JP6600082B2 - 低級オレフィンの製造方法 - Google Patents
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Description
[1]
メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料と、ゼオライト含有成形体触媒と、を反応器内で接触させる、接触工程を有し、
前記原料は、該原料の総量に対し、前記メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を、10質量%以上含み、
前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、下記(1)〜(4)を満たす、低級オレフィンの製造方法:
(1)該ゼオライトは、中間細孔径ゼオライトである
(2)該ゼオライトは、実質的にプロトンを含まない
(3)該ゼオライトは、銀を含む
(4)該ゼオライトのシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3モル比)は、800以上2000以下である。
[2]
前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、アルカリ金属をさらに含む、[1]に記載の低級オレフィンの製造方法。
[3]
前記ゼオライト含有成形体触媒は、水蒸気及び酸素の存在下、500℃以上において加熱処理されている、[1]又は[2]に記載の低級オレフィンの製造方法。
[4]
前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトのカチオンサイトに対する銀カチオン占有率が、10%以上70%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
[5]
前記ゼオライト含有成形体触媒は、シリカをさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
[6]
前記反応器は、流動床式、又は固定床式の反応器である、[1]〜[5]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
[7]
前記原料は、オレフィン類をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
本実施形態の低級オレフィンの製造方法は、メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料と、ゼオライト含有成形体触媒(以下、単に「触媒」ともいう。)と、を反応器内で接触させる、接触工程を有する。また、当該原料は、該原料の総量(100質量%)に対し、当該メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を、10質量%以上含む。さらに、当該ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、下記(1)〜(4)を満たす:
(1)該ゼオライトは、中間細孔径ゼオライトである
(2)該ゼオライトは、実質的にプロトンを含まない
(3)該ゼオライトは、銀を含む
(4)該ゼオライトのシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3モル比)は、800以上2000以下である。
ここで、本明細書において、低級オレフィンとは、炭素数2〜5のオレフィンを指す(以下、炭素数を「C」と略す場合がある。)。また、好ましい低級オレフィンは、プロピレンである。
本実施形態の接触工程は、原料と、ゼオライト含有成形体触媒とを反応器内で接触させる工程である。また、接触工程において、原料は、さらにオレフィン類を含んでもよい。さらに、接触工程において、原料は、より高収率の低級オレフィンを得る観点から、本実施形態の低級オレフィンの製造方法により生成したオレフィン類の少なくとも一部をさらに含むことが好ましい。
本実施形態の原料は、少なくともメタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、オレフィン類をさらに含んでもよい。原料は、該原料の総量(100質量%)に対して、メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を、10質量%以上含み、25質量%以上含むことが好ましい。原料中に含まれるメタノールとジメチルエーテルとの合計量は100質量%以下であり、オレフィン類を含む場合には該合計量が90質量%以下であることが好ましい。
