以下に、本発明の実施の形態に係るコンバータ及びモータ制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。図1に示すように、実施の形態1に係るコンバータ1−1は、三相の交流電圧を発生する三相交流電源である交流電源3と、モータ駆動装置4との間に設けられる。コンバータ1−1は、モータの力行時には三相の交流電圧を発生する交流電源3からの交流電圧を直流電圧に変換してモータ駆動装置4に出力し、モータの減速時には回生動作によって回生電力を交流電源3に戻す。モータ駆動装置4は、コンバータ1−1から供給される直流電圧を受けてモータ5を可変速制御する。また、実施の形態1に係るモータ制御装置は、コンバータ1−1と、コンバータ1−1から直流電力の供給を受けてモータ5を可変速制御するモータ駆動装置4とを備えた装置である。
コンバータ1−1は、直流電力を蓄積する平滑コンデンサ21と、パワーモジュール22と、母線電圧検出部23と、電圧位相検出部24と、母線電流検出部25と、駆動信号生成部であるベース駆動信号生成部26と、駆動回路であるベース駆動回路27と、信号制御部である回生制御部28と、制御電源部29とを備える。
パワーモジュール22は、3つの交流端子11,12,13と、高電位側の直流配線が接続される第1端子である直流端子14と、低電位側の直流配線が接続される第2端子である直流端子15とを備える。交流端子11は、交流配線51の一端に接続される。交流配線51の他端はリアクトル2−1の一端に接続される。リアクトル2−1の他端は交流配線91の一端に接続される。交流配線91の他端は交流電源3の端子3Rに接続される。端子3Rは、第1の相であるR相の交流電圧が出力される端子である。R相の交流電圧はリアクトル2−1を介して交流端子11に印加される。
交流端子12は、交流配線52の一端に接続される。交流配線52の他端はリアクトル2−2の一端に接続される。リアクトル2−2の他端は交流配線92の一端に接続される。交流配線92の他端は交流電源3の端子3Sに接続される。端子3Sは、第2の相であるS相の交流電圧が出力される端子である。S相の交流電圧はリアクトル2−2を介して交流端子12に印加される。
交流端子13は、交流配線53の一端に接続される。交流配線53の他端はリアクトル2−3の一端に接続される。リアクトル2−3の他端は交流配線93の一端に接続される。交流配線93の他端は交流電源3の端子3Tに接続される。端子3Tは、第3の相であるT相の交流電圧が出力される端子である。T相の交流電圧はリアクトル2−3を介して交流端子13に印加される。以下ではリアクトル2−1,2−2,2−3を区別しない場合、リアクトル2と称する場合がある。
直流端子14には、高電位側の直流配線である正極母線70Pの一端が接続される。正極母線70Pの他端は、コンバータ1−1の出力端子6−1に接続される。出力端子6−1は高電位側の直流端子である。出力端子6−1には、正極母線71Pの一端が接続される。正極母線71Pは、コンバータ1−1とモータ駆動装置4との間に設けられる高電位側の直流配線である。正極母線71Pの他端は、モータ駆動装置4の直流端子17に接続される。直流端子17は高電位側の直流端子である。パワーモジュール22の直流端子14は、正極母線70P、出力端子6−1、正極母線71Pを介して、モータ駆動装置4の直流端子17と電気的に接続される。
直流端子15には、低電位側の直流配線である負極母線70Nの一端が接続される。負極母線70Nの他端は、コンバータ1−1の出力端子6−2に接続される。出力端子6−2は低電位側の直流端子である。出力端子6−2には、負極母線71Nの一端が接続される。負極母線71Nは、コンバータ1−1とモータ駆動装置4との間に設けられる低電位側の直流配線である。負極母線71Nの他端は、モータ駆動装置4の直流端子18に接続される。直流端子18は低電位側の直流端子である。パワーモジュール22の直流端子15は、負極母線70N、出力端子6−2、負極母線71Nを介して、モータ駆動装置4の直流端子18と電気的に接続される。
平滑コンデンサ21の高電位側の端子21aは、正極母線70Pに接続される。符号80Pは平滑コンデンサ21の高電位側の端子21aと正極母線70Pとの接続点を表す。平滑コンデンサ21の高電位側の端子21aが正極母線70Pに接続されることにより、平滑コンデンサ21の高電位側の端子21aは、パワーモジュール22の直流端子14と電気的に接続され、さらにモータ駆動装置4の直流端子17と電気的に接続される。
平滑コンデンサ21の低電位側の端子21bは、負極母線70Nに接続される。図1において符号80Nは平滑コンデンサ21の低電位側の端子21bと負極母線70Nとの接続点を表す。平滑コンデンサ21の低電位側の端子21bが負極母線70Nに接続されることにより、平滑コンデンサ21の低電位側の端子21bは、パワーモジュール22の直流端子15と電気的に接続され、さらにモータ駆動装置4の直流端子18と電気的に接続される。
パワーモジュール22は、交流端子11,12,13及び直流端子14,15の他にも、6つの整流素子D1,D2,D3,D4,D5,D6と、6つの回生用のスイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6とを備える。以下では、6つの整流素子D1,D2,D3,D4,D5,D6を整流素子D1からD6と称し、スイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6をスイッチング素子S1からS6と称する場合がある。
整流素子D1は、スイッチング素子S1に逆並列に接続される。具体的には、整流素子D1の陰極であるカソードがスイッチング素子S1のコレクタに接続され、整流素子D1の陽極であるアノードがスイッチング素子S1のエミッタに接続される。整流素子D1及びスイッチング素子S1により1つのパワー素子が構成される。同様に、整流素子D2及びスイッチング素子S2によりパワー素子が構成され、整流素子D3及びスイッチング素子S3によりパワー素子が構成され、整流素子D4及びスイッチング素子S4によりパワー素子が構成され、整流素子D5及びスイッチング素子S5によりパワー素子が構成され、整流素子D6及びスイッチング素子S6によりパワー素子が構成される。
整流素子D1からD6のそれぞれには、例えばダイオード、ショットキーバリアダイオード、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などが用いられる。なお、6つの整流素子D1,D2,D3,D4,D5,D6のそれぞれは、整流作用を有する素子であればよく、これらの素子に限定されない。
スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2は、配線8−1により直列に接続される。スイッチング素子S1、スイッチング素子S2、整流素子D1、整流素子D2及び配線8−1により第1アームが構成される。配線8−1の一端はスイッチング素子S1のエミッタに接続される。配線8−1の他端はスイッチング素子S2のコレクタに接続される。配線8−1には配線9−1の一端が接続される。符号501は配線8−1と配線9−1との接続点を表す。配線9−1の他端は交流端子11に接続される。これにより、スイッチング素子S1のエミッタとスイッチング素子S2のコレクタとは、交流端子11と電気的に接続される。交流端子11は、リアクトル2−1などを介して交流電源3の端子3Rと電気的に接続されるため、整流素子D1及びスイッチング素子S1はR相の正極用のパワー素子を構成し、整流素子D2及びスイッチング素子S2はR相の負極用のパワー素子を構成する。スイッチング素子S1のコレクタは、配線9−4を介して、直流端子14に接続される。スイッチング素子S2のエミッタは、配線9−5を介して、直流端子15に接続される。
スイッチング素子S3及びスイッチング素子S4は、配線8−2により直列に接続される。スイッチング素子S3、スイッチング素子S4、整流素子D3、整流素子D4及び配線8−2により第2アームが構成される。配線8−2の一端はスイッチング素子S3のエミッタに接続される。配線8−2の他端はスイッチング素子S4のコレクタに接続される。配線8−2には配線9−2の一端が接続される。符号502は配線8−2と配線9−2との接続点を表す。配線9−2の他端は交流端子12に接続される。これにより、スイッチング素子S3のエミッタとスイッチング素子S4のコレクタとは、交流端子12と電気的に接続される。交流端子12は、リアクトル2−2などを介して交流電源3の端子3Sと電気的に接続されるため、整流素子D3及びスイッチング素子S3はS相の正極用のパワー素子を構成し、整流素子D4及びスイッチング素子S4はS相の負極用のパワー素子を構成する。スイッチング素子S3のコレクタは、配線9−4を介して、直流端子14に接続される。スイッチング素子S4のエミッタは、配線9−5を介して、直流端子15に接続される。
スイッチング素子S5及びスイッチング素子S6は、配線8−3により直列に接続される。スイッチング素子S5、スイッチング素子S6、整流素子D5、整流素子D6及び配線8−3により第3アームが構成される。配線8−3の一端はスイッチング素子S5のエミッタに接続される。配線8−3の他端はスイッチング素子S6のコレクタに接続される。配線8−3には配線9−3の一端が接続される。符号503は配線8−3と配線9−3との接続点を表す。配線9−3の他端は交流端子13に接続される。これにより、スイッチング素子S5のエミッタとスイッチング素子S6のコレクタとは、交流端子13と電気的に接続される。交流端子13は、リアクトル2−3などを介して交流電源3の端子3Tと電気的に接続されるため、整流素子D5及びスイッチング素子S5はT相の正極用のパワー素子を構成し、整流素子D6及びスイッチング素子S6はT相の負極用のパワー素子を構成する。スイッチング素子S5のコレクタは、配線9−4を介して、直流端子14に接続される。スイッチング素子S6のエミッタは、配線9−5を介して、直流端子15に接続される。
直流端子14には、上アームを構成するスイッチング素子S1、スイッチング素子S3及びスイッチング素子S5のそれぞれのコレクタが電気的に接続される。直流端子15には、下アームを構成するスイッチング素子S2、スイッチング素子S4及びスイッチング素子S6のそれぞれのエミッタが電気的に接続される。パワーモジュール22の直流端子14及び直流端子15には、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2により構成される直列回路と、スイッチング素子S3及びスイッチング素子S4により構成される直列回路と、スイッチング素子S5及びスイッチング素子S6により構成される直列回路とが、並列に接続される。なお、実施の形態1に係るコンバータ1−1には、3相の交流電源3が接続されているが、3相の交流電源3の代わりに、単相の交流電源を接続してもよい。単相の交流電源が接続される場合、パワーモジュール22は4つのパワー素子を有する。
母線電圧検出部23は、平滑コンデンサ21の端子21aと端子21bとに印加される電圧を検出し、検出された電圧を示す電圧情報を母線電圧VPNとして出力する。なお、平滑コンデンサ21の端子21aは、正極母線70Pを介してパワーモジュール22の直流端子14に接続され、平滑コンデンサ21の端子21bは、負極母線70Nを介してパワーモジュール22の直流端子15に接続されるため、平滑コンデンサ21の端子21aと端子21bとに印加される電圧は、パワーモジュール22の直流端子14と直流端子15とに印加される電圧に等しい。
母線電流検出部25は、例えば正極母線70P上において、直流端子14と接続点80Pとの間に設けられる。母線電流検出部25は、正極母線70Pに流れる電流を検出し、検出された電流を示す電流情報を母線電流IPNとして出力する。母線電流検出部25は、CT(Current Transformer)と呼ばれる計器用変流器を用いた電流センサであってもよいし、シャント抵抗を用いた電流センサであってもよい。母線電流検出部25は、これらを組み合わせたものでもよい。なお、母線電流検出部25は、例えば負極母線70N上において、直流端子15と接続点80Nとの間に設けて、負極母線70Nに流れる電流を検出してもよい。
制御電源部29は、パワーモジュール22のスイッチング素子S1からS6を駆動するための電力を生成すると共に、ベース駆動回路27を駆動するための電力を生成する。前述したように、スイッチング素子S1のエミッタは、リアクトル2−1を介して、交流電源3のR相に接続され、スイッチング素子S3のエミッタは、リアクトル2−2を介して、交流電源3のS相に接続され、スイッチング素子S5のエミッタは、リアクトル2−3を介して、交流電源3のT相に接続される。そのため、正極側に配置されるスイッチング素子S1,S3,S5のそれぞれを駆動するためには、ベース駆動回路27において、スイッチング素子S1,S3,S5のそれぞれを駆動する駆動信号の生成回路のグランドを分ける必要がある。すなわち、スイッチング素子S1,S3,S5のそれぞれに対応する駆動信号の生成回路を互いに絶縁する必要がある。これに対し、負極側に配置されるスイッチング素子S2,S4,S6のエミッタは、パワーモジュール22の直流端子15に接続されているため、スイッチング素子S2,S4,S6のエミッタの電位の基準となるグランドは同一である。そのため、ベース駆動回路27において、負極側に配置されるスイッチング素子S2,S4,S6を駆動する駆動信号の生成回路のグランドは同一にすることができる。従って、ベース駆動回路27を動作させるためには、最低でも4つの絶縁された電源が必要となる。
図2は、図1に示す制御電源部の構成例を示す図である。図2に示すように制御電源部29は、主電源31と、電源制御用IC(Integrated Circuit)32と、スイッチング素子33と、絶縁トランス30と、複数の整流素子D21,D22,D23,D24と、コンデンサC21,C22,C23,C24と、フィードバック部34とを備える。
絶縁トランス30は、1次巻線N11と、複数の2次巻線N21,N22,N23,N24とよって構成される。複数の2次巻線N21,N22,N23,N24のそれぞれは、隣接する巻線間が絶縁されている。電源制御用IC32は、電源端子VCC、フィードバック端子FB、ゲート信号出力端子SW、及びグランド端子GNDを備える。
主電源31のプラス端子は、1次巻線N11の巻き始め側端子と電源制御用IC32の電源端子VCCとに接続される。1次巻線N11の巻き終わり側端子は、スイッチング素子33のドレイン端子Dに接続される。スイッチング素子33のソース端子Sは、主電源31のマイナス端子と電源制御用IC32のGND端子と接続される。スイッチング素子33のゲートGは、電源制御用IC32のSW端子に接続される。
整流素子D21のアノードは2次巻線N21の巻き終わり側端子に接続され、整流素子D21のカソードは、コンデンサC21の一端に接続される。コンデンサC21の他端は、配線291を介して、2次巻線N21の巻き始め側端子に接続される。整流素子D21のカソードとコンデンサC21の一端との接続点には、配線291−1の一端が接続される。コンデンサC21の他端と配線291との接続点には、配線291−2の一端が接続される。配線291−2には、配線291−1に発生する電圧VRPの基準の電位となるグランドVRPGNDが接続される。電圧VRPは、コンデンサC21の一端と他端との間に印加される電圧に等しい。配線291−1及び配線291−2の他端は図1に示すベース駆動回路27に接続される。
整流素子D22のアノードは2次巻線N22の巻き終わり側端子に接続され、整流素子D22のカソードは、コンデンサC22の一端に接続される。コンデンサC22の他端は、配線292を介して、2次巻線N22の巻き始め側端子に接続される。整流素子D22のカソードとコンデンサC22の一端との接続点には、配線292−1の一端が接続される。コンデンサC22の他端と配線292との接続点には、配線292−2の一端が接続される。配線292−2には、配線292−1に発生する電圧VSPの基準の電位となるグランドVSPGNDが接続される。電圧VSPは、コンデンサC22の一端と他端との間に印加される電圧に等しい。配線292−1及び配線292−2の他端は図1に示すベース駆動回路27に接続される。
整流素子D23のアノードは2次巻線N23の巻き終わり側端子に接続され、整流素子D23のカソードは、コンデンサC23の一端に接続される。コンデンサC23の他端は、配線293を介して、2次巻線N23の巻き始め側端子に接続される。整流素子D23のカソードとコンデンサC23の一端との接続点には、配線293−1の一端が接続される。コンデンサC23の他端と配線293との接続点には、配線293−2の一端が接続される。配線293−2には、配線293−1に発生する電圧VTPの基準の電位となるグランドVTPGNDが接続される。電圧VTPは、コンデンサC23の一端と他端との間に印加される電圧に等しい。
