以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
1.荷受台昇降装置
図1は本発明の一実施の形態に係る格納式荷受台昇降装置を搭載した車両の全体構造を表す側面図である。本願明細書においては、図1の左右を車両の前後とする。
図1に示した車両は、車枠1と、車枠1の前方に設けた運転室2と、車枠1上に搭載した荷台3と、車枠1の下側後部に設けた格納式の格納式荷受台昇降装置4とを備えている。この格納式荷受台昇降装置4は、例えば走行運転時には荷受台5を折り畳んで車枠1の下側の格納位置に格納する一方、荷役作業(荷台3に対する荷物の積み下ろし作業)時には荷受台5を車枠1の外側(本実施形態では後方)に引き出して展開し、荷台3の床面高さと地面高さとの間で昇降させて荷役作業を支援する。
図2は格納式荷受台昇降装置4の詳細構造を表す斜視図、図3は左側面図、図4は図3中のIV−IV線による左端近傍部の矢視断面図、図5は図4中のV−V線による矢視断面図、図6はスライダ(後述)の左側面図、図7は図6中のVII−VII線による矢視断面図、図8は図5に示した荷受台昇降装置の荷受台を引き出した状態の図である。図3においてはパワーユニット26及び荷台外側操作装置27を取り外した状態を表している。
図2−図8に示したように、格納式荷受台昇降装置4は、荷物を積載する上記の荷受台(プラットフォーム)5と、荷受台5等を前後方向に移動させるスライド駆動部6と、荷受台5を昇降させる昇降駆動部7とを備えている。
1−1.スライド駆動部
スライド駆動部6は、左右一対のガイドレール8、左右のスライダ9、連結部材10、左右のブラケット部11、支持ローラ12、支持フレーム13(図3参照)、及びスライドシリンダ14を備えている。
ガイドレール8は、車枠1の下側後部に前後方向に延在するように取り付け部8aを介して取り付けてある。このガイドレール8は左右に平行に並べて2本設けられていて、左右のガイドレール8は左右に延びるステー8bによって前端部で連結されている。また、ガイドレール8は水平で上下に対面する天板部及び底板部を上下に延びる中板部で連結したようなI型の断面形状をしている。ガイドレール8には上向きの面も下向きの面も複数存在するが、以降、ガイドレール8の上面と記載した場合にはも上側の面(天板部の上面)、下面と記載した場合には最もした側の面(底板部の下面)を指すこととする。但し、ガイドレール8の断面形状がI型以外の他の形状である場合、例えばレールの延在する方向と直交する方向(本例では左右方向)に段差がある場合等には、上面又は下面は必ずしも最も上側又は下側の面に限られない。
左右のスライダ9はそれぞれ、2枚のブラケット9a、上走行ローラ9b、下走行ローラ9c及びスクレーパ9d,9eを備えている。
2枚のブラケット9aはスライダ9の本体をなす部材であり、ガイドレール8、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cを挟んで左右に対向していて、ガイドレール8とは僅かな間隙を介して離れている。
上走行ローラ9bはガイドレール8の上面に外周面を接触させ、スライダ9の移動に伴ってガイドレール8の上面を転動するように設けられている。下走行ローラ9cはガイドレール8の下面に外周面を接触させ、スライダ9の移動に伴ってガイドレール8の下面を転動するように設けられている。つまり、ガイドレール8を上下に挟んだ上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cによってスライダ9がガイドレール8に沿って走行する構成である。スライダ9及びこれに支持された部材の重量は、一般的な格納式荷受台昇降装置のようにパッド等を介することなく、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cを介してガイドレール8で支持されている。このとき、スライダ9は格納式荷受台昇降装置4の重心よりも前方に位置するため、上走行ローラ9bを下走行ローラ9cよりも後方に配置してモーメントを支持している。ガイドレール8は上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cからの面圧を受けるのに十分な強度を有するように本実施形態では鉄製としてある。
上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cの軸(ピン)9fは、ガイドレール8を挟む2枚のブラケット9aに両端が支持された両持ち梁構造をしていて、軸9fによって2枚のブラケット9aが連結されている。また、本実施形態では、軸9fの内部には外周部に一部開口したグリス供給通路9g(図7参照)が設けられており、プラグ(不図示)を外して注入口9hからグリスガン等でグリスを注入することにより、上走行ローラ9bや下走行ローラ9cに給脂できるようになっている。
スクレーパ9d,9eは、ガイドレール8の表面に接触するように、ガイドレール8を挟む2枚のブラケット9aの間に設けられている。具体的には、スクレーパ9dはブラケット9aに固定したブラケット9iにボルトで固定されていて、先端部(下端部)をガイドレール8の上面に接触させている。スクレーパ9eはブラケット9aに固定したブラケット9jにボルトで固定されていて、先端部(上端部)をガイドレール8の上面に接触させている。よって、ガイドレール8に沿ってスライダ9が移動する際に、スクレーパ9d,9eはガイドレール8の表面に摺接する。スクレーパ9d,9eは、対応する上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cに対して、荷受台5を引き出す方向(この例では後側)に位置していて、引き出し動作時に上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cに先行するようになっている。スクレーパ9d,9eは例えばゴムや樹脂等で形成されており、ガイドレール8の表面に対して起立した姿勢で保持されている。本実施形態では、スクレーパ9d,9eをガイドレール8の表面に対して垂直に起立させてあるが、ガイドレール8の表面に対して、例えばガイドレール8に向かって走行ローラから離れる方向(本実施形態では後方)に傾斜させる等、スクレーパ9d,9eを移動方向に適宜傾斜させて起立させても良い。
連結部材10は左右のスライダ9を連結する部材であり、両端部はブラケット9aを貫通してスライダ9から外側(機体幅方向の外側)に突出している。ブラケット部11は連結部材10の左端に設けられている。支持フレーム13は、連結部材10から後方に延び、左右のスライダ9の間の中央付近に位置している。支持ローラ12は格納及び展開の際に荷受台5が転接するものであり、回転軸を左右に延ばした姿勢で支持フレーム13の先端(後端)に回転自在に設けられている。スライドシリンダ14は、一端がブラケットを介してステー8bに、他端が支持フレーム13に対して固定されている。スライドシリンダ14の伸縮動作に伴って上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cによりガイドレール8に沿って左右のスライダ9が移動し、連結部材10、ブラケット部11、支持フレーム13、支持ローラ12、荷受台5等がスライダ9と一体となって前後に移動する。
