次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[IH炊飯器の全体構成例]
図1は、実施の形態に係るIH炊飯器(電磁炊飯器)1の斜視図である。
このIH炊飯器1は、IHによる炊飯技術を使用し、無線通信・電力供給により本体とIH部の分離を可能とするIHジャー炊飯器である。
具体的には、図1に示すように、IH炊飯器1は、炊飯器部100とIH調理器200とに上下分離可能となっている。外観はジャー炊飯器であるが、炊飯器部100を取り外すと、IH調理器200の操作部が現れる。IH調理器200側は単独でIH調理に使用することができ、炊飯器部100側は御櫃として食卓に簡単に運ぶことができる。
また、実施の形態に係るIH炊飯器1は、自動計量機能を備える。これにより、炊飯量や米の銘柄に応じて「最適な水量をお知らせ」し、いつでも美味しいご飯を炊き上げ、お米の特色をより楽しむことができる。
また、実施の形態に係るIH炊飯器1は、調理目的に応じた炊き分け機能および米の銘柄炊き分け機能を備える。これにより、調理目的(おにぎり、丼、カレー等)、米の銘柄や各メニューの炊飯に対し、温度センサ情報から電力と炊飯工程の時間および水量範囲を制御し、調理目的に適したご飯、或いは美味しいご飯を炊き上げることができる。
[炊飯器部の構成例]
以下、炊飯器部100の構成を詳細に説明する。
図2は、図1に示されるIH炊飯器1が備える炊飯器部100の斜視図である。
図2に示すように、炊飯器部100は、蓋部100Aと、炊飯器本体100Bと、底部100Cとを備える。蓋部100Aの天面には、炊飯器部100を操作するための炊飯器操作部101が設けられている。炊飯器本体100Bの前面には、米や水の重量を表示する計量表示部102が設けられている。炊飯器部100の外観は略直方体状である。使用者から計量表示部102が見えや易くするため、炊飯器本体100Bの前面をやや傾斜させるのが望ましい。
底部100Cの外縁部は、IH調理器200の天面の外縁部と嵌合する構造になっている。具体的には8.5mm程度、炊飯器部100側の筐体とIH調理器200側の筐体とがオーバーラップするようになっている。IH調理器200の設置面積と炊飯器部100の設置面積がほぼ等しいため、上下の筺体がぴったり一致し、外観がスマートであるとともに、省スペース化を図ることができる。上下嵌合の工夫として、IH調理器200の天面の外縁部と底部100Cの外縁部にテーパを付けてもよいし、前後の間違いをなくすため前後でRが異なるようにしてもよい。
図3は、図2に示される炊飯器部100の断面図である。
図3に示すように、後方側に設けた蓋ヒンジ129を支点として蓋部100Aの前方側が上下方向に回動するようになっている。この前方側の蓋部100Aと炊飯器本体100Bとの対向位置に蓋ロック機構124を設けている。炊飯器本体100Bの上部開口から内釜(炊飯釜)121を収容する。内釜121の周囲に断熱材や保護枠を設け、内釜121の底に温度を計測するサーミスタ131を設けている。内釜121内で発生した蒸気は、内蓋127に設けた蒸気筒128を介して外部に排出される。炊飯器本体100Bの側壁部には、炊飯器部100を持ち運ぶためのハンドルが回動自在に設けられている。
炊飯器操作部101の近傍には、炊飯器操作部101を制御する炊飯器操作基板126が配置されている。計量表示部102の近傍には、計量表示部102を制御する表示基板123が配置されている。表示基板123の下方には、通信端子112や電力受給コイルが接続されたインターフェース基板122が配置されている。通信端子112は、IH調理器200と無線通信するための端子である。電力受給コイルは、IH調理器200側の電力供給コイルから電磁誘導により電力を受給するためのコイルである。
なお、ここでは、炊飯器部100の底にサーミスタ131を設けた場合を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、サーミスタ131は、炊飯器部100の側面に設けてもよいし、内蓋127に設けてもよい。
[IH調理器の構成例]
以下、IH調理器200の構成を詳細に説明する。
図4は、図1に示されるIH炊飯器1が備えるIH調理器200の斜視図である。
図4に示すように、IH調理器200は、食卓などの上に置いて使用する卓上型の電磁調理器であり、外観は薄型の略直方体状である。IH調理器本体200Aの上部開口を塞ぐように、結晶化ガラス等で構成されたトッププレート200Bが配置されている。IH調理器200の天面の前方側には、電源ボタンや温度調整ボタンなどを有するIH操作部201が設けられている。トッププレート200BとIH操作部201とは平面視で互いに重ならないように配置される。IH調理器200の後方側には、マグネットで着脱自在に電源コードのプラグを装着する差し込み口が設けられている。
図5は、図4に示されるIH調理器200のトッププレート200Bを取り外した状態の斜視図である。図5に示すように、IH調理器本体200A上のトッププレート200Bを取り外すと、IHコイル211と、電力供給コイル212と、通信端子213と、リードスイッチ(図示せず)が現れる。IHコイル211は、被加熱物を電磁誘導加熱する加熱コイルである。電力供給コイル212は、炊飯器部100側の電力受給コイルに電磁誘導により電力を供給するためのコイルである。通信端子213は、炊飯器部100と無線通信するための端子である。リードスイッチ214は、磁石を近づけると作動するスイッチである。これら部材の作用については後述する。
図6は、図4に示されるIH調理器200の断面図である。
図6に示すように、IH調理器本体200Aのほぼ中央の上部にIHコイル211が配置されている。IH調理器本体200Aの内部で発生した熱はファン221により外部に排気される構造になっている。IH調理器本体200Aの上部の前方側には、IH操作部201を制御するIH操作基板224が配置されている。その近傍には、IH加熱用のメイン基板225が配置されている。IH調理器本体200Aの底部の四隅から外表面に4つの台座部223が突き出している。台座部223は、金型入れ子対応で重量センサを取り付け可能となっている。
[重量センサの構成例]
以下、重量センサの構成を詳細に説明する。
図7は、実施の形態に係るIH炊飯器1の断面図である。図8は、図7に示されるIH炊飯器1の底面の斜視図である。図9は、図7に示される重量センサ部分(台座部223)を拡大した拡大図である。
図7〜図9に示すように、四隅の台座部223に歪ゲージ223Bを設け、重量測定を行う。具体的には、ベース部材223Aに歪ゲージ223B、重量センサ台座223C、ゴム足223Dを取り付け、重量センサカバー223Eで固定している。IH調理器200に炊飯器部100が搭載されると、ゴム足223Dが重量センサ台座223C全体を押し上げ、歪ゲージ223Bを変形させる。これにより、各歪ゲージ223Bの歪に基づいて重量センサ基板224a(図11参照)が重量測定を行うようになっている。
