JP6600174B2 - 包装体、およびその製造方法、包装緩衝材用積層シート、梱包体 - Google Patents

包装体、およびその製造方法、包装緩衝材用積層シート、梱包体 Download PDF

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Description

本発明は、使用前には嵩張ることがなく、使用時に嵩高となって良好な緩衝性を発揮し、かつ、被包装体が外部から視認しにくくなる包装緩衝材用積層シートに関するものである。
緩衝材用途の発泡ポリスチレンの代替として、熱収縮性の不織布と非収縮性の紙やシートを部分的に接合し、熱処理により嵩高い構造を発現させる包装緩衝材用シートが提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら特許文献1、2記載の熱収縮性の不織布は、その収縮方向に異方性が無く、包装緩衝材用シートを特定の一方向のみに収縮させることは困難である。このような場合、商品を前記包装緩衝材用シートで被覆し熱処理により緩衝性能を発揮させても、緩衝用シート自体の収縮量および収縮方向がコントロールしにくいため本来被覆されるべき商品が露出してしまう場合がある。また同様の理由、すなわち包装緩衝材用シート自体の収縮量および収縮方向がコントロールしにくいという理由から、被覆対象の物体の廻りで収縮させて密着させる事が難しく、また効率的に嵩高い構造を発現させることが難しい。
さらには、このような包装緩衝材用シートは使用前には通常ロール状に巻き取られ、倉庫等に保管されるが、不織布は元々嵩高い構造を有することから、熱収縮性の不織布と非収縮性の紙やシートを接合した包装緩衝材用シートを長尺のロール状に巻き取ることは収納場所の問題から困難である。
特開昭62−141167号公報 特開2000−168837号公報
本発明は、加熱により嵩高な構造を発現し、少なくとも任意の一方向とそれに直交する方向に収縮異方性を有する包装緩衝材用積層シートを提供しようとするものである。また、種々の形状を有する被包装体に対して、この被包装体を覆って熱収縮処理するだけで被包装体に密着固定させることができる包装緩衝材用積層シートを提供しようとするものである。さらに、外部から被包装体が視認しにくい包装緩衝材用積層シートの提供も課題としている。
本発明の包装緩衝材用積層シートは、下記要件(1)〜(3)を満たす熱収縮性フィルムと、全光線透過率が50%以下の非収縮性フィルムが積層され、積層面において離れて2箇所以上の接着部が形成されてなることを特徴とする。
(1)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上60%以下であること
(2)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が30%以下であること
(3)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向とフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率差が20%以上であること
上記熱収縮性フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットとし、エチレングリコール以外のグリコール由来の構成ユニットおよび/またはテレフタル酸以外のジカルボン酸由来の構成ユニットがポリエステル全構成ユニット100モル%中10モル%以上であり、ネオペンチルグリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールが用いられていることが好ましい。
上記熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の屈折率は1.570以上1.620以下であることが好ましい。
上記接着部は、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向にストライプ状に形成されていることが好ましい。
本発明には、本発明の包装緩衝材用積層シートで被包装体の少なくとも一部を被覆し、加熱して得られたことを特徴とする包装体も含まれる。
また、本発明には上記包装体を、さらに包装箱に収納したことを特徴とする梱包体も含まれる。
また、本発明には上記包装体の製造方法であって、被包装体を搬送手段によって搬送する工程と、被包装体を本発明の包装緩衝材用積層シートで被覆する工程と、熱収縮性フィルムを熱収縮させて、包装緩衝材用積層シートを被包装体に密着させる工程とを備えていることを特徴とする。
包装体の製造方法においては、上記被包装体の搬送方向と上記熱収縮性フィルムの主収縮方向が等しいことが好ましい。
本発明によれば、任意の一方向とそれに直交する方向に収縮異方性を有し、外部からの視認が困難な包装緩衝材用積層シートを提供できた。特に、収縮量および収縮方向をコントロールしやすく、被包装体を覆った状態で収縮させると、被包装体の形態に追従し密着複合する上に、嵩高い構造を形成するため、包装用緩衝材料として有効利用することができる。さらには、2枚の薄いフィルムの積層シートであるため、保管場所の省スペース化を図ることができる。
本発明の包装緩衝材用積層シートの一実施例を示す模式図(熱処理前の状態)である。 本発明の包装緩衝材用積層シートの一実施例を示す模式図(熱処理後の状態)である。 被包装体の上下面に包装緩衝材用積層シートを設けた状態を示した図である。 本発明に係る包装体を示した図である。
[包装緩衝材用積層シート]
本発明の包装緩衝材用積層シートは、熱収縮性フィルムと、全光線透過率が50%以下の非収縮性フィルムとが積層され、積層面において離れて2箇所以上の接着部が形成されてなるものである。
[熱収縮性フィルム]
本発明の包装緩衝材用積層シートにおいて熱処理により嵩高い構造を発現させるためには収縮シートとして熱収縮性フィルムを用いることが好ましい。不織布とは異なり、熱収縮性フィルムはその延伸条件を適宜選択することにより収縮方向に異方性を持たせることができる。また不織布と比べフィルムはその厚みが薄いため、包装緩衝材用積層シートを作製しロール状に巻き取っても嵩張らないことから、長尺のロールを作製することが可能である。
[熱収縮性フィルムの物性]
本発明の包装緩衝材用積層シートは、互いの面において積層され、離れた2箇所以上の接着部を有する熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムから構成され、熱処理により嵩高い構造を発現するものであるため、熱収縮性フィルムの主収縮方向(長手方向)の熱収縮率が大きいことが、嵩高い構造を発現させるため好ましい。また熱収縮性フィルムの主収縮方向の熱収縮率が高いと、商品(被包装体)の周囲に包装緩衝材用積層シートを設けて加熱により収縮させた場合、包装緩衝材用積層シート全体の長さが短くなり、商品との密着性が高まるので好ましい。
上記の理由から、本発明で用いられる熱収縮性フィルムは、90℃の温水中において無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、以下の式(1)により算出したフィルムの主収縮方向の熱収縮率が、30%以上60%以下であることが好ましく、35%以上55%以下であることがより好ましく、40%以上50%以下であることがさらに好ましい。
90℃における主収縮方向の熱収縮率が30%より小さい場合、収縮量が小さいために、加熱により熱収縮させても、包装緩衝材用積層シートに嵩高い構造を発現させることが困難である。また、収縮量が小さい場合、収縮後の包装緩衝材にシワやタルミが生じやすく商品との密着性が低下するため好ましくない。一方、90℃における主収縮方向の熱収縮率が60%を超えると、包装緩衝材用積層シートが収縮しすぎて歪みが生じやすいので好ましくない。
また式(1)により算出した、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の収縮率は30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、20%以下であることがさらに好ましい。熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の熱収縮率が30%より大きい場合、主収縮方向に対する直交方向への収縮が大きく発現してしまい商品自体が包装緩衝材の外部へ露出してしまうことがあり、好ましくない。