また、本実施形態では、ガイドレール8の上面及び下面にそれぞれ段差8c,8d(図6等参照)が設けられている。段差8c,8dは、荷受台5が格納位置から引き出される際に上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cが乗り越えなければならない位置、具体的には荷受台5が格納位置にあるときにそれぞれ上走行ローラ9b、下走行ローラ9cの後側の位置に設けてある。ここで言う「上走行ローラ9b、下走行ローラ9cの後側」とは、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cそれぞれのガイドレール8に対する接点の後側のことであり、走行ローラの後縁よりも後側の意味に限定されない。段差8c,8dは、荷受台5が格納位置にあるときに、それぞれ上走行ローラ9b、下走行ローラ9cの外周面に接するか僅かな間隙を介して近接する位置に設けることが望ましい。本実施形態では、ガイドレール8の上面において格納時に上走行ローラ9bが停止する部分がそれより後側の部分より相対的に低くなるようにガイドレール8の天板部が薄く形成されている。同様に、ガイドレール8の下面において格納時に下走行ローラ9cが停止する部分がそれより後側の部分より相対的に高くなるようにガイドレール8の底板部が薄く形成されている。つまり、これら天板部及び底板部の厚みの違いが段差8c,8dになっている。但し、段差8c,7dがこのような態様に限らず、単にガイドレール8の上面及び下面に突起物を設けたような構成であっても良い。
左右のガイドレール8の下部には、それぞれ押し付けローラ8e(図5等参照)が設けられている。押し付けローラ8eは、軸を左右に延ばした姿勢でブラケット8fを介してガイドローラ8の下面に回転自在に支持されている。押し付けローラ8eは、格納動作時に上昇してくる荷受台5に接触するようにガイドレール8の後部に配置してある。また、本実施形態ではガイドレール8の上下に挟み込むようにスライダ9のブラケット9aに押え板9l,9m(図5等参照)が設けられている。ガイドレール8の上面及びステー8bには、格納時に押え板9l,9mに位置が対応するようにパッド8g,8hが設けられている。格納位置にスライダ9が引き込まれる際、押え板9l,9mがパッド8g,8hに接触し、押え板9l,9mでパッド8g,8hを上下から挟んで押え込むことでスライダ9が遊びなく上下に拘束されるようになっている。なお、スクレーパ9dのブラケット9i及び押え板9lには、上走行ローラ9bの上側を覆うローラカバー9kがボルト等で固定されている(図4及び図6はローラカバー9kを取り外した状態を図示している)。
このとき、ガイドレール8には、後端センサ15と中間センサ16(図12参照)が設けられている。例えば後端センサ15はガイドレール8の後部に天板部及び底板部の間に位置するように設けられている。スライダ9には、ブラケット9aの内壁面にストッパ9n(図8等参照)が設けられていて、スライダ9が後端位置まで後進して、図8に示したようにガイドレール8の後端部近傍に設けたストッパ8iにストッパ9nが当たると、ストッパ9nが後端センサ15で検出されてスライダ9が後端位置にあることが検出される。中間センサ16は、スライダ9が前端位置と後端位置との間の設定位置(以下「中間位置」)にあるかどうかを検出するセンサである。後端センサ15及び中間センサ16には、例えば近接センサやリミットスイッチを用いることができる。「前端位置」は格納時の位置、「後端位置」は荷役作業時の位置である。
1−2.昇降駆動部
昇降駆動部7は、第1アーム(チルトアーム)17、第2アーム(リフトアーム)18、第3アーム(コンプレッションアーム)19及びリフトシリンダ20をそれぞれ左右一組ずつ備えている。第1アーム17は、連結部材10に設けたブラケット10aに上端部が回動可能に連結されている。第2アーム18は、基端部(前端部)が第1アーム17に、先端部(後端部)が荷受台5にそれぞれ回動可能に連結してある。第3アーム19は、連結部材10に設けたブラケット10a(図4参照)に基端部(前端部)が、荷受台5に先端部(後端部)がそれぞれ回動可能に連結してある。リフトシリンダ20は、ロッド側が第1アーム17の下端部に、ボトム側が第2アーム18にそれぞれ回動可能に連結してある。第2アーム18及び第3アーム19はスライダ9に対して荷受台5を昇降可能に連結する平行リンクを形成し、この平行リンクがリフトシリンダ20の伸縮駆動に伴って上下に回動駆動することで荷受台5が水平姿勢を保って昇降する。
1−3.荷受台
荷受台5は、上記昇降駆動部7に支持された荷受台基部21と、荷受台基部21にヒンジ22を介し回動可能に連結された荷受台本体部23とを備えている。ヒンジ22は、両端が荷受台基部21及び荷受台本体部23にそれぞれピン(不図示)を介し回動可能に連結されており、荷受台基部21に対する荷受台本体部23の回動機構が、ヒンジ22を介する二重関節構造となっている。荷受台本体部23は、格納時には各図に示したように荷受台基部21の上部に折り重ねられる。第2アーム18と荷受台基部21との連結部(又はヒンジ22)には、荷受台5が「中間高さ」にあるか否かの判断の基礎となる値として格納動作中の荷受台5の姿勢(折り畳み状態)を検出するゲートセンサ56(図12参照)が設けられている。このゲートセンサ56には、第2アーム18(又は荷受台基部21)に対する荷受台基部21(又はヒンジ22)の角度を検出する角度センサを用いることができる。
ここで、ガイドレール8に対するスライダ9の位置について、「前端位置」「中間位置」「後端位置」を前述の通り定義した。ここでは、以下の説明のために、荷受台5の位置について、これら「前端位置」「中間位置」「後端位置」を用いて次のように定義しておく。まず、スライダ9が前端位置にあって荷受台5がガイドレール8に接触しているとき、この状態を荷受台5が「格納位置」にあるという。次に、スライダ9が後端位置にあって荷受台5が接地しているとき、この状態を荷受台5が「接地位置」にあるという。そして、格納位置にある荷受台5の高さを「格納高さ」、接地位置(グランドレベル)にある荷受台5の高さを「接地高さ」と定義すると、格納高さと接地高さの間において設定した高さが、前述した「中間高さ」である。
1−4.落下防止部材
ガイドレール8及び荷受台5には、格納位置で荷受台5の下方への移動を規制し荷受台5の不測の落下を抑制する落下防止部材75(図5等参照)が備えられている。落下防止部材75は、ガイドレール8の後端部の下面に取り付けた第1部材76(図8参照)、及び荷受台本体部23の裏面(格納時に上を向く面)に取り付けた第2部材77(図8参照)を備えている。落下防止部材75の平面図を図9に、背面図を図10に示す。
