JP2014091375A - 伝達比可変装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロック時に耐滑り性が低下することを抑制できる伝達比可変装置を提供する。
【解決手段】ロック装置51は、モータ軸34と一体に設けられるとともに外周面に係合溝56が形成されたロックホルダ52、及び係合溝56に係合する係合部61が形成されてロックホルダ52の回転を拘束可能なロックアーム53を備えた。また、モータ軸34とロックホルダ52との間に介在され、摩擦抵抗に基づいてモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を規制又は許容するトレランスリング64を備えた。係合溝56は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74と、ロックホルダ52の径方向に沿った深さが第1及び第2浅溝73,74よりも深い深溝72とからなる。
【選択図】図3
【解決手段】ロック装置51は、モータ軸34と一体に設けられるとともに外周面に係合溝56が形成されたロックホルダ52、及び係合溝56に係合する係合部61が形成されてロックホルダ52の回転を拘束可能なロックアーム53を備えた。また、モータ軸34とロックホルダ52との間に介在され、摩擦抵抗に基づいてモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を規制又は許容するトレランスリング64を備えた。係合溝56は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74と、ロックホルダ52の径方向に沿った深さが第1及び第2浅溝73,74よりも深い深溝72とからなる。
【選択図】図3
Description
本発明は、差動機構を用いてステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する伝達比可変装置に関する。
従来、この種の伝達比可変装置として、ハウジングが自動車の車体に対して固定され、入力軸の回転によってハウジングが回転しないハウジング固定型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。こうした伝達比可変装置には、モータへの電力供給の停止時に、モータ軸が空転することを防いで入力軸と出力軸との間のトルク伝達を可能とすべく、同モータ軸の回転を拘束するロック装置が設けられている。
図6に示すように、特許文献1のロック装置81は、モータ軸82と一体的に設けられるロックホルダ83と、車体に対して固定されたハウジング(図示略)に設けられるロックアーム84とを備えている。そして、支持軸85を中心としてロックアーム84を回動させ、ロックホルダ83の外周面83aに形成された係合溝87に同ロックアーム84の係合部88を係合させることによりモータ軸82の回転を拘束(ロック)する。
具体的には、各係合溝87は、ロックホルダ83の外周面83aにおいて等間隔で4箇所に形成されており、隣り合う係合溝87の間には、見かけ上、各係合溝87における周方向両側の端壁部89が径方向外側に突出して形成されている。また、係合溝87は、係合溝87の周方向一端側の端壁部89に隣接して形成される浅溝91と、周方向他端側の端壁部89に隣接して形成されるとともに浅溝91よりも深い深溝92とにより構成されている。そして、ロックアーム84は、モータの回転方向に応じて浅溝91又は深溝92のいずれかに挿入された状態で端壁部89と係合することにより、モータ軸82の回転を拘束する。なお、係合部88が深溝92に挿入された状態では、ロックホルダ83の回転が周方向のいずれにも規制され、モータ軸82の回転角が保持される。また、端壁部89の側面89aは、係合部88の側面88aと係合した状態でロックホルダ83が回転することにより、同係合部88を径方向内側に押圧するように形成されており、ロック状態でロックホルダ83にトルクが入力されてもロックアーム84が係合溝87から離脱しないようになっている。
