JP6597877B2 - プラントの制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、プラントの制御装置に関する。
特許文献1は、熱間圧延ラインにおけるロール制御方法を開示する。熱間圧延ラインにおいて、上下のピンチロールは、巻き取り機の前に設けられる。上下のピンチロールは、圧延材を挟み込んで保持する。上下のピンチロールに偏芯がある場合、上下のピンチロールの間隙が変動する。当該変動により、圧延機とピンチロールの間において、圧延材の張力が変動する。ピンチロールと巻き取り機の間において、圧延材の張力が変動する。当該ロール制御方法によれば、ピンチロールの偏芯による周期的な影響が抑制される。具体的には、上下のピンチロールの間隙が目標値に保持される。その結果、圧延材の張力の変動が抑制される。
日本特開2012−152808号公報
しかしながら、特許文献1に記載のものは、操作端の操作量の変更結果がセンサで測定されるまでにむだ時間が生じる場合でも、当該むだ時間を想定しない。このため、周期的な外乱の影響を抑制することができない。
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、むだ時間を含むプラントの制御対象に周期的な外乱が加わる場合において、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を得ることができるプラントの制御装置を提供することである。
この発明に係るプラントの制御装置は、周期的な外乱が加わるプラントの制御量に対する目標値が与えられ、センサで測定される制御量を前記目標値とするための操作端の操作量の変更結果が前記センサで測定されるまでにむだ時間が生じる場合に、外乱の周期およびむだ時間の変化に応じて外乱の1周期分の時間からむだ時間を差し引いた時間だけ前記操作端への前記操作量の入力を遅らせるむだ時間対応修正繰返し制御器、を備え、前記むだ時間対応修正繰返し制御器は、ロール偏芯外乱および圧延荷重外乱の周期が前記プラントに設けられた回転体の周期の定数倍の周期に応じて変化する場合に前記回転体の角度を規準とした制御を行う



この発明によれば、操作端への操作量の入力は、外乱の1周期分の時間からむだ時間を差し引いた時間だけ遅れる。このため、むだ時間を含むプラントの制御対象に周期的な外乱が加わる場合において、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を得ることができる。
この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を利用した圧延機の構成図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を説明するための制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の概要を説明するための制御ブロック図を簡略化した図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の全体構成を説明するための図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を利用した制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の要部の制御ブロック図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の機能を説明するための図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の変形例を説明するための図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置に加わるロール偏芯外乱と圧延荷重外乱を説明するための図である。 この発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置のハードウェア構成図である。 この発明の実施の形態2におけるプラントの制御装置を説明するための制御ブロック図である。
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を利用した圧延機の構成図である。以下の説明は、圧延による板厚を制御する制御装置を対象に行われる。以下の説明による考えは、各種プラントにおいて、板厚以外の制御に対しても適用できる。例えば、当該考えは、板幅、板クラウン、平坦度等の制御に対しても適用できる。