図9及び図10に示すように、第1部材76は本実施形態では左右に延びる鉛直断面がI型に形成された部材であり、取り付け部76a、支持部76b及び被拘束部76cを備えている。取り付け部76aは、ガイドレール8の下面にボルト等で固定する水平な板状の部位である。被拘束部76cは支持部76bを介して取り付け部76aに連結された水平な板状の部材であり、取り付け部76aを挟んでガイドレール8の下面に間隙を介して上下に対面している。支持部76bも板状に形成されていて、前後に延びる鉛直面に沿っている。被拘束部材76cは支持部76bの左右の少なくとも一方に延びていて、本実施形態では支持部76b及び被拘束部76cをT字型に連結している。第1部材76をガイドレール76に溶接等で取り付ける場合、取り付け部76aは不要である。
第2部材77は荷受台5が格納位置にあるときに第1部材76と位置が対応するように荷受台本体部23の裏面に取り付けられており、取り付け部77a、支持部77b及び拘束部77cを備えている。取り付け部77aは拘束部77cよりも左右及び前方に広く面積を確保した水平な板状の部材であり、左右両側のそれぞれ前後位置で貫通孔(この例では長穴)77dに通したボルト等で荷受台本体部23に固定されている。第2部材77を荷受台5に溶接等で取り付ける場合、取り付け部77aは不要である。本実施形態では、荷受台5が格納位置に移動する際、取り付け部77aにおける拘束部77cの前側に広がる部分に前述した押し付けローラ8eが乗り上げるようになっている(図5参照)。
取り付け部77aの後部は鉛直に折り曲げられて端壁77eを形成している。拘束部77cは左右の支持部77bを介して取り付け部77aに連結された水平な板状の部材であり、支持部77b及び端劇77eと共に前側が開口した箱型を形成している。拘束部77cは取り付け部77aを挟んで荷受台本体部23の裏面に間隙を介して上下に対面すると共にスリット77fを有している。スリット77fはガイドレール8と同じく前後方向に延び、拘束部77c等で構成する箱型の開口側である入り口部分(厳密には拘束部77cにおけるスリット77fを挟んで対向する部分の前端部)にテーパ77gが設けられていて、スリット77fの入り口部分が広がっている。
荷受台5が格納位置にあるとき、第1部材76の支持部76bがスリット77fに収まると同時に、第2部材77の拘束部77cと荷受台本体部23の裏面との対向面間に第1部材76の被拘束部76cが収まる。以降、この状態を落下防止部材75の「機能状態」、第2部材77から第1部材76が外れた状態を落下防止部材75の「非機能状態」という。
1−5.パワーユニット
図2等に示すように、スライド駆動部6の左側のブラケット部11には、パワーユニット26及び荷台外側操作装置27が設けられている。パワーユニット26はスライドシリンダ14及びリフトシリンダ20を駆動するための動力装置である。格納式荷受台昇降装置4は荷台外側操作装置27によって操作することができる。
図11はパワーユニット26の一構成例を表す回路図である。
この図11に示したパワーユニット26は、電動モータ28、電動モータ28によって駆動される油圧ポンプ29、油圧ポンプ29の吸込側に設けたオイルタンク30、油圧ポンプ29の吐出管路29aの圧油をリフトシリンダ20に供給する圧油供給通路31、圧油供給通路31の流れを連通又は遮断する上昇動作用制御弁32、圧油供給通路31における上昇動作用制御弁32の下流側から分岐してオイルタンク30に接続する圧油戻し通路33、圧油戻し通路33の流れを連通又は遮断する下降動作用制御弁34、下降動作用制御弁34の下流側に設けた流量制御弁35、油圧ポンプ29の吐出圧の最大値を規定するメインリリーフ弁36、及び電動モータ28とバッテリ(不図示)との間に介設したコンダクタリレー37を備えている。本実施の形態では、上昇動作用制御弁32と下降動作用制御弁34が、油圧ポンプ29からリフトシリンダ20への圧油の流れを制御するリフトシリンダ用制御弁を構成する。
例えば、荷役動作又は格納動作における荷受台5の上昇動作時には、無線操作装置46(後述)等からの操作信号に応じて制御装置45から出力される指令信号に従って、コンダクタリレー37のコイル37aに通電されて通常開き状態の接点37bが閉じ、接点37bを介してバッテリから電動モータ28に給電されて油圧ポンプ29が駆動される。同時に、上昇動作用制御弁32のソレノイド部32aに駆動指令信号が入力され、上昇動作用制御弁32が図11中左側の連通位置に切り換わる。このとき、下降動作用制御弁34は図11中下側の遮断位置であるから、油圧ポンプ29からの圧油が圧油供給通路31を介しリフトシリンダ20のボトム側に供給され、リフトシリンダ20が伸長し、荷受台5が上昇する。
一方、荷役動作又は展開動作における荷受台5の下降動作時には、無線操作装置46等からの操作信号に応じて制御装置45から出力される指令信号に従って接点37bが開き、電動モータ28及び油圧ポンプ29が停止すると共に、上昇動作用制御弁32が図11中右側の遮断位置になる。同時に、下降動作用制御弁34のソレノイド部34aに駆動指令信号が入力され、下降動作用制御弁34が図11中上側の連通位置に切り換わる。これにより、リフトシリンダ20のボトム側が圧油戻し通路33を介しオイルタンク30に連通し、荷受台5が自重で下降する。
また、パワーユニット26は、油圧ポンプ29の吐出管路29aから分岐してスライドシリンダ14のロッド側に接続する圧油供給通路38、圧油供給通路38に設けた絞り弁39及び逆止弁40、圧油供給通路38から分岐してスライドシリンダ14のボトム側に接続する圧油供給通路41、圧油供給通路41の流れを連通又は遮断する後進動作用制御弁42、後進動作用制御弁42の下流側で圧油供給通路41から分岐してオイルタンク30に接した圧油戻し通路43、及び圧油戻し通路43の流れを連通又は遮断する前進動作用制御弁44を備えている。
例えば、展開動作における荷受台5のスライド動作時には、後述する無線操作装置46等からの操作信号に応じて制御装置45から出力される指令信号に従って、コンダクタリレー37の接点37bが閉じて電動モータ28及び油圧ポンプ29が駆動され、同時に後進動作用制御弁42のソレノイド部42aに駆動指令信号が入力され、後進動作用制御弁42が図11中上側の連通位置に切り換わる。このとき、前進動作用制御弁44は図11中下側の遮断位置であるから、油圧ポンプ29からの圧油が圧油供給通路41を介しスライドシリンダ14のボトム側に供給され、ロッド側との受圧面積差によってスライドシリンダ14が伸長し、荷受台5等が後方にスライドする。
一方、格納動作における荷受台5のスライド動作時には、後述する無線操作装置46等からの操作信号に応じて制御装置45から出力される指令信号に従って、コンダクタリレー37の接点37bが閉じて電動モータ28及び油圧ポンプ29が駆動され、同時に前進動作用制御弁44のソレノイド部44aに駆動指令信号が入力され、前進動作用制御弁44が図11中上側の連通位置に切り換わる。このとき、後進動作用制御弁42は図11中下側の遮断位置であるから、油圧ポンプ29からの圧油が圧油供給通路38を介しスライドシリンダ14のロッド側に供給され、スライドシリンダ14のボトム側からの圧油が圧油戻し通路43を介してオイルタンク30に流出する。この結果、スライドシリンダ14が収縮し、荷受台5等が前方にスライドする。
