JP6604042B2 - モータハウジングおよびモータハウジングの製造方法 - Google Patents
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Description
通常、モータは金属材料を組み合わせて作製されることが一般的であるが、特許文献1には次のような技術が開示されている。
すなわち、特許文献1には、ポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレートを主体とし、さらに液晶ポリマーを含んだ材料で構成される樹脂製モータハウジングが開示されている。係るモータハウジングによれば、モータの駆動音を小さくできるものと記載されている。
これにより、本発明は、軽量化と、高い機械的強度の双方の要求を満たしたモータハウジングを提供することができる。
図1は、本実施形態に係るモータハウジング100およびこれを適用するモータ200の構造例を示す斜視図である。
本実施形態のモータハウジング100は、熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成された円筒状の固定子20と、固定子20の外周面に密着してなる金属製のブラケット10とを備えるモータハウジング100であって、ブラケット10における、ブラケット10と固定子20との密着面は粗化処理されたものであり、前記熱硬化性樹脂組成物が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂を含む。
以下、このモータハウジング100の構成についてより詳細に説明する。
本実施形態のモータハウジング100においては、内部に備える固定子20が熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成され、モータハウジング100全体としての軽量化を達成することができる。また、モータハウジング100を構成するブラケット10は金属であり、高い機械的強度を発現することができる。
さらに、ブラケット10における、ブラケット10と固定子20との密着面が粗化処理されているものであることから、固定子20を構成する熱硬化性樹脂組成物の硬化体との密着性が向上されており、さらなる機械的強度の向上が実現できる。
固定子20の厚み(T1)を上記の範囲に設定することで、適度な機械的強度を発現させつつ、モータハウジング100全体としての軽量化を行うことができる。
このようにブラケット10の厚み(T2)の下限値を設定することで、適切な機械的強度を実現でき、また、ブラケット10の厚み(T2)の上限値を上記のように設定することで、モータハウジング100全体としての軽量化にも資することができる。
T1/T2を上記の範囲に設定することにより、適度な機械的強度を発現させつつ、モータハウジング100全体としての軽量化を行うことができる。
本実施形態に係るブラケット10は金属により構成され、このブラケット10における、ブラケット10と固定子20との密着面は粗化処理されたものであることを特徴とする。
ここで、ブラケット10は、公知の金属材料の中から適宜選択して構成することができるが、汎用性の高さや、機械的強度の高さから、たとえば、銅、アルミニウム、鉄またはステンレス材から構成されることが好ましい。
ブラケット10として係る形状を有することにより、より一層ブラケット10と固定子20との接合強度を向上させることができる。
図2に示すように、凹部201の断面形状は、D2がD1よりも大きければ特に限定されず、様々な形状を取り得る。凹部201の断面形状は、例えば、電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
このように(B)充填材が凹部201の内部に存在することにより、より一層ブラケット10と固定子20との接合強度を高めることができる。
凹部201の平均深さは、例えば、以下のように走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、粗化層102の断面を撮影する。その観察像から、凹部201を任意に50個選択し、それらの深さをそれぞれ測定する。凹部201の深さの全てを積算して個数で除したものを平均深さとする。
その他、粗化処理を行う前の金属部材の質量と、特定の処理を行った場合における質量の減少度合いの相関が分かる場合は、粗化処理前後の質量の変化から、凹部201の平均深さを見積もることもできる。
開口部203の平均断面幅は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、粗化層102の断面を撮影する。その観察像から、凹部201を任意に50個選択し、それらの断面幅D1をそれぞれ測定する。開口部203の断面幅D1の全てを積算して個数で除したものを平均断面幅とする。
また、接合面103の最大高さRzは、好ましくは1μm以上40μm以下であり、より好ましくは3μm以上30μm以下である。上記最大高さRzが上記範囲内であると、ブラケット10と固定子20との接合強度をより一層向上させることができる。なお、RaおよびRzは、JIS−B0601に準拠して測定することができる。
粗化層102は、例えば、表面処理剤を用いて、ブラケット10の表面(内壁面)を化学的処理することにより形成することができる。
以下、ブラケット10の表面(内壁面)に粗化層102を形成する方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る粗化層102の形成方法は、以下の例に限定されない。
鉄やステンレスから構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、無機酸、塩素イオン源、第二銅イオン源、チオール系化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
アルミニウムやアルミニウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン源、チオ化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
その他、マグネシウムやマグネシウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、アルカリ源が用いられ、特に水酸化ナトリウムの水溶液を選択するのが好ましい。
また、銅や銅合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、硝酸、硫酸などの無機酸、不飽和カルボン酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素、イミダゾールおよびその誘導体、テトラゾールおよびその誘導体、アミノテトラゾールおよびその誘導体、アミノトリアゾールおよびその誘導体などのアゾール類、ピリジン誘導体、トリアジン、トリアジン誘導体、アルカノールアミン、アルキルアミン誘導体、ポリアルキレングリコール、糖アルコール、第二銅イオン源、塩素イオン源、ホスホン酸系キレート剤酸化剤、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンから選ばれる少なくとも1種を用いた水溶液を選択するのが好ましい。