図1において、熱間薄板圧延の圧延スタンドは、4Hiミルである。圧延スタンドは、ハウジング1を備える。上側ワークロール2aと下側ワークロール2bとは、圧延ロールとしてハウジング1の内部に設けられる。上側ワークロール2aの軸の一側は、図示しない電動機に連結される。上側ワークロール2aの他側周辺は、作業領域となる。下側ワークロール2bの軸の一側は、図示しない電動機に連結される。下側ワークロール2bの他側周辺は、作業領域となる。
上側バックアップロール3aは、圧延ロールとして上側ワークロール2aの上方に設けられる。上側バックアップロール3aは、上側ワークロール2aを支持する。上側バックアップロール3aは、ハウジング1の上部に支持される。上側バックアップロール3aの一側の下部周辺は、上側ワークロール2aの軸の一側および下側ワークロール2bの軸の一側の存在領域となる。上側バックアップロール3aの他側周辺は、作業領域となる。
下側バックアップロール3bは、圧延ロールとして下側ワークロール2bの下方に設けられる。下側バックアップロール3bは、下側ワークロール2bを支持する。下側バックアップロール3bは、ハウジング1の下部に支持される。例えば、下側バックアップロール3bは、床面より下方に設けられる。下側バックアップロール3bの上方は、作業領域となる。下側バックアップロール3bの一側の上部周辺は、上側ワークロール2aの軸の一側および下側ワークロール2bの軸の一側の存在領域となる。下側バックアップロール3bの他側周辺は、作業領域となる。
圧下装置4は、上側バックアップロール3aの上方に設けられる。例えば、圧下装置4は、電動圧下装置からなる。例えば、圧下装置4は、油圧で駆動する油圧圧下装置からなる。油圧圧下装置は、高速制御し得る。圧下装置4は、一側圧下装置4aと他側圧下装置4bとを備える。一側圧下装置4aは、上側バックアップロール3aの一側に設けられる。他側圧下装置4bは、上側バックアップロール3aの他側に設けられる。
荷重検出器5は、下側バックアップロール3bの下方に設けられる。荷重検出器5は、一側荷重検出器5aと他側荷重検出器5bとを備える。一側荷重検出器5aは、下側バックアップロール3bの一側に設けられる。他側荷重検出器5bは、上側バックアップロール3aの他側に設けられる。
ロールギャップ検出器6は、圧下装置4の下方に設けられる。ロールギャップ検出器6は、一側ロールギャップ検出器6aと他側ロールギャップ検出器6bとを備える。一側ロールギャップ検出器6aは、上側バックアップロール3aの一側に設けられる。他側ロールギャップ検出器6bは、上側バックアップロール3aの他側に設けられる。
圧延荷重測定器7の入力側は、荷重検出器5の出力側に接続される。ロールギャップ測定器8の入力側は、ロールギャップ検出器6の出力側に接続される。
板厚制御器9の入力側は、圧延荷重測定器7の出力側に接続される。板厚制御器9の入力側は、ロールギャップ測定器8の出力側に接続される。ロールギャップ操作手段10の入力側は、板厚制御器9の出力側に接続される。ロールギャップ操作手段10の出力側は、圧下装置4の入力側に接続される。
板厚計12は、センサとして圧延スタンドの出側に設けられる。板厚計12の出力側は、板厚制御器9の入力側に接続される。
圧延材13は、金属で形成される。例えば、圧延材13は、鉄で形成される。例えば、圧延材13は、アルミニウムで形成される。例えば、圧延材13は、銅で形成される。圧延材13は、回転する上側ワークロール2aと下側ワークロール2bに挟まれる。その結果、圧延材13は薄く延びる。
この際、上側バックアップロール3aは、上側ワークロール2aの幅方向のたわみを抑える。下側バックアップロール3bは、下側ワークロール2bの幅方向のたわみを抑える。圧延材13からの圧延荷重は、上側ワークロール2aと下側ワークロール2bと上側バックアップロール3aと下側バックアップロール3bとを介して、ハウジング1に受け止められる。
一側荷重検出器5aは、下側バックアップロール3bの一側にかかる荷重を検出する。他側荷重検出器5bは、下側バックアップロール3bの他側にかかる荷重を検出する。圧延荷重測定器7は、一側荷重検出器5aの検出値と他側荷重検出器5bの検出値との和を和荷重として計算する。圧延荷重測定器7は、一側荷重検出器5aの検出値と他側荷重検出器5bの検出値との差を差荷重として計算する。図示しないロールベンディング装置が圧延スタンドに設けられる場合、圧延荷重測定器7は、荷重検出器5の検出値をロールベンディング力で補正する際の計算を行う。
ロールギャップ検出器6は、上側ワークロール2aと下側ワークロール2bとの間隙(ロールギャップ)を直接検出しない。ロールギャップ検出器6は、圧下装置4が上側バックアップロール3aを押し下げた量を検出する。ロールギャップ測定器8は、ロールギャップ検出器6の検出値に基づいてロールギャップを計算する。この際、ロールギャップ測定器8は、上側バックアップロール3a、上側ワークロール2a、下側ワークロール2b、下側バックアップロール3b等の位置関係を考慮する。