なお、スライダ9が確実に後端位置にある状態で荷受台5を昇降させるため、リフトシリンダ20を伸長させる間、後進動作用制御弁42を連通位置に切り換えて既述したストッパ8i,9nが押し合うように構成することもできる。荷受台5の下降時も油圧ポンプ29を駆動し、後進動作用制御弁42のボトム側に圧油を供給して、スライダ9を後端位置に付勢するように構成することもできる。また、スライダ9の後進時に瞬間的に前進動作用制御弁44を連通位置に切り換え、スライドシリンダ14を圧抜きするように構成することもできる。
本実施の形態においては、メインリリーフ弁36よりも下流側で後進動作用制御弁42及び前進動作用制御弁44よりも上流側の位置において吐出管路29aから分岐して圧油戻し通路43に接続したバイパス通路71を有しており、このバイパス通路71に、サブリリーフ弁73と切換弁72とを設けている。切換弁72は、そのソレノイド駆動部72aへの駆動信号によって切り換えポジションが連通位置(図中上側の位置)又は遮断位置(図中下側の位置)に切り換わり、その切り換えポジションによってサブリリーフ弁73への圧油の流れを連通又は遮断する。切換弁72はサブリリーフ弁73の上流側に設けているが、下流側に設けても良い。サブリリーフ弁73は、そのリリーフ圧(例えば6MPa程度)がメインリリーフ弁36のリリーフ圧(例えば20MPa程度)よりも低く設定してあり、切換弁72が連通位置に切り換わって吐出管路29aに接続した際には、吐出管路29aの圧油の最大値をメインリリーフ弁36のリリーフ圧よりも低い値に規定する。
また、油圧ポンプ29の吐出管路29aには、押し付けローラ8eを介してガイドレール8に荷受台5が押し付けられたことを検出する押圧センサとして圧力センサ74が設けられている。ガイドレール8に荷受台5が押し付けられると吐出管路29aの圧力が上昇することから、圧力センサ74の検出値が閾値(設定値)を超えたらガイドレール8に荷受台5が接触したと判定できる。
1−6.制御装置
図12は格納式荷受台昇降装置4に備えられた制御装置の一構成例を周辺機器と併せて表す機能ブロック図である。図12に示した制御装置45は、車両側(又はパワーユニット26内)に設けられている。この制御装置45は、格納式荷受台昇降装置4の電源(バッテリ)57に電源スイッチ58を介して接続しており、電源スイッチ58によって電源の入り切りが切り換えられる。電源スイッチ58は、例えば車両の運転室2内やパワーユニット26等に設置することができる。制御装置45に入力される操作信号には、荷台外側操作装置27が出力する有線信号の他、無線操作装置(リモコン)46が出力する無線信号が含まれる。
荷台外側操作装置27は、例えば、押しボタン式の上げ動作スイッチ47A及び下げ動作スイッチ47Bを備えたペンダント操作方式のものである。この荷台外側操作装置27は、上げ動作スイッチ47A又は下げ動作スイッチ47Bの操作に応じた操作信号を制御装置45にケーブル等を介して出力する。
無線操作装置46は、上げ動作スイッチ48A、下げ動作スイッチ48B及び電源スイッチ48C、並びに送信部49を備えている。上げ動作スイッチ48A、下げ動作スイッチ48B及び電源スイッチ48Cは押しボタン式のスイッチである。送信部49は、上げ動作スイッチ48A又は下げ動作スイッチ48BのON・OFF状態等のシリアルデータを生成し、このシリアルデータを無線信号として送信する。無線操作装置46はオペレータが携帯することもできるが、運転室2や荷台3の中等に保管される場合もある。
制御装置45は、入力部50,51、記憶部(メモリ)52、演算部(CPU)53及び出力部54を備えている。入力部50は、後端センサ15、中間センサ16、ゲートセンサ56及び圧力センサ74からの検出信号、荷台外側操作装置27からの操作信号を入力する機能部である。入力部51は、無線操作装置46からの無線操作信号を受信する機能部である。記憶部52は、制御プログラム(例えばシーケンス制御やタイマ制御等に基づいたプログラム)や制御閾値を記憶する機能部である。演算部53は、記憶部52に記憶された制御プログラムに従って演算処理を実行しシリンダ14,20の動作を指示する指令信号等を生成する機能部である。出力部54は、演算部53で生成した指令信号を各制御弁32,34,42,44,72のソレノイド部32a,34a,42a,44a,72aやコンダクタリレー37に適宜出力する機能部である。
2.動作
続いて格納式荷受台昇降装置4の動作を説明する。
2−1.展開動作
図13は制御装置45による荷受台5の展開動作の制御手順を表したフローチャート、図14は展開動作中の格納式荷受台昇降装置4の状態と入出力信号の入り切りとの関係について表形式でまとめた模式図である。
これらの図に示したように、格納式荷受台昇降装置4の展開動作中、制御装置45は、第1の引き出し動作、第1の下降動作、第2の引き出し動作、第2の下降動作といったように、格納位置から接地位置までステップ状に荷受台5が移動するようにリフトシリンダ20及びスライドシリンダ14の動作を指示する。すなわち、図1に矢印で示した格納動作と反対の動作を指令する。第1の引き出し動作は、格納位置から中間位置まで荷受台5を引き出し、機能状態にある落下防止部材75を非機能状態にする動作である。第1の下降動作は、中間位置まで引き出した荷受台5を中間高さまで下降させる動作である。第2の引き出し動作は、中間高さで荷受台5を後端位置まで引き出す動作である。第2の下降動作は、後端位置で荷受台5を中間高さから下降させて接地させる動作である。詳しくは以下の通りである。
(1)第1の引き出し動作
図13のステップ101−103の手順と図14の最上段の「第1の引出」の図示を併せて参照して第1の引き出し動作を説明する。
制御装置45は、操作装置27又は47の下げ操作スイッチ47B又は48Bの操作信号が入力されたかどうかを判断する(ステップ101)。操作信号が入力された場合には、コンダクタリレー37(図11参照)に通電して油圧ポンプ29を駆動すると共に、後進動作用制御弁42を開いてスライダ9を前端位置から後進させる(ステップ102)。操作信号の入力がない間はステップ101を繰り返して操作信号の入力を待つ。このとき、後進動作用制御弁42を開くと同時に、下降動作用制御弁34及び前進動作用制御弁44を極短時間(それぞれ80ms,500ms等)だけ開き、荷受台5とガイドレール8との摩擦を抑制すると共に、スライドシリンダ14の圧抜きを実行することが好ましい。スライダ9の後進中には、スライダ9が中間位置に達したかどうかを中間センサ16の信号を基に判定する(ステップ103)。中間センサ16の信号がOFFでスライダ9が中間位置に達するまでは、ステップ101−103の手順を繰り返し、下げ動作スイッチ47B又は48Bが操作されている間だけスライダ9を後進させ、操作が解除された場合には停止させる。
(2)第1の下降動作
ここでは、図13のステップ103−106の手順と図14の2段目の「第1の下降」の図示を併せて参照して第1の下降動作を説明する。
