JP6601008B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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本発明は、電界の印加により発光を生じる有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、発光の高効率化を目的とした有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)及び薄膜太陽電池のような光電子デバイスの機能においては、光管理が非常に重要な項目であり、デバイスの効率に大きな影響を与える。
有機EL素子では、放射された光の約80%が種々の界面(例:基板-周囲媒体界面、層界面、陰極層界面など)で失われる。有機EL素子の基板の層内にトラップされた光は、一般に、光トラッピングの導波モードとして知られている。
同様に、陰極層の表面にトラップされる光は、一般に、表面プラズモンとして知られている。有機EL素子の効率を向上させるために、これらのモードによってトラップされた光を取り出す必要がある。
例えば、光路を変化させて導波モードでの取り出しを可能にするために、内部又は外部光取り出し構造が使用可能である。一例として、ガラス基板と陽極間に光拡散構造を導入した例では、前述の約80%の失われた光の10数%を回収するに止まるとされている。
表面プラズモンについては、前述の約80%のうち約50%に相当するとされ、この光取り出し損失分の回収は大幅な効率向上へと繋がるが、この約50%を回収する理論や手法について様々な文献にて散見されるが実用的な構造及び手法については疑問が残る。
特許文献1において、表面プラズモン低減による発光の増強が確認されているが、その効果をもたらす構造へと加工するプロセスが煩雑であり、量産に適していない。
また、特許文献2の有機EL素子では、配置された微粒子表面において印加時にショートする懸念がある。
特許第5283206号公報 特許第5312146号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、生産プロセスの適用可能な簡便な方法で、積層された微粒子表面での絶縁不良等の品質事故の懸念の無い安定した生産が可能で高発光効率を実現できる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明基板上に、少なくとも陽極、発光層、陰極を順次積層したエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、発光材料中に配向性分子を含有しており、前記発光層表面に前記配向分子起因の凹凸形状を具備しており、前記配向性分子の含有率が発光材料に対して5〜10%であり、前記発光材料がペリレン系蛍光体であり、前記配向性分子がチアジアゾール誘導体であり、前記配向性分子が液晶性を有し、液晶状態のまま前記発光層中に含有されており、前記発光層表面の凹凸形状のRzが、33.4nm以上66.0nm以下の範囲内であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
また、請求項2に記載の発明は前記配向性分子が2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
また、請求項3に記載の発明は、前記発光材料がペリレンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
また、請求項4に記載の発明は、前記陰極が、前記発光層表面に形成された微細な凹凸形状に追随した形状で成膜されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子である。
本発明の有機EL素子は、発光領域の内部および表面に配向性分子を備えることにより、配向状態からなる微細な凹凸形状を形成でき、容易に、表面プラズモンを低減できるため、従来の様な煩雑なプロセスを必要とせず、生産プロセスが簡便で、絶縁不良等の品質事故の懸念が無く、安定して高発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子の層構成を示した断面概念図である。 本発明の有機EL素子における発光層(発光領域)を詳細に説明した断面概念図である。
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1に本発明の有機EL素子の構成を説明した断面図であり、有機EL素子1は、透光性基板10上に、陽極11、発光層(発光領域)2、陰極14を備えた有機EL素子であり、発光層(発光領域)2は、発光材料12と配向性分子13から成っている。
図2は、本発明の有機EL素子における発光層(発光領域)2を示しており、表面プラズモンを低減すべく、発光材料2中に均一分散されており、発光層の表面には、配向性分子13起因の、微細な凹凸形状3を形成している。尚、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー層、発光層、電子輸送層、電子注入層は必要に応じて適宜選択される。
透光性基板10としては特に制限なく、ガラス、石英、ポリマー等の可撓性基板を用いることができる。
発光材料12は、有機EL素子の発光層2として適用可能なものであれば特に制限ない。有機EL素子1は、陽極11、陰極14から注入された正孔、電子がこの領域で再結合することにより、発光する。
配向性分子13は、表面プラズモンを低減すべく、発光材料12中に均一に分散されており、発光層(発光領域)12を形成している。
配向性分子13は、表面プラズモンを低減すべく領域に配置されていれば、その配置される場所は内部であっても表面であっても特に制限されない。発光材料12に含有させる配向性分子13は含有率が多すぎると、分子内における濃度消光により発光効率が低下することになり、効果的な発光増強効果を得ることができないため、発光材料12に対する配向性分子13の含有率は5〜10%以内であることが望ましい。
また、配向性分子13を含有する発光材料12は成膜により、発光層2を形成し、加熱処理により配向性分子13が発光層2の内部または表面にて液晶状態、いわゆる配向した状態となり配向性分子13は発光層2表面に微細な凹凸形状をもたらす。
結果として、発光層2表面に形成された微細な凹凸形状に、追随した形状で陰極14が成膜され、発光層2と陰極14の間で発生する表面プラズモンは低減されることになり、発光効率が向上することとなる。
以下に、本実施形態の有機EL素子1の製造方法を説明する。
<陽極11>
透明基板10としてガラスを用い、表面に蒸着により、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物や金、白金、クロムといった材料からなる陽極11を形成する。厚み100nmとしたが、あくまでも一例でありこの値に限定しない。
<発光材料2>
次いで、発光層2の形成する有機発光材料2としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート) 亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート) アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラートシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光対等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3)ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF) などの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、これら高分子材料に前記低分子発光材料の分散又は共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることもできる。
<溶媒>
有機発光材料2を溶解する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。
<添加剤>
また、有機発光材料を溶解した溶媒、即ち有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
<配向性分子13>
