JP2014091415A - 伝達比可変装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を向上させることのできる伝達比可変装置を提供する。
【解決手段】モータ軸34の回転をロックするロック装置51は、モータ軸34の外周にトレランスリング75を介して一体回転可能に設けられた円環状のロックホルダ52と、モータハウジングに固定された支持軸53に回動可能に設けられたロックアーム54と、ロックアーム54を駆動する駆動機構55とを備える。ロックホルダ52には、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数の係合溝63が形成されるとともに、この切り欠いた残りの部分が、隣り合う係合溝63の間を区画する区画部65a〜65dとして径方向外側を向く突起状に形成される。そして、区画部65aの高さHaは、他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高くなるように形成される。
【選択図】図3
【解決手段】モータ軸34の回転をロックするロック装置51は、モータ軸34の外周にトレランスリング75を介して一体回転可能に設けられた円環状のロックホルダ52と、モータハウジングに固定された支持軸53に回動可能に設けられたロックアーム54と、ロックアーム54を駆動する駆動機構55とを備える。ロックホルダ52には、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数の係合溝63が形成されるとともに、この切り欠いた残りの部分が、隣り合う係合溝63の間を区画する区画部65a〜65dとして径方向外側を向く突起状に形成される。そして、区画部65aの高さHaは、他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高くなるように形成される。
【選択図】図3
Description
本発明は、差動機構を用いてステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する伝達比可変装置に関する。
従来、この種の伝達比可変装置として、差動機構及びモータを収容するハウジングが自動車の車体に固定され、入力軸の回転によってハウジングが回転しない所謂ハウジング固定型のものが知られている(例えば、特許文献1)。こうした伝達比可変装置には、モータへの電力供給の停止時に、モータ軸が空転することを防いで入力軸と出力軸との間のトルク伝達を可能とすべく、同モータ軸の回転を拘束するロック装置が設けられている。
図5に示す例では、ロック装置81は、モータ軸82に嵌合された環状のロックホルダ83と、車体に対して固定されたハウジング(図示略)に支持軸84を介して回動可能に設けられたロックアーム85とを備えている。ロックホルダ83には、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数の係合溝88が等角度間隔で形成されている。各係合溝88は、周方向へ所定長さに亘って円弧状に切り欠いた浅溝86と、この浅溝86の周方向一側に隣接して、二点鎖線で示すロックホルダ83の最外径面を基準とする径方向に沿った深さが浅溝86よりも深くなるように切り欠いた深溝87とを有している。これにより、ロックホルダ83を前記のように切り欠いた残りの部分が、見かけ上、隣り合う係合溝88間を区画する区画部89として径方向外側を向く突起状に形成されている。そして、ロック装置81は、ロックアーム85が支持軸84を中心として回動し、該ロックアーム85の爪部91が係合溝88に挿入されて区画部89に係合することによりモータ軸82の回転を拘束(ロック)する。なお、深溝87の周方向長さは、浅溝86の周方向長さよりも十分に短く形成されており、爪部91が深溝87に挿入された状態では、ロックホルダ83の回転が周方向のいずれにも規制され、モータ軸82の回転角が保持される。
また、上記ハウジング固定型の伝達比可変装置に設けられるロック装置81では、モータ軸82とロックホルダ83との間にトレランスリング93が介在されている。トレランスリング93は、例えばその外周面とロックホルダ83との間の摩擦抵抗に基づいてモータ軸82とロックホルダ83との相対回転を規制するとともに、所定値以上のトルク入力がある場合には、前記外周面が滑り面となることにより上記相対回転を許容する。これにより、モータ軸の回転が拘束されたロック状態で、異物の噛み込みにより差動機構が回転不能となった場合でも、ステアリング操作が妨げられることを防止している。