スライダ9が後進するうちに中間センサ16からの検出信号が入力され、ステップ103においてスライダ9が中間位置に達したことを認識したら、制御装置45は、後進動作用制御弁42を閉じてスライダ9の後進動作を停止させる。そして、下げ操作スイッチ47B又は48Bの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ104)、操作信号が入力された場合には、油圧ポンプ29を停止させると共に下降動作用制御弁34を開けて荷受台5を下降させ(ステップ105)、操作信号の入力がない場合にはステップ104を繰り返して操作信号の入力を待つ。荷受台5の下降中には、荷受台5が中間高さまで下降したかどうかをゲートセンサ56の信号を基に判定する(ステップ106)。ゲートセンサ56の信号がOFFで荷受台5が中間高さまで下降していない間は、ステップ104−106の手順を繰り返し、下げ動作スイッチ47B又は48Bが操作されている間だけ荷受台5を下降させ、操作が解除された場合には停止させる。
(3)第2の引き出し動作
ここでは、図13のステップ106−109の手順と図14の3段目の「第2の引出」の図示を併せて参照して第2の引き出し動作を説明する。
荷受台5が下降するうちにゲートセンサ56からの検出信号が入力され、ステップ106において荷受台5が中間高さまで下降したことを認識したら、制御装置45は、下降動作用制御弁34を閉じて荷受台5の下降動作を停止させる。そして、下げ操作スイッチ47B又は48Bの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ107)、操作信号が入力された場合には、油圧ポンプ29を駆動すると共に後進動作用制御弁42を開けて再びスライダ9を後進させ(ステップ108)、操作信号の入力がない場合にはステップ107を繰り返して操作信号の入力を待つ。スライダ9の後進中には、スライダ9が後端位置に達したかどうかを後端センサ15の信号を基に判定する(ステップ109)。後端センサ15の信号がOFFでスライダ9が後端位置に達するまでは、ステップ107−109の手順を繰り返し、下げ動作スイッチ47B又は48Bが操作されている間だけスライダ9を後進させ、操作が解除された場合には停止させる。
(4)第2の下降動作
ここでは、図13のステップ109−114の手順と図14の下2段の「第2の下降」及び「接地」の図示を併せて参照して第2の下降動作を説明する。
スライダ9が後進するうちに後端センサ15からの検出信号が入力され、ステップ109においてスライダ9が後端位置に達したことを認識したら、制御装置45は、後進動作用制御弁42を閉じてスライダ9の後進動作を停止させる。そして、下げ操作スイッチ47B又は48Bの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ110)、操作信号が入力された場合には、油圧ポンプ29を停止させると共に下降動作用制御弁34を開けて荷受台5を再び下降させる(ステップ111)。この下降動作は、下げ操作スイッチ47B又は48Bから操作信号が入力されている間継続され(ステップ112)、荷受台5が接地して操作者が下降操作を止めたら荷受台5を停止させる(ステップ113)。荷受台5が接地したら、操作者は荷受台本体部23を引いて水平に展開し、荷役作業ができる状態にする(ステップ114)。これにより荷受台5の展開作業は完了し、その後、操作装置27又は46を操作することで荷受台5を昇降させて荷役作業を行うことができる。
2−2.格納動作
図15は制御装置45による荷受台5の格納動作の制御手順を表したフローチャート、図16は格納動作中の格納式荷受台昇降装置4の状態と入出力信号の入り切りとの関係について表形式でまとめた模式図である。
これらの図に示したように、格納式荷受台昇降装置4の格納動作中、制御装置45は、荷受台5がガイドレール8に接触したことを認識したら、操作装置27又は46からのスライドシリンダ14の動作を指示する信号、すなわち上げ動作スイッチ47A又は48Aの操作信号の有無に関係なく荷受台5を格納位置まで引き込むようにスライドシリンダ14の動作を指令し、第2部材77を第1部材76に対向させる。第1の上昇動作、第1の引き込み動作、第2の上昇動作、第2の引き込み動作といったように、接地位置から格納位置までステップ状に荷受台5を移動させる。第1の上昇動作は、スライダ9を後端位置に止めて荷受台5を接地高さから中間高さまで上昇させて地面から浮上させる動作である。第1の引き込み動作は、荷受台5を中間高さで保持したままスライダ9を中間位置まで前進させて荷受台5を車枠1の下側に引き込む動作である。第2の上昇動作は、スライダ9を中間位置に止めて荷受台5を格納高さまで上昇させてガイドレール8に押し付ける動作である。第2の引き込み動作は、荷受台5を格納高さで保持したままスライダ9を前端位置まで前進させて荷受台5を格納位置に引き込み、落下防止部材75を機能状態に移行させる動作である。詳しくは以下の通りである。
(1)第1の上昇動作
ここでは、図15のステップ201−204の手順と図16の上2段の「接地」及び「第1の上昇」の図示を併せて参照して第1の上昇動作を説明する。
荷受台5を格納する場合、接地位置において荷受台本体部23を支持ローラ12に立て掛け(ステップ201)、操作装置27又は46の上げ動作スイッチ47A又は48Aを押す。制御装置45は、上げ操作スイッチ47A又は48Aの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ202)、操作信号が入力された場合には、コンダクタリレー37(図11参照)に通電して油圧ポンプ29を駆動すると共に、上昇動作用制御弁32を開いて荷受台5を上昇させる(ステップ203)。このとき、上昇動作用制御弁32と共に後進動作用制御弁42が開かれており、スライダ9が後端位置にある状態のまま荷受台5が接地位置から上昇する。操作信号の入力がない場合にはステップ202を繰り返して操作信号の入力を待つ。荷受台5の上昇中には、荷受台5が中間高さに達したかどうかをゲートセンサ56の信号を基に判定する(ステップ204)。荷受台5が中間高さに達するまでは、ステップ202−204の手順を繰り返し、上げ動作スイッチ47A又は48Aが操作されている間だけ荷受台5を上昇させ、操作が解除された場合には停止させる。
(2)第1の引き込み動作
ここでは、図15のステップ204−207の手順と図16の3段目の「第1の引込」の図示を併せて参照して第1の引き込み動作を説明する。
荷受台5が上昇するうちにゲートセンサ56からの検出信号が入力され、ステップ204において荷受台5が中間高さに達して格納動作に入ったことが認識されたら、制御装置45は、上昇動作用制御弁32を閉じて荷受台5の上昇動作を停止させる。そして、上げ操作スイッチ47A又は48Aの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ205)、操作信号が入力された場合には、前進動作用制御弁44を開いて、荷受台5を中間高さで保持したままスライダ9を前進させる(ステップ206)。このとき、前進動作用制御弁44を開くと同時に後進動作用制御弁42、下降動作用制御弁34及び切換弁72を僅かな時間(例えば500ms)だけ開いてスライドシリンダ14及びリフトシリンダ20の圧抜きを実行すると良い。操作信号の入力がない場合にはステップ205を繰り返して操作信号の入力を待つ。スライダ9の前進中には、スライダ9が中間位置に達したかどうかを中間センサ16の信号を基に判定する(ステップ207)。中間センサ16の信号がOFFでスライダ9が中間位置に達するまでは、ステップ205−207の手順を繰り返し、上げ動作スイッチ47A又は48Aが操作されている間だけスライダ9を前進させ、操作が解除された場合には停止させる。