(中間細孔径ゼオライト)
本実施形態のゼオライト含有成形体触媒は、主触媒成分としてゼオライトを含む。当該ゼオライトは、中間細孔径ゼオライトである。中間細孔径ゼオライトとは、5.0Å以上6.5Å以下の細孔径を有するゼオライトをいう。また、「中間細孔径ゼオライト」という用語は、「細孔径の範囲が、A型ゼオライトに代表される小細孔径ゼオライトの細孔径と、モルデナイトやX型やY型ゼオライトに代表される大細孔径ゼオライトの細孔径の中間にあるゼオライト」を意味し、その結晶構造中にいわゆる酸素10員環を有するゼオライトである。
本実施形態のゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、実質的にプロトンを含まない。実質的にプロトンを含まないとは、後述する実施例に記載の液相イオン交換/濾液滴定法によって求める、ゼオライト中のプロトン量(酸量)が、ゼオライト1グラムあたり0.02ミリモル以下であることを意味する。好ましくは、上記ゼオライト1グラムあたりのプロトン量が、0.01ミリモル以下のゼオライトである。
本実施形態のゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、銀を含む。銀を含むとは、ゼオライトが、銀に対応する陽イオン(銀イオン)の状態で銀を含むことを意味する。ゼオライトに銀を含有させる方法としては、例えば、銀を含有していないゼオライト又はゼオライト含有成形体触媒を、公知のイオン交換法により処理する方法にて含有させる方法が挙げられる。イオン交換法によってゼオライトに銀を含有させる場合には、銀の塩を用いることが好ましく、銀の塩としては、例えば、硝酸銀、酢酸銀、及び硫酸銀が挙げられる。
本実施形態のゼオライトのシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3モル比)は、800以上2000以下である。シリカアルミナモル比が800未満であると、プロピレンを含む低級オレフィンの選択率が低下し、また、転化反応に伴うコーキングによるゼオライト含有成形体触媒の劣化が速くなる。例えば、本実施形態の製造方法を固定床2塔スウィング方式で実施する場合においては、その切り替え頻度が速くなるため、再生頻度が増加する。従って、再生劣化の進行を加速させてしまう。一方、シリカアルミナモル比が2000を超えると、触媒調製上の問題が生じる。高シリカアルミナモル比ゼオライト含有成形体触媒の触媒活性を維持するために、同等量の銀含有量に調製する際は、ゼオライトの銀カチオン占有率を高める必要がある。しかし、本実施形態のゼオライトをイオン交換によって、非プロトン、銀交換型に調製する際、銀カチオン占有率を高めようとすると、次第に交換効率が悪化する。これを回避するには、交換液中の金属濃度を上げる必要があるが、ゼオライトのシリカアルミナモル比が2000を超えると、アルカリ金属によるイオン交換、銀によるイオン交換がともに進行し難いため、本実施形態の製造方法を工業的に実施する場合において、触媒調製に長期間を要し、また、イオン交換の回数の増加が必要となる。また、過剰な薬液量が必要となり、伴って発生する廃液量も過大となるなどの問題が発生する。
本実施形態のゼオライト含有成形体触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、ジルコニア、チタニア、ケイソウ土、粘土等の多孔性耐火性無機酸化物をバインダー又は成形用希釈剤(マトリックス)(以下、両者をあわせて「バインダー等」ともいう。)として、上記のゼオライトに混合して得られる混合物を成形し、得られた成形体を触媒として用いる。触媒の強度及び触媒性能の観点から、好ましくは、アルミナ、シリカであり、触媒上に不要な酸点を形成しないという観点から、より好ましくは、シリカである。
本実施形態の反応器は、固定床式、移動床式、流動床式、及び気流搬送式のいずれの反応器も利用できるが、流動床式、又は固定床式であることが好ましく、反応活性及び温度制御が容易となる観点から、流動床式であることがより好ましい。ここで、メタノールから脱水反応によるジメチルエーテルの生成反応は、23kJ/molの発熱反応である。従って、固定床で実施する場合には、原料メタノールから一段で反応せしめようとする場合には、触媒層の温度制御が比較的に困難となる傾向にある。
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (23kJ/mol)
