチェーンC2が嵌まり込んでいる。それにより、ハンドチェーンC2を介して、ハンドホイール60はいずれかの方向に回転させられる。
ホイールハブ62は、他端側(X2側)に向かい延伸するハブ筒部62aを有していて、そのハブ筒部62aは、ケース体110の内部に入り込む。ハブ筒部62aは、後述する円筒部材90の内筒側で、軸受B5,B6を介して回転自在に支持される。なお、軸受B5,B6は、所定の間隔を隔てて位置し、ホイールハブ62およびハンドホイール60を回転自在に支持する。また、ハブ筒部62aの内筒側には、スプライン52dと噛み合うスプライン62bが設けられている。
ここで、ハブ筒部62aの外周側には、磁歪部分62cが設けられている。磁歪部分62cは、磁歪式のトルクセンサ70を構成する部分である。磁歪部分62cは、軸受B5,B6によって、コイル71に回転可能に支持されている。この磁歪部分62cは、少なくとも表面が磁歪材から形成されていて、その磁歪部分62cは、同じくトルクセンサ70を構成するコイル71と対向している。磁歪部分62cに捩じれが生じると、その磁歪部分62cで透磁率の差が生じて、その透磁率の差がコイル71でインダクタンスの変化として検出される。なお、トルクセンサ70としては、磁歪方式以外の方式としても良く、たとえばスリップリング方式のような接触式のものを用いても良い。
トルクセンサ70のコイル71は、モータドライバ80に電気的に接続されている。モータドライバ80は、コイル71での検出結果に基づいて、トルクに対応した電流をステータ101のコイルに導通させる。すなわち、ハンドホイール60の巻き上げに要する力が大きいと、磁歪部分62cを捩じるトルクが大きくなるので、補助モータ100に導通させる電流が大きくなり、逆の場合には磁歪部分62cを捩じるトルクが小さくなるので、補助モータ100に導通させる電流が小さくなる。
また、第3フレーム13には円筒部材90が取り付けられている。円筒部材90の内筒側には、上述した軸受B5,B6が支持されると共に、これら軸受B5,B6の間にコイル71も配置されている。それにより、円筒部材90の内筒側では、ホイールハブ62(ハンドホイール60)を回転自在に支持している。なお、円筒部材90の内筒側には、軸受B5,B6を受け止めるための段部91が設けられている。
円筒部材90の他端側(X2側)には、補助モータ100を構成するステータ101が固定されている。ステータ101は、不図示のコイルが巻回されるティースを備えている。なお、ティースは、周方向に所定の個数配置されている。また、ステータ101の径方向の中心には、孔部101aが設けられていて、その孔部101aにはアウターロータ102の中心軸部102cが挿通される。
ここで、補助モータ100は、アウターロータ方式のモータであるが、かかるアウターロータ方式のモータであれば、どのようなタイプであっても良い。たとえば同期モータ、ブラシレスDCモータ、ステッピングモータ等、種々のタイプのモータを、補助モータ100として用いることができる。
アウターロータ102は、ロータ端面部102aと、外周部102bと、中心軸部102cとを備えている。ロータ端面部102aは、ステータ101よりも他端側(X2側)に位置している円盤状の部分である。このロータ端面部102aの外周縁部からは、周壁状の外周部102bが一方側(X1側)に向かい延伸している。それにより、外周部102bは、ステータ101と対向する状態で配置される。外周部102bには、周方向に所定の間隔で磁石が取り付けられ、電磁石となるステータ101のコイルとの間で磁力を生じさせる。
ここで、アウターロータ102(外周部102b)の外径は、ハンドホイール60の外径に対して、80〜110%の範囲内に設けられている。すなわち、アウターロータ方式の補助モータ100においては、アウターロータ102の外径が小さい場合、慣性モーメントが小さくなってしまうので、ある程度以上、アウターロータ102の外径が大きい方が好ましい。しかし、アウターロータ102の外径が大きくなり、ハンドホイール60の外径よりも大幅に大きくなると、ケース体110も大きくなり、補助モータ付きチェーンブロック10の全体的な大型化を招いてしまう。そこで、アウターロータ102(外周部102b)の外径は、ハンドホイール60の外径に対して、80〜110%の範囲内に設け、これらを両立させるようにしている。
なお、アウターロータ102の外径が小さくても大きな慣性モーメントが得られる場合には、ハンドホイール60の外径に対してアウターロータ102の外径を80%以下としても良い。また、ケース体110の大型化が問題とならない場合には、ハンドホイール60の外径に対してアウターロータ102の外径を110%以上としても良い。