整流素子D24のアノードは2次巻線N24の巻き終わり側端子に接続され、整流素子D24のカソードは、コンデンサC24の一端に接続される。コンデンサC24の他端は、配線294を介して、2次巻線N24の巻き始め側端子に接続される。整流素子D24のカソードとコンデンサC24の一端との接続点には、配線294−1の一端が接続される。コンデンサC24の他端と配線294との接続点には、配線294−2の一端が接続される。配線294−2には、配線294−1に発生する電圧VNの基準の電位となるグランドVNGNDが接続される。電圧VNは、コンデンサC24の一端と他端との間に印加される電圧に等しい。電圧VNはフィードバック部34に入力される。フィードバック部34には例えばフォトカプラが用いられ、フィードバック部34は、電源制御用IC32のFB端子と2次巻線N24とを絶縁した状態で、電圧VNを、電源制御用IC32が扱える電圧値に変換して、変換後の電圧値を電源制御用IC32のFB端子に入力する。フィードバック部34を用いることにより、1次巻線N11側の回路と、2次巻線N21からN24側の回路との絶縁を保つことができる。
制御電源部29において、2次巻線N21,N22,N23のそれぞれの巻き数を2次巻線N24の巻き数と等しくすることによって、コンデンサC21,C22,C23のそれぞれに発生する電圧はコンデンサC24に発生する電圧とほぼ等しくなる。
制御電源部29の動作について説明する。電源制御用IC32は、フィードバック部34から出力される電圧VNに基づいて、スイッチング素子33のオンオフ動作を制御する制御信号を生成する。電源制御用IC32は、生成した制御信号をSW端子から出力し、出力された制御信号はスイッチング素子33のゲートGに入力される。これにより、スイッチング素子33がオンオフ動作を繰り返し、フィードバック部34に入力される電圧VNの値が特定の値に保たれる。
図1に示す電圧位相検出部24は、交流電源3の電圧位相を検出し、検出された電圧位相を示す位相情報を位相検出信号として、ベース駆動信号生成部26へ出力する。位相検出信号は、Highレベル又はLowレベルの電位を取る信号である。電圧位相検出部24による電圧位相の検出方法と、位相検出信号の詳細については後述する。
ベース駆動信号生成部26は、電圧位相検出部24から出力される位相検出信号に基づいて、スイッチング素子S1からS6を駆動するための6種類のベース駆動信号SRP,SRN,SSP,SSN,STP,STNを生成して、回生制御部28に出力する。6種類のベース駆動信号SRP,SRN,SSP,SSN,STP,STNのそれぞれは、Highレベル又はLowレベルの電位を取る信号である。ベース駆動信号SRPは、R相の正極側用のスイッチング素子S1を駆動する信号である。ベース駆動信号SRNは、R相の負極側用のスイッチング素子S2を駆動する信号である。ベース駆動信号SSPは、S相の正極側用のスイッチング素子S3を駆動する信号である。ベース駆動信号SSNは、S相の負極側用のスイッチング素子S4を駆動する信号である。ベース駆動信号STPは、T相の正極側用のスイッチング素子S5を駆動する信号である。ベース駆動信号STNは、T相の負極側用のスイッチング素子S6を駆動する信号である。以下では、6種類のベース駆動信号SRP,SRN,SSP,SSN,STP,STNをベース駆動信号SRPからSTNと称する場合がある。
回生制御部28は、母線電流IPNと母線電圧VPNとに基づいて、ベース駆動信号生成部26から出力されたベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を継続するか、ベース駆動信号生成部26から出力されたベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を停止するかを判断する。回生制御部28がベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を継続すると判断した場合、ベース駆動回路27にベース駆動信号SRPからSTNが入力され続ける。回生制御部28がベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を停止すると判断した場合、ベース駆動回路27へのベース駆動信号SRPからSTNの入力が停止される。
図3は、図1に示す回生制御部の構成例を示す図である。図3に示すように回生制御部28は、回生開始判定部60、回生停止判定部61、論理和回路62及びNPNトランジスタ63を備える。回生開始判定部60には、母線電圧VPNが入力される。回生開始判定部60は、母線電圧VPNに基づいて、図1に示すパワーモジュール22による回生動作を開始するか否かを判定する機能を備える。回生開始判定部60は、減算器64及び比較器65を備える。減算器64には母線電圧VPNと基準電圧Vrefとが入力される。基準電圧Vrefは、交流電源3の電圧に基づいて予め設定される電圧である。また基準電圧Vrefの生成方法には、交流電源3の電圧を検出して基準電圧Vrefを生成する方法、母線電圧検出部23から出力される母線電圧VPNに基づいて基準電圧Vrefを生成する方法等があるが、何れの方法も公知であり、ここでの詳細な説明は省略する。減算器64は、母線電圧VPNと基準電圧Vrefの差分である差電圧ΔVを算出する。
差電圧ΔVは、比較器65のプラス端子に入力される。比較器65のマイナス端子には、閾電圧Voが入力される。比較器65は、差電圧ΔVと閾電圧Voとを比較して、Highレベル又はLowレベルの電位を取る信号を出力する。例えば、差電圧ΔVが閾電圧Voよりも大きいときには、Highレベルの信号が出力される。Highレベルの信号は、母線電圧VPNが一定値よりも高くなったときに、パワーモジュール22による回生動作を開始することを示す信号である。差電圧ΔVが閾電圧Vo未満のときには、Lowレベルの信号が出力される。比較器65から出力される信号は、回生開始判定部60の出力信号として、論理和回路62に入力される。
なお、実施の形態1に係る回生制御部28の回生開始判定部60では、パワーモジュール22における回生動作の開始直後に、差電圧ΔV及び閾電圧Voが、差電圧ΔV<閾電圧Voの関係となるため、例えば、比較器65にヒステリシス機能を設け、比較器65の出力にワンショットトリガ回路を設け、又は、回生動作開始後から一定期間が経過するまでは回生動作が続くように回生開始判定部60を構成することが望ましい。
回生停止判定部61には、母線電流IPNが入力される。回生停止判定部61は、母線電流IPNに基づいて、パワーモジュール22における回生動作を停止するか否かを判定する機能を備える。回生停止判定部61は、比較器66を備える。比較器66のプラス端子には閾電流Irefが入力される。比較器66のマイナス端子には母線電流IPNが入力される。比較器66は、母線電流IPNと閾電流Irefとを比較して、Highレベル又はLowレベルの電位を取る信号を出力する。例えば、母線電流IPNが閾電流Irefよりも大きいときには、Lowレベルの信号が出力される。母線電流IPNが閾電流Iref未満となったときには、Highレベルの信号が出力される。比較器66から出力される信号は、回生停止判定部61の出力信号として、論理和回路62に入力される。
論理和回路62の出力はNPNトランジスタ63のベースに接続される。論理和回路62の出力信号である回生オン信号Ronは、NPNトランジスタ63のベースに入力される。NPNトランジスタ63のコレクタには、図1に示すベース駆動信号生成部26が接続される。NPNトランジスタ63のコレクタには、ベース駆動信号生成部26の出力であるベース駆動信号SRPからSTNが入力される。NPNトランジスタ63のエミッタは、ベース駆動回路27に接続される。
次に、回生制御部28の動作について説明する。前述のように論理和回路62には、回生開始判定部60及び回生停止判定部61のそれぞれの出力信号が入力される。何れかの出力信号がHighレベルの場合、論理和回路62はHighレベルの信号を出力する。論理和回路62がHighレベルの信号を出力すると、NPNトランジスタ63がオンとなり、ベース駆動信号SRPからSTNが、図1に示すベース駆動回路27に入力される。ベース駆動回路27では、ベース駆動信号SRPからSTNが、パワーモジュール22の各パワー素子が扱うことができる信号に変換され、変換された信号であるベース駆動信号SRP’,SRN’,SSP’,SSN’,STP’,STN’が生成される。生成されたベース駆動信号SRP’,SRN’,SSP’,SSN’,STP’,STN’は、スイッチング素子S1からS6のベースに入力される。これにより、スイッチング素子S1からS6のオンオフ動作、すなわちパワーモジュール22の回生動作が行われる。以下では、ベース駆動信号SRP’,SRN’,SSP’,SSN’,STP’,STN’をベース駆動信号SRP’からSTN’と称する場合がある。ベース駆動回路27の詳細は後述する。
一方、回生開始判定部60及び回生停止判定部61のそれぞれの出力信号がLowレベルの場合、論理和回路62はLowレベルの信号を出力する。論理和回路62がLowレベルの信号を出力すると、NPNトランジスタ63がオフとなり、図1に示すベース駆動回路27への、ベース駆動信号SRPからSTNの入力が遮断される。これにより、スイッチング素子S1からS6の全てがオフとなり、回生動作が停止される。
このように、回生開始判定部60及び回生停止判定部61の少なくとも一方がHighレベルの信号を出力している場合、回生動作が継続され、回生開始判定部60及び回生停止判定部61の双方がLowレベルの信号を出力している場合、回生動作が停止される。
ベース駆動回路27について説明する。前述のようにベース駆動回路27は、回生制御部28から出力されるベース駆動信号SRP,SRN,SSP,SSN,STP,SSNを、パワーモジュール22が扱えるベース駆動信号SRP’,SRN’,SSP’,SSN’,STP’,STN’に変換し、パワーモジュール22のスイッチング素子S1からS6のベースに入力する機能を有する。図4は、図1に示すベース駆動回路27の構成例を示す図である。図4に示すようにベース駆動回路27は、ベース制御回路35及び電圧印加部36を備える。
ベース制御回路35は、ベース制御回路35に入力される信号を電気的に絶縁し、入力される信号と同電位の出力信号、すなわち入力信号がHighレベルの場合には、Highレベルの出力信号、入力信号がLowレベルの場合にはLowレベルの出力信号を、電圧印加部36に出力する機能を備える。例えば、ベース制御回路35に、Highレベルの電位を取るベース駆動信号SRPが入力された場合、ベース制御回路35は、このベース駆動信号SRPとは電気的に絶縁された状態で、Highレベルの電位を取る信号を、電圧印加部36に対して出力する。ベース制御回路35には、例えばフォトカプラ、絶縁されたパルストランス等が用いられるが、ベース制御回路35を構成する部品は、これらに限定されず、入力信号と出力信号を電気的に絶縁した状態で、入力信号と同電位を取る出力信号を伝送するものであればよい。
ベース制御回路35は、ベース駆動信号SRPを電気的に絶縁し、ベース駆動信号SRPと同電位の信号に変換する制御回路35Aと、ベース駆動信号SRNを電気的に絶縁し、ベース駆動信号SRNと同電位の信号に変換する制御回路35Bと、ベース駆動信号SSPを電気的に絶縁し、ベース駆動信号SSPと同電位の信号に変換する制御回路35Cと、ベース駆動信号SSNを電気的に絶縁し、ベース駆動信号SSNと同電位の信号に変換する制御回路35Dと、ベース駆動信号STPを電気的に絶縁し、ベース駆動信号STPと同電位の信号に変換する制御回路35Eと、ベース駆動信号STNを電気的に絶縁し、ベース駆動信号STNと同電位の信号に変換する制御回路35Fとを備える。
電圧印加部36には、ベース制御回路35の出力信号が入力される。電圧印加部36の複数の出力は、パワーモジュール22のスイッチング素子S1からS6のベースに接続される。電圧印加部36は、制御回路35Aの出力信号に基づいてベース駆動信号SRP’を生成して出力する第1電圧印加部36Aと、制御回路35Bの出力信号に基づいてベース駆動信号SRN’を生成して出力する第2電圧印加部36Bと、制御回路35Cの出力信号に基づいてベース駆動信号SSP’を生成して出力する第3電圧印加部36Cとを備える。電圧印加部36は、制御回路35Dの出力信号に基づいてベース駆動信号SSN’を生成して出力する第4電圧印加部36Dと、制御回路35Eの出力信号に基づいてベース駆動信号STP’を生成して出力する第5電圧印加部36Eと、制御回路35Fの出力信号に基づいてベース駆動信号STN’を生成して出力する第6電圧印加部36Fとを備える。
図5は、図4に示す第1電圧印加部の構成例を示す図である。図5に示すように第1電圧印加部36Aは、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースは互いに接続され、それぞれのベースには制御回路35Aの出力が接続される。NPNトランジスタ37のエミッタとPNPトランジスタ38のエミッタは、互いに接続され、それぞれにベース抵抗39の一端が接続される。ベース抵抗39の他端は、スイッチング素子S1のベースに接続される。NPNトランジスタ37のコレクタは、図2に示す配線291−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VRPが印加される。PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S1のエミッタとは、互いに接続され、さらに図2に示す配線291−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S1のエミッタとは、図2に示すグランドVRPGNDと電気的に接続される。
図6は、図4に示す第2電圧印加部の構成例を示す図である。図6に示すように、第2電圧印加部36Bは、第1電圧印加部36Aと同様に、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。第2電圧印加部36Bでは、NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースに、制御回路35Bの出力が接続される。また第2電圧印加部36Bでは、ベース抵抗39の他端が、スイッチング素子S2のベースに接続される。また第2電圧印加部36Bでは、NPNトランジスタ37のコレクタが、図2に示す配線294−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VNが印加される。また第2電圧印加部36Bでは、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S2のエミッタとが、図2に示す配線294−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S2のエミッタとが、図2に示すグランドVNGNDと電気的に接続される。
図7は、図4に示す第3電圧印加部の構成例を示す図である。図7に示すように、第3電圧印加部36Cは、第1電圧印加部36Aと同様に、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。第3電圧印加部36Cでは、NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースに、制御回路35Cの出力が接続される。また第3電圧印加部36Cでは、ベース抵抗39の他端が、スイッチング素子S3のベースに接続される。また第3電圧印加部36Cでは、NPNトランジスタ37のコレクタが、図2に示す配線292−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VSPが印加される。また第3電圧印加部36Cでは、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S3のエミッタとが、図2に示す配線292−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S3のエミッタとが、図2に示すグランドVSPGNDと電気的に接続される。
図8は、図4に示す第4電圧印加部の構成例を示す図である。図8に示すように、第4電圧印加部36Dは、第1電圧印加部36Aと同様に、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。第4電圧印加部36Dでは、NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースに、制御回路35Dの出力が接続される。また第4電圧印加部36Dでは、ベース抵抗39の他端が、スイッチング素子S4のベースに接続される。また第4電圧印加部36Dでは、NPNトランジスタ37のコレクタが、図2に示す配線294−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VNが印加される。また第4電圧印加部36Dでは、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S4のエミッタとが、図2に示す配線294−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S4のエミッタとが、図2に示すグランドVNGNDと電気的に接続される。