乳鉢でらいかいし、空気中400〜600℃の温度で焼成したゼオライト含有成形体触媒2.5gを、3.4モル/リットルのNaCl水溶液25mL中で氷冷下10分間イオン交換を行った。得られた混合物を濾過した後、50mLの純水でゼオライトを洗浄し、洗浄に用いた水を含む濾液を全量回収した。この濾液(洗浄に用いた水を含む)を0.1NのNaOH水溶液により中和滴定し、中和点からプロトン量を求め、これをゼオライト含有成形体触媒中のゼオライト含有量から、ゼオライト質量基準として換算し、プロトン量とした。
ゼオライト0.2gを5NのNaOH水溶液50gに加えた。これをテフロン(登録商標)製内管付きのステンレス製マイクロボンベに移し、マイクロボンベを密閉した。オイルバス中で15〜70時間保持することにより、ゼオライトを完全に溶解せしめた。得られたゼオライトの溶液をイオン交換水で希釈し、希釈液中の珪素、アルミニウム濃度をプラズマ発光分光分析計(ICP装置)にて測定し、その結果からゼオライトのシリカアルミナモル比を計算した。以下に、ICP装置及びその測定条件を示す。
装置:JOBIN YVON(JY138 ULTRACE)理学電気社製
珪素測定波長 : 251.60nm
アルミニウム測定波長: 396.152nm
プラズマパワー : 1.0kw
ネブライザーガス : 0.28L/min
シースガス : 0.3〜0.8L/min
クーラントガス : 13L/min
転化率(メタノール及び/又はジメチルエーテル基準の転化率)は、下記式によって算出した。
転化率={(原料中のメタノール+ジメチルエーテル)−(出口製品ガス中のメタノール+ジメチルエーテル)×100}/(原料中のメタノール+ジメチルエーテル)(質量%)
また、各成分の収率は、生成物中の水分量を除いた炭化水素基準の濃度(質量%)とした。
プロピレン純度(表中、「PY純度」と示す。)は、生成物であるC3留分(プロピレンとプロパン)中のプロピレン濃度[モル%]であり、下記式から算出して求めた。
プロピレン純度[モル%]=プロピレン[モル]/(プロピレン[モル]+プロパン[モル])×100
(工程1:触媒原料混合物の調製)
コロイダルシリ力(シリ力含有量34質量%)882gを撹拌しながら、61質量%硝酸水溶液(和光純薬製、特級試薬)18gを添加しpH=1とした後、水溶性化合物として硝酸アンモニウム(和光純薬製、特級試薬)100gをさらに添加した。このシリカ溶液を撹拌しながら、Zeolyst社製のNH4型MFI−1000ゼオライト(商品名「ZD05020」、当該ゼオライトのシリカアルミナモル比は、完全溶解させてICPで測定したところ、980であった)300gを加え、最後に水1034gを加えて、触媒原料の固形分含有量が30質量%となるよう調整し、25℃でさらに1時間撹拌して、触媒原料混合物を得た。
得られた触媒原料混合物を、スプレードライヤー(大川原化工機社製の型式OC−16)を用いて噴霧乾燥することにより、乾燥体を得た。噴霧にはディスク型アトマイザーを用い、熱風入口温度230℃、出口温度130℃で行った。
得られた乾燥体をマッフル炉にて、空気雰囲気下700℃で1時間焼成し、ゼオライト含有成形体触媒(シリカバインダー50質量%含有、平均粒子径55μm)を得た。
得られたゼオライト含有成形体触媒を1N−硝酸水溶液中に(10cc/g−ゼオライト成形体)分散させ、室温、1時間のイオン交換処理を行った。次いで濾過、水洗、乾燥を行い、H交換型ZSM−5/SiO2成形体触媒(成形体触媒A)を調製した。
得られた成形体触媒Aを、1N硝酸ナトリウム水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)中に分散させ、室温下で1時間のイオン交換処理を3回繰り返した。次いで濾過、水洗、乾燥を行い、Na交換型ZSM−5/SiO2成形体触媒を調製した。これを、0.00054N硝酸銀水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)中に分散させ、室温下で2時間イオン交換処理した。次いで濾過、水洗、乾燥して成形体触媒Bを調製した。蛍光X線分析で測定される成形体触媒Bの銀含有量は0.0465質量%であった。なお、別途、イオン交換法で求めた銀含有量は、0.047質量%とほぼ一致した。また、原料ゼオライトのシリカアルミナ比980から、該ゼオライトカチオンサイトに対する銀カチオン占有率は、25.7%であった。