(3)第2の上昇動作
ここでは、図15のステップ207−211の手順と図16の4段目の「第2の上昇」の図示を併せて参照して第2の上昇動作を説明する。
スライダ9が前進するうちに中間センサ16からの検出信号が入力され、ステップ207においてスライダ9が中間位置に達したことを認識したら、制御装置45は、前進動作用制御弁44を閉じてスライダ9の前進動作を停止させると共に、切換弁72を連通位置に切り換えて油圧回路のリリーフ圧をサブリリーフ弁73による低リリーフ圧に切り換える(ステップ208)。その後、上げ操作スイッチ47A又は48Aの操作信号が入力されたかどうかを判断し(ステップ209)、操作信号が入力された場合には上昇動作用制御弁32を開けて、スライダ9が中間位置にある状態のまま荷受台5を再び上昇させ(ステップ210)、操作信号の入力がない場合にはステップ209を繰り返して操作信号の入力を待つ。この荷受台5の再上昇を開始する際、上昇再開時点でリリーフ圧がサブリリーフ弁73によるリリーフ圧まで厳密に低下していることは問われず、回路的にサブリリーフ弁73が作動し得る状態に切り換わっていれば良い。或いは、タイミングの誤差で、荷受台5の再上昇がリリーフ弁の切り換えから遅れる場合もあり得るが、荷受台5が上昇仕切るまでにサブリリーフ弁73が作動し得る状態になっていれば良い。
荷受台5の上昇中には、荷受台5が格納高さに達したかどうかを圧力センサ74の信号を基に判定する(ステップ211)。圧力センサ74の信号がOFFで荷受台5が格納高さに達するまでは、ステップ209−211の手順を繰り返し、上げ動作スイッチ47A又は48Aが操作されている間だけ荷受台5を上昇させ、操作が解除された場合には停止させる。
(4)第2の引き込み動作
ここでは、図15のステップ211−215の手順と図16の最下段の「第2の引込」の図示を併せて参照して第2の引き込み動作を説明する。
荷受台5が上昇するうちに圧力センサ74からの検出信号が入力され、この検出信号が所定圧力(例えば40MPa)以上の接触圧力であることを認識した場合、制御装置45は、ステップ211において荷受台5が押し付けローラ8eを介してガイドレール8に接触し、格納位置の高さに達したことを認識する。荷受台5がガイドレール8に接触したことを認識したら、制御装置45は、上昇用制御弁32を閉じて荷受台5の上昇動作を停止させ(ステップ212)、ガイドレール8に荷受台5が接触したことをトリガとして、荷受台5を格納高さで保持したままスライダ9を前進させる。
このスライダ9の再前進動作は、格納動作時にガイドレール8に荷受台5が接触したことを認識した場合に制御装置45によって自動的に指令される動作であり、制御装置45は、操作装置27又は46の操作の有無に関係なく前進動作用制御弁44を開いてスライダ9を前進させる(ステップ212)。このとき、前進動作用制御弁44を開いた時点から僅かに(例えば500ms)遅れて切換弁72を閉じ、油圧回路のリリーフ圧をメインリリーフ弁36によるリリーフ圧に復帰させる(ステップ213)。再前進動作の開始時点にガイドレール8に対する荷受台5の接触圧力を弱めておくためである。制御装置45は、設定時間だけスライダ9を前進させたら、前進動作用制御弁44を閉じてスライダ9の前進動作を停止させる(ステップ214)。この前進動作をする設定時間とは、作動油の粘度の変動を考慮しても中間位置から前端位置までスライダ9が移動するのに十分な時間である。こうして格納位置に荷受台5が引き込まれるのに伴って、第1部材76の支持部76bがテーパ77gを介して第2部材77のスリット77fに進入する。その後荷受台5が格納位置に到達すると、第1部材76の支持部76bがスリット77fに収まると同時に、第2部材77の拘束部77cと荷受台本体部23の裏面との対向面間に第1部材76の被拘束部76cが収まり、落下防止部材75が非機能状態から機能状態に移行する。荷受台5が格納位置に到達した後、制御装置45は油圧ポンプ29を停止させ、電源が切られたかどうかを判定し(ステップ215)、電源OFFを確認して図15の手順を終了する。
3.効果
(1)落下防止部材
落下防止部材75が機能状態にあるとき、荷受台5が格納位置にあり、第2部材77のスリット77fに第1部材76の支持部76bが、第2部材77の拘束部77cと荷受台本体部23の裏面との対向面間に第1部材76の被拘束部76cが収まる。従って、第2部材77によって被拘束部材76cの上下左右の移動が制限され、車両走行中等に荷受台5に対して上下方向は勿論のこと左右いずれの方向に強い揺れが加わっても、格納位置における荷受台5の上下左右の揺れを制限することができる。
本実施形態の場合、第1部材76を断面T字型、第2部材77を箱型である。このように第1部材76及び第2部材77はいずれも板材で簡単に構成することができる。
また、スリット77fの入口にテーパ77gを設けたことにより、第1部材76の支持部76bのスリット77fへの進入、ひいては非機能状態から機能状態への移行を円滑化することができる。荷受台5をガイドレール8に押し付けることにより第2の引き込み動作時の荷受台5の高さは一定であるため、第1部材76と第2部材77の高さ方向の位置合わせの精度は確保されている。また、格納位置では押し付けローラ8eが第2部材77の取り付け部77aに乗り上げるので、この点も第1部材76と第2部材77の高さ方向の位置合わせの精度の確保に寄与している。
なお、荷受台を引き込む際にガイドレールに荷受台を押し付けない場合、引き込み動作時の荷受台の高さには作動油の粘度等でバラつきが生じ得る。この場合に第1部材76と第2部材77の高さ方向の位置ずれを許容するためには、落下防止部材に何らかの可動機構を付加することも考えられる。しかし、この場合には、長期使用に伴って錆や磨耗が生じると可動機構の動作品質が劣化し、動作の円滑性が損なわれる恐れがある。それに対し、本実施の形態の場合、格納動作の特殊性も手伝って、落下防止部材75は簡素な固定式の構造とすることができる。従って、経年変化によって落下防止部材75の動作、例えば機能状態又は非機能状態への移行動作の円滑性が損なわれることを抑制できる。
また、落下防止部材75はガイドレール8の後端近傍に配置されているので、落下防止部材75の第2部材77は荷受台本体部23の前後に延びるステーの厚くなった場所(荷受台基部21の対向部近傍)に位置する。従って余裕をもって第2部材77をステーの高さ以内に収めることができる。また、格納時に第2アーム18及び第3アーム19の基部から落下防止部材75までの距離を長くとることができるので、落下防止部材75をより前方に配置した場合に比べて、機能状態の時の第1部材76と第2部材77との遊び量が同じでもガタツキを小さく抑えることができる。
(2)走行ローラ
