JP6597754B2 - 活性炭の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、活性炭及び活性炭の製造方法に関する。より具体的には、特に電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイス用の多孔性電極に用いられる所望の細孔特性を有する活性炭と、その細孔特性を実現するための活性炭の製造方法に関する。
SiCを1000℃以上の温度にて、塩素ガス雰囲気中で処理することで、多孔質かつ比表面積の大きいグラファイト材料を製造する手法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。SiCの純度、密度を高めることでナノサイズの細孔のみが形成されたグラファイト材料を形成できる。この反応により得られる材料は、電池電極、触媒担体、活性炭等として使用することができる。
一方、炭化物を塩素化処理することで、ナノ細孔が形成された多孔質炭素材料を製造する手法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。出発材料である炭化物としては、SiC、TiC、BC、Al、WC等の様々な材料が適用可能であり、出発材料の種類を変えることにより、多孔質の気孔率及び細孔径分布を変えることが可能であることが、同文献には示されている。(第812頁〜817頁)。
米国特許第3066099号明細書 特開平2−184511号公報
Adv. Funct. Mater. 2011, 21, 第810頁〜833頁
ところで、これらの先行技術により得られる活性炭は、キャパシタとして利用することが可能である。しかしながら、当該活性炭では十分な容量と低抵抗を実現するキャパシタを得られないことが分かった。
そこで本発明は、蓄電デバイス用の多孔性電極として使用された際に、高容量かつ低抵抗を実現することができる活性炭を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような活性炭の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、細孔幅が0.6nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の10%以下であり、細孔幅が2nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の5%以上30%以下である、活性炭を提供する。
本発明はまた、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与する第1工程と、当該表面から酸素官能基を熱脱離する第2工程と、を備え、活性炭前駆体は、細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の90%以上である、活性炭の製造方法を提供する。
本発明によれば、蓄電デバイス用の多孔性電極として使用された際に、高容量かつ低抵抗を実現することができる活性炭を提供することができる。なお、当該活性炭を用いることで、多孔性電極の温度特性も向上させることが可能である。本発明はまた、そのような活性炭の製造方法を提供することができる。
実施例1の活性炭の細孔幅と細孔容積との関係を示すグラフである。 比較例1の活性炭の細孔幅と細孔容積との関係を示すグラフである。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本実施形態の活性炭は、細孔幅が0.6nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の10%以下であり、細孔幅が2nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の5%以上30%以下である。
このような特性を有する活性炭によれば、蓄電デバイス用の多孔性電極として使用された際に、高容量かつ低抵抗を実現することができる。この理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように推察する。例えば電気二重層キャパシタを考えた場合、電荷となるイオンのサイズは0.6〜0.7nmである。ここで、細孔幅が0.6nm以下の細孔では、これらのイオンを十分に取り込めないため、このような細孔が多く存在したとしても静電容量の増大に寄与しない。一方で、イオンの移動を容易にする(イオン移動時の抵抗を減らす)には、ある程度のサイズを有する細孔も必要である。発明者らはこれら静電容量の増大及び抵抗の抑制の観点から種々の検討を行った結果、本実施形態の活性炭を発明するに至った。
本実施形態の活性炭において、活性炭の全細孔容積が0.4cm/g以上1.1cm/g以下であることが好ましい。これにより、静電容量を目的とする範囲の値にし易くなる。
本実施形態の活性炭において、細孔幅が2nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の10%以上25%以下であることが好ましい。これによりイオン移動がより容易になり、さらに高容量を実現し易くなる。
本実施形態の活性炭において、細孔幅が5nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の3%未満であることが好ましい。細孔幅が5nm以上の細孔は実質的に容量の増大に寄与しないと考えられるため、このような細孔の細孔容積を規定することにより、さらに高容量を実現し易くなる。
本実施形態の活性炭の製造方法は、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与する第1工程と、当該表面から酸素官能基を熱脱離する第2工程と、を備え、活性炭前駆体は、細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の90%以上である。