本実施形態では、深さ方向のエッチング量を調整することにより、前述した粗化層102の厚み、凹部201の平均深さ、Ra、Rz等を調整することができる。
以上の手順により、本実施形態に係る粗化層102を得ることができる。
つづいて、本実施形態に係る固定子20について説明する。
本実施形態に係る固定子20は、熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成されるものであるが、より具体的な態様としては、以下のように構成される。
すなわち、固定子20は、例えば、熱硬化性樹脂(A)と充填材(B)とを含む熱硬化性樹脂組成物(P)を硬化することで作製される。
また、上述した以外の熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂などを併用することもできる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、電気特性、接着性および耐摩耗性に優れるフェノール樹脂が好適に用いられる。
熱硬化性樹脂(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(P)全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
これらの中でも入手容易性、安価およびロール混練による作業性が良好などの理由からノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
充填材(B)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。充填材(B)の含有量を上記範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物(P)の作業性を向上させつつ、得られる固定子20の機械的強度をより一層向上させることができる。これにより、ブラケット10と固定子20との接合強度により一層優れたモータハウジング100を得ることができる。また、充填材(B)の種類や含有量を調整することにより、得られる固定子20の線膨張係数αRの値等を調整することができる。
なお、本実施形態においては、熱硬化性樹脂組成物(P)として、ガラス繊維が含まれることが好ましい。
充填材(B1)としては、平均長径が5μm以上50mm以下で、平均アスペクト比が1以上1000以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことがより好ましい。
充填材(B1)の平均長径および平均アスペクト比は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、複数の繊維状充填材または板状充填材を撮影する。その観察像から、繊維状充填材または板状充填材を任意に50個選択し、それらの長径(繊維状充填材の場合は繊維長、板状充填材の場合は平面方向の長径寸法)および短径(繊維状充填材の場合は繊維径、板状充填材の場合は厚み方向の寸法)をそれぞれ測定する。長径の全てを積算して個数で除したものを平均長径とする。同様に、短径の全てを積算して個数で除したものを平均短径とする。そして、平均短径に対する平均長径を平均アスペクト比とする。
充填材(B2)としては、平均長径が好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.2μm以上50μm以下であり、平均アスペクト比が好ましくは1以上50以下、より好ましくは1以上40以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことがより好ましい。
充填材(B2)の平均長径および平均アスペクト比は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、複数の繊維状充填材または板状充填材を撮影する。その観察像から、繊維状充填材または板状充填材を任意に50個選択し、それらの長径(繊維状充填材の場合は繊維長、板状充填材の場合は平面方向の長径寸法)および短径(繊維状充填材の場合は繊維径、板状充填材の場合は厚み方向の寸法)をそれぞれ測定する。長径の全てを積算して個数で除したものを平均長径とする。同様に、短径の全てを積算して個数で除したものを平均短径とする。そして、平均短径に対する平均長径を平均アスペクト比とする。
係る充填材(B2)は、先述のような平均長径や平均アスペスト比を満たすためブラケット10における凹部201中に介在しやすくなる。すなわち、上述の充填材(B2)が凹部201中に存在することにより、モータハウジング100全体としての機械的強度を向上させることができる。
これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
本実施形態においては、このようにして得られた熱硬化性樹脂組成物(P)を成形することにより固定子20が得られる。
なお、上記線膨張係数αは、成形後のサンプルについて、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との平均値として算出することができる。
このように絶縁抵抗を調整することにより、従来存在するような金属のみから構成されるモータハウジングとは異なる用途に用いることが可能となる。
このように熱伝導率を調整することにより、ロータ40周辺で発生した熱を円滑に外部に放出することができ、モータ200としての寿命を延ばすことができる。
本実施形態のモータハウジング100は、たとえば、以下のような工程を組み合わせることにより製造することができる。
内壁面が粗化処理された金属製のブラケットおよび金型を準備する工程。
金型の成形空間内にブラケットを配置する工程。
フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂を含み、流動化した、熱硬化性樹脂組成物で成形空間内を充填する工程。
充填された熱硬化性樹脂組成物を硬化させて円筒状の固定子を形成し、当該円筒状の固定子と前記ブラケットとが接合されたモータハウジングを得る工程。
係る条件は、採用する成形方法により異なるため特に限定されないが、採用する成形方法における一般的に公知の成形条件を採用することができる。成形方法として圧縮成形法を用いる場合、例えば、温度が150〜180℃、圧力5〜30MPa、硬化時間30秒間から5分間の成形条件を挙げることができる。
<1>
熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成された円筒状の固定子と、前記固定子の外周面に密着してなる金属製のブラケットとを備えるモータハウジングであって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面は粗化処理されたものであり、