包装緩衝材用積層シートに嵩高い構造を発現させつつ、商品と包装緩衝材との密着性を向上させるためには、熱収縮性フィルムの主収縮方向の熱収縮率が高いことが必要であり、一方、加熱収縮後に、商品自体が包装緩衝材の外部へ露出することを防ぐためには、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の熱収縮率が低いことが必要である。そのため、本発明で用いられる熱収縮性フィルムは90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向と、フィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率差が大きいことが好ましく、収縮率差は20%以上であることが好ましい。
90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向とフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率差が20%より小さい場合であって、特に熱収縮性フィルムの主収縮方向への収縮が不十分である場合には、熱収縮後の包装緩衝材が嵩高い構造とならず、また商品と包装緩衝材との密着性が低下するため好ましくない。また、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の収縮率が大きい場合には、本来被覆されるべき商品が包装緩衝材の外部へと露出してしまうため好ましくない。
90℃における熱収縮率は以下のように測定する。まず、フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、90℃±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの主収縮方向および主収縮方向に対する直交方向の寸法を測定し、以下の式を用いて、主収縮方向および主収縮方向に対する直交方向の熱収縮率を求める。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)…式(1)
本発明で用いられる熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向の屈折率は1.570以上1.620以下であることが好ましい。主収縮方向に対する直交方向の屈折率の上限値は、より好ましくは1.610以下であり、さらに好ましくは1.600以下であり、最も好ましくは1.595以下である。また、主収縮方向に対する直交方向の屈折率の下限値は、より好ましくは1.575以上であり、さらに好ましくは1.580以上である。測定方法は、JISK7142−19965.1(A法)に準じ、ナトリウムD線を光源とし、アッベ屈折計(アタゴ社製4T型)を使用して、フィルムの主収縮方向と直交する方向の屈折率を求めた。測定条件は、温度:23℃、湿度:50%RHであり、樹脂の種類に応じて接触液にはJISに例示されるものを使用した。
熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定されず、8μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
<熱収縮性フィルム>
熱収縮性フィルムとしては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム等が挙げられ、コストや環境負荷低減の観点から、熱収縮性ポリエステル系フィルムを使用することが好ましい。
(熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成)
本発明で好適に用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットとする。「主たる」というのは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含むことを意味する。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。エチレンテレフタレートユニットの含有率が50モル%より少ない場合には、得られる包装緩衝材用積層シートの耐熱性や耐衝撃性が不十分となる場合がある。
ポリエステルには、エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットおよび/またはテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットが含まれていることが好ましい。本発明では、エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットとは、テレフタル酸とエチレングリコール以外の多価アルコールとからなるエステルユニットであり、テレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットとは、エチレングリコールとテレフタル酸以外の多価カルボン酸とからなるエステルユニットを意味する。
エチレングリコール以外の多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール;等が挙げられる。
また、テレフタル酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸及びそれらの酸無水物等の芳香族多価カルボン酸;等が挙げられる。
エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットおよびテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットの合計量が、ポリエステルの全構成ユニット100モル%中、10モル%以上であることが好ましく、13モル%以上であることがより好ましい。エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットおよび/またはテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットは、非晶質成分となり得る。本発明においては、包装緩衝材用積層シートの収縮仕上がり性等の観点から、ポリエステルの構成ユニット中に非晶ユニットが含まれる(熱収縮性ポリエステル系フィルムの結晶化度が100%ではない)のが好ましい。そのためには、多価アルコールとして、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが用いられることが好ましく、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの少なくとも一方が用いられるのがより好ましい。また、本発明においては、ポリエステルの構成ユニット中に非晶ユニットが含まれるように、多価カルボン酸としてイソフタル酸を用いてもよい。
また、エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットおよびテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットの合計量は、ポリエステルの全構成ユニット100モル%中、30モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることがより好ましい。エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニットやテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットの合計量が30モル%を超えると、得られる包装緩衝材用積層シートの耐熱性や耐衝撃性が不十分となるおそれや、熱収縮性フィルムの耐溶剤性が低下して、熱収縮性フィルムや包装緩衝材用積層シートに文字等を印刷する印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下したりするおそれがある。