本実施形態によれば、荷受台5の引き出し及び引き込みの際、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cをガイドレール8の上面及び下面に転動させてスライダ9を前後に移動させる。パッドをガイドレールに滑らせてスライダを移動させる構成のような摩擦抵抗がないので、スライダ9の移動を円滑化することができ、荷受台5の引き込み及び引き出しの動作速度を向上さることができる。また、パッドを摺動させる構成と異なり、ガイドレール8のローラ走行面にグリスを頻繁に塗布する必要がなく、ガイドレールにゴミが付着し難くなるメリットもある。
また、単にガイドレールに対して走行ローラでスライダが走行する構成とする場合、ガイドレールを中空の部材で形成し、ガイドレールの内部を走行ローラが転動する構成も考えられる。しかし、この構成の場合は走行ローラの軸を両持ち構造とすることが難しく、走行ローラの支持構造の強度に課題がある。ガイドレールに軸を通すスリットを設ければ軸を両持ち構造にすることはできるが、スリットは走行方向への軸の移動を許容するためにスライダの移動距離をカバーするように設けなければならず、ガイドレールの強度を低下させてしまう。また、走行ローラがガイドレールの内側に配置されるので、ガイドレールのローラ走行面の清掃や走行ローラのメンテナンスも容易ではない。
それに対し、本実施形態では上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cがガイドレール8の上面及び下面を転動する構成であるため、ガイドレール8を挟んで対向する2枚のブラケット9aによって軸9fを両持ち支持することができる。また、ガイドレール8に軸9fを通すスリット等を加工する必要がなく、ガイドレール8の強度低下の心配もない。また、ローラ走行面はガイドレール8の上面及び下面であるため清掃も容易である。
(3)段差
本実施形態ではガイドレール8に段差8c,8dを設けたことにより、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cが段差8c,8dを乗り越えなければ格納位置から荷受台5が引き出されない。これにより、車両の急発進時等に荷受台5やスライダ9等の慣性によって意図せず荷受台5が引き出されることを抑制することができる。
(4)押し付けローラ
格納動作時にガイドレール8に押し付けた状態で荷受台5を引き込む場合、パッドを介してガイドレール8及び荷受台5を接触させる構成とすると、パッドの摩擦力が荷受台5の引き込み動作の抵抗になる。それに対し、本実施形態では荷受台5が押し付けローラ8eを介してガイドレール8に押し付けられるので、引き込み動作の際は荷受台5に押し付けローラ8eが転動する。従って、荷受台5の引き込み動作(この例では第2の引き込み動作)を円滑化し、引き込み速度を向上させることができる。第1の引き出し動作時にも同様のことが言える。
また、押し付けローラ8eを荷受台本体部23の裏面に設けて引き込み時に押し付けローラ8eがガイドレール8に転動する構成とすることもできる。但しこの場合、荷受台5とガイドレール8との相対位置が左右方向にずれると押し付けローラ8eとガイドレール8との接触状態が変化し、著しい場合には脱輪する可能性も否定しきれない。それに対し、本実施形態ではガイドレール8側に押し付けローラ8eを設け、これに対して面積の広い荷受台本体部23の裏面が接触する構成であるため、押し付けローラ8eと荷受台本体部23の裏面とを常時安定的に接触させることができる。
(5)スクレーパ
本実施形態ではスライダ9にスクレーパ9d,9eを設けたことにより、スライダ9の移動に伴ってスクレーパ9d,9eがガイドレール8のローラ走行面を摺動する。これによりガイドレール8のローラ走行面にゴミ等が付着しても、そのゴミ等をスクレーパ9d,9eによって掻き落とし、ローラ走行面を清掃することができる。従って、スライダ9の移動の円滑性を確保するに当たって、ガイドレール8の洗浄作業やメンテナンスの負担を軽減することができる。
また、スクレーパ9d,9eは板状の部材をローラ走行面に対して起立させたものであるため、ゴミ等の掻き取り性能が良い。またスクレーパ9d,9eとローラ走行面との接触面積は小さいので、ローラ走行面との間に作用する摩擦力は小さく、スライダ9の移動に対する抵抗も小さく抑えることができる。スクレーパ9d,9e自体は板状部材に過ぎないため、ローラ走行面との接触部はローラ走行面の形状に応じて如何様にも形成することができ、ローラ走行面の形状に柔軟に対応することができる。
また、スクレーパ9d,9eはそれぞれ上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cの後側にあるので、荷受台5の引き出し時に対応する走行ローラに先行してローラ走行面を清掃する。そのため荷受台5の引き出し時には、常に清掃直後のローラ走行面を上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cが転動する。一般に荷受台5は荷役作業に使用される時間よりも格納されている時間の方が長いため、例えば車両走行時のような格納時の方がガイドレール8にゴミ等が付着し易い。従って、本実施形態のように上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cの後側にスクレーパ9d,9eを設けたことにより、荷受台5の格納時にガイドレール8に付着したゴミ等を走行ローラに先行して清掃できるので、スクレーパ9d,9eを効果的に機能させることができる。但し、本実施形態では上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cの後側にスクレーパ9d,9eを設けた場合を例に挙げて説明したが、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cの前側、又は前後両側にスクレーパを設ける構成とすることもできる。
(6)制御装置
上記のように、荷受台5を格納位置に移行させる際に第2の上昇動作を経ることによって荷受台5をガイドレール8に押し当てるので、最終的に落下防止部材75を機能状態に移行させる段階では荷受台5とガイドレール8との間にはガタツキがない。従って、圧油の粘度によるシリンダ14,20の動作速度の変動に影響されず、格納動作にあたって第2の引き込み動作時の荷受台5の高さ位置のばらつきを抑えることができ、精度良く格納位置の高さで荷受台5を前進させることによって落下防止部材75をスムーズに機能状態に移行させることができる。さらに、落下防止部材75を機能状態に移行させる際の荷受台5の高さ位置のばらつきを抑えられるので、落下防止部材75のフランジ78,79の間の間隙を小さく設定することができ、リフトシリンダ20の圧油のリークが生じた場合に許容される荷受台5の下降幅を極僅かな距離に抑えることができる。
