JP6604850B2 - ポリアリーレンエーテルスルホン - Google Patents

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Description

本出願は、2012年11月9日に出願の米国仮特許出願第61/724725号および2012年11月28日に出願の欧州特許出願公開第12194545.5号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の各々の全体内容は、本明細書においてすべての目的について参照により援用されている。
本発明は、バイオベースの供給原料由来の新規なポリアリーレンエーテルスルホン、高分子量を有するバイオベースの供給原料由来のポリアリーレンエーテルスルホンを製造するための方法、および成形品を製造するためのそれらの使用に関する。
再生可能なバイオベース化学物質の開発は、化学工業において消費される石油の量を低減する、およびさらに農業にとっての新しい高付加価値市場を開く将来性を有する;1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールはそうした化学物質の例である。
1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトール、特にイソソルビドの製造への関心は、例えば特にポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンおよびポリアミドなどのポリマーの合成を含む潜在的な工業用途によって生み出されてきた。ポリマー中およびより特に重縮合物中での1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの使用は、それらがキラルおよび非毒性の剛体分子であるといういくつかの特徴によって動機付けられる可能性がある。これらの理由から、高いガラス転移温度および/または特殊な光学特性を備えるポリマーを合成できることへの期待がある。さらにこれらの分子の無害の特性は、包装または医療機器における用途の可能性を開く。
そのようなモノマーの工業生産は、急速にこの供給原料をますます魅力的な価格で入手可能にしている、発展途上の分野である。さらに、再生可能資源に由来する化学物質への関心は増しており、極めて重要なテーマになりつつある:バイオプラスチックに含有される炭素は化石化バイオマスに由来するのではなく、植物バイオマスに吸収された大気中COに由来するので、これらのプラスチックは天候変化の影響を軽減するはずである。
キラリティに依存して、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトール糖ジオールの3つの異性体、つまりイソソルビド(1)、イソマンニド(2)およびイソイジド(3)が存在する。
1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールは、2つの、つまり環間が120°である平面状およびV形のシス融合テトラヒドロフラン環から構成される。ヒドロキシル基は、スキーム1に示したように、炭素2および5位に位置し、V形分子の内側または外側のいずれかに位置する。それらは各々、エンドまたはエキソと呼ばれる。イソイジドは2つのエキソヒドロキシル基を有するが、イソマンニドについてはどちらもエンドであり、イソソルビドについては1つのエキソおよび1つのエンドヒドロキシル基がある。一般には、エキソ置換基の存在は、それが結合している環の安定性を増加させると理解されている。さらに、エキソおよびエンド基は、これらが調査された反応の立体的条件に依存して多かれ少なかれ影響を受けやすいので、異なる反応性を示す。この反応性はさらに、分子内水素結合の存在に左右される。
これらの1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの製造によって、手短に要約すると、バイオマスおよび特にコーンスターチから抽出されたデンプンは、酵素法によって最初にd−グルコース(1.A)およびd−マンノース(2.A)に分解される。これらの2つの糖の水素化は、d−ソルビトール(1.B)およびd−マンニトール(2.B)を生じさせる;本明細書で下記に示すように、ソルビトールおよびマンニトールを続いて脱水するとイソソルビド(1)およびイソマンニド(2)が得られる。
最後に、第3の異性体、イソイジド(3)は、上記に略述した方法に類似する方法にしたがってl−イドースから生成することができるが、l−イドースが自然界に存在することは希で、植物バイオマスから抽出することはできない。この理由から、研究者らはイソソルビドもしくはイソマンニドの異性化を含めて、イソイジドへの様々な経路を開発してきた。
Kricheldorfらは、1995年に初めてシリル化イソソルビドおよびジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)由来のイソソルビドを含有するポリ(エーテルスルホン)の調製および特性評価について報告した(H.Kricheldorf,M.Al Masri,J.Polymer Sci.,Pt A:Polymer Chemistry,1995,33,2667−2671)。シリル化工程は重大なコストを付け加えるので、Kricheldorf and Chatti(High Performance Polymers,2009,21,105−118)は彼らの重合条件を修正し、イソソルビドを含有するポリ(エーテルスルホン)を純イソソルビドおよびDFDPSから製造できると報告した。得られた最高見かけ分子量ポリマーは、0.65dL/gの固有粘度(IV)を有していたが、前記IVは次の20℃でCHCl/トリフルオロ酢酸溶液(9/1 v/v)(0.20dL/g)を使用する条件により測定された。このポリマーのガラス転移温度は245℃であると報告された。イソソルビドとの重合反応が低反応性のジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を用いて実施された実施例は記載されなかった。
当分野には依然として、生体適合性でバイオベースの原料ならびに少なくとも1つのSO基を含む様々なジハロアリール化合物に由来する繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを製造するための効率的方法であって、前記(PAES)ポリマーは高分子量(Mw)を有し、優秀な熱安定性、高度の剛性および強度、優れた靱性および魅力的な衝撃特性を有し、例えば膜、医療、航空宇宙、自動車用途などの用途のための現行の商業的PAESグレードに比較して改良された性能の提供を可能にすることを特徴とする方法に対する必要が存在する。
本出願人は、現在では1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの組み込みに由来する成分を含む高分子量を有するポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)を有利に製造することが可能であることを見いだしたが、前記PAESポリマーは有利には、優秀な熱安定性および改良された衝撃特性を含む上述の必要を満たす。