ところで、トレランスリング93によりモータ軸82とロックホルダ83との相対回転が許容されるのは、上記のように差動機構の異常時においてステアリング操作が妨げられることを防ぐフェールセーフ措置であり、通常時にモータ軸82とロックホルダ83とが相対回転することは、装置の信頼性確保等の観点から好ましくない。しかし、例えばステアリングを操舵エンドまで切り込んだ状態からさらに切り込んだ場合等、モータ軸82が高速で回転している状態で該モータ軸82の回転をロックするロック動作が行われると、爪部91が区画部89に衝突して係合することで、ロックホルダ83に周方向の大きな衝撃力が作用する。その結果、異常時でなくとも、モータ軸82とロックホルダ83とが相対回転する、すなわちロックホルダ83がモータ軸82に対して滑る虞があり、この点においてなお改善の余地があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を向上させることのできる伝達比可変装置を提供することにある。
上記課題を解決する伝達比可変装置は、ステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記入力軸の回転によって回転しない非回転部材とモータ軸とを相対回転不能に拘束するロック装置と、を備え、前記ロック装置は、前記モータ軸と一体回転可能に設けられた環状のロックホルダ、及び前記非回転部材に設けられたロックアームを有し、前記ロックホルダには、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数の係合溝が形成されるとともに、この切り欠いた残りの部分が、隣り合う前記係合溝の間を区画する区画部として径方向外側を向く突起状に形成され、前記ロックアームの爪部が前記区画部に係合することにより、前記ロックホルダの回転を拘束するものであり、前記モータ軸と前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータ軸と前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトレランスリングが介在されるものにおいて、前記各区画部は、該各区画部の外周面から該ロックホルダの中心までの距離である高さが不均一となるように形成されたことを要旨とする。
上記構成によれば、各区画部の高さが不均一であるため、モータ軸が高速で回転している状態でロック動作が行われると、高い区画部にロックアームの爪部が係合(衝突)し易くなる。つまり、長期間に亘る使用において、高い区画部に爪部が係合する頻度が、低い区画部に係合する頻度よりも高くなる。その結果、高い区画部に高頻度で衝撃力が作用することで、ロックホルダの軸線がモータ軸の軸線に対して僅かに傾斜する状態(以下、軸こじり状態という)となる。そして、ロックホルダが軸こじり状態となることにより、ロックホルダの軸線がモータ軸の軸線に対して平行な状態である場合に比べ、ロックホルダがモータ軸に対して相対回転し難くなる。したがって、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を向上させることができる。
上記伝達比可変装置において、前記各区画部のうちのいずれか1つの高さが、他の区画部の高さよりも高くなるように形成されることが好ましい。
上記構成によれば、モータ軸が高速で回転している状態でロック動作が行われると、最も高い区画部に爪部が集中的に係合し、当該区画部に集中的に衝撃力が作用するようになる。そのため、ロックホルダが軸こじり状態となるとともに、他の低い区画部に衝撃力が作用して軸こじり状態が解消されることが抑制される。これにより、ロックホルダの軸こじり状態を持続でき、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を効果的に向上させることができる。
上記構成によれば、モータ軸が高速で回転している状態でロック動作が行われると、最も高い区画部に爪部が集中的に係合し、当該区画部に集中的に衝撃力が作用するようになる。そのため、ロックホルダが軸こじり状態となるとともに、他の低い区画部に衝撃力が作用して軸こじり状態が解消されることが抑制される。これにより、ロックホルダの軸こじり状態を持続でき、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を効果的に向上させることができる。
上記伝達比可変装置において、前記爪部と前記区画部とが係合したときの該区画部上の係合領域は、その軸方向中央位置が該区画部の軸方向中央位置からずれるように設けられることが好ましい。