[炊飯器の機能構成]
図10の機能ブロックを参照して、実施の形態に係るIH炊飯器1の構成について説明する。
本実施の形態に係る炊飯器1は、炊飯工程(第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、第1の蒸らし工程、追い炊き工程および第2の蒸らし工程)を順次実行可能な炊飯手段500と、炊飯手段500を制御する制御手段501と、制御手段501への指示や設定等を行う操作パネル101、100VのAC電源701に接続されて各構成部材への電力供給を行う電源回路700、上述のような構成の重量センサで構成される計量手段(歪ゲージ)223B、計量表示部(表示手段)102、内釜121を加圧する加圧手段160等から構成されている。
操作パネル101には、計量処理を指示する計量ボタンB11および「無洗米」、「白米」、「おにぎり」、「カレー」等の炊き方モードの選択や、「コシヒカリ」等の銘柄を選択する炊飯メニュー選択手段173としての各種ボタンが設けられている。
加圧手段160は、例えば電磁バルブ等で構成され、制御手段101の制御によりオン、オフすることにより、内釜121内の加圧、減圧を所定のタイミングで行うことができる。
炊飯手段500は、米および水を含む被炊飯物を収容する内釜(炊飯釜)121と、この炊飯釜121を加熱する加熱手段としてのIHコイル211と、炊飯釜121の温度を検知する温度検出手段としての温度センサ131と、上述のような構成の上蓋100A等から構成されている。
なお、炊飯器1をマイコン式炊飯器として構成する場合には、加熱手段として、IHコイル211に代えてヒータが設けられる。
温度センサ131は、上述のように、例えば炊飯釜121の底面側に配置されるサーミスタ等で構成される。
また、圧力センサSN2は、例えば、内釜121内に投入されるワイヤレス式の圧力センサ等とすることができる。
制御手段501は、マイクロコンピュータ等で構成され、温度センサ131の検知結果や、操作パネル101からの指示等に基づいてCPU等のハードウェアおよびソフトウェア(プログラム)の協働によって、各工程において付与する熱量(電力)を設定する熱量設定部150や、炊飯する米の量を判定する合数判定部151、最適水量を算出する算出部800、制御パターンを選択する制御パターン選択部801、水量パターン(水量範囲パターン)選択部802等を構成している。
制御手段501は、各工程の継続時間や切り替えタイミングを調整するタイマ154を備えている。
また、制御手段501としてのマイクロコンピュータは、ROMやフラッシュメモリ等で構成される格納手段152を備え、炊飯処理等の実行プログラムを格納すると共に、各工程等に関するデータ等をデータテーブル153として予め格納している。
また、データテーブル153には、各炊飯メニューに対応させた複数の温度と圧力のパターンおよび複数の水量範囲パターン等のデータも格納されている。
より具体的には、本実施の形態に係る炊飯器1で実行される炊飯方法は、第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、第1の蒸らし工程、追い炊き工程および第2の蒸らし工程を有し、第2の炊き上げ工程は、温度制御とピーク温度に対する圧力オン、オフのタイミングとを組み合わせた複数の制御パターンと、水量を変化させた複数の水量範囲パターンとを調理目的(「おにぎり」、「丼」、「カレー」、「すし」等)に応じて適宜組み合わせて、米と水から成る被炊飯物を加熱手段としてのIHコイル211で昇温加熱するようになっている。
なお、第1の炊き上げ工程の実行前に、前炊き工程を行うようにしてもよい。
また、制御パターンは、具体的には、例えば、
第1の制御パターン:「前炊き工程、第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、第1の蒸らし工程、追い炊き工程および第2の蒸らしの工程からなる炊飯を行う温度制御及び圧力制御であって、第1の炊き上げ工程のピーク温度(T1)付近で圧力を付与し、第2の炊き上げ工程が1つのピーク温度(T2)を有し、このピーク温度付近で圧力を開放する」
第2の制御パターン:「第1の制御パターン」、「前炊き工程、第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、第1の蒸らし工程、追い炊き工程および第2の蒸らし工程からなる炊飯を行う温度制御及び圧力制御であって、第1の炊き上げのピーク温度(T1)付近で圧力を付与し、第2の炊き上げ工程はピーク温度を2つ(T2、T3 但しT2<T3)有し、1つ目のピーク温度(T2)付近で圧力を開放する」
第3の制御パターン:「前炊き工程を行わず、第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、蒸らしの工程からなる炊飯を行う温度制御及び圧力制御であって、第1の炊き上げ工程の開始と同時あるいは開始後に、圧力を付与し、第2の炊き上げ工程のピーク温度(T2)付近で圧力を開放する」
第4の制御パターン:「前炊き工程、第1の炊き上げ工程、第2の炊き上げ工程、第1の蒸らし工程、追い炊き工程および第2の蒸らしの工程からなる炊飯を行う温度制御及び圧力制御であって、第1の炊き上げ工程のピーク温度T1と第2の炊き上げ工程のピーク温度T2との関係は、T1<T2であり、且つ、追い炊き工程のピーク温度T4と第2の炊き上げ工程のピーク温度T2との関係は、T4<T2である」
第5の制御パターン:「前炊き工程を行わず、炊き上げ工程と、炊き上げ工程終了後に被炊飯物を予め設定した第1の温度まで徐冷する徐冷工程と、徐冷工程終了後に被炊飯物を予め設定した第2の温度で維持する温度維持工程と、温度維持工程終了後に被炊飯物を予め設定した第3の温度まで昇温加熱する再加熱工程とを有する」
等で構成され、この中から1つ制御パターンを選択するようにできる。
また、水量範囲パターンは、例えば、水量を標準水量の1倍とした第1の水量範囲パターン、水量を標準水量の0.88倍〜0.94倍とした第2の水量範囲パターン、水量を標準水量の0.92倍〜1.02倍とした第3の水量範囲パターンの1つから選択するようにできる。
そして、温度と圧力のパターンおよび水量範囲パターンを適宜組み合わせることにより、炊飯メニューで選択された、「おにぎり」、「丼」、「カレー」、「すし」等の調理目的等に合わせたご飯の食味のバリエーションを炊き分けることが可能となる。
[炊飯器の概略回路構成例]
図11は、実施の形態に係るIH炊飯器1の概略回路構成図である。
図11に示すように、IH炊飯器1の炊飯器部100側には、インターフェース基板122と、このインターフェース基板122と接続される炊飯器操作基板126が配置されている。
