JP6598233B2 - 酸化鉄被覆種子の製造方法 - Google Patents
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請求項2の発明は、Fe 3 O 4 は、平均粒径が25μmのものであることを特徴とする請求項1記載の酸化鉄被覆種子の製造方法である。
本発明は、籾、麦、豆等の各種の種子の表面を酸化鉄で被覆した酸化鉄被覆種子に関するものである。このような酸化鉄被覆種子を製造、播種する場合の主なる条件として次のものがあげられる。
1.播種した圃場に硫酸イオンや塩化物イオンが発生しないこと。
2.酸化鉄被覆種子を製造する過程の反応熱で種子が熱焼けしないこと。
3.固化時間(造粒(被覆)時間を除く)が短時間で終了すること。
4.植物及び土壌に有害でないこと。
5.発芽促進のために熱吸収の大きい有色物質であること。
6.被覆物質は安価であり、かつ流亡を防ぐため比重が大きくなること。
以上の条件で鋭意考察した結果、種子表面が酸化鉄で被覆された酸化鉄被覆種子とするにあたり、種子、酸化鉄の粉末、およびアルカリ土類金属の水酸化物の粉末、そして水を混合したもので造粒して種子の表面に酸化鉄およびアルカリ土類金属の水酸化物の混合物を付着、固化させ、このもののアルカリ土類金属の水酸化物を二酸化炭素と反応させてアルカリ土類金属の炭酸塩にすることで種子表面を酸化鉄で被覆することで、製造が簡単でしかも安価で、種子が熱焼けするような反応熱の発生もなく、硫酸イオンや塩化物イオンのような植物に悪影響を与えることなく、寧ろ栄養素となるアルカリ土類金属イオンが発生し、しかも熱吸収が大きい有色になった好適の酸化鉄被覆種子が得られることが判明した。
Fe2O3としては例えばヘマタイト、マグヘマタイトとして入手でき、Fe3O4としてはマグネタイト(磁鉄鉱、黒色酸化鉄)として入手でき、Fe2O3・H2Oはゲータイトとして入手できる。
酸化鉄は粉状となったもの(粉末)を用いる。
前記特許文献1のものでは、鉄粉の方が酸化鉄粉より重いという理由で酸化鉄の利用を否定し、鉄粉を用いているが、この場合、被覆造粒後に鉄粉を酸素で酸化して酸化鉄にしているが、この際に発生する熱により種子が熱焼けしないよう十分な熱管理をする必要がある。これに対し本発明では、酸素と反応して熱を発生することがない安定した酸化鉄の粉末を使用するものであり、また比重の点に関しては、被覆量の調整により解決されることである。
そして発芽促進のために熱吸収の大きい有色のものが好ましく、それには茶褐色であるFe2O3よりは黒色であるFe3O4が好適である。
Ca(OH)2は消石灰として入手でき、Ca(OH)2・Mg(OH)2は水酸化ドロマイトとして入てすることができる。
アルカリ土類金属の水酸化物は粉状(粉末)になったものを用いる。
これらのアルカリ土類金属の水酸化物は、二酸化炭素(炭酸ガス)と反応して炭酸塩となって固化するが、この際の反応熱は僅かであって、種子が熱焼けして発芽率が低下することはない。二酸化炭素は空気中のもので十分であるが、必要において人為的に供給してもよく、人為的に供給した場合、アルカリ土類金属の水酸化物の炭酸塩への反応を促進することができる。
そしてアルカリ土類金属の炭酸塩は、土壌および植物に悪影響を与えることはなく、またアルカリ土類金属についても植物に対して必須の栄養素の一つであり、何ら問題になることもない。
また、例えばアルカリ土類金属の炭酸塩が炭酸カルシウムである場合、これを水田に浸漬すると、水に溶存する炭酸ガスと反応して炭酸水素カルシウム(重炭酸カルシウム)となって溶解していくため、発芽に影響を与えることが殆どない。
水の供給量は、種籾、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化鉄の量によって異なるが、アルカリ土類金属の水酸化物と酸化鉄の混合物が種籾の表面に付着したときに、べたつかない程度とすることが好ましく、例えば水をスプレー等により供給する場合、種籾の表面に、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化鉄の混合物が殆ど付着するまで供給することなく、その少し前段階で水の供給を停止し、この状態でさらに造粒を続けることで馴染んだ水が残りの粉末を付着することになる。