また、ロータ端面部102aの径方向の中心には、孔部102a1が設けられていて、その孔部102a1には、中心軸部102cが差し込まれる。中心軸部102cは、ロータ端面部102aよりも一端側(X1側)に向かい延伸する部分である。この中心軸部102cは、本実施の形態では、ロータ端面部102aとは別部材であり、当該ロータ端面部102aにネジ等を介して固定されている。この中心軸部102cは、円柱状の部分であり、孔部101aに差し込まれる部分である。そして、この孔部101aにおいて、中心軸部102cは、軸受B7,B8を介して円筒部材90に支持される。なお、中心軸部102cは、円筒部材90ではなくステータ101に支持される構成を採用しても良い。
また、中心軸部102cの一方側(X1側)の端部には、他端側(X2側)に向かって窪む嵌合凹部102c1が設けられている。嵌合凹部102c1は、駆動軸40の嵌合部44が嵌まり込む部分であり、かかる嵌まり込みによって、アウターロータ102の回転力が駆動軸40に伝達される。なお、アウターロータ102の駆動力は、ブレーキ機構50の作動により、少なくとも巻き上げ時には、ハンドホイール60と一体的に回転する。
なお、嵌合凹部102c1においては、嵌合部44は、軸線方向(X方向)に若干の移動を可能としている。それにより、駆動軸40がスラスト方向に大きな荷重を受けた場合に、若干のガタ付きを可能としている。
また、中心軸部102cの他端側(X2側)の端面には、ボス部102c2が設けられている。ボス部102c2は、軸受B9に支持される部分である。なお、軸受B9は、スラストベアリングであり、駆動軸40側または筒状部52c側から押込力が加えられても、その荷重を受け止めることを可能としている。
また、第3フレーム13には、カバー111が取り付けられている。カバー111は、第3フレーム13とによって、ケース体110を構成し、そのケース体110によって外部から気密に閉塞される内部空間Pが形成される。この内部空間Pには、補助モータ100が位置するが、補助モータ100以外にもモータドライバ80やトルクセンサ70も位置する。
カバー111は、カップ状の外観に設けられていて、そのカップ状の周壁部111aの端部が第3フレーム13に突き当てられている。また、カップ状のカバー111の底部に対応するカバー端面部111bは、カバー111のうち第3フレーム13に対向する部分である。このカバー端面部111bのX1側の面の径方向中心には、軸受B9を支持するための軸受支持部111b1が設けられている。
<2.作用について>
次に、上述した補助モータ付きチェーンブロック10の作用について、説明する。不図示の下フックに荷を掛けた状態で、ハンドチェーンC2を巻き上げ方向に操作すると、ハンドホイール60が回転する。そして、ハンドホイール60の回転に伴い、このハンドホイール60とスプライン結合しているホイール支持部材52も回転する。すると、ホイール支持部材52は雌ネジ部52aでの多条ねじ42への噛合により、一端側(X1側)に向かって進行する。すると、フランジ部52bは、X2側のブレーキ板53bを押圧し、ブレーキ板53bは爪車54を押圧し、さらに爪車54はX1側のブレーキ板53aを押圧する。それにより、駆動軸40と共に非回転状態にあるブレーキ受け51は、ホイール支持部材52およびハンドホイール60と共に回転する状態となる。
すると、ブレーキ受け51は雌ネジ部51aでの多条ねじ42への噛合により、一端側(X1側)に向かって進行し、暫くしてブレーキ受け51が段部43に衝突して、これ以上の一端側(X1側)への移動が阻止される。これにより、ブレーキ受け51が駆動軸40と駆動的に結合する状態となり、ハンドホイール60の回転に伴って駆動軸40も回転する。
ところで、ハンドホイール60を回転させると、ハブ筒部62aおよび磁歪部分62cが捩じられる。すると、磁歪部分62cで透磁率の差が生じ、その透磁率に対応するインダクタンス変化により、捩じりのトルクが検出され、その捩じりのトルクに対応する電流がモータドライバ80からステータ101のコイルに導通される。
すると、アウターロータ102は、捩じりのトルクに対応したトルクにて、回転しようとする。そして、このトルクが、嵌合凹部102c1と嵌合部44との嵌合を介して、駆動軸40に伝達される。それにより、ハンドホイール60をハンドチェーンC2の手引きにより回転させると、その回転トルクに応じた出力が、補助モータ100から駆動軸40に与えられる。
そして、駆動軸40の駆動は、減速機構30を介してロードシーブ中空軸20に伝達されて、ロードシーブ中空軸20が回転させられる。それにより、ハンドチェーンC2は荷を上昇させる向きに送られる。
次に、吊り上げられている荷を下ろす場合、ハンドチェーンC2を荷を上昇させるときとは逆向きに送るようにする。すると、ハンドホイール60と共に回転するホイール支持部材52は、ブレーキ板53に対する圧接を緩めることになる。この緩めた分だけ駆動軸40が荷の荷重によって、巻き上げ方向とは逆に回転する。それにより、荷が徐々に下げられていく。