図9は、図4に示す第5電圧印加部の構成例を示す図である。図9に示すように、第5電圧印加部36Eは、第1電圧印加部36Aと同様に、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。第5電圧印加部36Eでは、NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースに、制御回路35Eの出力が接続される。また第5電圧印加部36Eでは、ベース抵抗39の他端が、スイッチング素子S5のベースに接続される。また第5電圧印加部36Eでは、NPNトランジスタ37のコレクタが、図2に示す配線293−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VTPが印加される。また第5電圧印加部36Eでは、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S5のエミッタとが、図2に示す配線293−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S5のエミッタとが、図2に示すグランドVTPGNDと電気的に接続される。
図10は、図4に示す第6電圧印加部の構成例を示す図である。図10に示すように、第6電圧印加部36Fは、第1電圧印加部36Aと同様に、NPNトランジスタ37、PNPトランジスタ38及びベース抵抗39を備える。第6電圧印加部36Fでは、NPNトランジスタ37のベースとPNPトランジスタ38のベースに、制御回路35Fの出力が接続される。また第6電圧印加部36Fでは、ベース抵抗39の他端が、スイッチング素子S6のベースに接続される。また第6電圧印加部36Fでは、NPNトランジスタ37のコレクタが、図2に示す配線294−1に接続される。これにより、NPNトランジスタ37のコレクタには、図2に示す制御電源部29で生成された電圧VNが印加される。また第6電圧印加部36Fでは、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S6のエミッタとが、図2に示す配線294−2に接続される。これにより、PNPトランジスタ38のコレクタとスイッチング素子S6のエミッタとが、図2に示すグランドVNGNDと電気的に接続される。
次にベース駆動回路27の動作について説明する。ここでは図5に示す第1電圧印加部36Aを用いて、ベース駆動回路27の動作を説明する。回生制御部28からスイッチング素子S1のベース駆動信号SRPが出力されると、制御回路35Aは、ベース駆動信号SRPと絶縁された信号を生成して出力する。第1電圧印加部36AにHighレベルの信号が入力されると、PNPトランジスタ38がオフし、NPNトランジスタ37がオンする。これにより、配線291−1とスイッチング素子S1のベースとが、ベース抵抗39を介して導通状態になり、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に電荷が充電される。電荷が充電されることによって、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に印加される電圧VBEが、予め決められた閾電圧を超えると、スイッチング素子S1はオンする。以下では、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に印加される電圧を電圧VBEと称する。電圧VBEが電圧VRPまで上昇すると、ベース抵抗39を介しての、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間への充電が終了する。
第1電圧印加部36AにLowレベルの信号が入力されると、NPNトランジスタ37がオフし、PNPトランジスタ38がオンする。これにより、グランドVRPGNDとスイッチング素子S1のベースとが、ベース抵抗39を介して導通状態になり、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に充電された電荷が放電される。電荷が放電されることによって、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に印加される電圧VBEが、予め決められた閾電圧未満になると、スイッチング素子S1はオフする。電圧VBEがグランドVRPGNDまで低下すると、スイッチング素子S1のベースとエミッタとの電極間に充電された電荷の放電が終了する。
他のスイッチング素子も同様の原理で動作を行うため説明は省略する。また、回生制御部28からベース駆動信号SRPが出力されない場合、即ち回生動作が行われない場合には、ベース駆動回路27は動作をせず、またスイッチング素子S1からS6は、オンオフ動作を行わずオフ状態に保たれる。
以上のようにベース駆動回路27は、回生制御部28から出力されるベース駆動信号SRP,SPN,SSP,SSN,STP,STNを、制御電源部29で生成された各電源を用いてパワーモジュール22が扱えるベース駆動信号SRP’,SRN’,SSP’,SSN’,STP’,STN’に変換し、スイッチング素子S1からS6のオンオフ動作を行っている。
次に、図11及び図12を用いてコンバータ1−1における回生動作について説明する。図11は、図1に示す電圧位相検出部の動作を説明するための図である。前述したように、パワーモジュール22の正極側に配置されるスイッチング素子S1,S3,S5のエミッタはリアクトル2を介して交流電源3のR相,S相,T相に接続されている。そして、スイッチング素子S1,S3,S5のエミッタは、制御電源部29のグランドVRPGND,VSPGND,VTPGNDに接続されている。
図11に示すように電圧位相検出部24では、配線291−2に接続されるグランドVRPGNDに発生する信号に基づいて、入力R相電圧VR1が検出される。入力R相電圧VR1は、図1に示す交流端子11と交流端子12との間に印加される電圧と等価である。また、電圧位相検出部24は、配線292−2に接続されるグランドVSPGNDに発生する信号に基づいて、入力S相電圧VS1を検出する。入力S相電圧VS1は、図1に示す交流端子12と交流端子13との間に印加される電圧と等価である。また、電圧位相検出部24は、配線293−2に接続されるグランドVTPGNDに発生する信号に基づいて、入力T相電圧VT1を検出する。入力T相電圧VT1は、図1に示す交流端子13と交流端子11との間に印加される電圧と等価である。スイッチング素子S1,S3,S5のエミッタは、制御電源部29のグランドVRPGND,VSPGND,VTPGNDに接続されているため、電圧位相検出部24では、スイッチング素子S1,S3,S5のエミッタに流れる信号、又は制御電源部29の基準電位となるグランドに流れる信号に基づいて、パワーモジュール22から交流電源3に交流電力が回生されるようにスイッチング素子S1からS6がオンオフ動作するときの交流電圧の電圧位相を検出し、検出した電圧位相を示す位相検出信号を生成して出力する。
図12は、図1に示すコンバータの動作を説明するためのタイムチャートである。図12には、上から順に、交流電源3から出力される線間電圧VR−S,VS―T,VT−R,VS−R,VT−S,VR−Tの波形と、線間電圧に基づき生成される6種類の位相検出信号の波形と、ベース駆動信号SRPからSTNの波形と、R相、T相及びS相に流れる回生電流(Irr,Isr,Itr)の波形とが示される。線間電圧VR−Sと線間電圧VS−Rとは、前述した入力R相電圧VR1に相当し、相補的に変化している。線間電圧VS―Tと線間電圧VT−Sとは、前述した入力S相電圧VS1に相当し、相補的に変化している。線間電圧VR−Tと線間電圧VT−Rとは、前述した入力T相電圧VT1に相当し、相補的に変化している。回生電流とは、回生動作時に、図1に示すモータ駆動装置4からスイッチング素子S1からS6を介して、交流電源3に向かって流れる電流である。
なお、線間電圧VR−Sは、S相を基準としてR相との電圧差を検出したものであるのに対し、線間電圧VS−Rは、R相を基準としてS相との電圧差を検出したものである。線間電圧VR−Sと線間電圧VS−Rとは、電圧位相が180度ずれている。同様に、線間電圧VS−Tは、T相を基準としてS相との電圧差を検出したものであるのに対し、線間電圧VT−Sは、S相を基準としてT相との電圧差を検出したものであり、線間電圧VS−Tと線間電圧VT−Sとは、電圧位相が180度ずれている。線間電圧VT−Rは、R相を基準としてT相との電圧差を検出したものであるのに対し、線間電圧VR−Tは、T相を基準としてR相との電圧差を検出したものであり、線間電圧VT−Rと線間電圧VR−Tとは、電圧位相が180度ずれている。
電圧位相検出部24は、入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1及び入力T相電圧VT1に基づき、線間電圧VR−S、線間電圧VS−R、線間電圧VS−T、線間電圧VT−S、線間電圧VR−T及び線間電圧VT−Rを推定し、推定した結果に基づき、各線間電圧のゼロクロス点を抽出し、抽出したゼロクロス点を位相検出信号として扱う。この位相検出信号は、ベース駆動信号生成部26へ出力される。電圧位相検出部24から出力される各位相検出信号が図12に例示される。図12では、上から順に、R−S線間位相検出信号、S−R線間位相検出信号、S−T線間位相検出信号、T−S線間位相検出信号、T−R線間位相検出信号及びR−T線間位相検出信号が示される。例えば、R−S線間位相検出信号は、線間電圧VR−Sと線間電圧VS−Rとの差が正の区間(位相区間)ではHighレベルの値をとり、負の区間(位相区間)ではLowレベルの値を取る。電圧位相検出部24は、このようにレベルが変化する位相検出信号を、各線間電圧に対応付けて生成する。
次に、ベース駆動信号生成部26は、図12に示される各位相検出信号に基づいて、以下に示す方法により、ベース駆動信号SRPからSTNを生成する。
線間電圧VR−Sの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号SRP,SSNをHighレベルとし、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とをオン制御する。
線間電圧VS−Tの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号SSP,STNをHighレベルとし、スイッチング素子S3とスイッチング素子S6とをオン制御する。
線間電圧VT−Rの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号STP,SRNをHighレベルとし、スイッチング素子S5とスイッチング素子S2とをオン制御する。
線間電圧VS−Rの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号SSP,SRNをHighレベルとし、スイッチング素子S3とスイッチング素子S2とをオン制御する。
線間電圧VT−Sの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号STP,SSNをHighレベルとし、スイッチング素子S5とスイッチング素子S4とをオン制御する。
線間電圧VR−Tの電位が最大の場合、ベース駆動信号生成部26は、ベース駆動信号SRP,STNをHighレベルとし、スイッチング素子S1とスイッチング素子S6とをオン制御する。
次に、スイッチング素子S1からS6がベース駆動信号に基づいて、オン動作又はオフ動作するときに流れる電流について説明する。以下では、スイッチング素子S1からS6のオン動作又はオフ動作を、スイッチング動作と称する場合がある。なお、図1には、交流電源3からコンバータ1−1に向かう方向の矢印で示されるR相電流Ir、S相電流Is、T相電流Itを示しているが、矢印の向きに流れる電流をプラス方向の電流として扱い、図12に示される3つの回生電流の波形はそれに従って表記される。
前述のように、スイッチング素子S1からS6がスイッチング動作するとき、図12に示すようなR相回生電流Irr、S相回生電流Isr及びT相回生電流Itrが流れる。時刻t20〜t40では、線間電圧VR−Sの電位が最大となるため、スイッチング素子S1,S4がオン状態となり、他のスイッチング素子がオフ状態となる。これにより、平滑コンデンサ21と交流電源3のR−S間とは、リアクトル2によるインピーダンスを介して、接続された状態となる。従って、オン状態のスイッチング素子S1,S4を介して、R相とS相とに回生電流が流れる。
同様に時刻t40〜t60では、線間電圧VR−Tの電位が最大となるため、スイッチング素子S1,S6がオン状態となり、他のスイッチング素子はオフ状態となる。これにより、平滑コンデンサ21と交流電源3のR−T間とは、リアクトル2によるインピーダンスを介して、接続された状態となる。従って、オン状態のスイッチング素子S1,S6を介して、R相とT相とに回生電流が流れる。
なお、スイッチング動作が行われた場合でも、平滑コンデンサ21の端子間電圧と交流電源3の電圧との間に、平滑コンデンサ21の端子間電圧>交流電源3の電圧、という関係が成り立たないときには、回生電流が流れない。回生電流は、平滑コンデンサ21の端子間電圧と交流電源3の電圧との電圧差を利用しつつ、リアクトル2によるインピーダンスで流れが制限された状態で、流れている。
ここで、交流端子11とスイッチング素子S1との間には各種配線に起因するインダクタンスが存在する。同様に、交流端子12とスイッチング素子S3との間、交流端子13とスイッチング素子S5との間にも各種配線に起因するインダクタンスが存在する。図13は、交流電源とパワーモジュールの交流端子との間に存在するインダクタンスと、パワーモジュールの正極側に配置されるスイッチング素子のエミッタとパワーモジュールの交流端子との間に存在するインダクタンスとを示す図である。
インダクタLRは、図1に示されるリアクトル2−1のインダクタである。インダクタLSは、図1に示されるリアクトル2−2のインダクタである。インダクタLTは、図1に示されるリアクトル2−3のインダクタである。インダクタLR1は、交流端子11とスイッチング素子S1のエミッタとの間に設けられる配線に起因するインダクタンスである。インダクタLS1は、交流端子12とスイッチング素子S3のエミッタとの間に設けられる配線に起因するインダクタンスである。インダクタLT1は、交流端子13とスイッチング素子S5のエミッタとの間に設けられる配線に起因するインダクタンスである。入力R相電圧VR1は、スイッチング素子S1のエミッタに印加される電圧である。R相電圧VR2は、インダクタLRと交流端子11との間に印加される電圧である。入力S相電圧VS1は、スイッチング素子S3のエミッタに印加される電圧である。S相電圧VS2は、インダクタLSと交流端子12との間に印加される電圧である。入力T相電圧VT1は、スイッチング素子S5のエミッタに印加される電圧である。T相電圧VT2は、インダクタLTと交流端子13との間に印加される電圧である。
ここで、実施の形態1に係るコンバータ1−1では、前述したように、配線291−2に接続されるグランドVRPGNDに発生する信号に基づいて、入力R相電圧VR1を検出され、配線292−2に接続されるグランドVSPGNDに発生する信号に基づいて、入力S相電圧VS1を検出され、さらに、配線293−2に接続されるグランドVTPGNDに発生する信号に基づいて、入力T相電圧VT1を検出される。従って、交流電源3からパワーモジュール22を見たとき、交流電源3の端子3Rと交流端子11とを接続する配線にはインダクタLRが存在し、交流端子11とスイッチング素子S1とを接続する配線には、インダクタLR1と、配線291−2に起因するインダクタンスとが存在する。また、交流電源3の端子3Sと交流端子12とを接続する配線にはインダクタLSが存在し、交流端子12とスイッチング素子S3とを接続する配線には、インダクタLS1と、配線292−2に起因するインダクタンスとが存在する。また、交流電源3の端子3Tと交流端子13とを接続する配線にはインダクタLTが存在し、交流端子13とスイッチング素子S5とを接続する配線には、インダクタLT1と、配線293−2に起因するインダクタンスとが存在する。従って、特許文献1に示される技術と比較して、交流電源3からスイッチング素子S1,S3,S5までのインダクタンス成分が大きくなる。そのため、例えば、交流電源3にコンバータ1−1以外の外部機器が接続される場合、当該外部機器の回生動作に起因して交流端子11,12,13に印加される交流電源3からの電圧が変動したときでも、上記のインダクタンス成分によって、電圧変動が軽減される。