ここで、上記の「非晶質成分となり得るモノマー」の解釈について詳細に説明する。
本発明において、「非晶性ポリマー」とは、具体的にはDSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有さないポリマーを指す。非晶性ポリマーは実質的に結晶化が進行しておらず、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いものである。
また、本発明において「結晶性ポリマー」とは上記の「非晶性ポリマー」ではないもの、すなわち、DSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有するポリマーを指す。結晶性ポリマーは、ポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化しているものである。
一般的には、モノマーユニットが多数結合した状態であるポリマーについて、ポリマーの立体規則性が低い、ポリマーの対象性が悪い、ポリマーの側鎖が大きい、ポリマーの枝分かれが多い、ポリマー同士の分子間凝集力が小さい、などの諸条件を有する場合、非晶性ポリマーとなる。しかし存在状態によっては、結晶化が十分に進行し、結晶性ポリマーとなる場合がある。例えば、側鎖が大きいポリマーであっても、ポリマーが単一のモノマーユニットから構成される場合、結晶化が十分に進行し、結晶性となり得る。そのため、同一のモノマーユニットであっても、ポリマーが結晶性になる場合もあれば、非晶性になる場合もあるため、本発明では「非晶質成分となり得るモノマー由来の構成ユニット」という表現を用いた。
ここで、本発明においてモノマーユニットとは、1つの多価アルコール分子および1つの多価カルボン酸分子から誘導されるポリマーを構成する繰り返し単位のことであり、また、ε−カプロラクトンの場合は、ラクトン環の開環で得られる構成単位を示す。
テレフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニットがポリマーを構成する主たるモノマーユニットである場合、イソフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるモノマーユニット、イソフタル酸とブタンジオールからなるモノマーユニット等が、上記の非晶質成分となり得るモノマー由来のユニットとして挙げられる。
熱収縮性フィルムの易滑性を向上させるために、有機滑剤、無機の滑剤等の微粒子を含有せしめることも好ましい。必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を含有するものであってもよい。滑り性を付与する微粒子としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化リチウム等の公知の不活性外部粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー、ポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等によってポリエステル製造時にポリマー内部に形成される内部粒子等が挙げられる。上記微粒子は、フィルム中、0.005〜0.9質量%が好ましく、平均粒径としては0.001〜3.5μmが好ましい。
熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、市販品を使用してもよく、上記市販品としては、例えば、大和製罐株式会社製大和ベルファイン(登録商標)HS202等が挙げられる。
(熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法)
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、テレフタル酸を主体とする多価カルボン酸とエチレングリコールを主体とする多価アルコールとを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、テレフタル酸を主体とする多価カルボン酸とエチレングリコールを主体とする多価アルコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の公知の製造法を適用することができる。
原料となるポリエステル系樹脂としては、市販されている通常のポリエステル系樹脂等、リサイクル原料でないポリエステル系樹脂(バージンポリエステル)を使用できる他、使用済みのポリエステル系樹脂成形体等を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリエステル系樹脂成形体、例えば、PETボトルを回収し、再生したリサイクル原料を用いることができる。
上記のリサイクル原料のほか、ポリエステル系樹脂の原料として植物由来原料を用いたバイオポリエステル原料を用いることができる。バイオポリエステルとしては、サトウキビ等の植物由来のエチレングリコールを原料とするポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステル1種または2種以上を、押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを所定の方法により延伸することによって得ることができる。原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料を用意し、これらをホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融し、フィルム状に押し出す方法を採用することができる。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、公知の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム(キャスティングロール)上にキャストして急冷固化することにより、実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。なお、回転ドラム上にキャストして急冷固化させる場合には、上記押出機と回転ドラムとの間に電極を配設し、電極と回転ドラムとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムを回転ドラムに密着させる方法を採用すると、フィルムの厚み斑が低減されるので好ましい。
本発明の目的を達成するには、本発明に使用される熱収縮性フィルムの主収縮方向はフィルム長手(縦)方向である必要がある。以下では、最初に横延伸、次に縦延伸を実施する横延伸−縦延伸法について説明する。
まず、横方向の延伸を行う。横方向の延伸は、テンター(第1テンター)内でフィルムの主収縮方向に対する直交方向の両端際をクリップによって把持した状態で、65℃〜85℃で3.5〜5倍程度行うことが好ましい。横方向の延伸を行う前には、予備加熱を行っておくことが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度が70℃〜100℃になるまで行うとよい。
横延伸の後は、フィルムを積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることが好ましい。第1テンターの横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンで温度差がある場合、中間熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込み、横延伸ゾーンの温度が安定しないためにフィルム品質が安定しなくなることがあるので、横延伸後で中間熱処理前のフィルムを、所定時間をかけて中間ゾーンを通過させた後に、中間熱処理を実施するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの走行に伴う随伴流、横延伸ゾーンや中間熱処理ゾーンからの熱風を遮断すると、安定した品質のフィルムが得られる。中間ゾーンの通過時間は、1秒〜5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱の遮断効果が不足する。また、中間ゾーンは長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