板厚制御器9は、圧延荷重測定器7の計算値とロールギャップ測定器8の計算値とに基づいて、ロールギャップの設定値を調整する。この際、板厚制御器9は、ミル定数Mと塑性係数Qとを用いてロールギャップの設定値を調整する。
ロールギャップ操作手段10は、板厚制御器9により調整された設定値に基づいてロールギャップを調整する。その結果、圧延材13は、所望の板厚になる。圧延材13の板厚は、板厚計12により計測される。
次に、図2を用いて、板厚制御器9の一例を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を説明するための制御ブロック図である。
図2において、制御対象の圧延プロセス14は、ミル定数Mと塑性係数Qとの影響を受ける。具体的には、圧延プロセス14は、第1影響係数14aと第2影響係数14bとを備える。第1影響係数14aは、ロールギャップが圧延荷重に与える影響に対応する。第1影響係数14aは、−MQ/(M+Q)である。第2影響係数14bは、圧延荷重が板厚に与える影響に対応する。第2影響係数14bは、1/Mである。
圧延プロセス14には、ロール偏芯外乱ΔSと圧延荷重外乱ΔPとが加わると考えられる。ロール偏芯外乱ΔSを直接検出することはできない。圧延荷重外乱ΔPは測定される圧延荷重の中に含まれる。圧延荷重外乱ΔPだけを分離して測定することはできない。
板厚制御器9は、圧延プロセス14に対し、モニターAGC15、ゲージメータAGC16、MMC(ミル定数可変制御)17等を実施する。
むだ時間ブロック18は、上側ワークロール2aと下側ワークロール2bとで圧延された圧延材13の板厚実績変化量ΔhACTが上側ワークロール2aと下側ワークロール2bとの中心から板厚計12まで搬送される時間Tだけ経過した後に板厚計12によって板厚測定値変化量ΔhMESとして検出されることを示す。時間Tは、むだ時間となる。
モニターAGC15は、製品板厚目標値変更量Δh REFと板厚測定値変化量ΔhMESとの偏差に基づいてゲージメータ板厚目標値変更量ΔhREFを計算する。
ゲージメータAGC16において、第1制御ブロック16aは、一般に、実機で測定されたミル定数Mを用いて表される。第1制御ブロック16aには、応答を調整するための係数αが付加される。第1制御ブロック16aの出力とロールギャップ実績変化量ΔSACTとに基づいて、ゲージメータ板厚変化量ΔhGMが求まる。
ゲージメータAGC16において、ゲージメータ板厚目標値変更量ΔhGM AIMとゲージメータ板厚目標値変更量ΔhREFが合算される。その結果、板厚目標値変更量ΔhGM REFが求まる。板厚目標値変更量ΔhGM REFとゲージメータ板厚変化量ΔhGMとの偏差はPI制御器16bに入力される。PI制御器16bは、比例ゲインKPGと積分ゲインKIGとラプラス演算子sとで表される。なお、ロールギャップの記号Sは、添え字、Δ等を伴って使用される。ラプラス演算子sは、小文字で単独で使用される。[s]は、時間を表す単位である。
PI制御器16bの出力は、補償ゲイン16cに入力される。補償ゲイン16cは、同定されたミル定数M、塑性係数Q、応答を調整するための係数α、αで表される。例えば、塑性係数Qは、オフラインで別途計算される。例えば、塑性係数Qは、実績データによる同定した値からなる。補償ゲイン16cは、ロールギャップ指令値ΔSSETを計算する。この際、補償ゲイン16cは、操作出力を規格化する。この場合、制御対象のミル定数M、塑性係数Q、係数α、αが変化しても、PI制御器16bの調整が不要となる。
MMC17は、圧下装置4に高速応答を要求する。このため、圧下装置4が高速応答を実現できる油圧圧下装置ではない場合は、MMC17は適用されない。
MMC17において、第2制御ブロック17aは、同定されたミル定数Mを用いて表される。MMC17は、第2制御ブロック17aの係数αを調整することにより、応答を調整し得る。例えば、係数αを大きくすれば、応答が速くなる。
MMC17において、油圧圧下応答17bは、油圧圧下装置の応答に対応する。油圧圧下応答17bは、補償ゲイン16cの出力と第2制御ブロック17aの出力とを重畳した値に基づいて決定する。その結果、ロールギャップが調整される。
次に、図3を用いて、図2の制御系の概要を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の概要を説明するための制御ブロック図を簡略化した図である。
図3に示すように、モニターAGC15は、1つのブロックで表される。ゲージメータAGC16は、1つのブロックで表される。MMC17は、1つのブロックで表される。むだ時間ブロック18は、1つのブロックで表される。
次に、図4を用いて、制御装置の全体構成を説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の全体構成を説明するための図である。