炊飯器操作基板126には、制御手段501の全部または一部を構成するマイクロコンピュータ(MCU1)が設けられている。
インターフェース基板122には、制御手段501の全部または一部を構成するマイクロコンピュータ(MCU2)が設けられている。
インターフェース基板122には、表示部102を構成する表示基板123、温度検知を行うサーミスタ131、無線通信(赤外線通信等)を行う通信手段を構成する通信端子112、IH調理器200側から電力の供給を受ける電力受給コイル113が接続されている。
また、IH調理器200側には、IH操作基板224と、このIH操作基板224と接続されるメイン基板(IH加熱用)225が配置されている。
IH操作基板224には、制御手段501の全部または一部を構成するマイクロコンピュータ(MCU3)が設けられている。
メイン基板225には、制御手段501の全部または一部を構成するマイクロコンピュータ(MCU4)が設けられている。
なお、炊飯器操作基板126およびインターフェース基板122が備えるUART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter)は、シリアル転送方式のデータとパラレル転送方式のデータを相互に変換するためのデバイスである。
また、IH操作基板224およびメイン基板225が備えるSPI(Serial Peripheral Interface)は、IH操作基板224,メイン基板225同士を接続するシリアルバスの一種である。
また、各基板122、126、224、225には、所定のプログラムを格納したROMが搭載されている。そして、マイクロコンピュータMCU1〜MCU4がROMに格納された所定のプログラムを実行することで各種制御が実現される。
図11に示すように、IH調理器200のメイン基板225にはマグネットプラグ等を介して電源コードが接続される。IH調理器200に炊飯器部100が搭載されると、炊飯器部100側の検知用磁石(図示せず)がIH調理器200側のリードスイッチ(図示せず)をオンするようになっている。
この状態で、IH調理器200のメイン基板225は、IH操作基板224を介して駆動信号を電力供給コイル212に印加する。これにより、電磁誘導作用で炊飯器部100側の電力受給コイル113に電力信号が発生し、インターフェース基板122を介して表示基板123や炊飯器操作基板126等に印加される。その結果、IH調理器200側の通信端子213と炊飯器部100側の通信端子112を介して赤外線通信等の無線通信が可能となる。
この状態で炊飯器操作部(操作パネル)101が操作されると、その操作信号が炊飯器操作基板126から通信端子112・213を介してIH調理器200側のメイン基板225に伝送される。メイン基板225は、受信した操作信号に基づいてIHコイル211への電流供給の開始や停止を制御したり、IHコイル211に流す高周波電流の電流値を制御したりする。この制御において、重量センサ基板224aから得られる被炊飯物(米や水など)の重量情報や、サーミスタ131から得られる内釜121の温度情報を利用することができる。重量情報は、炊飯器部100側の表示基板123を介して表示部102に表示される。
[操作パネルの構成例]
図12は、実施の形態に係るIH炊飯器1が備える操作パネル101の説明図である。
具体的には、図12(a)は、炊飯器部100の天面に設けられた炊飯器操作部(操作パネル)101の構成例を示している。
操作パネル101は、表示部D1に加え、メニューボタンB1、保温/取消ボタンB2、米銘柄ボタンB3、炊飯ボタンB4等の各種ボタンを備える。
表示部D1は、IH炊飯器1の設定状況等を表示する表示装置である。
メニューボタンB1は、炊き方等を選択するためのボタンである。
即ち、メニューボタンB1の操作により、無洗米、白米、省エネ、早炊き、炊込み、おかゆ、おにぎり、丼、カレー等の調理目的に応じた炊き分けモードを選択する。
保温/取消ボタンB2は、保温とその取り消しを指示するためのボタンである。
米銘柄ボタンB3は、お米の銘柄を選択するためのボタンである。米銘柄ボタンB3を押すことにより、こしひかり、あきたこまち、つや姫、ゆめぴりか、ひとめぼれ、ヒノヒカリ等の銘柄を選択することができる。
炊飯ボタンB4は、炊飯を指示するためのボタンである。
また、図12(b)は、炊飯器部100の前面に設けられた表示部102を示している。表示部102は、液晶表示部D11に加え、計量結果の表示を指示する計量ボタンB11を備える。
液晶表示部D11は、計量値等を表示する表示装置である。
計量ボタンB11は、計量モードの使用等を指示するためのボタンである。
[計量操作例の概要]
以下、計量操作例の概要を説明する。
まず、ユーザは、操作パネル101においてメニュー(炊き分けモード等)・かたさ・米銘柄を選択し、炊飯器部100の上蓋100Aを開け、内釜121にお米を入れる。次いで、表示部102の計量ボタンB11を押し(表示で米重量がナビゲートされる)、内釜121を取り出し洗米した後、炊飯器部100に内釜121をセットし、その後、内釜121に水を入れていく(表示と音で水量がナビゲートされる)。ここでは、ユーザに計量モードの使用を認識させるために計量ボタンB11を押すこととしているが、上蓋100Aを開けたら自動で計量モードに移行するようにしてもよい。最後に、炊飯器部100の上蓋100Aを閉じ、炊飯器操作部101の炊飯ボタンB4を押すと、炊飯が開始される。
[計量操作例の詳細]
図13は、図12(b)に示される表示部102の画面遷移図である。
まず、ユーザが計量モードにおいて内釜121にお米を入れると、米重量が測定される。
ここで、米重量が規定範囲以下の場合、図12(a)に示すように、液晶表示部D11に「米を入れて計量ボタンを押す」等と表示する(計量ボタンB11点滅)。なお、計量モードに入る前には内釜121を炊飯器本体100Bに装着した状態でゼロ点調整が行われている。一方、米重量が許容重量より多い場合、図12(b)に示すように、液晶表示部D11にエラーを表示する(計量ボタンB11消灯)。
次いで、ユーザが計量ボタンB11を押すと、米重量が確定し、水計量モードに移行する。ただし、計測した米重量が仕様重量範囲外なら水計量モードに移行せず、米計量モードのままである。問題がなければ、図13(c)に示すように、液晶表示部D11に「(洗米後、)水を入れる」等と表示する。このとき、液晶表示部D11には、必要水量を表示するようになっている。
次いで、洗米(無洗米ならこのステップは不要である)し、図示しないカップなどにより水を追加していくと、水重量が測定され、図13(d)に示すように、水量の追加とともに、液晶表示部D11に表示される必要水量は減少していく。水重量が最適範囲に入ったら「ピッ」と一度音を鳴らし、最適範囲から外れたら「ピッ、ピッ」と二度音を鳴らす。最適値範囲では、図13(e)に示すように、液晶表示部D11に「0」等と表示し、最適値範囲を過ぎたら、図13(f)に示すように、液晶表示部D11に「水を減らす」等と表示する。