このような活性炭前駆体に対し、上記所定の工程を行うことにより、蓄電デバイス用の多孔性電極として使用された際に、高容量かつ低抵抗を実現する活性炭を製造することができる。
本実施形態の製造方法において、酸素官能基を熱脱離した活性炭前駆体を、CO又はHOを含有する不活性ガス雰囲気にて、700℃以上1000℃以下の温度で熱処理する第3工程をさらに備えることが好ましい。これにより、高容量かつ低抵抗を実現する活性炭をより得易くなる。
本実施形態の製造方法において、第1工程にて、活性炭前駆体を300℃以上450℃以下の酸素含有雰囲気で熱処理することにより、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与することが好ましい。
本実施形態の製造方法において、第1工程にて、活性炭前駆体を酸化性の成分を含有する水溶液で処理することにより、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与することが好ましい。
本実施形態の製造方法において、第2工程にて、熱脱離を不活性ガス雰囲気にて600℃以上1000℃以下の温度で行うことが好ましい。
本実施形態の製造方法において、活性炭前駆体が、炭化物を塩素ガス含有雰囲気にて熱処理することにより得られるものであることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、炭化物がSiCであり、塩素ガス含有雰囲気での熱処理が1000℃以上1500℃以下の温度で行われることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、炭化物がTiCであり、塩素ガス含有雰囲気での熱処理が600℃以上1200℃以下の温度で行われることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、活性炭前駆体が難黒鉛化カーボンを賦活した活性炭であり、当該難黒鉛化カーボンはアルカリ水酸化物、CO又はHOを用いた賦活処理をされておりかつ全細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下であることが好ましい。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明を実施するための形態についてさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(活性炭)
本実施形態の活性炭は、細孔幅が0.6nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の10%以下である。ここで、静電容量に寄与する細孔容積の最大化という観点から、当該細孔容積は7%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。なお、当該細孔容積の下限としては特に限定されないが、好ましくは0%である。また、本実施形態の活性炭は、細孔幅が2nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の5%以上30%以下である。ここで、出力に寄与する電極抵抗の最小化と容量に寄与する細孔容積の最大化という観点から、当該細孔容積は10%以上25%以下であることが好ましく、10%以上20%以下であることがより好ましい。
さらに、細孔幅が5nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の3%未満であることが好ましい。ここで、容量に寄与する細孔容積の最大化という観点から、当該細孔容積は2%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。なお、当該細孔容積の下限としては特に限定されないが、好ましくは0%である。
活性炭の全細孔容積は0.4cm/g以上1.1cm/g以下であることが好ましい。ここで、電極容積あたりの容量を最大化するという観点から、当該全細孔容積は、0.55cm/g以上1.0cm/g以下であることがより好ましく、0.65cm/g以上0.8cm/g以下であることがさらに好ましい。
活性炭のBET比表面積は、静電容量の最大化という観点から、1000m/g以上2100m/g以下であることが好ましく、1500m/g以上1900m/g以下であることがより好ましい。
ここで、活性炭の全細孔容積、特定の細孔幅を有する細孔の細孔容積の全細孔容積に対する割合、及びBET比表面積は、活性炭の窒素吸着等温線を解析することにより得ることができる。吸着等温線は、例えば窒素吸着装置「ASAP−2400」(マイクロメリティックス社製、製品名)を用いて活性炭の窒素吸着量を測定することにより得ることができる。
なお、具体的には後述する活性炭の製造方法の中で説明をするが、上記活性炭は、SiCやTiCに所定の処理(塩素処理)を付すことにより得られる活性炭前駆体を用いて得ることができる。例えば、SiCを用いた場合は、当該所定の処理により以下の反応がおこることになる。
SiC+2Cl→SiCl+C
これにより、SiCの結晶構造中からSi層のみが除去され、主としてC層のみからなる活性炭前駆体を得ることができる。本実施形態において、細孔のサイズを「細孔径」ではなく「細孔幅」と規定する理由はこのことによる。その後、この活性炭前駆体に対しさらに所定の処理を行うことにより、上記所望の細孔を有する活性炭を得ることができる。
(活性炭の製造方法)
本実施形態の活性炭の製造方法は、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与する第1工程と、当該表面から酸素官能基を熱脱離する第2工程と、を少なくとも備える。ただし、当該製造方法は、後述する第3工程をさらに備えていてもよい。