本発明は、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー[以下ではポリマー(b−PAES)]を製造するための方法であって、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒混合物中およびアルカリ金属炭酸塩の存在下で、下記:
− イソソルビド(1)、イソマンニド(2)およびイソイジド(3):
からなる群から選択される少なくとも1つの1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトール[以下では、ジオール(AA)];
− 式(S)の少なくとも1つのジハロアリール化合物[以下では、ジハロ(BB)]:
X−Ar−SO−[Ar−(T−Ar−SO−Ar−X’ 式(S)
[式中、
− nおよびmは、互いに等しいかもしくは異なり、独立してゼロまたは1〜5の整数である;XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、F、Cl、Br、Iから選択されるハロゲン、好ましくはClまたはFである;
− Ar、Ar、ArおよびArの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、各出現時に、芳香族部分である。
− Tは、任意選択的に1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含む結合または二価基である;好ましくは、Tは、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、および式:
の基からなる群から選択される];
− 任意選択的に、上述のジオール(AA)とは異なる少なくとも1つのジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)];
− 任意選択的に、上述のジハロ(BB)とは異なる少なくとも1つのジハロアリール化合物[ジハロ(B’B’)];
− 任意選択的に、少なくとも1つのヒドロキシル−ハロ化合物[ヒドロ−ハロ(A’B’)]
を含有するモノマー混合物を、ポリマー(b−PAES)を得るために、反応させる工程を含み、モノマー混合物のモノマーのハロ基およびヒドロキシル基の総量は実質的に等モルであると理解されており、
この反応は、モノマー混合物と溶媒混合物の結合重量に対して15%以上および70%未満の全モノマー混合物濃度(%)[以下では、全モノマー率(%)]で実施される方法に関する。
上記の用語「全モノマー率(%)」は、Mwtと指定されたモノマー混合物(g)中に最初に存在した全モノマーの重量の合計を、モノマー混合物中に最初に存在した全モノマーおよび溶媒混合物の結合重量で割ったものであると規定されており、ここで溶媒混合物の重量(g)はSwtと指定されている。
そこで全モノマー率(%)は式:
100×Mwt/(Mwt+Swt
に等しい。
全モノマー率(%)は、より好ましくは少なくとも20%、いっそうより好ましくは少なくとも25%である。
全モノマー率(%)は、一般に60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは45%未満およびいっそうより好ましくは42%未満である。
極めて良好な結果は、25%〜42%の範囲内の全モノマー率(%)で得られている。
本発明のためには、上述したモノマー混合物のモノマーのハロ基およびヒドロキシル基の総量に関して使用する表現「実質的に等モル」は、モノマー混合物のモノマーのヒドロキシル基の総量とモノマー混合物のモノマーのハロ基の総量との間のモル比が0.95〜1.05、好ましくは1.00〜1.04、より好ましくは1.01〜1.02であると理解すべきであり、良好な結果は1.02の比で得られた。
互いに等しいかもしくは異なる各出現時のAr1、Ar2、Ar3およびAr4の各々における芳香族部分は、好ましくは以下の式に適合する。
[式中、
− 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択される;および
− kは、ゼロまたは1〜4の整数である;kは、ゼロまたは1〜3の整数である]
好ましいジハロ(BB)は、以下に示す式(S’−1)〜(S’−3)に適合するジハロである。
[式中、
− Rの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;
− j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である;
− XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、独立してハロゲン原子、好ましくはClまたはFである]
より好ましいジハロ(BB)は、以下に示す下記の式に適合するジハロである。
[式中、Xは上記に規定されており、Xは、好ましくはClまたはFである]
好ましいジハロアリール化合物[ジハロ(BB)]は、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)および4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)である。
所定の実施形態によると、上述したモノマー混合物は、上述した式(S)[式中、X、X’はClである]の前駆ジハロアリール化合物[以下では、前駆ジハロ(BClCl)]と少なくとも1つフッ素化剤との反応[以下では、「ハレックス」反応]によって得られるジハロアリール化合物を含んでいる。
本発明のためには、用語「フッ素化剤」は、上述したように、ジハロ(BClCl)内の塩素原子をフッ素原子と置換できる全ての反応剤を意味すると意図されている。
本発明において有用なフッ素化剤の非限定的な例としては、アルカリもしくはアルカリ土類金属フッ化物、例えばLiF、NaF、KF、CsF、フッ化テトラメチルアンモニウムもしくはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、NHFもしくはアミンヒドロフルオリドまたは各々のHF付加物である。好ましいフッ素化剤は、KFおよびCsFである。
使用される前記フッ素化剤の量は、塩素基(Cl)の当量当たりのフッ素基(F)の当量比[(F)当量/(Cl)当量]によって表示した場合、8.0〜0.5、好ましくは6〜1、およびより好ましくは4〜1.5の範囲内にあり、上述の塩素基の当量はジハロ(BClCl)の塩素基の当量を包含すると理解されている。極めて良好な結果は(F)当量/(Cl)当量比2を用いて得られている。
「ハレックス」反応は、重合工程の前に別個の工程で、またはインサイチュで重合工程中に実施することができる。
好ましくは、「ハレックス」反応は、インサイチュで、上述のように極性非プロトン性溶媒を含む溶媒混合物中、アルカリ金属炭酸塩および上述のようなモノマー混合物を含む反応混合物が、さらに少なくとも1つのフッ素化剤を含むように実施される。
また別の実施形態では、「ハレックス」反応は、上述した前駆ジハロ(BClCl)が別個の工程において塩素−フッ素交換反応を受け、これによりハレックス生成物の混合物が提供される別個の工程で実施することができる。これを前提に、当業者であれば、ハレックス生成物の前記混合物は、上述した本発明の方法において上述したモノマー混合物のモノマーとして好適に使用できることを理解できる。