最後に、上蓋100Aを閉じると、計量表示を消灯する。この状態で炊飯ボタンB4(または予約後に炊飯ボタンB4)を押すと、炊飯が開始される。
[温度と圧力のパターン等の構成例について]
図14〜図16を参照して、温度と圧力のパターンおよび水量範囲パターンの構成例等について説明する。
ここで、図14は、メニューと、温度と圧力パターンおよび水量パターンの組み合わせの例を示す図表、図15は、温度と圧力パターンの例を示す図表、図16は、水量範囲パターンの例を示す図表である。
図14に示す構成例では、メニューとして、「おにぎり用」、「丼用」、「カレー用」、「冷凍用」、「高速炊き用」等が用意されている。
これらに対応させて、温度と圧力パターンとして、P1、P2、P3、P4…が用意され、これらのパターンから一つが選択される。
温度と圧力パターンP1、P2、P3、P4…の内容の例としては、図15に示すように、P1:(1)ピーク温度がT2、(2)温度T2以下でN1秒圧力保持、P2:(1)ピーク温度がT2、(2)温度T2を維持してN2秒間圧力維持、(3)ピーク温度T3に移行などが挙げられる。
また、温度と圧力パターンP1、P2、P3、P4…のより具体的内容は、例えば、上述の第1の制御パターンから第5の制御パターン等が該当する。
また、水量パターン(水量範囲パターン)としては、W1、W2、W3、W4…等が用意され、温度と圧力パターンP1、P2、P3、P4…の何れかと組み合わされる。
水量パターンW1、W2、W3、W4…の例としては、図16に示すように、W1:多め(標準水位に比して)、W2:標準水位(1倍)、W3:少なめ(標準水位に比して)、W4:さらに少なめ(標準水位に比して)などが挙げられる。
なお、水量範囲パターンは、より厳密には、水量を標準水量の1倍とした場合を第1の水量範囲パターン、水量を標準水量の0.88倍〜0.94倍とした第2の水量範囲パターン、水量を標準水量の0.92倍〜1.02倍とした第3の水量範囲パターンとして、これらのパターンの中の1つから選択されるようにできる。
また、水量範囲パターンとして、上述の標準水量の0.88倍〜0.94倍、或いは標準水量の0.92倍〜1.02倍の範囲で、適当な倍率を選択するようにしてもよい。
[調理目的に応じた炊飯工程の例]
図17〜図21を参照して、調理目的に応じた炊飯工程の例について説明する。
ここで、図17は、丼用、おにぎり用の炊飯工程を示すグラフ、図18は、カレー用、冷凍用の炊飯工程を示すグラフ、図19は、高速炊き用の炊飯工程を示すグラフ、図20は、すし用の炊飯工程を示すグラフ、図21は、食物繊維米用の炊飯工程を示すグラフである。
まず、図17に示す丼用、おにぎり用の炊飯工程では、60℃付近まで約18分間程度加熱する前炊き工程 → 温度T1(例えば100℃付近)まで約5分間程度加熱すると共に圧力をオンする第1の炊き上げ工程 → ピーク温度T2(例えば120℃付近)まで約10分間程度加熱した後、圧力をオフする第2の炊き上げ工程 → 100℃付近まで徐冷する第1の蒸らし工程 → 温度T4(例えば105℃程度)まで約2〜3分程度加熱する追い炊き工程 → 100℃以下まで徐冷する第2の蒸らし工程を有する。なお、第2の蒸らし工程後に、炊き上がったご飯を所定温度に保つ保温モードに移行するようにしてもよい。
図18に示すカレー用、冷凍用の炊飯工程では、60℃付近まで約18分間程度加熱する前炊き工程 → 温度T1(例えば100℃付近)まで約5分間程度加熱すると共に圧力をオンする第1の炊き上げ工程 → 第1のピーク温度T2(例えば110℃付近)まで約10分間程度加熱した後、圧力をオフし、次いで第2のピーク温度T3(例えば120℃付近)まで再加熱する第2の炊き上げ工程 → 100℃付近まで徐冷する第1の蒸らし工程 → 温度T4(例えば105℃程度)まで約2〜3分程度加熱する追い炊き工程 → 100℃以下まで徐冷する第2の蒸らし工程を有する。なお、第2の蒸らし工程後に、炊き上がったご飯を所定温度に保つ保温モードに移行するようにしてもよい。
図19に示す高速炊き用の炊飯工程では、前炊き工程を行わずに、温度T1(例えば100℃付近)まで圧力をオンした状態で約4分間程度加熱する第1の炊き上げ工程 → ピーク温度T2(例えば110℃付近)まで約8分間程度加熱した後、圧力をオフする第2の炊き上げ工程 → 100℃付近まで徐冷する工程を有する。なお、蒸らし工程後に、炊き上がったご飯を所定温度に保つ保温モードに移行するようにしてもよい。
図20に示す、すし用の炊飯工程では、60℃付近まで約18分間程度加熱する前炊き工程 → 温度T1(例えば100℃付近)まで約5分間程度加熱(圧力はオフ)する第1の炊き上げ工程 → ピーク温度T2(例えば120℃付近)まで約10分間程度加熱(圧力はオフ)する第2の炊き上げ工程 → 100℃付近まで徐冷する第1の蒸らし工程 → 温度T4(例えば105℃程度)まで約2〜3分程度加熱する追い炊き工程 → 100℃以下まで徐冷する第2の蒸らし工程を有する。なお、第2の蒸らし工程後に、炊き上がったご飯を所定温度に保つ保温モードに移行するようにしてもよい。
図21のグラフは、食物繊維米用の炊飯工程を示す。ここで、食物繊維米とは、レジスタントスターチの含有割合を高めたご飯のことをいう。
食物繊維米用の炊飯工程では、前炊き工程を行わずに、温度T1(例えば100℃付近)まで圧力をオンした状態で約20分間程度加熱する炊き上げ工程 → 圧力をオフして温度T5(例えば60℃付近)まで徐冷する徐冷工程 → 温度T5で60分程度維持する温度維持工程 → 温度T6(例えば70℃付近)まで再加熱する再加熱工程を有する。 なお、再加熱工程後に、炊き上がったご飯を所定温度に保つ保温モードに移行するようにしてもよい。
[炊き分けられたご飯の比較]
次に、図22〜図27を参照して、調理目的別に炊き分けられたご飯を比較する。
まず、標準モードで炊いたご飯について、図22(a)に示すように、「おにぎり」にした状態で一部の領域A10を顕微鏡で20倍に拡大して図22(b)の画像を撮影した。なお、図22(c)は、その画像について特徴部を線画したものである。
ここで、米粒R10、R11、R12等の間の空隙面積を画像解析により測定したところ1.1%程度であった。
一方、おにぎりモードで炊いたご飯について、図23(a)に示すように、「おにぎり」にした状態で一部の領域A11を顕微鏡で20倍に拡大して図22(b)の画像を撮影した。なお、図23(c)は、その画像について特徴部を線画したものである。
ここで、米粒R20、R21、R22等の間の空隙面積を画像解析により測定したところ3.4%程度であった。