中間ゾーンの通過後は、縦延伸前の中間熱処理を行っても行わなくてもどちらでも構わない。しかし、横延伸後の中間熱処理の温度を高くすると、配向が緩和され結晶化が進むため、収縮性は若干悪くなる。また、厚み斑も悪くなる。この観点から、中間熱処理は140℃以下で行うことが好ましい。また、中間熱処理ゾーンの通過時間は20秒以下が好ましい。中間熱処理ゾーンは長い方が好ましいが、20秒程度で充分である。これにより横一軸延伸フィルムが得られる。
本発明では、続いて縦延伸を行う。横一軸延伸フィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入するとよい。縦延伸に当たっては、予熱ロールでフィルム温度が65℃〜110℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度が65℃より低いと、縦方向に延伸する際に延伸し難くなり(すなわち、破断が生じやすくなり)好ましくない。また110℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、連続生産によるロールの汚れ方が早くなり好ましくない。
フィルムの温度が前記範囲になったら、縦延伸を行う。主収縮方向を縦方向にするために、縦延伸倍率を2〜5倍とするとよい。
縦延伸後は、一旦フィルムを冷却することが好ましく、最終熱処理を行う前に、表面温度が20〜40℃の冷却ロールで冷却することが好ましい。縦延伸後に急冷することで、フィルムの分子配向が安定化し、製品となった後のフィルムの自然収縮率が小さくなるため、好ましい。
次に、縦延伸および冷却後のフィルムを、熱処理(リラックス処理)のための第2テンターへと導入し、熱処理やリラックス処理を行う。リラックス処理は、フィルムの主収縮方向に対する直交方向の両端際をクリップによって把持した状態で、0%〜30%フィルムを弛ませる工程である。リラックス率により横方向の収縮率を変化させることができる。リラックス率を高くすると、縦方向の収縮率にはあまり変化は認められないが、横方向の収縮率は低くなる。リラックス率は0%が下限であり、また上限は99%であるが、リラックス率が高いと、フィルム製品幅が短くなるというデメリットもあるので好ましくない。よって、リラックス率の上限は30%程度が好適である。
リラックス処理は加熱しながら行うのが好ましい。具体的には、熱処理(リラックス処理)温度は、65℃〜140℃が好ましい。熱処理温度が65℃より低いと熱処理の意味をなさない。一方、熱処理温度が140℃より高いと、フィルムが結晶化してしまい、透明タイプのフィルムの場合、密度が1.33g/cm3を超えて大きくなりやすく、厚み斑が大きいフィルムとなるおそれがある。
後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールが得られる。
[非収縮性フィルム]
本発明に用いられる非収縮性フィルムとしては、全光線透過率が50%以下で、上記熱収縮性フィルムより収縮率の低いものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルムやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムが好ましい。
全光線透過率が50%以下の非収縮性フィルムを得るには、ポリエステルを例に挙げると、(1)ポリエステルと顔料との組成物を製膜・延伸する方法、(2)ポリエステルとボイド発現剤との組成物を製膜・延伸する方法のいずれによっても製造することができる。
顔料としては、例えば白色顔料であれば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等を使用することができる。白色顔料としては、隠蔽性の高い二酸化チタン粒子が好適である。二酸化チタン粒子の結晶形態は、アナターゼ型、ルチル型の何れでもよい。二酸化チタン粒子のポリエステルへの分散性および耐候性を向上させるため、二酸化チタン粒子の表面が、アルミニウム、けい素、亜鉛等の酸化物および/または有機化合物で処理されていてもよい。また、白色ではない有色の非収縮性フィルムを得るには、所望の色の顔料を用いればよい。
顔料の平均粒径は、通常、0.05〜2.0μmであり、0.1〜0.6μmが好ましい。平均粒径が0.05μm未満の場合や2.0μmを超える場合は、被包装体を見えなくするための隠蔽性が不充分となることがある。顔料の含有量は、ポリエステルと顔料との合計100質量%中、0.5〜40質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。顔料の含有量が0.5質量%より少ないと隠蔽性が不足し、逆に40質量%を超えると、製膜時にフィルムが破断したり、フィルムの機械的強度が低下するおそれがある。
ボイド発現剤としては、ポリエステルに対して非相溶な重合体を用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィン系重合体やポリスチレン系重合体等が挙げられる。本発明の包装緩衝材用積層シートにおいては、熱収縮性フィルムを白色フィルムにしてもよいが、ボイド発現剤を原料ポリエステルに混練した後、延伸によってフィルム内にボイド(空洞)を発現させて白色フィルムを得る場合は、非収縮性フィルムを白色にすることが好ましい。非収縮性フィルムでは、熱収縮力を得るために必要な延伸倍率を考慮する必要がないためである。
また、この方法により得られる非収縮性フィルムは低密度となり、同じ厚さの空洞を有さないポリエステルフィルムに比べると、質量、剛性、風合いの点で、紙に類似したものとなる。
ポリオレフィン系重合体としては、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等が挙げられる。ポリスチレン系重合体としては、スチレンモノマーを重合して得られるホモポリスチレンの他、スチレンの繰り返し単位を種とする他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体等が挙げられる。具体的には、非晶性ポリスチレン、結晶性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
ボイド発現剤として用いることのできる他の非相溶重合体として、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニル−t−ブチルエーテル、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。また、ポリアリレート系、ポリアクリル系、シリコーン系等の重合体も非相溶性重合体として使用することができる。
ボイド発現剤の使用量は、ポリエステルとボイド発現剤との合計100質量%中、2〜30質量%とすることが好ましい。
非収縮性フィルムには、有機系、無機系、および有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤等を含むことができ、これらを1種もしくは2種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、安定剤、酸化防止剤、その他の含有剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
本発明の非収縮性フィルムを製造する場合の延伸方法は任意であるが、溶融させた樹脂をTダイ等から押出して未延伸フィルムとした後、この未延伸フィルムを延伸して配向させるという一般的な方法を用いることができる。以下では、最も好んで用いられる逐次2軸延伸方法、特に未延伸シートを長手方向、次いで幅方向に延伸する方法を例にとり、延伸・配向条件を説明する。まず、第1段の縦延伸工程では、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱方法を用いる方法でもよく、それらを併用してもよい。ただし、ポリエステル樹脂と非相溶性樹脂との界面に空洞を多数発現させる場合には、延伸温度をポリエステルの2次転移温度Tg+50℃以下の温度で、3〜5倍延伸する。次いで、得られた1軸延伸フィルムをテンターに導入し、ポリエステルの融点Tm−10℃以下の温度で、幅方向に2.5〜5倍に延伸するのが好ましい。