望まれる場合、ハレックス生成物の混合物は、例えば特に蒸留、カラムクロマトグラフィ、結晶化、固体支持体化学反応、イオン交換クロマトグラフィなどの当分野において公知の技術によってさらに精製することができる。
ハレックス生成物の前記混合物は、一般に上述した未反応前駆ジハロ(BClCl)、完全にフッ素化されたジハロ(BB)[式中、XおよびX’はFである][以下では、ジハロ(B)]およびクロロフルオロジハロ(BB)[式中、XおよびX’は、互いに異なり、独立してClまたはFである]を含んでいる。
ハレックス生成物の混合物は、ジハロ(B)を有利には、少なくとも70重量%(wt.%)、好ましくは少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも85wt.%および最も好ましくは少なくとも90wt.%の量で含んでいる。
望まれる場合、上述した前駆ジハロ(BClCl)は、完全にジハロ(B)に変換される。
「ハレックス」反応は、溶媒の存在下で実施できる。本発明の「ハレックス」反応のために好適になり得る溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(通常、テトラメチレンスルホンもしくはスルホランと呼ばれる)およびテトラヒドロチオフェン−1−モノオキシドならびにこれらの混合物である。極めて良好な結果は、スルホランもしくはジメチルスルホキシドを用いて得られている。
「ハレックス」反応は、有利には150℃以上、好ましくは165℃以上およびより好ましくは200℃以上の温度で実施される。
望まれる場合、「ハレックス」反応は、相間移動触媒の存在下で実施される。
相間移動触媒の非限定的例として本発明において有用なのは、ホスファゼニウム塩、例えば特に(1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ジメチルアミノ)ジホスファゼニウムテトラフルオロボレート)−ホスファゼニウム塩;クラウンエーテル、例えば特に18−クラウン−6および12−クラウン−4、ジベンゾ−18−クラウン−6もしくはジベンゾ−12−クラウンエーテル−4;およびクリプタンド、例えばクリプタンド[2.2.2];フッ化テトラメチルアンモニウムもしくはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)である。
所定の実施形態によると、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールのヒドロキシル基の不等反応性を使用すると、本発明の方法の第1反応工程ではバイオ−ヒドロキシル−ハロ化合物(AB)を生成できる;これらのバイオ−ヒドロキシル−ハロ化合物(AB)の典型的な例は、典型的には以下の式を有するイソソルビドおよび/またはイソイジドの部分反応によって得られる化合物である。
[式中、
− R’の各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数であり、ならびにXおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、独立してハロゲン原子、好ましくはClまたはFである]
上記のジハロ(BB)とは異なる特にジハロアリール化合物[ジハロ(B’B’)]は、特に以下の式のジハロベンゾイド化合物[ジハロ(B’B’)]から作成できる。
[式中、
− Rの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;
− jは、ゼロであるか、または1〜4の整数である;
− XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、独立してハロゲン原子、好ましくはClまたはFである]
好ましいジハロベンゾイド化合物[ジハロ(B’B’)]は、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよび4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンであり、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンが特に好ましい。
上述したジオール(AA)とは異なるジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)]として、特に式(O)の化合物を挙げることができる。
HO−Ar−(T’−Ar−O−H 式(O)
[式中、
− nは、ゼロまたは1〜5の整数である;
− ArおよびArの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、および各出現時に、式:
の芳香族部分であり、
式中、
− 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択される;および
− kは、ゼロまたは1〜4の整数である;k’は、ゼロまたは1〜3の整数である;−T’は、1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;好ましくは、Tは、結合、−SO−、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、および式:
の基からなる群から選択される]
本発明の方法において使用するために好適である、上述したジオール(AA)とは異なる特に好ましいジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)]としては、特に下記の分子から構成される化合物を挙げることができる。
上述したバイオ−ヒドロキシル−ハロ化合物(AB)とは異なるヒドロキシル−ハロ化合物[ヒドロ−ハロ(A’B’)]としては、特に以下の式のいずれかの化合物を挙げることができる。
[式中、
− Rの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;
− Tは、各出現時に互いに等しいかもしくは異なり、独立して1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;好ましくは、Tは、結合、−SO−、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−からなる群から選択される;
− jは、ゼロであるか、または1〜4の整数である;
− XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、独立してハロゲン原子、好ましくはClまたはFである]
本発明の全ての実施形態によると、ジオール(AA)およびジハロ(BB)ならびに全ての他の任意選択成分(例えば、ジオール(A’A’)、ジハロ(B’B’)およびヒドロ−ハロ(A’B’))は極性非プロトン性溶媒を含む溶媒混合物中に溶解または分散させられる。
望まれる場合、追加溶媒を、水と共沸混合物を形成する極性非プロトン性溶媒とともに使用すると、それにより重合中に副生成物として形成される水は重合工程を通して連続共沸蒸留によって除去することができる。