このように、おにぎりモードで炊いたご飯は、標準モードで炊いたご飯に比べて空隙面積が広く、粒立ちが良いことが分かる。これにより、ご飯(米粒R20〜R22等)がほぐれ易く、より食味のよい「おにぎり」を作ることができる。
次に、丼モードで炊いたご飯について、図24および図25を参照して説明する。
ここで、図24(a)は、標準モードで炊いたご飯に汁(例えば親子丼の汁)をかけ30分経過した状態の顕微鏡画像、図24(b)はその特徴部の線画、図24(c)は汁をかけて30分経過した状態の他の顕微鏡画像、図24(d)はその特徴部の線画である。
図24(a)〜(d)を見ると分かるように、標準モードで炊いたご飯は、汁に30分間浸した場合に、各米粒R30〜R32、R40、R41の表面がボロボロになって一部が汁に溶け出しているのが分かる。
一方、図25(a)は、丼モードで炊いたご飯に汁(例えば親子丼の汁)をかけ30分経過した状態の顕微鏡画像、図25(b)はその特徴部の線画、図25(c)は汁をかけて30分経過した状態の他の顕微鏡画像、図25(d)はその特徴部の線画である。
図25(a)〜(d)を見ると分かるように、丼モードで炊いたご飯は、汁に30分間浸した場合であっても、各米粒R50、R51、R60〜R63は汁を吸っても表面は崩れていないことが分かる。
このように、丼モードで炊いたご飯に汁をかけた場合の食味の方が、標準モードで炊いたご飯の食味に比して向上しているといえる。
次に、カレーモードで炊いたご飯について、図26および図27を参照して説明する。
ここで、図26(a)は、標準モードで炊いたご飯R70に緩めのカレールウC10をかけた画像、図26(b)は、その3分後の画像である。
一方、図27(a)は、カレーモードで炊いたご飯R80に緩めのカレールウC10をかけた画像、図27(b)は、その3分後の画像である。
両者を比較すると分かるように、カレーモードで炊いたご飯R80では、3分後にはご飯R80の下方までカレールウC10が行き渡っている。
これに対して、標準モードで炊いたご飯R70では、カレールウC10が途中で止まってしまい、下方まで行き渡っていない。
このように、カレーモードで炊いたご飯R80の方がカレールウC10の通りが良く、食味が向上しているといえる。
以上述べたように、調理目的別に炊き分けられたご飯は、各調理目的(おにぎり、丼、カレー等)に適した性質を示し、それぞれの食味を向上させている。
[計量炊飯動作例]
図28A〜図28Fは、IH炊飯器1の計量炊飯動作を示すフローチャートである。
まず、炊飯器部100がIH調理器200の上に載っていない場合、炊飯器操作部101は時刻表示のみ、計量表示部102は消灯のままである(S1→S2→S3→S2)。炊飯器部100がIH調理器200の上に載ると、炊飯器操作部101のメニュー表示等は起動するが、計量表示部102は消灯のままである(S2→S4)。このとき、メニュー・銘柄・かたさについては以前の情報が維持されている(S5)。
次いで、使用者がメニューボタンB1を押すと、メニュー選択が切り替わる(S6→S7→S6)。例えば、(1)無洗米→(2)無洗米,新米→(3)無洗米,省エネ→(4)無洗米,早炊き→(5)白米→(6)白米,新米→(7)白米,省エネ→(8)白米,早炊き→(9)炊き込み→(10)おかゆ→(11)おにぎり→(12)丼→(13)カレー→(1)無洗米→・・・の順に切り替わるようになっている。
次いで、使用者が米銘柄ボタンB3を押すと、選択メニューが白米または無洗米でない場合、銘柄選択は消灯のままである(S8→S9→S10→S8)。一方、選択メニューが白米または無洗米である場合、銘柄選択が切り替わる(S8→S9→S11→S8)。例えば、(0)その他→(1)こしひかり→(2)あきたこまち→(3)つや姫→(4)ゆめぴりか→(5)ひとめぼれ→(6)ヒノヒカリ→(0)その他→・・・の順に切り替わるようになっている。
次いで、使用者がかたさボタンを押すと、選択メニューが白米または無洗米でない場合、かたさ選択は消灯のままである(S12→S13→S14→S12)。一方、選択メニューが白米または無洗米である場合、かたさ選択が切り替わる(S12→S13→S15→S12)。例えば、(1)標準→(2)かため→(3)やわらか→(1)標準→・・・の順に切り替わるようになっている。
次いで、蓋部100Aが開いており、重量が釜妥当重量以上になっており、保温が「切」になっている場合、計量表示をスタートする(S16→S18→S20→S24)。釜妥当重量とは、釜重量から所定値を引いた重量である。
一方、蓋部100Aが開いていないか、重量が釜妥当重量以上になっていないか、保温が「切」になっていない場合、そのままの状態とする(S16→S17,S18→S19,S20→S21)。ただし、保温/取消ボタンB2が押された場合、計量表示をスタートする(S21→S22→S24)。また、蓋部100Aが閉じられた場合(S23:YES)、ステップS16に戻る。
次いで、計量表示をスタートしてから10分以上放置されている場合、計量ボタンB11が押されない限り、計量表示を消灯する(S25→S26→S27→S26)。10分以上放置されていない場合でも、保温/取消ボタンB2が押されたときは、計量ボタンB11が押されない限り、省エネの観点から計量表示を消灯する(S25→S28→S29→S30→S29)。
一方、10分以上放置されることも保温/取消ボタンB2が押されることもなかった場合において、米重量が炊飯メニューの許容米重量・上限以下であるときは、「米を入れて計量ボタンを押す」等と表示する(S25→S28→S31→S33)。米重量が炊飯メニューの許容米重量・上限以下でないときは、エラーを表示する(S25→S28→S31→S32)。なお、本フローでは放置時間を10分としたが、これに限定されるものではない。
次いで、米重量が炊飯メニューの許容米重量内である場合、「米を入れて計量ボタンを押す」の表示を維持し、計量ボタンB11を点滅させる(S34→S35)。これにより、使用者が計量ボタンB11を押すと、米重量が許容米重量の範囲内である場合、米重量を記憶して、その米状量に最適な水量を表示させる。具体的には水計量モード「○○cc水を入れる(減らす)」等と表示する(S36→S37→S38)。なお、許容米重量「○合〜○合」は、炊飯メニューごとに決められている。
ここで、メニューが「無洗米」である場合、「○○cc水を入れる」等と表示する(S39→S40)。一方、メニューが「無洗米」以外である場合、「○○cc洗米後、水を入れる」等と表示する(S39→S41)。
次いで、取消ボタンが押されなかった場合において、水(+米)重量が最適水量範囲内でないときは、「ピッ、ピッ」と音を鳴らし、炊飯ボタンB4と予約ボタンを消灯させる(S42→S43→S44→S43)。一方、水(+米)重量が最適水量範囲内であるときは、「ピッ」と音を鳴らし、炊飯ボタンB4と予約ボタンを点滅させ、蓋部100Aが閉じていれば、計量モードを解除して「時刻モード:00:00」等と表示する(S42→S43→S45→S46→S47)。なお、最適水量範囲「最適水量±○%」は、炊飯メニュー・銘柄・かたさ設定の組み合わせに基づいて決められている。さらに最適水量範囲になったら、蓋部100Aを閉じるように表示や音声等で促すことが望ましい。