このとき、格納動作における第2の引き込み動作は、最終的に落下防止部材75を機能状態に移行させるための工程であるため、その引き込み距離は僅かで足りる。具体的には、第1部材76及び第2部材77のフランジ78,79の互いの対向面の前後方向の長さ、例えば5−10cm程度で足りる。第1の引き込み動作、第1の上昇動作、第2の上昇動作、第2の引き込み動作を経て荷受台を格納位置に移動させる製品は近年まで存在せず、一般には格納位置の高さまで荷受台を上昇させてから格納位置まで引き込むという2段階の格納動作に操作者は慣れている。そのため、本実施の形態のようなステップ状の格納動作を新たに導入する場合、第2の引き込み動作を操作者の操作に任せる構成とすると、第2の引き込み動作のストロークによっては第2の上昇動作を終えた時点で格納動作が完了したかのように見えてしまい、操作者が第2の引き込み動作を操作し忘れる恐れがある。第2の引き込み動作を操作し忘れてしまうと、落下防止の姿勢に円滑に移行させられるという前述した効果を損ない得る。
本実施の形態は、このような潜在的な課題にまで配慮されている。すなわち、ステップ状に荷受台5を格納するに当たって、ガイドレール8に荷受台5が接触して最終的に荷受台5を格納位置に移動させる段階になったら、格納動作をマニュアル運転から自動運転に切り換えて強制的に格納動作を完了させるようにしてある。これにより、落下防止の姿勢に円滑に移行させられる前述した効果を確実に享受することができる。
(7)パワーユニット
前述したように、第2の上昇動作中に油圧回路のリリーフ圧をサブリリーフ弁73による低リリーフ圧に下げることにより、荷受台5とガイドレール8との間に作用する押圧力が過大になることはなく、第2の引き込み動作時にガイドレール8と荷受台5とが押し付け合う力を抑えることができる。これによりガイドレール8や荷受台5に作用する応力を十分に抑えることができ、普段の運用において荷受台5の格納動作を繰り返し行っても装置の構成部品への負荷は少なく、装置の短命化を抑制することもできる。
4.その他
本実施形態においては、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cによってガイドレール8に沿ってスライダ9が走行する構成を例に挙げて説明したが、例えばパッドを介してスライダ9とガイドレール8とが接触し、パッドを摺動させてスライダ9が前後に移動する構成としても良い。この場合、パッドを介在させることでガイドレール8に作用する面圧が下がるので、ガイドレール8を例えばアルミ製にする等して格納式荷受台昇降装置4を軽量化することができる。
また、上走行ローラ9b及び下走行ローラ9cがガイドレール8の上面及び下面を転動する構成としたが、例えばI型のガイドレール9の天板の下面及び底板の上面を転動する構成としても良い。
本実施形態ではI型断面のガイドレール8を用いた格納式荷受台昇降装置4に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、ガイドレール8はI型断面のものに限定されず、例えば矩形や六角形等の多角形型、或いは中空型の断面形状のガイドレールを用いることもできる。
また、落下防止部材75の第1部材76及び第2部材77をそれぞれガイドレール8及び荷受台5に取り付けた。ガイドレール8を第1対象部材、荷受台5を第2対象部材とすると、第1部材76を第1対象部材に、第2部材77を第2対象部材に取り付けた構成であるが、第1部材76を第2対象部材に、第2部材77を第1対象部材に取り付けた構成としても良い。
第1の上昇動作から第1の引き込み動作に動作を切り換える荷受台5の「中間高さ」、及び第1の引き込み動作から第2の上昇動作に動作を切り換えるスライダ9の「中間位置」について精度は要求されない。従って、シリンダ14,20の動作速度の変動によってこれら動作切り換えの高さ方向又は前後方向の位置にばらつきが生じても問題はない。最終的に第2の引き込み動作の際にガイドレール8に荷受台5が接触していれば良いので、本実施の形態のように、センサ15,16,56,74を用いて第1の上昇動作、第1の引き込み動作、第2の上昇動作、第2の引き込み動作と動作を切り換える構成に限らず、センサを用いずに一定の軌跡を辿って接地位置から格納位置まで荷受台5を移動させる構成とすることもできる。このような構成でも、第2の上昇動作で確実にガイドレール8に荷受台5が接触するように、シリンダ14,20の動作速度の発生し得るばらつきを考慮して第1及び第2の上昇動作の上昇幅を大きめに設定すれば良い。上昇幅が大きくても、サブリリーフ弁73によるリリーフ圧に切り換えることによってガイドレール8と荷受台5との接触圧力が必要以上に上昇することはない。この場合には、センサ類の削減によりハード構成の簡素化に加え、製作コストも抑えられる。
また、本実施の形態においては、第1の上昇動作、第1の引き込み動作、第2の上昇動作、第2の引き込み動作という手順で荷受台5を格納する場合を例に挙げて説明したが、この動作の目的は最終的にガイドレール8に押し付けた状態で荷受台5を格納位置に引き込むことであり、荷受台5がガイドレール8に接触するまでの手順(荷受台5の動作経路)については特に限定されない。例としては、まず接地状態のまま荷受台5を前方に引き込み、その後荷受台5を上昇させてガイドレール8に接触させ、さらに格納位置まで引き込むという、引き込み、上昇、引き込みの格納動作を採用することもできる。この場合、荷受台5が接地した状態での引き込み動作を容易化する上では、必要に応じて荷受台5の接地部にローラを設けることもできる。或いは、まず接地位置から微小距離だけ荷受台5を引き込んでから中間高さまで上昇させた後、中間位置まで引き込んでから上昇させてガイドレール8に接触させ、ガイドレール8に接触した状態で荷受台5を最終的に格納位置まで引き込むという、引き込み、上昇、引き込み、上昇、引き込みという格納動作を採用することもできる。さらには、引き出し動作や下降動作を途中に組み入れた格納動作とすることも必要であれば可能である。
また、本実施の形態では、荷受台を車枠の下側に格納する格納式荷受台昇降装置を適用対象とした場合を例に挙げて説明したが、この種の格納式荷受台昇降装置には、車枠の下側に格納する格納姿勢の他、荷受台を荷台の後部に起立させた格納姿勢を選択することができるものも存在する。本実施の形態は、このような複数の格納姿勢を採用する種の格納式荷受台昇降装置であっても、荷受台を車枠の下側に格納する際に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
また、荷受台5を車両の後側に引き出して荷役作業をする格納式荷受台昇降装置に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、荷受台を車両の左側又は右側に引き出して荷役作業を行う格納式荷受台昇降装置に本発明を適用しても同様の効果が得られる。
さらに、上記では第2の上昇動作から第2の引き込み動作に移行したら自動的に荷受台5が格納位置に移動する場合を説明したが、この自動動作(第2の引き込み動作)を途中で停止させられるようにすることもできる。この場合、例えば操作装置27又は46に第2の引き込み動作の停止を指示する停止スイッチ47D又は48D(図12参照)を備え、停止スイッチ47D又は48Dの操作信号に応じて、スライドシリンダ14の停止を指令する信号が制御装置45から前進動作用制御弁44に出力され、前進動作用制御弁44が閉じる構成とすることで実現することができる。また、第2の引き込み動作の自動化を省略し、第1の上昇動作や第1の引き込み動作等の他の動作と同じく操作時のみ実行されるようにしても良い。