得られた成形体触媒Bを、内径23.9mmφで、触媒支持とガス供給器としてのSUS製金網(目開き10μm)を設置しているステンレス製流動床型反応器に40g充填し、温度650℃、圧力0.2MPaG、スチーム流量9.6g/hr、空気530NCCMの条件(スチーム濃度27.3mol%、酸素濃度15.3mol%)で24時間スチーミング処理を行った。スチーミング処理後の成形体触媒Bのプロトン量を液相イオン交換/濾液滴定法により求めたところ0.0012mmol/g−ゼオライトであった。
スチーミング処理後の成形体触媒B25.5gを、内径23.9mmφで、触媒支持ガス供給器としてのSUS製金網(目開き10μm)を設置しているステンレス製流動床型反応器に充填し、温度550℃、圧力0.14MPaG、メタノール流量25.0g/hrの条件(LV2.2cm/sec、接触時間2.95sec)にてメタノール転化反応を行った。原料供給開始直後から、反応生成物を反応器出口から直接ガスクロマトグラフ(TCD、FID検出器)に導入して組成を分析した。なお、ガスクロマトグラフによる分析は以下の条件で行った。
装置: 島津製作所社製の商品名「GC−17A」
カラム:米国SUPELCO社製のカスタムキャピラリーカラム、商品名「SPB−1」(内径0.25mm、長さ60m、フィルム厚3.0μm)
サンプルガス量:1mL(サンプリングラインは200〜300℃に保温)
昇温プログラム:40℃で12分間保持し、次いで5℃/分で200℃まで昇温した後、200℃で22分間保持する。
スプリット比:200:1
キャリアーガス(窒素)流量:120mL/分
FID検出器:エアー供給圧50kPa(約500mL/分)、水素供給圧60kPa(約50mL/分)
測定方法:TCD検出器とFID検出器を直列に連結して、水素及び炭素数1及び2の炭化水素をTCD検出器で検出し、炭素数3以上の炭化水素をFID検出器で検出する。分析開始10分後に、検出の出力をTCDからFIDに切り替えた。適宜、反応生成物の分析を実施しながら、100時間継続して反応を行った。各時間(実施例1では、4時間、25時間、50時間、100時間)での分析結果を表1に示す。
工程5において、成形体触媒Bの調製を行わず、工程6において、成形体触媒Bを成形体触媒Aに替えてスチーミング処理を行い、工程7において、スチーミング処理後の成形体触媒Bを、そのスチーミング処理後の成形体触媒Aに替えてメタノール転化反応を行った他は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
工程6において、24時間スチーミング処理を48時間スチーミング処理に変えた他は、比較例1と同様に実施した。メタノール転化反応の開始から3時間目で、反応器出口のガスを分析評価した。その結果、ジメチルエーテルが検出され、メタノール脱水反応が完結していないことが判ったので、反応評価は中止した。結果を表1に示す。
工程1において、NH4型MFI−1000ゼオライトを、クラリアント触媒株式会社製の商品名「MFI−240」(公称シリカアルミナ比が240のZSM−5型ゼオライト)に替えて触媒原料混合物を調製した他は比較例1と同様に実施した。即ち、工程2〜4を行った結果、成形体触媒Cを得て、その成形体触媒Cを用いて工程6、7を行った。結果を表1に示す。
次に、本実施形態の作用効果と関連する、触媒活性の制御方法について、メタノールを原料とする固定床反応によって検討した。
シリカアルミナモル比が1040(該ゼオライト含有成形体触媒を完全溶解させてICP法で測定して求めた。)であるZSM5型ゼオライトを含有した成形体触媒(SiO2バインダー30質量%含有、1.6mmφ*5〜10mmL 日揮ユニバーサル株式会社製)のH型ゼオライト含有成形体触媒を、1N硝酸ナトリウム水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)中に分散させ、室温下で1時間のイオン交換処理を3回繰り返した。次いで濾過、水洗、乾燥を行い、Na型ゼオライト成形体触媒を調製した。これを、0.0020N硝酸銀水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)中に分散させ、室温下で2時間イオン交換処理した。次いで濾過、水洗、乾燥して成形体触媒Dを調製した。蛍光X線分析で測定される成形体触媒Dの銀含有量は0.084質量%であった。また、銀の該ゼオライトカチオンサイトに対する銀カチオン占有率は、34.8%であった。