次いで、使用者が予約ボタンを押すと、予約モードに移行して「00:00」等と表示
し、「予約1」を点灯させて以前の登録時間を表示する(S48→S49→S50)。ここで、使用者が取消ボタンも予約ボタンも押すことなく時・分ボタンを押すと、予約1の登録時間を更新する(S51→S52→S58→S59)。一方、使用者が取消ボタンを押すことなく予約ボタンを押すと、「予約2」を点灯させて以前の登録時間を表示し、使用者が予約ボタンを押すことなく時・分ボタンを押すと、予約2の登録時間を更新する(S51→S52→S53→S54→S56→S57)。なお、ステップS54において使用者が予約ボタンを押した場合、予約モードを解除して「時刻モード:00:00」等と表示する(S54→S55)。
最後に、使用者が炊飯ボタンB4を押すと、蓋部100Aが閉じている場合、選択された炊飯メニュー・銘柄コースにて炊飯を開始する(S60→S61→S62)。その後、炊飯が完了したら保温を開始し(S63)、ステップS16に戻る。
[重量センサゼロ点調整動作例]
図29は、重量センサゼロ点調整動作を示すフローチャートである。
まず、蓋部100Aが開いていない場合、そのままの状態とする(S71→S72)。
一方、蓋部100Aが開いている場合において、使用者が計量ボタンB11を長押ししたときは、重量が釜重量妥当範囲に入っていれば、ゼロ点調整を開始し、米計量モードに移行する(S71→S73→S74→S75→S76)。釜重量妥当範囲「釜重量±○%」は、釜重量に基づいて決められている。
[重量センサ制御動作例]
図30は、重量センサ制御動作を示すフローチャートである。
まず、4点の重量センサ(歪ゲージ)のセンサ値を計測し、次式に基づいて一定時間の値を平均する(S81→S82)。
センサ出力平均(電圧)=平均(センサ出力ALL(電圧))
次いで、次式に基づいて出力電圧を荷重(重量)に変換する(S83)。歪ゲージ係数は、現物確認・実験により決定する。
測定値[g]=(センサ出力平均(電圧))/(歪ゲージ係数[電圧/N])/g(重力加速度[m/s^2])
次いで、次式に基づいて計測重量を算出する(S84)。
計量重量[g]=測定値[g]−ゼロ点重量[g]
このとき、米計量モードである場合、米重量をg単位で記録する(S85→S86)。
一方、水計量モードである場合、次式に基づいて水重量をcc単位で出力する(S87→S88)。
出力値[cc]=(記録した米重量・米の銘柄等から算出された必要水量[cc])−((計量重量[g])−(記録した米重量[g]))
[IH調理動作例]
図31は、IH調理器200の動作を示すフローチャートである。
まず、炊飯器部100がIH調理器200の上に載っている場合、IH操作部201の表示をオフにする(S91→S92→S93→S92)。また、炊飯器部100がIH調理器200の上に載っていない場合でも、使用者が「加熱スタート」または「揚げ物スタート」のボタン201aまたは201bを押すまでは、IH操作部201の表示をオフにする(S94→S95→S92)。
次いで、使用者が「加熱スタート」または「揚げ物スタート」のボタン201aまたは201bを押すと、最低火力で加熱をスタートする(S94→S96)。最低火力で加熱スタートする理由は、不用意な温度の上昇を防止して、安全性を確保するためである。また、使用者が「強く」のボタン201cを押すと、それに応じて火力をアップさせ(S97→S98)、「弱く」のボタン201dを押すと、それに応じて火力をダウンさせる(S99→S100)。最後に、使用者が「切」のボタン201eを押すと、電力をダウンさせる(S101→S102)。
以上のように、実施の形態に係るIH炊飯器1は、IH調理器200に炊飯器部100を搭載することにより炊飯可能となるIH炊飯器1である。IH調理器200は、被加熱物を電磁誘導加熱するIHコイル211と、このIH調理器200の操作部であるIH操作部201とを備える。炊飯器部100は、被炊飯物を収容する内釜121と、当該炊飯器部100の操作部である炊飯器操作部101とを備える。IH調理器200に炊飯器部100を搭載した状態でIH操作部201が炊飯器部100に覆い隠される。これにより、IH調理器200の上に炊飯器部100を搭載した状態でIH操作部201を操作することができないため、操作ミスが防止され、操作性を向上させることができる。また、このようにIH操作部201が炊飯器部100に覆い隠される構成によれば、炊飯器部100の設置面積が小さい割に炊飯量を多くすることが可能である。上下を分離すると、IH調理器200側は単独でIH調理に使用することができ、炊飯器部100側は御櫃として食卓に簡単に運ぶことができるという効果もある。
また、IH調理器200の天面にIH操作部201を設け、IH調理器200の天面の外縁部と炊飯器部100の底面の外縁部とが嵌合する構造であってもよい。すなわち、IH調理器200の設置面積と炊飯器部100の設置面積がほぼ等しいため、上下の筺体がぴったり一致し、外観がスマートであるとともに、省スペース化を図ることができる。
また、実施の形態に係るIH炊飯器1は、自動計量機能を備える。これにより、調理目的、炊飯量、米の銘柄に応じて「最適な水量をお知らせ」し、いつでも美味しいご飯を炊き上げ、お米の特色をより楽しむことができる。具体的には内釜121に収容された被炊飯物の重量を計量する重量センサを備えてもよい。
また、重量センサをIH調理器200側に設けてもよい。これにより、炊飯器部100側のスペースを確保することができる。
また、重量センサをIH調理器200の底面の四隅に設け、四隅の重量センサのセンサ値を平均することで被炊飯物の重量を算出してもよい。これにより、IH炊飯器1の設置場所が傾いている場合でも、四隅の重量センサのセンサ値を平均化することができるため、より計量の精度を向上させることが可能である。
また、IH調理器200から炊飯器部100に非接触給電方式で電力が供給されてもよい。これにより、炊飯器部100には電源コード等を接続する必要がないため、炊飯器部
100を取り外し、御櫃として持ち運ぶのが容易である。
また、内釜121の温度を計測するサーミスタ131を備え、炊飯器部100からIH調理器200に赤外線で内釜121の温度が伝送されてもよい。これにより、赤外線はIHの影響を受けないため、精度よく内釜121の温度を伝送することができる。
また、炊飯器部100の前面に傾斜部を設け、その傾斜部に重量センサにより計量された重量を表示する計量表示部102を設けてもよい。これにより、使用者から計量表示部102が見えやすくなるため、より使い勝手のよいIH炊飯器1を提供することが可能となる。