制御装置は、むだ時間対応修正繰返し制御器20と一巡伝達関数21と制御ブロック図22とで表される。
制御装置において、制御偏差eは、目標値または指令値rと制御量yのフィードバック値との差分で表される。制御偏差eは、むだ時間対応修正繰返し制御器20に入力される。むだ時間対応修正繰返し制御器20は、操作量uを計算する。操作量uは、一巡伝達関数21に入力される。一巡伝達関数21は、図3のゲージメータAGC16とMMC17と圧延プロセス14とを結合したブロックに相当する。一巡伝達関数21は、むだ時間を含まない系である。一巡伝達関数21は、制御対象の信号yを出力する。信号yは、制御ブロック図22に入力される。制御ブロック図22は、図3のむだ時間ブロック18に相当する。制御ブロック図22は、むだ時間を表す。制御ブロック図22は、信号yを出力する。信号yは、信号yに対しむだ時間だけ遅れる。
次に、図5を用いて、むだ時間対応修正繰返し制御器20の挿入位置を説明する。
図5はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置を利用した制御ブロック図である。
図5は、図4の一巡伝達関数21に図3の圧延プロセス14とゲージメータAGC16とMMC17とを当てはめた図である。図5において、図4の制御ブロック図22は、図3のむだ時間ブロック18で置き換えられている。図2のブロックを用いれば、図5よりも詳細な図に展開し得る。この際の図は自明である。当該図の記述は省略される。
図5に示すように、むだ時間対応修正繰返し制御器20は、既存の制御系に対して制御偏差eとモニターAGC15との間に挿入される。この際、図3のモニターAGC15の伝達係数は、「1」に設定される。その結果、モニターAGC15の機能は、使用されない。
次に、図6を用いて、むだ時間対応修正繰返し制御器20を説明する。
図6はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の要部の制御ブロック図である。
図6において、むだ時間対応修正繰返し制御器20は、ブロック20aとブロック20bとブロック20cとブロック20dとブロック20eとを備える。
ブロック20cは、繰返し制御器をまとめたブロックである。ブロック20cにおいて、qは、ローパスフィルタである。例えば、ローパスフィルタqは、一次遅れ系で記述される。ブロック20dは、安定化補償器Cである。例えば、ブロック20dは、ゲイン等で表される。
ブロック20eは、むだ時間を補償するむだ時間補償器である。例えば、ブロック20eは、スミス補償器である。ブロック20eは、外乱の周期L[s]をむだ時間とする。つまり、ブロック20eは、信号が入力された際にL[s]だけ遅らせた信号と、入力された信号を遅らせないそのままの信号を加算して出力する。L[s]は既知である。むだ時間L[s]は特定し得る。例えば、圧延ロールの回転に同期したロール偏芯外乱の周期は、ロール径とロール回転速度とに基づいて計算し得る。
ブロック20aは、操作遅延器である。ブロック20aは、時間L−T[s]だけ制御偏差eを遅らせて、信号eを出力する。信号eは、ブロック20eの出側の信号eと加算される。その際、信号eの符号に注意する。その結果、信号eが生成される。ブロック20aは、等価的にブロック20bの位置に配置され得る。このため、実際の制御においては、ブロック20aとブロック20bとのうちのいずれか一方が用いられる。この際、用いられないブロックの伝達関数は、「1」に設定される。
次に、外乱dから制御量yまでの閉ループ伝達関数GCL1(s)を説明する。
信号eから操作量uまでの一巡伝達関数L(s)は、次の(1)式で表される。
Figure 0006597877
閉ループ伝達関数GCL1(s)は、(1)式を用いて次の(2)式で表される。なお、以後、途中の式の展開は、適宜省略される。
Figure 0006597877
ローパスフィルタqは、外乱dの周波数帯域においてほぼ1となるように設定される。周期的な外乱dにおいては、ローパスフィルタqは、周期Lごとに同じ値となる。このため、次の(3)式および(4)式が成り立つ。
Figure 0006597877
Figure 0006597877
外乱dの周波数帯域において、閉ループ伝達関数GCL1(s)は、次の(5)式で表される。
Figure 0006597877
(5)式は、外乱dから制御量yまでの影響がほぼ0となることを意味する。つまり、むだ時間対応修正繰返し制御器20は、外乱抑制力を効果的に発揮する。
次に、目標値rから制御量yまでの伝達関数GCL2(s)を説明する。伝達関数GCL2(s)は、次の(6)式で表される。
Figure 0006597877
(3)式と(4)式とが(6)式に代入されると、次の(7)式が得られる。
Figure 0006597877