また、上記ハウジング固定型の伝達比可変装置に設けられるロック装置には、モータ軸82とロックホルダ83との間に介在されるトレランスリング93が設けられている。トレランスリング93は、例えばその外周面とロックホルダ83との間の摩擦抵抗に基づいてモータ軸82とロックホルダ83との相対回転を規制するとともに、所定値以上のトルク入力がある場合には、前記外周面が滑り面となることにより上記相対回転を許容する。ここで、トレランスリング93によりモータ軸82とロックホルダ83との相対回転が許容されるのは、差動機構の固着等の異常時にステアリング操作が妨げられることを防ぐフェールセーフ措置であるため、通常時にモータ軸82とロックホルダ83とが相対回転することは、装置の信頼性確保等の観点から好ましくない。
しかし、例えばステアリングを操舵エンドまで切り込んだ状態からさらに切り込んだ場合等、モータ軸82が高速で回転している状態でロックしようとすると、ロックアーム84の係合部88が係合溝87の端壁部89に係合する瞬間(ロック時)に、大きな衝撃力がロックホルダ83に作用する。その結果、異常時でなくとも、モータ軸82とロックホルダ83とが相対回転する、すなわちロックホルダ83がモータ軸82に対して滑る虞がある。そこで、こうした瞬間的な衝撃力に対する耐滑り性を向上すべく、従来から種々の提案がなされており、例えば特許文献2にはトレランスリングに弾性片を形成することで衝撃力を緩和するようにしたものが開示されている。
ところで、図7(a)に示すように、モータ軸とともにロックホルダ83が周方向一端側から他端側に向かって高速で回転している状態でロックしようとすると、多くの場合、先ずロックアーム84の係合部88が浅溝91の底面91aに接触する。そして、同図において二点鎖線で示すように、周方向一端側の端壁部89が係合部88に衝突してこれら係合部88と端壁部89とが係合することにより、係合部88が浅溝91に挿入された状態でロックされる。そのため、ロックホルダ83には、その周方向に沿った衝撃力が主として作用する。なお、図7において、ロックホルダ83に作用する衝撃力を白抜き矢印で模式的に示す。
一方、図7(b)に示すように、モータ軸82が周方向他端側から一端側に向かって高速で回転している状態でも、多くの場合、先ず係合部88が浅溝91の底面91aに接触する。しかし、この場合には、同図において二点鎖線で示すように、周方向他端側の端壁部89が係合部88に衝突することで、ロックアーム84が端壁部89により径方向内側に付勢され、同係合部88が深溝92の底面92aにも衝突する。そして、係合部88と端壁部89とが係合することにより、係合部88が深溝92に挿入された状態でロックされる。そのため、ロックホルダ83には、その周方向及び径方向に沿った衝撃力が作用する。その結果、ロックホルダ83(トレランスリング93)とモータ軸82との軸心がずれ、トレランスリング93とロックホルダ83との間の摩擦抵抗が減少することでロックホルダ83がモータ軸82に対して相対回転し易くなることがある。つまり、衝撃力に対する耐滑り性が低下する虞があり、この点においてなお改善の余地があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロック時に耐滑り性が低下することを抑制できる伝達比可変装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記差動機構及びモータを収容するとともに前記入力軸の回転によって回転しないハウジングと、前記ハウジングとモータ軸とを相対回転不能にロックするロック装置とを備え、前記ロック装置は、前記モータ軸と一体に設けられるとともに外周面に係合溝が形成されたロックホルダ、及び前記係合溝に係合する係合部が形成されて前記ロックホルダの回転を拘束可能なロックアームを有し、前記モータ軸と前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータ軸と前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトレランスリングが介在される伝達比可変装置において、前記係合溝は、前記ロックホルダの周方向に延びる浅溝、及び前記周方向に延びるとともに該ロックホルダの径方向に沿った深さが前記浅溝よりも深い深溝を有するものであって、前記浅溝は、前記係合溝の周方向一端側の端壁部に隣接して形成される第1浅溝と、周方向他端側の端壁部に隣接して形成される第2浅溝とを有することを要旨とする。
