JP6601938B2 - Iii族窒化物半導体素子の製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物半導体素子の製造方法 Download PDF

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本明細書の技術分野は、HEMT素子や半導体レーザー素子等の素子内部の応力を緩和するIII 族窒化物半導体素子製造方法に関する。
GaNに代表されるIII 族窒化物半導体では、絶縁破壊電界の強度が高く、かつ融点が高い。そのため、III 族窒化物半導体は、GaAs系半導体に代わる、高出力、高周波、高温用の半導体デバイスの材料として期待されている。そのため、III 族窒化物半導体を用いるHEMT素子などが研究開発されている。
例えば、電子走行層としてGaNを用い、電子供給層としてn−AlGaNを用いるHEMT素子が開発されている(特許文献1の段落[0002]および図2等参照)。このHEMT素子は、チャネル層の表面において高いキャリア濃度を有する。また、HEMT素子における電子の移動度も大きい。そのため、高速高周波トランジスタとして鋭意研究開発がなされてきている。特に、III 族窒化物半導体は、シリコンよりもバンドギャップが大きい。そのため、III 族窒化物半導体では、耐圧性が優れており、高温条件での動作が可能である。したがって、III 族窒化物半導体は、シリコンに代わるパワーデバイスとして有望である。
また、非特許文献1では、III 族窒化物半導体を用いた発光素子について種々の成果が記載されている。
特開2003−179082号公報
T. Egawa and O. Oda, "III-Nitride Based Light Emitting Diodes and Applications" (Springer, 2013) Chapter 3.
ところで、GaNの電子移動度の理論値は3000cm2 /Vs程度である。そのため、GaNの電子移動度は、Siの電子移動度よりも大きく、Geの電子移動度と同程度である。さらには、GaNの電子移動度は、InP、InAs、InSbの電子移動度よりも小さい。また、実験で得られるGaNの電子移動度は2000cm2 /Vsにとどまっている。
一方、InNの電子移動度の理論値が14000cm2 /Vsであるとする最近の研究結果がある。これは、In濃度の高いIII 族窒化物半導体層が、高速高周波デバイスのチャネル層として有望であることを示唆している。
InN層については、例えば、分子線エピタキシー(MBE)等により成膜することができる。しかし、MBE法の成膜速度は遅い。したがって、MBE法は、大量生産には向かない。また、InNの格子定数は、GaNの格子定数と比較的大きく異なっている。そのため、格子不整合および熱膨張係数差により、InN層に大きな応力がかかるおそれがある。これにより、半導体層にクラックが生じたり、基板に反りが生じることがある。
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。その課題とは、電子移動度の高いInN層を備えるとともにクラックの発生および反りの発生の抑制を図ったIII 族窒化物半導体素子製造方法を提供することである。
第1の態様におけるIII 族窒化物半導体素子の製造方法は、基板にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、バッファ層の上にGaN層を形成するGaN層形成工程と、GaN層の上にInN層を形成するInN層形成工程と、InN層の上にInAlN層を形成するInAlN層形成工程と、を有する。この製造方法では、炉本体と第1電極とを有する製造装置を用い、第1電極と炉本体との間で放電させて第1電極の直下にプラズマ発生領域を形成する。InN層形成工程では、窒素ガスを含有する窒素含有ガスをプラズマ発生領域でプラズマ化してそのプラズマ化した窒素含有ガスを基板に供給するとともに、III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで基板に供給する。そして、膜厚が1nm以上5nm以下のInN層を形成する。InAlN層形成工程では、窒素ガスを含有する窒素含有ガスをプラズマ発生領域でプラズマ化してそのプラズマ化した窒素含有ガスを基板に供給するとともに、III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで基板に供給する。そして、GaN層のa軸の格子定数とInAlN層のa軸の格子定数との差の絶対値がGaN層のa軸の格子定数の3%以下であるInAlN層を形成する。また、InN層をGaN層とInAlN層とで挟む。