第1工程
第1工程は、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与する工程であり、この工程の目的は、前駆体の0.6nm以下の細孔部分を酸化し、脱離しやすくすることにある。
本工程は、活性炭前駆体を300℃以上450℃以下の酸素含有雰囲気で熱処理することにより、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与するものであることが好ましい。ここで、活性炭前駆体と酸素ガスとの反応速度という観点から、熱処理温度は350℃以上420℃以下であることが好ましく、380℃以上410℃以下であることがより好ましい。このときの雰囲気ガスとしては大気を用いることができるが、酸素ガスを適量含有した不活性ガス雰囲気としてもよい。酸素濃度は反応速度にも影響するが、5%〜100%の範囲であれば好適な処理をし易い傾向がある。
本工程はまた、活性炭前駆体を酸化性の成分を含有する水溶液で処理することにより、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与するものであってもよい。ここで、酸化性の成分を含有するものとしては、過酸化水素、過塩素酸、硝酸、王水等が挙げられるが、電極に残留するハロゲン化合物の極小化という観点から過酸化水素、硝酸であることが好ましい。なお、水溶液中の酸化性成分の量は、活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与するに足る量であればよく、特に制限されない。
このように第1工程の好ましい態様としてはこれら二種類の方法が挙げられるが、電極への残留水分が電極の長期信頼性に好ましくないという観点から、酸素含有雰囲気により酸素官能基を付与することが好ましい。
第2工程
第2工程は、活性炭前駆体の表面から酸素官能基を熱脱離する工程であり、この工程の目的は、熱脱離による細孔表面の炭素層を除去し細孔幅をコントロールすることにある。
本工程では、熱脱離を不活性ガス雰囲気にて600℃以上1000℃以下の温度で行うことが好ましい。ただし、表面に残留する酸素系官能基残留分を極小化し細孔幅を広げる効果を出すという観点から、当該温度は750℃以上1000℃以下であることが好ましく、850℃以上950℃以下であることがより好ましい。なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、希ガス(アルゴンガス、ヘリウムガス)雰囲気等が挙げられ、いずれも好適に採用することができる。
第3工程
本実施形態の活性炭の製造方法は、酸素官能基を熱脱離した活性炭前駆体を、CO又はHOを含有する不活性ガス雰囲気にて、700℃以上1000℃以下の温度で熱処理する第3工程をさらに備えていてもよい。なお、この工程をさらに実施する目的は、細孔幅が2〜5nmの範囲である細孔を発達させ、電極の抵抗に寄与する細孔容積を適正化することである。ここで、反応速度という観点から、当該温度は800℃以上1000℃以下であることが好ましく、900℃以上950℃以下であることがより好ましい。1000℃超で反応させると、細孔部分の反応速度と最表面の反応速度差が少なくなり、活性炭の収率が低下する問題が生じる。なお、CO又はHOを含有する不活性ガス雰囲気としては、CO又はHOを含有する窒素ガス雰囲気、希ガス(アルゴンガス、ヘリウムガス)雰囲気等が挙げられ、いずれも好適に採用することができる。
活性炭前駆体
本実施形態の活性炭の製造方法においては、所望の細孔を有する上記活性炭を得るべく、活性炭前駆体として、細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の90%以上であるものを使用する。ここで、静電容量に寄与する細孔形成量を最大化するという観点から、当該細孔容積は95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。なお、当該細孔容積の上限としては特に限定されないが、好ましくは100%である。当該細孔容積は、上記活性炭の細孔容積と同様にして測定することができる。
このような活性炭前駆体としては、炭化物を塩素ガス含有雰囲気にて熱処理することにより得られるものであることが好ましい。より具体的には、活性炭前駆体としては、炭化物としてSiCを用い、これを塩素ガス含有雰囲気にて1000℃以上1500℃以下の温度で熱処理することで得られるものや、炭化物としてTiCを用い、これを塩素ガス含有雰囲気にて600℃以上1200℃以下の温度で熱処理することで得られるものが挙げられる。なお、細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の90%以上であることと反応速度という観点から、SiCを用いる場合は、1050℃以上1400℃以下の温度で熱処理することが好ましく、1100℃以上1300℃以下の温度で熱処理することがより好ましい。同様の観点から、TiCを用いる場合は、700℃以上1000℃以下の温度で熱処理することが好ましく、750℃以上900℃以下の温度で熱処理することがより好ましい。
このようにして得られる活性炭前駆体は粒状、繊維状、板状等のいずれの形態であってもよい。例えば、活性炭前駆体が粒状である場合は、電極形成の際の混練作業性や電極の抵抗という観点から、平均粒子径が0.5μm以上25μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所製、製品名)を用いて測定することにより得ることができる。