おそらく重合中に形成される副生成物の水および二酸化炭素は、その代りに上述のような共沸混合物形成溶媒に加えて、または有利には、その非存在下で、反応混合物の上方および/または反応混合物中へ例えば窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスの制御流を使用して除去することができる。
本発明のためには、用語「追加溶媒」は、極性非プロトン性溶媒ならびに前記反応の反応物および生成物とは異なる溶媒を意味すると理解される。
極性非プロトン性溶媒としては、当分野において、ジアルキルスルホキシドおよびジアルキルスルホンとして公知で一般的に記載されている硫黄含有溶媒であって、それらの環状アルキリデンアナログを含む、アルキル基が1〜8個の炭素原子を含有している溶媒を挙げることができる。具体的には、本発明の目的に好適になり得る硫黄含有溶媒の中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(通常、テトラメチレンスルホンまたはスルホランと呼ばれる)およびテトラヒドロチオフェン−1−モノオキシドならびにこれらの混合物がある。
極めて良好な結果は、スルホランを用いて得られている。
ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリジノン(すなわち、NMP)などを含む窒素含有極性非プロトン性溶媒は、これらの方法における使用のために当分野に開示されており、本発明の実施に有用であることも見いだすことができる。極めて良好な結果は、NMPを用いて得られている。
水とともに共沸混合物を形成する追加溶媒は、一般には、モノマー成分および極性非プロトン性溶媒に対して不活性であるように選択される。そのような重合プロセスに使用するために好適な共沸混合物形成溶媒には、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素が含まれる。
共沸混合物形成溶媒および極性非プロトン性溶媒は、典型的には約1:10〜約1:1、好ましくは約1:5〜約1:3の重量比で用いられる。
アルカリ金属炭酸塩は、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウムおよび炭酸セシウムである。炭酸ナトリウムおよび特に炭酸カリウムが好ましい。2種以上の炭酸塩の混合物、例えば炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとナトリウムより大きい原子番号を有する第2のアルカリ金属炭酸塩もしくは重炭酸塩との混合物を使用できる。
使用される前記アルカリ金属炭酸塩の量は、ヒドロキシル基(OH)の当量当たりのアルカリ金属(M)の当量の比[(M)当量/(OH)当量]によって表示した場合、1.3〜4.0、好ましくは1.4〜3およびより好ましくは約1.5〜2.5の範囲内にあり、上述のヒドロキシル基の当量は、ジオール(AA)、および存在する場合はバイオ−ヒドロキシル−ハロ化合物(AB)、ジオール(A’A’)およびヒドロ−ハロ(A’B’)のヒドロキシル基の当量を包含すると理解されている。極めて良好な結果は(M)当量/(OH)当量比2.0を用いて得られている。
本出願人は、驚くべきことに、最適量のアルカリ金属炭酸塩の使用が、より高額のコストおよびより困難なポリマー精製を導く過剰な量のアルカリ金属炭酸塩の使用を回避しながら、本発明の方法の反応時間を著しく短縮することを可能にすることを見いだした。
約100μm未満、好ましくは約50μm未満の平均粒径を有するアルカリ金属炭酸塩の使用が特に有利である。そのような粒径を有するアルカリ金属炭酸塩を使用すると、ポリマーの合成をより迅速な反応を伴って相当に低い反応温度で実施することが可能になる。
本発明の好ましい実施形態によると、本方法は、32%〜38%の範囲内の全固体率(%)および(M)当量/(OH)当量比2.0で極性非プロトン性溶媒を含む溶媒混合物中で行われる。
一般に、初期昇温期間の後、反応混合物の温度は有利には約80〜240℃、好ましくは120〜230℃の範囲内で維持される。
反応時間は、典型的には2〜20時間、好ましくは3〜12時間、最も好ましくは4〜6時間である。
所定の実施形態によると、上述した本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)には、30モル%を超える繰り返し単位が上述した(I)少なくとも1つのジオール(AA)および上述した(II)少なくとも1つのジハロ(BB)に由来する繰り返し単位(R)である任意のポリマーが含まれ、このポリマーは実質的に等モル量でアルカリ金属炭酸塩の存在下で反応させられる。
好ましい繰り返し単位(R)は、本明細書の下記に示す式(R−1)〜(R−6)の繰り返し単位からなる群から選択される。
[式中、
− 各R’は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択される;および
− j’は、ゼロまたは1〜4の整数である;
− Tは、1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;好ましくは、Tは、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、および式:
の基からなる群から選択される]
上記の好ましい実施形態の繰り返し単位(R−1)、(R−2)、(R−3)、(R−4)、(R−5)および(R−6)は、各々単独または混合して存在することができる。
より好ましい繰り返し単位(R)は、式(R−2)、(R−3)、(R−5)および(R−6)の繰り返し単位と組み合わされてもよい式(R−1)および(R−4)の繰り返し単位である。
最も好ましい繰り返し単位(R)は、式(R−2)および(R−3)と組み合わされてもよい式(R−1)の繰り返し単位である。
繰り返し単位(R)では、各々のフェニレン部分は独立して、繰り返し単位内のR’とは異なる他の成分へ1,2−、1,4−もしくは1,3−結合を有していてもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3−もしくは1,4−結合を有し、より好ましくは、それらは1,4−結合を有する。さらに、繰り返し単位(R)では、j’は、各出現時にゼロであり、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖内での結合を可能にする置換基以外の置換基を全く有していない。
所定の実施形態によると、上述したジオール(AA)とは異なる少なくとも1つのジオール(A’A’);上述したジハロ(BB)とは異なる少なくとも1つのジハロ(B’B’);および上述した少なくとも1つのヒドロ−ハロ(A’B’)を反応させる工程を追加して含む本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、上述した繰り返し単位(R)に追加して、Ar−SO−Ar’基を含む繰り返し単位(R)を含むが、ArおよびAr’は互いに等しいかもしくは異なる芳香族基であり、前記繰り返し単位(R)は一般的に式(S1)に適合する。
(S1):−Ar−(T’−Ar−O−Ar−SO−[Ar−(T−Ar−SO−Ar10−O−
[式中、
Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、互いにおよび各出現時に等しいかもしくは異なり、独立して芳香族単核基もしくは多核基である;