上記構成によれば、ロック動作時の衝撃力がロックホルダの軸方向中央位置からずれた位置に作用するため、該衝撃力によってより確実にロックホルダを軸こじり状態とすることができる。
本発明によれば、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を向上させることができる。
以下、伝達比可変装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。なお、車両用操舵装置1は、所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置として構成されており、モータとボール螺子機構とからなるパワーアシスト部13を備えている。なお、パワーアシスト部13では、モータの回転をボール螺子機構によってラック軸5の往復動に変換して伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与するようになっている。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。なお、車両用操舵装置1は、所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置として構成されており、モータとボール螺子機構とからなるパワーアシスト部13を備えている。なお、パワーアシスト部13では、モータの回転をボール螺子機構によってラック軸5の往復動に変換して伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与するようになっている。
車両用操舵装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する転舵輪12の舵角(タイヤ角)の比率、すなわち伝達比(ステアリングギヤ比)を変更可能な伝達比可変装置15を備えている。伝達比可変装置15は、ステアリングシャフト3を構成するピニオン軸10の途中に設けられており、自動車の車体(図示略)に固定されるラックハウジング17に連結されたピニオンハウジング18内に収容されている。なお、本実施形態のピニオン軸10には、上記アシスト力の制御に用いる操舵トルクを検出するためのトルクセンサ19が併せて設けられている。
詳述すると、図2に示すように、ピニオンハウジング18は、ラックハウジング17の上部に固定された略円筒状のロアハウジング21と、ロアハウジング21の上端に固定された略円筒状のアッパハウジング22とを備えている。そして、ピニオン軸10は、ピニオンハウジング18内に挿通されることにより、その一端に形成されたピニオン歯10aがラック軸5のラック歯(図示略)と噛合された状態で回転可能に支持されている。なお、「上」、「下」等の語は、車両の上下方向に対応した意味を有する。
ピニオン軸10は、中間軸9に連結される(図1参照)ことによりステアリング操作に伴う回転が入力される入力軸24と、一端に上記ピニオン歯10aが形成された出力軸25とにより構成されている。伝達比可変装置15は、これら入力軸24及び出力軸25の間に介在される差動機構としての波動歯車機構26と、波動歯車機構26を駆動するモータ27とを備えており、アッパハウジング22に収容されている。そして、伝達比可変装置15は、波動歯車機構26を用いてステアリング操作に伴う入力軸24の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸25に伝達し、ラックアンドピニオン機構4に入力される回転を増速(又は減速)することにより、ステアリング2と転舵輪12との間の伝達比を任意に変更することが可能となっている。
さらに詳述すると、入力軸24は、アッパハウジング22の上端部22aに設けられた軸受31により回転可能に支持されている。一方、出力軸25は、ロアハウジング21に設けられた軸受32a,32bにより、その一端側がアッパハウジング22内に突出した状態で回転可能に支持されている。また、出力軸25は、その一端が波動歯車機構26に連結される第1の軸部材25aと、一端にピニオン歯10aが形成された第2の軸部材25bとを、トーションバー25cを介して連結することにより形成されている。なお、トルクセンサ19は、そのトーションバー25cの捩れ角を測定することにより、操舵系に入力される操舵トルクを検出する。