前記熱硬化性樹脂組成物が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂を含む、モータハウジング。
<2>
<1>に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面が複数の凹部を有しており、
前記凹部の断面形状が、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、モータハウジング。
<3>
<1>または<2>に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、ガラス繊維を含む、モータハウジング。
<4>
<2>または<3>に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、充填材をさらに含み、
前記凹部の内部に前記充填材の一部が存在している、モータハウジング。
<5>
<>4に記載のモータハウジングであって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材の平均アスペクト比が1以上50以下である、モータハウジング。
<6>
<4>または<5>に記載のモータハウジングであって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材がワラストナイト、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、ホウ酸アルミニウムウイスカー、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上である、モータハウジング。
<7>
<1>ないし<6>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットが、銅、アルミニウム、鉄またはステンレス材から構成される、モータハウジング。
<8>
<1>ないし<7>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の比重が1.3以上2.5以下である、モータハウジング。
<9>
<1>ないし<8>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
当該モータハウジング全体の比重が1.5以上7.5以下である、モータハウジング。
<10>
<1>ないし<9>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の厚み(T1)が1mm以上10mm以下である、モータハウジング。
<11>
<1>ないし<10>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットの厚み(T2)が0.5mm以上15mm以下である、モータハウジング。
<12>
<1>ないし<11>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の厚み(T1)と、前記ブラケットの厚み(T2)の厚みの比(T1/T2)が0.06以上20以下である、モータハウジング。
<13>
<1>ないし<12>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度(Tg)が120℃以上である、モータハウジング。
<14>
<1>ないし<13>のいずれか一に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体の線膨張係数が10ppm/K以上40ppm/K以下である、モータハウジング。
<15>
内壁面が粗化処理された金属製のブラケットおよび金型を準備する工程と、
前記金型の成形空間内に前記ブラケットを配置する工程と、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂を含み、流動化した、熱硬化性樹脂組成物で前記成形空間内を充填する工程と、
充填された前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させて円筒状の固定子を形成し、当該円筒状の固定子と前記ブラケットとが接合されたモータハウジングを得る工程とを含む、
モータハウジングの製造方法。
<16>
<15>に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面が複数の凹部を有しており、
前記凹部の断面形状が、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、モータハウジングの製造方法。
<17>
<15>または<16>に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、ガラス繊維を含む、モータハウジングの製造方法。
<18>
<16>または<17>に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、充填材をさらに含み、
前記凹部の内部に前記充填材の一部が存在している、モータハウジングの製造方法。
<19>
<18>に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材の平均アスペクト比が1以上50以下である、モータハウジングの製造方法。
<20>
<18>または<19>に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材がワラストナイト、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、ホウ酸アルミニウムウイスカー、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上である、モータハウジングの製造方法。
<21>
<15>ないし<20>のいずれか一に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記ブラケットが、銅、アルミニウム、鉄またはステンレス材から構成される、モータハウジングの製造方法。
<熱硬化性樹脂組成物(P1)の調製>
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を34.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを6.0質量%、ガラス繊維(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を52.0質量%、ワラストナイト(NYCO Minerals社製、NYAD5000、平均粒子径:3μm、平均長径:9μm)を6.0質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学株式会社製、KBE−903)0.2質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を0.5質量%、潤滑剤等のその他の成分を1.3質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P1)を得た。