なお、フィルタ用コンデンサ等を用いて、電圧変動を抑制するような措置を講じることも可能であるが、フィルタ用コンデンサを用いた場合、電圧位相の遅れが生じるため、望ましくない。実施の形態1に係るコンバータ1−1では、フィルタ用コンデンサを用いなくとも、電圧位相検出部24で検出される入力R相電圧VR1などの変動が抑制されるため、例えば、前述した外部機器が動作している状態で、コンバータ1−1の電源投入された場合でも、配線291−2に接続されるグランドVRPGNDに発生する信号の変動が抑制され、電圧位相検出部24における入力R相電圧VR1の検出精度が向上する。
また、図1に示すモータ駆動装置4に供給される電力が大きくなるほど、コンバータ1−1の交流端子11,12,13に流れる電流が大きくなるため、交流端子11,12,13が大型化して、電圧位相検出部24、ベース駆動信号生成部26、回生制御部28、ベース駆動回路27及び制御電源部29が搭載されるプリント基板に、交流端子11,12,13をねじ止め等で直接接続することが困難になる。従って、バスバー、ハーネス等などを利用して、交流端子11,12,13とプリント基板とを接続する必要があり、交流電源3の電圧位相を検出するための構成が複雑になる。実施の形態1に係るコンバータ1−1によれば、プリント基板上のパターン配線である配線291−2などに接続されるグランドに発生する信号を利用して入力R相電圧VR1などを検出し、交流電源3の電圧位相を検出できるため、交流端子11,12,13が大型化した場合でも、バスバー、ハーネス等などが不要であり、コンバータ1−1の製造コストが低減され、さらに交流電源3の電圧位相を検出するための構成が複雑になることを抑制できる。
また、実施の形態1に係るコンバータ1−1によれば、配線291−2などに接続されるグランドに発生する信号を利用できるため、プリント基板上で配置しやすいパターン設計も可能となり、省スペース化を図ることができる。
実施の形態2.
図14は、実施の形態2に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態2に係るコンバータ1−2は、図1に示す電圧位相検出部24の代わりに、電圧位相検出部24Aを備える。以下では、まず実施の形態1の電圧位相検出部24において入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1、入力T相電圧VT1に基づく回生動作時に生じる線間電圧と相電圧に生じるスパイク状の電圧変動について説明し、その後、実施の形態2に係る電圧位相検出部24Aによる構成について説明する。
図15は、実施の形態1に係るコンバータの回生動作時に生じる線間電圧、ベース駆動信号、位相検出信号などの波形を示す図である。図15には、上から順に、ベース駆動信号SRPからSTNの波形と、回生動作時の線間電圧VR−S,VS−T,VT−Rの波形と、回生動作時に生成されるR相の位相検出信号RSDの波形とが示される。図15に示すように、ベース駆動信号SRPからSTNがHighレベルとLowレベルとに切り替わることにより、図1に示すスイッチング素子S1からS6のオンオフ動作が行われると、オンオフ動作に起因して、線間電圧VR−S,VS−T,VT−Rにスパイク状の電圧変動が発生する。このような電圧変動が発生すると、例えば線間電圧VR−Sのゼロクロス点において、位相検出信号RSDの電位が、短期間に、Highレベル、Lowレベル、Highレベルの順で変化する。
図16は、実施の形態1に係るコンバータの回生動作時に生じる相電圧、ベース駆動信号、位相検出信号などの波形を示す図である。図16には、上から順に、回生動作時のベース駆動信号SRPからSTNの波形と、回生動作時の相電圧VR2,VS2,VT2の波形と、回生動作時に生成される位相検出信号RD,SD,TDの波形とが示される。図16に示すように、ベース駆動信号SRPからSTNがHighレベルとLowレベルとに切り替わることにより、図1に示すスイッチング素子S1からS6のオンオフ動作が行われると、オンオフ動作に起因して、相電圧VR2,VS2,VT2にスパイク状の電圧変動が発生する。このような電圧変動が発生すると、例えば相電圧VR2のゼロクロス点において、位相検出信号RDの電位が、短期間に、Highレベル、Lowレベル、Highレベルの順で変化する。位相検出信号SD,TDの電位も同様に変化する。
実施の形態1で説明したように、電圧位相検出部24には、例えば入力R相電圧VR1などが入力されるが、パワーモジュール22の交流端子11とスイッチング素子S1との間には、配線291−2などによるインダクタンスが存在する。このインダクタンスにより、交流電源3に接続される外部機器の回生動作に起因する電圧変動の影響を軽減できるが、スイッチング素子S1からS6などに接続される配線291−2などに、スイッチング素子S1からS6のオンオフ動作に起因するスパイク状の電圧変動が重畳することとなる。図15及び図16に示される電圧変動は、スイッチング素子S1からS6の状態が、オンからオフ又はオフからオンに切り替わる際、整流素子D1からD6を介して、相間が導通することによって、リアクトル2のインダクタンスと、交流端子11,12,13のインダクタンスとにより、電圧が分圧されるためである。即ち、パワーモジュール22の回生動作時に、入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1、及び入力T相電圧VT1に基づき発生する線間電圧、相電圧などは、当該回生動作により発生するスパイク状の電圧変動を受けやすくなる。
また、電圧位相検出部24は、スイッチング素子S1に接続される配線291−2、スイッチング素子S3に接続される配線292−2、スイッチング素子S5に接続される配線293−2など伝達される信号、すなわち入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1及び入力T相電圧VT1を検出するため、スイッチング素子S1,S3,S5のオンオフ動作時に発生するリンギングに起因する電圧変動による影響も受ける。従って、リアクトル2とパワーモジュール22の交流端子11,12,13との間に印加される相電圧VR2,VS2,VT2の値を検出することで位相検出信号が生成される場合に比べて、電圧変動の要因が多くなる。即ち、実施の形態1に示す電圧位相検出部24は、交流電源3に接続される外部機器の回生動作に起因する電圧変動の影響を軽減できるが、電圧位相検出部24を搭載するコンバータ1−1の回生動作に起因する電圧変動の影響を受けやすいという課題がある。このような課題を解決するには、検出した線間電圧、又は相電圧波形にフィルタコンデンサ等によるフィルタリングを行うことで電圧変動を除去する方法、スイッチング素子のスイッチング速度を遅くしてリンギングを抑制する方法等が考えられる。しかしながら、フィルタリングを行った場合、本来の交流電源3の電圧位相から遅れが生じ、本来の電圧位相に合わせる補正が必要となる。またスイッチング速度を遅くした場合、パワーモジュール22のスイッチング損失が増加するという課題がある。
実施の形態2に係る電圧位相検出部24Aでは、入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1、入力T相電圧VT1に基づき発生する相電圧の最大値又は最小値を検出し、或いは、入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1、入力T相電圧VT1に基づき発生する線間電圧の最大値又は最小値を検出することによって、交流電源3の電圧位相の検出が行われる。
図17を用いて、電圧位相検出部24Aによる相電圧の最大値又は最小値の検出方法について説明する。図17は、図14に示す電圧位相検出部の構成例を示す図である。
電圧位相検出部24Aは、中性点40、抵抗41A、抵抗41B、抵抗41C及び位相検出部42を備える。抵抗41A、抵抗41B及び抵抗41Cのそれぞれの一端は中性点40に接続される。中性点40は位相検出部42に接続される。
抵抗41Aの他端には、スイッチング素子S1のエミッタの電位である入力R相電圧VR1が入力される。入力R相電圧VR1は抵抗41Aに入力されると共に位相検出部42に入力される。抵抗41Bの他端には、スイッチング素子S3のエミッタの電位である入力S相電圧VS1が入力される。入力S相電圧VS1は抵抗41Bに入力されると共に位相検出部42に入力される。抵抗41Cの他端には、スイッチング素子S5のエミッタの電位である入力T相電圧VT1が入力される。入力T相電圧VT1は抵抗41Cに入力されると共に位相検出部42に入力される。
位相検出部42では、入力される信号に基づいて位相検出信号RD3,SD3,TD3が生成される。位相検出信号RD3の値は、中性点40の電位NGを基準とした入力R相電圧VR1の値に相当する。位相検出信号SD3の値は、中性点40の電位NGを基準とした入力S相電圧VS1の値に相当する。位相検出信号TD3の値は、中性点40の電位NGを基準とした入力T相電圧VT1の値に相当する。
次に、図18を用いて、相電圧の最小値の検出方法について説明する。図18は、実施の形態2に係る電圧位相検出部により生成されるR相の位相検出信号の波形と、当該位相検出信号に基づき発生するR相の相電圧の波形とを示す図である。
図18には、位相検出用閾電圧と、コンバータ1−2の回生動作時に発生するR相の中性点基準相電圧VR3の波形と、コンバータ1−2の回生動作時に電圧位相検出部24Aで生成される位相検出信号RD3の波形とが示される。位相検出用閾電圧の値は、中性点基準相電圧VR3の位相が60°から120°までの間で、位相検出信号RD3の電位がHighレベルとなるような値に設定される。位相検出用閾電圧は、電圧位相検出部24Aに設定されている。中性点基準相電圧VR3は、位相検出部42において、例えば、中性点40の電位NGを基準として、VR3=VR1−NGにより算出させる。
中性点基準相電圧VR3の位相が60°に到達したとき、位相検出信号RD3の電位は、LowレベルからHighレベルに変化する。中性点基準相電圧VR3の位相が90°に到達したとき、位相検出信号RD3の電位は、短期間に、Highレベル、Lowレベル、Highレベルの順で変化する。中性点基準相電圧VR3の位相が120°に到達したとき、位相検出信号RD3の電位は、HighレベルからLowレベルに変化する。中性点基準相電圧VR3の位相が120°から、一周期後の位相60°までの区間では、位相検出信号RD3の電位は、Lowレベルに維持される。一周期後の位相60°は位相420°と等価である。中性点基準相電圧VR3の位相が420°に到達したとき、位相検出信号RD3の電位は、LowレベルからHighレベルに変化する。なお、中性点基準相電圧VR3の位相120°から420°までの区間の中心は、中性点基準相電圧VR3の位相270°に相当し、中性点基準相電圧VR3の位相が270°のとき、中性点基準相電圧VR3の電位は最小となる。
なお、図18では、図示が省略されているが、コンバータ1−2の回生動作時に電圧位相検出部24Aにより生成されるS相の位相検出信号の波形と、S相の位相検出信号に基づき発生するS相の相電圧の波形は、図18に示される波形と同様の傾向で変化する。また、コンバータ1−2の回生動作時に電圧位相検出部24Aにより生成されるT相の位相検出信号の波形と、T相の位相検出信号に基づき発生するT相の相電圧の波形は、図18に示される波形と同様の傾向で変化する。
図18に示されるように位相検出用閾電圧の値を、中性点基準相電圧VR3の電位が最高となる値付近に設定することにより、中性点基準相電圧VR3の位相が60°から120°までの間で、位相検出信号RD3の電位が変動する回数が1回になる。すなわち、スイッチング素子のオンオフ動作の影響を受ける回数を、中性点基準相電圧VR3の位相90°のときのみにすることができる。
中性点基準相電圧VR3の位相90°付近では、位相検出信号RD3の電位がHighレベル、Lowレベル、Highレベルの順で変化するが、このように位相検出信号RD3の電位が変動する区間の幅は、中性点基準相電圧VR3の位相が120°から420°までの区間の幅、すなわち位相検出信号RD3の電位がLowレベルに維持される区間の幅に比べて短い。そのため、Lowレベルの位相検出信号RD3が出力され続ける期間が、特定期間を越えない場合には、このようなLowレベルの位相検出信号RD3をノイズと判定させることで、電圧変動による影響を低減することができる。
また、実施の形態2に係る電圧位相検出部24Aでは、中性点基準相電圧VR3の位相が120°から420°までの区間においては、位相検出信号RD3の電位がHighレベルからLowレベルに変化した時点から、LowレベルからHighレベルに変化した時点までの時間を算出することにより、中性点基準相電圧VR3の最小値を算出することができる。この時間は、上記のノイズ判定に利用される特定期間よりも長いものとする。中性点基準相電圧VR3の最小値を利用することで交流電源3の電圧位相を検出することが可能となる。
以上に説明したように、実施の形態2に係るコンバータ1−2によれば、制御電源部29に設けられるグランドVRPGND,VSPGND,VTPGNDに発生する信号に基づいて位相検出信号の生成が行われた場合でも、スイッチング素子のオンオフ動作の影響を受けることなく、交流電源3の電圧位相を検出できる。
また、実施の形態2では、相電圧の最小値を利用した電圧位相の検出が行われるが、実施の形態2に係るコンバータ1−2は、例えば相電圧の最小値だけでなく、最大値も検出することで、より短時間に電圧位相検出を行うことができる。例えば、中性点基準相電圧VR3の位相が240°から300°までの間で、位相検出信号RD3の電位がHighレベルとなるような位相検出用閾電圧を追加することにより、中性点基準相電圧VR3の最大値を算出することができる。中性点基準相電圧VR3の最大値の位相は、例えば、図18に示される中性点基準相電圧VR3の位相90°と位相270°に相当する。
また、実施の形態2では、中性点基準相電圧VR3の位相が60°から120°までの間と、中性点基準相電圧VR3の位相が240°から300°までの間とにおいて、位相検出信号RD3の電位がHighレベルとなるような位相検出用閾電圧が設定されているが、中性点基準相電圧VR3から見たスイッチング素子のオンオフ動作が行われる位相は、30°、90°、150°、210°、270°、330°などであるため、例えば、位相検出用閾電圧を、中性点基準相電圧VR3の位相が45°から105°までの間と、225°から315°までの間とにおいて、位相検出信号RD3の電位がHighレベルとなるような位相検出用閾電圧を設定してもよい。
また、実施の形態2では、相電圧を算出することで、電圧位相の検出が行われているが、実施の形態2のコンバータ1−2は、線間電圧を算出することで、電圧位相の検出を行うことも可能である。例えば、線間電圧の位相が45°から135°までの間のとき、位相検出信号の電位がHighレベルとなるような位相検出用閾電圧を設定すればよい。この場合、線間電圧の位相が135°から405°までの間では、位相検出信号の電位がLowレベルとなり、線間電圧の位相が135°から405°までの中心点が、すなわち位相270°に相当する線間電圧が、最小値となる。
また、実施の形態1に係る電圧位相検出部24及び回生制御部28、並びに実施の形態2に係る電圧位相検出部24A及び回生制御部28は、フォトカプラ、ロジックIC等を用いたハードウェアで構成してもよいし、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものでもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。
また、実施の形態1に係るコンバータ1−1及び実施の形態2に係るコンバータ1−2によれば、プリント基板上のパターン配線に伝達される信号を利用して、線間電圧である線間電圧VR−S、線間電圧VS−T及び線間電圧VT−R、並びに、相電圧である入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1及び入力T相電圧VT1を算出できる。このため、これらの電圧を、停電の検出に用いることができる。停電の検出とは、交流電源3からの電力がコンバータに供給されていない状態を検出することである。なお、停電の検出については、後述の実施の形態3において、さらに詳述する。
また、実施の形態1に係るコンバータ1−1及び実施の形態2に係るコンバータ1−2によれば、プリント基板上のパターン配線に伝達される信号に基づいて算出した線間電圧VR−S、線間電圧VS−T、線間電圧VT−R、入力R相電圧VR1、入力S相電圧VS1及び入力T相電圧VT1のうちの少なくとも1つの電圧を、前述した回生制御部28の基準電圧Vrefの設定に用いることができる。
実施の形態3.