上記構成によれば、係合溝の周方向両側の端壁部には、それぞれ第1及び第2浅溝が隣接して形成されているため、モータ軸が高速で回転している状態でロックしようとすると、モータの回転方向に関係なく、係合部が浅溝に挿入された状態で端壁部と係合することにより、モータ軸の回転が拘束される。そのため、端壁部に隣接して深溝が形成される場合と異なり、ロックホルダには、主として周方向に沿った衝撃力が作用し、径方向に沿った衝撃力がほとんど作用しない。従って、ロック時にロックホルダとモータ軸との軸心がずれることを防止でき、ロック時に耐滑り性が低下することを抑制できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の伝達比可変装置において、前記第1浅溝の前記ロックホルダの周方向に沿った周方向長さは、前記第2浅溝の周方向長さよりも長く形成されるとともに、前記第1浅溝の深さは前記第2浅溝の深さよりも浅く形成されたことを要旨とする。
ここで、例えば係合部が第1浅溝の底面に接触した状態から、周方向他端側の端壁部に係合する場合には、係合部は深溝を飛び越えることになる。従って、第1浅溝の深さと第2浅溝の深さが同じ場合には、係合部が深溝を飛び越える際にロックホルダの径方向内側に変位することで同深溝の側面に当たり、ロックアームが弾かれる虞がある。
この点、上記構成によれば、第2浅溝は、第1浅溝よりも深く形成されているため、ロックアームが第1浅溝の底面に接触した状態から深溝を飛び越える際に、係合部が径方向内側に変位しても、同深溝の側面に衝突することを抑制できる。そして、第1浅溝の周方向長さが第2浅溝の周方向長さよりも長く形成されるため、モータ軸が高速で回転している状態では、通常、ロックアームの係合部は第2浅溝の底面に接触せず、第1浅溝の底面に接触するようになる。従って、ロックアームが弾かれることを防ぎ、安定して係合部を端壁部に係合させることができる。
本発明によれば、ロック時に耐滑り性が低下することを抑制できる伝達比可変装置を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
なお、車両用操舵装置1は、モータ13を駆動源として、ラック軸5を軸方向移動させる所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置として構成されている。すなわち、車両用操舵装置1は、モータ13の回転をボール螺子機構14によってラック軸5の往復動に変換して伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
車両用操舵装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する転舵輪12の舵角(タイヤ角)の比率、すなわち伝達比(ステアリングギヤ比)を可変させる伝達比可変装置15を備えている。伝達比可変装置15は、ステアリングシャフト3を構成するピニオン軸10の途中に設けられており、自動車の車体(図示略)に固定されるラックハウジング16に連結されたピニオンハウジング17内に収容されている。なお、本実施形態のピニオン軸10には、上記アシスト力の制御に用いる操舵トルクを検出するためのトルクセンサ18が併せて設けられている。
詳述すると、図2に示すように、ピニオンハウジング17は、ラックハウジング16の上部に固定された略円筒状のロアハウジング21と、同ロアハウジング21の上端に固定された略円筒状のアッパハウジング22とを備えている。そして、ピニオン軸10は、ピニオンハウジング17内に挿通されることにより、その一端に形成されたピニオン歯10aがラック軸5のラック歯(図示略)と噛合された状態で回転可能に支持されている。
ピニオン軸10は、中間軸9に連結される(図1参照)ことによりステアリング操作に伴う回転が入力される入力軸24と、一端に上記ピニオン歯10aが形成された出力軸25とにより構成されている。そして、伝達比可変装置15は、これら入力軸24及び出力軸25の間に介在された差動機構としての波動歯車機構26と、波動歯車機構26を駆動するモータ27とを備えており、ハウジングとしての前記アッパハウジング22に収容されている。なお、アッパハウジング22は、上記のように車体に対して固定されたラックハウジング16に固定されており、入力軸24の回転によって回転されないようになっている。