伝達比可変装置15のモータ27は、中空状のモータ軸34を有するロータ35と、ロータ35を回転させるための回転磁界を発生させるステータ36とを備えたブラシレスモータとして構成されている。ステータ36は、アッパハウジング22の内周に固定されたモータハウジング37内に配置されている。ロータ35(モータ軸34)は、モータハウジング37内に設けられた軸受38a,38bにより回転可能に支持されている。そして、出力軸25におけるアッパハウジング22内に突出された部分は、モータ軸34内に相対回転可能に挿通され、その一端が同アッパハウジング22の上端部22a(図2における上側の端部)近傍に配置されている。なお、モータ27の下端側には、ロータ35の回転角を検出する回転角センサ39が設けられている。
波動歯車機構26は、モータ27の上端側に並置されている。なお、波動歯車機構26は、同軸に並置された一対のサーキュラスプライン41,42と、各サーキュラスプライン41,42と部分的に噛み合うように同軸配置された筒状のフレクスプライン43と、モータ駆動によりフレクスプライン43の噛合部を回転させる波動発生器44とを有する周知の構成となっている(例えば、特許文献1参照)。そして、波動歯車機構26は、入力軸24にサーキュラスプライン41が連結されるとともに、出力軸25にサーキュラスプライン42が連結されており、波動発生器44をモータ駆動することにより、ステアリング2と転舵輪12との間の伝達比を変更する。
また、伝達比可変装置15は、回転角センサ39の下端側に、モータハウジング37に対してモータ軸34を回転不能に拘束(ロック)するロック装置51を備えている。なお、モータハウジング37は、アッパハウジング22を介して上記のように車体に対して固定されたラックハウジング17に固定されており、入力軸24の回転によって回転されないようになっている。すなわち、本実施形態では、モータハウジング37が非回転部材に相当する。そして、このロック装置51により、必要に応じて、その伝達比を機械的に固定することが可能となっている。
詳述すると、図3に示すように、ロック装置51は、モータ軸34の外周に一体回転可能に嵌合されたロックホルダ52と、モータハウジング37上に固定された支持軸53に回動可能に設けられたロックアーム54と、ロックアーム54を駆動する駆動機構55とを備えている。
ロックホルダ52は、略円環状に形成されている。ロックホルダ52には、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数(本実施形態では、4つ)の係合溝63が等角度間隔で形成されている。本実施形態の各係合溝63は、周方向へ所定長さに亘って円弧状に切り欠いた浅溝61と、この浅溝61の周方向一側に隣接して、二点鎖線で示すロックホルダ52の最外径面を基準とする径方向に沿った深さが浅溝61よりも深くなるように切り欠いた深溝62とを有している。これにより、ロックホルダ52を前記のように切り欠いた残りの部分が、見かけ上、隣り合う係合溝63間を区画する区画部65として径方向外側を向く突起状に形成されている。
支持軸53は、ロックホルダ52から離れた位置でモータ軸34と平行になるように固定されている。ロックアーム54は、支持軸53が挿通される略円筒状の筒状部67と、筒状部67からその径方向外側に延出されるアーム部68と、アーム部68の先端からロックホルダ52に向かって突出する爪部69と、筒状部67からアーム部68と反対側に延出される連結部70とを有している。連結部70には、一端が開口した長円形状の長孔70aがそれぞれ形成されている。そして、ロックアーム54は、その筒状部67に支持軸53が挿通されることにより、支持軸53を中心として回動可能に支持されている。
駆動機構55は、軸状のプランジャ71と、プランジャ71を電磁的な吸引力によりその軸方向に移動させるソレノイド72と、ロックアーム54を付勢する一対の付勢部材73とを備えている。プランジャ71は、長孔70aに挿入されるヒンジピン74を介してロックアーム54の連結部70に連結されている。なお、ソレノイド72は、モータハウジング37上に固定されている。また、付勢部材73は、それぞれ捩りコイルバネからなり、支持軸53におけるロックアーム54の上側と下側に設けられている。そして、各付勢部材73は、その一端が支持軸53に係止するとともに、その他端がロックアーム54に係止することで、それぞれ爪部69がロックホルダ52に近接するようにロックアーム54を付勢している。これにより、ロックアーム54は、支持軸53に対して回動可能、かつ、該支持軸53の軸方向には各付勢部材73によって弾性的に支持されている。したがって、ロックアーム54は、その爪部69が係合溝63に挿入されて区画部65と係合することによりモータ軸34の回転を拘束(ロック)する。なお、深溝62の周方向長さは、浅溝61の周方向長さよりも十分に短く形成されており、爪部69が深溝62に挿入された状態では、ロックホルダ52の回転が周方向のいずれにも規制され、モータ軸34の回転角が保持される。一方、ソレノイド72への通電によってプランジャ71が後退し、付勢部材73の付勢力に抗して爪部69をロックホルダ52から離間させることにより、モータ軸34のロックを解除する。