一方、活性炭前駆体は難黒鉛化カーボンを賦活した活性炭であってもよい。所望の細孔を有する上記活性炭を得るべく、当該難黒鉛化カーボンは、アルカリ水酸化物、CO又はHOを用いて賦活処理をされておりかつ全細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下である。なお、単位体積あたりの電極静電容量の最大化という観点から、当該全細孔容積は0.5cm/g以上0.9cm/g以下であることが好ましく、0.6cm/g以上0.8cm/g以下であることがより好ましい。難黒鉛化カーボンとしては、フェノール樹脂を不活性ガス雰囲気で炭化処理したもの等が挙げられる。
本実施形態において熱処理は、ロータリキルン、流動層炉、固定層炉、移動層炉、移動床炉等各種形式の炉等の一般的な炉を使用して行うことができる。炉としては、原料の投入、活性炭の取り出しを連続的に行う連続炉、あるいは間欠的に行うバッチ炉の双方とも適用することができる。加熱手段としては所定の温度まで加熱可能な手段であれば問題なく、電気加熱、ガス燃焼型加熱、高周波誘導加熱、通電加熱等を使用することができる。これら加熱手段は単独で使用してもよいし、併用しても構わない。
(電気二重層キャパシタ)
本実施形態の活性炭の活用例として電気二重層キャパシタが挙げられる。
電気二重層キャパシタ用電極は、例えば、本実施形態の活性炭、導電性付与剤、バインダー等を混練し、さらに溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔等の集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去することで得ることができる。
この場合、活性炭は粒状であることが好ましい。特に、電極形成の際の混練作業性という観点から、活性炭の平均粒子径は0.5μm以上25μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。なお、上記の製造方法にて得られる活性炭を粉砕することで、このような所望の粒子径を有する活性炭を得てもよい。粉砕は、コーンクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、ディスククラッシャー、ロータリークラッシャー、ボールミル、遠心ロールミル、リングロールミル、遠心ボールミル等の公知の粉砕機で行うことができる。また、さらに分級機を併用して粒度分布をコントロールしてもよい。粉砕中に活性炭表面が酸化されるのを防ぐため、粉砕は不活性ガス雰囲気で行うのが好ましい。
導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができる。また、バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂等を使用することができる。
電気二重層キャパシタは、一般的には、電極、電解液、セパレータ等を主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造となっている。電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等の有機溶剤にアミジン塩を溶解した電解液;過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液;4級アンモニウム、リチウム等のアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液;4級ホスホニウム塩を溶解した電解液などが挙げられる。また、セパレータとしては、例えば、セルロース、ガラス繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムなどが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
1.活性炭の作製
<実施例1>
炭化物としてSiCを用い、これを1100℃で2時間塩素雰囲気中にて熱処理をして活性炭前駆体を得た。この活性炭前駆体を350℃で2時間酸素雰囲気中にて熱処理し、活性炭前駆体表面に酸素官能基を付与した(第1工程)。その後、これを900℃で1時間不活性ガス(窒素)雰囲気にて熱処理した後(第2工程)、さらに900℃で2時間HOを含有する不活性ガス(窒素)雰囲気中にて熱処理(HO賦活処理)し(第3工程)、活性炭を得た。
<実施例2〜14及び比較例1〜11>
前駆体準備、及び第1〜第3工程を表1又は表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして活性炭を作製し、BET比表面積等の測定を行った。なお、表1中、「活性炭素繊維」とは、炭素繊維(難黒鉛化カーボン)を水蒸気雰囲気にて賦活して得られた活性炭素繊維(東洋紡製 活性炭素繊維「KF」)を示す。当該活性炭素繊維は、全細孔容積が0.66cm/gであった。また、表2中、「ヤシ殻原料 HO賦活」とは、市販ヤシ殻原料のHO賦活処理活性炭(クレハ社製、製品名YP50)を示し、「ピッチ原料 KOH賦活」とは、ピッチ原料のKOH賦活活性炭(関西熱化学社製、製品名マックスソープ)を示す。
なお、使用した活性炭前駆体はいずれも、全細孔容積に対する細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積の割合は90%以上であった。当該割合は、後述の「2.BET比表面積等の測定」と同様にして予め行っておいた。
Figure 0006597754
Figure 0006597754
2.BET比表面積等の測定
得られた各実施例及び比較例の活性炭のBET比表面積等を以下の方法により測定した。