入力軸24は、アッパハウジング22の上端部22aに設けられた軸受31により回転可能に支持されている。一方、出力軸25は、ロアハウジング21に設けられた軸受32a,32bにより、その一端がアッパハウジング22内に突出した状態で回転可能に支持されている。なお、出力軸25は、その一端が波動歯車機構26に連結される第1の軸部材25aと、一端にピニオン歯10aが形成された第2の軸部材25bとを、トーションバー25cを介して連結することにより形成されている。そして、トルクセンサ18は、そのトーションバー25cの捩れ角を測定することにより、操舵系に入力される操舵トルクを検出するように構成されている。
伝達比可変装置15の駆動源であるモータ27は、中空状のモータ軸34を有するロータ35と、ロータ35を回転させるための回転磁界を発生させるステータ36とを備えている。ステータ36は、アッパハウジング22の内周に固定されたモータハウジング37内に配置されている。ロータ35は、モータハウジング37内に設けられた軸受38a,38bにより、回転可能に支持されている。そして、アッパハウジング22内に突出された出力軸25の一端は、このモータ軸34内に挿通されることにより、同アッパハウジング22の上端部22a(図2における上側の端部)近傍まで延設されている。
波動歯車機構26は、モータ27の軸方向一端側(図2における上側)に並置されている。そして、波動歯車機構26は、同軸に並置された一対のサーキュラスプライン41,42と、これら各サーキュラスプライン41,42と部分的に噛み合うように同軸配置された筒状のフレクスプライン43と、モータ駆動によりフレクスプライン43の噛合部を回転させる波動発生器44とを備えている。
各サーキュラスプライン41,42には、互いに異なる歯数が設定されており、フレクスプライン43は、略楕円状に撓められた状態で各サーキュラスプライン41,42の内側に配置されている。これにより、フレクスプライン43は、その外歯が該各サーキュラスプライン41,42の内歯とそれぞれ部分的に噛合される。そして、モータ27側に配置されたサーキュラスプライン41には入力軸24が連結されるとともに、アッパハウジング22の上端部22a側に配置されたサーキュラスプライン42には両サーキュラスプライン41,42よりも軸方向における上端部22a側に突出された出力軸25の一端が連結されている。
具体的には、出力軸25(第1の軸部材25a)は、同出力軸25の外周に嵌合される筒状部46aと、その外周から径方向外側に延設されてサーキュラスプライン42の内周に嵌合されるフランジ部46bとからなる連結部材46を介して同サーキュラスプライン42に連結されている。一方、入力軸24の内端には、その内径が各サーキュラスプライン41,42の外径よりも大径に形成された筒状部24aが形成されている。そして、入力軸24は、この筒状部24a内に波動歯車機構26及び連結部材46を収容する態様で、その内周がサーキュラスプライン41の外周に圧入嵌合されることにより、同サーキュラスプライン41と連結されている。
波動発生器44は、フレクスプライン43の内側に配置されており、モータ軸34の一端と連結されている。そして、モータ27に駆動されて上記撓められたフレクスプライン43の略楕円形状、すなわち両サーキュラスプライン41,42との噛合部を回転させるように構成されている。
そして、このように入力軸24及び出力軸25、並びにモータ軸34に対してそれぞれ連結された波動歯車機構26をモータ駆動することにより、ステアリング2と転舵輪12との間の伝達比(ギヤ比)を変更することが可能とされている。
詳しくは、ステアリング操作に伴う入力軸24の回転は、該入力軸24に連結されたサーキュラスプライン41からフレクスプライン43を介してサーキュラスプライン42に伝達され、これにより出力軸25へと伝達される。また、波動発生器44がモータ27によって駆動され、フレクスプライン43の楕円形状、すなわち両サーキュラスプライン41,42との噛合部が回転することにより、両サーキュラスプライン41,42間の歯数差に基づく回転差が、モータ駆動に基づく回転として上記ステアリング操作に基づく回転に上乗せされて出力軸25へと伝達される。これにより、入力軸24と出力軸25との間の回転伝達比、すなわちステアリング2と転舵輪12との間の伝達比を変更することが可能となっている。
また、伝達比可変装置15は、モータ27の軸方向他端側(図2における下側)に、ピニオンハウジング17に対してモータ軸34を回転不能にロックするロック装置51を備えている。そして、このロック装置51の作動により、必要に応じて、その伝達比を機械的に固定することが可能となっている。