この時、有機発光材料に対し、配向性分子13を5〜10%混合させることで有機発光インキとする。ここで用いられる配向性分子13のとしては、フルオレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チオフェン誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体といった分子が選択される。
<湿式成膜法>
調液された有機発光インキは、湿式成膜法により発光層2として形成される。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。
発光層2を形成する際には溶媒を除去する必要があり、加熱乾燥を行う。この際の温度としては、用いた溶媒の沸点以上、かつ配向性分子13の液晶相転移温度以上である必要がある。
<陰極14>
陰極14の材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、Al、Yb等の金属単体を用いる他、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
陰極14の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。厚さは10nm〜1μm程度が望ましい。
この有機EL素子は両電極間に発光材料12が挟みこまれた部位に対し電流を流すことで発光させることとなるが、発光層2や電極の一部は大気中の水分や酸素によって容易に
劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける必要がある。
<封止体>
封止体は、例えば陽極11、発光層12、陰極14が形成された基板に対して、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラスの封止材15を用い、封止材15と有機EL素子を、水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて貼り合わせることにより形成される。
このとき貼り合せの際には接着部位に対し、接着剤16を介して貼り合せが行われ、この接着剤16ディスペンサーにより一般に5〜10μmの厚みで塗布される。
<接着剤16>
また、ここで用いた接着剤16の種類としては多くエポキシ樹脂が用いられ具体的にはビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンからなるプレポリマーといったエポキシ樹脂、その他にもアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、エチレンエチルアクリレートポリマー等といったアクリル樹脂やシリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂並びに熱硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを使用することができる。
また、ここで接着剤16を凝固させる手段としては、エポキシ樹脂プレポリマーの(接着剤16)塗布部位以外にマスクを施し紫外光365nmをマスク非被覆部に1分から2分程度照射し、接着剤16を重合させることで封止体を完成させることが出来る。
ここでは一例として光硬化型接着性樹脂を用いた封止手順を記載したが本特許はこれに限るものではない。
以上により、封止材15よって接着剤16を介して封止をおこない、水分や酸素による発光層12や陰極14の劣化を防止し、有機EL素子1となる。
ガラス基板10上に蒸着により、ITOからなる陽極11を形成した。次いで、発光材料であるペリレンに対し配向性分子である2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールを5%混合したものをメチルエチルケトンにて溶解させ有機発光インキとし、スピンコート法により陽極11上に塗布し、溶媒を除去させることおよび配向性分子を液晶状態へと配向させる目的で100℃で10分間ホットプレート上にて乾燥を行った。
続いて、原子間力顕微鏡(AFM)により有機層表面を観察したところ、微細な凹凸形状が観察された。また、この凹凸形状をX線回折(XRD)により観察したところ、配向性分子の分子長相当の配列パターンが確認できたことから、配向性分子が配向していることが確認できた。
次に、陰極14として真空蒸着法でAlを200nm成膜した。その後、大気暴露することなく露点−80度、酸素濃度1ppmの窒素下で、いわゆる不活性ガス環境下で光硬化型接着剤16をディスペンサーにて10μmの厚さで塗布し無アルカリガラス製の封止材15を張り付け、塗布部に365nmの紫外光を1分間接着部位に照射することによって封止を行い、実施例1の有機EL素子を得た。
実施例1にて添加した2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールの添加量を10%にした以外は、同一条件で実施例2の有機EL素子を得た。
<比較例1>
実施例1にて添加した2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジア
ゾールを添加しなかった以外は、同一条件で比較例1の有機EL素子を得た。
<比較例
実施例1にて添加した2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールの添加量を4%にした以外は、同一条件で比較例2の有機EL素子を得た。
<比較例3>
実施例1にて添加した2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールの添加量を11%にした以外は、同一条件で比較例3の有機EL素子を得た。
<発光特性評価>
発光特性は、全光束、発光効率にて評価した。全光束はLabsphere製CSLMS
LED−4061を用い全光束スペクトルを測定し、発光効率は0.095Aの電流にて測定時の電圧、及び全光束から算出した。
評価結果を表1に示す。
得られた実施例1、2、比較例1、2、3の有機EL素子の光学特性を調べたところ、配向性分子の含有率が、5%、10%の実施例1、2の全光束は約33ルーメン、発光効率は約42lm/Wであったが、配向性分子を加えていない比較例1の有機EL素子の全光束は約18ルーメン、発光効率は約23lm/Wであり、また、配向性分子の含有率が、4%、11%の比較例2、3の有機EL素子の全光束は約16ルーメン、発光効率は約20lm/W、全光束は約9ルーメン、発光効率は約12lm/Wとなり、配向性分子を加えてもその効果は、実施例1、2と比較して低いものであり、本発明の有機EL素子は高効率であることが確認できた。
本発明の有機EL素子は、照明光源としてのみならず、ディスプレイ、バックライト、各種光源等に好適に利用することができることが分かった。
1・・・有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
2・・・発光層(発光領域)
3・・・凹凸形状
10・・・ガラス基板
11・・・陽極
12・・・発光材料
13・・・配向性分子
14・・・陰極
15・・・封止材
16・・・接着剤

Claims (4)

  1. 透明基板上に、少なくとも陽極、発光層、陰極を順次積層したエレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記発光層が、発光材料中に配向性分子を含有しており、前記発光層表面に前記配向分子起因の凹凸形状を具備しており、
    前記配向性分子の含有率が発光材料に対して5〜10%であり、
    前記発光材料がペリレン系蛍光体であり、前記配向性分子がチアジアゾール誘導体であり、
    前記配向性分子が液晶性を有し、液晶状態のまま前記発光層中に含有されており、
    前記発光層表面の凹凸形状のRzが、33.4nm以上66.0nm以下の範囲内である
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記配向性分子が2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−チアジアゾールであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記発光材料がペリレンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記陰極が、前記発光層表面に形成された微細な凹凸形状に追随した形状で成膜されている
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
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