活性炭0.2gを150℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置「ASAP−2400」(マイクロメリティックス社製、製品名)を用いて、窒素吸着等温線を求め、BET法により比表面積及び全細孔容積を算出した。また、特定の細孔幅を有する細孔の細孔容積の全細孔容積に対する割合(細孔幅分布)は、当該窒素吸着等温線を解析することにより得た。測定結果を表3又は表4に示す。なお、表3及び表4の細孔幅分布の項目において、例えば「0.6nm以下」とは、「細孔幅が0.6nm以下である細孔の全細孔容積に対する割合」を示すものとする。
なお、図1は、実施例1の活性炭の細孔幅と細孔容積との関係を示すグラフである。図1に示すように、実施例1においては、0.6nm以下の細孔の細孔容積が略0であることが読み取れる。一方、図2は、比較例1の活性炭の細孔幅と細孔容積との関係を示すグラフである。比較例1においては、0.6nm以下の細孔の細孔容積が0.16cm/g(25%)となっている。
Figure 0006597754
Figure 0006597754
3.電気二重層キャパシタの作製
各実施例及び比較例にて得られた活性炭を用いて電気二重層キャパシタを製造した。具体的には、活物質として活性炭を、導電性付与材としてアセチレンブラックを、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末をそれぞれ準備し、これらを配合比(重量%)が、活物質:導電性付与材:バインダー=90:5:5となるように秤量した。そして、まず活物質と導電性付与材とを乳鉢にてイソプロピルアルコールを用い混合した後、さらにバインダーを加えて混練した。これに、イソプロピルアルコールを加えて2軸ロールを使用してさらに混練し、成型を行うことで、厚さ70μmのシート電極を得た。
得られたシート電極を、集電板であるアルミ箔に導電ペーストを介し接着した。これを2枚準備して厚さ40μmのセルロース系セパレータを挟んで測定セルを作製した。この測定セルに、電解液である1.4M−トリエチルメチルアンモニウム・4フッ化ホウ素のプロピレンカーボネート溶液[TEMA・BF/PC]を注入し、電気二重層キャパシタを作製した。
4.電気二重層キャパシタ性能評価
充放電装置の充放電端子を、上記のとおり得られた電気二重層キャパシタの集電板に接続し、集電板間電圧が2.5Vになるまで40mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で30分間充電を行った。充電後、定電流(放電電流10mA)で電気二重層キャパシタの放電を行った。このとき、集電板間電圧がV1、V2となるまでに要した放電時間t1、t2を測定し、下記式(1)を用いて静電容量を求めた。得られた静電容量を、キャパシタ用電極における電極材料層中の活性炭質量で除することにより質量基準静電容量(F/g)を算出し、さらにキャパシタ用電極における電極材料層の総体積で除することにより体積基準静電容量(F/cm)を算出した。また、下記式(3)を用いて内部抵抗(交流抵抗)を求めた。なお、静電容量及び内部抵抗の測定は、25℃の温度下で行った。結果を表5及び表6に示す。
Figure 0006597754
Figure 0006597754

I:10(mA)
t1:電気二重層キャパシタ電圧がV1となるまでに要した放電時間(sec)
t2:電気二重層キャパシタ電圧がV2となるまでに要した放電時間(sec)
V1:2.0(V)
V2:1.0(V)
Figure 0006597754
Figure 0006597754
表5に示すように、本発明にて規定される細孔幅割合を有する活性炭、すなわち実施例に係る活性炭であれば、優れた静電容量と交流抵抗とを実現することができる。

Claims (8)

  1. 活性炭の製造方法であって、
    活性炭前駆体を300℃以上450℃以下の酸素含有雰囲気で熱処理することにより、前記活性炭前駆体の表面に酸素官能基を付与する第1工程と、
    不活性ガス雰囲気にて600℃以上1000℃以下の温度で、前記表面から前記酸素官能基を熱脱離する第2工程と、
    を備え、
    前記活性炭前駆体は、細孔幅が1nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の90%以上であ
    前記活性炭は、細孔幅が0.6nm以下の細孔の細孔容積が全細孔容積の10%以下であり、細孔幅が2nm以上の細孔の細孔容積が全細孔容積の5%以上30%以下である、
    活性炭の製造方法。
  2. 前記酸素官能基を熱脱離した前記活性炭前駆体を、CO又はHOを含有する不活性ガス雰囲気にて、700℃以上1000℃以下の温度で熱処理する第3工程をさらに備える、請求項1記載の活性炭の製造方法。
  3. 前記第1工程にて、前記活性炭前駆体を300℃以上420℃以下の酸素含有雰囲気で熱処理することにより、前記活性炭前駆体の表面に前記酸素官能基を付与する、請求項1又は2記載の活性炭の製造方法。
  4. 前記第2工程にて、前記熱脱離を不活性ガス雰囲気にて900℃以上1000℃以下の温度で行う、請求項1〜のいずれか一項記載の活性炭の製造方法。
  5. 前記活性炭前駆体が、炭化物を塩素ガス含有雰囲気にて熱処理することにより得られるものである、請求項1〜のいずれか一項記載の活性炭の製造方法。
  6. 前記炭化物がSiCであり、塩素ガス含有雰囲気での前記熱処理が1000℃以上1500℃以下の温度で行われる、請求項記載の活性炭の製造方法。
  7. 前記炭化物がTiCであり、塩素ガス含有雰囲気での前記熱処理が600℃以上1200℃以下の温度で行われる、請求項記載の活性炭の製造方法。
  8. 前記活性炭前駆体が難黒鉛化カーボンを賦活した活性炭であり、該難黒鉛化カーボンはアルカリ水酸化物、CO又はHOを用いて賦活処理をされておりかつ全細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下である、請求項1記載の活性炭の製造方法。
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