詳述すると、図3に示すように、ロック装置51は、モータ軸34に固定されたロックホルダ52と、同ロックホルダ52(の回転)を拘束可能なロックアーム53と、該ロックアーム53を駆動するソレノイド54とを備えている。
ロックホルダ52は、略円環状に形成されるとともに、モータ軸34に固定されている。ロックホルダ52の外周面52aには、その厚み方向両側に開口し、周方向に延びる複数(本実施形態では4つ)の係合溝56が凹設されている。各係合溝56は、外周面52aにおいて等間隔で形成されており、隣り合う二つの係合溝56の間には、見かけ上、各係合溝56における周方向両側の端壁部57が径方向外側に突出している。なお、図3及び図4では、係合溝56でのロックホルダ52の外周面52a(端壁部57の頂面)の位置を二点鎖線で示している。
ロックアーム53は、ロックホルダ52の径方向外側に配置された支持軸59に対して、同支持軸59の軸心を中心として回動可能に軸支されている。ロックアーム53の一端には、ロックホルダ52の外周面52aに向かって突出する係合部61が設けられている。一方、同ロックアーム53の他端には、軸状のプランジャ62が連結されており、プランジャ62は、ソレノイド54の駆動によりその軸方向に沿って進退可能に構成されている。なお、支持軸59及びソレノイド54は、アッパハウジング22に固定されたモータ27のモータハウジング37上に固定されている(図2参照)。そして、ロックアーム53は、支持軸59の周囲に装着された捩りコイルバネ63の弾性力によって、その係合部61側の端部がロックホルダ52側に向かって回動するように付勢されている。
また、ロック装置51は、モータ軸34とロックホルダ52との間に介在されるトレランスリング64を備えている。トレランスリング64は、長尺状の金属板を略環状に湾曲させることにより形成されており、その環状のリング部からは径方向外側に突出する複数の凸部(図示略)が形成されている。そして、トレランスリング64は、その外周面(凸部)とロックホルダ52との摩擦抵抗に基づいてモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を規制する。一方、トレランスリング64は、所定値以上のトルク入力がある場合には、その外周面が滑り面となることにより、ロックホルダ52に対して相対回転することで上記モータ軸34とロックホルダ52との相対回転を許容する、すなわちトルクリミッタとしての機能を果たすようになっている。
このように構成されたロック装置51では、ソレノイド54への通電により、ロックアーム53は、捩りコイルバネ63の弾性力に抗してその係合部61がロックホルダ52の径方向外側に配置されるように駆動される。これにより、モータ軸34がアッパハウジング22に対して回転可能な非ロック状態となる。そして、非ロック状態では、上記のようにステアリング操作に基づく入力軸24の回転にモータ駆動に基づく回転が上乗せされて出力軸25に伝達される。
一方、ソレノイド54への通電が停止されることにより、ロックアーム53は、その係合部61側の端部がロックホルダ52側に向かって回動する。これにより、ロックアーム53の係合部61が係合溝56内に挿入され、同係合部61が端壁部57と係合することにより、ロックホルダ52を車体に固定されたアッパハウジング22に対して回転不能に拘束するロック状態となる。そして、ロック状態では、モータ27への電力供給の停止された状態においても、モータ軸34がステータ36に対して空転することを防止して入力軸24と出力軸25との間のトルク伝達が可能となる。また、ロック状態において、波動歯車機構26に異物の噛み込み等の異常が発生して入力軸24及び出力軸25がモータ軸34に対して相対回転不能となった場合でも、所定値以上のトルク入力により入力軸24及び出力軸25がモータ軸34と一体でアッパハウジング22に対して相対回転し、継続してステアリング操作を行うことが可能となる。
次に、本実施形態のロックホルダ52に形成された係合溝56の形状について詳細に説明する。
図3に示すように、各係合溝56は、ロックホルダ52の周方向に延びる浅溝71、及び周方向に延びるとともに同ロックホルダ52の径方向に沿った深さが浅溝71よりも深い深溝72からなる。そして、浅溝71は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、係合溝56の周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74とを有しており、深溝72は第1及び第2浅溝73,74間に形成されている。