このようにして得られた2軸延伸フィルムに対し、熱処理を施す。熱処理はテンター中で行うのが好ましく、非収縮性フィルムの熱収縮率を下げる目的から、ポリエステルの融点Tm−50℃〜Tmの範囲の温度で行うのが好ましい。
[非収縮性フィルムの物性]
非収縮性フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、式(1)により算出したフィルムの主収縮方向および主収縮方向に対する直交方向の熱収縮率がそれぞれ5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。
本発明の包装緩衝材用積層シートは熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムを積層した後、積層面において離れた2箇所以上で接着させ、加熱による両フィルムの熱収縮差により嵩高な包装緩衝材となることを特徴としている。非収縮性フィルムの熱収縮率が5%より大きい場合、嵩高い構造を効率的に作ることが困難になるため、好ましくない。
本発明に用いられる非収縮性フィルムは、全光線透過率が50%以下である。全光線透過率は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下であるのがよい。全光線透過率が50%を超えると、本発明の包装緩衝材用積層シートを形成し、物品を包装した場合に内部の隠蔽性が低下するため好ましくない。全光線透過率が小さいほど内部の隠蔽性が高まるため好ましいが、通常の用途であれば、全光線透過率の下限は10%程度あれば十分である。
全光線透過率は以下の測定方法で測定される。非収縮性フィルムの任意の異なる3ヶ所について、JIS K 7136に準じた方法で、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)を用いて全光線透過率を測定し、それらの平均値を非収縮性フィルムの全光線透過率とする。
非収縮性フィルムの好ましい厚みはフィルムを構成する樹脂の種類によっても異なるが、30μm以上100μm以下が好ましい。非収縮性フィルムは、熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムを積層し、接着、熱処理させた後に凸状の形状を構成する部分である。ここで、非収縮性フィルムの厚みが30μmより小さい場合、熱処理により凸状の形状を構成させても、フィルムの腰が弱いために弾性が不足し、十分な緩衝性能が得られないため好ましくない。フィルム厚みが大きいほど加熱後に凸状の形状を構成させた場合の緩衝性能が向上するため、非収縮性フィルムの厚みは35μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは40μm以上である。
一方、非収縮性フィルムの厚みが大きくなり過ぎると、フィルムの腰が強すぎるために、熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムを積層し、接着、加熱させた後に凸状の形状を構成することが困難になる。従って、非収縮性フィルムの好ましい厚みはフィルムを構成する樹脂の種類によっても異なるが、その厚みは100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
[包装緩衝材用積層シート]
本発明に係る包装緩衝材用積層シートは、熱収縮性フィルムと、非収縮性フィルムを積層し、積層面において離れた2箇所以上の部分において接着させ、加熱による両フィルムの熱収縮率差により嵩高な包装緩衝材となることを特徴とするものである。以下、図1および図2に基づき、包装緩衝材用積層シートの製造方法の一例を説明する。
本発明の包装緩衝材用積層シートは、図1に示すように熱収縮性フィルム1と非収縮性フィルム2を積層し、部分接着部3により両フィルムを接着させて作製する。
熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムを接着させる方法としては公知の方法を用いることができ、シート自体の熱融着、高周波融着、超音波融着、ホットメルト接着剤等の接着剤を使用した接着、ミシン縫等の縫着等の接着手段により行われる。特にヒートシールによる接着は加工が容易であり、経済的にも好ましい。
部分接着部の形状としては、例えばストライプ状、格子状、ダイヤ柄状、スポット柄状等目的に応じて種々の形状を選定することが可能である。ここで、本発明の包装緩衝材用積層シートにおいて、熱収縮性フィルムの部分接着されていない領域が収縮することにより、被包装体に被覆された包装緩衝材用積層シートが被包装体に密着し、また、緩衝材に嵩高い構造が形成される。
本発明において用いられる熱収縮性フィルムは主収縮方向に大きく収縮し、主収縮方向に対する直交方向への熱収縮率が小さいという特徴を有することから、熱収縮後に嵩高い構造を効率的に形成するためには、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向にストライプ状に部分接着部を形成することが好ましい。熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向にストライプ状に部分接着部を形成することは、すなわち熱収縮性フィルムの部分接着されていない領域が、熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向に帯状に形成されることとなり、熱収縮時に効率的に嵩高い構造を形成させることが可能となる。例えば、被包装体を包装しない状態で熱収縮性フィルムを収縮させた場合には、図2に示すように、非収縮性フィルム2が凸状に盛り上がり、嵩高い構造を形成する。
部分接着部の割合としては、包装緩衝材用積層シートの全面積中10%以上60%以下が好ましく、15%以上50%以下がより好ましい。部分接着部の割合が60%より大きい場合、熱収縮後の嵩高性が低下するため好ましくない。また、部分接着部の領域は熱収縮性フィルムが非収縮性フィルムと接着していて収縮することができないため、部分接着部の割合が多い場合には包装緩衝材用積層シートの収縮率が低下し、嵩高い構造を形成しにくくなる。従って、部分接着部の割合は60%以下であることが好ましい。部分接着部の割合が少ないほど包装緩衝材用積層シートを熱収縮させた時の嵩高性が向上し、また包装緩衝材用積層シートの収縮率が向上するため好ましいが、部分接着部の割合が少なすぎると熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムが剥離しやすくなるため、部分接着部の割合は10%以上とすることが好ましい。
収縮後の包装緩衝材の嵩高さ(厚み)は特に限定されないが、通常は2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上10mm以下である。嵩高さの調節は、熱収縮性フィルムおよび非収縮性フィルムの収縮率、部分接着部の形状、割合、ピッチ、熱処理温度等により行うことができる。
[包装体の製造方法(包装緩衝材用積層シートによる包装方法)]
本発明に係る包装体の製造方法は、被包装体を搬送手段によって搬送する工程と、被包装体を本発明の包装緩衝材用積層シートで被覆する工程と、熱収縮性フィルムを熱収縮させて、包装緩衝材用積層シートを被包装体に密着させる工程とを備えていることを特徴とする。以下、図3、図4に基づき、包装体の製造方法の一例を説明する。
最初に、例えば枠台紙本体に商品を載置した被包装体4を搬送手段によって前方(図3では矢印方向)に搬送する。被包装体としては商品単体でもよいが、枠台紙本体と商品を一体として包装し段ボールに梱包することで、商品と段ボールとの間で大きな隙間が空く場合であっても、枠台紙本体と共に商品が段ボール箱に固定され、輸送時の衝撃から商品を保護する効果が高まることから、被包装体としては枠台紙本体に商品を載置したものであることが好ましい。搬送手段としては、公知の手段を用いればよく、例えば、ベルトコンベア、ネットコンベア、スラットコンベア等を用いればよい。