また、実施の形態に係るIH炊飯器1は、調理目的に応じた炊き分け機能および銘柄炊き分け機能を備える。これにより、調理目的(例えば、おにぎり、丼、カレー等)、米の銘柄や各メニューの炊飯に対し、温度センサ情報から電力と炊飯工程の時間或いは水量範囲を制御し、調理目的に適したご飯や美味しいご飯を炊き上げることができる。
また、本実施の形態に係るIH炊飯器1は、計量機能を備えているが、仮に計量機能を有さないIH炊飯器であっても各炊飯モードに応じて、炊飯する米の合数判定を行う制御を備えておいてもよい。これにより、各炊飯モード(炊き込み、おかゆ等の炊飯態様を含む)や米の合数に応じて、最適な炊き上がりを確保することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、調理目的等に合わせたご飯の食味のバリエーションを炊き分けることのできると共に操作性を向上させた上下分離型のIH炊飯器1を提供することができる。
[炊飯器の重心位置に対する重量検知脚の配置関係]
ところで、調理目的等に合わせたご飯の食味のバリエーションを炊き分けたり、美味しいご飯を炊き上げるためには、お米の合数(重量)に対して最適な水量を投入することが重要である。そのため、重量センサには、検知精度の高いもの(具体的にはグラムオーダーの精度のもの)を用いる必要がある。
実際に炊飯器において水量を正確に調整しようとする場合、いちいち蓋を閉めて重量測定すると時間がかかり、操作性も煩わしくなる。このような場合は、蓋を開けた状態で重量測定することが望ましい。
しかしながら、蓋を開けると、蓋の重量分が上方に移動する。そうすると、炊飯器の重心は、蓋を閉めた状態に比べて上方に移動するため不安定になりやすい。このような動作によるふらつき及び不安定さを抑えるためには、脚を多く備えることが好ましい。特に、ヒンジ側はその影響を受けやすいため、少なくとも脚を2つ備えておくべきである。さらに、炊飯器手前側とヒンジ側の前後方向だけではなく、直交する左右方向のふらつき(不安定さ)も抑えられれば、安定した重量測定が可能となる。
また、重量を検知するためには重量センサを用いるが、以前から脚を重量検知脚として兼用する炊飯器や調理機器などが特許出願されている(例えば、特許第5231591号)。特許第5231591号は、蓋を閉じた状態の重量検知精度の向上と、蓋を開けた状態の安定性の向上とを両立させることを目的にして、炊飯器の重心位置に対する重量検知脚の配置関係を規定したものである。
しかしながら、特許第5231591号は、蓋を閉じて内容物を重量測定するものであり、そもそも安定した状態で重量測定することを前提としている。すなわち、蓋を開けた不安定状態で重量測定することについては何ら考慮されていない。
そこで、本実施の形態は、蓋を開けた状態でもグラムオーダーの高精度な重量測定を達成することが可能な炊飯器を提供する。
(実施技術)
重量検知脚1つで重量測定できれば、コスト面/設計面で理想である。しかし、例えば、設置面に凹凸があり、ちょうどその位置に重量検知脚がある場合は、設置面から重量検知脚が浮いてしまい、重量測定できないことが起こり得る。
また、脚が少なくとも3つあれば、基本的に本体安定性は得られる。しかし、3本脚では、蓋を開ける際や蓋を開けた状態で、炊飯器本体が安定性、特に左右方向に対して弱くなる。なお、そのうちの1つを重量検知脚にしたところで、上記と同様の不具合が発生するため、重量検知脚が2つ以上必要となる。
それら不安定要因をなくすために、脚を4つ以上用いる。そうすることで、3本脚に比べ、前後左右、特に左右方向のふらつき/不安定さを抑えられる。また、そのうち4つを重量検知脚としておけば(特にヒンジ側に少なくとも2つの重量検知脚を備えれば)、蓋開時のふらつき/不安定さを吸収しつつ、仮にある重量検知脚が設置面から離れたとしても残りの重量検知脚で重量測定をカバーできる。これにより、蓋が開いた状態でもグラムオーダーの高精度な重量測定を達成することが可能となる。
(重量測定構成例)
図32は、実施の形態に係るIH炊飯器1の側面図である。蓋ロック機構124(図3参照)によるロックを解除すると、蓋ヒンジ129の回転軸129aを支点として蓋部100Aの前方側が上方向に回動し、略垂直な状態で静止するようになっている。蓋部100Aを開けた状態のIH炊飯器1の重心をGとする。
図33は、図32に示されるIH炊飯器1の底面図である。ここでは、IH炊飯器1の底部の四隅に4つの台座部223を備えた場合を例示している。4つの台座部223の全てに重量センサが取り付けられている。以下の説明では、台座部223を重量検知脚223と呼ぶ。また、4つの重量検知脚223を区別する場合は、重量検知脚223A,223B,223C,223Dと呼ぶ。
図33に示すように、2つの重量検知脚223C,223Dは、重心Gに対して蓋ヒンジ129側で回転軸129a方向に対して両端に位置する。一方、2つの重量検知脚223A,223Bは、重心Gに対して蓋ヒンジ129の反対側で回転軸129a方向に対して両端に位置する。重量検知脚223A,223B,223C,223Dで形成される四角形の2つの仮想対角線をL1,L2とし、2つの仮想対角線L1,L2の交点をPとする。この場合、重心Gは、2つの仮想対角線L1,L2の交点Pより蓋ヒンジ129側にあるのが望ましい。
具体的には、交点Pと重量検知脚223A,223Bとで形成される三角形の領域を「領域E1」とする。領域E1の内側に重心Gがある場合は、米の偏りや水投入による振動の影響を受けやすく、前後方向にふらつきやすくなる。
また、交点Pと重量検知脚223B,223Cとで形成される三角形の領域を「領域E2」とする。領域E2の内側に重心Gがある場合は、蓋部100Aを開ける際や蓋部100Aを開けた状態で左右方向にふらつきやすくなる。
また、交点Pと重量検知脚223D,223Aとで形成される三角形の領域を「領域E4」とする。領域E4の内側に重心Gがある場合も、蓋部100Aを開ける際や蓋部100Aを開けた状態で左右方向にふらつきやすくなる。
最後に、交点Pと重量検知脚223C,223Dとで形成される三角形の領域を「領域E3」とする。領域E3の内側に重心Gがある場合は、重心Gが2つの仮想対角線L1,L2の交点Pより蓋ヒンジ129側にあるため、前後方向にも左右方向にもふらつきにくくなる。
そこで、領域E3の内側に重心Gがくるように各構成部品を配置する。ここでは、重量物である内釜121やIHコイル211などをIH炊飯器1の後方寄りに配置している。これにより、蓋部100Aを開けた状態のIH炊飯器1の重心Gを内釜121の中心Oの直下近傍に配置することができる(図17参照)。ここで、内釜121の中心Oとは、内釜121の体積中心(空間中心)を意味する。