得られた成形体触媒Dは、内径27.2mmφの石英ガラス製反応器に10gを充填し、常圧下、温度650℃、スチーム流量31.8g/hr、窒素流量73NCCM、空気103NCCMの条件(スチーム濃度80mol%、酸素濃度2.5mol%)で36時間スチーミング処理を行った。スチーミング処理後の成形体触媒Dのプロトン量は、0.0014mmol/g−ゼオライトであった。
スチーミング処理後の成形体触媒Dの8.6gを、温度計鞘管を付設した内径15mmφステンレス製固定床反応管(断面積1.6cm2)に充填し、温度550℃、圧力0.14MPaG、メタノール流量12.3g/hr、窒素36NCCMの条件(接触時間1.76sec、WHSV1.44hr−1)にてメタノール転化反応を行った。尚、反応温度プロファイルは経時的に変化する為、触媒層最高温度を550℃とする様に、適宜、外部電気炉にて調整した。原料供給開始から反応生成物を反応器出口から直接ガスクロマトグラフィー(TCD、FID検出器)に導入して組成を適時、分析した。尚、反応は、反応器出口製品ガス中にジメチルエーテルが確認されるまで継続した。35時間目に、ジメチルエーテルが検出された。結果を表2に示す。
工程1において、0.0020N硝酸銀水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)を0.0015N硝酸銀水溶液(10cc/g−ゼオライト成形体)に替えた以外は、実施例2と同様の方法により成形体触媒Eを調製した。工程2において、成形体触媒Eを、成形体触媒Dに替えてスチーミング処理を行い、工程3において、スチーミング処理後の成形体触媒Dを、そのスチーミング処理後の成形体触媒Eに替えてメタノール転化反応を行った。結果を表2に示す。蛍光X線分析で測定される、スチーミング処理前の成形体触媒Eの銀含有量は0.057質量%であり、該ゼオライトカチオンサイトに対する銀カチオン占有率は、23.6%であった。また、工程2のスチーミング処理後の成形体触媒Eのプロトン量は、0.0015mmol/g−ゼオライトであった。さらに、工程3において、52時間目に、ジメチルエーテルが検出された。結果を表2に示す。
次に、実施例2、3との比較として、従来のH型ゼオライト含有成形体触媒において、本実施形態の課題である、触媒活性の前処理による制御方法をスチーミング処理により行う方法について、メタノールを原料とする固定床反応によって検討した。
工程2において、成形体触媒Dをシリカアルミナモル比が42であるZSM−5型ゼオライトを含有したH型ゼオライト含有成形体触媒(SiO2バインダー50質量%含有、圧縮成形、6〜20メッシュ破砕分級品)(成形体触媒G)に替えた他は実施例2と同様の方法によりメタノール転化反応を行った。結果を表3に示す。
実施例3で固定床反応評価に用いた触媒Eを回収し、マッフル炉で580℃、5時間焼成し、触媒に付着したコークを除去再生した。焼成再生後の触媒を用いて、実施例3の工程3:接触工程と同様の方法でメタノール転化反応を行った。この反応及び再生処理を繰り返しながら、反応成績を評価することで、触媒活性劣化の有無を確認した。4、5サイクル目における、反応器出口製品ガス中にジメチルエーテルが確認されるまでの時間(メタノール完全転化維持時間)は、それぞれ54、53時間であり、触媒活性、コーキング劣化挙動は変化していなかった。このことから、ここで用いた触媒は、再生処理による活性劣化(脱アルミによる劣化)が起きていないことが判った。結果を表4に示す。
本実施形態の触媒の再現性を確認する目的で、実施例3と同等の検証をさらに2回行った。まず、実施例3と同様に触媒Eを調製した。次に得られた触媒Eの一部を、実施例2の工程2と同様の方法によりスチーミング処理を施して、触媒E−2Sを得た。また、別途、触媒Eの一部を、実施例2の工程2と同様の方法によりスチーミング処理を施して、触媒E−3Sを得た。触媒E−2Sのプロトン量及びE−3Sのプロトン量は、それぞれ、0.0013、0.0015mmol/g−ゼオライトであった。触媒E−2S、E−3Sを用いて、実施例2の工程3と同様の方法により接触工程を行った。結果を実施例3の結果と共に表5に示す。
スチーミング処理工程に於ける、酸素共存の影響を確認する目的で、実施例3で得られた、触媒Eを以下のスチーミング処理条件にて処理した。
成形体触媒Eを、内径27.2mmφの石英ガラス製反応器に10gを充填し、常圧下、温度650℃、スチーム流量31.8g/hr、窒素流量176NCCMの条件(スチーム濃度80mol%、窒素濃度20mol%)で36時間スチーミング処理を行ない、触媒E−4Sを得た。また、触媒E−4Sと全く同じ条件で、他の成形体触媒Eにスチーミング処理を施し、触媒E−5Sを得た。触媒E−4Sのプロトン量、及び、E−5Sのプロトン量は、0.0014、0,0012mmol/g−ゼオライトであった。触媒E−4S、E−5Sを用いて、実施例2の工程3と同様の方法により接触工程を行った。結果を表5に示す。