図3に示すように、各係合溝56は、ロックホルダ52の周方向に延びる浅溝71、及び周方向に延びるとともに同ロックホルダ52の径方向に沿った深さが浅溝71よりも深い深溝72からなる。そして、浅溝71は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、係合溝56の周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74とを有しており、深溝72は第1及び第2浅溝73,74間に形成されている。
具体的には、図4に示すように、第1浅溝73のロックホルダ52の周方向長さL1は、ロックアーム53の係合部61の周方向長さLaよりも十分に大きく形成されている。一方、第2浅溝74のロックホルダ52の周方向長さL2は係合部61の周方向長さLaよりも小さく形成されている。つまり、第1浅溝73の周方向長さL1は、第2浅溝74の周方向長さL2よりも長く形成されている。また、第1浅溝73の深さH1は、第2浅溝74の深さH2よりも僅かに浅く形成されている。
なお、深溝72におけるロックホルダ52の周方向長さL3は、係合部61の周方向長さLaと略等しく形成されている。これにより、係合部61を深溝72に挿入することで、ロックホルダ52の回転が周方向のいずれにも規制され、ロック状態でのモータ軸34の回転角が保持される。また、深溝72の深さH3は、第1浅溝73の深さH1及び第2浅溝74の深さH2よりも深く形成されている。
また、端壁部57の側面57aは、係合部61と係合した状態でロックホルダ52が回転すると、同係合部61に径方向内側の力が作用するように形成されている。詳しくは、端壁部57の側面57aは、径方向外側に向かうにつれて係合溝56内に突出するように傾斜して形成されている。一方、係合部61の各側面61aは、対向する端壁部57の側面57aと略平行に形成されている。同様に、深溝72の側面72aは、係合部61と係合した状態でロックホルダ52が回転すると、同係合部61に径方向内側の力が作用するように形成されている。これにより、ロック状態でステアリング操作をした場合に、ロックアーム53がロックホルダ52に押し付けられ、係合溝56から離脱しないようになっている。
次に、本実施形態のロック装置51のロック動作について説明する。
図5(a)に示すように、モータ軸34が周方向一端側から他端側に向かって高速で回転している状態でロックしようとすると、多くの場合、先ず係合部61が第1浅溝73の底面73aに接触する。そして、同図において二点鎖線で示すように、周方向一端側の端壁部57が係合部61に衝突してこれら係合部61と端壁部57とが係合することにより、係合部61が第1浅溝73(浅溝71)に挿入された状態でロックされる。そのため、ロックホルダ52には、その周方向に沿った衝撃力が主として作用する。なお、図5において、ロックホルダ52に作用する衝撃力を白抜き矢印で模式的に示す。
図5(a)に示すように、モータ軸34が周方向一端側から他端側に向かって高速で回転している状態でロックしようとすると、多くの場合、先ず係合部61が第1浅溝73の底面73aに接触する。そして、同図において二点鎖線で示すように、周方向一端側の端壁部57が係合部61に衝突してこれら係合部61と端壁部57とが係合することにより、係合部61が第1浅溝73(浅溝71)に挿入された状態でロックされる。そのため、ロックホルダ52には、その周方向に沿った衝撃力が主として作用する。なお、図5において、ロックホルダ52に作用する衝撃力を白抜き矢印で模式的に示す。
一方、図5(b)に示すように、モータ軸34が周方向他端側から一端側に向かって高速で回転している状態でも、多くの場合、先ず係合部61が第1浅溝73の底面73aに接触する。そして、同図において二点鎖線で示すように、係合部61が深溝72を飛び越え、周方向他端側の端壁部57が同係合部61に衝突してこれら係合部61と端壁部57とが係合することにより、係合部61が第2浅溝74(浅溝71)に挿入された状態でロックされる。そのため、ロックホルダ52には、その周方向に沿った衝撃力が主として作用する。