このプラズマを用いる方法により製造されたIII 族窒化物半導体素子は、電子移動度の高いInN層を有している。このInN層は、十分に薄い。また、InN層を挟んでいるGaN層の格子定数とInAlN層の格子定数とがほとんど等しい。そのため、GaN層およびInAlN層の格子定数差に起因する応力はほとんど生じない。このように、電子移動度が高く、応力の緩和されたIII 族窒化物半導体素子の製造方法が実現されている。
本明細書では、電子移動度の高いInN層を備えるとともにクラックの発生および反りの発生の抑制を図ったIII 族窒化物半導体素子製造方法が提供されている。
実施形態における第1の積層体を示す概略構成図である。 第1の実施形態におけるHEMT素子を示す概略構成図である。 実施形態における製造装置の概略構成を示す図である。 第1の実施形態の変形例におけるHEMT素子を示す概略構成図(その1)である。 第1の実施形態の変形例におけるHEMT素子を示す概略構成図(その2)である。 第1の実施形態の変形例におけるHEMT素子を示す概略構成図(その3)である。 第2の実施形態における半導体発光素子を示す概略構成図である。
以下、具体的な実施形態について、III 族窒化物半導体素子とその製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。なお、図面中の各層の厚みの比率は、実際の比率を反映したものではない。
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態のIII 族窒化物半導体素子は、III 族窒化物層を有する。
1.積層体
1−1.第1の積層体
図1は、第1の積層体100を示す概略構成図である。第1の積層体100は、III 族窒化物層を積層したものである。第1の積層体100は、後述するように、HEMT素子等に応用できる構造体である。図1に示すように、第1の積層体100は、基板110と、バッファ層120と、第1のIII 族窒化物層130と、第2のIII 族窒化物層140と、第3のIII 族窒化物層150と、を有する。
基板110は、例えばSi基板である。または、サファイア基板、SiC基板、ZnSe基板、ZnO基板等その他の基板を用いてもよい。バッファ層120は、基板110の上に形成されている。バッファ層120は、例えば、AlNまたはGaNである。
第1のIII 族窒化物層130は、バッファ層120の上に形成されている。第1のIII 族窒化物層130は、GaN層である。第2のIII 族窒化物層140は、第1のIII 族窒化物層130の上に形成されている。第2のIII 族窒化物層140は、InN層である。第2のIII 族窒化物層140は、結晶質もしくは非晶質である。第3のIII 族窒化物層150は、第2のIII 族窒化物層140の上に形成されている。第3のIII 族窒化物層150は、InAlN層である。
1−2.第1の積層体の格子整合
第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数と第3のIII 族窒化物層150のa軸の格子定数との差の絶対値が第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数の3%以下である。より好ましくは、第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数と第3のIII 族窒化物層150のa軸の格子定数との差の絶対値が第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数の1%以下である。ここで、第1のIII 族窒化物層130(GaN)におけるa軸の格子定数は、3.18Åである。
つまり、第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数と第3のIII 族窒化物層150のa軸の格子定数とは、次式を満たす。
0 ≦ |L1a−L3a|/L1a ≦ 0.03
L1a:第1のIII 族窒化物層130のa軸の格子定数
L3a:第3のIII 族窒化物層150のa軸の格子定数
より好ましくは、次式を満たす。
0 ≦ |L1a−L3a|/L1a ≦ 0.01
このように、第3のIII 族窒化物層150におけるInAlN層のAl組成比およびIn組成比を好適に選択すれば、第1のIII 族窒化物層130の格子定数と第3のIII 族窒化物層150の格子定数とをほとんど等しくすることができる。その結果、第1のIII 族窒化物層130と第3のIII 族窒化物層150とは、格子整合している。例えば、InX Al(1-X) N層のIn組成比Xを0.18とした場合には、InX Al(1-X) N層のa軸の格子定数とGaN層の格子定数とは等しい。