ここで、巻き上げ時、または巻き下げ時にハンドチェーンC2から手を離す場合でも、荷は落下しない。この場合、荷から作用する重力によって駆動軸40を逆転させようとしても、ハンドホイール60が回転しない状態では、ホイール支持部材52も回転しなく、そのホイール支持部材52における雌ネジ部52aでの多条ねじ42への噛合により、ホイール支持部材52が一端側(X1側)に向かい移動しようとする。すると、ホイール支持部材52がブレーキ板53を爪車54に押し付け、さらに爪車54がブレーキ板53を押し付ける。このとき、爪車54に爪部材の先端が噛み合い、爪車54の回転が阻止されているので、ブレーキ受け51は駆動軸40と共に回転しなく、ブレーキ受け51が段部43に衝突する。この衝突後は、駆動軸40の回転が阻止される。それにより、荷の落下が防止される。
<3.効果について>
以上のような構成の補助モータ付きチェーンブロック10によると、補助モータ100は、アウターロータ102を備えるアウターロータ方式のモータとなっている。このため、駆動軸40に対する慣性モーメントを大きくすることが可能となり、それによって補助モータ100から駆動軸40に駆動力を伝達するための減速機構を設けない構成とすることが可能となる。それにより、構成を簡素化することができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
加えて、アウターロータ方式の補助モータ100は、駆動軸40に直結された状態で駆動力を伝達する。そのため、吊り上げられている荷を下ろす場合(巻下げの場合)に、ハンドホイール60を回転させると、動き始めのときには若干のコギングによる抵抗はあるものの、一度動き出すと、荷の荷重等の作用により、その影響が低減されて、良好な巻き下げを行うことが可能となる。すなわち、特許文献1、2のような電磁クラッチを用いなくても、良好な巻き下げ動作を実現できる。それにより、構成を簡素化することができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
また、本実施の形態では、補助モータ100は、ケース体110によって覆われている。加えて、ハンドホイール60は、ケース体110の一方の端面側(X1側;第3フレーム13側)に回転自在に支持されている。このため、ケース体110によって、補助モータ100の気密性を十分に確保することが可能となり、埃や湿気等の外部環境からの影響を低減可能となる。さらに、ケース体110は、アウターロータ方式の補助モータ100の外周を覆う配置となるため、ケース体110は、駆動軸40の中心軸を中心として、これらと同軸的な配置を採用可能となる。それにより、ケース体110に不必要な膨らみ部分が形成されたり、モータからの駆動伝達経路等を覆う必要がなくなる。それにより、ケース体110が複雑な構成となるのを防いで、ケース体110の構成を簡素化することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、ステータ101は、円筒部材90(筒状部材に対応)を介して第3フレーム13に固定されていて、その円筒部材90の内筒側には、ロードシーブ中空軸20に駆動力を伝達するための駆動軸40が挿通されていて、この駆動軸40がアウターロータ102と一体回転する状態で連結されている。このように、回転しないステータ101が第3フレーム13側に固定される配置となるため、その第3フレーム13にカバー111を取り付けることで、内部空間Pが封止されたケース体110を構成し易くなる。しかも、ステータ101の孔部101aに駆動軸40を挿通させることで、アウターロータ102がステータ101と干渉しない構成とすることができる。
また、本実施の形態では、駆動軸40の外周側には、荷を吊り下げている場合の落下を防止するブレーキ機構50が設けられていて、ブレーキ機構50は、ケース体110の外部に設けられている。このため、ブレーキ板53の摩擦によって粉塵が発生しても、その粉塵が、密閉空間である内部空間Pに入り込んだり、留まったりするのを防止できる。
さらに、本実施の形態では、ケース体110の内部には、駆動軸40の外周側に配置されるトルクセンサ70と、トルクセンサ70およびステータ101のコイルに対して電気的に接続されるモータドライバ80とが取り付けられている。このため、補助モータ100以外の電気系統もケース体110で保護することが可能となり、故障がし難い構成とすることが可能となる。