次に、被包装体4の上下面に対応する位置に、本発明に係る包装緩衝材用積層シート5を設ける(図3の状態)。なお、被包装体の上面と被包装体の下面に対応する位置に同時に設けてもよく、被包装体の上面位置に包装緩衝材用積層シートを設けた後に、下面に包装緩衝材用積層シートを設けてもよく、被包装体の下面位置に包装緩衝材用積層シートを設けた後に、上面に包装緩衝材用積層シートを設けてもよい。
被包装体を包装する際に、包装緩衝材用積層シートが被包装体に接する面として熱収縮性フィルム面または非収縮性フィルム面のいずれもが選択できるが、非収縮性フィルム面を被包装体に接する面として包装緩衝材用積層シートを設けることが、熱処理後の緩衝性能の向上の点から好ましい。熱処理後には非収縮性フィルムが凸部(上側の非収縮性フィルムでは逆凸部、以下同様)を形成し緩衝性能を有することになるため、凸部を外側、すなわち被包装体に接しない面に向けて包装体を作製した場合、外部からの衝撃により凸部が変形し緩衝性能が低下するおそれがあるためである。
包装緩衝材用積層シート5は共に被包装体4の搬送(進行)方向がフィルムの主収縮方向となるように被包装体4の上下面に対応する位置に設けることが好ましい。
続いて、被包装体4の前方側面で、被包装体4の上面と下面に設置された包装緩衝材用積層シート5,5の前方端部同士を接続する。被包装体4の上面と下面に設置された包装緩衝材用積層シート5,5の前方端部同士を接続する方法は、公知の方法でよく、例えば、両シートにおける搬送方向と直交する方向の所定部位において、搬送方向と直交する方向に沿って加熱し、包装緩衝材用積層シートの前方側面で両シートを溶着させる方法が挙げられる。なお、両シートを溶着した後に不要なシート(前方接続部6の前方に位置するシート)がある場合には、前方接続部6で切断してもよい。
その後、被包装体4の後方側面で、被包装体4の上面と下面に設置された包装緩衝材用積層シート5,5の後方端部同士を接続する。物品の上面と下面に設置された包装緩衝材用積層シート5,5の後方端部同士を接続する方法は、公知の方法でよく、例えば、搬送方向と直交する方向の所定部位において、搬送方向と直交する方向に沿って加熱し、包装緩衝材用積層シートの後方側面で両シートを溶着させるとともに後方接続部7で切断する方法が挙げられる。なお、被包装体の前方側面で、被包装体の上下面に設置された包装緩衝材用積層シートの前方端部同士を接続する工程と、被包装体の後方側面で、被包装体の上下面に設置された包装緩衝材用積層シートの後方端部同士を接続する工程とは、同時に行っても構わない。
このように後方接続部7で両シートを切断することによって、本発明に係る包装緩衝材用積層シートを被包装体の上下面に設けて包装した包装体を機械によって作製することができる。
次に、包装体を熱処理し、図2に示したような嵩高い構造を作製する。部分接着部間において熱収縮性フィルム1と非収縮性フィルム2において熱収縮率の差があるために、熱処理を行うことで非収縮性フィルムが凸状の形状となり、嵩高い構造を作製することができる。
熱処理は公知の方法を用いることが可能であり、熱風トンネル、熱ロール、熱風ドライヤー等により90℃〜150℃の温度で数秒〜数十秒行うことで、被包装体の上下に設けた包装緩衝材用積層シートが熱収縮して、被包装体に密着すると同時に、包装緩衝材用積層シートが嵩高い構造となる。
(用途)
次に本発明に係る包装緩衝材用積層シートの使用方法を説明する。本発明に係る包装緩衝材用積層シートは熱処理により嵩高い構造(包装緩衝材)となり、緩衝性能を発揮するものであるため、その使用にあたっては、まず被包装体を包装緩衝材用積層シートで被覆し、熱処理する方法がある。また、この包装緩衝材用積層シートを熱処理し嵩高い状態とした後に被包装体を包装したり、あるいは被包装体をこの包装緩衝材用積層シートで熱処理しながら包装することもできる。さらには、この包装緩衝材用積層シートを用いて袋を作製し、この袋に被包装体を収容した後、外部から熱処理する方法も採用することができる。このように、本発明に係る包装緩衝材用積層シートは加熱することにより、熱収縮性フィルムが収縮し、初めて嵩高い構造となるため、使用前は倉庫等に保管しておけば良く、その時点では嵩高い構造ではないため、収納場所をとらない利点を有する。また輸送する際にも同様の理由から場所を取らない。さらに、本発明の包装緩衝材用積層シートにおいては、非収縮性フィルムの全光線透過率が50%以下となっているため、被包装体が外部から視認できないようになる。
また、上記の方法により作製した包装体を、さらに段ボール箱等の包装箱に収納することにより梱包体とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
各実施例、比較例で得られた包装体についての評価方法は以下の通りである。なお、フィルムの各種物性は上述に記載の測定方法により、測定を行った。
(熱収縮率)
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、90℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出してフィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記式(1)にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)…式(1)
(評価用包装体の作製)
縦170mm×横170mm×厚み3mmの段ボール板の中央位置に縦148mm、横105mm、厚み14mmの文庫本を、段ボールおよび文庫本の縦横のそれぞれの方向を揃えて設置し、被包装体とした。被包装体の上面(文庫本を設置した面)および下面(文庫本を設置した面と反対側の面)に対応する位置に、包装緩衝材用積層シートを設けた。この時、包装緩衝材用積層シートのシート主収縮方向に対する直交方向の長さは段ボールの縦横方向の長さと同じ170mmとし、包装緩衝材用積層シートにストライプ状に形成された部分接着部が、被包装体の段ボールの縦方向と平行方向に配置されるように接着部を設けた。その後、被包装体の前方側面で、被包装体の上下面に設けられた包装緩衝材用積層シートの前方端部同士をヒートシールすることによって接続し、次いで被包装体の後方側面で被包装体の上下面に設けられた包装緩衝材用積層シートの後方端部同士をヒートシールすることによって接続した。最後に、被包装体の上下面に設置された包装緩衝材用積層シートを熱処理することで、評価用の包装体とした。
(熱処理後の包装体の外観)
被包装体を包装緩衝材用積層シートで被覆し、熱処理することにより作製した包装体について、熱処理後に被包装体が包装緩衝材の外へ露出しているか否かを目視により確認した。被包装体が熱処理後の包装緩衝材により完全に被覆されている場合には○、被包装体の一部分が熱処理後の包装緩衝材の外へ露出している場合には×とした。
(熱処理後の緩衝性能)
後述の方法により被包装体を包装緩衝材用積層シートで被覆し、熱処理することにより作製した包装体について、下面(文庫本を設置した面と反対側の面)を下側に向けて机上に置き、さらに、被包装体の上面(文庫本を設置した面)に縦148mm、横105mm、厚み30mmの文庫本を載積し、24時間放置した。その後、緩衝材の嵩高さを測定し、放置前の嵩高さと比較して、70%以上100%以下である場合を◎、50%以上70%より小さい場合を○、50%より小さい場合を×とした。尚、ストライプ状に形成された凸部について、その厚みが最大となる部分の厚みを各ストライプにおいて測定し、10個のストライプにおいて測定した最大厚み値を平均し、緩衝材の嵩高さとした。
(隠蔽性)
後述の方法により被包装体を包装緩衝材用積層シートで被覆し、熱処理することにより作製した包装体について、下面(文庫本を設置した面と反対側の面)を下側に向けて机上に置き、さらに、被包装体の上面(文庫本を設置した面)に縦148mm、横105mm、厚み30mmの文庫本を載積し、24時間放置した。なお、文庫本の上面側中央部には幅1mmの黒のラインと幅0.1mmの黒のラインを各々長さ5cmで1本ずつ入れた。その後、500〜1,000ルックスの蛍光灯環境下で、文庫本の中央に引いた黒いラインを観察し、隠蔽度合いを次の基準で評価した。
◎:良好。幅1mm、0.1mm共に見えない。