1−3.第1の積層体の効果
ここで、第2のIII 族窒化物層140の膜厚は、1nm以上20nm以下の範囲内である。好ましくは、第2のIII 族窒化物層140の膜厚は、1nm以上5nm以下の範囲内である。このように、第2のIII 族窒化物層140の膜厚は、非常に薄い。したがって、第1のIII 族窒化物層130と第3のIII 族窒化物層150との間に発生する応力は非常に小さい。第1のIII 族窒化物層130と第3のIII 族窒化物層150とで格子定数がほとんど同じであり、これらの間に位置する第2のIII 族窒化物層140が十分に薄いためである。第2のIII 族窒化物層140の膜厚は、数原子層から数十原子層の間である。そして、薄い第2のIII 族窒化物層140は、ある程度変形すると考えられる。そして、第1のIII 族窒化物層130と第2のIII 族窒化物層140との間に発生する応力および第2のIII 族窒化物層140と第3のIII 族窒化物層150との間に発生する応力は、緩和する。なお、第2のIII 族窒化物層140は、このように薄くても十分に機能する。
2.HEMT素子
2−1.HEMT素子の構造
図2は、本実施形態のHEMT素子200を示す概略構成図である。HEMT素子200は、高電子移動度トランジスタである。HEMT素子200は、第1の積層体100の積層構造を有している。図2に示すように、HEMT素子200は、基板110と、バッファ層120と、下地層230と、チャネル層240と、バリア層250と、ソース電極S1と、ゲート電極G1と、ドレイン電極D1と、を有している。
ここで、下地層230は、第1のIII 族窒化物層130である。そのため、下地層230は、GaN層である。チャネル層240は、第2のIII 族窒化物層140である。そのため、チャネル層240は、InN層である。バリア層250は、第3のIII 族窒化物層150である。そのため、バリア層250は、InAlN層である。また、下地層230に、炭素等をドープして高抵抗層としてもよい。
ソース電極S1とドレイン電極D1とゲート電極G1とは、バリア層250の上に形成されている。また、図2には、二次元電子ガス領域241が示されている。
2−2.HEMT素子の効果
このように、バリア層250のa軸の格子定数は、下地層230のa軸の格子定数とほとんど同じである。また、下地層230とバリア層250との間のチャネル層240の膜厚は、十分に薄い。したがって、チャネル層240およびバリア層250では、格子定数差に起因する応力がほとんど発生しない。
3.III 族窒化物半導体素子の製造装置
3−1.製造装置の構成
図3は、本実施形態におけるIII 族窒化物半導体素子の製造装置1000の概略構成図である。製造装置1000は、窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して、そのプラズマ化したプラズマ生成物を成長基板に供給するとともに、III 族金属を含む有機金属ガスをプラズマ化しないで成長基板に供給する装置である。
製造装置1000は、炉本体1001と、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200と、加熱器1210と、第1のガス供給管1300と、ガス導入室1410と、第2のガス供給管1420と、金属メッシュ1500と、RF電源1600と、マッチングボックス1610と、第1のガス供給部1710と、第2のガス供給部1810と、ガス容器1910、1920、1930と、恒温槽1911、1921、1931と、マスフローコントローラー1720、1820、1830、1840と、を有している。また、製造装置1000は、排気口(図示せず)を有している。
シャワーヘッド電極1100は、周期的な電位を付与される第1の電極である。シャワーヘッド電極1100は、例えば、ステンレス製である。もちろん、これ以外の金属であってもよい。シャワーヘッド電極1100は、平板形状の電極である。そして、シャワーヘッド電極1100には、表面から裏面に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。そして、これらの複数の貫通孔は、ガス導入室1410および第2のガス供給管1420と連通している。このため、ガス導入室1410から炉本体1001の内部に供給される第2のガスは、好適にプラズマ化される。RF電源1600は、シャワーヘッド電極1100に高周波電位を付与する電位付与部である。