図19は、実施の形態3に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態3に係るコンバータ1−3は、図1に示すコンバータ1−1と同一の構成であり、さらに入力電圧検出部43が設けられている。
まず、実施の形態3における入力電圧検出部43の動作について説明する。図20は、図19に示す入力電圧検出部43の動作説明に供する図である。図20は、図11と同一の構成であり、電圧位相検出部24の代わりに入力電圧検出部43が図示されている。入力電圧検出部43には、実施の形態1でも示した配線291−2に接続されるグランドVRPGNDに発生する信号であるVR1と、配線292−2に接続されるグランドVSPGNDに発生する信号であるVS1と、配線293−2に接続されるグランドVTPGNDに発生する信号であるVT1とが入力される。入力電圧検出部43は、これらの信号に基づいて、交流電源3の線間電圧又は相電圧を検出する。
実施の形態3によれば、配線291−2などに接続されるグランドに発生する信号を利用できるため、実施の形態1と同様に交流電源3の相電圧又は線間電圧を検出するための構成が複雑になることを抑制できる。また、実施の形態3によれば、配線291−2などに接続されるグランドに発生する信号を利用できるため、プリント基板上で配置しやすいパターン設計も可能となり、省スペース化を図ることができる。
また、実施の形態3によれば、入力電圧検出部43の出力信号に基づいて、交流電源3の停電が発生したか否かを判定する停電検出部を追加することも可能である。停電検出部は、単に停電が発生したか否かを報知する表示装置、又は音響装置であってもよいし、制御機能を備えた制御装置又は制御器であってもよい。停電検出部を備えている場合、交流電源3に停電が発生したときに、コンバータ1−3の直流電力を使用するモータ駆動装置4が制御するモータ5をどのように動作させるか等の制御又は指示を迅速に行うことが可能となる。
実施の形態4.
図21は、実施の形態4に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態4に係るコンバータ1−4は、図1に示す母線電流検出部25に代わり、交流配線51,52,53に流れる三相入力電流を検出する入力電流検出部25Aが設けられている。
実施の形態4に係るコンバータ1−4は、電流値変換部であるRST−dq座標変換部44と、回生制御部28Aと、を備える。RST−dq座標変換部44は、電圧位相検出部24の出力信号である位相検出信号に基づいて、入力電流検出部25Aの出力信号を座標変換することで、有効電力に相当する電流であるd軸電流Idと、無効電力に相当する電流であるq軸電流Iqとを算出する。回生制御部28Aは、d軸電流Idと母線電圧検出部23の出力信号とに基づいて回生開始動作及び回生停止動作を行う。なお、電圧位相検出部については、実施の形態1で示した電圧位相検出部24を用いているが、実施の形態2で示した電圧位相検出部24Aに置き換えてもよい。また、実施の形態3で説明した入力電圧検出部43が追加されてもよい。
また、実施の形態1及び実施の形態2では、それぞれの電圧位相検出部が交流電源3の線間電圧又は相電圧の電圧位相を検出することについて説明したが、これに限定されない。線間電圧又は相電圧の電圧位相以外にも、交流電源3の電源角周波数ω、R相電圧位相θr、S相電圧位相θs、T相電圧位相θtといった他の情報の少なくとも1つを算出することも可能である。なお、以下、R相電圧位相を第1電圧位相と称し、S相電圧位相を第2電圧位相と称し、T相電圧位相を第3電圧位相と称する場合がある。
次に、実施の形態4におけるRST−dq座標変換部44について説明する。RST−dq座標変換部44は、固定座標軸であるRST軸を回転座標軸であるdq軸に変換する機能を備える。電圧位相検出部24で交流電源3の電源角周波数ωとR相電圧位相θrを算出し、電源角周波数ωとR相電圧位相θrに基づいてRST軸の信号をdq軸の信号に変換する。
ここで、交流電源3の相電圧VR,VS,VTは、時刻t、実効値Ea、電源角周波数ω、初期位相αの平衡三相電圧で表されるものとする。すると、交流電源3の相電圧VR,VS,VTは、以下の式(1)で表される。なお、初期位相αは、t=0のときの相電圧VRの位相である。
図22は、実施の形態4の制御で使用するRST軸及びdq軸の説明に供する図である。図22において、RST軸は、交流電源3のR相、S相及びT相を示す固定座標軸である。また、dq軸は、電源角周波数ωで時計回りに回転する回転座標軸である。ここで、R相の軸を基準とするd軸の位相をθとすると、2つの座標軸の間には、以下の式(2)が成り立つ。
前述の式(1)及び式(2)を用いて回転座標軸であるdq軸の電圧Vd,Vqを算出すると、以下の式(3)を導き出すことができる。
まず、上記式(3)において、θ=0となる場合について考える。式(3)にθ=0を代入すると、以下の式(4)を導き出すことができる。
また、上記式(3)において、θ=π/2となる場合について考える。式(3)にθ=π/2を代入すると、以下の式(5)を導き出すことができる。
上記、式(4)及び式(5)からも分かるように、上記式(3)におけるθがどのような値でも、上記式(4)を導き出すことができる。つまり、d軸電圧は電源電圧ベクトルと等価であることを意味する。従って、d軸は有効電力方向に相当し、q軸は無効電力方向に相当する。
次に、R相電圧位相θrと、初期位相αとの関係について説明する。まず、上記式(1)より、R相電圧VRは、以下の式(6)で表すことができる。
例えば、R相電圧VRが0のときθr=0とし、R相電圧VRが最大値である√2Eaのとき、θr=π/2とする。この場合、初期位相αは、−π/2に設定することができる。以上より、上記式(2)は、以下の式(7)で表すことができる。
上記式(7)は、電圧位相検出部24で算出されたR相電圧位相θrと、電源角周波数ωとに基づいた式であり、RST軸からdq軸に変換するRST−dq座標変換部44で使用する式となる。従って、入力電流Ir,Is,Itは、以下の式(8)を用いて、d軸電流Id、q軸電流Iqに変換することができる。
前述したように、d軸は有効電力となり、q軸は無効電力となるため、d軸電流は有効電力に相当する電流を、q軸は無効電力に相当する電流を示している。従って、モータ加速時等の力行動作において、d軸電流Idは、正の値の信号となる。これに対し、モータ減速時等の回生動作において、d軸電流Idは、負の値の信号となる。
一般的に、コンバータにおいて、入力電流Ir,Is,Itを検出し、回生動作の開始及び停止といった制御を行う場合、固定座標軸であるRST軸を回転座標軸であるdq軸に変換する必要がある。座標変換には、交流電源3の電圧位相の情報が必要となる。前述の通り、本実施の形態の手法を用いれは、プリント基板上のパターン配線である配線291−2などに接続されるグランドに発生する信号を利用して、交流電源3の電圧位相を検出するので、交流電源3の電圧位相を検出するための構成が簡素化できる。従って、本実施の形態で示した電圧位相検出部24又は電圧位相検出部24Aを用いれば、コンバータの低コスト化に寄与することができる。
次に、実施の形態4における回生制御部28Aについて説明する。回生制御部28Aは、d軸電流Idと母線電圧VPNとに基づいて、ベース駆動信号生成部26から出力されたベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を継続するか、ベース駆動信号生成部26から出力されたベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を停止するかを判断する。回生制御部28Aがベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を継続すると判断した場合、ベース駆動回路27にベース駆動信号SRPからSTNが入力され続ける。回生制御部28Aがベース駆動信号SRPからSTNのベース駆動回路27への伝達を停止すると判断した場合、ベース駆動回路27へのベース駆動信号SRPからSTNの入力が停止される。
図23は、図21に示す回生制御部28Aの構成例を示す図である。図23に示す回生制御部28Aでは、図3に示す回生制御部28の構成において、回生停止判定部61に入力される信号が母線電流IPNからd軸電流Idに変更されている点のみが相違点であり、それ以外の動作は実施の形態1に示した回生制御部28と同一の動作を行う。なお、図3と同一又は同等の構成要素には、同一の符号を付している。回生停止判定部61において、比較器66のマイナス入力端子には、d軸電流Idが入力される。d軸電流Idが閾電流Irefよりも大きいときはLowレベルの信号が出力され、d軸電流Idが閾電流Iref未満となったときには、Highレベルの信号が出力される。
以上より、母線電流に代わり、入力電流を検出するコンバータにおいても、交流電源3の電圧位相の検出を行うことができる。これにより、コンバータの低コスト化に寄与することができる。
実施の形態5.