なお、ここでは4つの重量検知脚223を備えた場合を例示したが、5つ以上の重量検知脚223を備えた場合でも同様、2つのヒンジ側重量検知脚を頂点に含む三角形の領域の内側に重心Gがあればよい。2つのヒンジ側重量検知脚とは、重心Gに対して蓋ヒンジ129側で回転軸129a方向に対して両端に位置する重量検知脚である。この場合も、重心Gが仮想対角線の交点より蓋ヒンジ129側にある点は同様であるため、前後方向にも左右方向にもふらつきにくくなる。
(重量測定動作例)
重量測定動作例は、図28〜図30において説明した通りである。すなわち、IH炊飯器1の操作開始に際し、蓋部100Aが開いている状態で重量センサのゼロ点調整を行うようになっている(図14、S71→S73→S74→S75)。また、ゼロ点調整を行った後、蓋部100Aが開いている状態で内釜121に収容された被炊飯物の重量を計量するようになっている(図13BのS16→S18→S20→S24、図13DのS46→S47)。もちろん、蓋部100Aを閉めた状態で重量センサのゼロ点調整を行ったり、内釜121に収容された被炊飯物の重量を計量することができるようにしてもよい。ただし、これらの処理は、蓋部100Aを開けた状態で行った方が時間がかからず操作も簡単である。
すなわち、使用者は、炊飯器部100の前面に設けられた計量表示部102(図2参照)を見ながら、炊飯器部100にセットした内釜121の水量を調整する。例えば、内釜121に水を入れ過ぎた場合は、計量表示部102を見ながら適当な水量になるまで内釜121から水をすくい出す。蓋部100Aが開いた状態でも、前後左右方向のふらつきをなくし、安定して重量を測定することができることは重要である。
(重量センサ回路構成例)
次に、重量センサ回路構成例について説明する。上記の説明では、四隅の重量センサのセンサ値を平均することで被炊飯物の重量を算出することとしているが(図30のS81→S82)、これに限定されるものではない。すなわち、四隅の重量センサのセンサ値の合計で被炊飯物の重量を算出することも可能である。
図34は、実施の形態に係るIH炊飯器1が備える重量センサの回路構成図であり、図35は、図34に示される単一ロードセルの回路構成図である。この重量センサは、図34に示すように、ロードセルSEL1〜SEL4と、差動増幅回路11と、A/Dコンバータ(12bit)12と、CPU13と、RC平滑回路14とを備える。ロードセルSEL1〜SEL4は、図20に示すような単一ロードセルを4個直列に繋いだものである。4個の単一ロードセルのトータルの微小電圧信号が出力されるようになっている。
まず、回路基本動作について説明する。ロードセルSEL1〜SEL4のブリッジ結線から、印加重量(歪み量)に応じた微小電圧信号(アナログ小信号)が出力される。この微小電圧信号を差動増幅回路11で電圧増幅し、増幅させたアナログ電圧信号をA/Dコンバータ12でデジタル信号に変換し、その重畳データをI2C通信によりCPU13に伝達する。
次に、CPU13によるオフセット調整(マイコン制御)について説明する。重量計測の必要範囲は、「空の内釜121を入れた状態(約5kg)」〜「内釜121に3合の米と水を入れた状態(約6kg)」である。そのため、歪ゲージを重量検知脚223に搭載する場合、ゼロgから6kgまで計測させる必要があり、5kg〜6kg範囲の計測精度が低下してしまう。また、差動増幅回路11の出力ゼロV付近では、ノイズ等の影響を受け、計測精度が低下してしまう。
これらの問題を改善するため、CPU13は、「空の内釜121を入れた状態(約5kg)」時に、差動増幅回路11の出力電圧=1V〜1.5Vの範囲になるよう、PWM信号を出力する。工場検査の工程で全数個別調整するようにしている。また、CPU13は、「内釜121に3合の米と水を入れた状態(約6kg)」時に、差動増幅回路11の出力電圧=Vcc−1V程度になるよう、差動増幅回路11のゲインを調整する。これにより、必要計測範囲(5kg〜6kg)の計測精度を確保し、ノイズ等の影響も受けにくい重量センサを実現することができる。
以上のように、実施の形態に係るIH炊飯器1は、着脱自在に内釜121が収容される本体と、本体に開閉可能に設けられた蓋部100Aと、蓋部100Aを開閉させるために本体上部に設けられる回転軸129aを有する蓋ヒンジ129と、本体の底面に設けられる4つ以上の脚とを備え、脚の少なくとも4つが重量を検知するための重量検知脚223であり、4つの重量検知脚223は、蓋部100Aを開けた状態のIH炊飯器1の重心Gに対して、蓋ヒンジ129側で回転軸129a方向に対して両端に位置する2つのヒンジ側重量検知脚223C,223Dと、蓋ヒンジ129の反対側で回転軸129a方向に対して両端に位置する2つの逆ヒンジ側重量検知脚223A,223Bとで構成され、蓋部100Aを開けた状態のIH炊飯器1の重心Gは、2つのヒンジ側重量検知脚223C,223Dと2つの逆ヒンジ側重量検知脚223A,223Bとで形成される2つの仮想対角線L1,L2の交点Pに対して蓋ヒンジ129側に位置し、蓋部100Aを開けた状態で4つの重量検知脚223を用いて重量を測定する。これにより、重量検知脚223が蓋ヒンジ129側に2つあり、重心Gが2つの仮想対角線L1,L2の交点Pより蓋ヒンジ129側にあるため、前後左右方向のふらつきをなくし、安定して重量を測定することができる。
また、蓋部100Aを開けた状態のIH炊飯器1の重心Gは、内釜121の中心の直下近傍に配置されてもよい。これにより、重心Gが内釜121の中心部に配置され、米の偏りや水投入による振動を殆ど受けない。
また、IH炊飯器1の操作開始に際し、蓋部100Aが開いている状態で重量センサのゼロ点調整を行ってもよい。これにより、蓋部100Aが開いている状態で重量センサの経時変化を吸収し、高精度の重量測定を維持することができる。
また、ゼロ点調整を行った後、蓋部100Aが開いている状態で内釜121に収容された被炊飯物の重量を計量してもよい。これにより、蓋部100Aが開いている状態で水量を精確に調整することができるため、いちいち蓋部100Aを閉めて重量測定する必要がなく、操作が簡単である。
なお、ここでは上下分離型のIH炊飯器1を例示して説明したが、上記したような炊飯器の重心位置に対する重量検知脚の配置関係は、上下に分離しない一般的な炊飯器に適用することもできるし、マイコン式の炊飯器に適用することもできる。
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、これに限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、本実施の形態はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。例えば、重量センサをIH調理器200側に設けた場合を例示したが、重量センサは炊飯器部100側に設けることも可能である。また重量センサとして歪ゲージ以外に、圧力センサや他タイプのロードセルなどを用いることもできる。