因みに、種子の比重が水よりも大きい場合、発芽率を高めるため、水に浸漬させ、水に浮遊する種子(発芽しないか発芽率が悪い種子)を除いたものを選択することが好ましく、このように選択したものをそのまま用いた場合、種子に水が付着しているため酸化鉄、アルカリ土類金属の水酸化物が付着しやすいものとなる。勿論、乾燥種子であっても問題はない。種子の比重が水よりも小さいものである場合、水に浸漬させて発芽率の悪いものを除去することはできないが、水に浸漬させることで被覆物の付着を促進させることはできる。このような軽い種子は、水に浸漬する前に、風を送る等して発芽率が悪い軽い種子を飛ばすことで除去することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
経験上、無機質の結合材、たとえばセメントの場合、酸化鉄粉を質量比で10%位まで添加してもあまり強度は変わらないが、それ以上添加すると圧縮強度は増すが曲げ強度は減少する。消石灰、即ち炭酸カルシウムは無機質であり内部に微粉末の酸化鉄粉が増えるほど強度低下が考えられる。種籾の見かけ比重を大きくするためには結合材の量を増やし酸化鉄粉の量を増やせば実現できるが、被覆籾の強度と発芽性を考慮しなければならない。即ち、あまり結合材の量を増やせば被覆層が厚くなり発芽阻害が発生する可能性がある。後述するように、前記実験番号b〜hのものは何れも発芽障害は発生しなかった。
また被覆黒色籾をポリエチレンの袋に入れ、空気を入れて膨らませた後、手で袋の下を10回強く叩いて粉塵量を測定した。ポリエチレンの袋に附着する量が多かったのは実験番号eであった。これは、黒色酸化鉄の割合が消石灰に対して40%であり、結合材が少なかったことを意味している。
実施例1で造粒した黒色酸化鉄被覆種籾を45cm×38cm、深さ10cmのプラスチック箱に入れ、チューリップを栽培した後の園芸用培土を十分乾燥させ、この培土を上記プラスチック箱2個に厚さ約3cm敷き詰め、表面に軽く水をスプレイした。この2箱に表1に示した造粒籾の実験番号aからhまでの8種類、約40粒ずつを筋状に手で均等間隔に播種した。このあと、一方の箱には約6cmの高さまで水を張って水田状態とし、もう片方の箱はそのままにして乾田状態とした。
目的はアルカリ土類金属の水酸化物で被覆した後、二酸化炭素で炭酸塩となって中性化された状態の被覆籾が充分に発芽し成長するかを観察することであった。
2014年4月16日に播種をし、以降、発芽の状態(発芽率)、草丈を観察し、その観察結果を表3に示した。何れの方法でも水田は水田として、乾田は乾田として同等の発芽率、草丈であることが認められ、消石灰黒色酸化鉄粉で被覆したことによる種籾の発芽への影響はないことが確認された。
Claims (2)
- 種子表面が酸化鉄で被覆された酸化鉄被覆種子を製造するにあたり、種子、黒色であるFe 3 O 4 の粉末、結合材となるCa(OH) 2 の粉末、および水を混合したもので造粒して種子の表面にFe 3 O 4 およびCa(OH) 2 の混合物を付着させた後、該付着したCa(OH) 2 が二酸化炭素と反応して硬化した炭酸カルシウムになることで、種子表面が、表面色がFe 3 O 4 の原色と同等の黒色状態で、Fe 3 O 4 が分散した硬化状態の炭酸カルシウムで被覆されるようにするとともに、前記種子の表面にFe 3 O 4 およびCa(OH) 2 の混合物を付着させる場合に、結合材としてはCa(OH) 2 のみを用い、Fe 3 O 4 は質量比でCa(OH) 2 の20%としたことを特徴とする酸化鉄被覆種子の製造方法。
- Fe 3 O 4 は、平均粒径が25μmのものであることを特徴とする請求項1記載の酸化鉄被覆種子の製造方法。
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