表面処理がされていない金属シートとして、その表面が#4000の研磨紙で十分研磨された、アルミニウム合金A5052の金属シートA(80mm×10mm、厚さ1.0mm、密度2.68g/cm3、熱伝導率138W/(m・K))を用意した。別途、水酸化カリウム(16質量部)、塩化亜鉛(5質量部)、硝酸ナトリウム(5質量部)、チオ硫酸ナトリウム(13質量部)の水溶液を調製した。得られた水溶液(30℃)中に、金属シートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に15μm(アルミニウムの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗を行い、35質量部の硝酸水溶液(30℃)中に浸漬して、20秒間揺動させた。その後、水洗、乾燥し、金属シート1(金属部材)を得た。
なお、この金属シート1について、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていた。
得られた熱硬化性樹脂組成物(P1)および金属シート1を用いて、金属樹脂複合体1を作製した。具体的には、以下の手順により作製した。
はじめに、金型内に厚み1mmの金属シート1を固定せずに配置した。次いで、硬化後の厚みが3mmとなるように、熱硬化性樹脂組成物(P1)を加熱し、上記金型内に所定量注入した。このとき、熱硬化性樹脂組成物(P1)の流体圧力により、金属シート1を金型の内壁に押しつけるようにした。最後に、圧縮成形により熱硬化性樹脂組成物(P1)を硬化することにより、厚み3mmの樹脂部材シートと厚み1mmの金属シート1の2層シートである金属樹脂複合体1を得た。この金属樹脂複合体1を試験片1とした。なお、圧縮成形条件は、実効圧力20MPa、金型温度175℃、硬化時間3分間とした。
試験片1を作製するのと同様の条件で、樹脂金属複合体からなるモータハウジングを作製した。具体的には、円筒形状の金属部材を用意し、これに対して、圧縮成形により熱硬化性樹脂組成物(P1)を作用させることでモータハウジング1を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P1)に用いた、ワラストナイトの代わりに、ケイ酸カルシウム水和物(宇部マテリアルズ社製、ゾノハイジ、平均粒子径:0.1〜0.5μm、平均長径:1〜5μm)を6.0質量%用いて、熱硬化性樹脂組成物(P2)を調製した以外は、実施例1と同様の方法により試験片2とモータハウジング2を作製した。これらについて、後述する測定及び評価を行った。
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P3)を使用し、また、金属シートとして、以下で得られたSUS304製の金属シート2を用いた以外は、実施例1と同様の方法により樹脂金属複合体3とモータハウジング3を作製した。これらについて、後述する測定及び評価を行った。
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を25.5質量%、ヘキサメチレンテトラミンを4.5質量%、ガラス繊維(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を61.2質量%、ワラストナイト(NYCO Minerals社製、NYAD5000、平均粒子径:3μm、平均長径:9μm)を7.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を0.5質量%、潤滑剤等のその他の成分を1.3質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P3)を得た。
まず、表面処理がされていないステンレスシートA(80mm×10mm、厚さ1.0mm、密度7.93g/cm3、熱伝導率16.7W/(m・K)、SUS304)を準備した。また、別途、硫酸(50質量%)、硫酸第二銅5水和物(3質量%)、塩化カリウム(3質量%)、チオサリチル酸(0.0001質量%)の水溶液を調製した。そして、得られた水溶液(30℃)中に、ステンレスシートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に13μm(ステンレスの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗、乾燥し、金属シート2(金属部材)を得た。
なお、この金属シート2について、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていた。
樹脂部材を含まない試験片を用意した。具体的には、表面処理がされていない金属シートとして、その表面が#4000の研磨紙で十分研磨された、アルミニウム合金A5052の金属シートB(80mm×10mm、厚さ4.0mm、密度2.68g/cm3、熱伝導率138W/(m・K))を用意し、試験片4とした。
また、アルミニウム合金A5052を公知の加工法により加工することにより厚みが4mmのモータハウジング4を作製した。
試験片4およびモータハウジング4について、後述する測定及び評価をおこなった。
金属部材を含まない試験片を作製した。具体的には、熱硬化性樹脂組成物(P1)を加熱し、金型内に所定量注入した後、圧縮成形により熱硬化性樹脂組成物(P1)を硬化することにより、80mm×10mm、厚さ4.0mmの樹脂部材のみからなる試験片5を得た。なお、圧縮成形条件は、実効圧力20MPa、金型温度175℃、硬化時間3分間とした。また、同様に、圧縮成形により厚みが4mmのモータハウジング4を作製した。
試験片4およびモータハウジング4について、後述する測定及び評価をおこなった。
金属シート1の代わりに、粗化処理がされていない金属シートAを使用した以外は、実施例1と同様の方法により試験片6およびモータハウジング6を作製した。これらについて、後述する測定及び評価をおこなった。
ガラス転移温度(Tg):作製した試験片から、厚さ2mmの樹脂試料を切り出し、JIS K 6911に準拠して、測定を行った。単位は℃とした。
具体的には、試験片の片方の面に2つの支点をあて、反対の面の中央に圧子をあてて3点曲げ応力を加えた。25℃雰囲気にて、試験速度を2mm/min、支点間の距離Lを64mmとして曲げ強さを測定した。単位はMPaとした。
RaおよびRz:超深度形状測定顕微鏡(キーエンス社製VK9700)を用いて、JIS−B0601に準拠して、倍率20倍における金属部材の樹脂部材との接合面の表面形状を測定した。表面粗さはRaおよびRzを測定した。単位はμmとした。
せん断密着性試験:別途幅18mm×長さ45mmの面積を有する金属シートを用意し(この金属シートは各実施例・比較例で用いたものに対応するものである。)、幅10mm×長さ45mmの樹脂材料を、長さ5mm分金属シートに重なるように調整しながらトランスファー成形によって試験片を作製した。