つまり、モータ軸34が高速で回転している状態でロックしようとすると、モータ軸34の回転方向に関係なく、ロックホルダ52には、主としてロックホルダ52の周方向に沿った衝撃力が作用する。なお、モータ軸34を低速で回転させる場合(例えば、イグニッションオフ時)には、係合部61は第1浅溝73の底面73a又は第2浅溝74の底面74aに接触した状態から深溝72を飛び越えず、同深溝72内に挿入される。
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ロックホルダ52の外周面52aに形成された係合溝56は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74と、ロックホルダ52の径方向に沿った深さが第1及び第2浅溝73,74よりも深い深溝72とからなる。
(1)ロックホルダ52の外周面52aに形成された係合溝56は、係合溝56の周方向一端側の端壁部57に隣接して形成される第1浅溝73と、周方向他端側の端壁部57に隣接して形成される第2浅溝74と、ロックホルダ52の径方向に沿った深さが第1及び第2浅溝73,74よりも深い深溝72とからなる。
上記構成によれば、モータ軸34が高速で回転している状態でロックしようとすると、モータ27の回転方向に関係なく、係合部61が浅溝71に挿入された状態で端壁部57と係合することにより、モータ軸34の回転が拘束される。そのため、端壁部57に隣接して深溝が形成される場合(図7参照)と異なり、ロックホルダ52には、主として周方向に沿った衝撃力が作用し、径方向に沿った衝撃力がほとんど作用しない。従って、ロック時にロックホルダ52とモータ軸34との軸心がずれることを防止でき、衝撃力が作用した時にモータ軸34とロックホルダ52とが相対回転することを規制する性能(耐滑り性)が低下することを抑制できる。
(2)第1浅溝73の周方向長さL1を第2浅溝74の周方向長さL2よりも長く形成するとともに、第1浅溝73の深さH1を第2浅溝74の深さH2よりも浅く形成した。
ここで、例えば係合部61が第1浅溝73の底面73aに接触した状態から、周方向他端側の端壁部57に係合する場合には、係合部61は深溝72を飛び越えることになる。従って、第1浅溝73の深さH1と第2浅溝74の深さH2が同じ場合には、係合部61が深溝72を飛び越える際にロックホルダ52の径方向内側に変位することで同深溝72の側面72aに当たり、ロックアーム53が弾かれる虞がある。
ここで、例えば係合部61が第1浅溝73の底面73aに接触した状態から、周方向他端側の端壁部57に係合する場合には、係合部61は深溝72を飛び越えることになる。従って、第1浅溝73の深さH1と第2浅溝74の深さH2が同じ場合には、係合部61が深溝72を飛び越える際にロックホルダ52の径方向内側に変位することで同深溝72の側面72aに当たり、ロックアーム53が弾かれる虞がある。
この点、上記構成によれば、第2浅溝74は、第1浅溝73よりも深く形成されているため、ロックアーム53が第1浅溝73の底面73aに接触した状態から深溝72を飛び越える際に、係合部61が径方向内側に変位しても、同深溝72の側面に衝突することを抑制できる。そして、第1浅溝73の周方向長さL1が第2浅溝74の周方向長さL2よりも長く形成されるため、モータ軸34が高速で回転している状態では、通常、係合部61は第2浅溝74の底面74aに接触せず、第1浅溝73の底面74aに接触するようになる。従って、ロックアーム53が弾かれることを防ぎ、安定して係合部61を端壁部57に係合させることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1浅溝73の周方向長さL1を第2浅溝74の周方向長さL2よりも長く形成したが、これに限らず、例えば第1浅溝73の周方向長さL1を第2浅溝74の周方向長さL2と等しく形成し、深溝72が係合溝56の中央付近に形成されるようにしてもよい。
・上記実施形態では、第1浅溝73の周方向長さL1を第2浅溝74の周方向長さL2よりも長く形成したが、これに限らず、例えば第1浅溝73の周方向長さL1を第2浅溝74の周方向長さL2と等しく形成し、深溝72が係合溝56の中央付近に形成されるようにしてもよい。
・上記実施形態では、第1浅溝73の深さH1を第2浅溝74の深さH2よりも浅く形成したが、これに限らず、例えば第1浅溝73の深さH1を第2浅溝74の深さH2と等しくなるように形成してもよい。
・上記実施形態では、係合溝56は深溝72を1つだけ有する構成としたが、これに限らず、複数の深溝72を有する構成としてもよい。