図24は、実施の形態5に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態5に係るコンバータ1−5は、図21に示すコンバータ1−4と同一又は同等の構成であり、さらに過負荷検出部45が追加されている。なお、同一又は同等の構成要素には同一の符号を使用し、重複する説明は適宜省略する。
過負荷検出部45は、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−5の過負荷を検出する機能を備える。コンバータ1−5が過負荷状態であるか否かの情報は、モータ駆動装置4、又は図24では図示しない上位制御装置100(図34参照)に通知される。上位制御装置100は、モータ駆動装置4にモータ動作指令を送信する装置である。
図25は、図24に示すモータ駆動装置4がモータ5を動作させたときの挙動を示す波形図である。横軸には時間をとり、上段から、モータ速度N、モータトルクTout、モータ出力Pout、母線電圧VPN、及びd軸電流Idが示されている。
まず、図25のt00〜t01区間について説明する。この区間は、モータが加速している区間でありモータ力行区間である。時刻t00はモータが加速し始めた時刻であり、時刻t01はモータ速度Nが目標速度に到達した時刻である。モータトルクToutにより、モータ速度N及びモータ出力Poutが大きくなる。モータ出力Poutが大きくなるにつれて、d軸電流Idがプラスに方向大きくなっている。モータトルクToutが低減してくると、モータ出力Poutが一定になり、d軸電流Idのピーク値も一定となる。
図25のt01〜t02区間について説明する。この区間は、モータ速度Nが一定速度になっている区間である。時刻t00〜t01区間と違いモータ出力Poutが低い値であるため、d軸電流Idは、ほとんど流れていない状態である。
図25のt02〜t03区間について説明する。この区間は、モータが減速している区間であり、モータ回生区間である。時刻t02はモータが減速し始めた時刻であり、時刻t03はモータが停止した時刻である。モータが減速し始めると、モータの回生電力が平滑コンデンサ21に流れ込み、母線電圧VPNが上昇する。前述の回生制御部28Aに基づいて、母線電圧VPNが予め定められた値を超えると、コンバータ1−5は、電源回生動作を開始する。コンバータ1−5の電源回生動作によって、d軸電流Idがマイナス方向に流れ、母線電圧VPNは低減する。時刻t02においては、モータ減速時のモータ出力Pout、すなわちモータの回生電力の絶対値が大きく、大きな電流が流れるが、モータ速度Nが低減するにつれてモータ出力Poutの絶対値も小さくなり、マイナス方向に流れるd軸電流Idの絶対値も小さくなる。
図25より、モータ出力Poutによってd軸電流Idの大きさが決定されることが分かる。すなわち、モータ出力Poutとd軸電流Idとには、比例関係が成り立っている。また、d軸電流Idは、入力電流Ir,Is,Itに基づいて求められたものである。従って、d軸電流Idが大きくなるということは、入力電流Ir,Is,Itの絶対値も大きくなることと等価である。
コンバータ1−5に搭載されたパワーモジュール22に過大な電流が流れ続けると、コンバータ1−5は、過負荷状態となる。このとき、パワーモジュール22には、入力電流Ir,Is,Itと同じ電流が流れるので、入力電流Ir,Is,Itに基づいて算出されたd軸電流Idを監視することで、間接的にパワーモジュール22に流れる電流を検出することができる。入力電流Ir,Is,Itは交流電流であるため、モータ力行時又はモータ回生時に関わらず正負どちらにも流れる。これに対し、d軸電流Idの場合、モータ力行時は正の方向に電流が流れ、モータ回生時は負の方向に電流が流れる。
次に、実施の形態5における過負荷検出部45について説明する。図26は、図24に示す過負荷検出部45の構成例を示す図である。過負荷検出部45は、比較器190、比較器191及び論理和回路192を備えて構成される。比較器190のマイナス入力端子にはd軸電流上限値Idmaxが入力され、比較器190のプラス入力端子にはd軸電流Idが入力される。また、比較器191のプラス入力端子にはd軸電流下限値Idminが入力され、比較器191のマイナス入力端子にはd軸電流Idが入力される。比較器190及び比較器191の各出力信号は、論理和回路192の入力端子に入力され、論理和回路192の出力信号が過負荷検出部45の出力信号として扱われる。ここで、過負荷検出部45がHighレベルの信号を出力した場合、コンバータ1−5は過負荷状態であると判定され、過負荷検出部45がLowレベルの信号を出力した場合、コンバータ1−5は過負荷状態ではないと判定される。
d軸電流上限値Idmax及びd軸電流下限値Idminは、コンバータ1−5に搭載されたパワーモジュール22の電流容量又は電気的仕様等で決定される。d軸電流上限値Idmaxは力行動作時の電流制限値となり、d軸電流下限値Idminは回生動作時の電流制限値となる。
前述の構成より、d軸電流Idがd軸電流上限値Idmax以上となった場合、比較器190はHighレベルの信号を出力し、論理和回路192にはHighレベルの信号が入力される。これにより、論理和回路192はHighレベルの信号を出力し、過負荷検出部45はHighレベルの信号を出力する。また、d軸電流Idがd軸電流下限値Idmin以下となった場合、比較器191はHighレベルの信号を出力し、論理和回路192にはHighレベルの信号が入力される。これにより論理和回路192はHighレベルの信号を出力し、過負荷検出部45はHighレベルの信号を出力する。過負荷検出部45が出力した信号は、図示を省略した通信ラインを介してモータ駆動装置4又は上位制御装置100に通知される。
以上のように、実施の形態5に係るコンバータ1−5では、d軸電流Idに基づいて、モータ力行時、及びモータ回生時のコンバータ1−5の負荷状態が監視され、その監視結果に基づいてコンバータ1−5が瞬時的過負荷状態であるか否かが判定される。
実施の形態5の構成であれば、電源位相検出部を低コスト化することができるとともに、d軸電流Idでコンバータの過負荷状態を監視するという単純な構成を実現できるため、コンバータの低コスト化に寄与することができる。
なお、実施の形態5では、モータ出力Poutと比例関係にあるd軸電流Idのみで瞬時過負荷状態か否かを判定しているが、q軸電流Iqも使用して瞬時過負荷状態か否かを判定してもよい。d軸電流Id及びq軸電流Iqの双方を用いることで、有効電流及び無効電流の双方を監視することができる。これにより、コンバータ1−5の通電状態をより正確に判断することができるため、瞬時過負荷状態か否かをより正確に判断することができる。
実施の形態6.
図27は、実施の形態6に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態6に係るコンバータ1−6は、図24に示すコンバータ1−5と同一又は同等の構成であり、図24の過負荷検出部45が、図27では過負荷検出部45Aに置き換えられている。なお、同一又は同等の構成要素には同一の符号を使用し、重複する説明は適宜省略する。
過負荷検出部45Aは、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−6の定常時過負荷を検出する機能を備える。コンバータ1−6が過負荷状態であるか否かの情報は、モータ駆動装置4、又は図27では図示しない上位制御装置100(図34参照)に通知される。上位制御装置100は、モータ駆動装置4にモータ動作指令を送信する装置である。
一般的に、コンバータ及びインバータといった電力変換装置の定常時過負荷保護は、電力変換装置に搭載される部品の温度を推定し、推定した温度が保護すべき温度以上となった場合に、定常時過負荷状態であると判断し、電力変換装置の動作を止めることで電力変換装置を保護している。なお、電力変換装置に搭載される部品としては、モータへの電力供給に関わるパワー素子群及びコンデンサ等が挙げられる。
定常時過負荷保護の具体的な例としては、図28に示すような過負荷保護曲線が知られている。図28は、実施の形態6における定常時過負荷保護の説明に供する波形図である。図28では、横軸が電力変換装置の通電電流I、縦軸が許容通電時間Taとされ、これらの関係が過負荷保護特性として示されている。この過負荷保護特性は、ある通電電流Iで電力変換装置が連続して通電されたとき、その通電による温度上昇が保護すべき温度に到達するまでの時間を求める際に使用する。具体的に、ある通電電流Iの値を表す横軸の点から縦軸に平行に引いた直線と図示の過負荷保護曲線との交点の縦軸の値が、保護すべき温度として設定される。
図29は、図27に示す過負荷検出部45Aの構成例を示す図である。過負荷検出部45Aは、図29に示すように、絶対値算出部193、フィルタ部である温度上昇推定部194、及び比較器195を備えて構成される。図29において、絶対値算出部193には、d軸電流Idが入力される。絶対値算出部193は、d軸電流絶対値|Id|を算出する。算出されたd軸電流絶対値|Id|は、温度上昇推定部194に入力される。温度上昇推定部194は、コンバータ1−6に搭載される、パワーモジュール22及び平滑コンデンサ21の特性で決定された過負荷保護曲線に基づいた温度上昇推定値Kcを算出する。算出された温度上昇推定値Kcは、比較器195のマイナス入力端子に入力される。比較器195のプラス入力端子には、閾温度Krefが入力されており、温度上昇推定値Kcと、閾温度Krefとの大小関係を表す信号が比較器195の出力信号となり、比較器195の出力信号が過負荷検出部45Aの出力信号となる。
次に、温度上昇推定部194の動作について、図30及び図31を参照して説明する。図30は、実施の形態6における温度上昇推定部194の動作説明に供する第1の波形図であり、図31は、実施の形態6における温度上昇推定部194の動作説明に供する第2の波形図である。具体的に、図30には、コンバータ1−6のd軸電流Idを一定の値を流し続けた際のパワーモジュール22の温度上昇Kaが示されている。また、図31には、コンバータ1−6のd軸電流Idを一定の値を流し続けた際の平滑コンデンサ21の温度上昇Kbが示されている。何れの図も横軸は時間を表している。
図30及び図31の双方の図からも分かるように、温度上昇の変化特性は、数次の遅れフィルタの特性に近いものになっている。そのため、温度上昇推定部194では、入力信号としてd軸電流Idの絶対値にあたるd軸電流絶対値|Id|を使用することで、パワーモジュール22及び平滑コンデンサ21の温度上昇推定値Kcを算出することができる。なお、数次の遅れフィルタの例は、IIRフィルタ、移動平均フィルタなどである。
以上より、過負荷検出部45Aは、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−6に搭載される部品の温度上昇を推定し、予め設けられた温度上昇推定値Kcが閾温度Kref以上となった場合には、定常時過負荷状態であると判断し、温度上昇推定値Kcが閾温度Krefよりも小さい場合には、定常時過負荷状態ではないと判断する。定常時過負荷状態であると判断した場合、過負荷検出部45Aは、Highレベルの信号を出力し、通信経路を介してモータ駆動装置4又は上位制御装置100に通知する。一方、定常時過負荷状態ではないと判断した場合、過負荷検出部45Aは、Lowレベルの信号を出力する。Highレベル及びLowレベルの信号は、通信経路を介してモータ駆動装置4又は上位制御装置100に通知される。
以上のように、実施の形態6に係るコンバータ1−6では、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−6の負荷状態が監視され、その監視結果に基づいてコンバータ1−6が定常時過負荷状態であるか否かが判定される。
実施の形態6の構成であれば、電源位相検出部を低コスト化することができるとともに、d軸電流Idでコンバータの過負荷状態を監視するという単純な構成を実現できるため、コンバータの低コスト化に寄与することができる。
なお、実施の形態6では、モータ出力Poutと比例関係にあるd軸電流Idのみで定常時過負荷状態か否かを判定しているが、q軸電流Iqも使用して定常時過負荷状態か否かを判定してもよい。d軸電流Id及びq軸電流Iqの双方を用いることで、有効電流及び無効電流の双方を監視することができる。これにより、コンバータ1−6の通電状態をより正確に判断することができるため、定常時過負荷状態か否かをより正確に判断することができる。
実施の形態7.
図32は、実施の形態7に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。図32に示す実施の形態7に係るコンバータ1−7は、図24に示す実施の形態5に係るコンバータ1−5の構成において、母線電圧検出部23、ベース駆動信号生成部26及び回生制御部28Aの図示は省略する一方で、モータ駆動装置4の内部にモータ制御部4Aを追加している。なお、その他の構成は、図24と同一又は同等であり、同一又は同等の構成要素には、同一の符号を付している。
モータ制御部4Aは、モータ5に任意の交流電力を供給し、モータ5を可変速制御する機能を備える。コンバータ1−7内の過負荷検出部45の出力は、通信経路46を介してモータ制御部4Aに入力される構成である。なお、図32では、実施の形態5で説明した過負荷検出部45、すなわち瞬時過負荷状態を判定する機能を備えた過負荷検出部45を用いているが、実施の形態6で説明した過負荷検出部45A、すなわち定常時過負荷状態を判定する機能を備えた過負荷検出部45Aに置き換えてもよいし、瞬時過負荷状態の判定機能及び定常時過負荷状態の判定機能の双方を備えた過負荷検出部を用いて構成してもよい。
入力電流検出部25Aは、パワーモジュール22に入力される電流Ir,Is,Itを検出し、検出した入力電流Ir,Is,ItをRST−dq座標変換部44に入力する。RST−dq座標変換部44では、電圧位相検出部24で検出された交流電源3のR相位相θrと電源角周波数ωとに基づいて、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出し、d軸電流Idを過負荷検出部45に入力する。過負荷検出部45は、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−7が過負荷状態であるか否かを判定する。コンバータ1−7が過負荷状態であると判定され、過負荷検出部45がHighレベルの信号を出力した場合、モータ制御部4Aは、モータ5の出力を低下させるように交流電力を制御する。
モータ5の出力を低下させるための手法として、以下の手法が例示される。
(i)予めモータ動作指令で定められたトルク指令よりも制限されたトルク指令でモータ5を動作するように制御する。
(ii)予めモータ動作指令で定められた回転指令よりも制限された回転指令でモータ5を動作するように制御する。
(iii)モータ5をフリーランさせるように制御する。具体的には、モータ駆動装置4の内部に設けられる図示しないスイッチング素子をオンオフ制御するスイッチング動作を停止させ、モータ5がフリーな状態にする。
次に、実施の形態7に係るコンバータ1−7及びモータ駆動装置4の動作について、図32及び図33を参照して説明する。図33は、実施の形態7に係るコンバータ及びモータ制御部の動作を示すフローチャートである。なお、図33では、符号の表記を省略している。
RST−dq座標変換部44は、入力電流検出部25Aによって検出された入力電流Ir,Is,It、電圧位相検出部24によって算出されたR相位相θr及び電源角周波数ωに基づいてd軸電流Idを算出する(ステップS101)。過負荷検出部45は、d軸電流Idに基づき、コンバータ1−7が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS102)。過負荷検出部45は、通信経路46により判定結果をモータ駆動装置4内部のモータ制御部4Aに通知する(ステップS103)。以上のステップS101〜S103の処理がコンバータ1−7の処理であり、コンバータ1−7は、ステップS101〜S103の処理を繰り返し実行する。
モータ制御部4Aは、過負荷検出部45の判定結果を受信する(ステップS104)。モータ制御部4Aは、受信した判定結果に基づき、コンバータ1−7が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS105)。受信した判定結果が過負荷状態である旨を表す信号(実施の形態5の例では、Highレベルの信号)の場合(ステップS105、Yes)、モータ5の出力が制限されるようにモータ駆動装置4からのモータ出力を制限し(ステップS106)、モータ5の出力を制限した交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS107)。なお、受信した判定結果が過負荷状態ではない旨を表す信号(実施の形態5の例では、Lowレベルの信号)の場合(ステップS105、No)、ステップS106の処理を行わずにステップS107に移行する。すなわち、受信した判定結果が過負荷状態ではない場合、モータ5の出力を制限せずに、通常の制御動作における交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS107)。以上のステップS104〜S107の処理がモータ制御部4Aの処理であり、モータ制御部4Aは、ステップS104〜S107の処理を繰り返し実行する。
実施の形態7によれば、モータ5の動作が想定を超える動作を行い、コンバータ1−7が過負荷状態であった場合でも、モータ駆動装置4がモータ5の出力を低下させるように交流電力を制御するため、コンバータ1−7の過負荷状態を解消することができ、コンバータ1−7の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。そのため、容量の小さいコンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
実施の形態8.