Si/Al/Pモル比が2/12.6/9.9のSAPO−34を圧縮成形した触媒Hを準備した。触媒Hを破砕し、8〜20メッシュ触媒に分級し、該触媒8.56gを温度計鞘管を付設した内径15mmφステンレス製固定床反応管(断面積1.6cm2)に充填し、以下の条件にて反応を行なった。
原料供給速度 :メタノール 6.2g/hr、窒素 18NCCM
反応圧力 :0.14MPa/G
反応温度 :420℃ WHSV :0.72hr−1
結果を表6に示す。
メタノールを原料とする固定床評価実験では、ジメチルエーテルへの脱水反応時の発熱が大きく、触媒層温度を均一維持することが困難であり、触媒性能評価に影響を与えている可能性も考えられたため、ジメチルエーテルと水を供給しての評価反応を行った。
比較例8、9は、スチーミング処理後の成形体触媒Eを、それぞれ、比較例4でも用いた36時間スチーミング処理後の成形体触媒F、比較例5でも用いた36時間スチーミング処理後の成形体触媒Gに、替えた他は実施例7と同様にしてジメチルエーテル転化反応を行った。反応は24時間継続したが、いずれにおいても、未反応ジメチルエーテルが検出されることはなかった。結果を表7に示す。
メタノール原料の代替として、ジメチルエーテルと水とを供給し、オレフィン原料との混合系として、1−ブテンガス供給による固定床評価反応を行った。
上記固定床反応における条件を、触媒E5.35gを、温度計鞘管を付設した内径15mmφステンレス製固定床反応管(断面積1.6cm2)に充填し、温度550℃、圧力0.10MPaG、1−ブテン流量22.8g/hr、窒素92.6SCCM/min(LV3.68cm/sec、接触時間1.3sec)とした他は、実施例8と同様に、ブテン転化反応を行った。尚、実施例8、比較例10は、ジメチルエーテルが脱水してエチレンを生成と仮定した場合に、供給ガス中のオレフィン濃度を62.1mol%と等しくしている。結果を表8に示す。
Claims (6)
- メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料と、ゼオライト含有成形体触媒と、を反応器内で接触させる、接触工程を有し、
前記原料は、該原料の総量に対し、前記メタノール及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を、10質量%以上含み、
前記ゼオライト含有成形体触媒は、水蒸気及び酸素の存在下、500℃以上において加熱処理されており、
前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、下記(1)〜(4)を満たす、炭素数2〜5のオレフィンの製造方法:
(1)該ゼオライトは、中間細孔径ゼオライトである
(2)該ゼオライトは、液相イオン交換/濾液滴定法によって求める、ゼオライト中のプロトン量(酸量)が、ゼオライト1グラムあたり0.02ミリモル以下である
(3)該ゼオライトは、銀を含む
(4)該ゼオライトのシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3モル比)は、800以上2000以下である。 - 前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトは、アルカリ金属をさらに含む、請求項1に記載の炭素数2〜5のオレフィンの製造方法。
- 前記ゼオライト含有成形体触媒中のゼオライトのカチオンサイトに対する銀カチオン占有率が、10%以上70%以下である、請求項1又は2に記載の炭素数2〜5のオレフィンの製造方法。
- 前記ゼオライト含有成形体触媒は、シリカをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素数2〜5のオレフィンの製造方法。
- 前記反応器は、流動床式、又は固定床式の反応器である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素数2〜5のオレフィンの製造方法。
- 前記原料は、オレフィン類をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素数2〜5のオレフィンの製造方法。
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