(7)式は、目標値rから制御量yまでの影響がほぼ1となることを意味する。つまり、むだ時間対応修正繰返し制御器20は、制御量yを目標値rによく追従させる。
次に、図7を用いて、図6の機能を説明する。
図7はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の機能を説明するための図である。
図7の上段は、圧延速度が一定の場合の板厚実績変化量ΔhACT(実線)と板厚測定値変化量ΔhMES(破線)を示す。図7の上段においては、板厚実績変化量ΔhACTが圧延スタンドから板厚計12まで搬送される。この際、むだ時間Tが経過すると、板厚計12は、板厚測定値変化量ΔhMESを測定する。板厚測定値変化量ΔhMESに基づいて繰返し制御が行われると、その時点での圧延スタンドの直下で起こっている現象に対応した板厚実績変化量ΔhACTの信号が変更される。この場合、制御装置による操作量のタイミングは、圧延スタンドの直下で起こっている板厚の変化のタイミングとむだ時間Tの分だけずれる。このため、良好な制御を行うことができない。
そこで、制御装置は、板厚測定値変化量ΔhMESの信号をL−T[s]だけ遅らせる。その結果、板厚測定値変化量ΔhMESの信号のタイミングは、板厚実績変化量ΔhACTの信号のタイミングと合う。
図7の下段は、圧延速度が増加する場合の板厚実績変化量ΔhACT(実線)と板厚測定値変化量ΔhMES(破線)を示す。図7の下段においては、外乱の周期およびむだ時間の変化に応じた制御が行われる。その結果、圧延速度が増加する場合においても、板厚測定値変化量ΔhMESの信号のタイミングは、板厚実績変化量ΔhACTの信号のタイミングと合う。
以上で説明した実施の形態1によれば、操作端への操作量の入力は、外乱の1周期分の時間からむだ時間を差し引いた時間だけ遅れる。このため、むだ時間を含むプラントの制御対象に周期的な外乱が加わる場合において、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を得ることができる。実施の形態1においては、圧延材13の板厚を精度よく制御することができる。
また、むだ時間は、むだ時間補償器により補償される。このため、むだ時間が変化する場合でも、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を得ることができる。
次に、図8を用いて、制御装置の変形例を説明する。
図8はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置の変形例を説明するための図である。
圧延において、ロール偏芯外乱ΔSは、上側バックアップロール3aの回転および下側バックアップロール3bの回転に依存する外乱である。圧延荷重外乱ΔPは、加熱炉の内部で圧延材に付与されるスキッドマークに基づいた一定距離間隔の温度外乱である。圧延荷重外乱ΔPは、上側バックアップロール3aの外周および下側バックアップロール3bの外周の倍数の距離を持つ外乱として考え得る。このため、上側バックアップロール3aおよび下側バックアップロールという回転体の角度θを基準とした制御が行われる。
回転体の角度θを基準とした制御は、次の(8)式で表されたラプラス変換を(9)式で表された変換により記述されることで実現される。
Figure 0006597877
Figure 0006597877
ただし、(8)式において、tは時刻である。sはラプラス演算子である。(9)式において、λはラプラス演算子sに相当する角度領域における演算子である。
図8は、図1に対して(9)式の変換を施して表現したものである。図8において、図1のブロック20aは省略される。図1と同様に、ブロック20aとブロック20bとのうちのいずれか一方が用いられる。この際、用いられないブロックの伝達関数は、「1」に設定される。
図8において、iは、制御対象の外乱の番号である。iは、1、2、・・・で表される。例えば、ロール偏芯外乱ΔSと圧延荷重外乱ΔPとが制御対象の場合、iは、1、2となる。ΘREPは、外乱の周期を角度基準とする領域に変換したものである。exp(−ΘREP・λ)は、角度で表されたむだ時間である。ΘTLは、圧延スタンドから板厚計12までのむだ時間を角度基準とする領域に変換したものである。exp(−ΘTL・λ)は、角度で表されたむだ時間である。
Πは、中の要素を掛けることを意味する数学記号である。具体的には、Πは、次の(10)式で表される。
Figure 0006597877
実際の制御装置への実装においては、上側バックアップロール3aの周期位置または下側バックアップロール3bの周期位置と偏芯量とが関係付けられることにより、繰返し制御器は、偏芯量を学習する。その結果、ロール偏芯外乱ΔSは、適切に制御される。