また、モータ軸34とロックホルダ52との間には、トレランスリング75が介在されている。なお、図3では、説明の便宜上、トレランスリング75の大きさを誇張して示す。トレランスリング75は、帯状の金属板を略C字状に湾曲させることにより形成されており、その本体部76からは径方向外側に突出する複数の凸部77が形成されている。そして、トレランスリング75は、その外周面(凸部77)とロックホルダ52との摩擦抵抗に基づいてモータ軸34とロックホルダ52との相対回転を規制する。一方、トレランスリング75は、所定値以上のトルク入力がある場合には、その外周面が滑り面となることにより、ロックホルダ52に対して相対回転することで上記モータ軸34とロックホルダ52との相対回転を許容する、すなわちトルクリミッタとしての機能を果たすようになっている。
したがって、ソレノイド72への通電によりロックアーム54の爪部69がロックホルダ52から離間する方向に駆動されたロック解除状態では、モータ軸34がアッパハウジング22に対して回転可能となる。これにより、上記のようにステアリング操作に基づく入力軸24の回転にモータ駆動に基づく回転が上乗せされて出力軸25に伝達される。
一方、ロックアーム54の爪部69が係合溝63内に挿入されて区画部65と係合したロック状態では、モータ軸34のアッパハウジング22に対する回転が拘束される。このようなロック状態では、モータ27への電力供給の停止された状態においても、モータ軸34がステータ36に対して空転することを防止して入力軸24と出力軸25との間のトルク伝達が可能となる。また、ロック状態において、波動歯車機構26に異物の噛み込み等の異常が発生して入力軸24及び出力軸25がモータ軸34に対して相対回転不能となった場合でも、所定値以上のトルクが入力されることにより入力軸24及び出力軸25がモータ軸34と一体でアッパハウジング22に対して相対回転する。これにより、異常時においても継続してステアリング操作を行うことが可能な構成となっている。
ここで、例えばステアリング2を操舵エンドまで切り込んだ状態からさらに切り込んでいる場合等、モータ軸34が高速で回転している状態で該モータ軸34の回転をロックするロック動作が行われると、爪部69が区画部65に衝突して係合することで、ロックホルダ52に周方向の大きな衝撃力が作用する。その結果、上記のように波動歯車機構26の異常時でなくとも、モータ軸34とロックホルダ52とが相対回転する、すなわちロックホルダ52がモータ軸34に対して滑る虞がある。
この点を踏まえ、図3に示すように、4つの区画部65のうちの1つである区画部65a(図3中、上側に配置された区画部65)は、その外周面から該ロックホルダ52の中心Oまでの距離である高さHaが、他の区画部65b〜65dの外周面から中心Oまでの距離である高さHb〜Hdよりも高くなるように形成されている。また、区画部65b〜65dの高さHb〜Hdはそれぞれ略等しく形成されている。なお、区画部65aの高さHaと区画部65b〜65dの高さHb〜Hdとの差は、この差に応じた距離を付勢部材73により付勢されて回動するロックアーム54の爪部69が移動する前に、高速回転しているモータ軸34(ロックホルダ52)が一回転以上するような大きさに設定されている。また、図3中、二点鎖線で示すロックホルダ52の最外径面は、区画部65aの外周面を含む面となっている。
また、図4に示すように、ロックアーム54は、その軸方向(厚み方向)中央位置がロックホルダ52の軸方向(厚み方向)中央位置からずれるように設けられている。これにより、ロックアーム54の爪部69とロックホルダ52の区画部65とが係合したときの該区画部65上の係合領域T(図4中、便宜上、クロスハッチ(×印)を付した領域)は、その軸方向中央位置が該区画部65(ロックホルダ52)の軸方向中央位置からずれるように設けられている。換言すると、ロックアーム54は、爪部69から区画部65に作用する力(衝撃力)の中心がロックホルダ52の軸方向中央位置と一致しないように設けられている。なお、係合領域Tが区画部65の軸方向中央位置を含むか否かは問わない。
次に、本実施形態の伝達比可変装置におけるロック装置のロック動作(作用)について説明する。