・上記実施形態では、トレランスリング64がロックホルダ52に対して相対回転することでモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を許容するようにしたが、これに限らず、トレランスリング64がモータ軸34に対して相対回転することで同モータ軸34とロックホルダ52の相対回転を許容するようにしてもよい。
・上記実施形態では、トレランスリング64がロックホルダ52に対して相対回転することでモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を許容するようにしたが、これに限らず、トレランスリング64がモータ軸34に対して相対回転することで同モータ軸34とロックホルダ52の相対回転を許容するようにしてもよい。
・上記実施形態では、波動歯車機構26には、同軸に並置された筒状をなす一対のサーキュラスプライン41,42を有する所謂リング型のものを用いたが、一のサーキュラスプラインと有底筒状に形成されたフレクスプラインとの歯数差に基づく回転差を減速比として取り出す所謂カップ型のものを用いてもよい。
1…車両用操舵装置、3…ステアリングシャフト、10…ピニオン軸、15…伝達比可変装置、16…ラックハウジング、17…ピニオンハウジング、21…ロアハウジング、22…アッパハウジング、24…入力軸、25…出力軸、26…波動歯車機構、27…モータ、34…モータ軸、51…ロック装置、52…ロックホルダ、52a…外周面、53…ロックアーム、54…ソレノイド、56…係合溝、57…端壁部、59…支持軸、61…係合部、62…プランジャ、63…捩りコイルバネ、64…トレランスリング、71…浅溝、72…深溝、73…第1浅溝、74…第2浅溝、H1,H2,H3…深さ、L1,L2,L3,La…周方向長さ。
Claims (2)
- ステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記差動機構及びモータを収容するとともに前記入力軸の回転によって回転しないハウジングと、前記ハウジングとモータ軸とを相対回転不能にロックするロック装置とを備え、前記ロック装置は、前記モータ軸と一体に設けられるとともに外周面に係合溝が形成されたロックホルダ、及び前記係合溝に係合する係合部が形成されて前記ロックホルダの回転を拘束可能なロックアームを有し、前記モータ軸と前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータ軸と前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトレランスリングが介在される伝達比可変装置において、
前記係合溝は、前記ロックホルダの周方向に延びる浅溝、及び前記周方向に延びるとともに該ロックホルダの径方向に沿った深さが前記浅溝よりも深い深溝を有するものであって、
前記浅溝は、前記係合溝の周方向一端側の端壁部に隣接して形成される第1浅溝と、周方向他端側の端壁部に隣接して形成される第2浅溝とを有することを特徴とする伝達比可変装置。 - 請求項1に記載の伝達比可変装置において、
前記第1浅溝の前記ロックホルダの周方向に沿った周方向長さは、前記第2浅溝の周方向長さよりも長く形成されるとともに、前記第1浅溝の深さは前記第2浅溝の深さよりも浅く形成されたことを特徴とする伝達比可変装置。
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JP2012242124A JP2014091375A (ja) | 2012-11-01 | 2012-11-01 | 伝達比可変装置 |
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WO2019243062A1 (de) * | 2018-06-22 | 2019-12-26 | Hs Products Engineering Gmbh | Antriebsvorrichtung, sitzverstellungsvorrichtung und verfahren zum verstellen eines bewegbaren bauteils eines kraftfahrzeugs |
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