図34は、実施の形態8に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。図34では、図32に示す実施の形態7に係るコンバータ1−7の構成において、上位制御装置100、モータ駆動装置400及びモータ5に代えたモータ500が追加されている。上位制御装置100は、通信経路47a,47bを介してモータ駆動装置4,400のそれぞれにモータ動作指令を出力する機能を備え、モータ駆動装置4,400のそれぞれにモータ動作指令を出力している。コンバータ1−8内の過負荷検出部45の出力は、通信経路46を介して上位制御装置100に入力される。モータ駆動装置400は、直流端子19,20と、モータ制御部400Aを備え、直流端子19,20はモータ駆動装置4の直流端子17,18と接続され、コンバータ1−8内の平滑コンデンサ21とも接続される。モータ制御部400Aは、モータ500に任意の交流電力を供給し可変速制御を行う。なお、図34では、瞬時過負荷検出に適した過負荷検出部45としているが、過負荷検出部45を定常時過負荷検出に適した過負荷検出部45Aに置き換えてもよいし、瞬時過負荷検出及び定常時過負荷検出の双方の機能を備えた過負荷検出部を用いて構成してもよい。
入力電流検出部25Aは、パワーモジュール22に入力される電流Ir,Is,Itを検出し、検出した入力電流Ir,Is,ItをRST−dq座標変換部44に入力する。RST−dq座標変換部44では、電圧位相検出部24で検出された交流電源3のR相位相θrと電源角周波数ωとに基づいて、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出し、d軸電流Idを過負荷検出部45に入力する。過負荷検出部45は、d軸電流Idに基づいてコンバータ1−8が過負荷状態であるか否かを判定する。コンバータ1−8が過負荷状態であると判定されると、過負荷状態である旨の信号(Highレベルの信号)が、通信経路46を介して上位制御装置100に通知される。上位制御装置100は、モータ駆動装置4のモータ制御部4A及びモータ駆動装置400のモータ制御部400Aの少なくとも1つに対し、対応する通信経路47a,47bの双方もしくは何れか一方を使用して、制御対象であるモータの出力を制限したモータ動作指令を生成するように指示する。モータ制御部4A及びモータ制御部400Aのうち少なくとも1つは、受信したモータ動作指令に基づいて、モータ5又はモータ500の出力を低下させるように交流電力を制御する。
以下、具体的な例を挙げて説明する。ここでは、スピンドルモータとサーボモータを備えた工作機械を例にとり、モータ5がスピンドルモータであり、モータ500がサーボモータであるとする。なお、上位制御装置100は、工作機械に設けられてもよいし、工作機械に設けられていなくてもよい。
(i)上位制御装置100は、スピンドルモータであるモータ5の出力を低下させるモータ動作指令をモータ制御部4Aに出力する。
(ii)上位制御装置100は、サイクルタイムを長くしないようにするため、スピンドルモータであるモータ5と比較して、加速時間や減速時間が短いサーボモータであるモータ500の出力を制限することを決定する。上位制御装置100は、スピンドルモータであるモータ5の出力は維持し、サーボモータであるモータ500の出力を制限するモータ動作指令をモータ制御部4A及びモータ制御部400Aに出力する。
次に、実施の形態8に係るコンバータ及びモータ駆動装置の動作について、図34及び図35を参照して説明する。図35は、実施の形態8に係るコンバータ及びモータ駆動装置の動作を示すフローチャートである。なお、図35では、符号の表記を省略している。
RST−dq座標変換部44は、入力電流検出部25Aによって検出された入力電流Ir,Is,It、電圧位相検出部24によって算出されたR相位相θr及び電源角周波数ωに基づいてd軸電流Idを算出する(ステップS201)。過負荷検出部45は、d軸電流Idに基づき、コンバータ1−8が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS202)。過負荷検出部45は、通信経路46により判定結果を上位制御装置100に通知する(ステップS203)。以上のステップS201〜S203の処理がコンバータ1−8の処理であり、コンバータ1−8は、ステップS201〜S203の処理を繰り返し実行する。
上位制御装置100は、過負荷検出部45の判定結果を受信する(ステップS204)。上位制御装置100は、受信した判定結果に基づき、コンバータ1−8が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS205)。受信した判定結果が過負荷状態である旨を表す信号(実施の形態5の例では、Highレベルの信号)の場合(ステップS205、Yes)、モータ5及びモータ500のうち少なくとも1つの出力を制限することを決定し(ステップS206)、制御対象であるモータを駆動するモータ駆動装置に対してモータの出力を制限したモータ動作指令を出力する(ステップS207)。なお、受信した判定結果が過負荷状態ではない旨を表す信号(実施の形態5の例では、Lowレベルの信号)の場合(ステップS205、No)、ステップS206の処理を行わずにステップS207に移行する。すなわち、受信した判定結果が過負荷状態ではない場合、モータ5及びモータ500に対する出力制限は行わず、通常のモータ動作指令を出力する(ステップS207)。以上のステップS204〜S207が上位制御装置100の処理であり、上位制御装置100は、ステップS204〜S207の処理を繰り返し実行する。
モータ駆動装置4のモータ制御部4A及びモータ駆動装置400のモータ制御部400Aは、上位制御装置100からのモータ動作指令を受信し(ステップS208)、受信したモータ動作指令に応じて交流電力がモータ5及びモータ500に出力されるように動作する(ステップS209)。以上のステップS208,S209の処理がモータ制御部4A,400Aの処理であり、モータ制御部4A,400Aは、ステップS208、S209の処理を繰り返し実行する。
実施の形態8によれば、モータ5及びモータ500の動作が想定を超える動作を行い、コンバータ1−8が過負荷状態であった場合でも、上位制御装置100がモータ5及びモータ500のうち少なくとも1つの出力を制限するモータ動作指令を該当するモータ駆動装置に出力し、当該モータ駆動装置が制御対象のモータ出力を低下させるように交流電力を制御するため、コンバータ1−8の過負荷状態を解消することができ、コンバータ1−8の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。また、工作機械のような複数のモータを使用する産業機械においては、サイクルタイムが長くなるのを防ぐように、モータ動作指令を出力することで、サイクルタイムを維持しながら、コンバータ1−8の過負荷状態を解消することができる。そのため、容量の小さいコンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
実施の形態9.
図36は、実施の形態9に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。図36では、図34に示す実施の形態8に係るコンバータ1−8の構成と同一又は同等であるが、コンバータ1−9の内部にコンバータ制御部1Aが追加され、コンバータ制御部1Aの内部に過負荷検出部45Bが設けられている。過負荷検出部45Bは、前述したように瞬時過負荷検出及び定常時過負荷検出の双方の機能を備えた過負荷検出部である。また、上位制御装置100、モータ駆動装置400、モータ駆動装置4及びコンバータ1−9は、通信経路でデイジーチェーン接続されている。具体的には、コンバータ1−9のコンバータ制御部1Aとモータ駆動装置4のモータ制御部4Aとは通信経路46で接続され、モータ駆動装置4のモータ制御部4Aとモータ駆動装置400のモータ制御部400Aとは通信経路48aで接続され、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aと上位制御装置100とは通信経路48bで接続されている。前述の構成では、例えば、上位制御装置100からモータ駆動装置4に対し出力されるモータ動作指令は、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aを介してモータ駆動装置4のモータ制御部4Aに入力されることになる。
前述のような産業機械において、瞬時過負荷状態は、複数のモータが大出力で動作するケースが一般的である。ここで、複数のサーボモータとスピンドルモータとによって構成される工作機械を例にとる。ここでは、スピンドルモータをモータ5とし、サーボモータをモータ500として考える。工作機械においては、複数のサーボモータとスピンドルモータとが同時加速動作又は同時減速動作を行う運転がある。このため、サーボモータとスピンドルモータとがそれぞれの最大出力で動作すると、上記のような同時加減速動作において、各モータの最大出力が重なり、コンバータが供給する電力が大きくなる。
工作機械では、サーボモータと比較してスピンドルモータの出力が大きいのが一般的である。このため、コンバータが各モータ駆動装置に供給する電力は、スピンドルモータ駆動装置が占める割合が大きくなる。上記のような同時加減速動作の場合、上位制御装置100を介さずにスピンドルモータであるモータ5の出力を低減させることで、コンバータの供給電力を素早く低減させることができる。
一方、定常時過負荷状態は、コンバータが過大な電力供給を行う状態ではなく、産業機械の運転サイクルが厳しく、長時間の動作によりコンバータに搭載されたパワーモジュール、平滑コンデンサ等の部品の温度上昇が許容温度を超えるケースである。このようなケースにおいては、運転サイクルの見直しが必要であり、上位制御装置100を介して、スピンドルモータであるモータ5又はサーボモータであるモータ500、あるいは両者に対するモータ動作指令の見直しにより、長時間動作におけるモータの平均出力の総和の低減を図るのが適している。
次に、実施の形態9に係るコンバータとモータ駆動装置、上位制御装置の動作について、図36及び図37の図を参照して説明する。図37は、実施の形態9に係るコンバータ、モータ駆動装置及び上位制御装置の動作を示すフローチャートである。
RST−dq座標変換部44は、入力電流検出部25Aによって検出された入力電流Ir,Is,It、電圧位相検出部24によって算出されたR相位相θr及び電源角周波数ωに基づいてd軸電流Idを算出する(ステップS301)。過負荷検出部45Bは、d軸電流Idに基づき、コンバータ1−9が瞬時過負荷状態であるか、定常時過負荷状態であるか、あるいは異常なしであるか、すなわちコンバータ1−9の過負荷状態を判定する(ステップS302)。過負荷検出部45Bは、通信経路46を介して判定結果をモータ制御部4Aに通知する(ステップS303)。以上のステップS301〜S303の処理がコンバータ1−9の処理であり、コンバータ1−9は、ステップS301〜S303の処理を繰り返し実行する。
モータ制御部4Aは、過負荷検出部45Bの判定結果を受信する(ステップS304)。モータ制御部4Aは、受信した判定結果に基づき、コンバータ1−9が瞬時過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS305)。受信した判定結果が瞬時過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS305、Yes)、モータ5の出力が制限されるようにモータ駆動装置4からのモータ出力を制限し(ステップS306)、モータ出力を制限した交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS307)。なお、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない場合(ステップS305、No)、ステップS306の処理を行わずにステップS307に移行する。すなわち、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない場合、モータ5の出力を制限せずに、通常の制御動作における交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS307)。また、モータ制御部4Aは、過負荷検出部45Bの判定結果をモータ制御部400Aに通知する(ステップS308)。以上のステップS304〜S308の処理がモータ制御部4Aの処理であり、モータ制御部4Aは、ステップS304〜S308の処理を繰り返し実行する。
モータ制御部400Aは、通信経路48aにより過負荷検出部45Bの判定結果をモータ制御部4Aから受信し(ステップS309)、通信経路48bを介して当該判定結果を上位制御装置100に通知する(ステップS310)。以上のステップS309,S310の処理がモータ制御部400Aの処理であり、モータ制御部400Aは、ステップS309,S310の処理を繰り返し実行する。
上位制御装置100は、過負荷検出部45Bの判定結果をモータ制御部400Aから受信する(ステップS311)。上位制御装置100は、受信した判定結果に基づき、コンバータ1−9が瞬時過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS312)。受信した判定結果が瞬時過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS312、Yes)、モータ500の出力を制限することを決定し(ステップS313)、モータ500を制御するモータ制御部400Aに対してモータ出力を制限したモータ動作指令を出力する(ステップS316)。一方、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない旨の信号の場合(ステップS312、No)、さらにコンバータ1−9が定常時過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS314)。受信した判定結果が定常時過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS314、Yes)、サーボモータが動作させる各軸の運転サイクルの変更を決定し(ステップS315)、モータ500を制御するモータ制御部400Aに対して、モータ500の平均出力を抑制するように変更されたモータ動作指令を出力する(ステップS316)。なお、受信した判定結果が定常時過負荷状態ではない旨の信号の場合(ステップS314、No)、ステップS315の処理を行わずにステップS316に移行する。以上のステップS311〜S316の処理が上位制御装置100の処理であり、上位制御装置100は、ステップS311〜S316の処理を繰り返し実行する。
以上の制御を要約すると以下の通りである。まず、瞬時過負荷状態と判定された場合、上位制御装置100を介さずにモータ制御部4Aにてモータ出力を制限するようにモータ5に対し交流電力を出力する。この制御と並行して、モータ制御部400A及び上位制御装置100に対し、瞬時過負荷状態であることを通知する。上位制御装置100は、判定結果に基づき、モータ500のモータ動作の出力を制限するように、モータ500に対するモータ動作指令を生成し、モータ駆動装置400に出力する。モータ駆動装置4では、一旦、モータ5の出力を制限して瞬時過負荷状態を回避し、その後、上位制御装置100にて改めてモータ動作指令の見直しを図る。
一方、定常時過負荷状態と判定された場合、モータ制御部4Aは、上位制御装置100から出力されたモータ動作指令に基づいた動作指令を続け、これと並行して、モータ制御部400A及び上位制御装置100に対し、定常時過負荷状態であることを通知する。上位制御装置100は、判定結果に基づき、モータ500のモータ動作における平均出力を制限するようにモータ動作指令を生成し、モータ駆動装置400に出力する。
なお、上記の説明では、瞬時過負荷状態と判定された場合にモータ5に対する出力制限を行い、定常時過負荷状態と判定された場合にモータ500に対する出力制限を行うように説明したが、瞬時過負荷状態と判定された場合にモータ5及びモータ500の双方に対する出力制限を行ってもよい。また、定常時過負荷状態と判定された場合にモータ5及びモータ500の双方に対する出力制限を行ってもよい。
また、過負荷検出部45Bにより、瞬時過負荷状態の検出と、定常時過負荷状態の検出をそれぞれ行うことができるが、過負荷状態の通知方法については、それぞれ過負荷検出専用の通信ラインを設けてもよいし、シリアル通信等で過負荷状態を通知する方式でもよい。
実施の形態9によれば、コンバータ1−9が瞬時過負荷状態である場合には、すばやくモータ出力を低減させることができる。また、コンバータ1−9が定常時過負荷状態である場合には、上位制御装置100から各モータ駆動装置に出力されるモータ動作指令の見直しにより厳しい運転サイクルを改善し、コンバータ1−9に搭載されるパワーモジュール22及び平滑コンデンサ21の温度上昇を低減させることができる。これらの制御により、コンバータ1−9の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。また、工作機械のような複数のモータを使用する産業機械においては、サイクルタイムが長くなるのを防ぐように、モータ動作指令を出力することで、サイクルタイムを維持しながら、コンバータ1−9の過負荷状態を解消することができる。そのため、容量の小さいコンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
実施の形態10.