圧延荷重外乱ΔPの1周期分と上側バックアップロール3aの周期位置または下側バックアップロール3bの周期位置とが関連付けられることにより、繰返し制御器は、圧延荷重外乱ΔPを学習する。その結果、圧延荷重外乱ΔPは、適切に制御される。
次に、図9を用いて、ロール偏芯外乱ΔSと圧延荷重外乱ΔPとを説明する。
図9はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置に加わるロール偏芯外乱と圧延荷重外乱を説明するための図である。
図9に示すように、ロール偏芯外乱ΔSと圧延荷重外乱ΔPとは、周期的な外乱とみなし得る。ロール偏芯は、上側バックアップロール3aの偏芯および下側バックアップロール3bの偏芯に主に依存する。このため、ロール偏芯は、上側バックアップロール3aの回転周期および下側バックアップロール3bの回転周期に応じて発生する。
圧延荷重外乱ΔPは、スキッドマークに基づく。スキッドマークは、加熱炉でほぼ一定間隔で配置されたスキッドにより圧延材を支えることで圧延材に付与される。スキッドは、内部を水冷された支柱である。このため、スキッドマークの位置において、圧延材の温度は、他の位置よりも低くなる。その結果、スキッドマークの位置において、圧延材は、他の位置よりも硬くなる。この際、ロールギャップが一定であれば、スキッドマークの位置において、圧延材は、他の位置よりも厚くなる。
圧延荷重外乱ΔPは、図9の圧延荷重波という全波のような形が得られる。これに対し、ロール偏芯外乱ΔSの周波数は、圧延荷重外乱ΔPの周波数よりも高い。このため、図7のロール偏芯波の形が得られる。圧延荷重波とロール偏芯波と重畳されると、図7の重畳した波形が得られる。
なお、図6および図8の外乱dは、図2と図3と図5とのロール偏芯外乱ΔSと圧延荷重外乱ΔPから圧延プロセス14からMMC17を経由してゲージメータAGC16へ遡ることにより得られる。
外乱の周期が回転体の周期の定数倍の周期に応じて変化する場合、変形例のように、回転体の角度を規準とした制御を行えばよい。この場合、圧延材の速度が変化することにより外乱の周期およびむだ時間が変化しても、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を容易に得ることができる。
特に、定数倍がNを整数として1/N倍またはN倍の場合は、制御を容易に行うことができる。
次に、図10を用いて、制御装置の例を説明する。
図10はこの発明の実施の形態1におけるプラントの制御装置のハードウェア構成図である。
制御装置の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ23aと少なくとも1つのメモリ23bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア24を備える。
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ23aと少なくとも1つのメモリ23bとを備える場合、制御装置の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ23bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ23aは、少なくとも1つのメモリ23bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ23aは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ23bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア24を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものである。例えば、制御装置の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
制御装置の各機能について、一部を専用のハードウェア24で実現し、他部をソフトウェア又はファームウェアで実現してもよい。例えば、むだ時間対応修正繰返し制御器20の機能については専用のハードウェア24としての処理回路で実現し、むだ時間対応修正繰返し制御器20以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ23aが少なくとも1つのメモリ23bに格納されたプログラムを読み出して実行することによって実現してもよい。
このように、処理回路は、ハードウェア24、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、制御装置の各機能を実現する。
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2におけるプラントの制御装置を説明するための制御ブロック図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