サセプター1200は、基板110を支持するための基板支持部である。サセプター1200の材質は、例えば、グラファイトである。また、これ以外の導電体であってもよい。ここで、基板110は、III 族窒化物半導体を成長させるための成長基板である。
第1のガス供給管1300は、サセプター1200に第1のガスを供給するためのものである。実際には、サセプター1200に支持された基板110に第1のガスを供給することとなる。ここで、第1のガスとは、III 族金属を含む有機金属ガスである。また、その他のキャリアガスを含んでいてもよい。第1のガス供給管1300は、リング状のリング部1310を有している。そして、第1のガス供給管1300のリング部1310には、12個の貫通孔(図示せず)がリング部1310の内側に設けられている。これらの貫通孔は、第1のガスが噴出する噴出口である。そのため、第1のガスは、リング部1310の内側に向けて、噴出することとなる。第1のガス供給管1300は、後述するように、プラズマ発生領域から離れた位置に位置している。
第2のガス供給管1420は、サセプター1200に第2のガスを供給するためのものである。実際には、第2のガスをガス導入室1410および炉本体1001の内部に導入するとともに、サセプター1200に支持された基板110に第2のガスを供給することとなる。そして、第2のガス供給管1420は、第2のガスを炉本体1001の内部に供給する。ここで、第2のガス供給管1420が供給する第2のガスは、少なくとも窒素ガスを含むガスである。第2のガス供給管1420は、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを第2のガスとして供給するとよい。ガス導入室1410は、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを一旦収容するとともに、シャワーヘッド電極1100の貫通孔にこの混合ガスを供給するためのものである。
金属メッシュ1500は、荷電粒子を捕獲するためのものである。金属メッシュ1500は、例えば、ステンレス製である。もちろん、これ以外の金属であってもよい。金属メッシュ1500は、シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の位置に配置されている。そのため、後述するようにプラズマ発生領域で発生した荷電粒子が、サセプター1200に支持されている成長基板110に向かうのを抑制することができる。また、金属メッシュ1500は、シャワーヘッド電極と第1のガス供給管1300のリング部1310との間の位置に配置されている。そのため、荷電粒子が、第1のガス供給管1300から噴出されるIII 族金属を含む有機金属分子に衝突するのを抑制することができる。また、金属メッシュ1500は、多数枚をずらして配置されている。つまり、第1のメッシュの開口部の位置に第2のメッシュの線状部を配置している。そのため、直線的に進行する光は、金属メッシュ1500を透過できない。つまり、金属メッシュ1500は、電子、イオン、光を通過させないが、中性のラジカルを通過させる。
炉本体1001は、少なくとも、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200と、第1のガス供給管1300のリング部1310と、金属メッシュ1500と、を内部に収容している。炉本体1001は、例えば、ステンレス製である。炉本体1001は、上記以外の導電体であってもよい。
炉本体1001と、金属メッシュ1500と、第1のガス供給管1300とは、導電性の部材であり、いずれも接地されている。そのため、シャワーヘッド電極1100に電位が付与されると、シャワーヘッド電極1100と、炉本体1001および金属メッシュ1500および第1のガス供給管1300と、の間に電圧が印加されることとなる。そして、炉本体1001および金属メッシュ1500および第1のガス供給管1300の少なくとも1つ以上と、シャワーヘッド電極1100と、の間に放電が生じると考えられる。シャワーヘッド電極1100の直下では、高周波かつ高強度の電界が形成される。そのため、シャワーヘッド電極1100の直下の位置は、プラズマ発生領域である。
ここで、第2のガス、すなわち、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスは、このプラズマ発生領域においてプラズマ化されることとなる。そして、プラズマ発生領域でプラズマ生成物が発生する。この場合におけるプラズマ生成物とは、窒素ラジカルと、水素ラジカルと、窒化水素系の化合物と、電子と、その他のイオン等である。ここで、窒化水素系の化合物とは、NHと、NH2 と、NH3 と、これらの励起状態と、その他のものとを含む。