また、補助モータ100、トルクセンサ70、およびモータドライバ80は、ケース体110によって1つのユニット化することが可能となる。そのため、ブレーキ機構50等のメンテナンスを行う場合にも、かかる1つのユニット化されたケース体110に収容されている部分を不要に分解したり取り外す必要がなくなり、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、ケース体110は、ハンドホイール60を回転自在に支持する第3フレーム13と、第3フレーム13に取り付けられると共に第3フレーム13から離れる側(X2側)にカバー端面部111bを有するカバー111を有している。そのため、第3フレーム13に補助モータ100を支持させる構成とした後に、第3フレーム13にカバー111を取り付ける構成とすることができ、組立性を向上させることが可能となる。しかも、アウターロータ102の開口部は、カバー端面部111bとは反対側の第3フレーム13と向き合う状態で設けられている。このため、アウターロータ102は、ステータ101や円筒部材90に対して、他方側(X2側)から一方側(X1側)に向かうように被せて取り付けることが可能となり、組立性を向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、アウターロータ102の外径は、ハンドホイール60の外径に対して、80〜110%の範囲内に設けられている。このため、補助モータ100の慣性モーメントを大きくすることが可能となると共に、スタッドボルトSBと干渉しない構成を実現可能となる。
なお、本実施の形態では、巻き上げまたは巻き下げ時にハンドチェーンC2を引っ張る場合、補助モータ付きチェーンブロック10は荷重の作用によって傾く。かかる傾きが大きくなると、補助モータ付きチェーンブロック10は不安定になってしまうので、ハンドホイール60は、ロードシーブ中空軸20側(図1におけるX1側)に寄せて配置する必要がある。その場合、爪車54はロードシーブ中空軸20側(X1側)に寄るように配置して、爪車54がハンドホイール60の邪魔にならない構成とすることができる。また、このような配置とする場合、従来のような、補助モータ100が存在しないチェーンブロックとも構成を共通化することができる。
また、本実施の形態では、特許文献1等のような補助モータの配置ではなく、ハンドホイール60の側方かつ外側(X2側)に、補助モータ100を配置する構成を採用している。かかる構成を採用することにより、手動のみによるチェーンブロックとの主要な構成部分を共通化させることができる。たとえば、図1および図2に示すタイプの補助モータ付きチェーンブロック10では、図2に示されている構成を1ユニット化し、その1ユニット化した構成を手動のみによるチェーンブロックに組み付ける(必要に応じて、駆動軸40も交換する)。また、図3に示すタイプの補助モータ付きチェーンブロック10Bにおいても、ハンドホイール60からX2側の構成を1ユニット化し、その1ユニット化した構成を手動のみによるチェーンブロックに組み付ける(必要に応じて、スタッドボルトSBや駆動軸40を交換する)。
それにより、手動のみによるチェーンブロックと、本実施の形態における補助モータ付きチェーンブロック10との構成を共通化することができる。また、部品の共通化によるコストの低減を図ることが可能となる。
また、図1および図2に示す構成では、ホイール支持部材52とホイールハブ62とを有する、二重に中空部材を有する構造とし、しかもハンドホイール60をロードシーブ中空軸20側(図1におけるX1側)に寄せた配置としている。かかる構成を採用する場合、次のようなメリットがある。
すなわち、本実施の形態のように、ハンドホイール60に加えられるトルクを検出するために、非接触かつ磁歪式のトルクセンサ70を用いる場合、トルクによる捻じり部分が存在する必要がある。本実施の形態では、駆動軸40の外周側に位置する中空部材(ホイール支持部材52、ホイールハブ62)が、そのような捻じり部分に対応し得る。
ここで、ホイール支持部材52とホイールハブ62とからなる、二重の中空部材を用いる場合には、図1および図2に示すように、捻じりの力の作用点(すなわちスプライン52dとスプライン62b)とを、ロードシーブ中空軸20から離して、上述のような捻じり部分が存在する構成を実現できる。しかし、ホイール支持部材52とホイールハブ62のうちのいずれか一方だけの一重の中空部材を用いる場合、上述した捻じり部分を形成するためには、ハンドホイール60を、ロードシーブ中空軸20から離した(X2側に位置させた)配置とすることが考えられる。その場合、磁歪式のトルクセンサ70は、ハンドホイール60よりもロードシーブ中空軸20側(X1側)に配置される状態となる。
しかし、このような一重の中空部材を用いた構成では、ハンドホイール60がロードシーブ中空軸20から離れた側(X2側)に位置するので、巻き上げまたは巻き下げ時にハンドチェーンC2を引っ張ると、補助モータ付きチェーンブロック10が大きく傾いてしまう。加えて、磁歪式のトルクセンサ70が、ブレーキ機構50の近くに配置される構成となると共に、中空部材は、ブレーキ板53bに接離する関係上、軸方向(X方向)にスライドする構成となり、その中空部材の周囲は、外気やブレーキ磨耗粉に対して、ケース等による密閉構造を採用し難い状態となってしまう。