○:不十分。幅1mmは見えるが0.1mmは見えない。
×:不良。幅1mm、0.1mm共に見える。
(全光線透過率)
非収縮性フィルムの任意の異なる3ヶ所について、JIS K 7136に準じた方法で、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)を用いて全光線透過率を測定し、それらの平均値を非収縮性フィルムの全光線透過率とした。
ポリエステルA〜Dは以下の表1に記載の酸成分と多価アルコール成分とを公知の方法で反応させて得られたポリエステルであり、ポリエステルDに含有されている滑剤は富士シリシア社製サイリシア(登録商標)266である。上記ポリエステルA〜Dを用いてポリエステルフィルムNo.1を作製した。以下に各フィルムの製膜方法について記載する。
(ポリエステルフィルムNo.1の製膜)
上記したポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルC、及びポリエステルDを質量比5:66:24:5で混合して押出機に投入した。得られた混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さ240μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/minであった。しかる後、その未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンからの熱風および熱処理ゾーンからの熱風が遮断されていた。
そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が80℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に70℃で4倍に延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、80℃の温度で8秒間に亘って熱処理することによって厚み27μmの横一軸延伸フィルムを得た。
さらに、その横延伸したフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に3倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、第2テンター内で90℃の雰囲気下で10秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、厚みが約12μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜してポリエステルフィルムNo.1(以下、フィルムNo.1という)を得た。
(ポリエステルフィルムNo.2の製膜)
上記フィルムNo.1の製膜において、溶融押出時における溶融樹脂の吐出量を変更した以外はほぼフィルムNo.1と同様にして、厚み18μmのポリエステルフィルムNo.2を得た。
(ポリエステルフィルムNo.3の製膜)
上記ポリエステルA37質量%、ポリエステルB53質量%、ポリエステルC10質量%混合したポリエステルを280℃で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、フィルム温度が83℃になるまで予備加熱した後、ロール間で縦方向に98℃で2.5倍延伸した。次に横延伸の予熱ゾーンで乾燥した後、81℃で横方向に4.0倍延伸し、さらに88℃で熱処理を行って、厚み25μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
(実施例1)
熱収縮性フィルムとして厚さ12μmのNo.1フィルムを用い、非収縮性フィルムとして厚さ38μmの二軸延伸白色ポリエステルフィルムである東洋紡社製クリスパー(登録商標)G2311(全光線透過率15.0%、150℃の熱風中30分加熱時の熱収縮率がMD方向で1.7%、TD方向で0.7%)を用いた。上記熱収縮性フィルムと非収縮性フィルムを重ね合わせ、120℃でヒートシールすることにより両フィルムを接着し、部分接着部を形成させた。部分接着部は熱収縮性フィルムの主収縮方向に対する直交方向にストライプ状の形状とし、その幅を5mm(即ち、熱収縮後の凸部間の間隔が5mm)とし、等間隔に10本/10cmとして形成させた。
次に、縦170mm×横170mm×厚み3mmの段ボール板の中央位置に縦148mm、横105mm、厚み14mmの文庫本を、段ボールおよび文庫本の縦横のそれぞれの方向を揃えて設置し、被包装体とした。被包装体の上面(文庫本を設置した面)および下面(文庫本を設置した面と反対側の面)に対応する位置に、包装緩衝材用積層シートを設けた。
この時、包装緩衝材用積層シートの主収縮方向に対する直交方向の長さは段ボールの縦方向の長さと同じ170mmとし、包装緩衝材用積層シートにストライプ状に形成された部分接着部が、被包装体の段ボールの縦方向と平行方向に配置されるようにして設け、さらには、非収縮性フィルム面を被包装体に接する面として包装緩衝材用積層シートを設けた。その後、被包装体の前方側面で、被包装体の上下面に設けられた包装緩衝材用積層シートの前方端部同士を153℃で1秒間ヒートシールすることによって接続し、次いで被包装体の後方側面で被包装体の上下面に設けられた包装緩衝材用積層シートの後方端部同士を153℃で1秒間ヒートシールすることによって接続した。
最後に、被包装体の上下面に設置された包装緩衝材用積層シートを127℃で2.3秒間熱処理した。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱処理後に、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、また十分な緩衝能力を示した。また、隠蔽性は良好であった。
(実施例2)
被包装体の上面および下面に対応する位置に包装緩衝材用積層シートを設ける際、熱収縮フィルム面を被包装体に接する面として包装緩衝材用積層シートを設けた以外は実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後には、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、実施例1には劣るものの、緩衝能力としては問題のないものであった。また、隠蔽性は良好であった。
(実施例3)
実施例1において、厚さ12μmのNo.1フィルムに代えて、厚さ18μmのNo.2フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後には、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、また十分な緩衝能力を示した。さらに、隠蔽性は良好であった。
(比較例1)
実施例1において、厚さ12μmのNo.1フィルムに代えて、厚さ25μmのNo.3フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後に被包装体の一部が緩衝材の外へと露出してしまい、包装緩衝材として用いることはできないものであった。なお、隠蔽性は良好であった。
(比較例2)
比較例1において、厚さ38μmの東洋紡社製クリスパー(登録商標)G2311に代えて、厚さ25μmの東洋紡社製クリスパー(登録商標)G2311を用いた以外は比較例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後に被包装体の一部が緩衝材の外へと露出してしまい、また緩衝性能も十分では無く、包装緩衝材として用いることはできないものであった。なお、隠蔽性は良好であった。
(比較例3)
熱収縮性フィルムとして厚さ12μmのNo.1フィルムを用い、非収縮性フィルムとして厚さ40μmの透明無延伸ポリプロピレンフィルムである東洋紡社製パイレンフィルム(登録商標)P1011(全光線透過率85%、120℃の熱風中30分での熱収縮率がMD方向で−0.4%、TD方向で1.2%)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装体を得た。