また、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200とは、十分に離れている。シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200との間の距離は、40mm以上200mm以下である。より好ましくは、40mm以上150mm以下である。シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が短いと、プラズマ発生領域がサセプター1200の箇所にまで広がるおそれがある。シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が40mm以上であれば、プラズマ発生領域がサセプター1200の箇所にまで広がるおそれがほとんどない。そのため、荷電粒子が基板110に到達することを抑制できる。また、シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が大きいと、窒素ラジカルや、窒化水素系の化合物等が、サセプター1200の保持する基板110に到達しにくくなるからである。なお、これらの距離は、プラズマ発生領域の大きさと、その他のプラズマ条件にも依存する。
シャワーヘッド電極1100は、サセプター1200からみて第1のガス供給管1300のリング部1310の貫通孔よりも遠い位置に配置されている。シャワーヘッド電極1100と、第1のガス供給管1300のリング部1310の貫通孔との間の距離は、30mm以上190mm以下である。より好ましくは、30mm以上140mm以下である。荷電粒子が、第1のガスに混入することを抑制するとともに、窒素ラジカルや、窒化水素系の化合物等が、第1のガスに混入しやすくするためである。このため、プラズマ化された第2のガスと、プラズマ化されない第1のガスとにより、基板110に半導体層が積層されることとなる。なお、これらの距離は、プラズマ発生領域の大きさと、その他のプラズマ条件にも依存する。
加熱器1210は、サセプター1200を介して、サセプター1200に支持される基板110を加熱するためのものである。
マスフローコントローラー1720、1820、1830、1840は、各々のガスの流量を制御するためのものである。恒温槽1911、1921、1931には、不凍液1912、1922、1932が満たされている。また、ガス容器1910、1920、1930は、III 族金属を含む有機金属ガスを収容するための容器である。ガス容器1910、1920、1930には、それぞれ、トリメチルガリウムと、トリメチルインジウムと、トリメチルアルミニウムとが、収容されている。もちろん、トリエチルガリウム等、その他のIII 族金属を含む有機金属ガスであってもよい。
3−2.製造装置の製造条件
製造装置1000における製造条件を表1に示す。表1で挙げた数値範囲は、あくまで目安であり、必ずしもこの数値範囲である必要はない。RFパワーは、100W以上1000W以下の範囲内である。RF電源1600がシャワーヘッド電極1100に付与する周期的な電位の周波数は、30MHz以上300MHz以下の範囲内である。基板温度は、室温以上900℃以下の範囲内である。製造装置1000の内圧は、1Pa以上10000Pa以下の範囲内である。
[表1]
RFパワー 100W以上 1000W以下
周波数 30MHz以上 300MHz以下
基板温度 室温以上 900℃以下
内圧 1Pa以上 10000Pa以下
3−3.製造装置の効果
この製造装置1000は、REMOCVD法を適用する装置である。製造装置1000では、第2のガスをプラズマ化するとともに、第1のガスをプラズマ化しないで基板110に供給する。そのため、従来のMOCVD法に比べて、低い温度で半導体層を成長させることができる。例えば、基板温度を100℃以上800℃以下として成膜することができる。その結果、InNなどの高いIn組成をもつ半導体層を比較的速い成長速度で成長させることができる。また、MOCVD炉のように大量のアンモニアを用いる必要がない。そのため、大規模な除害装置を設ける必要がない。そのため、この製造装置1000の製造コストおよびランニングコストは、従来の装置よりも低い。
4.III 族窒化物半導体素子の製造方法
4−1.基板のクリーニング