これに対して、本実施の形態のように、中空部材の二重構造を採用する場合、ブレーキ機構50側が覆われた密閉構造とすることができ、さらに磁歪式のトルクセンサ70をブレーキ機構50から隔離させることができる。それにより、一重の中空部材で生じるような不具合が生じるのを防止可能となる。
<4.変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、補助モータ付きチェーンブロック10は、ケース体110を備え、このケース体110で閉塞された内部空間Pに補助モータ100が収納される構成となっている。しかしながら、ケース体110を備えない構成を採用しても良い。
補助モータ100として、アウターロータ方式を用いるものの、ケース体110を備えない構成の例を、図3に示す。図3は、本発明の変形例に係る補助モータ付きチェーンブロック10Bの構成を示す側断面図である。なお、変形例に係る補助モータ付きチェーンブロック10Bでは、上述の実施の形態に係る補助モータ付きチェーンブロック10と同様の構成については、同一の符号を用いている。
図3に示す補助モータ付きチェーンブロック10Bにおいては、アウターロータ102のロータ端面部102aは、ハンドホイール60に直接固定されている。そして、アウターロータ102は、その解放側が他端側(X2側)を向くように設けられている。一方、第3フレーム13は、ハンドホイール60からX2側に遠ざかる位置に設けられている。また、第3フレーム13の一方側(X1側)の面には、ステータ101が固定されている。なお、図3に示す補助モータ付きチェーンブロック10Bでは、ホイール支持部材52が省略された構成となっている。
このような構成の補助モータ付きチェーンブロック10Bにおいても、アウターロータ式の補助モータ100を用いることで、駆動軸40に対する慣性モーメントを大きくすることが可能となり、それによって補助モータ100から駆動軸40に駆動力を伝達するための減速機構を設けない構成とすることが可能となる。それにより、構成を簡素化することができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
また、特許文献1、2のような電磁クラッチを用いなくても、良好な巻き下げ動作を実現できる。それにより、構成を簡素化することができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
また、上述の実施の形態におけるアウターロータ102に、ファンを取り付けるようにしても良い。特に、モータドライバ80と対向する部位等にファンを取り付ける場合には、アウターロータ102の回転に伴って、モータドライバ80等を冷却することが可能となる。
さらに、上述の実施の形態では、アウターロータ102は、嵌合凹部102c1および嵌合部44を介して、駆動軸40に連結されている。また、図3に示す構成では、アウターロータ102は、ハンドホイール60に固定されている。しかしながら、アウターロータ102は、これら以外の構成に連結されていても良い。たとえば、ホイール支持部材52にアウターロータ102が連結される構成を採用しても良い。なお、ホイール支持部材52は、ブレーキ機構50の作動によるブレーキ締め付け、およびブレーキ開放に伴って、軸線方向(X方向)にスライドする。そのため、ホイール支持部材52にアウターロータ102が連結される構成を採用する場合にも、アウターロータ102に対してホイール支持部材52のスライドを許容する機構を設けることが好ましい。かかるスライドを許容する機構としては、上述したスプライン52dとスプライン62bと同様の機構が挙げられるが、たとえばキーとキー溝等のような他の機構としても良い。
また、図1の補助モータ付きチェーンブロック10においては、駆動軸40がアウターロータ102と直接連結される構成に代えて、ホイールハブ62のハブ筒部62aの先端側(X2側)がアウターロータ102と連結される構成としても良い。
また、上述の実施の形態では、第3フレーム13にカバー111が取り付けられて、ケース体110を構成している。しかしながら、ケース体は、このような構成には限られない。たとえば、カバー111の周壁部111aに対応する構成が、第3フレーム13と一体的に設けられていて、後にカバー端面部111bに対応する部分を蓋体として取り付けるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、補助モータ100の下フックに荷を吊り下げていないときでも、補助モータ付きチェーンブロック10が傾くのを防止するためには、ロードシーブ中空軸20のうち補助モータ100と反対側にカウンタウェイトを設けることが好ましい。かかるカウンタウェイトとしては、金属塊を用いるようにしても良い。しかしながら、補助モータ100が補助バッテリを備える構成とすることもでき、その場合には、補助バッテリをカウンタウェイトの代わりとして用いることもできる。