− TおよびT’は、互いにおよび各出現時に等しいかもしくは異なり、独立して1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;好ましくは、T’は、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、−SO−、および下記の式の基からなる群から選択される;
好ましくはTは、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、および下記の式の基からなる群から選択される;
− nおよびmは、互いに等しいかもしくは異なり、独立してゼロまたは1〜5の整数である]
繰り返し単位(R)は、特に、本明細書における下記の式(S1−A)〜(S1−D)の繰り返し単位からなる群から選択することができる。
[式中、
− R’の各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;
− j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である;
− TおよびT’は、互いに等しいかもしくは異なり、1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;好ましくは、T’は、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CC)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、−SO−、および下記の式の基からなる群から選択される;
好ましくは、Tは、結合、−CH−、−C(O)−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=CCl)−、−C(CH)(CHCHCOOH)−、および下記の式の基からなる群から選択される;
繰り返し単位(R)では、各々のフェニレン部分は独立して、繰り返し単位内のR’とは異なる他の成分への1,2−、1,4−もしくは1,3−結合を有していてもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3−もしくは1,4−結合を有し、より好ましくは、1,4−結合を有する。さらに、繰り返し単位(R)では、j’は、各出現時にゼロであり、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖内での結合を可能にする置換基以外の置換基を全く有していない。
所定の実施形態によると、上述したジオール(AA)とは異なる少なくとも1つのジオール(A’A’);上述したジハロ(BB)とは異なる少なくとも1つのジハロ(B’B’);および上述した少なくとも1つのヒドロ−ハロ(A’B’)を反応させる工程を追加して含む本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、上述した繰り返し単位(R)に追加して、Ar−C(O)−Ar’基を含む繰り返し単位(R)を含むが、ArおよびAr’は互いに等しいかもしくは異なり、芳香族基であり、前記繰り返し単位(R)は下記の式(J−A)〜(J−O)からなる群から選択される。
[式中、
− R’の各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される;
− j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である]
繰り返し単位(R)では、各々のフェニレン部分は独立して、繰り返し単位内のR’とは異なる他の成分への1,2−、1,4−もしくは1,3−結合を有していてもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3−もしくは1,4−結合を有し、より好ましくは、1,4−結合を有する。
さらに、繰り返し単位(R)において、J’は、各出現時にゼロであり、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖内での結合を可能にする置換基以外の置換基を全く有していない。
上述のように、ポリマー(b−PAES)は、上述した式Rの繰り返し単位をポリマー(b−PAES)の全繰り返し単位に対して、少なくとも30モル%、好ましくは35モル%、より好ましくは少なくとも40モル%、いっそうより好ましくは少なくとも50モル%の量で含んでいる。
所定の好ましい実施形態によると、70より多い、およびより好ましくは85モル%を超えるポリマー(b−PAES)の繰り返し単位は、上述した繰り返し単位(R)であり、100モル%へ補完するのは、通常は上述した繰り返し単位(R)および/または上述した繰り返し単位(R)である。
さらにより好ましくは、ポリマー(b−PAES)の繰り返し単位の実質的に全部は、繰り返し単位(R)であるが、鎖欠陥もしくは極めて微量の他の単位が存在してもよいが、これら後者はポリマー(b−PAES)の特性を実質的に変化させないと理解されている。最も好ましくは、ポリマー(b−PAES)の繰り返し単位の全部は、繰り返し単位(R)である。良好な結果は、ポリマー(b−PAES)が、その繰り返し単位全部が上述した繰り返し単位(R)であるポリマーである場合に得られた。
本発明のまた別の目的は、本発明による方法によって調製されるポリマー(b−PAESCl)を提供することであるが、前記ポリマー(b−PAESCl)は、特に上述したジハロ(BB)および/または任意選択ジハロ(B’B’)化合物を組合わせて含むハロ化合物に由来し、ここでXおよびX’はClである。
本発明のまた別の目的は、本発明による方法によって調製されるポリマー(b−PAESF/Cl)であって、上述した前駆ジハロ(BClCl)の上述した「ハレックス」反応によって得られたジハロアリール化合物を含むモノマー混合物に由来する(b−PAESF/Cl)を提供することである。
本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、一般に少なくとも20,000、好ましくは少なくとも30,000、より好ましくは少なくとも40,000の重量平均分子量を有する。
重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)は、ポリスチレン標準物質を用いて較正したASTM D5296を使用するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって推定できる。
重量平均分子量(M)は、
である。
数平均分子量(M)は、
であり、および多分散性指数(PDI)は、これにより重量平均分子量(M)対数平均分子量(M)重量の比として表される。
本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、一般に2.5未満、好ましくは2.4未満、より好ましくは2.2未満の多分散性指数を有する。この相当に狭い分子量分布は、類似の分子量を備え、ポリマー特性に有害な作用を及ぼす可能性のあるオリゴマー分画を実質的に有していない分子鎖の組合わせであることを表している。