得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱処理後に、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、また十分な緩衝能力を示したが、透明なPPフィルムを用いたため、隠蔽性に欠けていた。
(比較例4)
被包装体の上面および下面に対応する位置に包装緩衝材用積層シートを設ける際、熱収縮フィルム面を被包装体に接する面として包装緩衝材用積層シートを設けた以外は比較例3と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後には、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、実施例1には劣るものの、緩衝能力としては問題のないものであった。しかし、隠蔽性には劣っていた。
(比較例5)
比較例3において、厚さ12μmのNo.1フィルムに代えて、厚さ18μmのNo.2フィルムを用いた以外は比較例3と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後には、外部から被包装体が露出することが無く被覆しており、また十分な緩衝能力を示した。しかし、隠蔽性には劣っていた。
(比較例6)
比較例3において、厚さ12μmのNo.1フィルムに代えて、厚さ25μmのNo.3フィルムを用いた以外は比較例3と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後に被包装体の一部が緩衝材の外へと露出してしまい、包装緩衝材として用いることはできないものであった。また、隠蔽性にも劣るものであった。
(比較例7)
比較例6において、厚さ40μmの東洋紡社製パイレンフィルム(登録商標)P1011に代えて、厚さ25μmの東洋紡社製パイレンフィルム(登録商標)P1011(ヘイズ3.0%、120℃の熱風中30分での熱収縮率がMD方向で−0.8%、TD方向で1.2%)を用いた以外は比較例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体の評価結果を表2に示す。熱収縮後に被包装体の一部が緩衝材の外へと露出してしまい、また緩衝性能も十分では無く、包装緩衝材として用いることはできないものであった。さらに隠蔽性にも劣るものであった。
厚さ12μmのNo.1フィルムおよび厚さ18μmのNo.2フィルムは、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの主収縮方向の収縮率が50%、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの主収縮方向に対する直交方向の収縮率が25%、主収縮方向に対する直交方向の屈折率が1.590である。また、エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニット及びテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットの合計量が、全構成ユニット100モル%中20%であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールが含まれている。
厚さ25μmのNo.3フィルムは、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの主収縮方向の収縮率が40%、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの主収縮方向に対する直交方向の収縮率が40%、主収縮方向に対する直交方向の屈折率が1.621である。また、エチレングリコール以外の多価アルコール由来の構成ユニット及びテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来の構成ユニットの合計量が、全構成ユニット100モル%中16%であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールが含まれている。
本発明によれば、任意の一方向とそれに直交する方向に収縮異方性を有する包装緩衝材用積層シートおよびその利用が可能となる。特に有用な利用例としては、収縮度をコントロールしやすく物体の廻りで収縮させて密着複合する事が可能であるため、物体の形態に追従しやすく密着可能な包装材料や緩衝材料として利用することができる。
1 熱収縮性フィルム
2 非収縮性フィルム
3 部分接着部
4 被包装体
5 包装緩衝材用積層シート
6 前方接続部
7 後方接続部

Claims (9)

  1. 下記要件(1)〜(3)を満たす熱収縮性ポリエステル系フィルムと、全光線透過率が50%以下の非収縮性フィルムが積層され、積層面において離れて2箇所以上のヒートシール接着部が形成されてなり、前記ヒートシール接着部の面積が全面積中10%以上60%以下であることを特徴とする包装緩衝材用積層シート。
    (1)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上60%以下であること
    (2)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が30%以下であること
    (3)90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向とフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率差が20%以上であること
  2. 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットとし、エチレングリコール以外のグリコール由来の構成ユニットおよび/またはテレフタル酸以外のジカルボン酸由来の構成ユニットがポリエステル全構成ユニット100モル%中10モル%以上であり、ネオペンチルグリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の包装緩衝材用積層シート。
  3. 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向に対する直交方向の屈折率が1.570以上1.620以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装緩衝材用積層シート。
  4. 上記ヒートシール接着部が、熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向に対する直交方向にストライプ状に形成された部分接着部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の包装緩衝材用積層シート。
  5. 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときのフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が、17%以下を除くものである請求項1〜4のいずれかに記載の包装緩衝材用積層シート。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の包装緩衝材用積層シートで被包装体の少なくとも一部を被覆し、加熱して得られたことを特徴とする包装体。
  7. 請求項に記載の包装体を、さらに包装箱に収納したことを特徴とする梱包体。
  8. 請求項に記載の包装体の製造方法であって、
    被包装体を搬送手段によって搬送する工程と、
    被包装体を包装緩衝材用積層シートで被覆する工程と、
    熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮させて、包装緩衝材用積層シートを被包装体に密着させる工程とを備えていることを特徴とする包装体の製造方法。
  9. 被包装体の搬送方向と熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向が等しいことを特徴とする請求項に記載の包装体の製造方法。
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