図38は、実施の形態10に係るコンバータ及びモータ制御装置の構成を示す図である。実施の形態10に係るコンバータ1−10は、実施の形態3で示した図19に示すコンバータ1−3と同一の構成であるが、母線電圧検出部23、電圧位相検出部24、母線電流検出部25、ベース駆動信号生成部26及び回生制御部28の図示は省略する一方で、コンバータ1−10の内部に停電検出部50が追加されている。また、図38の構成では、実施の形態8及び実施の形態9と同様に、モータ駆動装置400、モータ500及び上位制御装置100が追加されている。さらに、図38の構成では、モータ駆動装置4の内部には、直流端子17−18間の端子間電圧を検出する直流電圧検出部82が配置され、モータ駆動装置400の内部には、直流端子19−20間の端子間電圧を検出する直流電圧検出部83が配置されている。また、上位制御装置100、モータ駆動装置400、モータ駆動装置4、コンバータ1−10は、通信経路でデイジーチェーン接続されている。具体的には、コンバータ1−10の停電検出部50とモータ駆動装置4のモータ制御部4Aとは通信経路85で接続され、モータ駆動装置4のモータ制御部4Aとモータ駆動装置400のモータ制御部400Aとは通信経路86aで接続され、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aと上位制御装置100とは通信経路86bで接続されている。前述の構成では、例えば、上位制御装置100からモータ駆動装置4に対し出力されるモータ動作指令は、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aを介してモータ駆動装置4のモータ制御部4Aに入力されることになる。
実施の形態3でも説明したように、停電検出部50は、入力電圧検出部43の出力信号に基づいて交流電源3の停電を検出し、前述の通信経路85,86a,86bを介してモータ駆動装置4、モータ駆動装置400及び上位制御装置100に停電情報を通知する機能を備える。
モータ制御部4Aは、モータ5に任意の交流電力を供給することでモータ5を可変速制御する機能と、直流電圧検出部82の検出信号を受信する機能とを備える。モータ制御部400Aは、モータ500に任意の交流電力を供給することでモータ500を可変速制御する機能と、直流電圧検出部83の検出信号を受信する機能とを備える。なお、直流電圧検出部82の検出信号と、直流電圧検出部83の検出信号とは、平滑コンデンサ21の端子間電圧、すなわち母線電圧検出部23の検出値と同一となる。
交流電源3で停電が発生すると、モータ駆動装置4及びモータ駆動装置400は、それぞれのモータの正常な運転を継続できなくなる。また、この際にコンバータ1−10が電源回生動作を行うと、母線電圧VPNと交流電源3との間の電圧差が大きくなっているため、過大な電流が流れ、パワーモジュール22の破損に繋がるおそれがある。そのため、停電発生時は、電源回生動作を行うことができない。
停電発生時に、モータ5又はモータ500が動作していた場合、動作しているモータを停止させる必要がある。一方、モータを減速させるとモータの回生電力がコンバータ1−10の平滑コンデンサ21に蓄積され、母線電圧VPNが上昇する。本来であれば、母線電圧VPNが上昇した場合、パワーモジュール22のスイッチング素子S1〜S6を動作させて電源回生動作を行えばよいが、前述の理由で電源回生動作を行うことができない。その結果、母線電圧VPNがさらに上昇することになる。そのため、母線電圧VPNがある値を超えると過電圧と判断して各モータの制御を停止しなければならない。この場合、各モータが停止するまでには時間がかかり、例えば工作機械の送り軸などは、軸端に衝突する可能性がある。
また、モータの特性、又は、モータによって駆動される、例えば重力軸が受ける摩擦の状況によっては、モータを減速させる場合であってもモータ駆動装置からモータへ交流電力を供給し続ける必要がある。すなわち、この場合には、モータ減速時であっても、モータに回生電力が発生しないので平滑コンデンサ21に蓄積された直流電力を使用することになる。このような状況で交流電源3に停電が発生し、モータを停止させようとすると、母線電圧VPNは急速に低下する。通常、モータ駆動装置は、母線電圧VPNが低下し過ぎると、モータを駆動するための交流電力を供給できなくなるため、低電圧と判断してモータの制御を停止する。この場合もモータが停止するまでに時間がかかり、同様に軸端等に衝突する可能性がある。
前述の問題を解決するため、実施の形態10では、コンバータ1−10の停電検出部50の判定結果を、通信経路85,86a,86bを介してモータ制御部4A、モータ制御部400A及び上位制御装置100に通知する。通知された判定結果が交流電源3に停電が発生した旨の信号であった場合、モータ制御部4Aは、直流電圧検出部82の検出値に基づいてモータ5に供給する交流電力を制御する。また、モータ制御部400Aは、モータ500を減速停止させるように交流電力を供給する。例えば、工作機械において、前述のモータ5をスピンドルモータ、モータ500をサーボモータとすると、交流電源3に停電が発生した場合、送り軸を動作させるサーボモータを速やかに停止させることを優先させる必要がある。そのため、スピンドルモータにあたるモータ5の動作により母線電圧VPNを適正な値に保つように制御し、サーボモータにあたるモータ500が安全に減速停止できるようにする。
なお、前述のように直流電圧検出部82は、母線電圧検出部23が検出する母線電圧VPNと同一となる。このため、直流電圧検出部82の検出値は、母線電圧VPNとして扱う。モータ制御部4Aの内部には、母線電圧VPNを判定する母線電圧判定回路を構成する。モータ制御部4Aは、母線電圧判定回路の判定結果に基づいてモータ5に供給する交流電力を決定する。
図39は、実施の形態10における母線電圧判定回路の構成例を示す図である。図39において、母線電圧判定回路は、比較器196,197で構成される。比較器196のマイナス入力端子には母線電圧上限値VPNmaxが入力され、比較器196のプラス入力端子には直流電圧検出部82の検出値VPNが入力される。比較器197のマイナス入力端子には直流電圧検出部82の検出値VPNが入力され、比較器197のプラス入力端子には母線電圧下限値VPNminが入力される。比較器196は、母線電圧VPNが予め決められた母線電圧上限値VPNmax以上か否かを判定する。比較器197は、母線電圧VPNが予め決められた母線電圧下限値VPNmin以下か否かを判定する。
比較器196がHighレベルの信号を出力し、比較器197がLowレベルの信号を出力した場合、母線電圧VPNが適正値よりも大きくなっている状態であり、母線電圧VPNを低下させる必要がある。この場合、スピンドルモータにあたるモータ5を加速させれば、モータ5は力行動作となり、母線電圧VPNを低下させることができる。また、比較器196がLowレベルの信号を出力し、比較器197がHighレベルの信号を出力した場合、母線電圧VPNは適正値よりも小さくなっている状態であり、母線電圧VPNを上昇させる必要がある。この場合、スピンドルモータにあたるモータ5を減速させれば、モータ5は回生動作となり、母線電圧VPNを上昇させることができる。
次に、実施の形態10に係るコンバータ、モータ駆動装置及び上位制御装置の動作について、図38に加え、図40,図41及び図42の各図面を参照して説明する。図40は、実施の形態10におけるコンバータ1−10の動作を示すフローチャートである。図41は、実施の形態10におけるモータ制御部4Aの動作を示すフローチャートである。図42は、実施の形態10におけるモータ制御部400Aの動作を示すフローチャートである。なお、図40から図42では、それぞれのフローチャートを個々に示しているが、図37のように1つの図で示すことも可能である。
まず、図40を用いて、実施の形態10におけるコンバータ1−10の動作を説明する。入力電圧検出部43は、前述のように交流電源3の入力電圧を検出する(ステップS401)。停電検出部50は、入力電圧検出部43の出力信号に基づき交流電源3に停電が発生したか否かを判定する(ステップS402)。停電検出部50は、通信経路85を介して判定結果をモータ駆動装置4内部のモータ制御部4Aに通知する(ステップS403)。以上のステップS401〜S403の処理がコンバータ1−10の処理であり、コンバータ1−10は、ステップS401〜S403の処理を繰り返し実行する。
次に、図41を用いて、実施の形態10におけるモータ制御部4Aの動作を説明する。モータ制御部4Aは、停電検出部50の判定結果を受信する(ステップS501)。モータ制御部4Aは、受信した判定結果をモータ制御部400Aに通知し(ステップS502)、受信した判定結果に基づき交流電源3に停電が発生したか否かを判定する(ステップS503)。モータ制御部4Aは、受信した判定結果が停電発生である旨を表す信号の場合(ステップS503、Yes)、直流電圧検出部82によって検出された母線電圧VPNが母線電圧上限値VPNmax以上であるか否かを判定する(ステップS504)。
母線電圧VPNが母線電圧上限値VPNmax以上である場合(実施の形態10では、比較器196の出力信号がHighレベル、比較器197の出力信号がLowレベルの場合)(ステップS504、Yes)、モータ制御部4Aは、モータ5を加速するように制御し(ステップS508)、モータ5に交流電力を出力する(ステップS509)。
母線電圧VPNが母線電圧上限値VPNmax未満の場合(実施の形態10では、比較器196の出力信号がLowレベルの場合)(ステップS504、No)、モータ制御部4Aは、母線電圧VPNが母線電圧下限値VPNmin以下であるか否かを判定する(ステップS505)。母線電圧VPNが母線電圧下限値VPNmin以下(実施の形態10では、比較器196の出力信号がLowレベル、比較器197の出力信号がHighレベルの場合)(ステップS505、Yes)、モータ制御部4Aは、モータ5を減速するように制御し(ステップS507)、モータ5に交流電力を出力する(ステップS509)。
母線電圧VPNが母線電圧下限値VPNminより大きい(実施の形態10では、比較器197の出力信号がLowレベルの場合であるが、ステップS505においては、比較器196及び比較器197の出力信号がともにLowレベルの場合)場合(ステップS505、No)、モータ制御部4Aは、モータ5への電力供給を停止してモータ5をフリーランさせ(ステップS506)、モータ5にステップS506に基づいて生成された交流電力を出力する(ステップS509)。なお、この制御の場合は、モータ5はフリーランなので電力供給は停止状態である。
また、ステップS501の判定において、その判定結果が、停電が発生していない旨の信号であった場合、ステップS504〜S508の処理をスキップし、ステップS509の処理を行う。すなわち、モータ制御部4Aは、上位制御装置100から送信されたモータ動作指令通りにモータ5を動作させるために交流電力を出力する。以上のステップS501〜S509がモータ制御部4Aの処理であり、モータ制御部4Aは、ステップS501〜S509の処理を繰り返し実行する。なお、ステップS506の制御では、モータ制御部4Aは、モータ5への電力供給を停止してモータ5をフリーランさせているが、モータ5が一定速度を維持するように制御してもよい。
次に、図42を用いて、実施の形態10におけるモータ制御部400Aの動作を説明する。モータ制御部400Aは、通信経路86aを介してモータ制御部4Aから停電の有無に関する判定結果を受信する(ステップS601)。モータ制御部400Aは、通信経路86bを介して上位制御装置100に対し停電の有無に関する判定結果を通知する(ステップS602)。モータ制御部400Aは、ステップS601で受信した判定結果に基づき交流電源3に停電が発生したか否かを判定する(ステップS603)。受信した判定結果が停電発生である旨を表す信号の場合(ステップS603、Yes)、モータ制御部400Aは、モータ500を減速させるようにモータ動作指令を変更し(ステップS604)、モータ500に対し変更したモータ動作指令に基づいた交流電力を出力する(ステップS605)。一方、受信した判定結果が、停電が発生していない旨の信号であった場合(ステップS603、No)、モータ制御部400Aは、ステップS604の処理をスキップして、ステップS605の処理を行う。すなわち、モータ制御部400Aは、上位制御装置100から送信されたモータ動作指令通りにモータ500を動作させるための交流電力を出力する(ステップS605)。以上のステップS601〜S605がモータ制御部400Aの処理であり、モータ制御部400Aは、ステップS601〜S605の処理を繰り返し実行する。
実施の形態10では、交流電源3に停電が発生した場合、モータ動作指令を出力する上位制御装置100を介さずにモータ駆動装置4及びモータ駆動装置400において、例えば送り軸を駆動するモータ500を速やかに停止させることができる。例えば、モータ制御部400Aが停電検出信号を受信すると、モータ500を減速させる。このとき、この減速の際の減速エネルギーが平滑コンデンサ21に蓄積されると母線電圧VPNが上昇するが、この母線電圧VPNの増減をモータ5で行うことで、母線電圧VPNが過電圧や低電圧にならずにモータ500を停止させることができる。入力電圧検出部43は、実施の形態3に示した信号を検出しているため、低コストで実現することができ、停電検出部50も低コストで実現することができる。
なお、実施の形態1から実施の形態10で説明したコンバータ及びモータ駆動装置における制御機能の一部は、フォトカプラ、ロジックIC等を用いたハードウェアで構成してもよいし、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものでもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。
また、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。