本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、有利には、少なくとも200℃、好ましくは210℃、より好ましくは少なくとも220℃のガラス転移温度を有する。そのような高いガラス転移温度は、ポリマー(b−PAES)の使用温度範囲を広げるために有利である。
ガラス転移温度(Tg)は、一般的にはASTM D3418にしたがってDSCにより決定される。
言い換えると、本出願人は、ポリマー(b−PAES)を製造するための方法であって、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの成分が重合反応性における有害な影響を伴わずに鎖内に上首尾で組み込まれており、その結果として十分に制御された構造を備える優れた材料が有利に得られる方法を提供することに成功している。
本発明の前記方法は、有利には、不溶性物質および抽出可能物質を極めて低濃度しか有しておらず、さらに膜、特に体液および/または食品および飲料と接触することを目的とする膜を製造するために特に有用であることが見いだされている1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールのユニットに起因する増加した生体適合性を有するポリマー(b−PAES)の調製を可能にする。
本発明による方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、特に、繊維として医療、自動車、建設および航空宇宙用途に使用できる。さらに、特に膜、フィルムおよびシート、繊維、フォームおよび三次元成形部品として自動車および航空宇宙用途を挙げることができる。
処理加工によって、本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、有利には、上述の全ての製品を生産するために、溶融加工(射出成形、押出成形、圧縮成形を含む)によって、さらにポリマー(b−PAES)には溶解性があるために溶解処理によって加工処理することもできる。
本発明のまた別の目的は、本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)を含む成形品を提供することである。
本発明の方法によって、様々な加工処理技術を使用して調製されるポリマー(b−PAES)から出発して製造できる成形品の非限定的例は、一般に、溶融加工フィルム、溶液加工フィルム(溶液流延膜および溶液紡績からの膜を含む多孔性および無孔性フィルム)、溶融加工モノフィラメントおよび繊維、溶液加工モノフィラメント、中空糸およびソリッドファイバーならびに射出および圧縮成形品からなる群から選択される。
膜の中でも、本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)は、体液を含む水性媒体と接触することが意図される膜を製造するために特に好適である;そこで、上述した前記ポリマー(b−PAES)から製造できる成形品は、有利には、血液透析膜、食品および飲料加工処理のための膜、汚水処理用の膜および水性媒体を含む工業プロセスを分離するための膜を含むバイオプロセスおよび医学的ろ過のための膜である。
建築学の観点から、上述した前記ポリマー(b−PAES)から製造された膜は、平板的構造(例えば、フィルムもしくはシート)、波形構造(例えば、波形シート)、環状構造または中空繊維の形態で提供することができる;孔径に関しては、全種類の膜(精密濾過、限外濾過、ナノろ過および逆浸透用を含む無孔性および多孔性)は、有利には、前記ポリマー(b−PAES)から製造できる;細孔分布は等方性または異方性であってよい。
上述した本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)から製造される成形品は、フィルムおよびシートの形態にあってよい。これらの成形品は、特に特殊光学フィルムもしくはシートとして有用である、および/または包装のために好適である。
さらに、本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)から製造される成形品は、三次元成形部品、特に透明もしくは着色部品であってよい。
そのような射出成形部品を使用できる使用の用途としては、ヘルスケア用途、特に医療および歯科用途を挙げることができるが、ここで本発明の方法によって調製されるポリマー(b−PAES)から製造される成形品は、有利には、使い捨て用および再利用可能な機器および器具において金属、ガラスおよび他の伝統的材料に置き換えるために使用できる。
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願および刊行物の開示はいずれも、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先されるものとする。
以下では本発明について以下の実施例に関連してより詳細に説明するが、その目的は単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
ポリマー(b−PAES)の調製についての一般的説明
機械的攪拌機、ディーン・スターク・トラップ、コンデンサおよび窒素入口を装備した清潔な250mLの4ッ首丸底フラスコにイソソルビド、ジハロ(BB)(4,4−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)もしくは4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS))および炭酸カリウムを入れ、次に極性非プロトン性溶媒(スルホランもしくはジメチルスルホキシド(DMSO))および任意選択的に追加溶媒(例えば、トルエン)を入れた。微量の窒素流を、コンデンサの上方のバブラを通る出口を備えるフラスコの首の1つに通して反応混合物の上方に適用した。反応混合物はオーバーヘッド式機械的攪拌器を用いて撹拌し、適切な温度に制御した油浴を用いて加温した。浴温度を21℃から適切な温度へ約30〜60分間かけて上昇させ、所望の時間にわたり反応温度で保持した。混合物が粘性になって撹拌するのがより困難になったら、反応混合物をNMPにより希釈し、<100℃へ冷却し、500mLの水とメタノールの混合液(50/50 v/v)を含有するワーリング・ブレンダ内に注入した。生じたオフホワイトの多孔性固体を次にろ過によって単離し、各洗浄間にろ過を行いながら高温DI水(約90℃)を含むワーリング・ブレンダ内で3回およびメタノールを用いて2回洗浄した。生じた多孔性のオフホワイトのポリマー固体を100℃で一晩真空オーブン内で乾燥させた。このポリマー固体は、さらに粘度測定、GPCおよびDSCによって分析し、分子量および熱特性を決定した(全反応条件および結果は表1および2に要約した)。
実施例の材料に関して実施された次の特性評価を以下に示す:
粘度測定
ポリマー(b−PAES)の固有粘度(IV)は、これにより参照により全体として組み込まれるHigh Performance Polymers,2009,21,105−118においてKricheldorf and Chattiによって記載された手法にしたがってキャノン−フェンスケ粘度計チューブ(No.50)を用いて、9/1の容積比にある溶媒混合物:CHCl/トリフルオロ酢酸中において、20℃で0.2g/100mLのポリマー濃度で測定した。
比較例1