ここで、本実施形態の製造装置1000を用いたHEMT素子200の製造方法について説明する。まず、基板110を準備する。基板110を、製造装置1000の内部に配置し、水素ガスを供給しながら基板温度を900℃程度まで上昇させる。これにより、基板110の表面を還元するとともに、基板110の表面をクリーニングする。基板温度については、より高い温度にしてもよい。
4−2.III 族窒化物層形成工程
このIII 族窒化物層形成工程では、III 族窒化物層を形成する。III 族窒化物層形成工程は、基板110にバッファ層120を形成するバッファ層形成工程と、バッファ層120に第1のIII 族窒化物層130を形成する第1のIII 族窒化物層形成工程と、第1のIII 族窒化物層130の上に第2のIII 族窒化物層140を形成する第2のIII 族窒化物層形成工程と、第2のIII 族窒化物層140の上に第3のIII 族窒化物層150を形成する第3のIII 族窒化物層形成工程と、を有する。
4−2−1.バッファ層形成工程
RF電源1610をONにする。そして、第2のガス供給管1420から、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを供給する。そして、シャワーヘッド電極1100の貫通孔から炉本体1001の内部に供給された混合ガスは、シャワーヘッド電極1100の直下でプラズマ化する。そのため、シャワーヘッド電極1100の直下にプラズマ発生領域が生成される。この際に、窒素ラジカルと水素ラジカルとが生成される。そして、窒素ラジカルと水素ラジカルとが反応して、窒化水素系の化合物が生成されると考えられる。また、電子やその他の荷電粒子も生成される。
そして、これらの窒素ラジカルと水素ラジカルと窒化水素系の化合物と電子とその他の荷電粒子を含んだラジカル混合気体は、基板110に向けて送出される。このラジカル混合ガスの発生箇所は、シャワーヘッド電極1100の直下である。シャワーヘッド電極1100から基板110までの距離は十分に広いため、ラジカル混合気体のうち、電子やイオン等の荷電粒子は、基板110まで到達しにくい。また、荷電粒子は、金属メッシュ1500に捕獲されやすい。そのため、基板110に向けて供給されるのは、窒素ラジカルと水素ラジカルの他、窒化水素系の化合物であると考えられる。これらの窒素ラジカルや窒化水素系の化合物は、通常のアンモニアに比べて、反応性が高い。そのため、従来に比べて低い温度で半導体層をエピタキシャル成長させることができる。
一方、第1のガス供給管1300のリング部1310から、III 族金属の有機金属ガスを供給する。例えば、トリメチルガリウムと、トリメチルインジウムと、トリメチルアルミニウムとが、挙げられる。これらのガスは、基板110に向かうラジカル混合気体に巻き込まれて、基板110に供給されることとなる。III 族金属の有機金属ガスは、プラズマ化されないで、基板110に供給される。これにより、基板110の上にバッファ層120を形成する。
4−2−2.第1のIII 族窒化物層形成工程
第1のIII 族窒化物層形成工程では、窒素ガスと水素ガスとを含有する混合ガス(窒素含有ガス)をプラズマ化して、そのプラズマ化した混合ガスを基板110に供給するとともに、III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで基板110に供給する。これにより、バッファ層120の上に下地層230を形成する。
4−2−3.第2のIII 族窒化物層形成工程
第2のIII 族窒化物層形成工程では、窒素ガスと水素ガスとを含有する混合ガス(窒素含有ガス)をプラズマ化して、そのプラズマ化した混合ガスを基板110に供給するとともに、III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで基板110に供給する。これにより、下地層230の上にチャネル層240を形成する。
ここで、前述したように、半導体層を成膜するにあたって、REMOCVD法を適用した製造装置1000を用いる。製造装置1000では、窒素含有ガスをプラズマ化してIII 族元素を含有する有機金属ガスをプラズマ化しない。そのため、低い温度で成膜することができる。その結果、InN層を好適に成膜することができる。このチャネル層240の膜厚を、1nm以上20nm以下で形成する。好ましくは、チャネル層240の膜厚は、1nm以上5nm以下である。
4−2−4.第3のIII 族窒化物層形成工程
第3のIII 族窒化物層形成工程では、窒素ガスと水素ガスとを含有する混合ガス(窒素含有ガス)をプラズマ化して、そのプラズマ化した混合ガスを基板110に供給するとともに、III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで基板110に供給する。これにより、チャネル層240の上にバリア層250を形成する。