図11の制御ブロック図は、図5の制御ブロック図に切り替えスイッチ25を付加したものである。切り替えスイッチ25の入力側の一方は、モニターAGC15の出力側に接続される。切り替えスイッチ25の入力側の他方は、むだ時間対応修正繰返し制御器20の出力側に接続される。
図11において、切り替えスイッチ25が入力側の一方の側に倒されると、むだ時間対応修正繰返し制御器20は使用されない状態となる。切り替えスイッチ25が入力側の他方の側に倒されると、むだ時間対応修正繰返し制御器20は使用される状態となる。
以上で説明した実施の形態2によれば、すでに稼働している制御装置にむだ時間対応修正繰返し制御器20を追加する場合においても、むだ時間対応修正繰返し制御器20を介して操作端への操作量の入力を行うか否かを即座に選択することができる。その結果、柔軟な制御システムを得ることができる。例えば、むだ時間対応修正繰返し制御器20の有無による制御性能の比較を簡単に行うことができる。むだ時間対応修正繰返し制御器20の追加で不都合な状態に陥った時に、むだ時間対応修正繰返し制御器20を即座に切り離すことができる。
なお、実施の形態1および実施の形態2の制御装置を4Hiミル以外のミルに適用してもよい。例えば、当該制御装置を上側ワークロール2a及び下側ワークロール2bで構成された2Hiミルに適用してもよい。また、当該制御装置を4Hiミルに中間ロールを付加した6Hiミルに適用してもよい。
また、圧延機以外のプラントの制御装置にむだ時間対応修正繰返し制御器20を適用してもよい。この場合も、むだ時間を含むプラントの制御装置に周期的な外乱が加わる場合において、外乱による影響を抑制し、高い制御性能を得ることができる。
以上のように、この発明に係るプラントの制御装置は、むだ時間を含むプラントの制御装置に周期的な外乱が加わる場合において、当該外乱の影響を抑制し、高い制御性能を得るシステムに利用できる。
1 ハウジング、 2a 上側ワークロール、 2b 下側ワークロール、 3a 上側バックアップロール、 3b 下側バックアップロール、 4 圧下装置、 4a 一側圧下装置、 4b 他側圧下装置、 5 荷重検出器、 5a 一側荷重検出器、 5b 他側荷重検出器、 6 ロールギャップ検出器、 6a 一側ロールギャップ検出器、 6b 他側ロールギャップ検出器、 7 圧延荷重測定器、 8 ロールギャップ測定器、 9 板厚制御器、 10 ロールギャップ操作手段、 12 板厚計、 13 圧延材、 14 圧延プロセス、 14a 第1影響係数、 14b 第2影響係数、 15 モニターAGC、 16 ゲージメータAGC、 16a 第1制御ブロック、 16b PI制御器、 16c 補償ゲイン、 17 MMC、 17a 第2制御ブロック、 17b 油圧圧下応答、 18 むだ時間ブロック、 20 むだ時間対応修正繰返し制御器、 20a、20b、20c、20d、20e ブロック、 21 一巡伝達関数、 22 制御ブロック図、 23a プロセッサ、 23b メモリ、 24 ハードウェア、 25 切り替えスイッチ

Claims (4)

  1. 周期的な外乱が加わるプラントの制御量に対する目標値が与えられ、センサで測定される制御量を前記目標値とするための操作端の操作量の変更結果が前記センサで測定されるまでにむだ時間が生じる場合に、外乱の周期およびむだ時間の変化に応じて外乱の1周期分の時間からむだ時間を差し引いた時間だけ前記操作端への前記操作量の入力を遅らせるむだ時間対応修正繰返し制御器、
    を備え
    前記むだ時間対応修正繰返し制御器は、ロール偏芯外乱および圧延荷重外乱の周期が前記プラントに設けられた回転体の周期の定数倍の周期に応じて変化する場合に前記回転体の角度を規準とした制御を行うプラントの制御装置。
  2. 前記むだ時間対応修正繰返し制御器は、
    外乱の周期およびむだ時間の変化に応じて外乱の1周期分の時間からむだ時間を差し引いた時間だけ前記操作端への操作量への入力を遅らせる操作遅延器と、
    外乱の周期およびむだ時間の変化に応じてむだ時間を補償するむだ時間補償器と、
    を備えた請求項1に記載のプラントの制御装置。
  3. 前記むだ時間対応修正繰返し制御器は、前記定数倍がNを整数として1/N倍またはN倍の場合に前記回転体の角度を規準とした制御を行う請求項1または請求項2に記載のプラントの制御装置。
  4. 前記むだ時間対応修正繰返し制御器を介して前記操作端への操作量の入力を行うか否かを選択し得るように設けられた切り替えスイッチ、
    を備えた請求項1から請求項のいずれか一項に記載のプラントの制御装置。
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