この試験片について、ISO19095に準じてせん断密着強度の測定を行った。単位はMPaとした。なお、比較例1および比較例2は複合材料には該当しないため、この試験は行っていない。
具体的には、試験片の片方の面に2つの支点をあて、反対の面の中央に圧子をあてて3点曲げ応力を加えた。25℃雰囲気にて、試験速度を2mm/min、支点間の距離Lを64mmとして曲げ強さを測定した。単位はMPaとした。
このヘリウムリーク試験を行うに際しては、以下の基準により評価を行った。
○:リーク量e−7Pa・m3/sec以下
×:リーク量e−7Pa・m3/sec超
○:シールド率99.9%以上
×:シールド率99.9%未満
比重:得られたモータハウジングについて、水中置換法により比重を測定した。
20 固定子
30 ベアリング
40 ロータ
50 ベアリング
60 シャフト
100 モータハウジング
102 粗化層
103 接合面
200 モータ
201 凹部
203 開口部
205 底部
Claims (17)
- 熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成された円筒状の固定子と、前記固定子の外周面に密着してなる金属製のブラケットとを備えるモータハウジングであって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面は粗化処理されたものであり、
前記熱硬化性樹脂組成物が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂と、充填材とを含み、
前記充填材が、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム水和物、カオリンクレー、酸化亜鉛、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上と、ガラス繊維とを含む、モータハウジング。 - 請求項1に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面が複数の凹部を有しており、
前記凹部の断面形状が、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、モータハウジング。 - 請求項2に記載のモータハウジングであって、
前記凹部の内部に前記充填材の一部が存在している、モータハウジング。 - 請求項3に記載のモータハウジングであって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材の平均アスペクト比が1以上50以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし4のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットが、銅、アルミニウム、鉄またはステンレス材から構成される、モータハウジング。 - 請求項1ないし5のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の比重が1.3以上2.5以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし6のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
当該モータハウジング全体の比重が1.5以上7.5以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし7のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の厚み(T1)が1mm以上10mm以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記ブラケットの厚み(T2)が0.5mm以上15mm以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし9のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記固定子の厚み(T1)と、前記ブラケットの厚み(T2)の厚みの比(T1/T2)が0.06以上20以下である、モータハウジング。 - 請求項1ないし10のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度(Tg)が120℃以上である、モータハウジング。 - 請求項1ないし11のいずれか一項に記載のモータハウジングであって、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体の線膨張係数が10ppm/K以上40ppm/K以下である、モータハウジング。 - 内壁面が粗化処理された金属製のブラケットおよび金型を準備する工程と、
前記金型の成形空間内に前記ブラケットを配置する工程と、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の熱硬化性樹脂と、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム水和物、カオリンクレー、酸化亜鉛、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上とガラス繊維とを含む充填材と、を含み、流動化した、熱硬化性樹脂組成物で前記成形空間内を充填する工程と、
充填された前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させて円筒状の固定子を形成し、当該円筒状の固定子と前記ブラケットとが接合されたモータハウジングを得る工程とを含む、
モータハウジングの製造方法。 - 請求項13に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記ブラケットにおける、前記ブラケットと前記固定子との密着面が複数の凹部を有しており、
前記凹部の断面形状が、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっている、モータハウジングの製造方法。 - 請求項14に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記凹部の内部に前記充填材の一部が存在している、モータハウジングの製造方法。 - 請求項15に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記凹部の内部に存在する前記充填材の平均アスペクト比が1以上50以下である、モータハウジングの製造方法。 - 請求項13ないし16のいずれか一項に記載のモータハウジングの製造方法であって、
前記ブラケットが、銅、アルミニウム、鉄またはステンレス材から構成される、モータハウジングの製造方法。
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