ここで、下地層230のa軸の格子定数とバリア層250のa軸の格子定数との差が、下地層230のa軸の格子定数の3%以下となるように、バリア層250を形成する。そのために、バリア層250のIn組成比を所望の値となるように、原料ガスを供給すればよい。
このようにして、基板110の上に、バッファ層120と、第1のIII 族窒化物層130(下地層230)と、第2のIII 族窒化物層140(チャネル層240)と、第3のIII 族窒化物層150(バリア層250)と、を形成する。上記の各半導体層を形成するために、適宜原料ガスを切り替えればよい。
4−3.電極形成工程
次に、バリア層250の上に、ソース電極S1と、ドレイン電極D1と、ゲート電極G1と、を形成する。
4−4.素子分離工程
次に、ウエハ状の基板110を分割して、複数のHEMT素子200に切り出す。もしくは、基板110から余剰な部分を除去する。そのためには、レーザー装置や、ブレーキング装置等を用いればよい。
4−5.その他工程
また、上記の他に、熱処理工程と、保護膜形成工程と、その他の工程と、を実施してもよい。以上により、本実施形態のHEMT素子200が製造される。
5.HEMT素子の効果
本実施形態のHEMT素子200は、InN層から成るチャネル層240を有する。そのため、HEMT素子200は、高速高周波で動作することができる。また、下地層230とバリア層250とで格子定数がほとんど同じであるため、格子定数差に起因する応力がほとんど発生しない。そのため、クラックや反りがほとんど発生しない。
6.変形例
6−1.第2のIII 族窒化物層
第2のIII 族窒化物層140は、InN層である。しかし、第2のIII 族窒化物層140として、InY Ga(1-Y) N層(0.7≦Y≦1)を用いてもよい。In組成比Yが十分に大きいので、電子移動度が十分に大きいからである。
6−2.下地層
下地層230は、GaN層である。しかし、下地層230として、GaN層の代わりにInGaN層もしくはAlGaN層を用いてもよい。または、AlInGaN層を用いてもよい。その場合であっても、In組成比を選ぶことにより、下地層230に対応する格子定数を備えるバリア層250(InAlN層)を形成することができる。
6−3.MOS型HEMT(MIS型HEMT)
図4に示すように、MOS型HEMT300についても第1の実施形態の技術を適用することができる。MOS型HEMT300は、基板110と、バッファ層120と、下地層230(第1のIII 族窒化物層130)と、チャネル層240(第2のIII 族窒化物層140)と、バリア層250(第3のIII 族窒化物層150)と、絶縁膜I2と、ソース電極S2と、ゲート電極G2と、ドレイン電極D2と、を有している。絶縁膜I2は、バリア層250とゲート電極G2とを絶縁している。絶縁膜I2は、酸化物である。もしくは、絶縁膜I2は、それ以外の絶縁体であってもよい。このように、III 族窒化物半導体素子は、MOS型HEMT素子またはMIS型HEMT素子であってもよい。
6−4.合金散乱防止層
図5に示すように、HEMT400は、合金散乱防止層460を有していてもよい。合金散乱防止層460は、1層以上のIII 族窒化物半導体を備える半導体層である。合金散乱防止層460は、チャネル層240とバリア層250との間に位置する層である。合金散乱防止層460は、バリア層250よりもバンドギャップの大きい層である。
6−5.絶縁層
図6に示すように、絶縁層I3がバリア層550を分割するように絶縁層I3を配置してもよい。HEMT素子500では、絶縁層I3が、バリア層550を貫通してチャネル層240に接している。
6−6.組み合わせ
上記の変形例について、自由に組み合わせてもよい。
7.本実施形態のまとめ
本実施形態のHEMT素子200は、InN層から成るチャネル層240を有する。そのため、HEMT素子200は、高速高周波で動作することができる。また、下地層230とバリア層250とで格子定数がほとんど同じであるため、格子定数差に起因する応力がほとんど発生しない。そのため、クラックや反りがほとんど発生しない。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態のIII 族窒化物半導体素子は、III 族窒化物層を有する。
1.半導体発光素子
1−1.半導体発光素子の構造
図7は、本実施形態の半導体発光素子600の概略構成を示す図である。図7に示すように、半導体発光素子600は、基板110と、バッファ層120と、n型コンタクト層630と、発光層640と、p型クラッド層650と、p型コンタクト層660と、を有する。