区画部65aの高さHaが、他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高いため、モータ軸34が高速で回転している状態でロック動作が行われると、高い区画部65aにロックアーム54の爪部69が係合(衝突)し易くなる。つまり、区画部65aに爪部69が高頻度で集中的に係合し、当該区画部65aに衝撃力が集中的に作用する。また、ロックアーム54は、爪部69の区画部65に対する係合領域Tの軸方向中央位置が区画部65の軸方向中央位置からずれるように設けられているため、ロック動作時の衝撃力は、高い区画部65aにおけるロックホルダ52の軸方向中央位置からずれた位置に集中的に作用するようになる。これにより、ロックホルダ52の軸線がモータ軸34の軸線に対して僅かに傾斜する状態(以下、軸こじり状態という)となるとともに、低い区画部65b〜65dに衝撃力が作用してロックホルダ52の軸こじり状態が解消されることが抑制される。そして、ロックホルダ52が軸こじり状態となることにより、ロックホルダ52の軸線がモータ軸34の軸線に対して平行な場合に比べ、ロックホルダ52がモータ軸34に対して相対回転し難くなる。
区画部65aの高さHaが、他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高いため、モータ軸34が高速で回転している状態でロック動作が行われると、高い区画部65aにロックアーム54の爪部69が係合(衝突)し易くなる。つまり、区画部65aに爪部69が高頻度で集中的に係合し、当該区画部65aに衝撃力が集中的に作用する。また、ロックアーム54は、爪部69の区画部65に対する係合領域Tの軸方向中央位置が区画部65の軸方向中央位置からずれるように設けられているため、ロック動作時の衝撃力は、高い区画部65aにおけるロックホルダ52の軸方向中央位置からずれた位置に集中的に作用するようになる。これにより、ロックホルダ52の軸線がモータ軸34の軸線に対して僅かに傾斜する状態(以下、軸こじり状態という)となるとともに、低い区画部65b〜65dに衝撃力が作用してロックホルダ52の軸こじり状態が解消されることが抑制される。そして、ロックホルダ52が軸こじり状態となることにより、ロックホルダ52の軸線がモータ軸34の軸線に対して平行な場合に比べ、ロックホルダ52がモータ軸34に対して相対回転し難くなる。
なお、ロックホルダ52のモータ軸34の対する傾斜は僅かであるため、波動歯車機構26の異常時においてステアリング操作に必要な操舵力が過大になることは防止される。また、例えばイグニッションオフ時等、モータ軸34が停止又は低速で回転している場合には、ロックアーム54が付勢部材73により付勢されて回動する間に、ロックホルダ52がほとんど回転しないため、爪部69は高い区画部65aに対して集中的には係合せず、他の低い区画部65b〜65dに対しても略均等に係合する。
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)区画部65の高さHaを他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高く形成することで、上記のように当該区画部65aに衝撃力が集中的に作用するようになるため、ロックホルダ52の軸こじり状態を持続でき、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を効果的に向上させることができる。
(1)区画部65の高さHaを他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高く形成することで、上記のように当該区画部65aに衝撃力が集中的に作用するようになるため、ロックホルダ52の軸こじり状態を持続でき、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を効果的に向上させることができる。
(2)ロックアーム54を、爪部69の区画部65に対する係合領域Tの軸方向中央位置が区画部65の軸方向中央位置からずれるように設けたため、衝撃力によってより確実にロックホルダ52を軸こじり状態とすることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、係合溝63が浅溝61及び深溝62を有する構成としたが、これに限らず、係合溝63が浅溝61のみ又は深溝62のみを有する構成としてもよい。
・上記実施形態では、係合溝63が浅溝61及び深溝62を有する構成としたが、これに限らず、係合溝63が浅溝61のみ又は深溝62のみを有する構成としてもよい。
・上記実施形態において、ロックアーム54を、その爪部69の区画部65に対する係合領域Tの軸方向中央位置が区画部65(ロックホルダ52)の軸方向中央位置と一致するように設けてもよい。