前記比較例は、High Performance Polymers,2009,21,105−118においてKricheldorf and Chattiによって記載された実施例に対応し、重縮合反応の一般的手法は106頁2.2段落および表2、実験番号3に記載されている。全モノマー率(%)値については、イソソルビド(30.0mmol)およびDFDPS(30.6mmol)のモル数値を各々4.4gおよび7.8gである重量値に変換することが必要であったが、DMSOおよびトルエンの対応する重量は、DMSOについては1.1g/mLおよびトルエンについての0.87g/mLの密度値を用いて計算し、対応する重量は表1に示した。全反応条件および結果は、表1に要約した。
比較例2及び3、実施例〜9;11〜13、15、16ならびに比較例10、14および17
これら全部の実施例は、一般的手法に従って実施し、対応する反応条件は、表1および2に示した。
表1に示した比較例1、2および3は、ジハロ(BB)として4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)を用いることによって実施された。
全ての他の実施例は、ジハロ(BB)として4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を用いることによって実施した。
実施例18:ハレックス生成物の混合物を提供するジハロ(BClCl)としての4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)の「ハレックス」反応
50mLの丸底フラスコに1.0g(3.484mmoL)のDCDPSおよび2.1g(13.94mmol)のCsFおよび3.54gのスルホランを装填し、油浴を用いて210℃へ加熱した。ハレックス反応は、この温度で24時間にわたり実施した。この反応の完了後、反応混合物の少量サンプルをジクロロメタンで希釈し、活性炭を用いて処理してカラーボディを除去し、ロタベーパー(rotavapor)によってジクロロメタン溶液を除去した。残留生成物はGCによって分析した。単離生成物のGC分析は、90.8%のDFDPS、6.7%の4−クロロ−4’−フルオロ−ジフェニルスルホンおよび2.5%のDCDPS出発物質を証明した。
実施例19:ハレックス生成物の混合物を提供するジハロ(BClCl)としての4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)の「ハレックス」反応
50mLの丸底フラスコに2.0g(6.96mmoL)のDCDPSおよび2.1g(13.94mmol)のCsFおよび5.0gのスルホランを装填し、油浴を用いて210℃へ加熱した。ハレックス反応は、この温度で24時間にわたり実施した。この反応の完了後、反応混合物の少量サンプルをジクロロメタンで希釈し、活性炭を用いて処理してカラーボディを除去し、ロタベーパーによってジクロロメタン溶液を除去した。残留生成物はGCによって分析した。単離生成物のGC分析は、90.5%のDFDPSおよび9.5%の4−クロロ−4’−フルオロ−ジフェニルスルホンを証明した。
実施例20:PTCの存在下でハレックス生成物の混合物を提供するジハロ(BClCl)としての4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)の「ハレックス」反応
窒素入口および出口とともに機械的攪拌機を装備した1Lの3ッ首丸底フラスコに253.33g(0.8823mol)のDCDPS、205.0g(3.529mol)の無水KF、10.86g(4.411mmoL)の18−クラウン−6および406gのスルホランを装填した。この混合液を油浴中で210℃へ緩徐に加熱し、この温度で反応を20時間にわたり実施した。反応の完了後、反応混合液を高圧フィルタによってろ過して過剰の塩を除去し、ジクロロメタンをろ過溶液に加えた。その後DI水をジクロロメタンに加え、有機層を分離した。次に有機層を再びDI水で洗浄して残留スルホランを除去した。収集した有機層にいくらかの活性炭を加えて色を除去し、少量のMgSOを加えて痕跡量の水を除去した。この溶液をろ過し、ロタベーパーによってジクロロメタンを除去した。単離生成物のGC分析は、88.1%のDFDPSおよび11.9%のクロロ−フルオロ−ジフェニルスルホンを証明した。
実施例21:ハレックス生成物の混合物を使用することによるポリマー(b−PAESF/Cl)の調製
機械的攪拌機、窒素入口および出口、熱電対およびディーン・スターク・トラップを装備した250mLの四ッ首丸底フラスコ内に、15.0gのイソソルビド、26.66gの実施例20のハレックス生成物(88.1%のDFDPSおよび11.9%のF−Cl−DPS)、21.28gのKCOを装填し、および110.85gのスルホランを装填した。この混合液を210℃へ緩徐に加熱し、重合をこの温度で実施した。5時間の反応時間後、重合溶液は極めて粘性になり、反応を停止させた。この反応混合物を140℃へ冷却し、NMP溶媒を加えてこの溶液を希釈し、重合スラリー混合物をろ過した。後にろ過溶液をメタノール/水混合液中に注入してポリマーを沈殿させ、単離したポリマーを温水で3回洗浄した。このポリマーを純粋メタノールによって最終洗浄し、ポリマー粉末を90℃の減圧下で乾燥させた。ポリマーはGPCおよびDSCによって特性評価した。GPC分析は、このポリマー粉末がMw=74,661Daを有することを明らかにし、DSCはこのポリマーが227℃のTgを有することを証明した。
実施例22:「インサイチュ」ハレックス反応を用いることによるポリマー(b−PAESF/Cl)の調製
250mLの四ッ首丸底フラスコに機械的攪拌機、窒素入口および出口、熱電対およびディーン・スターク・トラップを装備し、5.0g(34.21mmol)のイソソルビド、9.923g(34.56mmol)のDCDPS、9.45g(68.42mmol)のKCO、3.969g(68.42mmol)のKFおよび28.75gのスルホランを装填した。この混合液を210℃へ緩徐に加熱し、重合をこの温度で実施した。この反応混合物を140℃へ冷却し、NMP溶媒を加えてこの溶液を希釈し、重合スラリー混合物をろ過した。後にろ過溶液をメタノール/水混合液中に注入してポリマーを沈殿させ、単離したポリマーを温水で3回洗浄した。このポリマーを純粋メタノールによって最終洗浄し、ポリマー粉末を90℃の真空下で乾燥させた。ポリマーはGPCおよびDSCによって特性評価した。GPC分析は、このポリマー粉末がMw=37,355Daを有することを明らかにし、DSCは219℃のTgを証明した。

Claims (8)

  1. ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー[以下では(b−PAES)]を製造するための方法であって、極性非プロトン性溶媒、又は極性非プロトン性溶媒及び追加溶媒を含む溶媒混合物中およびアルカリ金属炭酸塩の存在下で、下記:
    − イソソルビド(1)、イソマンニド(2)およびイソイジド(3):
    からなる群から選択される少なくとも1つの1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトール[以下では、ジオール(AA)];
    − 式(S)の少なくとも1つのジハロアリール化合物[以下では、ジハロ(BB)]:
    X−Ar−SO−[Ar−(T−Ar−SO−Ar−X’ 式(S)
    [式中、
    − nおよびmは、互いに等しいかもしくは異なり、独立してゼロまたは1〜5の整数である;XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、ClまたはFである;
    − Ar、Ar、ArおよびArの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、各出現時に、芳香族部分である;
    − Tは、1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である];
    − 任意選択的に、前記ジオール(AA)とは異なる少なくとも1つのジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)];
    − 任意選択的に、前記ジハロ(BB)とは異なる少なくとも1つのジハロアリール化合物[ジハロ(B’B’)];
    − 任意選択的に、式:
    [式中、
    − Rの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びカルボキシルからなる群から選択される;
    − Tは、各出現時に互いに等しいかもしくは異なり、独立して1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;
    − jは、ゼロであるか、または1〜4の整数である;
    − XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、ClまたはFである]
    のいずれかである、少なくとも1つのヒドロキシル−ハロ化合物[ヒドロ−ハロ(A’B’)]
    を含有するモノマー混合物を、ポリマー(b−PAES)を得るために、反応させる工程を含み、モノマー混合物のモノマーのハロ基の総量とヒドロキシル基の総量との間のモル比が0.95〜1.05であると理解され、
    前記反応は、モノマー混合物と極性非プロトン性溶媒、又はモノマー混合物と極性非プロトン性溶媒及び追加溶媒を含む溶媒混合物の結合重量に対して15%以上および70%未満の全モノマー混合物濃度(%)[以下では、全モノマー率(%)]で実施され、
    使用される前記アルカリ金属炭酸塩の量は、ヒドロキシル基(OH)の当量当たりのアルカリ金属(M)の当量の比[(M)当量/(OH)当量]によって表示した場合、1.3〜4.0の範囲内にあり、
    (i)ジハロアリール化合物 ジハロ(BB)が式(S)[式中、X、X’はClである]の化合物[ジハロ(BClCl)]であるか、
    または
    (ii)ジハロアリール化合物 ジハロ(BB)が、ジハロ(BClCl)と少なくとも1つのフッ素化剤との反応によって得られ、
    フッ素化剤が、アルカリもしくはアルカリ土類金属フッ化物、フッ化テトラメチルアンモニウムもしくはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、NHFもしくはアミンヒドロフルオリドまたは各々のHF付加物であり、
    極性非プロトン性溶媒を含む溶媒混合物、アルカリ金属炭酸塩およびモノマー混合物を含む反応混合物が、さらに少なくとも1つのフッ素化剤を含み、
    ジハロ(BB)は、以下に示す式(S’−1)〜(S’−3):
    [式中、
    − R’の各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びカルボキシルからなる群から選択される;
    − j’は、ゼロであるか、または0〜4の整数である;
    − XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、ClまたはFである]
    に適合するジハロである、
    方法。
  2. 前記モノマー混合物は、式(O):
    HO−Ar−(T’−Ar−O−H 式(O)
    [式中、
    − nは、ゼロまたは1〜5の整数である;
    − ArおよびArの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、および各出現時に、式:
    の芳香族部分であり、
    式中、
    − 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びカルボキシルからなる群から独立して選択される;および
    − kは、ゼロまたは1〜4の整数である;k’は、ゼロまたは1〜3の整数である; −T’は、1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を含んでもよい結合または二価基である;]
    の化合物からなる群から選択されるジオール(AA)とは異なる少なくとも1つのジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)]を含有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記モノマー混合物は、式:
    [式中、
    − Rの各々は、互いに等しいかもしくは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びカルボキシルからなる群から選択される;
    − jは、ゼロであるか、または1〜4の整数である;
    − XおよびX’は、互いに等しいかもしくは異なり、ClまたはFである]
    のジハロ(BB)とは異なる少なくとも1つの少なくとも1つのジハロアリール化合物[ジハロ(B’B’)]を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(通常、テトラメチレンスルホンもしくはスルホランと呼ばれる)およびテトラヒドロチオフェン−1−モノオキシドならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記全モノマー率(%)が35%〜42%の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウムおよび炭酸セシウムからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 使用される前記アルカリ金属炭酸塩の量は、ヒドロキシル基(OH)の当量当たりのアルカリ金属(M)の当量の比[(M)当量/(OH)当量]によって表示した場合、1.4〜3の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. ジハロ(BClCl)が塩素−フッ素交換反応を受け、これにより未反応ジハロ(BClCl)、完全にフッ素化されたジハロ(BB)[式中、XおよびX’はFである][以下では、ジハロ(B)]およびクロロフルオロジハロ(BB)[式中、XおよびX’は、互いに異なり、独立してClまたはFである]の混合物が提供される別個の工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
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