n型コンタクト層630は、第1のIII 族窒化物層130である。n型コンタクト層630の材質は、n型GaNである。発光層640は、第2のIII 族窒化物層140である。発光層640の材質は、InNである。p型クラッド層650は、第3のIII 族窒化物層150である。p型クラッド層650の材質は、InAlNである。
2.半導体発光素子の製造方法
半導体発光素子600の製造方法について説明する。半導体発光素子600の製造方法は、バッファ層形成工程と、第1のIII 族窒化物層形成工程と、第2のIII 族窒化物層形成工程と、第3のIII 族窒化物層形成工程と、電極形成工程と、を有する。第1のIII 族窒化物層形成工程と、第2のIII 族窒化物層形成工程と、第3のIII 族窒化物層形成工程とにおいては、第1の実施形態で説明したIII 族窒化物半導体素子の製造装置1000を用いる。
まず、基板110をクリーニングする。次に、基板110の上にバッファ層120を形成する。次に、バッファ層120の上にn型コンタクト層630(第1のIII 族窒化物層130)を形成する。次に、n型コンタクト層630の上に発光層640(第2のIII 族窒化物層140)を形成する。次に、発光層640の上にp型クラッド層650(第3のIII 族窒化物層150)を形成する。そして、p型クラッド層650の上にp型コンタクト層660を形成する。
次に、p型コンタクト層660からn型コンタクト層630に達する凹部を形成する。そして、その凹部に露出するn型コンタクト層630の上にn電極N1を形成する。また、p型コンタクト層660の上にp電極P1を形成する。そして、素子の分離等を実施する。
3.変形例
3−1.半導体レーザー素子
本実施形態のIII 族窒化物半導体素子は、半導体発光素子である。また、本実施形態の技術を半導体レーザー素子にも適用することができる。半導体レーザー素子である。ここで、III 族窒化物半導体素子は、半導体発光素子であってもよい。
3−2.製造装置
In濃度がそれほど高くない半導体層については、図3の製造装置1000以外の装置を用いることができる。例えば、従来のMOCVD炉である。
100…第1の積層体
110…基板
120…バッファ層
130…第1のIII 族窒化物層
140…第2のIII 族窒化物層
150…第3のIII 族窒化物層
200、300、400、500…HEMT
G1、G2、G3…ゲート電極
S1、S2、S3…ソース電極
D1、D2、D3…ドレイン電極
I2、I3…絶縁膜
600…半導体発光素子
1000…製造装置
1001…炉本体
1100…シャワーヘッド電極
1200…サセプター
1300…第1のガス供給管
1420…第2のガス供給管
1600…RF電源

Claims (1)

  1. III 族窒化物半導体素子の製造方法において、
    基板にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、
    前記バッファ層の上にGaN層を形成するGaN層形成工程と、
    前記GaN層の上にInN層を形成するInN層形成工程と、
    前記InN層の上にInAlN層を形成するInAlN層形成工程と、
    を有し、
    炉本体と第1電極とを有する製造装置を用い、
    前記第1電極と前記炉本体との間で放電させて前記第1電極の直下にプラズマ発生領域を形成し、
    前記InN層形成工程では、
    窒素ガスを含有する窒素含有ガスを前記プラズマ発生領域でプラズマ化してそのプラズマ化した前記窒素含有ガスを前記基板に供給するとともに、
    III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで前記基板に供給して、
    膜厚が1nm以上5nm以下のInN層を形成し、
    前記InAlN層形成工程では、
    窒素ガスを含有する窒素含有ガスを前記プラズマ発生領域でプラズマ化してそのプラズマ化した前記窒素含有ガスを前記基板に供給するとともに、
    III 族金属を含有する有機金属ガスをプラズマ化しないで前記基板に供給して、
    前記GaN層のa軸の格子定数と前記InAlN層のa軸の格子定数との差の絶対値が前記GaN層のa軸の格子定数の3%以下である前記InAlN層を形成し、
    前記InN層を前記GaN層と前記InAlN層とで挟むこと
    を特徴とするIII 族窒化物半導体素子の製造方法。
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