・上記実施形態では、高い区画部65aの高さHaを他の区画部65b〜65dの高さHb〜Hdよりも高く形成するとともに、高さHb〜Hdをそれぞれ等しく形成したが、これに限らない。例えば、区画部65a〜65dの高さHa〜Hdをそれぞれ不均一としてもよい。このように構成しても、上記実施形態の(1)と同様の効果を奏する。
また、例えば区画部65a,65bの高さHa,Hbを略等しくするとともに、他の区画部65c,65dの高さHc,Hdよりも高くしてもよい。このように構成しても、モータ軸34が高速で回転している状態でロック動作が行われると、高い区画部65a,65bに対してロックアーム54の爪部69が係合し易くなる。つまり、長期間に亘る使用において、高い区画部65a,65dに対してロックアーム54の爪部69が係合する頻度が、低い区画部65c,65dに対して係合する頻度よりも高くなる。その結果、高い区画部65a,65bに対して高頻度で作用する衝撃力によって、ロックホルダ52が軸こじり状態となり、ロック動作時の衝撃力に対する耐滑り性を向上させることができる。
1…車両用操舵装置、15…伝達比可変装置、24…入力軸、25…出力軸、26…波動歯車機構、34…モータ軸、51…ロック装置、52…ロックホルダ、53…支持軸、54…ロックアーム、61…浅溝、62…深溝、63…係合溝、65,65a〜65d…区画部、69…爪部、75…トレランスリング、O…中心、Ha〜Hd…高さ、T…係合領域。
Claims (3)
- ステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記入力軸の回転によって回転しない非回転部材とモータ軸とを相対回転不能に拘束するロック装置と、を備え、
前記ロック装置は、前記モータ軸と一体回転可能に設けられた環状のロックホルダ、及び前記非回転部材に設けられたロックアームを有し、
前記ロックホルダには、その外周の一部を周方向へ円弧状に切り欠いた複数の係合溝が形成されるとともに、この切り欠いた残りの部分が、隣り合う前記係合溝の間を区画する区画部として径方向外側を向く突起状に形成され、
前記ロックアームの爪部が前記区画部に係合することにより、前記ロックホルダの回転を拘束するものであり、
前記モータ軸と前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータ軸と前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトレランスリングが介在される伝達比可変装置において、
前記各区画部は、該各区画部の外周面から該ロックホルダの中心までの距離である高さが不均一となるように形成されたことを特徴とする伝達比可変装置。 - 請求項1に記載の伝達比可変装置において、
前記各区画部のうちのいずれか1つの高さが、他の区画部の高さよりも高くなるように形成されたことを特徴とする伝達比可変装置。 - 請求項1又は2に記載の伝達比可変装置において、
前記爪部と前記区画部とが係合したときの該区画部上の係合領域は、その軸方向中央位置が該区画部の軸方向中央位置からずれるように設けられたことを特徴とする伝達比可変装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012242977A JP2014091415A (ja) | 2012-11-02 | 2012-11-02 | 伝達比可変装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012242977A JP2014091415A (ja) | 2012-11-02 | 2012-11-02 | 伝達比可変装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2014091415A true JP2014091415A (ja) | 2014-05-19 |
Family
ID=50935813
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2012242977A Pending JP2014091415A (ja) | 2012-11-02 | 2012-11-02 | 伝達比可変装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014091415A (ja) |
-
2012
- 2012-11-02 JP JP2012242977A patent/JP2014091415A/ja active Pending
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